説明

プロピレンの生産量を上げるためのスチームクラッカ・ユニットの脱ボトルネッキッング方法

【課題】クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域(I)はガソリン・ストリッパーと、脱メタン塔(I)と、脱エタン塔と、脱プロパン塔(I)と、脱ブタン塔(I)とを有し、脱プロパン塔(I)は脱エタン塔(I)の底部生成物を受ける、運転が高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカユニットの脱ボトルネッキング方法。
【解決手段】(a) 選択水素化ユニット(II)と、(b)軽質オレフィンを作る選択触媒のクラッキング反応装置(II)と、(c) 再蒸留塔および脱プロパン塔(II)を加え、(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流を選択水素化ユニット(II)へ送り、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口でより多く製造されるような条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードにならないように、脱エタン塔(I)の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、(f)脱ブタン塔(I)のオーバーヘッドの粗C4フラクションの一部または全部を選択水素化ユニット(II)に送り、(g) クラッキング反応装置(II)の出口流を再蒸留塔に送ってC6+底部流とC1-C5オーバーヘッドとを作り、オーバーヘッドを脱プロパン塔(II)に送ってC1-C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ最循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンの生産量を上げるためにスチームクラッカ・ユニット(steam cracker unit、水蒸気分解装置)をデボトルネッキッキング (de-bottolenecking、脱閉塞)する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化水素のスチームクラッキング(水蒸気分解、熱分解またはピロリシスともいわれる)は石油化学製品、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンのようなオレフィンおよび芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレンを製造するのに広く使われている非触媒プロセスである。これは基本的に原油の全部またはその留分を蒸留して製造される炭化水素の供給原料、例えばナフサ、ガスオイルまたは原油の他の留分をスチームと混合して行う。このスチームは炭化水素分子の分圧を低く保つための希釈剤の役目をする。スチーム/炭化水素混合物を約540℃〜約480℃に予熱した後、反応域を入れ、そこで炭化水素の熱分解温度まで急速に加熱する。熱分解は触媒無しで行われる。このプロセスはスチーム・クラッカ(高温分解炉)で約10〜約30psigの圧力の反応ゾーンで実行される。高温分解炉はその内部に対流セクションと放射セクションとを有し、対流セクションでは予熱が行われ、クラッキングは放射セクションで起こる。
【0003】
熱分解後に高温分解炉(クラッキングゾーン)から出る排出流は例え1分子当たりの炭素原子数が1〜35個の種々の気体炭化水素を含む。この気体炭化水素は飽和、モノ不飽和、ポリ不飽和、脂肪族、脂環式化合物および/または芳香族化合物等から成る。分解ガスにはかなりの分子状水素(水素)も含まれる。次いで、分解生成物は分画セクションで処理され、プラント生成物として各種の高純度分離流、例えば水素、エチレン、プロピレン、1分子当たり4つの炭素原子を有する混合炭化水素、燃料油および熱分解ガソリンが製造される。これらの分離流は商業的に価値のある生成物にある。
【0004】
得られる各生成物の比率はクラッキング度(severity、クラッキングの厳しさ度)に大きく依存する。メタンが最大の炭化水素生成物であるので、クラッキング度はメタン収率で表すことができる。クラッキング度が低く、フィード油に対するメタン収率が約4または6重量パーセントの場合、大部分の生成物の収率も低い。中程度のクラッキング度すなわちメタン収率が約4または6以上かつ約12または14重量パーセント以下にすると、プロピレンや1,3−ブタジエンのような中間オレフィンの最適収率になる。クラッキング度を高くする、すなわちメタン収率を約12または14重量パーセント以上にすると、プロピレンおよび1,3−ブタジエンの収率が下がり、軽質物質、例えばメタン、水素およびエチレンが増加する。クラッキング度はクラッキングゾーンの温度を上げたり、クラッキングゾーン中での滞留時間を短くすると増加する。
【0005】
一般に、従来のスチーム・クラッカはエチレン生産量が最大となるように設計され、従って、厳しいクラッキング度で運転されており、メタンおよびエチレン生産量が高くなり、プロピレンの生産量は少ない。すなわち、スチーム・クラッカは脱メタン塔(脱メタン塔)および脱エタン塔(脱エタン塔)で軽質最終品(水素およびメタン)およびエチレンがそれぞれ最大分画キャパシティとなるように設計されている。ナフサ流速を同じにしたままスチーム・クラッカのクラッキング度を下げたいという希望がある場合には、メタンおよびエチレンの製造量を減らし、プロピレンおよびC4+の製造量を増加させる。エチレンとプロピレンの合計はほとんど同じである。しかし、低クラッキング度の運転へ変えた時に、プロピレンセクション(脱プロパン塔およびC3スプリッタ)およびC4+セクション(脱ブタン塔(de-butanizer)、脱ペンタン塔(de-脱ペンタン塔)等)がボトルネッキッキング (bottlenecking、閉塞)することが多い。さらに、スチーム・クラッカを低クラッキング度で運転すると、1トンのフィード当たりの炉能率(furnace duty)および炉チューブ全部での圧力降下が低下し、軽質分子の製造量が減る。これによって高クラッキング度運転時の場合と同様な炉能率および圧降下までナフサ流量を増すことができる。これで脱メタン塔および脱エタン塔での軽質最終品(水素およびメタン)およびエチレンの分画キャパシティの最大設計値を再び満たさせることができる。しかし、重質分子(プロピレンおよびC4+)の分画のボトルネッキッキングはさらに悪くなる。このスチーム・クラッカを再変更(revamping)し、プロピレンの生産量を高くする時には低クラッキング度で運転する必要があるが、分画セクショッでC2セクションがオーバアヒサイズとなり、C3−C4セクションがアンダーサイズになる。既存のスチーム・クラッカでは多くの場合、リボイリングおよび凝縮デューティーを最適化し、より有効なトレーを設置することで大部分のセクションは複数回、脱ボトルネッキッキングされている。このことは低クラッキング度に下げた時には主要な改造、リボイラ、凝縮器または蒸留塔全部を新しくする必要があるということを意味している。本発明は上記の再変更(revamping)に関するものである。
【0006】
特許文献1(国際特許第WO 03-099964号公報)にはオレフィン含有炭化水素供給原料を水蒸気分解してスチームクラック後の軽質オレフィンを増加させる方法が記載されている。この方法では一種以上のオレフィンを含む第1の炭化水素供給原料を結晶質シリケートを収容した反応装置に通して供給原料より低分子量のオレフィン含有量を有する中間排出流を作り、この中間の排出流を分留して低級炭素フラクションと高級炭素フラクションとし、高級炭素フラクションを第2の炭化水素供給原料としてスチーム・クラッカに通して水蒸気分解された排出流にする。
【0007】
特許文献2(米国特許公開第US2003-220530号明細書)に記載の炭化水素含有フィードからオレフィンを製造する方法では、オレフィン炭化水素含有フィードを処理プラントに導入して相対的に長い鎖を少なくとも一部含む炭化水素含有フラクションを作り、この炭化水素含有フラクションをオレフィン変換段へ送り、そこで相対的に長い鎖の少なくとも一部を相対的に短い鎖のオレフィンに転化し、この相対的に短い鎖のオレフィンの少なくとも一部を上記処理プラントへ再循環し、オレフィン転化段階をパラフィン/オレフィン分離段階で行ってオレフィンとパラフィン系炭水素を分離し、分離したパラフィンの少なくとも一部を上記処理プラントへ送るか、他の用途のために取り出し、分離したオレフィンの一部をオレフィン転化段階へ送る。
【0008】
特許文献3(米国特許公開第US2007-100182号明細書)には少なくとも一つのワンステップオリゴクラッキングユニットと、FCCガソリン用の選択水素化ユニットおよび水素処理ユニットとを有する、プロピレンと触媒分解ガソリンカットおよび水蒸気分解C4/C5カットから高オクタン価を有する脱硫ガソリンとを同時製造するプロセスが記載されている。
【0009】
しかし、これらの従来技術はスチーム・クラッカの脱ボトルネッキングに関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許第WO 03-099964号公報
【特許文献2】米国特許公開第US2003-220530号明細書
【特許文献3】米国特許公開第US2007-100182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域がガソリン・ストリッパー、脱メタン塔(I)、脱エタン塔(I)、脱プロパン塔(I)および脱ブタン塔(I)を有し、脱プロパン塔(I)は脱エタン塔 (I)の底部からの生成物 (必要に応じてさらにガソリン・ストリッパー(I)の底部からの生成物)を受ける、既存のスチーム・クラッカ・ユニットの運転状態を高クラッキング度から低クラッキング度へ変えた時の脱ボトルネッキング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の脱ボトルネッキング方法は下記段階から成る:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔(rerun)および脱プロパン塔(II)を加え、
(d) ガソリンストリッパー(I)の底部流の一部または全部を上記選択水素化ユニット(II)へ送り、その後に低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で増えるのに有効な条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱エタン塔(I)の底部流の一部を、脱プロパン塔(I)をオーバーロードしないように、脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッド粗C4フラクションの一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)の出口流を再蒸留塔へ送って、C6+底部流とC1−C5オーバーヘッドを作り、オーバーヘッドを脱プロパン塔(II)へ送ってC1−C3およびC4+底部流を作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へリサイクルし、必要に応じてC4+底部流の一部を取り出す。
【0013】
より正確には、本発明は、クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域はガソリン・ストリッパー、脱メタン塔(I)、脱エタン塔(I)、脱プロパン塔(I)および脱ブタン塔(I)を有する、運転状態を高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカ・ユニットの脱ボトルネッキング方法を提供する。本発明では脱エタン塔(I)は、
