説明

プーリアッセンブリー圧入方法、及び、プーリアッセンブリー圧入装置

【課題】ドライブプーリ及びドリブンプーリにベルトを巻き掛けて形成されるアッセンブリーをミッションケースに圧入する際に、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置がずれないように圧入できるようにする。
【解決手段】ドライブプーリ20側の隔壁25の水平部25A及びドリブンプーリ30側の段部12Cをそれぞれ位置決め治具58に突き当てて入力軸11と出力軸12との軸間距離、及び、Vベルト13の位置を圧入基準位置に保持する保持工程と、入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bに、当該軸部11B,12Bとそれぞれ当接する第1当接部100及び第2当接部101を有する固定治具53を取り付けるとともに、第2当接部101を軸方向に移動させて第2当接部101を出力軸12の軸部12Bに突き当て、入力軸11及び出力軸12の寸法誤差Eを補正する補正工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリアッセンブリーをミッションケースに圧入するプーリアッセンブリー圧入方法、及び、プーリアッセンブリー圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力軸に設けられるドライブプーリと、出力軸に設けられるドリブンプーリと、ドライブプーリとドリブンプーリとの間に巻き掛けられるベルトとを備えたCVT式の無段変速機の組立て工程において、ドライブプーリの油圧室を真空引きすることで油圧室のスプリングに抗してドライブプーリを移動させてドライブプーリの溝幅を拡大し、ベルトの組付性を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1)。この種の無段変速機では、ドライブプーリ及びドリブンプーリにベルトを巻き掛けてアッセンブリー体を形成し、このアッセンブリー体の入力軸及び出力軸をベルトが両プーリに巻き掛けられた状態で軸方向に同時に押圧し、ミッションケースに圧入していくことで、組立てが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2681595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記CVT式の無段変速機では、上記アッセンブリー体をミッションケースに圧入していく際に、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置が大きくずれないようにして、ベルトが両プーリの溝に強く当接することを防止する必要がある。しかし、ドライブプーリ及びドリブンプーリは製造上の寸法誤差を有するため、両プーリを軸方向に押圧して圧入していく際に、寸法誤差の分だけ両プーリの軸方向の相対位置がずれてしまう虞がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ドライブプーリ及びドリブンプーリにベルトを巻き掛けて形成されるアッセンブリーをミッションケースに圧入する際に、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置がずれないように圧入できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、入力軸に装着されるドライブプーリと、出力軸に装着されるドリブンプーリと、ドライブプーリ及びドリブンプーリに巻き掛けられる金属ベルトとを有するプーリアッセンブリーをミッションケースに圧入するプーリアッセンブリー圧入方法において、前記ドライブプーリ及びドリブンプーリの一部をそれぞれ基準台座に突き当てて前記プーリアッセンブリーを前記基準台座上に保持する保持工程と、前記基準台座と反対側に位置する前記入力軸及び前記出力軸の軸端部に、当該軸端部とそれぞれ当接する当接部を有する把持部材を取り付けるとともに、前記当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて当該当接部の一方を前記軸端部に突き当て、前記入力軸及び前記出力軸の寸法誤差を補正する補正工程と、前記把持部材を押圧して前記プーリアッセンブリーをミッションケースに圧入する圧入工程と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、把持部材が有する当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて、当接部の一方を入力軸及び出力軸の軸端部に突き当て、当該入力軸及び出力軸の寸法誤差を補正するため、入力軸及び出力軸の軸方向の寸法誤差を補正した状態で圧入でき、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置がずれないように圧入できる。
【0006】
上記構成において、前記補正工程の後、前記プーリアッセンブリーは、前記把持部材によって把持された状態で、前記基準台座から前記ミッションケースに移載されてもよい。この構成によれば、ミッションケースに移載される際に、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置のずれを防止できる。
【0007】
