説明

プロピレンオキサイドの製造方法

【課題】プロピレンを接触気相酸化することによるプロピレンオキサイドの高効率的な製造方法の提供。
【解決手段】プロピレンを接触気相酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、(a)反応器中、エポキシ化反応条件下、前記プロピレンが酸素含有ガスと接触して、プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び水が生成され、(b)プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び未反応のプロピレンを含む反応器流出物が反応器から抜き出され、(c)前記反応器流出物に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部が取り除かれ、そして(d)プロピレンオキサイドが取り除かれた前記反応器流出物の少なくとも一部が前記反応器に再循環され、前記再循環流が反応器に循環される前に、再循環流から有効量の二酸化炭素を取り除いて、二酸化炭素による前記担持金属触媒の活性低下作用を減らすことを特徴とする、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンを接触気相酸化することによるプロピレンオキサイドの高効率的な改良製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンの接触気相酸化によるプロピレンオキサイドの製造方法が知られている。この接触気相酸化においては、プロピレン2分子と酸素1分子が反応して、プロピレンオキサイド2分子が生成する(反応1)。この主反応に加えて、酸化が完全に進行して、プロピレン1分子と酸素4.5分子が反応して、水3分子と二酸化炭素3分子が生成する副反応も起こる(反応2)。プロピレンが望ましくない生成物の形成に消費されるために、反応2及びその他の反応でプロピレンオキサイド以外の生成物を生成する反応は望ましくない。さらに、二酸化炭素等の望まない生成物は、反応系に悪影響を及ぼす可能性がある。一般に、生産システムの全体的な有効性は、システムの性能特性によって示される。最も重要な性能特性は、触媒の効率、活性及び耐用年数であり、これらについては以下に詳細に説明する。
【0003】
変換率%は、反応系に導入されるプロピレンの割合%で示される。反応するプロピレンのうちで、プロピレンオキサイドに変換される割合が、プロセスの選択率又は効率と呼ばれる。反応系が工業的に成功するかは、反応系の効率に大きく依存する。また、反応2(二酸化炭素の生成)の反応熱は、反応1(プロピレンオキサイドの生成)の反応熱よりも遥かに高いために、効率が低下すれば、熱除去の問題がより大きくなる。さらに、効率が低下すれば、反応器流出物中に存在する不純物の量が多くなることになり、プロピレンオキサイドの分離が複雑になる可能性がある。そこで、他の性能特性、特に活性を満足できる範囲に維持しながら効率がより高いプロピレンオキサイドの製造方法が望まれている。効率と変換率の積が、収率、すなわちプロピレンオキサイドに変換されたプロピレンの割合となる。効率、変換率及び収率は、以下の通りである。
変換率(%)=反応したプロピレン(モル)÷供給したプロピレン(モル)×100
効率(%)=生成したプロピレンオキサイド(モル)÷反応したプロピレン(モル)×100
収率(%)=生成したプロピレンオキサイド(モル)÷供給したプロピレン(モル)×100
【0004】
一般に、触媒物質が提供され、良好な反応条件(例えば、温度、圧力)が維持されている反応器に、反応原料及び他の付加的な物質を含有する反応器入口流が入る。反応器流出物は、反応器から排出され、又は収集される。反応器流出物には、反応器入口流からの未反応成分と共に、反応生成物が含まれる。
プロピレンの一部は反応器を一回通過するだけでは変換されないため、一般に、反応器流出物中にプロピレンが残存する。プロセスの全体の収率を増加させるために、反応器流出物のプロピレンの少なくとも一部は、再循環流を介して反応器に戻される。反応器に戻す前に、反応器流出物からプロピレンオキサイドの少なくとも一部を取り出し、回収して、製品流が生成される。製品流を回収した後に残る反応器流出流の少なくとも一部が、再循環流となる。再循環流は、好ましくは、反応器流出物に含まれる実質的にすべてのプロピレンを含む。
反応原料、すなわち酸素含有ガスとプロピレンは、連続して混合され、反応器に補給する供給流によって供給される必要がある。一般に、補給する供給流と再循環流は混合され、反応器入口流が調製されて、反応器に送られる。あるいは、補給する供給流と再循環流を別々に反応器に導入することもできる。
【0005】
プロピレンのエポキシ化は、一般に反応器内の担持金属触媒の存在下で行われる。金属触媒は、α−アルミナ等の公知の支持体によって担持することができる。触媒の性能は、例えば、触媒に組み込まれ、若しくは補給する供給流を介して提供される、固体、液体又は気体の化合物の存在によって影響を受ける可能性がある。
