説明

プロポリスエキス及びその抽出方法

抽出溶媒にアルコールを含有しないトリグリセルドあるいは脂肪酸類を用いるので、体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人でも使用可能なプロポリスエキスを抽出することができる。また、油を抽出溶媒とすることにより、プロポリスの有効成分であるアルテピリンCを十分に抽出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロポリスエキス及びその抽出方法に関する。さらに詳しくは、油を用いた新規なプロポリスエキス及びその抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミツバチの生産物であるプロポリスは、ミツバチそのものを守るだけでなく、人間にとっても密接なものであり昔から例えば、外用薬あるいは内服薬として様々な用途に利用されていた。それにもかかわらず、現代科学の進歩と共にその存在は忘れられてしまっていた。しかし、そのような現代科学で作られた化学薬品の副作用などの弊害が問題視されたことから、自然の生成物であるプロポリスが再び脚光を浴び始めた。
【0003】
プロポリスの有効成分であるフラボノイド類やフェノール酸類,あるいはカフェ酸フェネチルエステル(CAPE)などを代表とするフェノール酸エステル類などは、例えば細胞膜の強化作用,免疫機能の活性化作用,血管壁の出血阻止作用,抗菌作用,抗炎作用,抗癌作用,抗アレルギー作用,抗ウィルス作用,活性酸素消去作用(抗酸化作用)といった様々な作用効果を有し、特にこの活性酸素消去作用は発癌予防だけにとどまらず、LDL(低比重リボタンパク)や細胞の酸化が引起す病気を予防することが知られている。さらに最近では、鎮痛剤としての局所麻酔作用,組織再生作用(創傷治癒作用),植物発芽抑制作用,免疫機能増強作用などの作用効果を有すことが注目されている。
【0004】
前述のように、プロポリスには優れた作用効果を示す成分が含まれており、この優れた有効成分をプロポリスの原塊からいかに効率よく抽出するかが課題となっている。そこで、プロポリスエキスを効率よく抽出する手法の一つとして、例えば特許文献1にはプロポリス原塊に水比率を10〜35容量%としたエタノールと水との混合溶液を加えて、プロポリスエキスを抽出する方法が開示されている。この抽出方法は、エタノール単独で抽出されたプロポリスエキス(抽出効率約28%)や水単独で抽出されたプロポリスエキス(抽出効率約7%)に比べ抽出効率がよくなるように改善されたものである。
【特許文献1】特開平10−338641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アルコールを含有する抽出溶媒を用いた抽出方法では体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人には使用できないといった問題があった。それにもかかわらず、これまでアルコールを含有しない抽出溶媒でプロポリスエキスを抽出する方法は見出されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、アルコールを含有しない新規なプロポリスエキス及びその抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、抽出溶媒として油を用いてプロポリスエキスを抽出できることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
本発明の請求項1記載のプロポリスエキスの抽出方法は、プロポリス原塊の粉砕物にトリグリセリドを加えて抽出することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項1記載のプロポリスエキスの抽出方法によれば、抽出溶媒にアルコールを含有しないトリグリセリドを用いるので、体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人でも使用可能なプロポリスエキスを抽出することができる。また、従来のアルコール含有抽出方法に比べ抽出スペクトルが低極性側に広がり、プロポリス中に含まれる低極性の有効成分、例えばアルテピリンCを十分に抽出することができる。
【0010】
本発明の請求項2記載のプロポリスエキスの抽出方法は、前記トリグリセリドがオレイン酸を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2記載のプロポリスエキスの抽出方法によれば、血中のコレステロールを減少させ、血液をさらさらにする作用及びプロポリスの種々の作用を有するプロポリスエキスを抽出することができる。
【0012】