また、本発明は、入力軸に装着されるドライブプーリと、出力軸に装着されるドリブンプーリと、ドライブプーリ及びドリブンプーリに巻き掛けられる金属ベルトとを有するプーリアッセンブリーをミッションケースに圧入するプーリアッセンブリー圧入装置において、前記ドライブプーリ及びドリブンプーリの一部が突き当てられ、前記プーリアッセンブリーを圧入基準位置に保持する基準台座と、この基準台座と反対側に位置する前記入力軸及び前記出力軸の軸端部とそれぞれ当接する当接部を有し、前記入力軸及び前記出力軸を一体に把持する把持部材と、前記当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて当該当接部の一方を前記軸端部に突き当て、前記入力軸及び前記出力軸の寸法誤差を補正する補正手段と、前記把持部材を押圧して前記プーリアッセンブリーをミッションケースに圧入する圧入手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、入力軸及び出力軸に当接する当接部を有し、前記入力軸及び前記出力軸を一体に把持する把持部材と、これら当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて当該当接部の一方を軸端部に突き当て、入力軸及び出力軸の寸法誤差を補正する補正手段とを備えるため、入力軸及び出力軸の軸方向の寸法誤差を補正した状態で圧入でき、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置がずれないように圧入できる。
【0008】
また、前記把持部材に連結され、この把持部材及び前記プーリアッセンブリーを前記基準台座から前記ミッションケースに移載する移載機構を備え、この移載機構に前記補正手段を動作させる駆動装置が設けられていてもよい。この構成によれば、把持部材にそれぞれ補正手段を動作させる駆動装置を設ける必要はなく、生産設備の構成を簡略化することができる。
【0009】
また、前記補正手段は、前記把持部材に螺合する鋸歯ねじを備えてもよい。この構成によれば、入力軸及び出力軸を押圧する力によって、補正手段及び当接部が軸方向にずれることを防止でき、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置のずれを防止できるため、圧入する際の組立精度を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプーリアッセンブリー圧入方法によれば、把持部材が有する当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて、当接部の一方を入力軸及び出力軸の軸端部に突き当て、当該入力軸及び出力軸の寸法誤差を補正するため、入力軸及び出力軸の軸方向の寸法誤差を補正した状態で圧入でき、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置がずれないように圧入することができる。
また、前記補正工程の後、前記プーリアッセンブリーは、前記把持部材によって把持された状態で、前記基準台座から前記ミッションケースに移載されるため、ミッションケースに移載される際に、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置のずれを防止できる。
【0011】
また、本発明のプーリアッセンブリー圧入装置によれば、入力軸及び出力軸に当接する当接部を有し、前記入力軸及び前記出力軸を一体に把持する把持部材と、これら当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて当該当接部の一方を軸端部に突き当て、入力軸及び出力軸の寸法誤差を補正する補正手段とを備えるため、入力軸及び出力軸の軸方向の寸法誤差を補正した状態で圧入でき、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置がずれないように圧入することができる。
また、前記把持部材に連結され、この把持部材及び前記プーリアッセンブリーを前記基準台座から前記ミッションケースに移載する移載機構を備え、この移載機構に前記補正手段が設けられているため、把持部材にそれぞれ補正手段を動作させる駆動装置を設ける必要はなく、生産設備の構成を簡略化することができる。
また、前記補正手段は、前記把持部材に螺合する鋸歯ねじを備えてもよい。この構成によれば、入力軸及び出力軸を押圧する力によって、補正手段及び当接部が軸方向にずれることを防止でき、ドライブプーリ及びドリブンプーリの軸方向の相対位置のずれを防止できるため、圧入する際の組立精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る無段変速機の断面図である。
【図2】CVTをミッションケースに圧入する製造ラインを示す図である。
【図3】CVTをミッションケースに圧入する手順を示す図である。
【図4】固定治具の側面図である。
【図5】移動部材と支持プレートとの係合を示す断面図である。
【図6】圧入装置の正面図である。
【図7】圧入装置による圧入工程の途中段階の模式図である。
【図8】補正工程及び圧入工程の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るプーリアッセンブリー圧入方法、及び、プーリアッセンブリー圧入装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る無段変速機の断面図である。
無段変速機1は、車両に搭載されるCVT(Continuous Variable Transmission、以下では「CVT」と言う。)であり、トルクコンバータ(不図示)等を介して車両のエンジン(不図示)に連結されている。上記エンジンからの出力は、CVT1の入力軸11に入力される。
【0014】
CVT1は、入力軸11上に装着されるドライブプーリ20と、入力軸11に平行な出力軸12上に装着されるドリブンプーリ30と、ドライブプーリ20とドリブンプーリ30との間に巻き掛けられる金属製のVベルト13(金属ベルト)とを備えて構成され、ミッションケース40に収容される。
【0015】
ドライブプーリ20は、入力軸11上に一体に形成された固定プーリ半体21と、固定プーリ半体21と一体回転するとともに固定プーリ半体21に対して接近・離反するように入力軸11の軸方向に移動可能に設けられた可動プーリ半体22とを備えている。
可動プーリ半体22は、Vベルト13の側面に当接する当接面22Aを有する可動プレート23と、可動プレート23に嵌合し、可動プレート23との間に油圧室24を形成する隔壁25とを有している。この隔壁25は、入力軸11に固定されており、可動プレート23は、油圧室24に供給される油圧によって入力軸11に沿って移動する。
【0016】