反応系の活性は、特定の温度で特定の反応系におけるプロピレンオキサイドの生成速度を測定して求められる。2つ以上の反応系の効果の意味のある比較、又は1つの反応系における異なる時期での効果の意味のある比較を行うためには、プロピレンオキサイドの生成速度に影響を与えうる供給速度、供給物の組成、温度、圧力等の要因を、好ましくは標準の若しくは固定した運転条件を用いて標準化して、考慮しなければならない。プロピレンオキサイドの生成速度は反応系の触媒量に比例するため、活性は、通常、触媒の体積当たりのプロピレンオキサイドの生成重量で示される。反応を制御する要因が反応系の体積であって、その体積に収まっている触媒重量ではないため、上記の活性測定方法は、触媒の密度の変化を考慮していないことは留意すべきである。プロピレンオキサイドの生成速度に影響を与えうる他の要因として、以下のものもある。
[要因1]反応流の組成,
[要因2]反応流のガス時間空間速度,
[要因3]反応器内の温度と圧力。
2つ以上の反応系の効果の意味のある比較、又は1つの反応系における異なる時期での効果の意味のある比較を行うためには、要因1〜3の違いを最小化し、及び/又は相対的な効率の評価に織り込むべきである。
【0006】
反応系の活性が低い場合、他のすべてのものが同じであれば、その反応系の価値は低い。反応系の活性が低くなればなるほど、特定の供給速度、反応器の温度、触媒、表面積等において単位時間当たりに製造される製品が少なくなる。活性が低ければ、高効率製造プロセスであっても工業的には価値がない。
反応系は一般に時間の経過と共に不活性化される。すなわち、触媒の活性は、プロセスの運転と共に低下する。活性を時間と共にプロットすることで、触媒の老化挙動を示すグラフが得られる。反応温度が上がると一般に活性は上がるため、活動をプロットする実験では、通常、温度を固定して行う。あるいは、活性のプロットは、一定の活性を保つのに必要な温度を時間と対比したグラフとすることもできる。活性が低下する速度、すなわち特定の時点での失活の速度は、活性のプロットの傾き、すなわち時間に対する活性の導関数:
失活速度=d(活性)/dt
で表すことができる。
一定時間の失活の平均速度は、活性の変化を時間で割った式:
平均失活速度=Δ活性/Δt
で表すことができる。
【0007】
ある時点で、活性は許容できない程度まで低下する。例えば、反応系の活性維持に必要な温度が許容できないほど高くなり、又は製造速度が許容できないほど低くなる。その時点で、触媒を再生又は交換する必要がある。反応系の耐用年数は、反応流が反応系を通過する際、許容される活性が維持されている時間である。活性と時間のプロットで囲まれる領域は、触媒の体積当たりの触媒の耐用年数の間に生成されるプロピレンオキサイドの重量に等しい。触媒の再生又は交換は定期修理として多額の費用が必要となるため、プロットの領域が大きくなればなるほど、製造プロセスはより価値が生じる。さらに、触媒の交換によって、一般に、触媒の取出し、反応管の清掃等のために、反応器を長時間、例えば2週間以上、止める必要がある。この操作には、余分な人件費及び特別な装置も必要となる。
失活とは、本明細書では、活性の永続的損失、すなわち回復できない活性の低下を意味する。前述の通り、活性は温度上昇で増加するが、特定の活性を維持するために高い温度で動作する必要があることが、失活していることを表す。反応をより高い温度で行うと、触媒はより速く失活する傾向がある。
特許文献1には、エチレンオキサイドの高効率な改良製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CA1286689
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
US1998878以降、アルケンオキサイドの製造について様々な側面に関する技術が開発されている。しかし、それらは相互に矛盾し、調整することができていない。また、これら先行技術はいずれも、本明細書で規定する高効率エポキシ化反応系の活性に二酸化炭素が有害な影響を与えうることを認識又は提唱していない。
過剰の二酸化炭素が高効率エポキシ化反応系の反応器に存在している場合、より少ない二酸化炭素が存在している場合よりも、本反応系の活性が低くなる。二酸化炭素濃度を下げることで、過剰な二酸化炭素による活性低下効果を減らすことができる。この過度の二酸化炭素とは、活性低下効果が観察される二酸化炭素の濃度を意味する。活性低下効果が観察され始める二酸化炭素の濃度は、反応系ごとに異なる。
従って、本発明の課題は、プロピレンをエポキシ化することによるプロピレンオキサイドの高効率的な製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段について検討した結果、本発明を見出した。具体的には、本発明は以下の通りである。
[1] プロピレンを接触気相酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、
(a)(i)気体の性能向上有機ハロゲン化合物、(ii)多価元素と結合された形態の酸素を含む化合物から選択される酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の少なくとも1つ、及び(iii)触媒として有効量の金属触媒と、多価元素のオキシアニオンの塩からなる群から選択される少なくとも1つの効率向上量の効率向上塩とを含む支持体上の担持金属触媒の存在下、反応器中、エポキシ化反応条件下、前記プロピレンが酸素含有ガスと接触して、プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び水が生成され、
(ここで、前記効率向上塩の前記オキシアニオンと、前記気体の効率向上成分(ii)とは、共通の多価元素を有し、また同じ酸化還元半反応対に属するか、又は一連の化学的に関連する半反応式の異なる半反応対に属する。)
