説明

ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの製造方法

ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール及び特にそのエナンチオマー(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの製造方法ならびにそのような方法における使用のためのある種の新規な中間体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール、そして特にそのエナンチオマー(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの製造方法ならびにそのような方法における使用のためのある種の新規な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オキシ基は、非特許文献1により記載されているものならびにまた特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9に記載されているもののようなレトロウイルスプロテアーゼ阻害剤の構造中に存在する重要な薬理学的部分である。該公開文献は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。米国でレトロウイルス感染の処置のための人間への臨床的使用に関して承認され、上記の構造部分を有する1つのそのようなプロテアーゼ阻害剤は、USAN承認名、ダルナビル(darunavir)を有する化合物であり、化学名、[(1S,2R)−3−[[(4−アミノフェニル)−スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−カルバミン酸(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル及び式(A):
【0003】
【化1】

【0004】
の構造を有する。
【0005】
上記に記載され、且つヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オキシ基を含有するプロテアーゼ阻害剤の合成における重要な前駆体は、式(I):
【0006】
【化2】

【0007】
の化合物、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールである。
【0008】
ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールは3つのステレオジェン中心を有し、理論的に8種の立体異性体が存在するべきであるという事実にかかわらず、4つの立体異性体しか存在しないと思われる。これは、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール中の二環式環構造の剛性の故であり、それはそのトランス−縮合立体異性体を熱力学的に好ましくないものとする。シス−縮合立体配置を有する立体異性体のみが熱力学的に安定であり、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの立体異性体の数を、それぞれ下記に示される1対のエナンチオマーを含んでなるエンド及びエキソジアステレオ異性体に減少させる:
【0009】
【化3】

【0010】
さらに特定的に、上記で挙げたプロテアーゼ阻害剤ダルナビルのようなエナンチオマー性(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オキシ基を含有するプロテアーゼ阻害剤の製造のために、式(Ia)の(3R,3aS,6aR)エナンチオマーが特に有用である:
【0011】
【化4】

【0012】
上記のプロテアーゼ阻害剤が重要である可能性及び結果としてこれらの化合物を商業的規模で製造する必要性の観点から、上記の式(I)及び(Ia)の化合物を製造することができる方法に関して、文献において多数の提案があった。
【0013】
多くのそのような提案は、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14及び非特許文献2に記載されている方法のように、例えば中間のラクトン中間体の形成及び次いで還元及び環化を含む非−環状前駆体から出発する二環式ビス−フラン構造の形成を含んだ。これらの方法は比較的多数の段階を含み、いくつかの場合には危険な試薬であるニトロメタンの使用を必要とするニトロメチル中間体の形成を含む。特許文献15に記載されている他の方法は、2,3−ジヒドロフランとアルキニル誘導体を反応させて2−アルキニルオキシフラン誘導体を生成せしめ、それを次いで照射光の存在
下で環化させることを含む。しかしながら、光の使用は、工業的規模における方法の実施に適さない。特許文献16に記載されている方法においても光の使用が必要であり、その方法では光の存在下でフランをカルボニル誘導体と反応させる。特許文献17は、2,3−ジヒドロフランから出発し、それを例えばクロログリオキシレートエステルと反応させてフラン環の3−位にグリオキシレート基を導入し、次いで還元して1,2−ジヒドロキシエチル側鎖を生成せしめ、続いて例えばハロゲン化剤を用いて処理して3a−ハロ−ヘキサヒドロフロ−[2,3−b]フラン−3−オール化合物を生成せしめ、続いてそれを還元する方法を記載している。この方法も、それがフラン出発材料から多数の段階を必要とし、それは工業的規模において不経済であるという欠点に苦しめられる。
【0014】
四塩化チタンを用いて2,3−ジヒドロフランをエチルグリオキシレートと反応させてオキソニウムイオン中間体を与え、それを次いで求核試薬と反応させて3−(β−カルボエトキシ−α−ヒドロキシメチル)−2−置換テトラヒドロフラン誘導体を与えることを含む類似の方法が、非特許文献3により提案されている。そのような求核試薬の例は、シリル誘導体及びメタノールを含む。記載されている唯一の実施例において、ジクロロメタン中のエチルグリオキシレート及び2,3−ジヒドロフランの混合物が−78℃においてジクロロメタン中の四塩化チタンの溶液に加えられ、1時間攪拌された。混合物に−78℃でアリルトリメチルシランが加えられ、得られる混合物が−78℃〜23℃で1時間攪拌された。炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて反応がクエンチングされ、酢酸エチルを用いて抽出され、合わせた有機層が乾燥され、濃縮され、次いでフラッシュクロマトグラフィーにより精製された。この方法はある種の欠点、例えば工業的規模では実際に不可能である−78℃の非常に低い反応温度の使用に苦しめられる。さらに我々は、非特許文献3に記載されている四塩化チタン法の使用が、チタン化合物の有効な除去を保証するための続く仕上げに伴う問題を呈することを見出し、チタン塩の除去は、不純物及び続く段階における副反応を避けるために必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第95/24385号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/65870号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/67254号パンフレット
【特許文献4】国際公開第99/67417号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/47551号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/76961号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/25240号パンフレット
【特許文献8】米国特許第6127372号明細書
【特許文献9】欧州特許第0 715 618号明細書
【特許文献10】国際公開第03/022853号パンフレット
【特許文献11】米国特許第2004/0162340号明細書
【特許文献12】国際公開第2004/033462号パンフレット
【特許文献13】米国特許第6867321号明細書
【特許文献14】国際公開第2005/095410号パンフレット
【特許文献15】国際公開第02/060905号パンフレット
【特許文献16】国際公開第03/024974号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2004/002975号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Ghosh et al.著,J.Med.Chem.39(17),1996年,3278−3290
【非特許文献2】Ghosh et al.著,J.Org.Chem.69,2004年,7822−7829
【非特許文献3】Ghosh et al.著,Tetrahedron Letters 40(1999年)1083−1086
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの製造のための新規且つ改良された合成を提供することである。本発明のさらなる目的は、容易に入手可能であり且つ経済的な出発材料を使用し、そして工業的規模で容易に達成可能な反応条件を用いる合成を提供することである。本発明のさらなる目的は、3−(β−カルボエトキシ−α−ヒドロキシメチル)−2−置換テトラヒドロフラン誘導体及びその類似体の製造のための簡単な方法を提供することである。本発明のさらな目的は、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの合成において有用な新規且つ有用な中間体を提供することである。本発明のさらなる目的は、抗レトロウイルスプロテアーゼ阻害剤の製造において有用な(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの新規且つ改良された合成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の方法においてGhosh et alが用いた四塩化チタン塩以外のある種のチタン塩の使用が、下記に議論するようなある種の利点を与えることが見出された。我々は、反応をクエンチングし、且つ続く段階において有害であり得るチタン種を除去するためにある種の試薬、すなわち水溶性錯化剤(例えばRochelle塩又はジエタノールアミン)を用いることにより、粗3−(β−カルボエトキシ−α−ヒドロキシメチル)−2−置換テトラヒドロフラン生成物の精製を向上させることができることも見出した。かくしてGhosh et alにより記載された炭酸水素ナトリウムの代わりの水溶性錯化剤の使用は、得られる生成物の質における有意な改良を生ずる。
【0019】
上記の方法の使用及び得られる3−(β−カルボエトキシ−α−ヒドロキシメチル)−2−置換テトラヒドロフラン生成物の続く変換は、先行技術の方法と比べて比較的少数の段階で、且つ経済的な出発材料及び反応条件を用いて、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]
フラン−3−オール及びその(3R,3aS,6aR)エナンチオマーへの有用な合成経路を与え、それは優れた収率及び純度で最終的生成物及び中間体を与える。
【0020】
本発明の1つの特徴に従えば、我々は式(V)の化合物の製造方法を提供し、それは、Halがハロゲン基であり、nが0、1、2又は3であり、Rがアルキル又はアリールアルキルである式Ti(Hal)(OR)4−nのチタン塩の存在下に、式(II)の2,3−ジヒドロフランを式(III)のグリオキシレート誘導体と反応させ、得られる反応生成物を続いて式(IV)のアルコールと反応させて式(V)の化合物を生成せしめることを含んでなる:
【0021】
【化5】

