説明

ヘアーコンディショニング剤およびその使用方法

【解決手段】 本発明のヘアーコンディショニング剤は、(A)平均分子量100000〜1000000のキトサン誘導体を少なくとも含むカチオン性成分と、(B)平均分子量20000〜40000の加水分解ケラチンを少なくとも含むアニオン性成分と、(C)炭素原子数1〜3のモノアルコールと、(D)炭素原子数3〜6のポリオールと、(E)無機塩と、(F)水とを、含有してなるヘアーコンディショニング剤であって、各成分をそれぞれ特定の割合で含むことを特徴としている。
【効果】 本発明のヘアーコンディショニング剤によれば、毛髪に対して充分なトリートメント効果を付与し、とくにパーマネント処理による毛髪のダメージを効果的に低減することができるとともに、優れた保存安定性を同時に達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアーコンディショニング剤およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カチオン性成分とアニオン性成分とが接触した場合に、1種の複合体を形成することが知られている。このような複合体として、具体的には、たとえば、カチオン性高分子とアニオン性界面活性剤、カチオン性高分子とアニオン性/両性混合界面活性剤などと
が形成するコアセルベートと呼ばれるものや、カチオン性高分子とアニオン性高分子とが形成するポリイオンコンプレックスと呼ばれるものが知られている。
【0003】
このうち、コアセルベートの一例としては、たとえば、カチオン性高分子とアニオン性/両性混合界面活性剤とを含む組成物が水で希釈され、ある特定の濃度領域となった際に
見られる水に不溶の複合体が挙げられ、シャンプー中に含まれるカチオン性高分子とアニオン性/両性混合界面活性剤との間でも生じることが知られている(非特許文献1参照)
。すなわち、カチオン性高分子とアニオン性/両性混合界面活性剤とを含むシャンプーで
洗髪している間に、該シャンプーが水で希釈されることにより、コアセルベートが生成するのである。生成したコアセルベートは、毛髪に付着するため、シャンプーの使用感や毛髪の洗い上がりに影響を与えると報告されている。
【0004】
したがって、たとえば、上記カチオン性高分子として、従来公知の毛髪保護成分などを使用すれば、コアセルベートの形態で毛髪に付着させることができるため、毛髪のトリートメント効果が期待される。
【0005】
しかしながら、このようなコアセルベートやポリイオンコンプレックスなどの複合体が保存時の組成物中で生成すると、組成物の白濁や沈殿の原因となり、外観を著しく損ねるだけでなく、組成物本来の性能を発揮させることすら困難となる。
【0006】
したがって、保存時の組成物中ではこのような複合体の生成を抑制するとともに、使用時には積極的に複合体を形成させて毛髪に付着させることでトリートメント効果を付与できる組成物の開発が望まれる。
【0007】
上記非特許文献1の場合には、カチオン性高分子とアニオン性界面活性剤以外に、両性界面活性剤を配合したシャンプーの形態を採用し、水に対するこれらの濃度を調整することで、上記課題を達成していると考えられる。
【0008】
しかしながら、このような形態では、コアセルベートを生成するために、組成物を水によって希釈することが必須であり、水を使用した洗髪を前提としている。このような洗髪の際、コアセルベートの生成に好ましい特定の濃度領域が保たれる時間は短く、一旦コアセルベートが生成してもさらに希釈されて消失したり、毛髪に付着したコアセルベートが洗髪の際の物理的な摩擦によって洗い流されたりするおそれがあり、充分なトリートメント効果は期待できない。
【非特許文献1】J. Soc. Cosmet. Chem. Japan (Vol.38, No.3, 211-219 (2004))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水で洗い流すことなく、カチオン性成分とアニオン性成分との複合体を形成し、毛髪に付着させることのできるヘアーコンディショニング剤およびその使用方法を提
供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のカチオン性成分とアニオン性成分とモノアルコールとポリオールと無機塩と水とを特定量で含有する組成物によれば、優れた保存安定性を有し、かつ、水で洗い流すことを要さずにカチオン性成分とアニオン性成分との複合体を形成し毛髪に付着させることのできるヘアーコンディショニング剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
本発明に係るヘアーコンディショニング剤は、(A)平均分子量100000〜1000000のキトサン誘導体を少なくとも含むカチオン性成分と、(B)平均分子量20000〜40000の加水分解ケラチンを少なくとも含むアニオン性成分と、(C)炭素原子数1〜3のモノアルコールと、(D)炭素原子数3〜6のポリオールと、(E)無機塩と、(F)水とを、含有してなるヘアーコンディショニング剤であって、