(b)プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び未反応のプロピレンを含む反応器流出物が反応器から抜き出され、
(c)前記反応器流出物に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部が取り除かれ、そして
(d)プロピレンオキサイドが取り除かれた前記反応器流出物の少なくとも一部が前記反応器に再循環され、
前記再循環流が反応器に循環される前に、再循環流から有効量の二酸化炭素を取り除いて、二酸化炭素による前記担持金属触媒の活性低下作用を減らすことを特徴とする製造方法。
【0011】
[2] 前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分と、前記の酸化還元半反応対の成分の効率向上塩とが、同じ酸化還元半反応対の成分を含む、[1]記載の製造方法。
[3] 前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の少なくとも1つが、一酸化窒素、二酸化窒素、N、N、エポキシ化反応条件下で一酸化窒素及び二酸化窒素の少なくとも一つを発生させることができるガス又はこれらの混合物を含む、[1]記載の製造方法。
[4] 前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の少なくとも1つが、一酸化窒素、二酸化窒素又はこれらの混合物を含む、[1]記載の製造方法。
[5] 前記の酸化還元半反応対の成分の効率向上塩の少なくとも1つが、硝酸カリウムを含む、[1]記載の製造方法。
[6] 前記効率向上塩のカチオンが前記触媒の全重量に対して0.01重量%〜5重量%含むことになる量で、前記効率向上塩が前記触媒中に存在する、[1]記載の製造方法。
【0012】
[7] 前記反応器に入る二酸化炭素の濃度が12体積%以下に維持される、[1]記載の製造方法。
[8] 1,2−ジクロロエタン、塩化エチル又はこれらの混合物を含む気体の効率向上ハロゲン化合物が反応器中に存在している、[1]記載の製造方法。
[9] 前記触媒は8重量%〜50重量%の金属触媒を含む、[1]記載の製造方法。
[10] 前記触媒が固定床反応器中に提供される、[1]記載の製造方法。
[11] 前記触媒が流動床反応器中に提供される、[1]記載の製造方法。
[12] 前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分が、さらにホスフィン、一酸化炭素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄の1以上を含む、[1]記載の製造方法。
[13] 前記金属触媒が、(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する、[1]〜[12]のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、二酸化炭素濃度を下げて、過剰な二酸化炭素による活性低下効果を低下させることができ、それによってプロピレンオキサイドを高効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明が適用できるプロピレンの接触気相酸化方法としては、例えば、金属酸化物等を含有するような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法等が挙げられる。このような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法については、例えば、WO2011/075458、WO2011/075459、WO2012/005822、WO2012/005823、WO2012/005824、WO2012/005825、WO2012/005831、WO2012/005832、WO2012/005835、WO2012/005837、WO2012/009054、WO2012/009059、WO2012/009058、WO2012/009053、WO2012/009057、WO2012/009055、WO2012/009052、WO2012/009056等に記載されている。その製法において用いる触媒としては、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)及び(j)からなる群から選ばれる少なくとも2種を含む触媒が挙げられる。
(a)銅酸化物
(b)ルテニウム酸化物
(c)マンガン酸化物
(d)ニッケル酸化物
(e)オスミウム酸化物
(f)ゲルマニウム酸化物
(g)クロミウム酸化物
(h)タリウム酸化物
(i)スズ酸化物
(j)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分
好ましくは(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒であり、より好ましくは(a)銅酸化物、(b)ルテニウム酸化物及び(j)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分を含有する触媒である。
【0016】