【0022】
[式中、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、そしてRはアルキル又はアリールアルキルである]
式(III)のグリオキシレート誘導体は、好ましくはRがC1−4アルキル基、特にエチル基又はフェニルC1−4アルキル基、特にベンジル基である化合物である。チタン塩は、好ましくはHalが塩素又は臭素原子、特に塩素原子であり、RがC1−4アルキル基、例えばプロピル基、好ましくはイソ−プロピル基又はアリールアルキル基、例えばフェニルC1−4アルキル基、そして特にベンジル基であり、nが1又は2、特に2である式Ti(Hal)(OR)4−nの塩であり;本発明に従って用いるのに特に好ましいチタン塩は、TiCl(OiPr)である。そのようなチタン塩を、例えば適したハロゲン化チタンを適したTi(OR)化合物と反応させることにより、反応混合物中でその場で生成せしめることができることは認識されるであろう。生成する特定のチタン塩は、ハロゲン化チタンに加えられるTi(OR)化合物の量に依存し、例えば当量の3分の1のTi(OR)化合物の添加は、TiHal(OR)化合物の生成を生ずるであろう。上記の好ましいTiCl(OiPr)塩は、反応混合物にTiCl及びTi(OiPr)を加えることにより、その場で製造され得る。上記のTiCl(OiPr)化合物の製造方法は、Mikami et al著,J.Am.Chem.Soc.,112,1990年,3949−3954により記載されている。TiCl(OiPr)の製造方法は、Reetz et al著,Chemische Berichte,118,1985年,1421−1440により記載されている。式Ti(Hal)(OR)4−nの他のチタン化合物は、類似の方法で製造され得る。
【0023】
式Ti(OR)の化合物が用いられると、方法はあまり有効でないことが見出されたので、一般にチタン化合物中における少なくとも1個のHal基の存在は必要であることが見出された。従ってチタン化合物において、nは好ましくは1、2又は3である。式Ti(OR)の化合物は一般に、nが1、2又は3である式Ti(Hal)(OR)4−nの化合物を生成させるために、四塩化チタンと一緒に用いられる。
【0024】
上記のチタン化合物の使用は、Ghosh et alにより用いられる四塩化チタン塩より特に有利であることが見出され、それは、後者の塩は不安定な腐食性の液体であるが、本発明に従う方法で用いられるチタン化合物は一般に安定な固体であり、従って工業
的方法において取り扱うのに有意により簡便だからである。さらに、Ghosh et alにより記載された四塩化チタンの使用は、反応混合物中における許容され得ない高い残留量のチタン副生成物を生じ、それはヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの合成の後期の段階を操作不可能とするか又は非常に低い収率を有するものとし得ることが見出された。
【0025】
式(IV)のアルコールは、好ましくはC1−4アルカノール、例えばメタノール、エタノール又はプロパノール、特にイソ−プロパノールあるいはフェニルC1−4アルカノール、例えばベンジルアルコールである。
【0026】
2,3−ジヒドロフランとグリオキシレート誘導体の最初の反応及び続く式(IV)のアルコールとの反応の両方とも、一般に有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒、例えばジクロロメタン、酢酸エチル、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)又は2−メチル−テトラヒドロフラン中で行なわれる。
【0027】
これらの反応は、簡便には少なくとも−20℃、好ましくは少なくとも−10℃、そして特に少なくとも−5℃の温度で行なわれ、室温が一般に好ましい。そのような温度の使用は、上記で引用したTetrahedron Lettersの方法においてGhosh et alにより記載された−78℃の温度の使用と対照的である。本発明に従って用いられる前者の比較的高い温度は、工業的規模における方法の実施のために、有意により簡便である。
【0028】
Ghosh et alにより記載された方法を越える本発明に従う方法のさらなる利点は、チタン化合物を化学量論的量より少量、例えば0.5当量かもしくはそれ未満で使用することができるが、Ghoshの方法は当量のチタン化合物の使用を必要とすることを我々が見出したことである。より少量のチタンの使用はより経済的であり、且つ廃棄を必要とする副生成物の量をより少なくし、従って我々の方法は環境的観点から有利である。
【0029】