- エチレン、エタンおよび任意成分の燃料ガスを含むオーバーヘッド流と、
- 脱プロパン塔(I)へ送られるC3+から成る底部流と
を作り、脱プロパン塔(I)は脱エタン塔(I)の底部からの生成物と、必要に応じてガソリン・ストリッパー(I)の底部からの生成物とを受け、脱プロパン塔(I)は、
− プロパンおよびプロピレンを製造するMAPD除去ユニット(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− オーバーヘッド粗C4フラクションと底部C5+フラクションとを製造する脱ブタン塔(I)へ送られるC4+から成る底部流と
を製造し、下記の段階を有する:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔および脱プロパン塔(II)を加え、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で製造されるような条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードしないように、脱エタン塔(I)の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要な場合には、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッドに粗C4フラクションの一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)の出口流を再蒸留塔へ送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、オーバーヘッドをC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作る脱プロパン塔(II)へ送って、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ再循環し、必要に応じてC4+底部流の一部を取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】フロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図。
【図2】オレフィンクラッキング法と相乗一体化し、従ってプロピレンの生産量を最大にすることによって低クラッキング度条件下で運転可能な、フロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図。
【図3】[図1]と同様なフロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図。
【図4】オレフィンクラッキング法と相乗一体化し、従ってプロピレンの生産量を最大にすることによって低クラッキング度条件下で運転可能な、[図2]と同様なフロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図。
【図5】フロントエンド脱エタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図。
【図6】オレフィンクラッキング法と相乗一体化し、従ってプロピレンの生産量を最大にすることによって低クラッキング度条件下で運転可能な、フロントエンド脱エタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施例(フロントエンド脱メタン塔)では、本発明の運転状態を高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカ・ユニットの脱ボトルネッキング方法は、クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域はガソリン・ストリッパーを有し、その後に第1脱メタン塔(I)を有する分留帯域を有する(フロントエンド脱メタン塔)配置を有し、それに続いて脱エタン塔(I)、脱プロパン塔(I)および脱ブタン塔(I)があり、上記脱エタン塔(I)は、
− バックエンドアセチレン・コンバータ(I)を介してエチレンおよびエタンを分離するためのC2スプリッタ(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− 脱プロパン塔(I)へ送られるC3+から成る底部流と
を作り、脱プロパン塔(I)は、脱エタン塔(I)の底部生成物を受け(必要に応じてガソリン・ストリッパー(I)の底部生成物をさらに受け)、脱プロパン塔(I)は、
− プロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPD除去ユニット(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− オーバーヘッド粗C4フラクションと底部C5+フラクションとを作る脱ブタン塔(I)へ送られるC4+から成る底部流と、
を作り、必要な場合には、その後にC5+フラクションを−脱ペンタン塔(I)へ送ってオーバーヘッドC5フラクションと底部C6+フラクションとを作り、
さらに、下記(a)〜(h)の段階を有する:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔と、脱プロパン塔(II)と、脱エタン塔(II)とを加え、必要に応じて脱メタン塔(II)を加え、必要に応じてMAPD転化ユニット(II)を加え、必要に応じてC3スプリッタ(II)を加えて、プロパンおよびプロピレンを分離し、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後に、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で製造されるような条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードしないように、脱エタン塔 (I) の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッド粗C4フラクションの一部または全部または脱ペンタン塔(I)のオーバーヘッドC5フラクションの一部または全部または輸入されたオレフィン性C4+炭化水素または上記の任意の混合物を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)に出口流を再蒸留塔へ送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、このオーバーヘッドを脱プロパン塔(II)へ送ってC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ最循環し、必要に応じてC4+底部流の一部を取り出し、
(h) 脱プロパン塔(II)のC1−C3オーバーヘッドを脱エタン塔(II)へ送って下記を作る:
- 必要に応じてプロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPDコンバータ(II)へ送られる底部C3流(必要に応じてC3スプリッタ(II)へ送ってオーバーヘッドとして濃縮プロピレン流れを作り、ボトムとしてプロパン・リッチ生成物を作る)、
- 必要に応じて脱メタン塔(II)へ送られるオーバーヘッド燃料ガスとC2底部流(必要に応じてアセチレン・コンバータへ送る)とを作るオーバーヘッド流。
【0016】
本発明の第2実施例(フロントエンド脱エタン塔)では、本発明の運転状態を高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカ・ユニットの脱ボトルネッキング方法は、クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域脱はガソリン・ストリッパーを有し、その後に第1脱エタン塔(I)を有する(フロントエンド脱エタン塔)配置を有するし、それに続いて脱メタン塔(I)、脱プロパン塔(I)および脱ブタン塔(I)を有し、脱エタン塔は、
− フロントエンドアセチレン・コンバータ(I)、次いで脱メタン塔(I)へ送られるオーバーヘッド流(脱メタン塔(I)は燃料ガスオーバーヘッド生成流とC2ボトム生成物とを作り、C2ボトム生成物はC2スプリッタ(I)と送られてエチレンとエタンを分離する)
− 脱プロパン塔(I)へ送られるC3+から成る底部流と
を作り、脱プロパン塔(I)は、脱エタン塔(I)の底部生成物を受け、必要に応じてガソリン・ストリッパー(I)の底部生成物を受け、脱プロパン塔(I)は、
− プロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPD除去ユニット(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− オーバーヘッド粗C4フラクションと底部C5+フラクションとを作る脱ブタン塔(I)へ送られるC4+から成る底部流と、
を作り、必要な場合には、その後にC5+フラクションを−脱ペンタン塔(I)へ送ってオーバーヘッドC5フラクションと底部C6+フラクションとを作り、
さらに、下記(a)〜(h)の段階を有する:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔と、脱プロパン塔(II)と、脱エタン塔(II)とを加え、必要に応じて脱メタン塔(II)を加え、必要に応じてMAPD転化ユニット(II)を加え、必要に応じてC3スプリッタ(II)を加えて、プロパンおよびプロピレンを分離し、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後に、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で製造されるような条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードしないように、脱エタン塔 (I) の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッド粗C4フラクションの一部または全部または脱ペンタン塔(I)のオーバーヘッドC5フラクションの一部または全部または輸入されたオレフィン性C4+炭化水素または上記の任意の混合物を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)に出口流を再蒸留塔へ送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、このオーバーヘッドを脱プロパン塔(II)へ送ってC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ最循環し、必要に応じてC4+底部流の一部を取り出し、
(h) 脱プロパン塔(II)のC1−C3オーバーヘッドを脱エタン塔(II)へ送って下記を作る:
- 必要に応じてプロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPDコンバータ(II)へ送られる底部C3流(必要に応じてC3スプリッタ(II)へ送ってオーバーヘッドとして濃縮プロピレン流れを作り、ボトムとしてプロパン・リッチ生成物を作る)、
- 必要に応じて脱メタン塔(II)へ送られるオーバーヘッド燃料ガスとC2底部流(必要に応じてアセチレン・コンバータへ送る)とを作るオーバーヘッド流。
【0017】
