説明

プローブ

【課題】側方に位置する壁面からの蛍光を確実に受光する。
【解決手段】体内の管腔Kへ挿入されて励起光を生体組織の観察対象部位へ照射するとともに、この励起光に起因する蛍光を検出するプローブ2は、互いに対向した状態で当該プローブ2の先端側に向けて配設された2つの正レンズ40,41を有する対物光学系4と、先端面300を対物光学系4に向けて対物光学系4の光軸Jからオフセットされた位置に配設されるとともに、当該対物光学系4を介して先端面300から蛍光を受光する複数の光ファイバ30bと、光ファイバ30b及び2つの正レンズ40,41のうち、少なくとも2つを対物光学系4の光軸Jに沿って移動させる移動機構部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の観察対象部位へ励起光を照射し、この励起光によって生体組織や、予め生体に注入しておいた薬物から発生する蛍光を検出するプローブが開発されており、生体組織の変性や癌等の疾患状態(例えば、疾患の種類や浸潤範囲)の診断に用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
このようなプローブの先端部には、励起光の照射や蛍光の受光を行うための光ファイバの端面が先端側に向けて配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6577391号明細書
【特許文献2】米国特許第6870620号明細書
【特許文献3】特開2002−301018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプローブでは、プローブ正面方向から入射する蛍光のみしか受光できないため、食道などの管腔に挿入される場合には、側方に位置する壁面からの蛍光を受光し難く、診断の精度が低下してしまう。
【0006】
本発明の課題は、側方に位置する壁面からの蛍光を確実に受光することのできるプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、体内の管腔へ挿入されて励起光を生体組織の観察対象部位へ照射するとともに、この励起光に起因する蛍光を検出するプローブにおいて、
互いに対向した状態で当該プローブの先端側に向けて配設された少なくとも2つのレンズを有する対物光学系と、
先端面を前記対物光学系に向けて当該対物光学系の光軸からオフセットされた位置に配設されるとともに、当該対物光学系を介して前記先端面から前記蛍光を受光する複数の光ファイバと、
前記光ファイバと、前記対物光学系における前記2つのレンズとのうちの少なくとも2つを前記対物光学系の光軸に沿って移動させる移動機構部とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のプローブにおいて、
前記複数の光ファイバのうち、少なくとも前記対物光学系の光軸からのオフセット量が互いに異なる前記光ファイバの先端面は、
前記対物光学系の光軸に沿って互いに位置がずれていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のプローブにおいて、
前記複数の光ファイバの先端面は、
前記対物光学系の光軸に近いほど、当該プローブの先端側に配設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載のプローブにおいて、
前記複数の光ファイバの先端面は、
前記対物光学系の光軸を中心として同心円状に配設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載のプローブにおいて、
当該プローブの径方向に膨張して管腔の内壁に密着するバルーンを外周部に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、互いに対向した状態で当該プローブの先端側に向けて配設された少なくとも2つのレンズを有する対物光学系と、先端面を対物光学系に向けて当該対物光学系の光軸からオフセットされた位置に配設されるとともに、当該対物光学系を介して先端面から蛍光を受光する複数の光ファイバと、光ファイバ及び対物光学系における2つのレンズのうちの少なくとも2つを対物光学系の光軸に沿って移動させる移動機構部とが具備されるので、対物光学系の焦点距離や集光(結像)の度合いを変更して、プローブの側方に位置する壁面からの蛍光を各光ファイバの先端面に集光(結像)させることができる。従って、食道などの管腔に挿入される場合に、プローブの側方に位置する壁面からの蛍光を確実に受光することができる。
また、受光用の光ファイバが複数具備されるので、複数の観察対象部位からの蛍光をそれぞれ検出することができる。従って、診断速度を高速化することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、複数の光ファイバのうち、少なくとも対物光学系の光軸からのオフセット量が互いに異なる光ファイバの先端面は対物光学系の光軸に沿って互いに位置がずれているので、対物光学系の光軸に沿って異なる各位置におけるプローブ側方の壁面からの蛍光を、各光ファイバの先端面で集光(結像)させることができる。よって、プローブ側方の壁面からの蛍光をより確実に受光することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、複数の光ファイバの先端面は対物光学系の光軸に近いほど、プローブの先端側に配設されているので、対物光学系の光軸に沿って異なる各位置におけるプローブ側方の壁面からの蛍光を、対物光学系によって各光ファイバの先端面に確実に集光(結像)させることができる。よって、プローブ側方に位置する壁面からの蛍光をより確実に受光することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、複数の光ファイバの先端面は対物光学系の光軸を中心として同心円状に配設されているので、環状の観察対象部位から蛍光を検出することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、プローブの径方向に膨張して管腔の内壁に密着するバルーンが外周部に具備されるので、観察中に観察対象部位がずれてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】診断装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明に係るプローブの概略構成を示す概念図である。