(A)成分1重量部に対して、(B)成分を0.4〜15重量部、(C)成分を140〜500重量部、(D)成分を70〜290重量部、(E)成分を5〜75重量部の量で含み、かつ、(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して、(F)成分を0.5〜7.0重量部の量で含むことを特徴としている。
【0012】
本発明では、前記(A)カチオン性成分として、さらにカチオン性界面活性剤を含むことが好ましく、前記カチオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩であることがより好ましい。
【0013】
本発明では、前記加水分解ケラチンは、γ−ケラトースであることが好ましい。
また、本発明では、前記(B)アニオン性成分として、さらにアニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、前記アニオン性界面活性剤は、アルカンスルホン酸ナトリウムおよび/またはポリアクリル酸であることがより好ましい。
【0014】
本発明では、前記(C)モノアルコールは、エタノールであることが好ましい。
また、本発明では、前記(D)ポリオールは、プロピレングリコールであることが好ましい。
【0015】
本発明では、前記(E)無機塩は、塩化アンモニウムであることが好ましい。
また、本発明に係るヘアーコンディショニング剤の使用方法は、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)と酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)とを使用する毛髪のパーマネント処理に際して、
還元剤を含むパーマネント処理剤(I)を毛髪に塗布し、次いで毛髪を洗ってパーマネント処理剤(I)を洗い流した後、酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)を毛髪に塗布するよりも前に、前記ヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布し、洗い流すことなく乾燥させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヘアーコンディショニング剤によれば、毛髪に対して充分なトリートメント効果を付与し、とくにパーマネント処理による毛髪のダメージを効果的に低減することができるとともに、優れた保存安定性を達成することができる。
【0017】
また、本発明のヘアーコンディショニング剤の使用方法によれば、水で洗い流すことを要さずにカチオン性成分とアニオン性成分との複合体を生成させ、確実に毛髪に付着させることができるため、毛髪に対する充分なトリートメント効果を担保することができる。
とくに、パーマネント処理の際に還元剤やアルカリによって膨潤した毛髪に塗布した場合には、毛髪表面のみならず、毛髪内部にもヘアーコンディショニング剤が浸透し、毛髪内部でも複合体の生成が生じるため、トリートメント効果がより高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
≪ヘアーコンディショニング剤≫
まず、本発明のヘアーコンディショニング剤について説明する。
【0019】
本発明のヘアーコンディショニング剤は、通常、(A)平均分子量100000〜1000000のキトサン誘導体を少なくとも含むカチオン性成分と、(B)平均分子量20000〜40000の加水分解ケラチンを少なくとも含むアニオン性成分と、(C)炭素原子数1〜3のモノアルコールと、(D)炭素原子数3〜6のポリオールと、(E)無機塩と、(F)水とを、特定の量で含有している。なお、本明細書中、「カチオン性成分」、「アニオン性成分」とは、本発明のヘアーコンディショニング剤のpHにおいて、それぞれプラスの電荷、マイナスの電荷を有する成分を意味する。
【0020】
<(A)カチオン性成分>
本発明に用いることのできるカチオン性成分は、平均分子量が通常100000〜1000000、好ましくは150000〜250000のキトサン誘導体を少なくとも含有していることが望ましい。該キトサン誘導体を含むカチオン性成分を用いることで、後述する加水分解ケラチンを該カチオン性成分と複合体化させ、複合体として毛髪に付着させたり、毛髪内部にとどめおくことができる。
【0021】
なお、本明細書において、平均分子量は、既知の分子量を有する複数の分子量標準品を用いて高速液体クロマトグラフィにて溶出時間を測定し、分子量と溶出時間の関係から作成した検量線に基づいて求めることができる。
【0022】