本発明の特定実施例では、MAPD除去ユニット(I)はMAPDコンバータから成る。このMAPDコンバータはMAPD(メチルアセチレンおよびプロパジエン)を主としてプロピレンへ選択的に変換する気相または液相の触媒反応装置にすることができる。このMAPDコンバータは一段階反応装置または中間冷却および水素添加を含む2段反応器にすることができる。
【0018】
特定実施例では、MAPD除去ユニット(I)は脱プロパン塔(I) のオーバーヘッドが供給されるMAPD蒸留塔と、MAPDコンバータとで構成される。MAPD蒸留塔はカラムへの供給物より少ないMAPDを含む実質的にC3炭化水素から成るC3塔頂留出物と、MAPDと他のC4+炭化水素(一般に、テトレン(tetrene)と呼ばれる)の高濃度化物から成るボトムとを作る。MAPD蒸留塔のオーバーヘッドはMAPDコンバータに送られ、そこでMAPD(メチルアセチレンンおよびプロパジエン)は主としてプロピレンに選択変換され、プロパンおよびプロピレン流が作られる。MAPD蒸留塔のボトムの全部または一部は必要に応じて脱プロパン塔(II)へ送られる。MAPDコンバータは気相または液状の接触コンバータにすることができる。
【0019】
本発明の特殊実施例では、MAPD除去ユニット(I)は触媒MAPD蒸留塔(I)と、必要に応じて用いるMAPDコンバータ(I)とにすることができる。触媒MAPD蒸留塔(I)は蒸留塔内に配置された選択水素化触媒を有し、脱プロパン塔(I)のオーバーヘッドが送られる。触媒MAPD蒸留塔(I)ではMAPD(メチルアセチレンンおよびプロパジエン)とC4+ジエン類およびとアルキンの少なくとも一部が対応するオレフィンに水素化される。この触媒MAPD蒸留塔(I)ではセチレンンおよびジエン炭化水素が対応するオレフィンに選択的に変換されるのが有利である。実質的にC3炭化水素から成る触媒MAPD蒸留塔(I)のオーバーヘッドを仕上げのMAPDコンバータ(I)へ送ってプロパンおよびプロピレンを製造することもできる。仕上げのMAPDコンバータ(I)では残ったMAPDをプロピレンに変換する。実質的にC4炭化水素から成る触媒MAPD蒸留塔(I)の底部流の全部または一部を必要に応じて脱プロパン塔(II)または選択水素化ユニット(II)へ送ることもできる。仕上げのMAPDコンバータ(I)は気相または液状の接触コンバータにすることができる。
【0020】
本発明の特定実施例では脱プロパン塔(I)は触媒脱プロパン塔(I)である。この触媒脱プロパン塔(I)にはガソリン・ストリッパー(I)のボトムが供給され、必要に応じて脱エタン塔(I)のボトム生成物が供給され、蒸留塔内に配置された選択水素化触媒を有し、実質的にC3炭化水素から成る塔頂留出物と実質的にC4+炭化水素から成るボトムとが作られる。触媒脱プロパン塔(I)では、MAPD(メチルアセチレンンおよびプロパジエン)とびC4+ジエン類およびアルキンの少なくとも一部が対応するオレフィンに水素化される。触媒脱プロパン塔(I)ではアセチレンンとジエン炭化水素が対応するオレフィンに選択的に変換されるのが有利である。触媒脱プロパン塔(I)のC3オーバーヘッドを仕上げのMAPDコンバータ(I)へ送ってプロパンおよびプロピレンを製造することもできる。触媒脱プロパン塔(I)のボトムは脱ブタン塔(I)へ送られ、必要に応じてその一部を脱プロパン塔(II)および/または選択水素化ユニット(II)へ送る。仕上げのMAPDコンバータ(I)は気相または液相の接触コンバータにすることができる。
【0021】
上記アセチレン・コンバータ(I)は二段階コンバータにするのが有利である。最初の段階でアセチレンの約50〜95%まで変換するのが有利である。段階(h)で脱メタン塔(II)のC2底部流をアセチレンコンバータ(I)の最初のステージの入口へ送るのが有利である。
【0022】
水蒸気分解(スチームクラッキング)は公知のプロセスである。スチームクラッカーは複雑な工業設備であるが、3つの主要な帯域(ゾーン)に分割でき、各帯域は極めて特定の機能を有する複数タイプの機器を有している:(i)ホット帯域は熱分解炉またはクラッキング炉、急冷熱交換器、急冷リング、ホット分離カラム列を含み、圧縮帯域(ii)は分離したガスの圧縮機、精製、分離カラム、乾燥装置を含み、(iii)コールド帯域はコールドボックス、脱メタン塔、コールド分離列の分留カラム、C2、C3コンバータ、ガソリン水素化反応装置を含む。炭化水素のクラッキングは直接焼却ヒータ(炉)中の管状反応装置で実行される。各種寸法および形状のチューブを使用でき、例えばコイル状チューブ、U字管または直管のレイアウトが使用できる。チューブ直径は1〜4インチである。各炉は廃熱が再循環される対流帯域と熱分解を行われる放射帯域とから成る。供給原料とスチームとの混合物が対流帯域で約530〜650℃に予熱されるか、供給原料を対流帯域で予熱し、その後に希釈スチームと混合して、放射帯域へ送る。放射帯域では供給原料のタイプと所望クラッキング度とに応じた750〜950℃の温度、0.05〜0.5秒の滞留時間で熱分解が行われる。スチーム/供給原料の重量比は0.2〜1.0kg/kg、好ましくは0.3〜0.5kg/kgである。スチームクラッキング炉のクラッキング度は温度、滞留時間、全圧および炭化水素の分圧を調節して変えることができる。一般に、温度を上げるとエチレン収率が増加し、プロピレン収率は低下する。高温ではプロピレンがクラッキングされてエチレン収率が良くなる。クラッキング度を増加させると選択性が下り、C3=/C2=比が減少する。従って、高クラッキング度での運転はエチレンの生産に有利であり、低クラッキング度での運転はプロピレン生産に有利である。コイル中でのフィードの滞留時間と温度とを一緒に考える必要がある。許容最大範囲のクラッキング度はコークス生成速度で決まる。運転圧力を下げると軽質オレフィンの生成が容易になり、コークスの生成も減る。可能な下限運転圧力は(i) 一連の分解ガス圧縮機セクションでのコイル出口圧力をできるだけ大気圧に近づけ、(ii) スチームで希釈して炭化水素の圧力を下げる(これはコークス生成速度に実質的に影響する)ことで達成される。スチーム/フィード比はコークス生成を制限するのに十分なレベルに維持しなければならない。
【0023】
高温分解炉からの排出流は未反応の供給原料、所望オレフィン(主にエチレンおよびプロピレン)、水素、メタン、C4混合物(主にイソブチレンおよびブタジエン)、熱分解ガソリンを含む(C6〜C8範囲の芳香族)、エタン、プロパン、ジ−オレフィン(アセチレン、メチルアセチレンン、メチルアセチレン)および重油の温度領域で沸騰する重質炭化水素を含む。この分離ガスを338〜510℃に急速に冷却して、熱分解反応を止め、逐次反応を最少にし、並行輸送ライン熱交換器(TLE)中で高圧スチームを発生させてガス中の顕熱を回収する。ガスの供給原料をベースにしたプラントの場合には、TLE−冷却ガス流は直接水冷タワーへ送られ、そこでガスは再循環水で冷却される。液体の供給原料をベースにしたプラント場合には、水冷タワーの前に予備分留塔で分離ガスから燃料油留分を凝縮、分離する。両方のタイプのプラントで、希釈スチーおよび分離ガス中の重質ガソリンの主要部分は水冷却タワーで35〜40℃で凝縮される。次いで、水冷却ガスは4段または5段で約25〜35バーに圧縮される。各圧縮段の間で凝縮した水と軽質ガソリンが除去され、分離ガスは苛性ソーダ溶液または再生アミン溶液で洗浄され、さらに苛性ソーダで洗って酸性ガス(C02、H2SおよびS02)を除去する。圧縮された分離ガスは乾燥剤で乾燥され、後の生成物分画:フロントエンド脱メタン、フロントエンド脱プロパンまたはフロントエンド脱エタンのための低温度までプロピレンおよびエチレン冷媒で冷却される。
【0024】
フロントエンド脱メタン配置の場合には、先ず最初に脱メタン塔で30バールで廃ガス(CO、H2およびCH4)がC2+成分から分離される。ボトム生成物は脱エタン塔へ流れ、その塔頂留出物はアセチレン水素化ユニットで処理され、さらにC2分解塔で分留される。脱エタン塔のボトムは脱プロパン塔へ行く。その塔頂留出物はメチルアセチレンン/メチルアセチレン水素化ユニットで処理され、さらにC3分解塔で分留される。脱プロパン塔のボトムは脱ブタンへ行き、そこで熱分解ガソリン留分からC4が分離される。この遊離シーケンスでは水素化に必要なH2は外からC2流およびC3流に加えられる。必要なH2は一般に残留COのメタネーションによる廃ガスから回収され、必要に応じてさらに圧力振動吸着装置で濃縮される。
【0025】
フロントエンド脱プロパン配置は一般にガス供給原料ベースのスチームクラッカーで使われる。この配置では第3圧縮段の終わりに酸性ガスを除去した後に、C3成分および炉成分が脱プロパン塔によってC4+から分離される。脱プロパン塔のC3−オーバーヘッドは第4段で約30〜35バールに圧縮される。C3−カット中のアセチレンおよび/またはジエンはその流れ中に残って存在しているH2によって触媒水素化される。水素化後、軽質ガス流は脱メタン化、脱エタン化され、C2分離される。脱エタン塔のボトムは必要に応じてC3分離される。変形配置ではC3−オーバーヘッドが最初に脱エタン化され、上記のようにC2−処理され、C3はC3アセチレン/ジエン水素化装置で処理され、C3分離される。C4+脱プロパン塔のボトムは脱ブタン化されてC4が熱分解ガソリンから分離される。
【0026】
フロントエンド脱エタン分離配置には2つの変形例がある。生成物の分離シーケンスはフロントエンド脱メタンおよび第3圧縮段へのフロントエンド脱プロパン分離シーケンスと同一である。ガスは最初に約27バールで脱エタン化されてC3+成分からC2−成分が分離される。オーバーヘッドC2−流は接触水素化装置に流れ、そこで流れ中のアセチレンが選択水素化される。水素化された流れは低温に冷却され、約9〜10バールの低圧で脱メタンされ、廃ガスを分離する。C2底部流は分離してオーバーヘッドのエチレン生成物とリサイクル用のエタン底部流とを製造する。それと平行して、フロントエンド脱エタン塔からのC3+底部流を脱プロパン塔で処理して生成物をさらに分離し、その塔頂留出物をメチルアセチレンン/メチルアセチレン水素化ユニットで処理し、さらにC3分解塔で分留する。脱プロパン塔のボトムを脱ブタンへ送り、そこでC4を熱分解ガソリン留分から分離する。フロントエンド脱エタン遊離配置のより最近の変形例では分離ガスが3回の圧縮段階後に苛性アルカリで洗浄され、予備冷却され、最高圧力約16〜18バールで脱エタン化される。オーバーヘッド流(C2−)は次の段階手さらに約35〜37バールに圧縮されてから接触コンバータへ送られ、その流れに残っている水素によってアセチレンが水素化される。この水素化後、流れは冷却され、脱メタン化されてC2底部流から廃ガスが分離される。C2は、カラムの還流液を縮合するためにプロピレン冷媒を使用する高圧C2スプリッタで従来一般に使用されている19〜24バールの代わりに、9〜10バールの圧力で運転される低圧カラムで分離される。この低圧C2スプリッタ分離シェーマの場合には、オーバーヘッド冷却、圧縮システムはヒートポンプ、開サイクルエチレン冷却回路に一体化される。このエチレン冷却再循環システムの精製流はエチレン生成物である。
【0027】
2スプリッタのボトム生成物のエタンは水蒸気分解装置へ再循環される。プロパンはその市場価格に応じて再クラッキングできる。リサイクル炉の一つが脱コークス処理されている間にプラントが連続運転できるようにするために、再循環水蒸気分解は一つまたは二つの専用高温分解炉で行う。
【0028】
上記配置には他の多くの変形例が存在する。特に、所望されないアセチレン/ジエンはエチレンカットおよびプロピレンカットから除去される。
【0029】
クラッキング反応装置(II)も公知のOCP(オレフィン変換プロセス)反応装置である(「OCPプロセス」という)。この記反応装置(II)は任意の触媒を含む。軽質オレフィンに選択的な場合、触媒(A1)という。このOCPプロセス自体は公知であり、下記文献に記載されており、これらとの内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献4】欧州特許第EP 1036133号公報
