説明

プロポリスの臭気及び刺激がマスキングされた多層糖衣物

【課題】
口中でざらつきのないプロポリスを含有する糖衣層を形成し、かつ、プロポリスに由来する臭気、刺激を軽減及びマスキングされた多層糖衣物を提供すること。
【解決手段】
被糖衣物に対して、オクテニルコハク酸エステル化澱粉を乳化剤として0.1〜5%のプロポリスを水性分散させた糖液にて形成したプロポリスを含有する糖衣層と、メントールを含むエタノール溶液を用いて形成したメントールの結晶層を交互に積層することにより、プロポリスの有する臭気と刺激が充分にマスキングされ、容易に摂取可能な多層糖衣物となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロポリスの有する独特の臭気と刺激がマスキングされた多層糖衣物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロポリスは、ミツバチが樹液、花粉、蜜蝋等を混ぜ合わせて作った蜂脂と呼ばれるミツバチの巣から採取される樹脂状の物質であり、フラボノイド、アミノ酸、テルペノイド、多糖類有機酸、カルシウム、亜鉛やセレニウム等のミネラル、ビタミンを含むことが知られている。また、その薬理作用として免疫増強作用、抗菌作用及び抗酸化作用を持つと言われており、昨今の健康志向により様々な食品や医薬品等に添加されたものが市場に存在し、民間治療薬としても注目されている。
【0003】
このような薬理作用や効能が期待できるプロポリスは上記有効成分を含有すると共に、水及び油に不溶なプロポリスをはじめ水に難溶性ないし不溶性の各種成分をも含有する。そのため、食品や医薬品に添加する場合には、有機溶剤としてエタノールや含水エタノールを用いて抽出されたような、溶媒抽出されたプロポリスエキスやプロポリスエキスに乳糖等を加えて粉末化したものが使用されている。これらの処理を行なったプロポリス抽出液は水性溶媒に滴下混合した場合、疎水性樹脂状凝集物が分離析出し沈殿を生じる、容器の内壁へ付着するという現象が見られる。その結果、プロポリスの有効成分類の利用率が低下するだけでなく、使用容器に付着した頑固な脂状物質の洗浄にもコストがかかるという不都合が生じる。このような現象はプロポリスの加工製品や医薬品等への利用においても同様に起こり、有効成分の充分な吸収効率が得られるかどうか疑問視されている。このような事態を鑑みて水抽出されたプロポリス溶液が製造されているが、プロポリス原塊からの抽出効率が10%と低いこと、有効成分であるフラボノイド類が油溶性であるために充分な効果が得られない等の問題を有している。
【0004】
また、プロポリスには水性溶媒に添加した際に沈殿が生じるという問題点と共に、有効成分であるフラボノイド類等に起因する独特の臭気と刺激が存在する。このような欠点を軽減するために、一般的にプロポリスを経口摂取する際に直接有効成分が口内に放散されないように、他の物質と混合して錠剤・丸剤の形状に成形したものに対して糖衣を施す方法、カプセル内に導入する方法等が採られている。しかしながら、上記のような製剤類では、その製造にコストがかかることから工業生産を行なう際に不具合を生じる。また、このような製剤ではプロポリスは経口摂取されたにも関わらず、口内で放散されないために経口吸収には至らず、胃での分解を経て腸管吸収により摂取されることになる。そのため、その含有成分をどれほど有効に摂取できているかということに対して疑問が残る。このような理由から、プロポリスを含有する飲食品では、プロポリス由来の臭気や刺激を抑える必要があった。
【0005】
例えば、プロポリスを含む飲食物において、その臭気、刺激を軽減及びマスキングするための技術として、プロポリス液に特定の植物由来の抽出物(ユーカリエキス、柑橘系エキス、ハーブエキス)を添加する方法(特許文献1参照)、プロポリスを含有する飲用物に食物繊維及び粉末茶を混合する方法(特許文献2参照)、プロポリスの栄養成分をゼリー状のアルギン酸皮膜に内包した飲料の作製法(特許文献3参照)等が知られている。
