説明

ヘアライン調塗装鋼板およびその製造方法

【課題】通常の塗装設備で簡単にヘアライン調塗装鋼板を提供する。
【解決手段】塗料を塗布した鋼板に、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付した後、乾燥焼付けてなるヘアライン調塗装鋼板とした。製造に際しては、粘度の下限が14mPa・s(B型回転粘度計/6rpm)の塗料を塗布した鋼板に、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付した後、塗料がウエット状態にあるうちに到達板温180〜230℃の温度で20〜60秒間乾燥焼付けることにした。尖頭材には多数の針や釘をヘアラインの線条筋に沿うように固定配列したものを取り付けてもよいし、剣山状のものを用いてもよい。また、クロスハッチカッターのように予めピッチが決められた回動自在な円盤状のカッターを鋼板の幅方向に合致するように配置したものを用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品、レンジフード等の器物に使用されるヘアライン調の意匠鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアライン調の意匠付与は、塗膜の上に印刷で意匠を付与したクリア塗膜を設けて印刷模様を保護する方法(特許文献1)やクリアフィルムにヘアライン研磨した表面に金属蒸着膜を施した化粧シートを接着剤で鋼板にラミネートする方法(特許文献2)などがある。
【特許文献1】特開平11−207861号公報
【特許文献2】特開2005−280172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1にあるような印刷は簡便であるが、ヘアライン模様の各線条筋が太く意匠性に乏しい。また、保護膜を必要とするため、多数の塗装工程を経ることからコスト高となる。また、特許文献2にある化粧シートは意匠性に富んでいるが、フィルムにヘアラインを研磨で付与した後、金属蒸着膜を形成するが、フィルムと蒸着膜の密着力が小さく、鋼板にラミネートする際に擦れて金属蒸着膜が剥離するおそれがある。したがって生産にあたっては細心な注意を要し、作業性が悪い。
【0004】
本発明は、これらの問題点を解消するため、安価で作業性のよい鮮明なヘアライン模様を発現させる方法を種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため本発明において講じた技術的手段は、塗料を塗布した鋼板に、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付した後、乾燥焼付けてなるヘアライン調塗装鋼板とした。製造に際しては、粘度の下限が14mPa・s(B型回転粘度計/6rpm)の塗料を塗布した鋼板に、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付した後、塗料がウエット状態にあるうちに到達板温180〜230℃の温度で20〜60秒間乾燥焼付けることにした。尖頭材には多数の釘をヘアラインの線条筋に沿うように固定配列したものを取り付けてもよいし、剣山状のものを用いてもよい。また、クロスハッチカッターのように予めピッチが決められた回動自在な円盤状のカッターを鋼板の幅方向に合致するように配置したものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0006】
塗料を塗布した後、ウエット状態にあるうちに多数の線条を付与して加熱乾燥するだけであり、現行の連続塗装設備や切板塗装でも多額の設備投資の必要もなく、安価で作業性のよいヘアライン調の意匠塗装鋼板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のヘアライン調塗装鋼板は、鋼板表面に塗布した塗料がウエット状態にあるうちに、例えば図1のヘアライン調意匠付与の模式図に示すような尖頭材として多数の釘や針を垂直に軽く押し当てて数条の筋を付けた後、塗料がレベリングにより平滑になる前に加熱乾燥することにより形成される。この際に付与された筋状模様の意匠がヘアライン調になるものである。
【0008】
基材である鋼板は、亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、ステンレス鋼板を用いることが好ましい。鋼板には、必要に応じアルカリ脱脂,表面調整,化成処理等の塗装前処理が施される。アルカリ脱脂,表面調整には、プレコート鋼板や塗装アルミニウム板の製造で常用されている方法を採用できる。化成処理には、クロメート処理,リン酸塩処理,クロムフリー処理等がある。
【0009】