固定プーリ半体21は、Vベルト13の側面に当接する当接面21Aを有し、断面V字状となるように対向する当接面21A,22Aによって、Vベルト13が保持されるV溝部26が形成されている。
入力軸11は、ミッションケース40に圧入されるミッションケース側軸部11Aと、ミッションケース側軸部11Aの反対側で変速機のケース(不図示)に軸支される軸部11B(反対側の軸端部)とを有している。可動プーリ半体22は、ミッションケース側軸部11A側に設けられている。
【0017】
ドリブンプーリ30は、出力軸12上に固定された固定プーリ半体31と、固定プーリ半体31と一体回転するとともに固定プーリ半体31に対して接近・離反するように出力軸12の軸方向に移動可能に設けられた可動プーリ半体32とを備えている。
可動プーリ半体32は、Vベルト13の側面に当接する当接面32Aを有する可動プレート33と、可動プレート33に嵌合し、可動プレート33との間に油圧室34を形成する隔壁35とを有している。油圧室34は、出力軸12内を軸方向に延びる油路37を介して油圧源に接続されている。可動プレート33は、油圧室34に供給される油圧によって移動する。
油圧室34には、可動プレート33を固定プーリ半体31側に付勢するばね38が設けられている。
【0018】
固定プーリ半体31は、Vベルト13の側面に当接する当接面31Aを有し、断面V字状となるように対向する当接面31A,32Aによって、Vベルト13が保持されるV溝部36が形成されている。ドリブンプーリ30側では、Vベルト13は、油圧室34に油圧が作用しない状態であっても、ばね38によって所定の荷重でV溝部36に狭持されている。このため、Vベルト13には、常に張力が作用しており、入力軸11と出力軸12との間にはこれらの軸の軸間距離を近づけようとする力が作用している。
出力軸12は、ミッションケース40に圧入されるミッションケース側軸部12A(出力軸端部)と、ミッションケース側軸部12Aの反対側で変速機のケース(不図示)に軸支される軸部12B(反対側の軸端部)とを有している。固定プーリ半体31は、ミッションケース側軸部12A側に設けられている。
【0019】
CVT1の変速比は、エンジンの負荷および回転数等に応じて各油圧室24,34への油圧供給が制御されることで、各V溝部26,36の幅が変化してドライブプーリ20及びドリブンプーリ30のプーリ径が変更され、無段階に変化する。
V溝部26,36を構成する当接面21A,22A及び当接面31A,32Aは、傷が付いてはいけない面であり、CVT1の組付け工程では、傷が付かないように配慮されている。
【0020】
ミッションケース40は、一面が開口した箱形のケースであり、入力軸11及び出力軸12が圧入される底面部41と、変速機のケース(不図示)に合わさる合わせ面42とを有している。
底面部41には、底面部41を貫通する一対のベアリング支持孔42A,42Bが形成され、ベアリング支持孔42A,42Bには、入力軸11及び出力軸12を軸支するボールベアリング43,44がそれぞれ組付されている。入力軸11及び出力軸12は、ミッションケース側軸部11A及びミッションケース側軸部12Aが、ボールベアリング43,44の支持孔43A,44A(ミッションケース孔部)にそれぞれ圧入されることで、ミッションケース40に組付けられる。
【0021】
底面部41は、ベアリング支持孔42Aが設けられる外側底部41Aよりも合わせ面42側に一段膨出した段差面41Bを有し、ベアリング支持孔42Bは、段差面41Bに設けられている。すなわち、出力軸12は、入力軸11よりもミッションケース40内の浅い位置に圧入される。
【0022】
ミッションケース側軸部11Aには、ボールベアリング43側に突き当てられる段部11Cが形成されており、この段部11Cに隔壁25の水平部25A(ドライブプーリの一部)が固定される。入力軸11は、段部11Cが隔壁25の水平部25Aを介してボールベアリング43に当接することで、軸方向に位置決めされている。
また、ミッションケース側軸部12Aには、ボールベアリング44側に突き当てられる段部12Cが形成されており、出力軸12は、段部12Cがボールベアリング44側に当接することで、軸方向に位置決めされている。
【0023】
詳細には、出力軸12の段部12Cとボールベアリング44との間には、リング状のシム45が介装され、段部12Cはシム45を介してボールベアリング44に当接する。CVT1の各部品及びミッションケース40には寸法公差が設定されており、製造時の寸法誤差があるため、CVT1をミッションケース40に組立てた際に、V溝部26の中心とV溝部36の中心とが軸方向で一致しない可能性がある。本実施の形態では、予め上記寸法誤差を測定し、V溝部26の中心とV溝部36の中心とを一致させることが可能な厚みのシム45が複数種の板厚のシムの中から選択されて組付けられる。これにより、V溝部26とV溝部36との位置ずれを防止できるため、Vベルト13を入力軸11及び出力軸12に略直交するように正しく組付けることができる。
また、本実施の形態では、固定プーリ半体31は、出力軸12と一体に形成されており、この出力軸12の段部12Cは、固定プーリ半体31に連なって形成されている。このため、本実施の形態では、段部12Cがドリブンプーリ30の一部として機能する。
【0024】
図2は、CVT1をミッションケース40に圧入する製造ライン50を示す図である。図3は、CVT1をミッションケース40に圧入する手順を示す図である。
CVT1は、ドライブプーリ20及びドリブンプーリ30にVベルト13を巻き掛けてプーリアッセンブリー15を形成し、このプーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入することで組立てられる。
図2に示すように、製造ライン50は、プーリアッセンブリー15を組立てるサブライン51と、プーリアッセンブリー15をミッションケース40に組付けるメインライン52とを有している。
【0025】