式(IV)のアルコールとの反応が完了したら、反応混合物を一般にアルカリ性試薬で処理し、さらなる反応及び副生成物の生成をクエンチングするか又は停止させ、アルカリ性試薬は一般に8〜11、好ましくは約10のpHを与える。Ghosh et al Tetrahedron Lettersの方法では、反応をクエンチングするために炭酸水素ナトリウムの水溶液が用いられる。しかしながら我々は、代わりのクエンチング試薬としての水溶性錯化剤の使用が、有意に改善された仕上げを与えることを見出した。Rochelle塩(酒石酸カリウムナトリウム,四水和物)のようなイオン性化合物又はジエタノールアミンのような中性有機分子の両方を、水溶性錯化剤として用いることができる。かくして上記の方法において得られる有機反応混合物への水溶液中のRochelle塩又はジエタノールアミンの添加は、反応をクエンチングし、残留チタン化合物が水相中で容易に分離されることを可能にし、所望の式(V)の化合物を含有する有機相を残し、それは慣例的には5ppmより少ないチタン化合物を含有する。生ずる式(V)の化合物は、立体異性体の混合物として得られ、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの合成における次の段階のためにそのまま用いられ得る。
【0030】
2,3−ジヒドロフランから出発する上記の方法は、商業的供給源から容易に入手可能な試薬及び工業的規模で使用できる反応条件を用い、高いか又は定量的でさえある収率における且つ優れた質を有する所望の式(V)の化合物を与える。
【0031】
単独の又は他の用語と組み合わされた「アルキル」という用語は、他に特定される場合を除いて、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜
6個の炭素原子又はさらにもっと好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和脂肪族炭化水素基あるいは少なくとも3個の炭素原子が存在する場合には、環状飽和脂肪族炭化水素基を指す。そのような基の例にはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソ−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、これらに限られない。
【0032】
単独の又は他の用語と組み合わされた「アリール」という用語は、炭素環式芳香族部分を指し、単環式、二環式及び他の多環式基を含む。アリール基の例にはフェニル及びナフチル基が含まれるが、これらに限られない。
【0033】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を指す。
【0034】
本明細書で用いられる「立体異性体」という用語は、同じ結合の順列により結合する同じ原子で構成されているが、本発明の化合物が有することができる互換不可能な異なる三−次元構造を有するすべての可能な化合物を定義する。他にことわるか又は指示しなければ、化合物の化学的名称は、該化合物が有することができるすべての可能な立体化学的異性体の混合物を包含する。該混合物は該化合物の基本的分子構造のすべてのジアステレオマー及び/又はエナンチオマーを含有することができる。規定される場合を除いて、純粋な形態又は互いとの混合物の両方における本発明において用いられる化合物のすべての立体異性体が本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0035】
本明細書で言及する、すなわち特定の立体異性体が規定される場合の、化合物の純粋な立体異性体は、該化合物又は中間体の同じ基本的分子構造の他のエナンチオマーもしくはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に「立体異性体的に純粋な」という用語は、少なくとも80%の立体異性体過剰率(すなわち最小で90%の一方の異性体及び最大で10%の他方の可能な異性体)から最高で100%の立体異性体過剰率(すなわち100%の一方の異性体及び他方の異性体なし)を有する化合物又は中間体、さらに特定的には90%から100%までの立体異性体過剰率を有する、さらにもっと特定的には94%から100%までの立体異性体過剰率を有する、そして最も特定的には97%から100%までの立体異性体過剰率を有する化合物に関する。
【0036】
本明細書で言及される化合物の純粋な立体異性体は、当該技術分野において既知の方法の適用により得ることができる。例えばエナンチオマーを、光学的に活性な酸とのそれらのジアステレオマー塩の選択的結晶化により互いから分離することができる。あるいはまた、キラル固定相を用いるクロマトグラフィー法によりエナンチオマーを分離することができる。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し反応は立体選択的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体選択的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は、有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いるであろう。
【0037】
上記の方法において得られる結果としての式(V)の化合物を、その立体異性体を分離又は単離する必要なく、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの合成の次の段階において用いることができる。
【0038】
がメチル又はエチルであり、Rがメチルである化合物を除く上記の式(V)の化合物は新規な化合物であり、従って、我々は本発明のさらなる特徴として、式(Va):
【0039】
【化6】