このようなキトサン誘導体としては、具体的には、たとえば、ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサンが好ましく挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。該キトサン誘導体としては、公知のものを使用することができ、市販品(たとえば、一丸ファルコス株式会社製「アクアクラスター」、「キトフィルマー」などが挙げられる。)を適宜使用することができる。
【0023】
前記キトサン誘導体は、カチオン性成分(A)全量中に通常15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、さらに好ましくは25〜30重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0024】
さらに本発明では、上記キトサン誘導体以外のカチオン性成分として、カチオン性界面活性剤を含むことが好ましい。該カチオン性界面活性剤を含有していると、後述するアニオン性成分との複合体の生成がより容易となる。
【0025】
前記カチオン性界面活性剤としては、具体的には、たとえば、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム(5E.O.)、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメ
チルアンモニウム(2E.O.)などのポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩;塩化ア
ルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わ
せて用いることができる。
【0026】
これらのうちでは、後述するモノアルコールやポリオールなどとの良好な溶解性、ならびにベタツキがないなどの優れた使用感が期待できる点から、ポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0027】
前記カチオン性界面活性剤は、カチオン性成分(A)全量中から前記キトサン誘導体の量を引いた残部の量となるように含まれていることが望ましい。
なお、カチオン性成分(A)は、本発明のヘアーコンディショニング剤全量100重量%中に、通常0.015〜0.3重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%、さらに好ましくは0.05〜0.15重量%の量で含まれていることが望ましい。カチオン性成分(A)が上記範囲内の量で含まれていると、後述するアニオン性成分(B)と相まって毛髪に対するトリートメント効果が期待できる。
【0028】
<(B)アニオン性成分>
本発明に用いることのできるアニオン性成分は、平均分子量20000〜40000の加水分解ケラチンを少なくとも含有していることが望ましい。
【0029】
加水分解ケラチンは、毛髪の主成分であるケラチンの加水分解物であり、毛髪保護成分としての効果が期待される。しかしながら、従来は平均分子量が400〜1200程度、大きくても3000〜5000程度のものが主流であり、これらは毛髪内部に浸透しやすいものの、シャンプーなどによる水洗で容易に流出してしまうという問題があった。
【0030】
これに対して、平均分子量20000〜40000の加水分解ケラチンを用いると、上記低分子量の加水分解ケラチンと比較して毛髪内部に浸透しにくいものの、一旦内部に入ってしまえば出にくく、また中に入らなくても表面で被膜を形成するため、これら両面から毛髪保護効果が高くなる。さらに本発明では、該加水分解ケラチンを毛髪表面あるいは毛髪内部でカチオン性成分と複合体化させることで、複合体として毛髪表面に付着させたり、毛髪内部にとどめおくことができる。
【0031】
このような加水分解ケラチンとしては、平均分子量が上記範囲内にある限り、α−ケラトース(結晶性)、γ−ケラトース(非結晶性)のいずれでもよく、公知のものを適宜使用することができる。
【0032】
たとえば、化粧品種別配合成分規格(厚生省)に記載されている「加水分解ケラチン末」、「加水分解ケラチン液」、特開平10−77209号公報に記載されたケラチン加水分解生成物、市販品(たとえば、一丸ファルコス株式会社製「プロティキュートHガンマ」、「プロティキュートUアルファ」等が挙げられる)などを用いることができる。
【0033】
これらのうちでは、水溶液中での安定性の点からγ−ケラトースが好ましく用いられる。
該加水分解ケラチンは、アニオン性成分(B)全量中に通常10〜65重量%、好ましくは15〜60重量%、さらに好ましくは25〜50重量%含まれているとよい。
【0034】
さらに本発明では、上記加水分解ケラチン以外のアニオン性成分として、アニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。アニオン性界面活性剤を含有していると、上述したカチオン性成分との複合体の生成がより容易となる。
【0035】