しかしながら、特許文献1に提示されている方法はプロポリスの有する漢方薬的臭気を緩和することを目的としており、刺激の軽減に関しては言及されていない。特許文献2においては飲用組成物として提示されたものであり、食物繊維や粉末茶を含有する糖液を用いて糖衣層を形成すると、プロポリスの臭気は軽減されるものの刺激の緩和にはいたらず、非水溶性物質である食物繊維や粉末茶に起因するざらつきが生じてしまう。特許文献3においては、アルギン酸皮膜の形成には水分が多量に存在することが必須条件であり、糖液の噴霧、乾燥を経て作製され、全重量に占める水分量が約1%の糖衣物においては充分な効果を発揮するには至らない。
【0006】
本件出願人も、プロポリス由来の臭気を抑える技術として、プロポリスを含有するキャンディ部と、マスキング成分としてミントエキス、ユーカリエキス、ハーブエキス又は柑橘系エキスを含有するキャンディ部とを組み合わせる方法を提案している(特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4のキャンディにおいて、プロポリス由来の臭気は顕著に抑えているものの、刺激は残すことを目的としている。
【0007】
一方、原料由来の臭い等を抑やすい食品の一つとして糖衣等のコーティングを施した食品が知られている。一般に、糖衣食品は、被糖衣物である食品に砂糖及び糖アルコール類を主成分として他の糖類、澱粉等の結合剤を含む水溶液をスプレー等で中心層表面の全域に行き渡らせた後、炭酸カルシウム等の微粉末混合物を散布して中心層相互の結着をふせぎ、次に温風を送って糖衣層を乾燥させる工程を複数回繰り返すことによって作製される。このとき、場合により、色素を含む水溶液をスプレーし温風での乾燥を行う工程を繰り返して糖衣層を着色する方法が採られる。このような糖衣食品を作製する際に使用される糖液にクエン酸、ビタミンC等の酸味料や吸湿性を有する塩類を添加混合もしくは砂糖層と酸味料及び塩類の層を交互に形成することにより砂糖の甘さを軽減させる方法が提示されている(特許文献5及び6参照)。また、吸湿性を有する酸味料を含む糖液と油脂もしくは油脂加工品を含む糖液を用いて多層を形成することにより、有機酸の酸味の感じ方が変化した様々な呈味を有する糖衣菓子が提示されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3017419号公報
【特許文献2】特開平9−308471号公報
【特許文献3】特許第3420445号公報
【特許文献4】特願2008−140403号
【特許文献5】特許第3765419号公報
【特許文献6】特開2008−173017号公報
【特許文献7】特開2007−222157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは上記糖衣食品に着目して、多層構造を有する糖衣菓子において、独特の臭気及び刺激を有するプロポリス層とそれをマスキングする層を交互に形成することにより、安価な方法でプロポリスの臭気と刺激が軽減された食品を提供することができるのではないかと考え、鋭意検討を行なった。
ところが、被糖衣物に対してプロポリスを直接塗布してプロポリス層を形成した際には、被糖衣物表面において流動性のないワックス状の物質となり、舐め心地及び口内での溶解性が著しく低下すること、プロポリスが直接口内に接触するために臭気、刺激が鋭敏であることが本発明者らの研究によって明らかになった。
【0010】
そこで、糖衣に用いる糖液中にプロポリスを分散させたものを作製することができれば、プロポリスを含有する糖衣層の形成が可能となり、マスキング層と組み合わせることでより摂取しやすいプロポリス含有菓子の作製が可能であると考え、さらに鋭意研検討を行なったところ、当該分野で一般的に使用される乳化剤であるショ糖脂肪酸エステルを添加した糖液にプロポリスを混合した場合には、プロポリスに存在する不溶性物質の沈殿が生じて水性分散液とすることができなかった。