【0040】
[式中、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、但しRがメチルである場合、Rはメチル又はエチルではない]
の化合物ならびにその立体異性体及びラセミ混合物を提供する。Rは、好ましくはC1−4アルキル基、例えばプロピル、特にイソ−プロピル又はフェニルC1−4アルキル基、特にベンジル基である。Rは、好ましくはC1−4アルキル基、例えばエチル又はプロピル、特にイソ−プロピルあるいはフェニルC1−4アルキル基、例えばベンジルである。Rがエチル又はメチルであり、Rがメチルである式(V)の化合物は、上記で引用したGhosh et al著,Tetrahedron Letters 40(1999年)1083−1086において開示されている。
【0041】
かくして式(V)の化合物は、式(I)の化合物の製造における中間体として有用である。特に有用な式(V)の化合物は、ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチルである。
【0042】
本発明のさらなる特徴に従えば、我々は式(VI)の化合物の製造方法を提供し、それは式(V)の化合物を還元して式(VI)の化合物を生成せしめることを含んでなる:
【0043】
【化7】

【0044】
式(V)の化合物の還元は、一般にハイドライド還元剤、例えばアルカリ金属ボロハイドライド、例えばリチウムボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライド、カリウムボロハイドライド、ナトリウムアセトキシボロハイドライド、ナトリウムトリアセトキシボロハイドラシド又はナトリウムシアノボロハイドライド、水素化アルミニウム還元剤、例えば水素化アルミニウムリチウム、DibalH(ジ−イソブチルアルミニウムハイドライド)又は水素化アルミニウムあるいは亜鉛ボロハイドライドを用いて行なわれる。あるいはまた、接触水素化により還元を行なうことができる。不均一系触媒、例えば活性化ニッケル触媒、例えばDegussaからB 111Wとして商業的に入手可能な触媒、モリブデン又はクロム/鉄がドーピングされた活性化ニッケル触媒、例えばDegussaからBK 113Wとして商業的に入手可能な触媒あるいは活性化銅触媒、例えばDegussaからB3113として商業的に入手可能な触媒を用いて水素化を行なうことができる。Milstein著,ACIE 2006,45,1113の方法に従うルテニウ
ムのような均一系触媒を用いて、水素化を行なうこともできる。例えばZn(II)触媒(Mimoun著,J.Org.Chem.,64,1999年,2582−2589)、ルテニウム触媒(Fuchikami et al著,Tetrahedron Letters,42(2001年),2149−2151)、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF又はTriton B)(Lawrence et al著,Synlet,1997年,989−991)、フッ化カリウム又はフッ化セシウム(Coriu et al著,Synthesis,1982年,981及び1981年,558)あるいはチタン(IV)触媒(Buchwald et al著,J.Org.Chem.60,1995年,7884−7890)と組み合わされた、例えばポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)又はトリエチルシランを用いるヒドロシリル化により、還元を行なうこともできる。
【0045】
ナトリウムボロハイドライド(sodium borohydride)は、還元剤として特に好ましい。還元は一般に有機溶媒、簡便には極性溶媒、例えばエタノール又はテトラヒドロフラン中で行なわれる。ボロハイドライド還元剤が用いられる場合、還元の完了後に錯化化合物を用いて反応をクエンチングし、反応混合物中の残留ホウ素化合物を錯化し、さらなる副反応及び望ましくない副生成物の生成を避けるのが望ましい。クエンチング試薬としてジエタノールアミンを、例えばその塩酸塩の形態で用いる反応混合物の処理は、所望の最終的な生成物の純度の点で特に良い結果を与えることを、我々は見出した。あるいはまた、反応をクエンチングするために、塩化アンモニウムを有利に用いることができる。生ずる式(VI)の化合物は立体異性体の混合物として得られ、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの合成における次の段階のためにそのまま用いることができる。
【0046】
上記の式(VI)の化合物は新規な化合物であり、従って、我々は本発明のさらなる特徴として、式(VI):
【0047】
【化8】

【0048】
[式中、Rはアルキル又はアリールアルキル、好ましくはC1−4アルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピル、特にイソ−プロピルあるいはフェニルC1−4アルキル基、例えばベンジルである]
の化合物ならびにその立体異性体及びラセミ混合物を提供する。
【0049】
特に好ましい式(VI)の新規な化合物は、1−(2−イソ−プロポキシ−テトラヒドロ−3−フラニル)−1,2−エタンジオールである。
【0050】
かくして式(VI)の化合物は、式(I)及び(Ia)の化合物の合成における中間体として有用である。
【0051】
本発明のさらなる特徴に従えば、我々は、式(VI)の化合物を環化して式(I)の化合物を生成せしめることを含んでなる、式(I)の化合物の製造方法を提供する:
【0052】
【化9】