本発明は、酸化還元半反応対の気体の効率向上成分(本明細書では、以下、気体の効率向上化合物と呼ぶことがある)の少なくとも1つ、好ましくは一酸化窒素及び/又は二酸化窒素及び担持金属触媒の存在下、反応器中、エポキシ化反応条件下、プロピレンと酸素含有ガスとを接触させることによって、プロピレンをエポキシ化してプロピレンオキサイドを高効率的に製造する方法である。触媒は、支持体上に、触媒として有効量の金属触媒、及び反応を促進する量の酸化還元半反応対の成分の効率向上塩を含む。1,2−ジクロロエタン及び/又は塩化エチル等の気体の効率向上ハロゲン化合物の存在下、接触を行っても良い。反応器流出物又は出口流には、プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び未反応のプロピレンが含まれる。反応器流出物内のプロピレンオキサイドの少なくとも一部は、製品として取り除かれる。過度の二酸化炭素が高効率反応系の活性に有害であるとの発見に基づいて、二酸化炭素の活性低下効果が消滅するのに十分な量の二酸化炭素を再循環流から除去する。
【0017】
本明細書において、高効率的な製造方法とは、プロピレンからプロピレンオキサイドへの変換率が、通常の製造方法のものよりも高い製造方法を言う。本発明の製造方法のような高効率反応系では、反応器中の過剰の二酸化炭素の存在によって、活性低下効果が生じることが見出された。二酸化炭素が過剰になる濃度、すなわち、活性低下効果が生じる濃度は、反応系ごとによって変化する。例えば、反応器入口流中の二酸化炭素の濃度が1体積%を超えると、反応系の活性が低下しうる。二酸化炭素は、一般的にプロピレンのエポキシ化反応の副産物として継続的に生成される。その結果、二酸化炭素は一般に反応器流出物に含まれ、除去しない限り、その一部が通常、再循環流を介して反応器に戻される。よって、本発明に従って、二酸化炭素の活性低下効果が消滅するのに十分な量の二酸化炭素を再循環流から除去する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明をさらに詳しく述べるために、具体的な実施態様を説明する。しかし本発明はこの実施態様のみによって本発明の範囲を規制するものでない。
以下に、本発明によるプロピレンのエポキシ化の好ましい反応系について説明するが、図1のフローチャートを参照することで、より良く理解することができる。
好ましい反応系の定常状態での運転において、後述する他の気体の物質と共に反応原料を含む反応器入口流が、制御されたガス時間空間速度(GHSV)で反応器に供給される。反応器は、様々な形態を取ることができるが、好ましくは、担持金属触媒を含む垂直管の集合体である。反応器入口流は反応器に入り、触媒を通って、反応器流出物として反応器から出る。プロピレンオキサイドは、反応器流出物の他の成分から、好ましくはスクラブ処理することで分離される。反応器流出物の残りの部分は、再循環流となる。例えば、反応系中に特定の物質が蓄積することを防ぐために、時々、再循環流中の物質の一部を除去することが好ましい。再循環流から物質を選択的に除去してもよく、すなわち、特定の化合物を、他の化合物よりも多い割合で再循環流から除去することができる。再循環流の残りの部分は、通常、反応器入口流を形成するために、補給する供給流と組み合わされる。反応系は、以下でより詳細に記述する。
【0019】
本発明は、固定床、流動床炉の両方を含む、プロピレンの酸化反応装置のいかなるサイズ及びいかなる種類にも使用できるが、標準的な固定床の多管式反応器に本発明をより広く適用することが企図される。これら反応器には、一般に、壁冷却による反応器だけでなく、断熱反応器も含まれる。反応管の長さは、一般に1.5m〜16mの範囲、好ましくは1.5m〜12mの範囲である。反応管の内径は、一般に1.3cm〜5cm、好ましくは2cm〜4cmである。
【0020】
触媒は、一般に、支持体の上に含浸又は被覆された触媒物質又は触媒物質及び効率向上成分の混合物を担持した支持体を含む。支持体は、一般に、反応系に過度に有害ではなく、好ましくは、システム内の他の材料、すなわち触媒物質、効率向上塩等の触媒中に存在する他の成分、反応器入口流の成分等に対して実質的に不活性である多孔質の無機物質である。また、支持体は、反応器内の温度、及び加熱による遊離金属への還元等の触媒の製造における温度に耐えることができなければならない。本発明で好適に用いられる支持体としては、シリカ、マグネシア、炭化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、好ましくはα−アルミナが挙げられる。支持体の表面積は、好ましくは少なくとも0.7m/g、より好ましくは0.7m/g〜16m/g、さらに好ましくは0.7m/g〜7m/gが挙げられる。この表面積は、例えばJ. Am. Chem. Soc., 60, 309〜316 (1938)に記載の方法で測定することができる。
【0021】
支持体は、粒子状マトリックスで構成することができる。好ましい支持体として、0.1μmより大きい粒径を有する支持体粒子をその総数の少なくとも50%有し、少なくとも1つの実質的に平坦な表面を持っているものが挙げられる。支持体粒子は、好ましくは、上記の大きさを有し、多管反応器にそのまま用いることができる凝集体又は丸薬の形状に成型される。これらの凝集体又は丸薬の大きさは、一般に好ましくは2mm〜15mm、より好ましくは3mm〜12mmである。当該大きさは、用いる反応器の種類に応じて選択される。一般に、固定床反応器では、典型的な多管反応器において、3mm〜10mmの粒径が最も適している。
本発明に有用である担体の凝集体の形状は、大きく異なる。一般的な形状は、球状、円柱状等であり、中空円柱状が好ましい。