前記アニオン性界面活性剤としては、具体的には、アルカンスルホン酸ナトリウム;テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのα−オレフィンスルホン酸塩;ドデシルベンゼン
スルホン酸トリエタノールアミンなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなどのN−アシルスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン(以下、POEと略す。)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEアルキルエーテル硫酸アンモニウム、POEノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸二ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルアミノ酸塩;スルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、POEスルホコハク酸二ナトリウム、POEスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸POEラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;イソブチレン、ジイソブチレン、スチレンなどのビニル化合物とマレイン酸との共重合体の塩;ポリアクリル酸またはその塩;アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
これらのうちでは、アルカンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸またはその塩が好ましく、なかでもアルカンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸がより好ましい。
アニオン性成分として、このような特定のアニオン性界面活性剤を含んでいると、上述したキトサン誘導体との複合体を生成しやすい。
【0037】
前記アニオン性界面活性剤は、アニオン性成分(B)全量中から前記加水分解ケラチンの量を引いた残部の量となるように含まれていることが望ましい。
本発明のへアーコンディショニング剤中に、これらアニオン性成分(B)は、カチオン性成分(A)1重量部に対して、通常0.4〜15重量部、好ましくは0.9〜10重量部、さらに好ましくは1.5〜5重量部の量で含まれている。アニオン性成分(B)が、カチオン性成分(A)に対して上記範囲内の量で含まれていると、本発明のヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布し、乾燥した際、とくに熱をかけて乾燥した際に、複合体の生成が効率的に起こり、毛髪に対するトリートメント効果が充分に得られる。一方、上記範囲の量を超えて含まれると、本発明のヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布し、乾燥した際、とくに熱をかけて乾燥した際に、複合体の生成が起こり難く、ベタツキが生じ手触りが悪くなる場合がある。
【0038】
<(C)モノアルコール>
本発明に用いることのできる炭素原子数1〜3のモノアルコールとしては、本発明のヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布し、乾燥した際、とくに熱をかけて乾燥した際に短時間で揮発しやすいよう、水よりも沸点の低いものが好ましい。
【0039】
このようなモノアルコールとしては、たとえば、メタノール(沸点64.1℃)、エタノール(沸点78.3℃)、イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)、プロピルアルコール(沸点97.4℃)などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、化粧品原料としての汎用性やにおいの点から、エタノールが好ましい。
【0040】
本発明のヘアーコンディショニング剤中に、モノアルコール(C)は、カチオン性成分(A)1重量部に対して、通常140〜500重量部、好ましくは200〜450重量部
、より好ましくは280〜400重量部の量で含まれている。
【0041】
モノアルコール(C)がカチオン性成分(A)に対して上記範囲内の量で含まれていると、ヘアーコンディショニング剤の保存安定性が向上する。その一方、上記範囲を外れると、保存中のヘアーコンディショニング剤中で複合体が析出し、保存安定性が劣る場合がある。
【0042】
<(D)ポリオール>
本発明に用いることのできる(D)炭素原子数3〜6のポリオールとしては、具体的には、たとえば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、へキシレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ベタツキの少ない点からプロピレングリコールが好ましい。