製造ライン50は、主として5つのステージを有しており、工程順に、サブライン51でプーリアッセンブリー15を組立てるとともに、プーリアッセンブリー15を組立て状態で把持する固定治具(把持部材)53(図3)を組付けるアッセンブリー組立てステージ61と、プーリアッセンブリー15をハンドクレーン(移載機構)54でメインライン52に移載する移載ステージ62と、プーリアッセンブリー15をミッションケース40にセットするアッセンブリー搭載ステージ63と、プーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入する圧入ステージ64と、固定治具53を取り外す治具取り外しステージ65とを有している。治具取り外しステージ65の後のステージでは、ギヤ等がプーリアッセンブリー15に組付けられる。
【0026】
アッセンブリー組立てステージ61では、サブライン51から一対の入力軸11及び出力軸12が複数組で順に供給され、作業台55の上でプーリアッセンブリー15が作業者によって組み立てられ、この状態で固定治具53が組付けられることで、プーリアッセンブリー15の組付け状態が固定される。詳細には、固定治具53が組付けられることで、入力軸11と出力軸12との軸間距離及び軸方向位置、及び、Vベルト13の位置が固定されて、Vベルト13は、入力軸11及び出力軸12に略直交した状態で位置が維持されることになる。この状態は、圧入の際にプーリアッセンブリー15に求められる位置状態であり、この状態を圧入基準位置と呼ぶ。圧入基準位置では、入力軸11、出力軸12及びVベルト13の相対的な位置関係が、プーリアッセンブリー15がミッションケース40に完全に圧入された状態における入力軸11、出力軸12及びVベルト13の相対的な位置関係に一致する。
【0027】
移載ステージ62では、作業者が操作するハンドクレーン54によって、固定治具53と共にプーリアッセンブリー15がメインライン52のアッセンブリー搭載ステージ63に移載される。
アッセンブリー搭載ステージ63では、ミッションケース40がパレット56上にセットされてメインライン52を流れる。ミッションケース40のボールベアリング44には、板厚が選択されたシム45がセットされ、シム45は、パレット56を貫通して支持孔44Aに挿通される求心治具57によって支持孔44Aに芯出しされる。
その後、アッセンブリー搭載ステージ63では、プーリアッセンブリー15が圧入位置にセットされる。ここでは、固定治具53がミッションケース40に嵌合して位置決めされることで、プーリアッセンブリー15は所定の圧入位置に位置決めされる。
【0028】
圧入ステージ64では、入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bの上端面11D、12D(図1)を同時に軸方向に押圧する圧入装置80(プーリアッセンブリー圧入装置)(図6)によって、入力軸11及び出力軸12が、ミッションケース40の支持孔43A,44Aに圧入される。
ところで、プーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入する際には、Vベルト13がプーリアッセンブリー15の軸方向にずれないようにするために、互いの中心が一致するように組付けられているV溝部26,36の相対位置を維持したまま圧入していく必要がある。しかし、上述のように、プーリアッセンブリー15は、各部品の寸法誤差を有するため、単に軸部11B,12Bの上端面11D,12Dを押圧するだけでは、圧入時にVベルト13が軸方向にずれてしまう可能性がある。
【0029】
すなわち、プーリアッセンブリー15は各部品によって積み上げられた寸法誤差を有し、圧入基準位置にセットされた状態のプーリアッセンブリー15の軸部11B,12Bの上端面11D,12Dの位置は、量産される各プーリアッセンブリー15毎に異なるため、寸法誤差を吸収しつつ、入力軸11及び出力軸12を同時に圧入することが求められる。図1に示すように、プーリアッセンブリー15は、圧入基準位置において軸部11B,12Bの上端面11Dと上端面12Dとの間には段差が設定されているが、製品の実際の段差Dには、プーリアッセンブリー15及びミッションケース40の製造誤差が積み重なって生じる寸法誤差Eが含まれている。本実施の形態では、寸法誤差Eの最大値は、一例として、1.3(mm)である。
ここで、許容されるV溝部26,36の中心位置の相対ずれ量は、一例として、軸方向に0.6(mm)であり、この相対ずれ量0.6(mm)より小さな相対ずれ量を維持して圧入していく必要がある。
【0030】
従来、CVT式の無段変速機において変速機のケースの一部を構成する別体の中間ケースを有するものでは、この中間ケースに、プーリアッセンブリー15を組付けておき、中間ケースごとプーリアッセンブリー15をミッションケースに圧入する方法がある。この場合、中間ケースによってプーリアッセンブリー15を圧入基準位置に固定したまま圧入できるため、圧入が容易であるが、中間ケースの分だけ重量が大きくなるとともに、構造が複雑になる。
【0031】
治具取り外しステージ65では、固定治具53はプーリアッセンブリー15から取り外される。固定治具53は、ハンドクレーン54によってアッセンブリー組立てステージ61に移載され、次のプーリアッセンブリー15の組立てに使用される。
【0032】
図4は、固定治具53の側面図である。
図4に示すように、固定治具53は、プーリアッセンブリー15が載置される位置決め治具58と組み合せて用いられる。
位置決め治具(基準台座)58は、入力軸11及び出力軸12を支持するプレート66と、プレート66に立設される一対の支柱67,67とを有している。プレート66には、位置決め穴66A,66Bが形成されており、ミッションケース側軸部11A,12Aが位置決め穴66A,66Bにそれぞれ嵌め込まれ、ドライブプーリ20側の隔壁25の水平部25A及びドリブンプーリ30側の段部12Cを位置決め治具58の上面に突き当てることで、入力軸11及び出力軸12は軸間距離及び軸方向位置が所定の位置(圧入基準位置)となるように位置決めされる。この所定の位置では、V溝部26,36の中心位置は一致し、Vベルト13は入力軸11及び出力軸12に略直交する。
各支柱67,67の上端部には、固定治具53に嵌合する位置決め軸部67Aと、固定治具53を受ける座部67Bとが形成されている。
【0033】
