説明

プロトン交換膜燃料電池用の複合高分子電解質

フィラーベースの様々な粘土を含む無機陽イオン交換材料を含む、安価な複合高分子電解質膜の薄膜が、溶解成形法(solution casting)によって、製造される。この膜は、より高いイオン交換能力、プロトン伝導性および/またはより低いガス・クロスオーバーを示す。一般的に、複合膜は、優れた物理化学的特性を示し、水素酸素型燃料電池において、優れた燃料電池性能を示す。無機陽イオン交換材料は、複合電解質の約0.1重量%〜約99重量%を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、先に出願された米国特許出願番号第10/644,227号、表題”COMPOSITE POLYMER ELECTROLYTES FOR PROTON EXCHANGE MEMBRANE FUEL CELLS”で2003年8月19日出願の優先権主張を主張するPCT特許出願であり、その先の出願は、2002年8月13日に出願した米国特許出願番号第10/219,083号、現在は米国特許第6,630,265号、表題”COMPOSITE ELECTROLYTE FOR FUEL CELLS”のCIPである。
【0002】
さらに、このPCT特許出願は、先に出願されたPCT出願番号第PCT/US02/39104、表題”COMPOSITE ELECTROLYTE FOR FUEL CELLS”で2002年12月5日出願のCIPであり、利益を主張するもので、これもまた、先に出願された米国特許出願番号第10/219,083号、表題”COMPOSITE ELECTROLYTE FOR FUEL CELLS”の、優先権を主張するものである。
(発明の分野)
本発明は、1つの機能性高分子および1つ以上の粘土を基礎とするカチオン交換材料の中から、1つ以上の材料を供給し、プロトン伝導性複合高分子膜に関する。複合高分子膜は、水素酸素型燃料電池、プロトン交換型燃料電池、(PEMFC)あるいは直接メタノール型燃料電池(DMFC)において、プロトン伝導性電解質として、使用することができる。これら複合高分子膜は、イオン交換能力(IEC)、プロトン伝導性、水の摂取、酸化抵抗、熱的安定性、および、機械的強度で、改善を示す。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
現在の主流である技術よりも、耐久性に優れ、安価な代替エネルギーを開発することは、商業的な流れである。こうした動きは、エネルギー需要が増加し、世界的に化石燃料が徐々に枯渇しているという観点からとらえても、重要である。燃料電池は、クリーンで効率的なエネルギーの生産の求めに対し、有望な解決策として、長い間考えられてきた。
【0004】
燃料電池内で行われる電気化学交換は、内燃機関(ICE)の効率を制限するカルノー効率で制限されない。燃料電池は、ICEが燃料を電力に変換するより、効率が2倍か3倍優れている。バッテリーに比しても、燃料電池は、反応燃料と酸化剤が供給される限りは、継続的に電力を供給する点で優位である。このため、時間を費やす、充電の手間が不要である。
【0005】
さらには、燃料電池は環境にも優しい。水素のような燃料が、アノードタンクに補給され、金属触媒が水素ガスを酸化し、プロトンと電子を生成する。そのため、水素が燃料として使用されたときの唯一の廃棄物は、水である。燃料電池においては、アノードとカソードの双方の電極接合体に、導電性ある材料に担持された金属触媒(例えば、白金)を含む。PEM燃料電池には、電極表面全体に均等にガスを分散させるために、双方の電極に拡散層を用いるものが幾つかある。燃料電池は、カソード(正極)とアノード(負極)との間に、電解質を用いる。プロトン伝導性電解質膜を利用する燃料電池は、「プロトン交換膜燃料電池」(PEMFC)と、呼ばれる。反応は、ガスである電解質と、電極とが互いに接している場所(多層境界)で行われる。プロトンは、電解質材料を通り、アノードに運ばれ、電子は、外部の回路を通じ電気伝導性材料を経由して、(アノードから)カソードに運ばれる。カソードでは、酸素などの酸化剤が、電極を通して拡散し、ここで、電子とプロトンと反応し、水を生成する。PEM燃料電池が作動すると、電気、水、および、熱が発生する。
【0006】
水素、あるいは、水素を発生する材料を燃料として、用いるだけでなく、PEM燃料電池では、メタノールなどのような材料も燃料として機能する。この場合、メタノールは、アノードタンクに直接入れられ、その中で改質される。このタイプの燃料電池は、直接メタノール型燃料電池(DMFC)と、呼ばれる。
【0007】
燃料電池にも、様々なタイプがあるが、PEMFCおよびDMFCとが、作動温度が比較的低いことから、住宅、携帯、および、輸送への応用に、好ましい電力源である。PEMFCおよびDMFCの双方とも、電解質としてのプロトン伝導性膜と、白金系の電気触媒と炭素からなる複合電極接合体とを用いている。PEMFCとDMFCとの主たる差異は、それぞれが使用する燃料の種類と、その排出物である。PEMFCは、水素ガスを燃料として用い、水のみを排出するのに対し、DMFCは、メタノールを燃料として用い、水と二酸化炭素を排出する。
【0008】
PEMFCとDMFCとの最も重要な構成要素は、プロトン交換膜(PEM)である。前述のように、プロトン交換膜は、アノードとカソードとの間でイオン導電体として機能すると同時に、燃料と酸化剤とを分離する役割も果たしている。幾つかの高分子電解質が探索されているのは、PEM燃料電池におけるプロトン交換膜としてである。現在、PEMFCとDMFCとの双方とも、高価な水和パーフルオロスルホン酸系の膜を電解質として使用しているが、これは、化学的、機械的および熱的安定性が非常に優れており、水和状態で、約0.08Scm−1と、比較的高いプロトン伝導性を有するからである。
【0009】
この種の膜で、市場をリードするのは、Nafion(登録商標)(Nafion(登録商標)は、E.I.DU PONT DE NEMOURS and Company Corporation, Delawareの登録商標である)である。Nafion(登録商標)は、例えば、米国特許第4,330,654号に記載されており、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニル・フッ化エーテルスルホニルを一緒に溶融し、その混合物を形成し、次いで、その溶融物を加水分解し、イオン性スルホン酸塩の形で得ることによって、製造される。
【0010】
Nafion(登録商標)膜のようにパーフルオロ化されたアイオノマー膜は、PEM燃料電池には効率的であるが、弱点もある。こうした弱点には、浸透圧膨張が大きいこと、メタノール透過性が高いこと、高温(>80℃)でのプロトン伝導性低下、および、コスト高がある。
【0011】