【0043】
本発明のヘアーコンディショニング剤中に、ポリオール(D)は、カチオン性成分(A)1重量部に対して、通常70〜290重量部、好ましくは100〜220重量部、より好ましくは110〜180重量部の量で含まれている。
【0044】
ポリオール(D)がカチオン性成分(A)に対して上記範囲内の量で含まれていると、保存時にヘアーコンディショニング剤中で複合体が生成することを抑制でき保存安定性が向上する。一方、上記下限値未満の量であると、保存時にヘアーコンディショニング剤中で複合体が析出し、保存安定性が劣る場合があり、上記上限値を超えた量で含まれると、ヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布して乾燥させた際に複合体が生成し難い上に、ベタツキが生じ手触りが悪くなる場合がある。
【0045】
<(E)無機塩>
本発明に用いることのできる無機塩(E)としては、具体的には、たとえば、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、水への溶解度が高い点から塩化アンモニウムが好ましい。
【0046】
本発明のヘアーコンディショニング剤中に、無機塩(E)は、カチオン性成分(A)1重量部に対して、通常5〜75重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部の量で含まれている。
【0047】
無機塩(D)がカチオン性成分(A)に対して上記範囲内の量で含まれていると、保存時にヘアーコンディショニング剤中で複合体が生成することを抑制でき保存安定性が向上する。一方、上記下限値未満の量であると、保存時にヘアーコンディショニング剤中で複合体が析出し、保存安定性が劣る場合があり、上記上限値を超えた量で含まれると、ヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布して乾燥させた際に複合体が生成し難い上に、ベタツキが生じ手触りが悪くなる場合がある。
【0048】
<(F)水>
本発明に用いることのできる水としては、とくに限定されないが、イオン交換水、蒸留水などの精製水を用いることが好ましい。
【0049】
本発明のヘアーコンディショニング剤中に、水(F)は、上述した(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して、通常0.5〜7.0重量部、好ましくは1.0〜3.5重量部、より好ましくは1.2〜2.5重量部の量で含まれている。
【0050】
水(F)が、上述した(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して上記範囲内の量で含まれていると、各成分を充分に溶解または分散できる上に、保存中にヘアーコンディショニング剤中で複合体が生成するのを抑制することができる。
【0051】
<(G)その他>
さらに本発明のヘアーコンディショニング剤は、本発明の効果を損ねない範囲内の量で、その他の成分を含んでいてもよい。
【0052】
配合しうる他の成分としては、たとえば、ポリペプチド、シリル化ポリペプチド、アミノ酸などの毛髪保護剤;硫酸銅などの二価の金属塩;ジメチルポリシロキサン、ポリオキシエチレン/メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン類;クエン酸、クエン酸ナ
トリウムなどのpH調整剤;メチルパラベン、安息香酸ナトリウムなどの防腐剤;香料;色素などが挙げられる。
【0053】
これらのうち、熱により毛髪表面で重合し毛髪表面を保護する点からは、シリル化ポリペプチドを配合することが好ましく、使用した際の手触りや製品外観(透明性)の向上の点からはポリオキシエチレン/メチルポリシロキサン共重合体を配合することが好ましく
、パーマネント処理で使用する還元剤のにおいを消臭する点からは硫酸銅を配合することが好ましい。
【0054】
<ヘアーコンディショニング剤の製造>
本発明のヘアーコンディショニング剤は、上述した各成分を、従来公知の方法によって、混合、撹拌、加熱、溶解等することにより、製造することができ、その方法はとくに限定されない。
【0055】
このようにして得られた本発明のヘアーコンディショニング剤は、通常、前記(A)成分1重量部に対して、(B)成分を0.4〜15重量部、(C)成分を140〜500重量部、(D)成分を70〜290重量部、(E)成分を5〜75重量部の量で含み、かつ、(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して、(F)成分を0.5〜7.0重量部の量で含む組成物であり、
好ましくは、前記(A)成分1重量部に対して、(B)成分を0.9〜10重量部、(C)成分を200〜450重量部、(D)成分を100〜220重量部、(E)成分を10〜60重量部の量で含み、かつ、(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して、(F)成分を1〜3.5重量部の量で含む組成物であり、