【特許文献5】欧州特許第EP 1035915号公報
【特許文献6】欧州特許第EP 1036134号公報
【特許文献7】欧州特許第EP 1036135号公報
【特許文献8】欧州特許第EP 1036136号公報
【特許文献9】欧州特許第EP 1036138号公報
【特許文献10】欧州特許第EP 1036137号公報
【特許文献11】欧州特許第EP 1036139号公報
【特許文献12】欧州特許第EP 1194502号公報
【特許文献13】欧州特許第EP 1190015号公報
【特許文献14】欧州特許第EP 1 194500号公報
【特許文献15】欧州特許第EP 1363983号公報
【特許文献16】国際特許第WO 2009/016156号公報
【0030】
本発明の最初の有利な実施例では、触媒(A1)は構造中に少なくとも一つの10員環を有する構成要素を含む結晶質シリケートであるのが有利である。その例としては珪素、アルミニウム、酸素および任意成分の硼素から成るミクロポーラスな原料のファミリー、MFI(ZSM−5、シリケート−1、ボラライトC、TS−1)、MEL(ZSM−11、シリカライト−2、ボラライトD、TS−2、SSZ−46)、FER(フェリエライト、FU−9、ZSM−35)、MTT(ZSM−23)、MWW(MCM−22、PSH−3、ITQ−1、MCM−49)、TON(ZSM−22、テータ−1、NU−10)、EUO、ZSM−50、EU−1、MFS(ZSM−57)およびZSM−48が挙げられる。最初の実施例の触媒(Al)はSi/Al比が少なくとも約100である結晶質シリケートまたは脱アルミ化された結晶質シリケートであるのが有利である。
【0031】
Si/Al比が少なくとも約100である結晶質シリケートはMFIおよびMELの中から選択するのが有利である。Si/Al比が少なくとも約100である結晶質シリケートおよび脱アルミ化された結晶質シリケートは基本的にH−形である。これはマイナー部分(約50%以下)が金属補償イオン(例えばNa、Mg、Ca、La、Ni、Ce、Zn)を含むことができるということを意味する。
【0032】
脱アルミ化された結晶質シリケートは約10重量%のアルミニウムが除去されたものであるのが有利である。この脱アルミ化はスチーミング(蒸煮法)で作るのが有利であり、必要に応じてさらにリーチングする。Si/Al比が少なくとも約100である結晶質シリケートはそれを合成で作るか、少なくとも約100のSi/Al比が得られるような条件下で結晶質シリケートを脱アルミ化して作ることができる。脱アルミ化はスチーミングで行うのが有利であり、必要に応じてさらにリーチングする。
【0033】
「MFI」および「MEL」の3文字表示はそれぞれInternational Zeolite Associationの構造委員会が決めた特定タイプの結晶質シリケートを表している。MFIタイプの結晶質シリケートの例は合成ゼオライトZSM−5およびシリカライトと、当業者に公知の他のMFIタイプの結晶質シリケートである。MELファミリーの結晶質シリケートの例はゼオライトZSM−11と当業者に公知の他のMELタイプの結晶質シリケートである。その他の例はInternational Zeolite Association(Atlas of zeolite structure type, 1987, Butterworths)に記載のボラライト(Boralite) Dおよびシリカライト(silicalite)-2である。好ましい結晶質シリケートは10個の酸素環で規定される気孔またはチャネルを有し且つ珪素/アルミニウム原子比が高いものである。
【0034】
結晶質シリケートは酸素イオンを分け合って互いにリンクしたXO4四面体骨格をベースにしたミクロポーラスな結晶質無機ポリマーである。ここでXは三価(例えばAl、B等)か四価(例えばGe、Si等)にすることができる。結晶質シリケートの結晶構造は四面体単位のネットワークを結付けている特定の規則によって定義される。結晶シリケートの気孔の開口寸法は四面体単位の数または気孔を形成するのに必要な酸素原子と気孔中に存在するカチオンの種類とによって決まり、大きな内部表面積、一つ以上の孤立サイズを有する一様な気孔、イオン交換能、優れた熱的安定性および有機化合物の吸着能の特定の組合せを有する。結晶質シリケートの気孔の寸法は多くの実際の重要な有機分子の寸法と同じであるので、反応物および生成物の出入りを制御する特定の触媒反応選択性を有する。MFI構造を有する結晶質シリケートは下記の気孔直径を有する二方向交差気孔系を有する:[010]に沿った真っ直ぐなチャネル0.53-0.56ナノメートルおよび[100]に沿った正弦波チャネル0.51-0.55ナノメートル。MEL構造を有する結晶質シリケートは0.53-0.54ナノメートルの気孔直径を有する[100]に沿った真っ直ぐなチャネルを有する二方向交差気孔系を有する。
【0035】
本明細書で「珪素/アルミニウム原子比」または「珪素/アルミニウム比」という用語は結晶質シリケートの骨格のSi/Al原子比を意味する。気孔中に含まれることがあるアモルファスSi/Al種は骨格の一部ではない。下記の脱アルミ化で説明するように、アモルファスAlが気孔中に残るが、それは全Si/Al原子比からは除かれる。この全材料にはバインダのSiおよびAlの化学種は含まれない。
【0036】
本発明の特定実施例では、触媒は少なくとも約100、好ましくは約150以上、さらに好ましくは約200以上の高い珪素/アルミニウム原子の比を有する、相対的に低い酸度を有す触媒であるのが好ましい。触媒の酸度は触媒をアムモニアと接触させ、その後、触媒の酸部位に吸着されたアンモニウム基を高温度で脱着させて示差熱重量分析で測定する、触媒上に残ったアムモニアの量で決定できる。珪素/アルミニウム(Si/Al)比は約100〜約1000、好ましくは約200〜約1000であるのが好ましい。そうした触媒は公知である。
【0037】
本発明の特定実施例では結晶質シリケートをスチーム処理して結晶シリケート骨格からアルミニウムを除去する。このスチーム処理は高温度、好ましくは425〜870℃、好ましくは540〜815℃の温度で、大気圧および13〜200kPaの水の分圧で実施される。スチーム処理は5〜100%のスチームを含む大気中で実施するのが好ましい。このスチーム雰囲気は5〜100容積%のスチームと、0〜95容積%の不活性ガス(好ましくは窒素)を含むのが好ましい。より好ましい空気は72容積%のスチームと28容積%の窒素を含む、すなわち1気圧で72kPaのスチームから成るのが好ましい。スチーム処理時間は1時間〜200時間、好ましくは20時間〜100時間実行するのが好ましい。既に述べたように、スチーム処理では結晶シリケート骨格の四面体アルミニウムの量が減り、アルミナが形成される。
【0038】
より特定な実施例では、触媒をスチーム中で加熱して結晶シリケート骨格からアルミニウムを除去し、アルミニウムの錯化剤を用いて触媒からアルミニウムを抽出することで結晶シリケート触媒の脱アルミ化を行う。アルミニウムの錯化剤はスチーム段階で気孔中に残ったアルミナを骨格の気孔から除去し、それによって触媒の珪素/アルミニウム原子比を増加させる。本発明の触媒プロセスで用いられる高珪素/アルミニウム原子比を有する触媒は市販の結晶質シリケートからアルミニウムを除去することで製造される。例えば、一般に市販のシリカライトの珪素/アルミニウム原子比は約120である。本発明では市販の結晶質シリケートをスチームプロセスで改質して、結晶シリケート骨格の四面体のアルミニウムを減少させ、アルミニウム原子をアモルファスアルミナの形のオクタヘドラル・アルミニウムへ変換させる。スチーミング段階でアルミニウム原子は結晶シリケート骨格構造から化学的に除去され、アルミナ粒子を形成する。この粒子は骨格の気孔またはチャネルの一部を塞ぐことになり、それは本発明の脱水プロセスを阻害することにある。従って、スチーミング段階後に結晶質シリケートに抽出段階に送ってアモルファス・アルミナを気孔から除去して、少なくとも部分的にミクロ孔容積を回復させる。リーチング(溶出、浸出)段階では、水溶性アルミニウム錯体を形成させ、気孔から非晶形アルミナを物理的に除去することで結晶質シリケートの全脱アルミ化効果が得られる。結晶シリケート骨格からアルミニウムを除去し、形成されたアルミナを気孔から除去するこの方法は、触媒の全ての気孔表面を介して実質的に均一な脱アルミ化を行うためのものである。これによって触媒の酸度を減らすことができる。この酸度の低下は結晶シリケート骨格中に区画された気孔を介して実質的に均一に起こる。スチーム処理後の抽出プロセスはリーチングによって触媒を脱アルミ化するために行う。アルミナと可溶性複合体を形成することができる錯化剤を用いて結晶質シリケートからアルミニウムを抽出するのが好ましい。この錯化剤は水溶液であるのが好ましい。
【0039】
錯化剤は有機酸、例えばクエン酸、蟻酸、蓚酸、酒石酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、マイレン酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチレンジアミントリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸またはこれらの酸塩(例えばナトリウム塩)またはこれらの酸または塩の少なくとも2つの混合物にするのが好ましい。この錯化剤は無機酸、例えば硝酸、ハロゲン酸、硫酸、リン酸またはこれらの酸の塩またはこれらの酸または塩の混合物から成ることもできる。また、錯化剤は上記有機および無機の酸またはその対応塩の混合物から成ることもできる。アルミニウム用錯化剤はアルミニウムと水に可溶な錯体を形成し、スチーム処理時に結晶質シリケートから形成されるアルミナを除去するのが好ましい。特に好ましい錯化剤はアミンであり、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩(特に、ナトリウム塩)から成るのが好ましい。好ましい実施例ではこのプロセスによって骨格の珪素/アルミニウム比の値は約150〜1000まで増加し、好ましくは少なくとも200まで増加する。また、リーチングをHC1のような強酸で行うこともできる。
【0040】
アルミニウムリーチング段階後に、結晶質シリケートを洗浄し、例えば水で洗浄し、さらに乾燥、好ましくは高温度、例えば約110℃で乾燥することができる。
【0041】
本発明の触媒製造時にアルカリまたはアルカリ土類金属を使用した場合には、モレキュラーシーブをイオン交換段階に送ることができる。一般に、このイオン交換はアンモニウム塩または無機酸を用いた水溶液で行う。
【0042】
脱アルミ化段階後に、触媒を大気圧で、例えば400〜800℃の温度で1〜10時間か焼する。
【0043】