【図3】本発明に係るプローブの概略構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1は、本発明に係るプローブを適用した診断装置1の全体構成を示す概念図である。
【0019】
この図に示すように、診断装置1は、体内の管腔Kにおける生体組織の変性や癌等の疾患状態(例えば、疾患の種類や浸潤範囲)の診断を行う装置であり、光源10と、プローブ2と、分光器11と、スペクトル解析装置12とを備えている。
【0020】
光源10は、キセノン光などの励起光を発生させるものであり、波長選択フィルタを介してプローブ2に連結されている。
【0021】
プローブ2は、体内の管腔Kへ軸方向Xに沿って挿入されるものであり、図2(a)に示すように、筒状のシース20の内部に対物光学系4と、光ファイバ群3とを備えている。
【0022】
対物光学系4は、正の屈折力を有する2つの正レンズ40,41を有している。これらの正レンズ40,41は、互いに対向した状態でプローブ2の先端側に向けて配設されており、本実施の形態においては、それぞれプローブ2の中心軸に光軸Jを一致させている。なお、このような対物光学系4としては、従来より公知のズームレンズを用いることができる。
【0023】
光ファイバ群3は、光源10で発生する励起光を生体組織の観察対象部位へ照射するとともに、この励起光に起因して生体組織や、予め生体に注入しておいた薬物から生じる蛍光を受光するものである。この光ファイバ群3は、蛍光を受光するための受光用の光ファイバ30bを複数有している。
【0024】
これら複数の光ファイバ30bは、先端面300を対物光学系4に向けて、当該対物光学系4の光軸Jからオフセットされた位置に配設されており、対物光学系4を介して先端面300から蛍光を受光するようになっている。ここで、複数の先端面300は、対物光学系4の光軸Jを中心として同心円状に配設されるとともに、対物光学系4の光軸Jからのオフセット量に応じて、対物光学系4の光軸J(プローブ2の軸方向X)に沿って互いに位置がずれており、本実施の形態においては、対物光学系4の光軸Jに近いほどプローブ2の先端側に配設されている。但し、複数の光ファイバ30bのうち、少なくとも対物光学系4の光軸Jからのオフセット量が互いに異なる光ファイバ30bの先端面300が当該対物光学系4の光軸Jに沿って互いに位置がずれている限りにおいて、各先端面300は他の形態に配設されていても良い。
【0025】
また、光ファイバ群3は、光源10で発生する励起光を生体組織の観察対象部位へ対物光学系4を介して発散光、平行光または集束光として照射するための照射用の光ファイバ30aを備えている。この光ファイバ30aは、図2(a)に示すように、受光用の光ファイバ30bと同一であっても良いし、図2(b),(c)に示すように、別々であっても良い。なお、図2(b)では、光ファイバ30aが対物光学系4の光軸J上に1本のみ設けられており、図2(c)では、複数の光ファイバ30aが各光ファイバ30bに併設されている。但し、図2(c)の光ファイバ30aでは、隣接する光ファイバ30bに対応する観察対象部位のみへ、対物光学系4を介して拡散度合いの小さい励起光(集束光)を照射するようになっているのに対し、図2(b)の光ファイバ30aでは、各光ファイバ30bに対応する観察対象部位へ励起光を照射する必要があるため、図2(c)の光ファイバ30aと比較して拡散度合いの大きい励起光(発散光)を、対物光学系4を介して出射するようになっている。
【0026】
なお、以上の光ファイバ30a,30bは、バンドルファイバで構成されることが好ましい。
また、以上のプローブ2には、図1に示すように、正レンズ40,41と、光ファイバ群3とのうち、少なくとも2つを対物光学系4の光軸Jに沿ってそれぞれ独立に移動させる移動機構部25が備えられており、この移動機構部25には、操作者が操作するためのコントローラ21が接続されている。この移動機構部25によれば、正レンズ40,41及び光ファイバ群3のうちの少なくとも2つを光軸Jに沿ってそれぞれ移動させることにより(図2の矢印参照)、光ファイバ30bで受光する蛍光の強度(対物光学系4による集光の度合い)や、観察対象部位の位置を最適化することができる。なお、正レンズ40,41はプローブ2内の密閉空間内で移動することが好ましい。また、以上の移動機構部25としては、例えばカム機構や、複数のボイスコイルモータを用いた機構等、従来より公知の機構を用いることができる。
【0027】
分光器11は、プローブ2における受光用の光ファイバ30bで検出された蛍光から、幾つかの波長の強度を測定し(以下、「分光測定」という)、測定結果を電子情報(分光スペクトル信号)として出力するものである。
【0028】
スペクトル解析装置12は、分光器11から出力される分光スペクトル信号を解析して分光スペクトルグラフのイメージデータに変換し、疾患状態の診断を行うものである。なお、スペクトル解析装置12により生成される分光スペクトルグラフのイメージデータや診断結果は、モニタ120に表示されるようになっている。
【0029】