本発明の請求項3記載のプロポリスエキスの抽出方法は、プロポリス原塊の粉砕物に脂肪酸を加えて抽出することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3記載のプロポリスエキスの抽出方法によれば、抽出溶媒にアルコールを含有しない脂肪酸類を用いるので、体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人でも使用可能なプロポリスエキスを抽出することができる。また、従来のアルコール含有抽出方法に比べプロポリスの有効成分であるアルテピリンCを十分に抽出することができる。
【0014】
本発明の請求項4記載のプロポリスエキスの抽出方法は、前記脂肪酸がオレイン酸を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4記載のプロポリスエキスの抽出方法によれば、血中のコレステロールを減少させ、血液をさらさらにする作用及びプロポリスの種々の作用を有するプロポリスエキスを抽出することができる。
【0016】
本発明の請求項5記載のプロポリスエキスは、請求項1記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6記載のプロポリスエキスは、請求項2記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項7記載のプロポリスエキスは、請求項3記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項8記載のプロポリスエキスは、請求項4記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項5〜8記載のプロポリスエキスによれば、体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人でも使用できる。また、プロポリスの有効成分及びトリグリセリドあるいは脂肪酸類の有効成分を有し、細胞膜の強化作用,免疫機能の活性化作用,血管壁の出血阻止作用,抗菌作用,抗炎作用,抗癌作用,抗アレルギー作用,抗ウィルス作用,活性酸素消去作用(抗酸化作用)などの種々の有効な作用効果を発揮することができ、さらに、それらの作用を有するプロポリスエキスを飲食物,化粧品及び医薬品などに添加して利用することができる。特に、アルコール分や水分によって変質や変形を来すような基剤や被覆材との組み合わせによる製品成形において、その有用性が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本実施形態のプロポリスエキスの抽出方法は、そのままでは利用しにくい塊状のプロポリス原塊を所要の粒度(粒径5mm以内)に粉砕した粉砕物に、トリグリセリドあるいは脂肪酸類を所望量加えて、所定の温度及び時間の間、攪拌しながら混和融溶してプロポリスエキスを抽出するものである。さらに、上述のように得られたプロポリスエキスは、濾過又は遠心分離等の固液分離に供され、液状のプロポリスエキスとして得られる。さらに、濾過又は遠心分離後の残渣に再度油を加えて攪拌し、プロポリスエキスを溶出させ、その後その溶液を遠心分離にかけて上澄液を採取し、これを上記と同様に液状プロポリスエキスとして回収してもよい。
【0023】
原料のプロポリスは、塊状物であって、主に樹脂・バルサム(50〜55%)と、蜂ろう(25〜30%)と、精油・エーテル油(10%)と、花粉(5%)とから構成されており、色は黒っぽいものから、褐色、黄褐色、黄緑色したものがある。臭いは、ほのかに芳香を有するものから、少し蜂蜜がかった樹脂のような特異臭を発するものがある。また、味はわずかに苦く、やや収斂性があって舌を麻痺させるものがある。さらに、性状としては、強度な粘性を有しており、手で温めると軟化するが15度で固化し、60〜70度で溶解する。しかし、プロポリスの組成や性状は産地によって大きく異なる。
【0024】
プロポリス原塊は、ブラジル,米国,中国,ヨーロッパ,オセアニアなどで生産され、いずれも本発明に用いることができる。ブラジル以外で生産されるプロポリスは、産地で多少の差はあるものの起源植物が主としてポプラ類であるのに対し、ブラジル産のプロポリスには、起源植物を「アレクリン」と呼ばれる多年性の草本としたものが多く、それにはアルテピリンCが多く含まれている。このアルテピリンCは、株式会社林原生物化学研究所で発見、分離された化合物で、化学合成された抗癌剤と比較すると抗癌作用は弱いが、動物に対する副作用はほとんどみられない。また、アルテピリンCはDNA合成を阻害してアポトーシスを誘発し、癌細胞を消滅させるため、培養細胞を使用したin vitroの実験においては人の各種癌細胞や白血病細胞を50〜100μg/mlで1日処理するとその各種癌細胞や白血病細胞のほとんどを死滅させ、さらに動物実験においては抗癌作用だけでなく免疫賦活作用も有す。