固定治具53は、入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bをそれぞれ狭持する一対のクランパー68,69と、クランパー68,69を支持する支持プレート70と、支持プレート70の上面略中央に設けられ、ハンドクレーン54に連結される連結部71とを有している。また、支持プレート70の両端部には、位置決め治具58の位置決め軸部67Aが嵌合する位置決め孔72が設けられている。
クランパー68,69は、それぞれ支持プレート70に固定される固定側Vブロック73と、この固定側Vブロック73に対向して配置される可動側Vブロック74と、この可動側Vブロック74を固定側Vブロック73側に付勢する皿ばね(不図示)とを備える。これら固定側Vブロック73及び可動側Vブロック74の対向面には、それぞれV型の溝(不図示)が形成されており、これらV型の溝に入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bがそれぞれ把持される。また、可動側Vブロック74の両側面には、その外周面が固定側Vブロック73に対向するように配置される一対のローラー(不図示)が設けられている。ここで、皿ばねの荷重は、入力軸11と出力軸12との軸間に作用するVベルト13の張力や、プーリアッセンブリー15の移載時に作用する軸方向の加速度に耐えられるだけの十分な把持力を得られる大きさに設定されている。
【0034】
クランパー68,69による軸部11B,12Bの狭持状態は、上述したローラーと固定側Vブロック73との間に棒状のテーパープレート(不図示)が挿入され、可動側Vブロック74がテーパープレートによって押し広げられるようにして固定側Vブロック73から離間することで解除される。このように、本構成では、ローラーと固定側Vブロック73との間にテーパープレートを挿入することで把持を解除する構成となっており、皿ばねのばね力のみによってプーリアッセンブリー15を把持するため、動力源の供給が断たれたとしてもプーリアッセンブリー15の把持が解除されることがなく、特別なフェールセーフ機構を設ける必要がない。
【0035】
また、固定治具53は、図4に示すように、位置決め治具58にセットされたプーリアッセンブリー15に対し、上方から当該固定治具53を取り付けた際に、入力軸11の上端面11Dに当接する第1当接部100と、出力軸12の上端面12Dに当接する第2当接部101とを備える。これら第1当接部100及び第2当接部101は、上記した圧入ステージ64(図2)において、プーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入する際に、入力軸11及び出力軸12の上端面11D、12Dを押圧するものである。
第1当接部100は、支持プレート70の下面からクランパー68の固定側Vブロック73に沿って延出する円柱状の金属部材であり、下端100Aには、第1当接部100に作用する荷重を検出するロードセル102が内蔵されている。
第2当接部101は、支持プレート70の下面側でクランパー69の固定側Vブロック73に沿って延出する円柱状の金属部材であり、下端101Aには、第2当接部101に作用する荷重を検出するロードセル103が内蔵されている。また、第2当接部101の上端101Bは、支持プレート70に設けられ前記出力軸12の軸方向に移動する移動部材(補正手段)104に回転自在に取り付けられている。この移動部材104は、第2当接部101と略同径に形成された円筒状の部材であり、その外周面には、図5に示すように、上端側のフランク角αが下端側のフランク角βより小さい鋸歯ねじの雄ねじ104Aが形成されている。下端側のフランク角βは、上端側のフランク角αに比べて、ごく小さい値(0〜3°程度)に形成されている。
雄ねじ104Aは、支持プレート70に形成された開口110(図4)の内周面に形成された雌ねじ110Aと螺合する。これにより、移動部材104を回転操作すると、この回転に伴い移動部材104及び第2当接部101が支持プレート70に対して軸方向に上下に移動する。このため、移動部材104を軸方向に移動させることにより、第1当接部100及び第2当接部101を、それぞれ入力軸11及び出力軸12の上端面11D,12Dと当接させることができ、当該入力軸11及び出力軸12の寸法誤差Eを補正することができる。
【0036】
また、移動部材104の外周面に形成された雄ねじ110Aは、第2当接部101の上端101Bに回転自在に連結される上端側のフランク角αが下端側のフランク角βより小さい鋸歯ねじで形成されているため、第2当接部101と出力軸12とが当接するまで、移動部材104を締め込んだ場合、この移動部材104が緩む方向(上方向)の荷重に対する抵抗力が大きく、補正した状態を安定的に維持することができる。従って、移動部材104及び第2当接部101が軸方向にずれることを防止でき、入力軸11及び出力軸12の軸方向の相対位置のずれを防止できるため、圧入する際の組立精度を向上できる。
【0037】
固定治具53には、ハンドクレーン54が連結され、このハンドクレーン54によって、固定治具53に把持されたプーリアッセンブリー15を容易に取り扱うことができる。ハンドクレーン54は、不図示のアームに連結されるベースプレート120と、このベースプレート120に設けられ、上記した固定治具53と連結する連結部121と、上記ベースプレート120に取り付けられるサーボモータ(駆動装置)122と、このサーボモータ122と移動部材104と連結し、サーボモータ122の回転を移動部材104に伝達する伝達機構123とを備える。この伝達機構123は、移動部材104の上端部104Aと嵌合するクラッチ(不図示)を内蔵する。
また、ハンドクレーン54の連結部121は、ツールチェンジャー(不図示)を備え、このツールチェンジャーによって固定治具53の連結部71との連結及び離脱を簡単に行うことができるようになっている。
【0038】
図6は、圧入装置80の正面図である。