本発明の他の実施例では、結晶シリケート触媒はバインダ、好ましくは無機結合剤と混合され、所望形状、例えばペレットにされる。バインダは本発明の脱水プロセスで使用する温度、その他の条件に耐久性のあるものが選択される。バインダはクレー、シリカ、金属シリケート、Zr02のような金属酸化物および/または金属またはシリカと金属酸化物との混合物を含むゲルの中から選択される無機材料である。バインダはアルミナを含まないのが好ましい。結晶質シリケートと一緒に使用するバインダ自体が触媒活性作用を有する場合には、それは触媒の転化率および/または選択性を変えることになる。不活性なバインダ材料は転化率を制御するための希釈剤として利用でき、反応速度を制御するために他の手段を用いずに生成物を経済的に得ることができる。耐破断性に優れた触媒を用いるのが望ましい。これは商業的に使用する触媒が粉末に分解されるのを防止するのに望まし。一般にクレーまたは酸化物バインダは触媒の破壊強度を改良するためにだけ使われている。本発明触媒に特に好ましいバインダはシリカから成る。粉末結晶シリケート原料とバインダの無機酸化物マトリックスとの相対比は広範囲に変えることができる。一般に、バインダの含有量は複合触媒の重量に対して5〜95重量%、より一般的には20〜50重量%である。結晶質シリケートと無機酸化物バインダとの混合物はホーミュレート(成形)された結晶質シリケートと呼ばれる。触媒とバインダとの混合では触媒がペレットに成形されるか、他の形状に押出し成形されるか、球状または噴霧乾燥粉末に形成できる。一般に、バインダと結晶シリケート触媒は混合プロセスによって混合される。この混合プロセスでは、ゲルの形をしたバインダ、例えばシリカが結晶シリケート触媒原料と混合され、得られた混合物を所望形状、例えば、ロッド、円筒、多葉バーの形に押出される。球状物は回転造粒装置やオイル−ドロップ法で作ることができる。小球は触媒-バインダ懸濁液を噴霧乾燥して作ることができる。成形された結晶質シリケートは次いで空気中または不活性ガス中で一般に200〜900℃の温度で1〜48時間か焼される。バインダはアルミニウム化合物、例えばアルミナを含まないのが好ましい。これは上記のように本発明で用いるのに好ましい触媒は脱アルミ化して珪素/アルミニウム比を増加させた結晶質シリケートであるためである。アルミニウムの抽出段階の前にバインダーを入れる段階を実行する場合には、バインダ中にアルミナが存在すると、過剰アルミナを生ずることになる。アルミニウム含有バインダを結晶シリケート触媒と混合した後、アルミニウム抽出をして触媒のリ-アルミネートをする。
【0044】
バインダと触媒の混合はスチーム処理および抽出段階の前または後に実行することができる。
【0045】
本発明の第2の有利な実施例では、触媒(A1)は単斜晶構造を有する結晶シリケート触媒であり、これは珪素/アルミニウム原子比が80以下のMFI-型結晶質シリケートを用意し、この結晶質シリケートをスチーム処理し、その後に浸出剤の水溶液と接触させてゼオライトからアルミニウムをリーチングして触媒中の珪素/アルミニウム原子比が少なくとも180の結晶質シリケートにすることで製造される。この触媒は単斜晶構造を有する。
【0046】
スチーム処理段階の温度は425〜870℃、好ましくは540〜815℃で、水の分圧は13〜200kPaであるのが好ましい。
【0047】
アルミニウムはリーチングで除去され、ゼオライトがアルミナと可溶性複合体を形成することができるアルミニウム用錯化剤の水溶液と接触して、水に可溶な化合物を形成するのが好ましい。
【0048】
単斜晶結晶質シリケートを製造するための上記の好ましくいプロセスでは、MFI-型の出発材料の結晶質シリケート触媒が斜方晶系対称性を有し、有機テンプレート分子なしで合成した時にできる相対的に低い珪素/アルミニウム原子比を有する。一連のスチーム処理とアルミニウム除去処理をした最終的に得られる結晶質シリケート触媒は相対的に高い珪素/アルミニウム原子比と単斜晶対称性を有する。アルミニウム除去段階後に結晶質シリケートをアンモニウムイオンでイオン交換することができる。斜方晶系の対称性を有するMFI-型結晶質シリケートはPnmaの空間群を有するということは当業者に公知である。この斜方晶系構造のX線回折図はd =約0.365ナノメートル、d =約0.305ナノメートルおよびd=約0.300ナノメートルに一つのピークを有する(欧州特許第EP-A-0146524号公報)。
【0049】
出発材料の結晶質シリケートの珪素/アルミニウム原子比は80以下である。典型的なZSM−5触媒は3.08重量%のA12O3と、0.062重量%のNa2Oとを有し、100%斜方晶系である。この触媒の珪素/アルミニウム原子比は26.9である。
【0050】
スチーム処理段階は上記で説明したように実行される。スチーム処理はアルミナを形成し、結晶シリケート骨格の四面体アルミニウムの量を減らすように機能する。アルミニウムのリーチングまたは抽出段階は上記で説明したように実行する。アルミニウム浸出段階では、結晶質シリケートを酸性溶液または錯化剤を含む溶液中に浸し、好ましくは加熱する。例えば、還流条件下(縮合蒸気が全リターンされ沸騰温度)で一定時間、例えば18時間加熱する。アルミニウム浸出段階後に結晶質シリケートを洗浄する、例えば蒸留水で洗浄し、好ましくは高い温度、例えば約110℃で乾燥する。必要に応じてさらに結晶質シリケートをアンモニウムイオンでイオン交換する。例えば結晶質シリケートをNH4C1水溶液中に浸す。
【0051】
最後に触媒は高い温度、例えば少なくとも400℃の温度でか焼する。か焼時間は一般に約3時間である。
【0052】
得られる結晶質シリケートは空間群P21/nである単斜晶対称性を有する。単斜晶構造のX線回折図はd =約0.36、0.31および0.19ナノメートルに3つのダブレットを示す。このダブレットの存在が単斜晶対称性に独特である。特に、d=約0.36のダブレットは2つのピーク(d =0.362ナノメートルに一つ、d =0.365ナノメートルに一つ)から成る。これとは対照的に斜方晶系構造は、d =0.365ナノメートルに単一のピークを有する。
【0053】
単斜晶構造の存在はd=約0.36ナノメートルのX線回折強度を比較することで定量化できる。純粋な斜方晶系と純粋な単斜晶系を有するMFI結晶質シリケートの混合物を製造するときには、混合物の組成を単斜晶性指数(monoclinicity index、%)で表すことができる。X−線回折図を記録し、単斜晶性用にd=0.365nmでピーク高さを測定し、斜方晶性用にd=0.362nmでピーク高さを測定してそれぞれImおよびIOとする。単斜晶指数とIm/IOとの間の直鎖回帰線から未知試料の単斜晶性(monoclinicity)を測定するのに必要な関係すなわち(axlm/lo-b)×l00が与えられる(ここで、aおよびbは回帰パラメータである)。
【0054】
珪素/アルミニウム原子比が相対的に高く、少なくとも100、好ましくは約200以上である上記のような単斜晶性結晶質シリケートは結晶化段階で有機テンプレート分子を使用せずに製造できる。さらに、単斜晶結晶質シリケートの結晶寸法は相対的に小さく、一般には1ミクロン以下、より一般的には約0.5ミクロンに保つことができる。すなわち、出発材料の結晶質シリケートは結晶寸法が小さく、次の生産工程でそれが増加しない。結晶寸法を相対的に小さくできるため、触媒活性もそれに対応して増加する。このことは、有機テンプレート分子の存在下で高いSi/Al比を直接製造する結晶寸法が大きく成る公知の単斜晶性結晶質シリケート触媒(一般に結晶寸法が1ミクロンより大きい)より有利である。
はある。
【0055】
本発明の第3の有利な実施例では、触媒(A1)がP−変成ゼオライト(燐-変成ゼオライト)である。この燐変成モレキュラーシーブはMFI、MOR、MEL、クリノプチロライトまたは初期Si/A1比が4〜500にあるFER結晶質アルミノ・シリケート・モレキュラーシーブをベースに製造できる。このP−変成ゼオライトは低いSi/ A1比(30以下)の安価な結晶質シリケートから得ることができる。
【0056】
このP−変成ゼオライトは例えば下記の方法で製造できる:
(1)MFI、MEL、FER、MOR、クリノプチロライトのH+型またはNH4+型のゼオライト(好ましくはSi/Al比が4〜500)を選択し、
(2)有利には少なくとも0.05重量%のPを導入するのに有効な条件下でPを導入し、
(3)液体が存在すに場合には液体からの固形物を分離し、
(4)必要に応じて行う洗浄段階または必要に応じて行う乾燥段階または乾燥段階とその後の洗浄段階、
(5)か焼段階(OCPの触媒とXTOの触媒は同じものでも異なっていてもよい)
【0057】
Si/Al比が小さいゼオライトは予め有機テンプレートを添加して(または添加しないで)直接作ったものである。
【0058】
P−変成ゼオライトを作るプロセスは必要に応じてスチーム処理およびリーチングの段階を含む。この方法ではスチーム処理の後にリーチングを行う。ゼオライトのスチーム処理でアルミニウムになり、ゼオライト骨格を残し、酸化アルミとしてゼオライトの気孔の内外に付くということは当業者には一般的に知られていることである。このトランスフォーメーションは脱アルミ化として知られ、本明細書全体でこの用語を使用する。スチーム処理したゼオライトを酸性溶液で処理すると、骨格外の余分な酸化アルミが溶解する。このトランスフォーメーションはリーチングとして知られ、本明細書全体でこの用語を使用する。次いで、ゼオライトを分離する。有利には濾過し、必要に応じて洗浄する。濾過と洗浄の間に乾燥段階を置くこともできる。水洗後の溶液は例えば固形物から濾過で分離するか蒸発させることができる。
【0059】
Pは任意の手段、例えば下記文献に記載の方法で導入できる:
【特許文献17】米国特許第US 3,911,041号明細書
【特許文献18】米国特許第US 5,573,990号明細書
【特許文献19】米国特許第US 6,797,851号明細書
【0060】
P−変成ゼオライトから成る触媒(A1)はP−変成ゼオライト自体か、最終触媒に追加の強度または触媒活性を与える他の原料と組み合わせて触媒に成形したP−変成されたゼオライトにすることができる。
【0061】
固形物からの液体の分離は0〜90℃の温度で濾過するか、0〜90℃の温度で遠心分離、蒸発またはその均等手段で行うことができる。
【0062】
ゼオライトは必要に応じて分離後、水洗前に乾燥することができる。この乾燥は40〜600℃の温度で1〜lO時間行うのが有利である。この乾燥は静的状態またはガス流動中で行うことができる。空気、窒素または任意の不活性ガスが使用できる。
【0063】
水洗段階は濾過(分離段階)中に常温(<40℃)または熱水(>40かつ<90℃)で行うことができ、また、固体を水溶液に入れ(4リットルの水溶液中に1kgの固形物)、還流条件下に0.5〜10 時間処理した後に蒸発または濾過する。
【0064】
最終のか焼段階は静的状態またはガス流動中で400〜700℃の温度で実行するのが有利である。空気、窒素または任意の不活性ガスを使うことができる。
【0065】
本発明の好ましい第3の特定実施例では、燐変成ゼオライトが下記を含むプロセスで製造される:
(1)MFI、MEL、FER、MOR、クリノプチロライトのH+型またはNH4+型のゼオライト(好ましくはSi/Al比が4〜500、実施例では4〜30)を選択し、
(2)400〜870℃の温度で0.01〜200時間スチーム処理し、
(3)ゼオライトからアルミニウムの実質的部分を除去するのに有効な条件下で酸性水溶液でリーチングし、
(4)有利には少なくとも0.05重量%のPを導入するのに有効な条件下でP源を含む水溶液を用いてPを導入し、
(5)液体から固形物を分離し、
(6)必要に応じて用いる水洗段階またはオプションの乾燥段階または必要に応じて行う乾燥段階と水洗段階、
(7)か焼段階。
【0066】
必要に応じて、スチーム段階とリーチング段階との間に中間段階、例えばシリカ粉体と接触させ、乾燥する段階を設けることもできる。
【0067】
選択したMFI、MEL、FER、MOR、クリノプチロライト(H+型またはNH4+型のゼオライト)の初期Si/Al比は100以下にし、特定実施例では4
〜30にするのが好ましい。H+型またはNH4+型への転化は基本的に公知で、下記文献に記載されている。
【特許文献20】米国特許第US 3911041号明細書
【特許文献21】米国特許第US 5573990号明細書
【0068】
最終的なP含有量は少なくとも0.05重量%、好ましくは0.3 〜7重量%の間にするのが有利である。リーチングによって親のゼオライトMFI、MEL、FER、MOR、クリノプチロライトに対して少なくとも10重量%のAlをゼオライトから抽出除去するのが有利である。