【0053】
[式中、Rは、好ましくはC1−4アルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピル、特にイソ−プロピルあるいはフェニルC1−4アルキル基、例えばベンジルである]
式(VI)の化合物の環化は、例えば酸、一般的に強プロトン酸、例えば塩酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、アンバーリスト樹脂(amberlyst resin)、TFA、p−ブロモベンゼンスルホン酸又は酢酸を用いる処理により、行なうことができる。反応は一般に有機溶媒、例えば極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、エタノール、メタノール又はアセトン中で、簡便には−20℃〜50℃の温度で行なわれる。テトラヒドロフランが用いられる場合、好ましい温度は40℃〜50℃、好ましくは45℃である。続いてトリエチルアミン又はピリジンのような塩基を加えて反応混合物を中和し、反応を停止させる。方法は式(I)の2つのジアステレオ異性体、すなわち上記で挙げた3R,3aS,6aR及び3S,3aR,6aSエナンチオマーを含んでなるエンドジアステレオ異性体ならびに3S,3aS,6aR及び3R,3aR,6aSエナンチオマーを含んでなるエキソジアステレオ異性体の混合物を生ずる。通常の方法で、例えば溶離剤として石油エーテル/酢酸エチル(1/9)混合物を用いるシリカゲル上のクロマトグラフィーにより、2つのジアステレオ異性体を容易に分離することができる。
【0054】
上記のジアステレオ異性体の分離後、エンドジアステレオ異性体を直接、この立体異性体部分が必要とされるプロテアーゼ阻害剤の製造において、必要なら通常の方法で、例えばGhosh et alによりTetrahedron Letters,Vol 36,No.4,1995年,505−508において、又は国際公開第02/060905号パンフレットに記載されている方法に従って、例えば簡便にはテトラヒドロフラン又はジクロロメタンのような非プロトン性溶媒中で、且つ炭酸ナトリウム又はトリエチルアミンのような塩基の存在下で、酸塩化物又は無水物を用いるアシル化により、その成分エナンチオマーに分離した後に用いることができる。得られるエステルの混合物を次いで、ラセミエステルの主に一方の反応を許す条件下でリパーゼ Ps30のような適したエステラーゼ酵素と反応させ、主に一方のエナンチオマーのアルコール及びそれと矛盾しない主に他方のエナンチオマーの未反応の残りのエステルの混合物を与える。アルコール及びエステルの混合物を、次いで通常の方法で、例えばシリカゲルクロマトグラフィーにより分離することができる。エナンチオマー性未反応エステルを、例えばテトラヒドロフラン中におけるメチルリチウムとの反応により、対応するアルコールに転換することができる。
【0055】
必要なら、エキソジアステレオ異性体を、例えばGhosh et alによりJ.Org.Chem.69,2004年,7822−7829に記載されているような通常の方法で、式(I’):
【0056】
【化10】

【0057】
のケトンの中間形成を含む酸化/還元順序(sequence)により、エンドジアステレオ異性体に転換することができる。
【0058】
かくして上記のGhosh et alの方法に従い、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)及び4−メチルモルホリン−N−オキシド(NMO)を用いてエキソジアステレオ異性体を式(I’)のケトンに酸化し、得られるケトンを、有機溶媒、例えばエタノールのような極性溶媒中で例えばナトリウムボロハイドライドのようなハイドライド還元剤を用いて還元し、対応するエンドジアステレオ異性体を与える。あるいはまた、NaOCl/2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシド(TEMPO)を用いて上記の酸化を行なうことができる。
【0059】
エンド及びエキソ形態の混合物から出発して上記の酸化及び還元法を行い、それにより先行するジアステレオ異性体の分離を行なう必要を避けることもできることは、認識されるであろう。
【0060】
本発明のさらなる特徴に従えば、我々は、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの製造方法を提供し、それは:
a)nが0、1、2又は3であり、Rがアルキル又はアリールアルキルである式Ti(Hal)(OR)4−nのチタン塩の存在下に、式(II)の2,3−ジヒドロフランを式(III)のグリオキシレート誘導体と反応させ、得られる反応生成物を続いて式(IV)のアルコールと反応させて式(V)の化合物を生成せしめ:
【0061】
【化11】

【0062】
[式中、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、Rはアルキル又はアリールアルキルである];そして
b)得られる式(V)の化合物を還元して式(VI)の化合物を生成せしめ:
【0063】
【化12】

【0064】
そして
c)式(VI)の化合物を環化して式(I)の化合物を生成せしめ:
【0065】
【化13】

【0066】
そして必要に応じて続いて(i)得られる式(I)の化合物を分離法に供して式(Ia):
【0067】
【化14】

【0068】
の(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールを単離し、及び/又は
(ii)得られる式(I)の化合物を酸化して式(I’):
【0069】
【化15】