図6に示すように、圧入装置80は、圧入ステージ64(図2)に設置される筺体81と、筺体81の上部に設けられる圧入サーボ機構82と、圧入サーボ機構82に連結された圧入ヘッド84(圧入手段)と、ミッションケース40を支持するテーブル86と、テーブル86を貫通して上下に移動可能な一対のドライブ側バックアップ部材87及びドリブン側バックアップ部材88と、圧入装置80を制御する制御部89とを備えて構成されている。また、本構成では、圧入装置80は、上記した固定治具53及び位置決め治具58を備えて構成され、固定治具53の第1当接部100及び第2当接部101に内蔵されたロードセル102,103で検出された荷重は制御部89に入力される。
【0039】
圧入ヘッド84は、圧入サーボ機構82のサーボモータ82Aから下方に延びるボールねじ機構90によって圧入サーボ機構82に連結されており、サーボモータ82Aの駆動によって上下に移動する。サーボモータ82Aは、サーボエンコーダー(不図示)を備え、制御部89は、このサーボエンコーダーからフィードバックされるサーボモータ82Aの回転に基づいて圧入ヘッド84の軸方向(上下方向)の位置を制御する。
【0040】
図7は、圧入装置80による圧入工程の模式図である。
図6及び図7に示すように、ドライブ側バックアップ部材87は、円筒状のベアリングバックアップパイプ94と、ベアリングバックアップパイプ94内を摺動するドライブ側バックアップシャフト95とを有している。ベアリングバックアップパイプ94及びドライブ側バックアップシャフト95は、制御部89によって駆動されるエアシリンダ(不図示)の空気圧によって上下に移動するように構成されている。ベアリングバックアップパイプ94は、ボールベアリング43の下面に当接し、圧入時にボールベアリング43に作用する力を受ける。ドライブ側バックアップシャフト95は、ボールベアリング43の支持孔43Aを貫通して入力軸11のミッションケース側軸部11Aに突き当てられ、入力軸11を下方から支持する。ドライブ側バックアップシャフト95は、制御部89により駆動されるロック機構(不図示)を有し、このロック機構によって、ミッションケース側軸部11Aに突き当てられた位置でロックされる。
【0041】
ドリブン側バックアップ部材88は、円筒状のベアリングバックアップパイプ96と、ベアリングバックアップパイプ96内を摺動するドリブン側バックアップシャフト97とを有している。ベアリングバックアップパイプ96及びドリブン側バックアップシャフト97は、制御部89によって駆動されるエアシリンダ(不図示)の空気圧によって上下に移動するように構成されている。ベアリングバックアップパイプ96は、ボールベアリング44の下面に当接し、圧入時にボールベアリング44に作用する力を受ける。ドリブン側バックアップシャフト97は、ボールベアリング44の支持孔44Aを貫通して入力軸11のミッションケース側軸部12Aに突き当てられ、出力軸12を下方から支持する。ドリブン側バックアップシャフト97は、制御部89により駆動されるロック機構(不図示)を有し、このロック機構によって、ミッションケース側軸部12Aに突き当てられた位置でロックされる。
【0042】
以下、プーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入して組立てる工程について説明する。
図3に示すように、プーリアッセンブリー15をミッションケース40に組立てる工程は、製造ライン50のアッセンブリー組立てステージ61でプーリアッセンブリー15を位置決め治具58上に保持する保持工程と、このプーリアッセンブリー15に固定治具53を取り付けるとともに入力軸及び出力軸の寸法誤差を補正する補正工程と、ハンドクレーン54でプーリアッセンブリー15を固定治具53ごとアッセンブリー搭載ステージ63のミッションケース40に移載し、圧入ステージ64で圧入装置80によってプーリアッセンブリー15を圧入する圧入工程と、治具取り外しステージ65で固定治具53をプーリアッセンブリー15から取り外す治具取り外し工程とを有している。
【0043】
まず、保持工程では、図4に示すように、ドライブプーリ20側の隔壁25の水平部25A及びドリブンプーリ30側の段部12Cを位置決め治具58の上面に突き当てるように、当該位置決め治具58上にプーリアッセンブリー15を載置することにより、入力軸11と出力軸12との軸間距離及び軸方向位置、及び、Vベルト13の位置が所定の位置に位置決めされる。
補正工程では、図8に示すように、位置決め治具58上に位置決めされた状態でプーリアッセンブリー15にハンドクレーン54連結された固定治具53が取り付けられる(ステップS1)。この場合、制御部89は、クランパー68,69を解除した状態とし、固定治具53を入力軸11と出力軸12の軸方向に移動できるようにしておく。
次に、ハンドクレーン54で固定治具53及びプーリアッセンブリー15に対して軸方向下側(重力方向)に所定の荷重をかける(ステップS2)。ハンドクレーン54は、固定治具53の第1当接部100及び第2当接部101に内蔵されたロードセル102,103が所定の荷重(例えば、10N)がかかった位置を保持する。
【0044】
次に、制御部89は、ハンドクレーン54に搭載されたサーボモータ122を駆動して、第2当接部材の下端101Aと、出力軸12の上端面12Dとが当接するまで移動部材104を締め込み、入力軸11及び出力軸12の軸方向の寸法誤差Eを補正する(ステップS3)。制御部89は、この状態でクランパー68,69により入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bを把持する(ステップS4)。これにより、プーリアッセンブリー15は、圧入基準位置にセットされた状態を保たれる。そして、このプーリアッセンブリー15を位置決め治具58から取り外し、ハンドクレーン54でミッションケース40に移載する(ステップS5)。この場合、固定治具53に設けられた位置決めピン(不図示)がミッションケース40の位置決め穴(不図示)に嵌合することで、プーリアッセンブリー15は、所定の圧入位置に位置決めされる。この所定の圧入位置では、図7に示すように、入力軸11及び出力軸12は、支持孔43A,44Aに対しそれぞれ同軸の位置にあるとともに、支持孔43A,44Aの上方に位置している。
【0045】