また、このようなプロポリス由来の沈殿物が生じた糖液を用いて糖衣層を形成したところ、糖衣表面に不溶性物質の沈殿に起因するざらつき感が生じ、好ましい食感とはならなかった。
【0011】
本発明は、上記のような状況を鑑み、口中でざらつきのないプロポリスを含有する糖衣層を形成し、かつ、プロポリスに由来する臭気、刺激を軽減及びマスキングされた多層糖衣物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明の要旨は、
(1)難溶性物質である溶媒抽出したプロポリスを全重量に対して0.1〜5.0重量%含有し、該プロポリス1重量部に対して0.1〜5.0重量部のオクテニルコハク酸エステル化澱粉を含有する糖衣層と、全重量に対して0.1〜3.0重量%のメントールの結晶層とが交互に少なくとも2層以上の多層を形成していることを特徴とするプロポリスの臭気及び刺激がマスキングされた多層糖衣物、
(2)プロポリスとオクテニルコハク酸エステル化澱粉を混合した後、固形分40〜90重量%の糖液存在下で攪拌して乳化させた後に、得られた乳化物で被糖衣物を被覆し、乾燥させて形成した糖衣層と、該糖衣層をメントールのエタノール溶液で被覆し、乾燥させて形成したメントールの結晶層とが少なくとも2層以上の多層を形成している前記(1)記載のプロポリスの臭気及び刺激がマスキングされた多層糖衣物
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多層糖衣物は、糖衣層中にプロポリスを含有するにも関わらず、不溶性物質由来のざらつきがなく、さらにプロポリスの有する臭気や刺激がマスキングされたものである。したがって、本発明により、良好な風味を有するプロポリス含有食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多層糖衣物は、難溶性物質である溶媒抽出したプロポリスを全重量に対して0.1〜5.0重量%含有し、該プロポリス1重量部に対して0.1〜5.0重量部のオクテニルコハク酸エステル化澱粉を含有する糖衣層と、全重量に対して0.1〜3.0重量%のメントールの結晶層とが交互に少なくとも2層以上の多層を形成していることを特徴とする。
かかる特徴を有することにより、口中でざらつきのないプロポリスを含有する糖衣層を形成し、かつ、プロポリスに由来する臭気、刺激を軽減及びマスキングされた多層糖衣物の作製が可能となる。
【0015】
前記糖衣層で使用するプロポリスは、プロポリス原塊をエタノールや含水エタノールで抽出して得られる抽出物、あるいは超臨界二酸化炭素抽出したプロポリス等、疎水性であり、水に対して難溶性のプロポリスであればどのようなものでも使用できる。また、上記プロポリスは液状のもの及び乳糖等を加えて粉末化したもの等特に限定はない。
【0016】
前記プロポリスは、多層糖衣物の全重量に対して0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜3.0重量%含有されている。前記含有量が0.1重量%未満であるとプロポリスの添加効果が奏され難くなり、また、5.0重量%を超えるとプロポリス特有の臭いをマスキングし難くなる。
【0017】
前記糖衣層で使用するオクテニルコハク酸エステル化澱粉は、米国官報CFR(FDA)172.89(d),1995 に"Food starch−modified"として記載されている、澱粉と有機酸とのエステルであって乳化作用を有するものをいう。澱粉とオクテニルコハク酸との半エステル(米国特許第3,971,852参照)であるオクテニルコハク酸澱粉又はその塩が好ましく、その例としてエマルスター30A(松谷化学株式会社製の商品名)、N−クリーマー(ナショナルスターチ社の商品名)等が挙げられる。
【0018】
本発明では、溶媒抽出したプロポリスをオクテニルコハク酸エステル化澱粉により乳化して、糖衣液中に分散させたものを用いることにより、形成された糖衣層を口中で舐めた場合でもプロポリスの不溶性物質由来のざらつきがなく、滑らかな食感を有する糖衣層の形成が可能となる。
【0019】