【0070】
の化合物を生成せしめ、続いて式(I’)の化合物を還元して式エンド(I)の化合物とする
段階を含んでなる。
【0071】
式(I)及び(Ia)の化合物は、薬剤の製造において特に有用である。好ましい態様に従い、本式(I)及び(Ia)の化合物は抗−ウイルス薬、特に抗−HIV薬、さらに特定的にHIVプロテアーゼ阻害剤の製造における前駆体として用いられる。
【0072】
式(I)及び(Ia)の化合物ならびに該化合物の形成に導くすべての中間体は、すべて引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるGhosh et al著,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
8(1998年)687−690ならびに国際公開第95/24385号パンフレット、国際公開第99/65870号パンフレット、国際公開第99/67254号パンフレット、国際公開第99/67417号パンフレット、国際公開第00/47551号パンフレット、国際公開第00/76961号パンフレット、国際公開第01/25240号パンフレット、米国特許第6127372号明細書及び欧州特許第0 715 618号明細書に開示されているようなHIVプロテアーゼ阻害剤、そして特に以下のHIVプロテアーゼ阻害剤:
[(1S,2R)−3−[[(4−アミノフェニル)スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニル−メチル)プロピル]−カルバミン酸 (3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル、すなわち上記で言及したダルナビル(HIVプロテアーゼ阻害剤1);
[(1S,2R)−2−ヒドロキシ−3−[[(4−メトキシフェニル)スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−1−(フェニル−メチル)プロピル]−カルバミン酸 (3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(HIVプロテアーゼ阻害剤2);及び
[(1S,2R)−3−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルスルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−カルバミン酸 (3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(HIVプロテアーゼ阻害剤3)又はそれらの製薬学的に許容され得る付加塩の製造において特に興味深いものである。
【0073】
かくして、本発明は、本発明に従って製造される式(I)の化合物をHIVプロテアーゼ阻害剤の化学合成において用いることにより得られる、HIVプロテアーゼ阻害剤1、2及び3又はそれらの製薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグにも関する。そのような化学合成は文献中に、例えば上記の特許及び引用文献中に開示されている。
【0074】
上記の式(Ia)の化合物を、活性化誘導体の生成後に、以下の:
(i)式(1)の化合物中にイソブチルアミノ基を導入し、
【0075】
【化16】

【0076】
式中、
PGはアミノ−保護基を示し;
は水素又はC1−6アルキルである;
(ii)得られる段階(i)の化合物中にp−ニトロフェニルスルホニル基を導入し;
(iii)得られる段階(ii)の化合物のニトロ部分を還元し;
(iv)得られる段階(iii)の化合物を脱保護し;そして
(v)得られる段階(iv)の化合物を(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル誘導体とカップリングさせて上記の式(A)の化合物を生成せしめる
ことを含んでなる方法により、プロテアーゼ阻害剤1、すなわち例えば引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる国際公開第2005/063770号パンフレットに記載されている上記の式(A)のダルナビルの合成のために用いることができる。
【0077】
1つの態様において、本発明は:
式(1’)の化合物中にイソブチルアミノ基を導入し;
【0078】
【化17】

【0079】
式(2’)の化合物を得;
【0080】
【化18】

【0081】
式(2’)の化合物中にp−ニトロフェニルスルホニル基を導入して式(3’)の化合物を得;
【0082】
【化19】

【0083】
式(3’)の化合物のニトロ部分を還元して式(4’)の化合物を得;
【0084】
【化20】

【0085】
式(4’)の化合物を脱保護して式(5)の化合物を得;
【0086】
【化21】

【0087】
式(5)の化合物を(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル誘導体とカップリングさせて式(A)の化合物を得る
段階を含んでなることを特徴とする、式(A)の化合物の製造方法に関する。
【0088】
式(1)の化合物
式(1)の化合物は
【0089】
【化22】

【0090】
であり、ここで
PGはアミノ−保護基を示し;
は水素又はC1−6アルキルである。
【0091】
好ましくは、式(1)の化合物は下記に示す式(1’)の化合物であり、ここでPGは
tert−ブチルオキシカルボニル又は「Boc」であり、Rは水素である。式(1)及び(1’)の化合物は商業的に入手可能であり、文献において利用可能ないくつかの方法で、例えば国際公開第95/06030号パンフレット(Searle & Co.)に記載されているとおりに、欧州特許第0754669号明細書、欧州特許第1029856号明細書及び欧州特許第1067125号明細書においてKaneka Corporationにより記載されているとおりに、ならびに欧州特許第1081133号明細書及び欧州特許第1215209号明細書においてAjinomoto KKにより開示されているとおりに製造することができる。
【0092】
【化23】

【0093】
式(2)の化合物
式(1)の化合物をエポキシド上におけるアミノ化に供し、式(2)の化合物を得る。
【0094】
【化24】

【0095】
本明細書で用いられる「アミノ化」という用語は、第1級アミン、イソブチルアミンを式(1)の有機分子中に導入するプロセスを指す。文献において利用可能ないくつかの方法で、例えば引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる国際公開第95/06030号パンフレットに記載されているとおりに、式(1)の化合物のアミノ化を行なうことができる。
【0096】
好ましい態様において、式(1’)の化合物をイソブチルアミンと反応させて式(2’)の化合物を与える。
【0097】
【化25】

【0098】
エポキシドのアミノ化は、例えばMarch著,Advanced Organic Chemistry 368−69(3rd Ed.1985年)及びMcManus et al.著,3 Synth.Comm.177(1973年)に記載されており、それらは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。適切には、国際公開第97/18205号パンフレットに記載されている方法に従って、式(2)及び(2’)の化合物を製造することができる。
【0099】
アミノ化剤、イソブチルアミンは溶媒として十分に働くことができ、その場合、過剰のイソブチルアミンが加えられるであろう。他の態様において、イソブチルアミン以外の1種もしくはそれより多い溶媒の存在下でアミノ化法を行なう。好ましい態様において、該溶媒は式(2)及び(2’)の化合物の仕上げにおいて用いられる。
【0100】
本発明の1つの態様において、溶媒としてトルエンを用い、且つ約79℃で加熱還流して、約15当量のイソブチルアミンの存在下でアミノ化反応を行なう。
【0101】
式(3)の化合物
式(2)の中間体中にスルホニル部分、p−ニトロベンゼン−SOを導入することにより、式(3)の化合物を製造する。
【0102】
【化26】