より好ましくは、前記(A)成分1重量部に対して、(B)成分を1.5〜5重量部、(C)成分を280〜400重量部、(D)成分を110〜180重量部、(E)成分を20〜50重量部の量で含み、かつ、(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して、(F)成分を1.2〜2.5重量部の量で含む組成物である。
【0056】
なお、該ヘアーコンディショニング剤のpHは、通常3〜7、好ましくは4.5〜5.5の範囲内であることが望ましい。pHが上記範囲内であると、保存安定性や毛髪へのトリートメント効果が良好である。とくに後述する毛髪のパーマネント処理の際に本発明のヘアーコンディショニング剤を使用した場合、該ヘアーコンディショニング剤のpHが下限値より下回ると、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)中のアルカリの影響で、アルカリ側のpHに傾いている毛髪が、ヘアーコンディショニング剤の塗布によって急激な収縮を起こし、毛髪の手触りが悪化したりやダメージにつながることがある。
≪ヘアーコンディショニング剤の使用方法≫
次に、本発明のヘアーコンディショニング剤の使用方法について説明する。
【0057】
上述したヘアーコンディショニング剤の使用方法としては、種々の態様があり得る。
たとえば、適量のヘアーコンディショニング剤(使用量は、毛髪の量や長さに応じて適宜調節することが望ましい)を乾燥状態あるいは洗髪後などの湿潤状態の毛髪に塗布し、乾燥させる態様や、
還元剤を含むパーマネント処理剤(I)と酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)とを使用する毛髪のパーマネント処理に際して、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)を毛髪に塗布し、次いで毛髪を水で洗って塗布したパーマネント処理剤(I)を洗い流した後、酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)を毛髪に塗布するよりも前に、前記ヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布し、洗い流すことなく乾燥させる態様などが好ましく挙げられる。
【0058】
これらの態様において、ヘアーコンディショニング剤の塗布や乾燥は、公知の手法を用いて適宜行うことができ、とくに限定されないが、塗布の手法としては、手で適量を伸ばしながら毛髪にすりこむ手法や、櫛や刷毛などを用いる手法などが挙げられる。また、乾燥手法としては、ドライヤーや高温整髪用アイロンなどを用いて熱をかけて乾燥させる手法や、自然乾燥などが挙げられる。これらのうち、熱をかけて乾燥させる手法は、乾燥時間をより短縮することができ、複合体の生成を促進することから好ましい。
【0059】
このような乾燥処理を経ることによって、ヘアーコンディショニング剤中に含まれているモノアルコールや水などが除去されることにより、カチオン性成分とアニオン性成分とが複合体を生成する。この複合体の生成は、毛髪表面で起こるのみならず、ヘアーコンディショニング剤の一部が毛髪内部に浸透して毛髪内部でも起こると考えられる。この場合、生成した複合体は毛髪表面に付着するのみならず、毛髪内部にも留まり、毛髪に充分なトリートメント効果を与える。
【0060】
該効果は、毛髪のダメージが懸念されるパーマネント処理にとくに望まれるものである。以下に、パーマネント処理に際しての本発明のヘアーコンディショニング剤の使用方法について詳述する。
【0061】
毛髪のパーマネント処理は、一般に、毛髪のケラチン中のシスチン結合を還元剤で切断し、毛髪に所望の形状を付与した後、酸化剤でシスチン結合を再生することによってなされる。したがって、毛髪のパーマネント処理に際しては、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)と酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)とを使用する2剤式の処理スタイルが広く普及している。
【0062】
この際、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)を毛髪に塗布し、毛髪のケラチン中のシスチン結合を還元剤で切断した後、該パーマネント処理剤(I)を水で洗い流すことが適宜行われるが、このときの毛髪は、該パーマネント処理剤(I)に含まれている還元剤やアルカリの影響でキューティクルが開き、より膨潤した状態となっている。この洗髪後の毛髪に本発明のヘアーコンディショニング剤を塗布することで、ヘアーコンディショニング剤が毛髪内部に充分浸透し、毛髪表面および毛髪内部で複合体の生成が起こり、該複合体が毛髪表面に付着するとともに毛髪内部に留まることにより、トリートメント効果を確実に付与し、パーマネント処理による毛髪のダメージを軽減することができる。