特に、こうした膜に、満足ゆくプロトン伝導性を与えるために、十分に加湿すること必要がある。これは、高分子のバックボーンに張り付いたスルホン酸基が親水性を有し、イオンクラスターを水和させる必要があるためである。しかしながら、膜の温度が、水の沸点を超えると、膜は脱水し、プロトン伝導性が劇的に減少する。その結果、Nafion(登録商標)のようなパーフルオロ化されたアイオノマー膜は、100℃以上で用いる燃料電池には適していないと考えられている。その反面、高温(T>100℃)でのPEMFCの作動には、大きな利点が幾つかある。例えば、作動温度が高いと、動力学的反応が、より速く、効率もより高くなるので、燃料中の一酸化炭素不純物による白金系触媒の劣化を抑制あるいは排除でき、より安価な白金以外の合金あるいは遷移金属を酸化触媒として使用することも、おそらく可能となるからである。
【0012】
DMFCで用いる場合、メタノール透過性が高いことは、また別の大きな弱点であり、このことは、パーフルオロ化されたアイオノマー膜(例えば、Nafion(登録商標)膜)によって示されている。メタノール・クロスオーバーは、水素・クロスオーバーより顕著で、特に、10重量%以上の濃度の場合、顕著である。これは、主に、液体の濃度勾配によるものである。クロスオーバーを最小限に抑えるため、研究者は、Nafion(登録商標)添加剤を組み込ませたり、あるいは、メタノールを電池のアノード側に入れる前に気化してきた。しかしながら、この解決策は、Nafion(登録商標)の高いコストと、メタノール・クロスオーバーに内在する性質に対処するに至らなかった。
【0013】
Nafion(登録商標)のようなパーフルオロ化した膜の他の大きな欠点の一つは、コストが高い(本稿執筆時において、1平方メートル当たり700ドル)ことである。比較的複雑で、多大な時間を要する製造方法であるため、Nafion(登録商標)は、確かに、非常に高価である。Nafion(登録商標)1平方メートルは、約700ドルすることが知られている。一般的に、Nafion(登録商標)は、1個のPEM燃料電池あるいは燃料電池スタックにおいて、総コストの10%〜15%を占める。Nafion(登録商標)が、PEM燃料電池の膜候補の筆頭であり続けるためには、これを用いた燃料電池が燃料電池市場で競争力を持つまでに、そのコストを十分に下げなければならないという考え方は、一般に受け入れられている。
【0014】
前述のように、Nafion(登録商標)には、90℃以下の温度で作動しなくてはならないという制限もある。高温にすると、脱水と劣化により、プロトン伝導性が低下する。高温でも、その性能を向上させるであろう成分をNafion(登録商標)の多孔質構造に染み込ませるために、ゾルゲル法や他の方法を用いた研究が、幾つか文献に出ている。StaitiらおよびTaziらは、それぞれ、リンタングステン酸およびシリコンタングステン酸/チオフェンを、Nafion(登録商標)に浸透させ、120℃の温度まで、プロトン伝導性と水和化レベルを向上させた。(P. Staiti,”Proton Conductive Membranes Based on Silicotungstic Acid/Silica and Polybenzimidazole”,Materials Letters, 47(2001)241−246、および、B. Taziら,”Parameters of PEM Fuel Cells Based on New Membranes Fabricated From Nafion(登録商標), Silicotungstic Acid and Thiophene” , Electrochimica Acta, 45(2000)4329−4339を参照)。他にも、P. Costamagna、他、および、Park、他は、Nafion(登録商標)にジルコニウム、水素、りん酸塩をドープした場合に、似たような結果を得た。(P. Costamagnaら, ”Nafion(登録商標) 115/Zirconium Phosphate Composite Membranes for Operation of PEMFCs Above 100℃”, Electrochimica Acta,47,2002,1023−1033、および、Y. Parkら, ”Proton Exchange Nanocomposite Membranes Based on 3−Glycidoxypropyltrimethoxysilane, Silicotungstic Acid and Zirconium Phosphate Hydrate”, Solid State Ionics, 145, 2001, 149−160参照)。しかしながら、Nafion(登録商標)を基礎材として用いるため、これらの膜も、依然、非常に高価である。さらに、これらの添加剤は、燃料電池作動中に、膜構造から浸出する傾向にあり、このことも、その有用性を制限している。
【0015】
PEM燃料電池において、Nafion(登録商標)の技術的制約を解決すべく、様々な代替膜が考えられてきたが、こうした代替膜どれ一つとして、Nafion(登録商標)に置き換わるのに十分な利点を示していない。代替膜の一つは、Nafion(登録商標)あるいはNafion(登録商標)に似た高分子を、多孔質のポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))構造に、組み込んだものがある。こうした膜は、W. L. Gore & Associates, Inc.のGore−Select(登録商標)があり、これは、米国特許第5,635,041号、第5,547,551号および第5,599,614号に書かれている。他の代替膜として、朝日化学工業株式会社の商標名Aciplex(登録商標)と、旭化学株式会社の商標名Flemion(登録商標)が利用可能である。これらのポリフッ化構造のため、これらの代替膜は、Nafion(登録商標)と同様の多数の不足な点、つまり、高温でのイオン伝導性、脱水化あるいは乾燥化およびクロスオーバーを抱えている。
【0016】
プロトン伝導性の高い高分子を組み込んだ膨張率が低く、耐久性ある複合イオン交換膜も、これは、例えば、米国特許第6,248,469号に記載されているが、別個の代替膜となっている。このような膜の大きな弱点は、不活性なサポート(inactive support)の存在によりプロトン伝導材料の断面積が失われることである。
【0017】
また、Nafion(登録商標)膜の代替として、ポリベンジミダゾール高分子(PBI)に燐酸を染み込ませたものも用いられている。これらも、PEM燃料電池のイオン交換膜として用いられ、米国特許第5,716,727号および第6,099,988号に記載されている。これらの膜も、PEM燃料電池が130℃以上の温度で作動可能にするが、Nafion(登録商標)より浸透圧による膨張は低い。しかしながら、濃縮された酸が、電気化学的燃料電池の過程で、水が生成されるにつれて、PBIの空隙から、浸出する。そのため、プロトン伝導性と電気化学的性能が、時間とともに、劇的に低下する。浸出した燐酸は、燃料電池スタックの他の構成部材と反応するおそれもある。
【0018】