【0103】
かくして好ましい態様において、式(2’)の化合物をスルホニル化することにより、式(3’)の化合物を製造する。
【0104】
【化27】

【0105】
従って、式(2)及び(2’)の化合物をスルホニル化剤と反応させ、式(3)及び(3’)の化合物に変換する。
【0106】
「スルホニル化剤」という用語は、p−ニトロベンゼン−スルホニル誘導体、例えばp−ニトロベンゼンスルホニル ハロ誘導体を含む。
【0107】
スルホニル化剤を用いる式(2)及び(2’)の化合物の処理は、溶媒の存在下に、約25℃〜250℃、好ましくは70℃〜100℃への加熱及び攪拌下で行なうことができる。スルホニル化の後、残るスルホニル化剤又は塩を、必ずではないが好ましくは反応混合物から除去する。この除去は、水を用いる繰り返しの洗浄、pHの変更、有機相と水相の分離、限外濾過、逆浸透、遠心及び/又は濾過などにより行なうことができる。
【0108】
式(4)の化合物
式(4)及び(4’)の化合物は、還元剤を用い、場合により水素雰囲気下でそれぞれ式(3)及び(3’)の中間体のニトロ部分を還元することにより得られる。
【0109】
【化28】

【0110】
ニトロ部分の還元に適した還元剤は、金属性還元試薬、例えばボラン錯体、ジボラン、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライド−LiCl、水素化リチウムアルミニウム又は水素化アルミニウムジイソブチル;金属、例えば鉄、亜鉛、錫など;ならびに遷移金属、例えばパラジウム−カーボン、酸化白金、ラネイ−ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどである。接触還元が適用される場合、ギ酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、ヒドラジンを水素源として用いることができる。
【0111】
式(5)の化合物
式(5)の化合物は、通常の酸性条件下で式(4)及び(4’)の中間体を脱保護することにより得られる。あるいはまた、塩基性条件を適用することができる。
【0112】
【化29】

【0113】
分子の残りの部分に影響しない条件を用いて、アミノ−保護−基の除去を行うことができる。これらの方法は当該技術分野において周知であり、酸加水分解、水素化分解などを含み、かくして適した溶媒中で通常に既知の酸を用いる。
【0114】
アミノ保護基からアミンを脱保護するための試薬及び方法の例は、さらにTheodora W.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesis,New York,John Wiley and Sons,Inc.,1981年において見出すことができ、それは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0115】
当該技術分野における熟練者が認識しているとおり、方法の先行段階で用いられるアミノ保護基の選択は、該アミノ保護基の除去において用いられる試薬及び方法を指定するであろう。
【0116】
ダルナビルの製造
上記のとおりに製造される式(Ia)の(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールを、カップリング剤を用いて適切に活性化し、(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル誘導体を生成させ、それを次いで式(5)の化合物を用いてカルバモイル化して所望のプロテアーゼ阻害剤1、すなわちダルナビルを得る。
【0117】
カルバモイル化反応において用いられるカップリング剤の例はカーボネート、例えばビス−(4−ニトロフェニル)カーボネート、ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)である。他のカップリング剤にはクロロホルメート、例えばp−ニトロフェニルクロロ−ホルメート、ホスゲン類、例えばホスゲン及びトリホスゲンが含まれる。
【0118】
特に、(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールをジスクシンイミジルカーボネートと反応させると、1−([[(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルオキシ]−カルボニル]オキシ)−2,5−ピロリジンジオンが得られる。該化合物は、好ましい(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル誘導体である。
【0119】
【化30】

【0120】
(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル誘導体と式(5)の化合物の反応は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジオキサン、ジクロロメタン又はクロロホルムのような適した溶媒の存在下に且つ場合によりトリエチルアミンのような塩基を用いて行なわれるであろうが、上記で開示された溶媒及び塩基からのさらなる組み合わせ(cominations)も包含される(embodied)。溶媒の中で、好ましい溶媒は非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどである。
【0121】
上記のカルバモイル化反応は、−70℃〜40℃、好ましくは−10℃〜20℃の温度で適切に行なわれる。
【0122】
本発明の特に好ましい特徴に従い、我々は、本発明に従って製造される式(I)の中間体及び特に式(Ia)の中間体を用いて合成されるすべての場合のダルナビル、すなわち式(A)の[(1S,2R)−3−[[(4−アミノフェニル)スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−カルバミン酸(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0123】
実施例
以下の実施例は、本発明の実例であるものとする。これらの実施例は本発明を例示するために示され、本発明の範囲を制限するとみなされるべきではない。
【0124】
ガスクロマトグラフィー(GC)は以下の条件下で行なわれた:カラム:5%フェニル−,95%メチル−ポリシロキサン,L=25m;ID=320μm;フィルム幅=0.52μm;250℃における1/50の比率を有するスプリットインジェクター;注入体積:1μL。プログラム:50℃において5分、次いで15℃/分の速度で240℃に5分。合計の流れ:3.0mL/分。反応生成物の質は、ガスクロマトグラフィーに続くFlame Ignition Detection(FID)により決定される、そのような生成物中の所望の化合物のパーセンテージ量を示す(GC面積%)。
【0125】
以下の実施例において、「DCM」はジクロロメタンを指し、「AcOEt」は酢酸エチルを指し、THFはテトラヒドロフランを指し、「TEMPO」は2,2,6,6,−テトラメチル−ピペリジン 1−オキシドを指す。
【0126】
比較実施例
(A)ヒドロキシ−(2−エトキシテトラヒドロフラン−3−イル)酢酸エチル
【0127】
【化31】