本発明の好ましい支持体粒子としては、少なくとも1つの実質的に平坦な表面を持ち、薄板又は小平板の形態を持つものが挙げられる。粒子の一部は、2つ又はそれ以上の平坦な表面を有する。相当量の小平板型の形態を有する粒子の主寸法は、50μm以下、好ましくは20μm以下である。支持体材料としてα−アルミナを用いる場合、小平板型粒子は頻繁に六角形平板に近似する形態を有する。
【0022】
本発明の支持体材料は、一般に多孔質又は微多孔質であってよく、その平均細孔直径は0.01μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜50μm、最も好ましくは1μm〜5μmである。一般に、細孔容積は、0.6ml/g〜1.4ml/g、好ましくは0.8ml/g〜1.2ml/gである。細孔容積は、従来の水銀多孔性又は吸水技術等の任意の公知技術によって測定することができる。
組成的に純粋であり、相として純粋である支持体材料を用いることで、一般に改善された結果が得られる。「組成的に純粋」とは、アルミナ等の実質的に単一の物質であり、不純物は極微量である材料を意味する。「相として純粋」とは、相の点における支持体の均質性を指す。本発明では、α相の純度が高く又は排他的であるアルミナ(すなわち、α−アルミナ)が好ましい。最も好ましいものは、少なくとも98重量%のα−アルミナから成る材料である。
少量の浸出性ナトリウムがあれば、触媒の寿命に悪影響をある場合がある。支持体中の浸出性ナトリウムの量が、触媒の全重量に対して50ppmより低く、好ましくは40ppmより低い場合に、顕著に改善された結果が得られる。本明細書において、浸出性ナトリウムとは、10体積%の硝酸溶液に90℃で1時間、支持体を浸漬して、支持体から抜け出すナトリウムをいう。本発明に適しているナトリウム濃度が50ppm以下であるα−アルミナは、ノートン社等から入手できる。あるいは、適したα−アルミナ支持体材料は、US4379134に記載の方法に従って浸出性ナトリウム濃度を50ppm以下にすることで、調製できる。特に好ましい支持体は、カナダ特許出願番号515,864−8(1986年8月13日出願)に記載されている小平板の形態を持つ高純度のα−アルミナ支持体である。
【0023】
本発明において、触媒の中に、酸化還元半反応対の成分の効率向上塩の少なくとも1つが含まれる。用語「酸化還元半反応」とは、本明細書において、標準還元電位又は標準酸化電位の表に示され、標準又は単極電位として知られる反応式で表わされるもの等の半反応を意味する。これらの反応式は、例えば、“Handbook of Chemistry”, N.A.Lange, McGraw-Hill Book Company, Inc., p.1213〜1218(1961)、“CRC Handbook of Chemistry and Physics”, 65th Edition, CRC Press, Inc., Boca Raton, Florida, p.D 155〜162(1984)等に記載されている。用語「酸化還元半反応対」とは、酸化還元半反応式における酸化及び還元を起こす、原子、分子、イオン又はこれらの混合物の対を意味する。従って、酸化還元半反応対の成分は、従って、特定の酸化還元半反応式に現れる原子、分子又はイオンの1つである。本明細書において、酸化還元半反応対には、化学反応のメカニズムというよりもむしろ所望の性能向上を提供する物質が含まれる。好ましくは、酸化還元半反応対の成分の塩として触媒に付随する化合物は、アニオンがオキシアニオンである塩である。好ましくは、多価原子、すなわち酸素が結合しているアニオンの原子のオキシアニオンは、異種原子に結合するとき、異なる原子価状態で存在することができる。好ましい効率向上塩としては、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム等が挙げられる。
【0024】
本発明の触媒は、好ましくは、触媒物質及び少なくとも1つの効率向上塩を、連続して又は同時に、固体多孔性支持体の上に及び/又は中に付着させることによって調製される。触媒物質及び少なくとも1つの効率向上塩を触媒支持体に導入するいかなる方法も用いることができるが、好ましくは、支持体が含浸又は被覆されることが好ましい。より好ましくは、含浸であり、一般に、金属触媒の可溶性塩又は複合体、及び/又は1以上の効率向上塩の溶液を、適した溶媒又は「複合化/可溶化」剤に溶解させる。この溶液は、金属触媒及び/又は効率向上塩を含有する含浸溶液に多孔性触媒支持体又は担体を浸漬することによって、多孔性触媒支持体又は担体を含浸させるために用いられる。連続的に含浸するとは、最初に1以上の含浸工程で、金属触媒を担体の中に付着させ、その後、別々の含浸工程で塩を付着させることを意味する。
本発明の一態様として、金属触媒が高濃度に含まれている触媒を用いた場合に有益な効果が観察される。含浸によって、前記の触媒を調製するには、いくつかの含浸工程で金属触媒を付着させることが望ましい。従って、高濃度の金属触媒含有触媒、例えば30重量%以上の金属触媒を含有する触媒が所望され、連続含浸が用いられる場合、4工程で行うこともできる。この場合、3工程は金属触媒のみの付着のために、1工程は塩のみの付着のために行ってもよい。一般的には、金属触媒のみの含浸工程は、最初に支持体を金属触媒含有含浸溶液に浸漬することで、好ましくは、支持体粒子を容器内に加えて、容器を排気して、その後、含浸溶液を加えることで、行われる。過剰の溶液は、その後、抜き出すか、又は溶媒を適切な温度で減圧下、留去してもよい。