次に、圧入工程に移行する。圧入工程では、圧入装置80によってプーリアッセンブリー15が圧入される。本構成では、圧入工程に移行する前に、入力軸11及び出力軸12の軸方向の寸法誤差Eが補正されているため、固定治具53を介して、入力軸11及び出力軸12を同時に押圧することでプーリアッセンブリー15を簡単にミッションケース40に圧入できる。
制御部89は、各エアシリンダを駆動し、ベアリングバックアップパイプ94及びベアリングバックアップパイプ96をボールベアリング43,44に突き当てて、これらベアリングを支持するとともに、ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97を上昇させてミッションケース側軸部11A,12Aの下面に突き当てる(ステップS6)。ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97は、上記ロック機構によって突き当てられた位置にロックされる。このように、ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97で入力軸11及び出力軸12を下方から支持することで、入力軸11及び出力軸12を圧入基準位置に維持させておくことができる。すなわち、固定治具53の固定を解除したとしても、ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97によって圧入基準位置を維持できる。
【0046】
制御部89は、圧入ヘッド84の下端が固定治具53の連結部71に当接するまで圧入ヘッド84を下降させるとともに、クランパー68,69による軸部11B,12Bの把持を解除する(ステップS7)。入力軸11及び出力軸12は、ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97と、固定治具53の第1当接部100及び第2当接部101とによってそれぞれ支持されているため、軸部11B,12Bの狭持状態を解除しても軸間距離は維持される。
【0047】
次に、制御部89は、圧入ヘッド84を下降させていき、入力軸11及び出力軸12を支持孔43A,44Aにそれぞれ圧入する(ステップS8)。この場合、ロック機構は解除され、ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97は、入力軸11及び出力軸12が自重で下がらないように、入力軸11及び出力軸12の重量以上の推力でエアシリンダによって入力軸11及び出力軸12の下面に突き当てられている。本実施形態では、入力軸11及び出力軸12を、固定治具53の第1当接部100及び第2当接部101と、ドライブ側バックアップシャフト95及びドリブン側バックアップシャフト97とでそれぞれ上下から挟んだ状態で圧入するため、安定して圧入することができる。
【0048】
制御部89は、圧入サーボ機構82によって圧入を継続し、入力軸11及び出力軸12に対応するロードセル102,103の荷重値が圧入を完了したと判断される所定値に達すると、圧入を完了する(ステップS9)。ここで、圧入を完了したと判断される所定値は、一例として、10(kN)である。
このように、ステップS3で入力軸11及び出力軸12の軸方向の寸法誤差Eを補正するため、圧入ヘッド84で圧入する際に、ドライブプーリ20及びドリブンプーリ30の軸方向の相対位置がずれないようにプーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入することができる。
【0049】
そして、圧入が終了すると、制御部89は、圧入ヘッド84を上昇させるとともに、ドライブ側バックアップ部材87及びドリブン側バックアップ部材88を下方に退避させ、圧入工程を終了する。
図2及び図3に示すように、治具取り外し工程では、圧入が終了したプーリアッセンブリー15の固定治具53にハンドクレーン54が連結され、ハンドクレーン54によって上方に引き抜かれるようにして固定治具53がプーリアッセンブリー15から取り外される。取り外された固定治具53は、サブライン51に移動され、次に組立てるプーリアッセンブリー15の固定に用いられる。
【0050】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、ドライブプーリ20側の隔壁25の水平部25A及びドリブンプーリ30側の段部12Cをそれぞれ位置決め治具58に突き当てて入力軸11と出力軸12との軸間距離、及び、Vベルト13の位置を圧入基準位置に保持する保持工程と、位置決め治具58とは反対側に位置する入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bに、当該軸部11B,12Bとそれぞれ当接する第1当接部100及び第2当接部101を有する固定治具53を取り付けるとともに、第2当接部101を軸方向に移動させて第2当接部101を出力軸12の軸部12Bに突き当て、入力軸11及び出力軸12の寸法誤差Eを補正する補正工程と、固定治具53を押圧してプーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入する圧入工程と、を備えるため、入力軸11及び出力軸12の軸方向の寸法誤差Eを補正した状態で圧入でき、ドライブプーリ20及びドリブンプーリ30の軸方向の相対位置がずれないように圧入できる。
【0051】
また、本実施形態によれば、補正工程の後、プーリアッセンブリー15は、固定治具53によって把持された状態で、位置決め治具58からミッションケース40に移載されるため、ミッションケース40に移載される際に、ドライブプーリ20及びドリブンプーリ30の軸方向の相対位置のずれを防止できる。
【0052】
また、本発明は、ドライブプーリ20側の隔壁25の水平部25A及びドリブンプーリ30側の段部12Cが突き当てられ、入力軸11と出力軸12との軸間距離、及び、Vベルト13の位置を圧入基準位置に保持する位置決め治具58と、位置決め治具58とは反対側に位置する入力軸11及び出力軸12の軸部11B,12Bとそれぞれ当接する第1当接部100及び第2当接部101を有し、当該軸部11B,12Bを一体に把持する固定治具53と、第2当接部101を軸方向に移動させて第2当接部101を出力軸12の軸部12Bに突き当て、入力軸11及び出力軸12の寸法誤差Eを補正する移動部材104と、固定治具53を押圧してプーリアッセンブリー15をミッションケース40に圧入する圧入ヘッド84とを備えるため、入力軸11及び出力軸12の軸方向の寸法誤差Eを補正した状態で圧入でき、ドライブプーリ20及びドリブンプーリ30の軸方向の相対位置がずれないように圧入できる。