前記糖衣層において、オクテニルコハク酸エステル化澱粉は、プロポリス1重量部に対して0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜1.0重量部となるように混合される。0.1重量部以下であると乳化力が不足し、糖衣層形成用の糖液中にプロポリス由来の沈殿物が生じ易くなる。また、5.0重量部を超えて添加した場合には安定な乳化分散性が得られるので乳化に不都合はないが、プロポリス量の増加に伴ってオクテニルコハク酸エステル化澱粉の量が多量となり、糖衣層のおいしさを感じることが困難となる。
【0020】
また、前記糖衣層の基材として使用される糖類としては、砂糖、白双糖、三温糖、黒砂糖等やこれらを構成する単糖類及び二糖類が挙げられる。また、エリスリトール、パラチニット、マルチトール、キシリトール等の糖アルコールも使用できる。中でも、前記糖類として砂糖を用いることが好ましい。砂糖としては、糖衣に使用されているものであれば特に限定はない。砂糖を用いる場合、糖衣層中において砂糖は結晶状態を有することが好ましい。これらの糖類の糖衣層中の含有量としては、前記プロポリス及びオクテニルコハク酸エステル化澱粉以外の残部であればよい。
【0021】
なお、前記糖衣層には、プロポリスの臭いや刺激の抑制効果を損なわない範囲で、香料、調味料、着色料、増粘剤等の添加物を適宜添加してもよい。
【0022】
本発明において、前記糖衣層は、プロポリス、オクテニルコハク酸エステル化澱粉、必要であれば前記の任意成分を混合した後、固形分40〜90重量%の糖液存在下で攪拌して乳化させた後に、得られた乳化物で被糖衣物を被覆し、乾燥させて形成することができる。形成条件等については後述する。
【0023】
本発明において、前記糖衣層の表面に形成されるメントールの結晶層は、多層糖衣物の全重量に対して0.1〜3.0重量%、特に好ましくは0.5〜2.0重量%となるように形成するのがよい。結晶層中のメントールの結晶の大きさとしては、結晶を目視あるいは顕微鏡で確認することができる程度であればよく、特に限定はない。
【0024】
本発明においては、かかるメントールの結晶層を用いる点に一つの特徴があり、メントールの結晶層と、プロポリスを含有する糖衣層とを交互に形成していることで、多層糖衣物を食した場合に、メントールに由来する香りや味が口中において顕著に感じられることで、糖衣層に含まれるプロポリス由来の臭いや刺激を中和して感じにくくできるという優れた効果が奏される。
なお、本発明の多層糖衣物では、最外層をメントールの結晶層としてプロポリス含有層とメントールの結晶層を交互に積層していくことが望ましいが、プロポリス含有層を最外層としてメントールの結晶層とプロポリス含有層を交互に積層してもよい。
【0025】
本発明において、メントールの結晶層は、前記糖衣層をメントールのエタノール溶液で被覆し、乾燥させることで形成することができる。形成条件等については後述する。
【0026】
本発明において、前記糖衣層で被覆される被糖衣物としては、前記の糖衣処理を施しても味や食感が劣化しない食品であればよく、錠菓、キャンディ類(グミキャンディ、ソフトキャンディ、ハードキャンディ等)、油製菓子(チョコレート等)、焼き菓子(クッキー、ビスケット、クルトン等)、砂糖菓子(マシュマロ、金平糖等)等の菓子類、乾燥果物、乾燥野菜、蜂蜜塊等が挙げられるが、特に限定はない。また、これらの被糖衣物の大きさ、形状についても特に限定はない。
【0027】
本発明の多層糖衣物の作製方法を以下に説明する。
(1)糖類、オクテニルコハク酸エステル化澱粉及び水、必要に応じて他の任意成分を混合加熱することにより、固形分40〜80重量%の糖液を調製する。
(2)前記糖液とプロポリス溶液とを混合した後にホモミキサー等の攪拌機を用いて強力に攪拌することにより、プロポリスが乳化した糖液を作製する。
(3)次に被糖衣物を糖衣用の回転釜内に導入し、上記の糖液を被糖衣物に均一にかかるように散布して乾燥する。散布した糖液中の砂糖等の糖類の結晶化を促進させるために回転釜内に送風することが望ましい。この工程により糖衣層が被糖衣物の表面に形成される。