【0025】
効率向上塩は、任意の適した方法で触媒に導入することができる。一般的に、好ましい量の効率向上塩は、1つの含浸工程で付着させることができる。金属触媒が付着した支持体を効率向上塩の含浸溶液に浸漬した後、過剰の溶液は一般に抜き出され、金属触媒及び効率向上塩を含有する支持体は、例えば80℃〜200℃に加熱することで乾燥させる。2つ以上の酸化還元半反応対の成分の塩を用いる場合は、塩を一緒に又は連続して付着させてもよい。
同時含浸とは、一般に、最終の含浸工程(通常、唯一の含浸工程)で、金属触媒及び1以上の効率向上塩を含有する含浸溶液に支持体を浸漬することを意味する。このような含浸工程は、1つ以上の金属触媒のみの含浸工程を先に行っていても、いなくても良い。従って、同時含浸によって高濃度の金属触媒含有触媒を調製するためには、いくつかの金属触媒のみの含浸工程を行って、続いて金属触媒及び効率向上塩による含浸工程を行っても良い。低濃度の金属触媒含有触媒、例えば2重量%〜20重量%の金属触媒を含有する触媒は、例えば、金属触媒及び効率向上塩の含浸工程を一回のみ行って製造することができる。本明細書において、これらの含浸を同時含浸と呼ぶ。
【0026】
3種類の含浸溶液、すなわち、金属触媒を含有する含浸溶液、効率向上塩を含有する含浸溶液、及び金属触媒と効率向上塩とを含有する含浸溶液について、以下により詳細に説明する。
金属触媒含有含浸溶液の調製に用いられうる適当な溶媒又は複合化/可溶化剤が数多く存在する。適当な溶媒又は複合化/可溶化剤は、十分に金属触媒を溶解し、若しくは可溶化状態に変換することに加えて、続く工程で、例えば洗浄、蒸発、酸化等によって容易に取り除くことが可能であるべきである。また、水溶液が頻繁に用いられるため、溶媒及び複合化/可溶化剤は水と容易に混和することが一般に好ましい。
【0027】
金属触媒含有溶液の調製のための溶媒及び複合化/可溶化剤としては、好ましくは、エチレングリコール等のグリコール等のアルコール、アンモニア、アミン、及びエチレンジアミン、モノエタノールアミン等の水溶性アミン類、及びシュウ酸、乳酸等のカルボン酸等が挙げられる。効率向上塩含有含浸溶液に用いることができ、効率向上塩の溶媒として機能する物質には、金属触媒を溶解せず、支持体から浸出せず、効率向上塩を溶解することができる、いかなる物質も一般に含まれる。水溶液が一般に好まれるが、アルコール等の有機溶媒も用いることができる。同時含浸を行うには、効率向上塩及び金属触媒を共に、用いられる溶媒又は複合化/可溶化剤に可溶でなければならない。
適切な結果は、連続含浸及び同時含浸で得られる。3回以上の含浸工程を繰り返すことで、触媒全体により均一に分布され、より多量の金属触媒を含有する触媒が得られる。同時含浸法で調製された高濃度金属触媒含有触媒は、一般に連続含浸法で調製されたものよりも優れた初期性能を示す。
金属触媒が、触媒支持体に含浸されているのではなく、触媒支持体に被覆されている場合は、スラリー、好ましくは水性スラリーの中で金属触媒を予備成形又は沈殿させて、それによって金属触媒の粒子が担体又は支持体の上に付着し、担体又は支持体を加熱して溶媒を留去したときに担体又は支持体の表面に固着する。
【0028】
調製した触媒中の金属触媒の濃度は、触媒全重量に対して2重量%〜50重量%又はそれ以上であり、好ましくは8重量%〜50重量%である。高濃度の金属触媒含有触媒を用いる場合、その好ましい濃度は30重量%〜60重量%である。低濃度の金属触媒含有触媒を用いる場合、その好ましい濃度は2重量%〜20重量%である。金属触媒は、好ましくは支持体の表面全体に比較的均等に分散される。触媒活性、反応系の効率、触媒の老化速度などの触媒の性能特性、及び触媒物質中の金属触媒の濃度に応じて増加する費用などを考慮して、特定の触媒の最適な金属触媒の濃度を決めなければならない。調製される触媒中の金属触媒のおよその濃度は、金属触媒含浸工程の数、及び含浸溶液中の金属触媒の濃度を適切に選択することによって制御できる。
触媒中の酸化還元半反応対の成分の効率向上塩の量は、直接エポキシ化反応の活性及び効率に影響を与える。酸化還元半反応対の気体の効率向上成分として用いられる化合物、反応器入口流の各成分、特に気体の効率向上成分及び二酸化炭素の濃度、触媒中の金属触媒の量、触媒表面積、支持体の形態及び種類、並びにガス時間空間速度、温度、圧力等の製造条件等に応じて、酸化還元半反応対の成分の塩の最も好ましい量は変化する。好ましい効率向上塩は硝酸カリウムである。触媒中の効率向上塩の量は、アニオンは触媒中でカチオンとモル比でほぼ比例して付随していると考えて、触媒全体の重量に対して効率向上塩のカチオンの重量%で与えられる。
【0029】
効率向上の好ましい量としては、調製された触媒が、触媒全重量に対して塩のカチオンを0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜3.0重量%、さらに好ましくは0.03重量%〜2.0重量%含むことになる量が挙げられる。調製された触媒中の効率向上塩のおおよその濃度は、塩含浸溶液中の効率向上塩の濃度を適切に選択することで制御できる。