【0053】
また、固定治具53に連結され、この固定治具53及びプーリアッセンブリー15を位置決め治具58からミッションケース40に移載するハンドクレーン54を備え、このハンドクレーン54に移動部材104を動作させるサーボモータ122を設けたため、固定治具53にそれぞれサーボモータ122を設ける必要はなく、生産設備の構成を簡略化することができる。
【0054】
また、移動部材104は、固定治具53の支持プレート70に螺合する雄ねじ110Aは、第2当接部101の上端101Bに回転自在に連結される上端側のフランク角αが下端側のフランク角βより小さい鋸歯ねじで形成されているため、第2当接部101と出力軸12とが当接するまで、移動部材104を締め込んだ場合、この移動部材104が緩む方向(上方向)の荷重に対する抵抗力が大きく、補正した状態を安定的に維持することができる。従って、移動部材104及び第2当接部101が軸方向にずれることを防止でき、入力軸11及び出力軸12の軸方向の相対位置のずれを防止できるため、圧入する際の組立精度を向上できる。
【0055】
以上、本発明を一実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、移動部材104を第2当接部101側に設けたが、第1当接部100側に設けても良いし、双方に設けても良い。
また、移動部材104の外周面に形成された雄ねじ110Aは、鋸歯ねじとしたが、三角ねじを用いても良いことは勿論である。
また、本実施形態では、ドライブプーリ20側の隔壁25の水平部25A及びドリブンプーリ30側の段部12Cをそれぞれ位置決め治具58に突き当てて入力軸11と出力軸12との軸間距離、及び、Vベルト13の位置を圧入基準位置に保持しているが、ドライブプーリ20及びドリブンプーリ30のそれぞれ一部であれば、他の部位を位置決め治具58に突き当てても良い。
【符号の説明】
【0056】
11 入力軸
11A,12A 軸部
11B,12B 軸部(軸端部)
12 出力軸
12C 段部(ドリブンプーリの一部)
13 Vベルト(金属ベルト)
15 プーリアッセンブリー
20 ドライブプーリ
25A 水平部(ドライブプーリの一部)
30 ドリブンプーリ
40 ミッションケース
53 固定治具(把持部材)
54 ハンドクレーン(移載機構)
58 位置決め治具(基準台座)
80 圧入装置(プーリアッセンブリー圧入装置)
84 圧入ヘッド(圧入手段)
100 第1当接部(当接部)
101 第2当接部(当接部)
104 移動部材(補正手段)
122 サーボモータ(駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸に装着されるドライブプーリと、出力軸に装着されるドリブンプーリと、ドライブプーリ及びドリブンプーリに巻き掛けられる金属ベルトとを有するプーリアッセンブリーをミッションケースに圧入するプーリアッセンブリー圧入方法において、
前記ドライブプーリ及びドリブンプーリの一部をそれぞれ基準台座に突き当てて前記プーリアッセンブリーを前記基準台座上に保持する保持工程と、前記基準台座と反対側に位置する前記入力軸及び前記出力軸の軸端部に、当該軸端部とそれぞれ当接する当接部を有する把持部材を取り付けるとともに、前記当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて当該当接部の一方を前記軸端部に突き当て、前記入力軸及び前記出力軸の寸法誤差を補正する補正工程と、前記把持部材を押圧して前記プーリアッセンブリーをミッションケースに圧入する圧入工程と、を備えることを特徴とするプーリアッセンブリー圧入方法。
【請求項2】
前記補正工程の後、前記プーリアッセンブリーは、前記把持部材によって把持された状態で、前記基準台座から前記ミッションケースに移載されることを特徴とする請求項1に記載のプーリアッセンブリー圧入方法。
【請求項3】
入力軸に装着されるドライブプーリと、出力軸に装着されるドリブンプーリと、ドライブプーリ及びドリブンプーリに巻き掛けられる金属ベルトとを有するプーリアッセンブリーをミッションケースに圧入するプーリアッセンブリー圧入装置において、
前記ドライブプーリ及びドリブンプーリの一部が突き当てられ、前記プーリアッセンブリーを圧入基準位置に保持する基準台座と、この基準台座と反対側に位置する前記入力軸及び前記出力軸の軸端部とそれぞれ当接する当接部を有し、前記入力軸及び前記出力軸を一体に把持する把持部材と、前記当接部の少なくとも一方を軸方向に移動させて当該当接部の一方を前記軸端部に突き当て、前記入力軸及び前記出力軸の寸法誤差を補正する補正手段と、前記把持部材を押圧して前記プーリアッセンブリーをミッションケースに圧入する圧入手段と、を備えることを特徴とするプーリアッセンブリー圧入装置。
【請求項4】
前記把持部材に連結され、この把持部材及び前記プーリアッセンブリーを前記基準台座から前記ミッションケースに移載する移載機構を備え、この移載機構に前記補正手段を動作させる駆動装置が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプーリアッセンブリー圧入装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記把持部材に螺合する鋸歯ねじを備えることを特徴とする請求項3または4に記載のプーリアッセンブリー圧入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61003(P2013−61003A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199254(P2011−199254)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】