最後に、さらに最近の研究では、イオン交換膜の独自な構成や設計も行われてきている。例えば、Chenらは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)に、モンモリロナイトとリチウムトリフレートを組み込ませることで、改良前のPEOに比し、16倍近くも電解質のイオン伝導性を向上させた。Chenらの ”The Novel Polymer Electrolyte Nanocomposite Composed of poly(ethylene oxide), lithium triflate and mineral clay”, Polymer, 42(2001)9763−9769を参照。しかしながら、これら燃料電池のプロトン伝導性は高くなったとはいえ、依然、Nafion(登録商標)を用いた燃料電池の伝導性より、大幅に低い。同様に、Arandaらは、ポリ(エチレンオキシド)とアンモニウムで置換したモンモリロナイトを組み合わせた膜を開発したが、この膜も低いイオン伝導性を示した。
【0019】
前述したことから、安価で、より性能の高いプロトン交換膜を開発する必要がある。また、コスト効率の良い膜製造方法は、さらに必要性が高い。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
本発明は、その一部において、PEM燃料電池のプロトン交換膜として使用される複合電解質膜の発見と、こうした膜の製造方法に、基づくものである。
【0021】
本発明の一局面は、電気化学的燃料電池に用いられる複合電解質に向けられており、これには、(i)無機陽イオン交換材料、(ii)シリカベースの材料、および、(iii)プロトン伝導性高分子ベースの材料を含む。複合電解質には、無機陽イオン交換材料を約0.1重量%〜約99重量%含み、シリカベースの材料を約0重量%〜約70重量%含み、および、プロトン伝導性高分子ベースの材料を約0.1重量%〜約99.9重量%含む。
【0022】
好ましい陽イオン交換材料には、粘土、ゼオライト、含水酸化物、および、無機塩類を含む。例えば、粘土には、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、雲母、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、マガダイト、ケニアイト、ゼオライト、アルミナ、ルチルからなる群から選ばれるアルミノ珪酸塩系の交換材料を含む。粘土は、有機物組織により適合しやすくするために変性(modify)され、その変性には、無機物質の小片板を分離しやすくする剥離も含む。この発明の別の側面としては、電気化学的燃料電池に向けられており、この燃料電池には、(i)アノード、(ii)カソード、(iii)アノード側に燃料を供給する燃料供給手段、(iv)カソード側に酸化剤を供給する酸化剤供給手段、および、(v)アノードとカソードとの間に置かれた複合電解質を含む。複合電解質には、(a)無機陽イオン材料、(b)シリカベースの材料、および、(c)高分子ベースの材料を含む。ここで、複合電解質には、無機陽イオン交換材料を約0.1重量%〜約99重量%含み、シリカベースの材料を約0重量%〜約70重量%含み、および、プロトン伝導性高分子ベースの材料を約0.1重量%〜約99.9重量%含む。
【0023】
さらに、本発明のまた別の局面は、電気化学的燃料電池向けの複合電解質の製造方法にも向けられている。この方法には、(i)(a)無機陽イオン交換材料、(b)シリカベースの材料、(c)高分子ベースの材料、および、(d)溶媒分散剤からなる粘稠液組成物を、基板の表面に塗布することを含む。この方法は、さらに、(i)粘稠液組成物を広げることで、基板上に均一な厚さの層を形成することと、(ii)溶媒が粘稠液組成物から蒸発できるようにして、複合電解質を形成することを含む。複合電解質には、無機陽イオン交換材料を約0.1重量%〜約99重量%含み、シリカベースの材料を約0.1重量%〜約70重量%含み、および、高分子ベースの材料を約0.1重量%〜約99.9重量%含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書の一部に組み込まれ、かつ、構成要素となる添付図面は、本発明の実施形態を幾つか示すもので、これは本文記載と合わせ、本発明の原理を説明するのに役立つ。本文にける便宜のため、全添付図面を通して、同一物あるいは類似要素を参照する場合、同一参照番号を用いている。
【0025】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、低コストな複合膜と、このような膜をコスト効率よく、製造する方法を提供するものである。本発明に基づいて、製造された複合膜を燃料電池の電解質として用いた場合、Nafion(登録商標)に匹敵する特性を示す。実際、本発明に基づいて製造された複合膜は、Nafion(登録商標)に比べ、高温でのプロトン伝導性が高く、機械的強度が大きく、イオン交換能力も高く、メタノール・クロスオーバーが低い。この複合膜は、水素酸素型燃料電池および直接メタノール型燃料電池で、プロトン交換膜として使用するのに適している。
【0026】
複合膜は、従来型の燃料電池の電解質として用いることが可能であると述べられているが、これは、例えば、米国特許第5,248,566号および第5,5477,77号に記載されている。燃料電池は、その性質上、組合せ製品であり、必要な電力量に応じて、燃料電池を連続的に組み合せ、燃料電池スタックを形成することも可能である。
【0027】
その複合膜は、図1に示すような電気化学的燃料電池のプロトン交換膜として、使用するのに適している。電気化学的電池10は、一般に、フローフィールド構造の、黒鉛系のアノード12とカソード16とに挟まれた膜電極接合体(MEA)を含む。
【0028】
外部回路は、任意の従来型電子デバイスあるいは負荷、これらは、米国特許第5,248,566号、第5,272,017号、第5,547,777号および第6,387,556号に記載されているが、これらを含むことができる。多くの場合は、MEA接合体は、既知の技術で密閉されている。
【0029】
作動にあたっては、燃料源から燃料18がアノード12を通じ拡散し、酸化剤源(例えば、タンクまたはアンプル)から酸化剤20がMEAのカソード16を通じ拡散する。MEAでの化学反応は、起電力を発生し、電子は電子負荷によって運ばれる。複合電解質(複合膜)22は、アノード12とカソード16との間でイオンを運び、燃料18と酸化剤20とを分離し、カソードとアノードの間とを絶縁しているので、電子電流は、膜を通じてよりも、外部回路を通じて、運ばれる。水素酸素型燃料電池では、燃料として水素18を、酸化剤として酸素20を用いる。直接メタノール型燃料電池では、燃料は液体メタノールである。
【0030】
この複合電極膜を実施形態とする燃料電池のより詳細な例を図1Aと図1Bに示す。図1Aに示すように、燃料電池10は、アノード構造36とカソード構造38に挟まれた膜電極接合体12を含む。アノード側に、電池は端板14、ガス流れを容易にする開口部22を備えた黒鉛ブロックあるいはバイポーラー板18、ガスケット26、および、アノードの炭素布電流コレクタ30を含む。カソード側に、電池はステンレス端板16、ガス流れを容易にする開口部24を備えた黒鉛ブロックあるいはバイポーラー板20、ガスケット28、および、カソードの炭素布電流コレクタ32を含む。炭素布の材料は、多孔質の伝導性物質からなる。アノード電流コレクタ30とカソード電流コレクタ32は、それぞれリード線31と33とで、外部回路50に繋がっている。外部回路は、任意の従来型電子デバイスあるいは負荷を含むことができ、それらは、米国特許番号第5,248,566号、第5,272,017号、第5,547,777号および第6,387,556号に記載されている。