【0025】
プロポリスの有効成分としては、例えばフラボノイド類,アルテピリンC,フェノール酸類,有機酸類,芳香族アルデヒド類,芳香族酸類,クマリン類などが挙げられ、それらの有効性は、細胞膜の強化作用,免疫機能の活性化作用,血管壁の出血阻止作用,抗菌作用,抗炎作用,抗癌作用,抗アレルギー作用,抗ウィルス作用,活性酸素消去作用(抗酸化作用)などに表れる。したがって、本発明に用いるプロポリス原塊は、上記の種々の有用な作用効果を示す有効成分を少なくとも含むものである。
【0026】
本発明に用いるトリグリセリドあるいは脂肪酸類は、植物性油を用いることが好ましく、例えばオリーブ油,菜種油,コーン油,紅花油,ひまわり油などが挙げられ、さらに好ましくはオレイン酸含量の多い油である。また、2種類以上の植物性油を混合した混合油であってもよい。さらに、酢酸を含む脂肪酸を用いてもよい。植物性油の中には、中鎖脂肪酸,植物性ステロール,γ−リノレン酸,α−リノレン酸,オレイン酸及びリノール酸などの成分が含まれていることが知られており、それらの植物性油の成分は健康維持に大きな役割を持つ。さらに、植物性油を使用する利点としては、例えば、炭水化物やタンパク質は1gあたり4キロカロリーなのに対して、植物性油は1gあたり約9キロカロリーと少量でエネルギーを効率良く体内に供給できる。また、人の体内で作ることができず、かつ体の正常な発育や機能を果たすのに欠かせない必須脂肪酸を大量に含有し、この必須脂肪酸を効率よく摂取するのに植物性油は適している。さらに、植物性油は、不足すると不妊症,成長障害及び中枢神経障害などを引き起こしかねないビタミンEを多量に含有し、ビタミンE及びその他のビタミン類の体内への吸収を高めることができるなどの利点を有する。
【0027】
また、一価不飽和脂肪酸を代表する脂肪酸であるオレイン酸(炭素数18、二重結合数1)は、オリーブ油,高オレイン酸タイプの紅花油やひまわり油などの一般の食用油などに含まれており、オレイン酸の代表的な効果として、血中のコレステロールを減少させ、血液をさらさらにすることが知られている。人体の血液中のコレステロールは、善玉コレステロール(HDL)や悪玉コレステロール(LDL)と呼ばれる形で存在しており、悪玉コレステロールが過剰に存在すると酸化され、LDL(悪玉)コレステロールが、活性酸素と結びつき活性型LDL(超悪玉)コレステロールとなり、血管壁内に沈着すると動脈硬化などの原因になると言われている。しかし、オレイン酸は善玉コレステロールを減少させずに、この悪玉コレステロールだけを減少させ、かつリノール酸などに比べると酸化されにくいため体内で発癌のもとになる過酸化脂質を作りにくい。
【0028】
上述のように、様々な利点を有する植物性油、特にオレイン酸を多量に含有する植物性油を使用して抽出することによって、プロポリスの有効成分だけでなく、植物性油の持つ有効成分も同時に体内に取入れることが可能なプロポリスエキスを抽出することができる。
【0029】
さらに、抽出溶媒がトリグリセリドあるいは脂肪酸類であるため、従来のアルコールを含有した抽出溶媒と異なり、体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人でも利用可能なプロポリスエキスを抽出することができる。また、従来の含水アルコール抽出方法に比べ抽出スペクトルが低極性側に広がり、プロポリスの有効成分であるアルテピリンCを十分に抽出することができる。
【0030】
本発明のプロポリスエキスの抽出におけるトリグリセリドあるいは脂肪酸類の量は、重量基準でプロポリスに対して2〜10倍量が好ましい。
【0031】
抽出時間は、1〜24時間が好ましく、6〜24時間がより好ましい。抽出時間が1時間未満の場合、抽出効率が低下し、目的とする有効成分を十分に抽出できない。一方、抽出時間が6時間を超えると抽出効率はほぼ一定となる。
【0032】
抽出温度は、温度変化による抽出成分の変性が少ないため特に限定されないが、低温度で抽出するのが好ましく、具体的には約40〜60℃で抽出するのが好ましい。
【0033】
このようにして得られる本発明のプロポリスエキスは、体質的に、あるいは宗教上の理由からアルコールを服用できない人でも使用できる。また、単独で使用されるのみならず、必要に応じて、化粧品,食品,医薬品等で一般的に使用されている他の成分、例えばビタミン類,安定剤,着色剤,香料などを配合してもよい。
【0034】
また、本発明のプロポリスエキスの用途として、本発明のプロポリスエキスを、飲食物などのように経口的に摂取される食品組成物、例えば飲料,乳製品(具体的にはマーガリン,バター,チーズなど),食用オイル,ドレッシング,栄養補助食品,飴類,菓子類,調味料等に配合して利用してもよい。