(4)次いでメントールを1〜50重量%含むエタノール溶液を前記糖衣層の表面に均一にかかるように散布して乾燥する。メントール溶液を乾燥することでメントールが結晶化する。なお、メントールの乾燥は、メントールが揮発しないように風乾によって行う。この工程により、メントールの結晶層が前記糖衣層の表面に形成された2層の状態となる。
(5)必要であれば、前記糖液をメントールの結晶層表面に、被糖衣物に均一になるように散布して乾燥する。この工程により、前記糖衣層が前記メントールの結晶層の表面にさらに形成された3層の状態となる。
【0028】
さらに続いて上記(4)の作業を繰り返すことにより、プロポリスを含有する糖衣層とメントールの結晶層とが少なくとも3層以上の多層を形成した多層糖衣物を作製することができる。
【0029】
本発明で被糖衣物を被覆するために用いる糖液の固形分は40〜90重量%、好ましくは60〜80重量%とするのがよい。40重量%よりも少ないと、水分含有量が多いために被糖衣物への水分移行や充分量の糖衣層の形成に時間がかかるという点で実用的ではなく、90重量%よりも多いと糖液の粘性が増し、口当たりのよい滑らかな糖衣層の形成が困難となる。
【0030】
また、前記の糖液やメントール溶液を散布する代わりに、塗布、噴霧、浸漬等の手段を用いてもよい。
【0031】
また、糖衣層やメントールの結晶層を形成する際の温度条件としては、20〜60℃であることが好ましい。なお、メントールの結晶層を形成する際には、メントールが揮発しない温度又は揮発しにくい温度で行うことが好ましい。
【実施例】
【0032】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、実施例中の組成に関する数字は重量部、また「%」は重量%を意味する。
【0033】
(実施例1)
「造粒物の調製」
下記表1に示す組成にて各成分を混練して造粒物(直径約1mm)を作製した。
【0034】
【表1】

【0035】
「糖衣を施すタブレットの作製」
上記で作製した造粒物に対し、下記表2に示す組成で他の添加物を混合して打錠機にて直径6mm、単重0.12gのタブレットを作製した。
【0036】
【表2】

【0037】
「プロポリスを含有する糖液の作製1」
下記表3に示す組成にてプロポリスを2%含有する糖液を作製した。なお、オクテニルコハク酸エステル化澱粉の添加量はプロポリスと同量、固形分は70%に調整した。
【0038】
【表3】

【0039】
上記にて作製したタブレットを糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、上記のように作製した糖液を散布、乾燥する工程を繰り返し、多層になるようにプロポリスを含有する糖衣層を形成した。
また、タブレットの重量に対して2.6倍、4.3倍、6倍、7.6倍、9.3倍の重量まで糖衣した各段階で、メントールを50%含むエタノール溶液を被糖衣物の表面に均一にかかるように散布した。これらの工程を繰り返すことにより、全重量に対して2%のプロポリスを含有する糖衣層と1.5%のメントールの結晶層が交互に積層された多層糖衣物を作製した。
【0040】
得られた多層糖衣物は、プロポリスを含有する糖衣層に不溶性物質由来のざらつきを感じられなかった。また、プロポリスを含有する糖衣層とメントールの結晶層が交互に存在することにより、プロポリスを2%含有しているにも関わらずその臭気と刺激が充分にマスキングされた多層糖衣物であった。
【0041】
(実施例2)
「糖衣を施すキャンディ部の作製」
下記表4に示す組成にてプロポリス含有糖衣を施すためのキャンディを作製した。キャンディを作製するに当たり、砂糖と水飴を混合溶解し、真空釜にて濃縮した後に酸味料と香料を添加した。得られたキャンディは0.5gとなるようにスタンピング成形した。
【0042】
【表4】

【0043】
「プロポリスを含有する糖液の作製2」