【0031】
図1Bに示されるように、膜電極接合体(MEA)12は、アノード電極42とカソード電極44とに挟まれたプロトン交換膜46を含む。それぞれの電極は、炭素布あるいは炭素紙のような多孔質の電極材料からなる。プロトン交換膜46は、工夫に富んだ複合電解質から形成され、燃料電池の作動中はイオンを運ぶ役割を果たす。
【0032】
作動中は、燃料源37からの燃料が、アノードを通じて拡散し、酸化剤源39(例えば、タンクまたはアンプル)からの酸化剤がカソードを通じて拡散する。MEAでの化学反応により電気が発生し、これは(アノード電流コレクタ30経由で)外部回路に運ばれる。水素型燃料電池は、燃料として水素を用い、酸化剤として酸素を用いる。直接メタノール型燃料電池においては、燃料は液体メタノールである。
【0033】
本発明の一般的な原理によると、複合電極は(i)無機陽イオン交換材料、(ii)シリカベースの材料、および(iii)高分子ベースの材料を包含する。本発明は、しかしながら、これらの材料の任意の組合せをプロトン交換膜製造に使用することも可能である。
【0034】
好ましい無機陽イオン交換材料には、粘土、ゼオライト、含水酸化物、および、無機塩類を含み、これらについては、Amphlett,C.B.著の”Inorganic Ion Exchangers” (Elsevier Publishing Co.,Amsterdam,1964)、および、Qureshiら著の”Inorganic Ion Exchangers in Chemical Analysys”(CRC Press,Boca Raton,2000)に記載されている。
【0035】
好ましいゼオライトには、輝沸石、方沸石、斜方沸石、フィリップサイト、ZK5、ZK4、モルデン沸石、および、リンデ族(linde family)を含む。好ましい含水酸化物には、水酸化第一鉄、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、および、酸化ベリリウムを含む。好ましい無機塩類には、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、ヒ酸ジルコニウム、燐酸スズ、および、燐酸セリウムを含む。
【0036】
好ましい粘土には、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、雲母、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、マガダイト、ケニアイト、ゼオライト、アルミナ、ルチル、および、その混合物からなる群から選んだアルミノ珪酸塩系の交換材料を含む。これらの粘土は、市販されている。例えば、モンモリロナイトはAldrich Fine Chemicalsから購入可能である。これら粘土は、有機質組織との相性をさらによくするために、適合調整させることもできる。変性には、より効率的に無機物質の小片板を分離しやすくする剥離も含む。
【0037】
典型的には、複合電解質には、無機陽イオン交換材料を約0.1%〜約99%含み、好ましくは、約0.1%〜約30%(ここで、特に文中記載ない限りパーセント表示は、すべて、重量パーセント)含む。無機陽イオン交換材料は、多くの機能を有している。もっとも重要なのは、これらの材料は、イオン交換能力(IEC)向上に寄与する。
【0038】
図2に、モンモリロナイト(MMT)の量を変えた場合と、モンモリロナイトを変性した(mMMT)場合における何種類かの膜のIEC値を示す。モンモリロナイトは、粘土材料の一つに過ぎないが、これは単独で使用されうるし、あるいは、他の添加剤と組み合わせて使用されうる。変性モンモリロナイト(Nanomer 1.24TL,by Nanocor,Inc., Arlington Heights, IL)は、モンモリロナイトをアミノドデカン酸と処理したものからなる。他の無機物の変性剤としては、トリメチルステアリン酸アンモニウム(Nanomer, 1.28E,by Nanocor, Inc., Arlington Heights, IL)、オクタデシルアミン(Nanomer, 1.30E、by Nanocor, Inc., Arlington Heights, IL)、メチルジヒドロキシ水素化獣脂アンモニウム(Nanomer, 1.34TCN,by Nanocor, Inc., Arlington Heights, IL)などを含む。モンモリロナイトの層状構造は強い静電気力によって、隣接する粘土小片板が一緒に保たれて、構成される。個々の小片板のアスペクト比は100〜1500nmのオーダーであるのに対し、スタック化された小片板構造のアスペクト比は、かなり大きい。ミクロンサイズの添加剤が使用された場合には、延性の低下がよく観られるが、ナノサイズ化した小片板は、延性を低下させることなく、マトリックスのモジュラスを増加させうる。したがって、アスペクト比が高い小片板を使用する場合のメリットは、スタックが分離した場合に限って、実現する。IECにおける添加物の効果を調べるため、ベースとなるプロトン伝導性高分子は、いずれの場合も同じである。図2から、モンモリロナイトの比率が上がると、IECも大きくなり、変性モンモリロナイトの量が約3重量%の場合に、最大値となる。IEC値におけるモンモリロナイトの効果は、変性モンモリロナイトの場合の方が、良好である。
【0039】
高分子の組成に添加剤を導入すると、プロトン伝導性も含め、他の特性も変化する。図3に、様々な組成の複合高分子電解質膜を90℃という一定温度で、プロトン伝導性を測定した実験結果である。その同じ膜のプロトン伝導性を測定するために用いた二探針伝導性方法は、MuellerとUrbanによって記載された方法と類似したものである。Muellerらの”Characterization of direct methanol fuel cells by an impedance spectroscopy”,Journal of Power Sources, 75, (1998), 139−143を参照。膜の組成に関係なく、温度が上がるにつれ、プロトン伝導性は向上する。しかしながら、プロトン伝導性は、無機陽イオン交換材料の量を膜構成中により多く含めば、高温での伝導性はより高くなる。高温での伝導性が高ければ、動力学的反応を活発にし、触媒劣化を抑制し、全体としての効率が上がるので、有益であり、さらには、燃料電池システム全体のコスト削減に寄与することができる。図から明らかに、IEC値に基づいて考えると、複合高分子電解質膜で、プロトン伝導性が最大となるのは、図3に示されるように、変性モンモリロナイトを添加剤として3重量%加えた場合である。
【0040】