【0069】
その後、ゼオライトを洗浄水溶液から分離するか、洗浄水溶液から分離せずに乾燥する。この分離は濾過で行うのが有利である。次いで、ゼオライトを例えば400℃で2〜10時間、か焼する。
【0070】
スチーム処理段階は420〜870℃、好ましくは480〜760℃の温度行うのが好ましい。圧力は大気圧であるのが好ましく、水の分圧は13〜100kPaにすることができる。蒸気雰囲気は5〜100容積%のスチームと0〜95容積%の不活性ガス(好ましくは窒素)とを含むのが好ましい。スチーム処理は0.01〜200時間、有利には0.05〜200時間、より好ましくは、0.05〜50時間実行するのが好ましい。スチーム処理ではアルミナを形成し、結晶シリケート骨格の四面体のアルミニウムの量を減らすことになる。
【0071】
リーチングはHC1のような強酸またはクエン酸、蟻酸、蓚酸、酒石、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、マイレン酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチレンジアミントリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸のような有機酸またはこれらの酸の塩(例えばナトリウム塩)またはこれらの酸または塩の少なくとも2つの混合物で行うことができる。他の無機酸は硝酸、塩化水素酸、メタン硫酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸のような無機酸またはこれらの酸の塩((例えばナトリウムまたはアンモニウム塩))またはこれらの酸または塩の少なくとも2つの混合物にすることができる。
【0072】
残留P−含有量はP源を含む酸性水溶液のP−濃度、乾燥条件および水洗条件(用いた場合)で調整する。乾燥段階を濾過段階と洗浄段階の間に行うことができる。
【0073】
上記のP−変成オライトはそのまま触媒として使うことができる。他の実施例では、最終触媒生成物に追加の強度または触媒活性を与える他の原料を加えてホーミュレートすることができる。P−変成ゼオライトと混合可能な原料は各種の非活性または触媒活性物質または各種バインダ原料である。これらの原料にはカオリン、その他のクレー組成物、希土類金属化合物、ホスフエート、アルミナまたはアルミナゾル、チタニア、ジルコニア、石英、シリカまたはシリカゾルおよびこれらの混合物が含まれる。これらの成分は触媒濃度を上げ、成形された触媒の強度を増加させるのに有効なものである。触媒はペレット、球に成形するか、他の形に押出すか、スプレー-乾燥粒子にすることができる。最終触媒生成物に含まれるP−変成ゼオライトの量は全触媒の10〜90重量パーセント、好ましくは全触媒の20〜70重量パーセントである。
【0074】
反応装置(II)はオレフィンの接触分解が容易に進むような特定反応条件下で使われる。異なる反応経路を触媒上で起こすことができる。オレフィン接触分解とは結合の開裂によって短い分子を作るプロセスといえる。
【0075】
OCP反応装置での接触分解プロセスのプロセス条件は希望するプロピレンまたはエチレンに対する選択性が高くなり、オレフィン転化が経時的に安定し、排出流中のオレフィン産物の分布が安定するように選択される。この目的は低圧にし、入口温度を高くし、接触時間を短くすることで与えられる。これらプロセスパラメータの全ては互いに関連し、全体の累積効果を上げる。
【0076】
プロセス条件はパラフィン系炭水素、芳香族およびコークス先駆体が形成されることになる水素転移反応が起こらないように選択する。従って、プロセス運転条件は空間速度が高くなり、圧力が低くなり、反応温度が高くなるにようにする。LHSVは0.5〜30時-1、好ましくは1〜30時-1の範囲にする。オレフィン分圧は0.1〜2バール、好ましくは0.5〜1.5バール(ここでは絶対圧)の範囲にする。特に好ましいオレフィン分圧は大気圧(すなわち1バール)である。反応装置(II)の供給原料は反応装置(II)を通って供給原料を移送するのに十分な全入口圧力で送るのが好ましい。この供給原料は不活性ガス、例えば窒素またはスチームで希釈してもしなくてもよい。反応装置の全絶対圧は0.5〜10バールにするのが好ましい。オレフィン分圧を低くする、例えば大気圧の使用でクラッキングプロセスでの水素転移反応を下げることができ、従って、触媒の安定性を悪くするコークス生成の汽船性を減らすことができる。オレフィンのクラッキングは供給原料の入口温度を400℃〜650℃、好ましくは450℃〜600℃、さらに好ましくは540℃〜590℃で実行するのが好ましい。エチレンおよびプロピレンの量を最大にしかつメタン、芳香族およびコークスの生産量を最少にするためには、フィード中のジエンの存在を最少にするのが望ましい。モノオレフィン炭化水素へのジオレフィン転化は、例えば下記文献に記載の従来の選択水素化プロセスで行うことができる。この文献の内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献22】米国特許第US 4,695,560号明細書
【0077】
OCP反応装置は固定層型反応器、移動層型反応器または流動層式反応器にすることができる。代表的な流動層反応器は石油精製で流動層接触分解に使われるFCCタイプのものである。代表的な移動層型反応器が連続接触改質タイプである。上記のように本発明プロセスは一対の平行「スイング」反応装置を用いて連続的に実行できる。反応装置(II)でのクラッキングプロセスは吸熱反応であるので、適切な反応温度を維持するためには、反応装置に熱を供給する必要がある。複数の反応装置を直列に使い、反応に必要な熱を供給するために反応装置間で相互加熱(interheating)することができる。各反応装置が供給原料の転化の一部を行う。公知の任意の適切な手段を用いて触媒をオンラインまたは定期的に再生することができる。
【0078】
各種の好ましいOCP反応装置用触媒を用いることで高い安定性、特に数日、例えば10日間の間、安定なプロピレン収率を得ることができるということが分かっている。すなわち、並列した2つの「スイング」反応装置を用い、一つの反応装置が運転中のときは他方の反応装置で触媒を再生することでオレフィンクラッキングプロセスを連続的に実行することができる。触媒は複数回再生できる。
以下、図示下実施例を説明する。
【0079】
[図1]はフロントエンド脱メタン塔配置(front-end de-methaniser configuration)のナフサ・クラッカの流れ系統図である。ナフサ供給原料は炉(2)に送られ、そこで軽質成分にクラック(熱分解)される。炉の排出流は主分留塔と急冷部から成るセクション(3)へ送られて冷却された後に、酸性ガス除去ユニット(AGR)とガス乾燥器とを含む圧縮セクション(4)へ送られる。このセクションの各凝縮可能成分はガソリン・ストリッパー(5)で集められ、軽質分(light ends)は圧縮セクション(4)へ戻される。乾燥された排出流は脱メタン塔(7)へ送られ、そこで水素とメタン(8)の混合物がC2+炭化水素(10)から分離される。このC2+炭化水素は脱エタン塔(11)でC2炭化水素(12)を含むオーバーヘッド流と、C3+炭化水素(13)を含む底部流とにさらに分離される。C2炭化水素はアセチレンの選択水素化によってさらに精製した後、C2スプリッタでポリマーグレードのエチレンおよびエタン・リッチ流に分離できる。C3+炭化水素(13および6a)は脱プロパン塔(14)においてC3炭化水素(15)のオーバーヘッド流とC4+炭化水素(16)を含む底部流とに分離される。オプションとして、(15)をMAPD(メ冷却アセチレンプロパジエン)除去ユニット([図1]には図示せず)へ送り、さらにC3スプリッタに送ってポリマーグレードのプロピレンを製造することができる。ガソリン・ストリッパー(5)の底部流はガソリン・ストリッパー(5)の性能に応じて、脱プロパン塔(14)、脱ブタン塔(20)または脱ペンタン塔(23)へ送ることができる。C4+炭化水素(16および6b)は脱ブタン塔(20)に送られて粗C4(21)および粗熱分解ガソリン(22)が製造される。粗熱分解ガソリン(22および6c)は最初に「第1段階水素化」反応装置(23)で安定化され、次に(24)から脱ペンタン塔(25)へ送られ、そこでC5非芳香族炭化水素(26)と芳香族リッチなC6+炭化水素(27)とに分離される。このC6+炭化水素をさらに処理してベンゼン、トルエンおよびキシレンを回収することができる。
【0080】
[図2]はオレフィンクラッキング法と相乗一体化(synergetic integration)すること(従って、プロピレンの生産量を最大にすること)によって低クラッキング度条件下で運転可能な、フロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図である。オレフィン・クラッキングの供給原料は粗C4(30)と、C5非芳香族炭化水素(26)と、ガソリン・ストリッパーの底部流(32)と、オプションとして送られるC4+オレフィン系炭化水素(33)とから成る。この供給原料は最初に選択水素化反応装置(34)で処理され、ジエンおよびアセチレンは実質的に対応するオレフィンに変換される。ナフサ・クラッカを低クラッキング度条件下で運転する場合には、脱エタン塔(11)の底部流としてC3+炭化水素(13)がより多く作られ、ストリップガソリン(6)がより多くつくられ、その結果、脱プロパン塔(14)およびその後の分離ユニットがボトルネックする原因となる。プロピレンを殆ど含まないこのストリップガソリン(6)は選択水素化反応装置(34)へ送ることはできず、プロピレンを多量に含む過剰なC3+炭化水素(46)はオレフィンク分解プロセスのエンド・セクションへ戻さなれなければならない。供給原料は選択水素化した後にオレフィン・クラッキング反応装置(40)へ送られる。その排出流(41)は再蒸留塔(42)へ送られ、そこで底部流としてC6+炭化水素(43)がパージされ、そのオーバーヘッド(44)はスチームクラッカーの脱エタン塔(11)からの過剰C3+炭化水素(46)と一緒に脱プロパン塔(45)へ送られる。脱プロパン塔では底部流(47)としてC4+炭化水素が作られ、その一部(35)は選択水素化反応装置(34)へ最循環され、残りのC4+炭化水素(51)は脱ブタン塔(60)へ送られ、そこでC5の炭化水素(61)とC4炭化水素(62)とに分離される。脱プロパン塔のオーバーヘッド(48)は脱エタン塔(70)へ送られ、そこでC2-炭化水素(72)とC3炭化水素(71)とに分離される。C2-炭化水素(72)は脱メタン塔(80)で水素およびメタン(82)とC2炭化水素(81)とにさらに分離される。C2炭化水素(81)はそれに含まれるアセチレンの選択水素化およびC2スプリッタによってさらに精製できる。C3炭化水素(71)はそれに含まれるメ冷却アセチレンおよびプロピンの選択水素化およびC3スプリッタによってさらに精製できる。水素およびメタン(82)をさらにメタネーションし、一酸化炭素を除去し、メタンから水素を分離してその価値をさらに上げることができる。
【0081】
[図3]は[図1]と同様なフロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図である。[図1]との相違点は、C3の炭化水素(15)がMAPDスプリッタ(17)へ送られる点である。このMAPDスプリッタ(17)はメ冷却アセチレン、プロパジエンおよびC4炭化水素(一般にテレン(tetrene)フラクションと呼ばれる)がリッチなC3炭化水素流(19)を底部流として製造する。そのオーバーヘッドはC3炭化水素(18)から成り、それに含まれるプロピンおよびメ冷却アセチレンを選択水素化し、C3スプリッタを用いてさらに精製できる。