表3で作製した糖液において、プロポリス添加量を4%、乳化剤として使用するオクテニルコハク酸エステル化澱粉の添加量を4.5%とした以外は変更点のないプロポリスを含有する糖液を作製した。なお、糖液の固形分は68%とした。
【0044】
上記にて作製したキャンディを糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、プロポリスを含有する糖液を散布、乾燥する工程を繰り返し、多層になるようにプロポリスを含有する糖衣層を形成した。
全重量に対して1.4倍、1.8倍、2.2倍の重量まで糖衣した各段階で、メントールを50%含むエタノール溶液を被糖衣物の表面に均一にかかるように散布した。これらの工程を繰り返すことにより、全重量に対して4%のプロポリスを含有する糖衣層と1.8%のメントールの結晶層が交互に積層された多層糖衣物を作製した。
得られた多層糖衣物は、プロポリスを含有する糖衣層に不溶性物質由来のざらつきを感じられなかった。また、プロポリスを含有する糖衣層とメントールの結晶層が交互に存在することにより、プロポリスを4%含有しているにも関わらずその臭気と刺激が充分にマスキングされた多層糖衣物であった。
【0045】
(実施例3)
実施例1と同様の組成にて直径6mm、単重0.12gのタブレットを作製した。
【0046】
下記表5に示す組成にてプロポリスを1%含有する糖液を作製した。なお、オクテニルコハク酸エステル化澱粉の添加量はプロポリスの5倍量、固形分は70%に調整した。
【0047】
【表5】

【0048】
上記にて作製したタブレットを糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、表5で作製した糖液を散布、乾燥する工程を繰り返し、多層になるようにプロポリスを含有する糖衣層を形成した。
また、タブレットの重量に対して2.6倍、4.3倍、6倍、7.6倍、9.3倍の重量まで糖衣した各段階で、メントールを50%含むエタノール溶液を被糖衣物の表面に均一にかかるように散布した。これらの工程を繰り返すことにより、全重量に対して1%のプロポリスを含有する糖衣層と1.5%のメントールの結晶層が交互に積層された多層糖衣物を作製した。
得られた多層糖衣物は、プロポリスを含有する糖衣層が滑らかな食感を有し、プロポリスを含有する糖衣層とメントールの結晶層が交互に存在することにより、プロポリスを1%含有しているにも関わらずその臭気と刺激が充分にマスキングされた多層糖衣物であった。
【0049】
(実施例4)
実施例2と同様の組成にて、単重0.5gのキャンディ部を作製した。
【0050】
実施例2と同様の組成にてプロポリスを含む糖液を作製した。
【0051】
実施例2と同様の工程にて多層になるようにプロポリスを含有する糖衣層を形成した。
全重量に対して1.4倍、1.8倍、2.2倍の重量まで糖衣した各段階で、メントールを50%含むエタノール溶液を被糖衣物の表面に均一にかかるように散布した。この工程を繰り返し、全重量に対して4%のプロポリスを含有する糖衣層と3%のメントールの結晶層が交互に積層された多層糖衣物を作製した。
得られた多層糖衣物は、メントールのさわやかな香りと刺激によりプロポリスの有する臭気と刺激がマスキングされた糖衣物であった。
【0052】
(実施例5)
実施例1と同様の方法にて、0.2%のプロポリスとその等量のオクテニルコハク酸エステル化澱粉、1%のメントールを含む多層糖衣物を作製した。得られた多層糖衣物はメントールのさわやかな香りと刺激によりプロポリスの有する臭気と刺激がマスキングされた糖衣物であった。
【0053】
(実施例6)
実施例1と同様の方法にて、1%のプロポリスとその添加重量の0.2重量%のオクテニルコハク酸エステル化澱粉、1%のメントールを含む多層糖衣物を作製した。得られた多層糖衣物はメントールのさわやかな香りと刺激によりプロポリスの有する臭気と刺激がマスキングされた糖衣物であった。
【0054】