図4からも、さらに分かるように、無機材料の添加は、膨張をかなり減らす。膜の水膨張を減らすことに加え、ここに開示した無機材料の幾つかを、高分子に組み込むことで、高温での膜の水保持能力が改善する。これは、高温で十分な伝導性を得るために、重要である。モンモリロナイトの添加が有意義であるのは、非常に低い加熱勾配で高温にした場合でも、膜が水を保持するのに寄与することである。この複合電解質膜は、高温での伝導性が高く、水の保持能力を有することから、燃料電池の作動が120℃まで上がった場合でも、耐えれると期待されている。
【0041】
最後に、高分子マトリックス中に、粘土のような無機材料を添加すると、膜の機械的強度を強くなる傾向がある。本発明で開示した無機陽イオン交換材料は、特に、電気化学的電池の温度変化および/または複合電解質膜中の水量変化によって生じる寸法変動の程度を減らすことで、膜との組織的整合性を改善する傾向もある。
【0042】
無機陽イオン交換材料の添加によって、乾湿いずれの状態でも、引っ張り強度が2倍以上になるケースもある。図5は、乾湿両状態において、無機陽イオン交換材料が、引っ張り強度に及ぼす影響を明示したものである。変性モンモリロナイトを高分子マトリックス中に3重量%添加した場合、乾燥時の係数が約10%向上する。複合高分子電解質膜のヤング率(図6)は、約20%増加する。一般的に、変性していないモンモリロナイトを用いた複合高分子膜は、元々の高分子膜(添加剤を加えてない膜)に比べ、引っ張り強度もヤング率も非常に高い。しかしながら、変性モンモリロナイトを添加剤として用いた複合膜は、元々の膜およびモンモリロナイトを用いた複合膜とに比べ、さらに優れた機械的挙動を示す。これは、高いアスペクト比を有するモンモリロナイト粘土の粒子が剥離性のよいことによって、説明される。
【0043】
シリカベースの材料が、膜構造の高分子マトリックスで使用された場合、その利点は多い。これらの利点には、IEC値の増大、プロトン伝導性の向上、親水性材料の膨張抑制、および、機械的強度の向上が含まれる。シリカベースの材料は、複合膜のイオン交換能力を向上させるが、特に、無機陽イオン交換材料の存在下では、顕著である。
【0044】
シリカベースの材料には、シリカ、珪酸塩、および/または珪酸エステルあるいはその任意の組合せのような有機基を含む珪酸塩からなる。好ましいシリカベースの材料には、分散した球状シリカからなるコロイダルシリカを含み、これは、Aldrich Fine ChemicalsからLUDOXという商品名で市販されている。他の好ましいシリカベースの材料としては、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)として知られているシリカベースのバインダーがあり、これもまた、Aldrich Fine Chemicalsから市販されている。典型的には、複合電解質は、約0.1%〜約70%のシリカベース材料を含み、好ましくは、約0.1%〜約30%のシリカベース材料を含む。
【0045】
ある場合には、カオリナイトにシリカベースの材料の添加すると、カオリナイトの陽イオン交換能力が200%向上する。しかしながら、メカニズムに関係なく、ベースとなる高分子にTEOSとカオリナイトとを含む複合電解質膜のプロトン伝導性は、カオリナイトのみを含む膜よりも大きい。確かに、図7に示すように、高分子マトリックス中にTEOSと粘土(モンモリロナイト)を含んだ複合電解質膜のプロトン伝導性は、モンモリロナイトあるいはTEOSの一方のみしか含まない膜よりも大きい。このことから、TEOSは膜の伝導性向上に寄与することが分かる。
【0046】
複合電解質において、高分子ベースの材料には、複合電解質の添加剤として、あるいは、他の構成成分のベースとして、機能を果たす1種あるいは複数の高分子からなるものもある。電気化学的装置の作動条件、特に、PEM燃料電池の作動条件に耐えるべく、化学的不活性、機械的耐久性および延性を十分に満足する高分子であれば、いかなる適切な高分子が用いられてもよい。その一般的な高分子構造は、直鎖、分枝あるいは網目、あるいは、その組合せからなり得る。無機部分のみならず、アリール構造も含み得る。好ましい高分子ベースの材料としては、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンゴム(ABS)、スチレンブタジエン/アクリレート/アセテート高分子ブレンド、エポキシド、および、熱可塑性材料、あるいは、これらの混合物である。好ましい熱可塑性材料には、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアリールエーテルケトン、および、ポリスルホンを含むが、これらに限らない。特に、好ましい高分子は、スルホン酸基、燐酸基、炭酸基、アミド基、イミド基のような官能基を有し、これらは固有のプロトン伝導能力を有する。このように、高分子ベースの材料は、複合電解質膜の機械的強度を向上させるだけでなく、電気化学的電池作動時のプロトン伝導性も向上させる。典型的には、複合電解質には、高分子ベースの材料を約0.1%〜約99.9%含み、好ましくは、約40%〜約99.9%含む。この複合電解質は、Nafion(登録商標)あるいは、これからの派生した材料のようにパーフルオロ化された高分子を必要とはしない。
【0047】
複合電解質は、保存剤、チキソトロピー・粘性調整剤、架橋剤、調節剤、可塑剤、水調整剤、プロトン伝導材料および一般に既知の他の促進剤などを含むこともできる。しかしながら、乾燥複合電解質膜は、基本的に、以下の3つの構成部材、すなわち、(i)無機陽イオン交換材料、(ii)シリカベースの材料、および(iii)高分子ベースの材料からなる。確かに、好ましい実施形態としては、これら3つの構成部材は、複合電解質の固体部分の少なくとも90%を占める。
【0048】
図8は、ある特定の複合膜の実施形態を有する典型的な燃料電池の性能を明示したものである。本発明によるモンモリロナイトを用いた複合膜では、同一の作動条件下で、Nafion(登録商標)よりも(電流密度と電力密度が)優れていることが示された。この例は、2種類の膜、すなわち、複合電解質の特定の実施形態とNafion(登録商標)について、電池の出力性能を比較しているが、本発明による複合電解質を実施形態とする燃料電池によってなされる最高の性能を示しているわけではない点には、注意すべきである。全体として、複合電解質は、0.005S/cmのオーダーのプロトン伝導性を有することが好ましいが、最低でも、100℃未満で、0.05S/cmのオーダーであることがより好ましい。これにより、複合電解質が燃料電池のプロトン交換膜として使用された場合、アノードからカソードへのプロトン伝導が早くなる。
【0049】
従来の膜に比べ、本発明による複合電解質の様々な特性は、製造結果においても、より良い結果を示す。例えば、複合膜は、MEA製造工程にも耐え、燃料電池スタックでの圧力差にも十分に耐える物質的な頑強さにも勝る傾向がある。さらには、より優れた水保持力を有する。このため、プロトン伝導性を落とすことなく、より高温での作動も可能である。最後に、この膜はスタック環境下でも劣化しないため、化学的にも頑強さでも勝っている傾向がある。
【0050】