【0082】
[図4]はオレフィンクラッキング法と相乗一体化すること(従って、プロピレンの生産量を最大にすること)によって低クラッキング度条件下で運転可能な、[図2]に記載のものと同様なフロントエンド脱メタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図である。[図2]との相違点はC3炭化水素(15)がMAPDスプリッタへ送られることである。このMAPDスプリッタはメチルアセチレン、プロピンおよび一定のC4炭化水素(一般にテトレン留分と呼ばれる)が濃縮されたボトムC3炭化水素流(19)を製造する。このテトレン留分(90)と過剰C3+炭化水素(46)の両方はプロピレンを多量に含み、オレフィンクラッキングのバックエンド・セクションすなわち脱プロパン塔(45)へ送られなければならない。MAPDオーバーヘッドはC3炭化水素(18)から成り、これはそれに含まれるメチルアセチレンおよびプロピンの選択水素化およびC3スプリッタによってさらに精製できる。
【0083】
[図5]はフロントエンド脱エタン塔配置でのナフサ・クラッカの流れ系統図である。フサ供給原料(1)は炉(2)へ送られて軽質成分に分解される。炉の排出流は第1精留塔および急冷セクションから成るセクション(3)へ送られる。排出流は冷却されてから酸性ガス除去ユニット(AGR)とガス乾燥器とを含む圧縮セクション(4)へ入る。各セクションからき軽質分(ライトエンド)はガソリン・ストリッパー(5)で凝縮され、軽質成分は圧縮セクション(4)へ戻される。乾燥された排出流は脱エタン塔(11)へ送られてC2-炭化水素(10)を含むオーバーヘッド流と、C3+炭化水素(13)を含む底部流とに分離される。C2-炭化水素(10)流は脱メタン塔(7)へ送られ、そこで水素とメタン(8)の混合物がC2炭化水素(12)から分離される。C2炭化水素(12)はアセチレンの選択水素化とその後のC2スプリッタでのポリマーグレードのエチレンおよびエタンリッチ流の分離とによってさらに精製できる。次いで、C3+炭化水素(13および6a)は脱プロパン塔(14)でC3炭化水素(15)のオーバーヘッド流とC4+炭化水素(16)を含む底部流とに分離される。ガソリン・ストリッパー(5)の運転性能に応じてストリッパーのボトムを脱プロパン塔(14)、脱ブタン塔(20)または脱ペンタン塔(23)へ送ることができる。C4+炭化水素(16および6b)は脱ブタン塔(20)に送られて粗C4(21)および粗熱分解ガソリン(22)が製造される。粗熱分解ガソリン(22および6c)は「第1段水素化」反応装置(23)および次の反応装置(24)において最初に安定化され、脱ペンタン塔(25)へ送られ、そこでC5非芳香族炭化水素(26)と芳香リッチなC6+炭化水素(27)へ分離される。このC6+炭化水素はさらに処理されてベンゼン、トルエンおよびキシレンが回収される。
【0084】
[図6]はオレフィンクラッキング法と相乗一体化すること(従って、プロピレンの生産量を最大にすること)によって低クラッキング度条件下で運転可能なフロントエンド脱エタン塔配置のナフサ・クラッカの流れ系統図である。オレフィン・クラッキングへの供給原料は粗C4(30)と、C5非芳香族炭化水素(26)と、ガソリン・ストリッパーのボトム(32)の一部と、必要に応じて移送されるC4+オレフィン系炭化水素(33)とから成る。この供給原料は最初に選択水素化反応装置(34)で処理されてジエンおよびアセチレンが実質的に対応するオレフィンに変換される。ナフサ・クラッカを低クラッキング度条件下で運転する時には、脱エタン塔(11)のボトムとしてのより多くのC3+炭化水素(13)が作られ、より多くのストリップガソリン(6)が作られ、結果として脱プロパン塔(14)および後の分離ユニットがボトルネックになる。実質的にプロピレンを含まないか、ほとんど含まないストリップガソリン(6)は選択水素化反応装置(34)へ送る。プロピレン量が多い過剰C3+炭化水素(46)をオレフィンクラッキングプロセスのバックエンドセクションへ送られなければならない。選択水素化された供給原料はオレフィン・クラッキング反応装置(40)へ送られる。その排出流(41)は再蒸留塔(42)へ流れ、C6+炭化水素(43)はボトム流としてパージされ、オーバーヘッド(44)はスチームクラッカー脱エタン塔(11)から来る過剰C3+炭化水素(46)と一緒に脱プロパン塔(45)へ送られる。
【0085】
脱プロパン塔の底部流(47)のC4+炭化水素の一部(35)は選択水素化反応装置(34)へリサイクルされ、残りのC4+炭化水素(51)は脱ブタン塔(60)へ送られてC5炭化水素(61)とC4炭化水素(62)とに分離される。脱プロパンのオーバーヘッド(48)は脱エタン塔(70)へ送られてC2炭化水素(72)とC3炭化水素(71)に分離される。C2炭化水素(72)は脱メタン塔(80)で水素/メタン(82)とC2炭化水素(81)にさらに分割さる。C2炭化水素(81)はそれに含まれるアセチレンの選択水素化およびC2スプリッタによってさらに精製できる。C3炭化水素(71)はそれに含まれるプロピンおよびメチルアセチレンの選択水素化およびC3スプリッタによってさらに精製できる。水素/メタン(82)はさらにメタネーションして一酸化炭素を除去し、水素を分離して有価物にすることができる。
【0086】
下記の[表1][表2]はスチームクラッカーを低クラッキング度条件下で運転させた時の影響を示している。
実施例(エントリー)1〜4はナフサ流量およびナフサに対するスチーム比を変えずに、クラッキング度を0.3〜0.6(エチレンに対するプロピレンの比)の低い値にして運転した時の効果を示している。プロピレンの生産速度は増加するが、エチレン生産速度は低下し、それは同時に炉のデューティー(duty)が低下し、さらにはコーキングで見られる。
実施例5は実施例2で得られるものと同じ圧力降下レベルに達するまでナフサ流量を増加した時の改良されたケースである。これは対照ケースとみなすことができる。
【0087】
実施例6、7では、実施例2で得られるものと同じ炉デューティー(duty)、圧力降下およびコーキング速度を維持した状態で、ナフサに対するスチームの比を下げた。実施例7はエチレンの生産速度を同じにし、同様な燃料ガスを作った場合、プロピレンの生産速度が対照(実施例2)の130%になることを示している。また、粗C4およびC5の生産速度はそれぞれ対照の138および197%作られることを示している。重質クラッキング成分は実施例2と同じか、減る。この表はクラッキング度を低くして運転した時に生じる技術的な拘束がC4およびC5をクラックする新しいオレフィンクラッキングプロセスを加えることで解決でき、低クラッキング度条件下で運転されるスチームクラッカーで、オレフィンラッキングプロセスの目的でないプロピレン精製セクションでプロピレンが増加するようにハンドリングできるということを示している。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域(I)はガソリン・ストリッパーと、脱メタン塔(I)と、脱エタン塔と、脱プロパン塔(I)と、脱ブタン塔(I)とを有し、脱プロパン塔(I)は脱エタン塔(I)の底部生成物を受け、必要に応じてさらにガソリン・ストリッパー(I)の底部生成物を受ける、運転が高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカユニットの脱ボトルネッキング(debottlenecking)方法であって、
下記(a)〜(g)の段階:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔および脱プロパン塔(II)を加え、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口でより多く製造されるような条件で上記クラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードにならないように、脱エタン塔(I)の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッドの粗C4フラクションの一部または全部を選択水素化ユニット(II)に送り、
(g) クラッキング反応装置(II)の出口流を再蒸留塔に送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、このオーバーヘッドを脱プロパン塔(II)に送ってC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ最循環し、必要に応じて、C4+底部流の一部を取り除く、
を有することを特徴とする脱ボトルネッキング方法。
【請求項2】
クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域(I)はガソリン・ストリッパーと、脱メタン塔(I)と、脱エタン塔と、脱プロパン塔(I)と、脱ブタン塔(I)とを有し、脱エタン塔(I)は、
− エチレン、エタンおよび任意成分の燃料ガスから成るオーバーヘッド流と、
− 脱プロパン塔(I)に送られるC3+から成る底部流と、
を作り、
脱プロパン塔(I)は脱エタン塔(I)の底部生成物を受け、必要に応じてさらにガソリン・ストリッパー(I)の底部生成物を受け、脱プロパン塔(I)は、
− プロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPD除去ユニット(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− オーバーヘッド粗C4フラクションと底部C5+フラクションとを製造するための脱ブタン塔(I)へ送られるC4+底部流と
を作る、運転が高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカユニットの脱ボトルネッキング(debottlenecking)方法であって、
下記(a)〜(g)の段階を有する請求項1に記載の方法:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔および脱プロパン塔(II)を加え、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で製造されるような条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードしないように、脱エタン塔(I)の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッド粗C4フラクションの一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)の出口流を再蒸留塔へ送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、そのオーバーヘッドを脱プロパン塔(II)へ送ってC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ最循環し、必要に応じてC4+底部流一部を取り出す。
【請求項3】
クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域(I)はガソリン・ストリッパーを有し、その後に最初に脱メタン塔(I)(フロントエンド脱メタン塔)を有する分流配置が続き、その後に脱エタン塔と、脱プロパン塔(I)と、脱ブタン塔(I)とがさらに続き、脱エタン塔(I)は、
− バックエンドアセチレン・コンバータ(I)を介してエチレンおよびエタンを分離するためのC2スプリッタ(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− 脱プロパン塔(I)へ送られるC3+から成る底部流と