実施例1と同様の方法にて、1%のプロポリスとその等量のオクテニルコハク酸エステル化澱粉、0.3%のメントールを含む多層糖衣物を作製した。得られた多層糖衣物はメントールのほのかな香りと刺激によりプロポリスの有する臭気と刺激がマスキングされた糖衣物であった。
【0055】
(比較例1)
実施例1と同様の組成にて直径6mm、単重0.12gのタブレットを作製した。
【0056】
「プロポリスを含有する糖液の作製3」
下記表6に示す組成にてプロポリスを8%含有する糖液を作製した。なお、オクテニルコハク酸エステル化澱粉の添加量はプロポリスの0.5倍量、固形分は70%に調整した。
【0057】
【表6】

【0058】
実施例1と同様の工程にて多層になるようにプロポリスを含有する糖衣層を形成した。
全重量に対して2.6倍、4.3倍、6倍、7.6倍、9.3倍の重量まで糖衣した各段階で、メントールを50%含むエタノール溶液を被糖衣物の表面に均一にかかるように散布した。これらの工程を繰り返すことにより、全重量に対して8%のプロポリスを含有する糖衣層と1%のメントールの結晶層が交互に積層された多層糖衣物を作製した。
得られた多層糖衣物は、プロポリスを含有する糖衣層に不溶性物質由来のざらつきを感じられなかったが、メントールの結晶層によるマスキング効果が弱く、プロポリスの臭気と刺激が非常に強いものであった。
【0059】
(比較例2)
実施例1と同様の組成にて直径6mm、単重0.12gのタブレットを作製した。
【0060】
「プロポリスを含有する糖液の作製4」
下記表7に示す組成にてプロポリスを3%含有する糖液を作製した。なお、オクテニルコハク酸エステル化澱粉の添加量はプロポリスの0.05倍の量とし、固形分は70%に調整した。しかしながら、プロポリス添加量に対してオクテニルコハク酸エステル化澱粉の添加量が少ないために充分な乳化効果が得られず、得られた糖液中には分散できないプロポリスが不溶性沈殿として存在していた。また、この糖液を用いて上記タブレットに対して糖衣層の形成を試みたが、糖衣層には口中でのざらつきが見受けられた。
【0061】
【表7】

【0062】
(比較例3)
実施例2と同様の組成にて、単重0.5gのキャンディ部を作製した。
【0063】
「プロポリスを含有する糖液の作製5」
表3で作製した糖液において、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを用いた以外は変更点のないプロポリスを含有する糖液を作製した。作製した糖液にはプロポリスが乳化せず、糖液中にプロポリスに由来する沈殿が生じた。なお、糖液の固形分は68%とした。
【0064】
実施例2と同様の工程にて多層になるようにプロポリスを含有する糖衣層を形成した。
全重量に対して1.4倍、1.8倍、2.2倍の重量まで糖衣した各段階で、メントールを50%含むエタノール溶液を被糖衣物の表面に均一にかかるように散布した。これらの工程を繰り返すことにより、全重量に対して4%のプロポリスを含有する糖衣層と1.8%のメントールの結晶層が交互に積層された多層糖衣物を作製した。
得られた多層糖衣物は、プロポリスを含有する糖衣層に不溶性物質由来のざらつきが感じられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性物質である溶媒抽出したプロポリスを全重量に対して0.1〜5.0重量%含有し、該プロポリス1重量部に対して0.1〜5.0重量部のオクテニルコハク酸エステル化澱粉を含有する糖衣層と、全重量に対して0.1〜3.0重量%のメントールの結晶層とが交互に少なくとも2層以上の多層を形成していることを特徴とするプロポリスの臭気及び刺激がマスキングされた多層糖衣物。
【請求項2】
プロポリスとオクテニルコハク酸エステル化澱粉を混合した後、固形分40〜90重量%の糖液存在下で攪拌して乳化させた後に、得られた乳化物で被糖衣物を被覆し、乾燥させて形成した糖衣層と、該糖衣層をメントールのエタノール溶液で被覆し、乾燥させて形成したメントールの結晶層とが少なくとも2層以上の多層を形成している請求項1記載のプロポリスの臭気及び刺激がマスキングされた多層糖衣物。