製造においては、本発明の複合膜は、凝集を最小限に抑えるため、溶媒の中で、膜の構成部材を完全に混ぜることで作成される。水はその溶媒の一つとして用いることが可能である。時々、水のpHを上げると、スラリー中の粒子の安定化、混合の容易化を促進する。さらに、n−メチルピロリジオン、ジメチルスルホン、ジメチルアシジミドおよびジメチルホルムアルデヒドのような溶媒が他にも使用されるが、これらに限られたわけではない。粘性のある溶液が基板の上に注がれ、均一の厚さに平坦化される。溶媒の蒸発後、基板から剥がし、膜は所定のサイズに切られ、使用できる状態となる。好ましい方法としては、構成部材のスラリーがシリコンコーティングされたポリエステル(MYLAR)シートの上に注ぐテープ成形である。スラリーを横切るかたちでドクターブレードが動き、望むべき厚さ、好ましくは約0.5μm〜約500μmの間、より好ましくは約100μm〜約300μmの厚さに調整する。溶媒の蒸発は、温度と湿度とが調整された環境下で行われる。膜の組み立て方法には、その他にも、押し出し成形およびトレー成形を含む。
【0051】
(実施例)
以下に、複合膜の作成とプロトン交換膜のテスト法に関して、述べる。その記述は、網羅的なものではないが、本発明に基づく原理に基づいた複合膜の製造方法について、読者が把握するのに役立つものである。
【0052】
テスト前に、製造方法の一部として、粘土を0、3、5、7、10および15重量%載せた膜をつくるために、モンモリロナイトあるいは変性モンモリロナイト(1.24TL,Nanomer,IL,USA)をスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)様々なサンプルに添加することを含む。細かく砕いた後に、そのSPEEKと粘土の混合物は、電磁攪拌棒を用い、約2時間攪拌して、約10mlの蒸留N,N−ジメチルホルムアルデヒド(DMF)に溶解させる。引き続き、溶解したSPEEKと粘土を含むDMF溶液を、超音波ホモジナイザーを用い、約4分間超音波処理する。その超音波処理された溶液は、溶媒(DMF)が蒸発できるように、攪拌され、加熱される。加熱と攪拌は、溶液が厚くなり、成形整合性が得られるまで、続けられる。高分子および/または複合高分子は溶液は、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、イソプロピルアルコールおよびt−ブチルアルコールなどのジメチルスルホキシドアルコール類に限らず、任意の溶媒を用いて、調整してもよい。次に、その溶液は、真空炉で脱ガスされる。真空処理の後、その結果得られた溶液は清浄なガラスプレートに注がれ、ドクターブレードを用い、約50μm厚のフィルムにキャストされる。キュア手順は以下のとおりである。第一に、キャストされたフィルムは対流式炉で、約70℃で約12時間アニールされる。次に、成形膜は真空炉に、約100℃で約12時間置かれる。約130℃に保たれた炉で、約12時間真空にさらされる。その後、キュアされたフィルムは、ブレードを用い、ガラスプレートから剥がされ、プロトンを得る。フィルムは使用できる状態が整うまで、超純水で保管される。
【0053】
テストにあたっては、前述の方法で作成されたプロトン交換膜では、同じスルホン化レベルで変性されていないSPEEKに比し、機械的性質、水分保持力および導電性が改善していることが示された。さらに、これらの膜は、Nafion(登録商標)に比しても、伝導性が優れ、メタノール・クロスオーバー値が低いので、水素酸素型燃料電池およびDM燃料電池のプロトン交換膜として使用するのに、よく適している。
【0054】
要約すると、複合高分子膜およびこのような膜の製造方法の発見は、既存のエネルギー源の実現性ある代替品としての燃料電池の使用を促進するものである。複合高分子電解質膜は、特に、モンモリロナイトのような添加剤を加えた膜は、より優れた物理化学的特性を示し、それゆえ、より優れた性能の燃料電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、PEM燃料電池の動作を示す。
【図1A】図1Aは、複合電解質の実施形態をともなった典型的な燃料電池を示す。
【図1B】図1Bは、複合電解質の実施形態をともなった典型的な燃料電池を示す。
【図2】図2は、本発明のIEC値を比較したグラフである。
【図3】図3は、本発明の飽和水蒸気中のプロトン伝導性をプロットしたものである。
【図4】図4は、本発明品とNafion(登録商標)の水分保持特性とを、プロットして、比較したものである。
【図5】図5は、本発明の引っ張り強度をプロットしたものである。
【図6】図6は、本発明のヤング率をプロットしたものである。
【図7】図7は、本発明において、様々な温度でのプロトン伝導性をプロットし、比較したものである。
【図8】図8は、Nafion(登録商標)膜と、本発明の原理に基づいて作製された膜とでの電池出力をプロットして、比較したものである。
【図9】記載なし
【図10】記載なし
【図11】記載なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的燃料電池用の複合電解質であって、
(i) 無機陽イオン交換材料と、
(ii) シリカベースの材料と、
(iii)プロトン伝導性高分子ベースの材料とを
含み、
該無機陽イオン交換材料が、該複合電解質の約0.1重量%〜約99重量%を成す、複合電解質。
【請求項2】
前記シリカベースの材料が前記複合電解質の約0.1重量%〜約70重量%を成し、前記プロトン伝導性高分子ベースの材料が該複合電解質の約0.1重量%〜約99.9重量%を成す、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項3】
前記無機陽イオン交換材料が、粘土、ゼオライト、含水酸化物、および、無機塩類からなる群より選ばれる、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項4】
前記粘土は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、雲母、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、マガダイト、ケニアイト、ゼオライト、アルミナ、ルチルからなる群より選ばれるアルミノ珪酸塩ベースの交換材料を含む、請求項3に記載の複合電解質。
【請求項5】
前記粘土は、有機物マトリックスにより適合しやすくするために変性され、粘土の変性の一つは無機物質の小片板を分離しやすくする剥離を含む、請求項3に記載の複合材料。
【請求項6】
前記粘土は、アミノドデカン酸、トリメチルステアリン酸アンモニウム、オクタデシルアミンおよびメチルジヒドロキシ水素化獣脂アンモニウムからなる群から選ばれた変性材料で処理されたモンモリロナイトからなる、変性モンモリロナイトを含む、請求項3に記載の複合電解質。
【請求項7】
前記無機陽イオン交換材料が前記複合電解質の約0.1重量%〜約30重量%を成し、前記シリカベースの材料が該複合電解質の約0.1重量%〜約30重量%を成し、前記プロトン伝導性高分子ベースの材料が該複合電解質の約40重量%〜約99.9重量%を成す、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項8】