【0063】
とくに近年普及してきた、縮毛矯正と呼ばれるストレートパーマの一態様では、シスチン結合を還元剤で切断した後に、毛髪をドライヤーなどで乾燥させ、その後、高温整髪用アイロンなどの器具を用いて毛髪に熱をかけるが、このような態様においても、本発明のヘアーコンディショニング剤をドライヤーや高温整髪用アイロンなどの熱処理の前に予め毛髪に塗布しておくことで、毛髪へのダメージを効果的に減少させることができる。
【0064】
該ヘアーコンディショニング剤は、毛髪に塗布された後、ドライヤーや高温整髪用アイ
ロンあるいは自然乾燥などの公知の手段で乾燥させられる。なお、この乾燥と同時あるいはその後別途に、毛髪に所望の形状を付与することができる。
【0065】
その後は、通常のパーマネント処理と同様に、酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)を塗布し、酸化剤でシスチン結合を再生したのち、洗髪して該パーマネント処理剤(II)を水で洗い流し、必要に応じて適宜毛髪を乾燥することによって終了する。
【0066】
なお、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)および酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)としては、公知のものを使用することができ、とくに制限はない。
たとえば、還元剤を含むパーマネント処理剤(I)としては、チオグリコール酸またはその塩、システインまたはその塩、亜硫酸塩、システアミンまたはその塩などの還元剤;アンモニア、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、炭酸水素アンモニウムなどのアルカリ成分;界面活性剤;安定化剤;油剤;湿潤剤などを含んでなるものなどが挙げられる。
【0067】
たとえば、酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)としては、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムなどの酸化剤;界面活性剤;安定化剤;油剤;湿潤剤などを含んでなるものなどが挙げられる。
【0068】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜6]
表1に示した成分および割合で、各成分を撹拌、混合してヘアーコンディショニング剤を調製し、以下の方法で、保存安定性、毛髪に対するトリートメント効果、熱処理後の毛髪の手触りをそれぞれ評価した。
【0069】
結果を表1に示す。
<保存安定性評価>
ヘアーコンディショニング剤を、ポリ塩化ビニル製の蓋付き容器に入れ、密閉し、5℃、25℃、40℃の各温度でそれぞれ90日間放置した。
【0070】
各温度で放置した後のヘアーコンディショニング剤の外観を目視にて観察し、下記の評価基準にて評価したが、保存温度の差による結果の差異はなく、いずれの温度条件でも同じ結果が得られた。
【0071】
すなわち、これらの温度条件による放置後に、完全に透明である場合を◎で、透明であるが◎よりも透明性がやや劣る場合を〇で、白濁している場合を△で、白濁しかつ沈殿が生じている場合を×で表すことで評価した。
【0072】
<毛髪に対するトリートメント効果>
約20cmの未処理人毛を1.5gの束にし、この毛束に下記組成のパーマネント処理剤(I)を1.5g塗布し、常温で15分間放置した後、水で充分に洗い流した。次いで、水洗後の毛束にヘアーコンディショニング剤を1.0g塗布し、1200Wのドライヤーで熱を加えながら3分間かけて乾燥した。
【0073】
乾燥後の毛束に、120℃〜180℃の高温整髪用アイロンを1箇所にあたる時間が2秒間以内となるようにして全体的にあてた後、該毛束に下記組成のパーマネント処理剤(II)を1.5g塗布し、常温で15分間放置した後、水で充分に洗い流し、上記ドライヤーで熱を加えながら3分間かけて乾燥した。同処理を3回繰り返した。
【0074】
その後、該毛束を目視で観察し、毛束が広がらずまとまっており光沢が良好であるものを◎で、毛束が広がらずまとまっており光沢があるものを〇で、光沢はあるが毛束が広がっているものを△で、光沢がなく毛束が著しく広がって、毛先にパサつきが出ているものを×で表すことで評価した。
【0075】
パーマネント処理剤(I);チオグリコール酸7重量%、pH9.0(アンモニアにて
調整)、粘度30000mPa・s(B型粘度計)のクリーム状
パーマネント処理剤(II);臭素酸ナトリウム7.5重量%、pH8.0、粘度800mPa・s(B型粘度計)のジェル状
<熱処理後の毛髪の手触り>