酸化還元半反応対の成分の2以上の塩を用いる場合、塩を一緒に又は連続して付着することができる。含浸工程の間に乾燥工程を挟めて2以上の溶液を用いて連続して含浸するよりも、1つの溶液を用いて支持体に塩を導入するのが好ましい。というのも、連続して含浸工程を行えば、第2の塩を含む溶液によって、導入された第1の塩が浸出することがありうるからである。溶解された酸化還元半反応対の成分の効率向上塩と金属触媒とを含有する含浸溶液を調製することで、同時含浸を達成することができる。金属触媒で最初に含浸する場合、金属触媒含有溶液で支持体を含浸させ、金属触媒を含む支持体を乾燥させ、金属触媒を還元して、効率向上塩溶液で支持体を含浸させることによって行うことができる。
【0030】
プロセス運転中に反応器内に保たれる反応条件は、一般的にエポキシ化反応を行う際に使用されるものである。反応器内の反応領域の温度は、一般に180℃〜300℃であり、圧力は、一般に1気圧〜30気圧、典型的には10気圧〜25気圧である。ガス時間空間速度(GHSV)は異なりうるが、一般に1,000hr−1〜16,000hr−1である。
プロピレンオキサイドは、反応器流出物から例えば吸収操作によって回収される。その方法の1つとして、吸収塔の上部に、溶媒、例えば水を加えて、吸収塔の底から反応器流出流を供給して実施される。溶媒はプロピレンオキサイドを吸収して、吸収塔の底から流出し、反応器流出物の残りは吸収塔の上部から流出して再循環流を形成する。プロピレンオキサイドは、その後、例えばプロピレンオキサイドを吸収した溶媒を放散塔に通すことで回収される。
上述したように、再循環流を反応器に戻す前に、再循環流の一部を除去することが好ましい。特定の化合物を選択的に除去することが一般に好ましい。吸収塔又は他の種類の分離手段は、選択的にパージするために用いることができる。
【0031】
再循環流は、一般に、反応系に加えられた希釈剤及び阻害剤、未反応のプロピレン及び酸素、二酸化炭素、水等の反応副生成物、少量のプロピレンオキサイド等を含む。パージ流の除去の後、再循環流は反応器に戻し、好ましくは反応器に入る前、又は入る時に、補給する供給流と混合される。
補給する供給流は、反応物質、すなわちプロピレン、酸素含有ガス、再循環流に含まれない他の物質等を十分な量を含む。
反応に用いられる酸素含有ガスには、純粋な酸素分子、酸素原子、エポキシ化条件下で存在できる酸素原子又は酸素分子から派生する任意の一時的なラジカル種、これらの少なくとも1つと別の気体物質との混合物、及びエポキシ化条件下でこれらのいずれかを生成できる物質等が含まれる。このような酸素含有ガスは、一般には空気、純酸素又はエポキシ化条件下で酸素を生成する任意の他の気体物質として、反応器に導入される酸素である。
補給する供給流は、気体の性能向上ハロゲン化合物、好ましくは有機ハロゲン化合物(例えば、1,2−ジクロロエタン、塩化エチル、塩化ビニル、塩化メチル、塩化メチレン、芳香族ハロゲン化合物等の飽和又は不飽和ハロゲン化合物等)等の1以上の添加剤を含有してもよい。好ましい気体の性能向上ハロゲン化合物として、1,2−ジクロロエタン、塩化エチル等が挙げられる。また、エタン等の炭化水素を、補給する供給流に加えることもできる。空気を酸素含有ガスとして用いる場合のように、補給する供給流に窒素等の希釈剤又はバランスガスを加えることもできる。
【0032】
補給する供給流は、一般に、酸化還元半反応対の気体の効率向上成分を少なくとも1つ含む。本明細書において使用される表現「気体の効率向上化合物」とは、「酸化還元半反応対の気体の効率向上成分」の代替表現である。従って、両表現には、酸化還元半反応対の単一の気体の効率向上成分、及びそれらの混合物が含まれる。用語「酸化還元半反応対」は、本質的に、効率向上塩に関して説明したものと同じ意味を有する。気体の効率向上成分としては、好ましくは、酸素と2以上の原子価状態で存在できる元素とを含有する化合物が挙げられる。酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の好ましい例としては、NO、NO、N、N、エポキシ化条件でNO及び/又はNOを形成することができる任意の物質、又はそれらの混合物等が挙げられる。さらに、上記化合物の1つ、好ましくはNOと、PH、CO、SO、SOの1つ以上との混合物も好ましい。なかでもNOが特に好ましい。
特定の半反応対の2つの成分、すなわち効率向上塩の1成分、及び補給する供給流に含まれる気体の効率向上成分の1成分、例えばKNOとNOの混合物等を用いることも好ましい。KNOとN、KNOとNO、KNOとN等の他の組合せも同様に用いることができる。効率向上塩と気体の効率向上成分との組合せは、反応全体についての一連の半反応式における最初の反応式と最後の反応式に見出されうる。
【0033】
酸化還元半反応対の気体の効率向上成分は、効率及び/又は活性に好ましく影響を及ぼす量で存在することが好ましい。用いる効率向上塩、その濃度、効率向上塩の量に影響を与える上記の他の要因等に基づいて、効率向上塩の正確な量が決定できる。酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の濃度は、通常、反応器入口流の体積に対して0.1ppm〜2000ppmである。反応器入口流中に3体積%の二酸化炭素が存在する場合、気体の効率向上成分は、好ましくは0.1体積ppm〜100体積ppmの量で反応器入口流中に存在する。一酸化窒素を気体の効率向上成分として用いる場合、0.1体積ppm〜80体積ppmの量で存在することが好ましい。反応器入口流中に3体積%の二酸化炭素が存在する場合、一酸化窒素は、気体の効率向上成分として1体積ppm〜40体積ppmの量とすることが好ましい。