前記プロトン伝導性高分子ベースの材料は、直鎖、分枝あるいは網目の形態を有する、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項9】
前記プロトン伝導性高分子ベースの材料は、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンゴム(ABS)、スチレンブタジエン/アクリレート/アセテート高分子ブレンド、エポキシド、および、熱可塑性材料からなる群より選ばれた材料を含む、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項10】
前記熱可塑性材料が、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアリールエーテルケトンおよびポリスルホンからなる群から選ばれる、請求項9に記載の複合電解質。
【請求項11】
前記プロトン伝導性高分子ベースの材料は、スルホン酸基、燐酸基、炭酸基、アミド基およびイミド基からなる群から選ばれた官能基部分を有し、これらの各官能基部分がプロトン伝導能力を有する、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項12】
保存剤、チキソトロピー・粘性調整剤、架橋剤、調節剤、可塑剤、水調整剤およびプロトン伝導性材料からなる群から選ばれた添加剤をさらに含む、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項13】
前記無機陽イオン交換材料、前記シリカベースの材料および前記プロトン伝導性高分子ベースの材料が、前記複合電解質の固体部分の90重量%以上を成す、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項14】
前記複合電解質は、実質的に乾燥状態で測定したとき、本質的には前記無機陽イオン交換材料、前記シリカベースの材料および前記プロトン伝導性高分子ベースの材料からなる、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項15】
前記複合電解質は、約0.05S/cm以上のプロトン伝導性を有する、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項16】
前記シリカベースの材料は、シリカ、珪酸塩および有機部分を有する珪酸塩のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項17】
前記シリカベースの材料は、分散した球状シリカを含むコロイダルシリカあるいはテトラエチルオルトシリケートである、請求項1に記載の複合電解質。
【請求項18】
電気化学的燃料電池であって、
(i) アノードと、
(ii) カソードと、
(iii)該アノードへの燃料供給源と、
(iv) 該カソードへの酸化剤供給源と、
(v) 該アノードと該カソードとの間に置かれ、
(a)無機陽イオン材料と、
(b)シリカベースのバインダーと
(c)高分子ベースのバインダーと
を含む、複合電解質と
を備え、
該無機陽イオン交換材料は、該複合電解質の約0.1重量%〜約99重量%を成す、電気化学的燃料電池。
【請求項19】
前記シリカベースの材料は、前記複合電解質の約0.1重量%〜約70重量%を成し、前記プロトン伝導性高分子ベースの材料は、前記複合電解質の約0.1重量%〜約99.9重量%を成す、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項20】
前記無機陽イオン交換材料は、前記複合電解質の約0.1重量%〜約30重量%を成し、前記シリカベースの材料が前記複合電解質の約0.1重量%〜約30重量%を成し、前記プロトン伝導性高分子ベースの材料が前記複合電解質の約40重量%〜約99.9重量%を成す、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項21】
前記無機陽イオン交換材料は、粘土、ゼオライト、含水酸化物および無機塩類からなる群から選ばれる、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項22】
前記粘土は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、雲母、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、マガダイト、ケニアイト、ゼオライト、アルミナおよびルチルからなる群から選ばれるアルミノ珪酸塩ベースの交換材料を含む、請求項21に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項23】
前記粘土は、有機物組織により適合しやすくするために変性され、粘土の変性の一つには無機マトリックスの小片板を分離しやすくする剥離を含む、請求項21に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項24】
前記粘土は、アミノドデカン酸、トリメチルステアリン酸アンモニウム、オクタデシルアミンおよびメチルジヒドロキシ水素化獣脂アンモニウムからなる群から選ばれた変性材料による処理されたモンモリロナイトからなる、変性モンモリロナイトを含む、請求項21に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項25】
前記高分子ベースの材料が、直鎖、分枝あるいは網目の形態を有する、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項26】
前記高分子ベースの材料は、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンゴム(ABS)、スチレンブタジエン/アクリレート/アセテート高分子ブレンド、エポキシド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアリールエーテルおよびポリスルホンからなる群より選ばれた材料を含む、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項27】
前記無機陽イオン交換材料、前記シリカベースの材料および前記高分子ベースの材料は、前記複合電解質の固体部分の90重量%以上を成す、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項28】
前記複合電解質は、実質的に乾燥状態で測定したとき、本質的には前記無機陽イオン交換材料、前記シリカベースの材料および前記高分子ベースの材料からなる、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項29】
前記複合電解質は、約0.05S/cm以上のプロトン伝導性を有する、請求項18に記載の電気化学的燃料電池。
【請求項30】