約20cmの未処理人毛を1.5gの束にし、この毛束を市販のシャンプーで洗浄した後、ヘアーコンディショニング剤を1.0g塗布し、1200Wのドライヤーで熱を加えながら3分間かけて乾燥した。
【0076】
その後、該毛束を手で触りその触感に基づき、毛束の指どおりが非常によくなめらかなものを◎で、毛束の指どおりが良好なものを〇で、毛束の指どおりがやや悪くべたつきを感じるものを△で、毛束の指通りが悪くべたつきが著しいものを×で表すことで評価した。
【0077】
【表1】

【0078】
[比較例1〜5]
表2に示した成分および割合でヘアーコンディショニング剤を調製したほかは、実施例1〜6と同様にして、保存安定性、毛髪に対するトリートメント効果、熱処理後の毛髪の
手触りをそれぞれ評価した。
【0079】
結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表1から、実施例1〜6のヘアーコンディショニング剤によれば、保存中には複合体が生じず、優れた保存安定性を有する一方、トリートメント効果や熱処理後の手触りが良好であることから、使用時には複合体の生成が効率的に行われ、生成した複合体が毛髪表面に付着したり毛髪内部に留まったりしていることが推測される。
【0082】
これに対し、表2から、比較例1〜5のヘアーコンディショニング剤によれば、保存中に複合体が生成し保存安定性を悪化させる上に、トリートメント効果や熱処理後の手触りも劣ることから、使用時には複合体の生成が効率的に行われていないことが推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均分子量100000〜1000000のキトサン誘導体を少なくとも含むカチオン性成分と、
(B)平均分子量20000〜40000の加水分解ケラチンを少なくとも含むアニオン性成分と、
(C)炭素原子数1〜3のモノアルコールと、
(D)炭素原子数3〜6のポリオールと、
(E)無機塩と、
(F)水とを、
含有してなるヘアーコンディショニング剤であって、
(A)成分1重量部に対して、(B)成分を0.4〜15重量部、(C)成分を140〜500重量部、(D)成分を70〜290重量部、(E)成分を5〜75重量部の量で含み、かつ、(A)〜(E)成分の合計量1重量部に対して、(F)成分を0.5〜7.0重量部の量で含むことを特徴とするヘアーコンディショニング剤。
【請求項2】
前記(A)カチオン性成分として、さらにカチオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン付加4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項2に記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項4】
前記加水分解ケラチンが、γ−ケラトースであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項5】
前記(B)アニオン性成分として、さらにアニオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項6】
前記アニオン性界面活性剤が、アルカンスルホン酸ナトリウムおよび/またはポリアク
リル酸であることを特徴とする請求項5に記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項7】
前記(C)モノアルコールが、エタノールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項8】
前記(D)ポリオールが、プロピレングリコールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項9】
前記(E)無機塩が、塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のヘアーコンディショニング剤。
【請求項10】
還元剤を含むパーマネント処理剤(I)と酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)とを使用する毛髪のパーマネント処理に際して、
還元剤を含むパーマネント処理剤(I)を毛髪に塗布し、次いで毛髪を洗ってパーマネント処理剤(I)を洗い流した後、酸化剤を含むパーマネント処理剤(II)を毛髪に塗布するよりも前に、請求項1〜9のいずれかに記載のヘアーコンディショニング剤を毛髪に塗布し、洗い流すことなく乾燥させることを特徴とするヘアーコンディショニング剤の使用方法。

【公開番号】特開2006−232773(P2006−232773A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52866(P2005−52866)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(595082283)株式会社アリミノ (38)
【Fターム(参考)】