なお、以上の診断装置1における光源10や分光器11、スペクトル解析装置12としては、例えば特開平7−155286号公報や特開平7−204156号公報、特開平10−239517号公報、特開平10−295632号公報、特開平11−223726号公報、特開2005−319212号公報に開示のもの等、従来より公知のものを用いることができる。
【0030】
以上の診断装置1におけるプローブ2によれば、互いに対向した状態でプローブ2の先端側に向けて配設された2つの正レンズ40,41を有する対物光学系4と、先端面300を対物光学系4に向けて対物光学系の光軸Jからオフセットされた位置に配設されるとともに、対物光学系4を介して先端面300から蛍光を受光する複数の光ファイバ30bと、光ファイバ30b及び正レンズ40,41のうち、少なくとも2つを対物光学系4の光軸に沿って移動させる移動機構部25とが具備されるので、図2(a)中に破線及び矢印で示すように、対物光学系4の焦点距離や集光(結像)の度合いを変更して、プローブ2の側方に位置する壁面からの蛍光を各光ファイバ30bの先端面300に集光(結像)させることができる。従って、食道などの管腔に挿入される場合に、プローブの側方に位置する壁面からの蛍光を確実に受光することができる。
また、受光用の光ファイバ30bが複数具備されるので、複数の観察対象部位からの蛍光をそれぞれ検出することができる。従って、診断速度を高速化することができる。
【0031】
また、対物光学系4の光軸Jからのオフセット量が互いに異なる受光用の複数の光ファイバ30bの先端面300は対物光学系4の光軸Jに沿って互いに位置がずれているので、対物光学系4の光軸Jに沿って異なる各位置におけるプローブ2側方の壁面からの蛍光を、各光ファイバ30bの先端面300で集光(結像)させることができる。よって、プローブ側方に位置する壁面からの蛍光をより確実に受光することができる。また、プローブ2の本体部分を対物光学系4の光軸J方向に移動することなく、複数の部位から蛍光を検出することができる。
【0032】
また、複数の光ファイバ30bの先端面300は対物光学系4の光軸Jに近いほどプローブ2の先端側に配設されているので、プローブ2側方の壁面からの蛍光を、対物光学系4によって各光ファイバ30bの先端面300に確実に集光(結像)させることができる。よって、側方に位置する壁面からの蛍光をより確実に受光することができる。
【0033】
また、複数の光ファイバ30bの先端面300は対物光学系4の光軸Jを中心として同心円状に配設されているので、環状の観察対象部位から蛍光を検出することができる。
【0034】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば、対物光学系4は2つの正レンズ40,41を有することとして説明したが、3つ以上のレンズを有することとしても良い。
【0036】
また、図3(a)に示すように、プローブ2には、軸方向Xに沿って撮影を行うカメラ22が備えられていても良い。この場合には、管腔K内の状態を視認することができる。
【0037】
また、図3(b)に示すように、プローブ2には、径方向(軸方向Xに対する直交方向)に膨張して管腔Kの内壁に密着するバルーン23が外周部に備えられていても良い。この場合には、観察中に観察対象部位がずれてしまうのを防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 診断装置
2 プローブ
4 対物光学系
3 光ファイバ群(複数の光ファイバ)
23 バルーン
25 移動機構部
40,41 正レンズ(レンズ)
30b 受光用の光ファイバ
300 光ファイバの先端面
J 対物光学系の光軸
K 管腔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の管腔へ挿入されて励起光を生体組織の観察対象部位へ照射するとともに、この励起光に起因する蛍光を検出するプローブにおいて、
互いに対向した状態で当該プローブの先端側に向けて配設された少なくとも2つのレンズを有する対物光学系と、
先端面を前記対物光学系に向けて当該対物光学系の光軸からオフセットされた位置に配設されるとともに、当該対物光学系を介して前記先端面から前記蛍光を受光する複数の光ファイバと、
前記光ファイバと、前記対物光学系における前記2つのレンズとのうちの少なくとも2つを前記対物光学系の光軸に沿って移動させる移動機構部とを備えることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
請求項1記載のプローブにおいて、
前記複数の光ファイバのうち、少なくとも前記対物光学系の光軸からのオフセット量が互いに異なる前記光ファイバの先端面は、
前記対物光学系の光軸に沿って互いに位置がずれていることを特徴とするプローブ。
【請求項3】
請求項1または2記載のプローブにおいて、
前記複数の光ファイバの先端面は、
前記対物光学系の光軸に近いほど、当該プローブの先端側に配設されていることを特徴とするプローブ。
【請求項4】
請求項2または3記載のプローブにおいて、
前記複数の光ファイバの先端面は、
前記対物光学系の光軸を中心として同心円状に配設されていることを特徴とするプローブ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のプローブにおいて、
当該プローブの径方向に膨張して管腔の内壁に密着するバルーンを外周部に備えることを特徴とするプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−139818(P2011−139818A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2548(P2010−2548)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】