電気化学的燃料電池用の複合電解質の製造方法であって、
(i) (a)無機陽イオン交換材料、(b)シリカベースの材料、(c)高分子ベースの材料および(d)溶媒分散剤からなる粘稠液組成物を、基板の表面に塗布することと、
(ii) 該粘稠液組成物を広げることで、基板上に均一な厚さの層を形成することと、
(iii) 該粘稠液組成物から溶媒を蒸発させることで、複合電解質を形成することと
を包含し、
該無機陽イオン交換材料は、該複合電解質の約0.1重量%〜約99重量%を成す、方法。
【請求項31】
前記シリカベースの材料が前記複合電解質の約0.1重量%〜約70重量%を成し、前記高分子ベースの材料が該複合電解質の約0.1重量%〜約99.9重量%を成す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(ii)は、ドクターブレードアセンブリーによる粘稠液組成物を成形することを包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(iii)は、前記粘稠液組成物を熱することを包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記無機陽イオン交換材料が前記複合電解質の約0.1重量%〜約30重量%を成し、前記シリカベースの材料が該複合電解質の約0.1重量%〜約15重量%を成し、前記高分子ベースの材料が該複合電解質の約40重量%〜約99重量%を成す、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記無機陽イオン交換材料は、粘土、ゼオライト、含水酸化物、無機物および塩類からなる群より選ばれる、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記粘土は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、雲母、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、サポナイト、マガダイト、ケニアイト、ゼオライト、アルミナおよびルチルからなる群より選ばれたアルミノ珪酸塩ベースの交換材料を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記粘土は、有機物組織により適合しやすくするために変性され、粘土の変性の一つは無機物質の小片板を分離しやすくする剥離を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記粘土は、アミノドデカン酸、トリメチルステアリン酸アンモニウム、オクタデシルアミンおよびメチルジヒドロキシ水素化獣脂アンモニウムからなる群から選ばれた変性材料で処理されたモンモリロナイトからなる、変性モンモリロナイトを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記高分子ベースの材料は、直鎖、分枝あるいは網目の形態を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記高分子ベースの材料は、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンゴム(ABS)、スチレンブタジエン/アクリレート/アセテート高分子ブレンド、エポキシド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアリールエーテルおよびポリスルホンのうちの1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
前記溶媒分散剤は、水、n−メチルピロリジオン、ジメチルスルホン、ジメチルアシジミド、ジメチルおよびホルムアルデヒドを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
前記無機陽イオン交換材料、前記シリカベースの材料および前記高分子ベースの材料は、前記複合電解質の固体部分の90重量%以上を成す、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
前前記複合電解質は、実質的に乾燥状態で測定したとき、本質的には前記無機陽イオン交換材料、前記シリカベースの材料および前記高分子ベースの材料からなる、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
前記複合電解質は、約0.05S/cm以上のプロトン伝導性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
複合膜を製造する方法であって、
(i)スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)と粘土の混合物を細かく砕き、該混合物を蒸留ジメチルホルムアルデヒド(DMF)に溶解させ、溶液を形成することと、
(ii)該溶液が厚くなり、成形整合性を満たすまで、過熱することと、
(iii)該溶液を真空炉で、脱ガスすることと、
(iv)ドクターブレードを用い、ガラス表面にあるフィルムに該溶液をキャストすることと、
(v)該フィルムをキュアすることと、
(vi)該ガラスから該フィルムを剥がすことと
を包含する、方法。
【請求項46】
前記ステップ(i)における溶解が、電磁攪拌棒を用い、約2時間攪拌してなされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶液が過熱されている間に攪拌され、前記DMFが蒸発する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記フィルムの厚さが約50μm厚である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記キュアすることは、
(a)前記フィルムを対流式炉で、アニールすることと、
(b)所定の温度で所定の時間、真空中で該フィルムを保持することと
を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
該フィルムを、使用する状態が整うまで、超純水中で保管することをさらに包含する、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−503089(P2007−503089A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523816(P2006−523816)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/001960
【国際公開番号】WO2005/020362
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(503047607)ホク サイエンティフィック, インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Hoku Scientific, Inc.
【Fターム(参考)】