を作り、脱プロパン塔(I)は、脱エタン塔(I)の底部生成物を受け、必要に応じてガソリン・ストリッパー(I)の底部生成物を受け、脱プロパン塔(I)は、
− プロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPD除去ユニット(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− オーバーヘッド粗C4フラクションと底部C5+フラクションとを作る脱ブタン塔(I)へ送られるC4+から成る底部流と、
を作り、必要な場合には、その後にC5+フラクションを−脱ペンタン塔(I)へ送ってオーバーヘッドC5フラクションと底部C6+フラクションとを作る、
下記(a)〜(h)の段階を有する請求項2に記載の脱ボトルネッキング方法:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加え、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒を有するクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔と、脱プロパン塔(II)と、脱エタン塔(II)とを加え、必要に応じて脱メタン塔(II)を加え、必要に応じてMAPD転化ユニット(II)を加え、必要に応じてC3スプリッタ(II)を加えて、プロパンおよびプロピレンを分離し、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後に、低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で製造されるような条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードしないように、脱エタン塔 (I) の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッド粗C4フラクションの一部または全部または脱ペンタン塔(I)のオーバーヘッドC5フラクションの一部または全部または輸入されたオレフィン性C4+炭化水素または上記の任意の混合物を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)に出口流を再蒸留塔へ送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、このオーバーヘッドを脱プロパン塔(II)へ送ってC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ最循環し、必要に応じてC4+底部流の一部を取り出し、
(h) 脱プロパン塔(II)のC1−C3オーバーヘッドを脱エタン塔(II)へ送って下記を作る:
- 必要に応じてプロパンおよびプロピレンを製造するためのMAPDコンバータ(II)へ送られる底部C3流(必要に応じてC3スプリッタ(II)へ送ってオーバーヘッドとして濃縮プロピレン流れを作り、ボトムとしてプロパン・リッチ生成物を作る)、
- 必要に応じて脱メタン塔(II)へ送られるオーバーヘッド燃料ガスとC2底部流(必要に応じてアセチレン・コンバータへ送る)とを作るオーバーヘッド流。
【請求項4】
クラッキング帯域と分留帯域とを有し、分留帯域(I)はガソリン・ストリッパーを有し、その後に最初に脱エタン塔(I)(フロントエンド脱エタン塔)を有する分流配置が続き、その後に脱メタン塔と、脱プロパン塔(I)と、脱ブタン塔(I)とがさらに続き、脱エタン塔(I)は、
− フロントエンドアセチレン・コンバータ(I)へ送られ、次いで脱メタン塔(I) へ送られるオーバーヘッド流(脱メタン塔(I)は燃料ガスオーバーヘッド留出物とエチレンおよびエタンを分離するC2スプリッタ(I)へ送られるC2ボトムとを作る)と、
− 脱プロパン塔(I)に送られるC3+から成る底部流と
を作り、脱プロパン塔(I)は脱エタン塔(I)の底部生成物を受け、必要に応じてガソリン・ストリッパー(I)の底部生成物を受け、脱プロパン塔(I)は、
− プロパンおよびプロピレンを製造するためにMAPD除去ユニット(I)へ送られるオーバーヘッド流と、
− オーバーヘッド粗C4フラクションと底部C5+フラクション(必要に応じて、C5+フラクションはその後にオーバーヘッドC5フラクションと底部C6+フラクションとを作る脱ペンタン塔(I)へ送られる)とを作るための脱ブタン塔(I)へ送られるC4+から成る底部流と、
を作る、運転が高クラッキング度から低クラッキング度へ変えられる既存のスチーム・クラッカユニットの脱ボトルネッキング法において、
下記(a)〜(h)の段階を有する請求項2に記載の脱ボトルネッキング方法:
(a) 選択水素化ユニット(II)を加えること、
(b) 出口で軽質オレフィンの方へ向かう選択触媒から成るクラッキング反応装置(II)を加え、
(c) 再蒸留塔、脱プロパン塔(II)、脱エタン塔(II)を加え、必要に応じてさらに脱メタン塔(II)、MAPD転化ユニット(II)およびプロパンおよびプロピレンを分離するC3スプリッタ(II)をさらに加え、
(d) ガソリンストリッパー(I) の底部流の一部または全部を選択水素化ユニット(II)へ送り、その後に低分子量のオレフィン含有量が入口より出口で製造されるのに有効な条件でクラッキング反応装置(II)へ送り、
(e) 脱プロパン塔(I)がオーバーロードしないように、脱エタン塔(I)の底部流の一部を脱プロパン塔(II)へ送り、
(f) 必要に応じて、脱ブタン塔(I)のオーバーヘッド粗C4フラクションの一部または全部または脱ペンタン塔(I)のオーバーヘッドC5フラクション一部または全部または移入されたオレフィン系C4+炭化水素またはこれらの任意混合物を選択水素化ユニット(II)へ送り、
(g) クラッキング反応装置(II)の出口流を再蒸留塔へ送ってC6+底部流とC1−C5オーバーヘッドとを作り、そのオーバーヘッドを脱プロパン塔(II)へ送ってC1−C3オーバーヘッドとC4+底部流とを作り、その全部または一部を選択水素化ユニット(II)へ再循環し、必要に応じてC4+底部流の一部を取り出し、
(h) 脱プロパン塔(II)のC1−C3オーバーヘッドを脱エタン塔(II)へ送って、
− 底部C3流(必要に応じてMAPDコンバータ(II)に送ってプロパンおよびプロピレン流を作り、必要に応じてC3スプリッタ(II)に送ってオーバーヘッドとしての濃縮プロピレン流とボトムとしてのプロパンリッチ流とを作る)と、
− オーバーヘッド流(必要に応じて脱メタン塔(II)へ送ってオーバーヘッド燃料ガスとC2底部流とを作り、それを必要に応じてアセチレン・コンバータへ送る)と、
を作る。
【請求項5】
MAPD除去ユニット(I)がMAPD(メチルアセチレンンおよびプロパジエン)を主としてプロピレンへ選択的に変換する触媒気相または液相反応装置である請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
MAPD除去ユニット(I)が下記から成る請求項3または4に記載の方法:
- 脱プロパン塔(I)のオーバーヘッドが供給され、主としてC3炭化水素から成るオーバーヘッドとMAPDおよびC4炭化水素が濃縮されたボトムとを製造するMAPD蒸留塔(I)、
- MAPD(メチルアセチレンンおよびプロパジエン)を主としてプロピレンに選択的に変換する触媒気相または液相反応装置から成る、MAPD蒸留塔(I)のオーバーヘッドを受けるMAPDコンバータ(I)、
- MAPD蒸留塔(I) のボトムの一部または全部を脱プロパン塔(II)へ送る。
【請求項7】
MAPD除去ユニット(I)が触媒MAPD蒸留塔(I)から成り、必要に応じてMAPDコンバータ(I)を有し、さらに下記を満たす請求項3または4に記載の方法:
- 上記触媒MAPD蒸留塔(I)が蒸留塔中に配置された選択水素化触媒から成り、脱プロパン塔(I)のオーバーヘッドから供給され、アセチレン系およびジエン系炭化水素を対応するオレフィンに選択的に変換し、主としてC3炭化水素から成る塔頂留出物と、主としてC4炭化水素から成るボトムとを作り、
- 触媒MAPD蒸留塔(I)のオーバーヘッドをMAPDコンバータ(I)へ送って残ったMAPDをプロピレンに選択的に変換し、
- 触媒MAPD蒸留塔(I)のボトムの一部または全部をプロパン塔(II)または選択水素化ユニット(II)へ送る。
【請求項8】
脱プロパン塔(I)か触媒脱プロパン塔(I)であり、この触媒脱プロパン塔(I)には脱エタン塔(I)のボトム生成物が供給され、必要な場合にはガソリン・ストリッパー(I)の底部生成ものが供給され、蒸留塔の内部に配置された選択水素化触媒を有し、アセチレン系およびジエン系炭化水素を対応するオレフィンに選択的に変換し、実質的にC3炭化水素から成る塔頂留出物と、実質的にC4+炭化水素から成るボトムとを製造する請求項3または4に記載の方法。
【請求項9】
クラッキング反応装置(II)(OCP反応装置)の触媒(A1)が結晶質シリケートおよび燐変成ゼオライトの中から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
結晶質シリケートがSi/Al比が少なくとも約100の結晶質シリケートで、脱アルミ化された結晶質シリケートの中から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Si/Al比が少なくとも約100で、脱アルミ化された結晶質シリケートが硅素、アルミニウム、硼素および酸素から成るミクロポーラス材料のファミリーのMFI、MEL、FER、MTT、MWW、TON、EUO、MFSおよびZSM−48の中から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Si/Al比が少なくとも約100である結晶質シリケートがMFIおよびMELの中から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
結晶シリケートのSi/Al比が100〜1000の範囲にある請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
Si/Al比が少なくとも約100である結晶質シリケートまたは脱アルミ化された結晶質シリケートを処理して結晶シリケート骨格からアルミニウムを除去した請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
さらにスチーム処理を行い、触媒とアルミナ骨格の気孔からアルミニウムを除去するために錯化剤と接触させて触媒からアルミニウム抽出し、このスチーム処理中に触媒のSi/Al原子比を増加させる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
OCP反応装置(クラッキング反応装置(II))の温度を540℃〜590℃の範囲にする請求項1〜15のいずれか一項に方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−512981(P2013−512981A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541541(P2012−541541)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069694
【国際公開番号】WO2011/073226
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(504469606)トタル リサーチ アンド テクノロジー フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】