窒素バランスガスを用いる場合、反応器入口流内の気体の性能向上ハロゲン化合物の濃度は、通常、5体積ppm〜2000体積ppmである。しかし、気体の性能向上ハロゲン化合物の濃度の好ましい濃度は、用いる効率向上塩、気体の効率向上成分、これらの濃度、効率向上塩の量に影響を与える上記の他の要因等に基づいて、変わる。
プロピレンのエポキシ化のための反応器入口流中の各成分(気体の効率向上成分、効率向上塩は除く)の典型的な範囲を以下に示す。
プロピレン:2体積%〜50体積%
酸素 :2体積%〜10体積%
炭化水素 :2体積%〜5体積%
二酸化炭素:0体積%〜15体積%,好ましくは0体積%〜10体積%、さらに好ましくは0体積%〜5体積%
窒素又はメタン等のバランスガス:残余
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によって、プロピレンをエポキシ化することによるプロピレンオキサイドの高効率的な製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンを接触気相酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、
(a)(i)気体の性能向上有機ハロゲン化合物、(ii)多価元素と結合された形態の酸素を含む化合物から選択される酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の少なくとも1つ、及び(iii)触媒として有効量の金属触媒と、多価元素のオキシアニオンの塩からなる群から選択される少なくとも1つの効率向上量の効率向上塩とを含む支持体上の担持金属触媒の存在下、反応器中、エポキシ化反応条件下、前記プロピレンが酸素含有ガスと接触して、プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び水が生成され、
(ここで、前記効率向上塩の前記オキシアニオンと、前記気体の効率向上成分(ii)とは、共通の多価元素を有し、また同じ酸化還元半反応対に属するか、又は一連の化学的に関連する半反応式の異なる半反応対に属する。)
(b)プロピレンオキサイド、二酸化炭素及び未反応のプロピレンを含む反応器流出物が反応器から抜き出され、
(c)前記反応器流出物に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部が取り除かれ、そして
(d)プロピレンオキサイドが取り除かれた前記反応器流出物の少なくとも一部が前記反応器に再循環され、
前記再循環流が反応器に循環される前に、再循環流から有効量の二酸化炭素を取り除いて、二酸化炭素による前記担持金属触媒の活性低下作用を減らすことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分と、前記の酸化還元半反応対の成分の効率向上塩とが、同じ酸化還元半反応対の成分を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の少なくとも1つが、一酸化窒素、二酸化窒素、N、N、エポキシ化反応条件下で一酸化窒素及び二酸化窒素の少なくとも一つを発生させることができるガス又はこれらの混合物を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分の少なくとも1つが、一酸化窒素、二酸化窒素又はこれらの混合物を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記の酸化還元半反応対の成分の効率向上塩の少なくとも1つが、硝酸カリウムを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記効率向上塩のカチオンが前記触媒の全重量に対して0.01重量%〜5重量%含むことになる量で、前記効率向上塩が前記触媒中に存在する、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応器に入る二酸化炭素の濃度が12体積%以下に維持される、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
1,2−ジクロロエタン、塩化エチル又はこれらの混合物を含む気体の効率向上ハロゲン化合物が反応器中に存在している、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
前記触媒は8重量%〜50重量%の金属触媒を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
前記触媒が固定床反応器中に提供される、請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒が流動床反応器中に提供される、請求項1記載の製造方法。
【請求項12】
前記の酸化還元半反応対の気体の効率向上成分が、さらにホスフィン、一酸化炭素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄の1以上を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
前記金属触媒が、(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する、請求項1〜12のいずれか記載の製造方法。

【図1】
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