【0035】
さらに、本発明のプロポリスエキスを、化粧品(例えば化粧水,乳液,クリーム,リップクリーム,日焼け止め,口紅,マッサージ油など)、アロマセラピーなどの代替医療品,医薬品などに配合して利用してもよい。
【0036】
本発明のプロポリスエキスを食品組成物や化粧品などの各種組成物に配合させる方法としては、それらの製品が完成するまでの工程で、例えば混和,散布,塗布,注入などの公知の方法が適宜選ばれる。
【0037】
以下、本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
抽出溶媒をそれぞれオレイン酸,水,75容量%エタノールおよび100容量%エタノールとしたときの温度変化による抽出の比較実験を行った。以下にその詳細を説明する。
【0039】
まず、原塊の場所によって含まれる成分にばらつきがみられるのを防ぐ為、冷凍したブラジル産プロポリスの原塊を粉砕器の容量に合わせて少量(各回約10g)ずつ粉砕し、粒度5mm以下の粉砕物を得た。次に、オレイン酸(関東化学株式会社 鹿1級 オレイン酸 Cat. No. 31028-01),水,エタノール水溶液(75容量%)及びエタノール(関東化学株式会社 試薬特級 エタノール Cat. No. 14033-70)の4種類の抽出溶媒を各9g測定しチューブに入れ、各チューブに予め得られたプロポリスの原塊粉砕物をそれぞれ1g添加し、抽出溶媒と前記粉砕物の合計重量を10gとした。その後、40℃に保温したウォーターバス(イワキ サーモレギュレータ,CTR-220, シェーカーインキュベータ; SHK-101B)に各チューブを入れ、15分間抽出を行った。なお、抽出の間、常にこのチューブをボルテックスミキサー(イワキ TM-152)にかけて、チューブの底に溜まったものを攪拌した。抽出後、プロポリス抽出液を25℃、2000rpmで10分間遠心機(日立, 05PR-22)にて遠心分離することによって、それぞれ抽出液と残渣を得た。なお、抽出温度60℃,80℃及び100℃においても上記と同様の操作を繰返し、それぞれの抽出液と残渣を得た。
【0040】
次に、得られた抽出液100mgを100%エタノールで10倍に希釈し、ボルテックスミキサーにかけて、小型卓上遠心機(ミリポア)で1000rpm、1分間遠心分離した。その上澄液を再び100%エタノールで液量の300倍に段階的に希釈した。標準試料として100%エタノールを用いて分光光度計(日立 U-1200)で吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、各温度のオレイン酸抽出液には紫外部、特に波長298nmと227nm付近に吸収のピークが存在した。また、オレイン酸の最大吸収波長は228nm付近であったことから,オレイン酸抽出液の227nm付近のピークはオレイン酸由来のものであると考えられる。また、水抽出、75容量%エタノール抽出、100容量%エタノール抽出においても298nm付近にピークが見られたことから298nm附近の波長はプロポリス由来の成分の吸収波長と考えられ、オレイン酸を抽出溶媒としても主要なプロポリス成分を含有するプロポリスエキスができたことがわかった。
【実施例2】
【0043】
実施例1の方法で抽出したオレイン酸抽出液,水抽出液,100容量%エタノール抽出液及び75容量%エタノール抽出液の抽出液の比較をHPLCによって評価した。
【0044】
まず、得られた抽出液100mgを100%エタノールで10倍に希釈し、ボルテックスミキサーにかけて、遠心機(日立, 05PR-22)で3000rpm、10分間遠心分離した。その上澄液を75%エタノールで5倍に希釈し、その希釈液をボルテックスミキサーで攪拌し、シリンジ(テルモ, ss-02Sz)を用いてシリンジフィルター(孔径0.2um,PTFE,チタン, 42213-NP)で濾過し、濾液をサンプル瓶に入れた。HPLC(ポンプ:日立 L-7100,ダイオードアレイ検出器:DAD, 日立 L-7455,カラムオーブン:日立 l-7300,オートサンプラー:日立 L-7200,カラム:イナートシル C8 4.6x150mm, ジーエルサイエンス)の溶出条件を表2に示し、結果を図1に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
図1のHPLCのデータにおいて、保持時間(RT)の短いピークの回収率は、エタノールと比較して20%程度とかなり低い値となった。今回使用したHPLCのカラムイナートシル C8は逆相分配カラムであり、親水性の高いものから溶出するので、これらの低いピークはオレイン酸では抽出しにくい親水性の高い成分であると考えられる。しかし、12分以降は、エタノール抽出により抽出されたプロポリス成分がオレイン酸抽出でも回収された。特にブラジル産プロポリスの有効成分であるアルテピリンC(保持時間24分)は40〜60℃抽出で77%回収でき、この前後の成分では回収率が100%に達するものもあった。