塗料は、とくに限定されることはなく、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、高分子ポリエステル樹脂系、エポキシ変性高分子ポリエステル系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、フッ素樹脂系などの通常のものを用いることができる。アルミニウム粉末などの金属粉末を添加したメタリック顔料を配合してもよく、メタリック顔料を配合することにより、ヘアライン調が鮮明となり意匠性が向上する。
【0010】
調製された塗料は、粘度の下限が14mPa・s(B型回転粘度計/6rpm:東機産業製BM型粘度計)となるように調整する。粘度が14mPa・s未満では、塗布した塗料がさらさらの状態になり、尖頭材で線条の筋を付与しても直ぐに流れ出し、ヘアライン調が発現できない。また、9Pa・s以上になると、ゲル状態となり塗料として機能しなくなる。
なお、ヘアライン調の意匠を付与するには、乾燥膜厚として10〜50μm、好ましくは15〜30μmが意匠性も優れ経済的である。
【0011】
塗料を鋼板に塗布した後、ウエット状態にあるうちに、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付与する。線条筋の付与手段としては、図2に示す多数の針をヘアラインの線条筋に沿うように固定配列したものを取り付けてもよいし、剣山状のものを用いてもよい。また、図3に示すようなクロスハッチカッターのように予めピッチが決められた回動自在な円盤状のカッターを鋼板の幅方向に合致するように配置したものなどがある。
【0012】
前記のとおり多数の線条筋を付した後、塗料がウエット状態にあるうちに到達板温180〜230℃の温度範囲で20〜60秒間乾燥焼付ける。
温度が180℃未満で乾燥時間が20秒未満では、乾燥が十分でなく、コイルで巻き取る際に塗料がベタ付く。温度が230℃を越えて乾燥時間が60秒を越えると、塗料が突沸してワキや塗膜が黄変するなどの塗膜欠陥が発生しやすくなる。
【実施例】
【0013】
実施例1;
厚さ0.5mm、片面当たりめっき付着量45g/mの溶融亜鉛めっき鋼板に、Ti系クロムフリー処理を施し、鱗片状アルミニウム粉末顔料を配合したエポキシ変性ポリエステル樹脂塗料を乾燥膜厚で5μm塗布し、熱風加熱式オーブンで到達板温190℃×25秒間焼付け、水冷後、鱗片状アルミニウム粉末及び着色顔料を配合し、塗料粘度を20mPa・sに調整したポリエステル樹脂塗料を乾燥膜厚が18μmになるように塗布し、塗料がウエット状態にあるうちに、線条筋の間隔が1mmとなるように針を固定した図2に示す治具を用いて多数の線条筋を付与し、直ちに210℃×40秒間加熱・乾燥を経てヘアライン調塗装鋼板を作製した。通常のヘアライン仕上げと遜色のない塗装外観が得られ、塗膜性能もヘアラインなしのものと変化がなかった。
【0014】
実施例2;
線条筋を付与する治具が図3に示すクロスハッチカッター状のものを用いた以外は実施例1と同様な条件でヘアライン調塗装鋼板を作製した。通常のヘアライン仕上げと遜色のない塗装外観が得られ、塗膜性能もヘアラインなしのものと変化がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上に説明したとおり、本発明のヘアライン調塗装鋼板は、特別な設備は不要で簡単な治具で作業性もよくプレコート鋼板や切板塗装鋼板として作製できる。作製された塗装鋼板は研磨によるヘアラインと遜色なく優れた意匠性を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】発明のヘアライン調意匠付与する状態を示す模式図。
【図2】本発明のヘアライン調意匠付与の治具の一例と付与状態を示す斜視図。
【図3】本発明のヘアライン調意匠付与の治具の別の一例を示す斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を塗布した鋼板に、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付した後、乾燥焼付けてなるヘアライン調塗装鋼板。
【請求項2】
粘度の下限が14mPa・s(B型回転粘度計/6rpm)の塗料を塗布した鋼板に、多数の尖頭材を押し付けて多数の線条筋を付した後、塗料がウエット状態にあるうちに到達板温180〜230℃の温度で20〜60秒間乾燥焼付けることを特徴とするヘアライン調塗装鋼板の製造方法。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237137(P2007−237137A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66969(P2006−66969)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】