【0047】
なお、図1に示されたように抽出温度による抽出成分の構成比には変化は少ない。生物由来のものを抽出するのであれば、好ましくは低温度で抽出をする方がよく、最適な抽出温度は40〜60℃が好ましい。
【実施例3】
【0048】
有効成分アルテピリンCを含有するプロポリス抽出液の吸収スペクトルを調べるとともに、最適抽出時間を検討した。以下にその詳細を説明する。
【0049】
まず、実施例2の方法でブラジル産プロポリスの粉砕物を得た。次に、プロポリス:オレイン酸の重量比が1:9,1:4,1:3,1:2及びプロポリス:75容量%エタノールの重量比が1:9の5種類のサンプルを準備した。その後、40℃に保温したウォーターバスに各サンプルを入れ、0.25,1,6及び24時間抽出を行った。なお、抽出の間、常にこのチューブをボルテックスミキサーにかけて、チューブの底に溜まったものを攪拌した。抽出後、プロポリス抽出液を25℃、3000rpmで10分間遠心機(日立, 05PR-22)にて遠心分離することによって、それぞれ抽出液と残渣を得た。
【0050】
次に、得られた抽出液を実施例1の方法で高速液体クロマトグラフィで分析し、アルテピリンCのピーク高(吸光度AU値)を求め,抽出時の温度条件による変動を比較した。結果を図2に示す。
【0051】
同じ割合でプロポリスエキスを抽出したオレイン酸抽出(1:9)と75容量%エタノール抽出(1:9)を比較すると、75容量%エタノールの方は時間が経過してもさほど相対抽出量が変化しないのに対し、オレイン酸抽出の方は時間の経過と共にピークが高くなり、相対抽出量が増加している(図2参照)。この結果から、ブラジル産プロポリスの有効成分であるアルテピリンCは長時間抽出することによって75容量%エタノール抽出よりもオレイン酸抽出の方が効率よく抽出ができることがわかった。また、この実験において、オレイン酸抽出は75容量%エタノール抽出と同等、またはそれ以上の有効成分を抽出できることが明かとなった。
【0052】
さらに、抽出時間が約6時間経過後から吸光度の増加が見られないことから、オレイン酸抽出によるプロポリスの抽出時間は約6時間抽出すればよいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例2におけるHPLCの結果を示すチャートである。
【図2】本発明の実施例3におけるプロポリスエキスの有効成分であるアルテピリンCの抽出率を吸光度で表したものである。
【図1(A)】

【図1(B)】

【図1(C)】

【図1(D)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポリス原塊の粉砕物にトリグリセリドを加えて抽出することを特徴とするプロポリスエキスの抽出方法。
【請求項2】
前記トリグリセリドは、オレイン酸を含有することを特徴とする請求項1記載のプロポリスエキスの抽出方法。
【請求項3】
プロポリス原塊の粉砕物に脂肪酸を加えて抽出することを特徴とするプロポリスエキスの抽出方法。
【請求項4】
前記脂肪酸は、オレイン酸を含有することを特徴とする請求項3記載のプロポリスエキスの抽出方法。
【請求項5】
請求項1記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とするプロポリスエキス。
【請求項6】
請求項2記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とするプロポリスエキス。
【請求項7】
請求項3記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とするプロポリスエキス。
【請求項8】
請求項4記載の抽出方法で抽出されたことを特徴とするプロポリスエキス。

【図2】
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【公表番号】特表2007−530433(P2007−530433A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528941(P2006−528941)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/JP2005/006691
【国際公開番号】WO2005/094853
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(593171592)学校法人玉川学園 (38)
【出願人】(504127393)精文館株式会社 (1)
【Fターム(参考)】