【0128】
乾燥ジクロロメタン(100mL;1.560モル;132.5g)中の蒸留されたばかりのエチルグリオキサレート(40ミリモル;1.000当量;3.620mL;4.084g)及び2,3−ジヒドロフラン(44ミリモル;1.100当量;3.338mL;3.084g)の混合物に、1M DCM中の四塩化チタン(44ミリモル;1.100当量;44.00mL;59.84g)の溶液を、−78℃で滴下し、得られる混合物を1時間攪拌した。反応混合物は黄色且つ不均一に変わった。エタノール(120ミリモル;3.000当量;6.986mL;5.528g)を混合物に滴下し、混合物は均一に変わった。冷却浴を除去し、反応物が室温に温まるのを1時間許した。重炭酸ナトリウム(100mL;103.4ミリモル;104.7g)を、室温でゆっくり加えた。10分後、反応混合物を酢酸エチル(600mL;6.132モル;540.2g)で2回抽出した。減圧下で有機溶媒を蒸発させ、白色の固体を含有する緑色の油を与えた(9.45g,GC:14面積%)。
GC:保持時間:13.4分。
MS(E.I.70eV):217(0.5%;M−H);173(11%,M−OEt);155(59%,173−HO);145(21%.M−COEt);71(100%,173−CHOCOEt)。
【0129】
この粗混合物から、ICP(高周波誘導結合プラズマ(Inductive Coupled Plasma))法を用いてチタンの決定を行った:96ppmのチタン。
【0130】
(B)(A)からの生成物の還元の試み
0℃においてエタノール(9.6mL)及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム(1.1当量;5.46ミリモル;210mg)が装入された50mLの丸底フラスコ中に、エタノール(5.8mL)中に溶解されたヒドロキシ−(2−エトキシテトラヒドロフラン−3−イル)酢酸エチル(1.44g;4.96ミリモル;1当量)を1時間かけて滴下した。反応混合物が室温に温まるのを許し、週末を経て攪拌した。次いで水(3.5mL)中に溶解された塩化アンモニウム(1.5当量;7.44ミリモル;400mg)を、0℃において反応混合物に滴下した。反応混合物を室温で4時間攪拌し、減圧下で溶媒を蒸発させ、褐色の固体を与えた。次いで粗混合物に酢酸エチル(7.7mL)を加え、40℃に30分間温めた。ジカライト上で濾過した後、均一な混合物を減圧下で蒸発乾固し、出発材料を与えた。
【実施例1】
【0131】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル
【0132】
【化32】

【0133】
丸底フラスコ中で、トルエン中のエチルグリオキシレート 50%w/w(4.74g,23.21ミリモル,1.1当量)を、すべてのトルエンが蒸発するまで、減圧下において60℃で攪拌した。次いで室温において80mLの乾燥DCMを加え、続いてTiCl(OiPr)(5g,21.1ミリモル)を加えた。室温における0.5時間の攪拌時間の後、15mLのDCM中に溶解された2,3−ジヒドロフラン(1.48g,21.1ミリモル,1当量)を10分間かけて滴下し、混合物を室温で5時間攪拌した。次いでイソプロパノール(16mL,211ミリモル,10当量)を滴下し、混合物を終夜攪拌した。最後に、Rochelle塩の塩基性水性混合物(200mLの水中の20g,2gのNaCO)を室温で滴下し、終夜攪拌した。2つの層を分離し、NaSOを用いて有機層を乾燥し、真空下で減少させた(reduced)。得られる油(3.45g,CG:85面積%)を次の段階において直接用いることができる。
チタンの決定:<5ppm。
MS(E.I.70eV):173(16%,M−OiPr);159(22%,M−COEt);155(100%,173−HO);71(98%,173−CHOCOEt)。
MS(C.I.,アンモニア):(M+H):233.1353(理論値:233.1389);(M+NH:250.1593(理論値:250.1654)。
【実施例2】
【0134】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル
【0135】
【化33】

【0136】
1Lの丸底フラスコ中で、四塩化チタン(17.83ミリモル;1.96mL;3.38g)をジクロロメタン(70mL;1.092モル;92.75g)中に室温で溶解した。次いでジクロロメタン(70mL;1.092モル;92.75g)中に溶解されたチタンテトラ(イソプロポキシド)(17.83ミリモル;5.28mL;5.07g)を室温で滴下した。1時間の攪拌時間の後、ジクロロメタン(8.75mL;136.5ミリモル;11.59g)中に溶解されたトルエンを含まないエチルグリオキサレート(1.1当量;39.24ミリモル;3.55mL;4.0g)を、室温で30分間かけて滴下した。15分後、ジクロロメタン(17.5mL;273.0ミリモル;23.19g)中に溶解された2,3−ジヒドロフラン(2.5g;1.000当量;35.67ミ
リモル;2.70mL)を室温で30分間かけて加えた。3時間の攪拌時間の後、イソプロピルアルコール(10当量;356.7ミリモル;27.26mL;21.44g)を滴下した。3時間後、水(175mL;9.72モル;175g)中に溶解された炭酸カリウム(1.75g;12.66ミリモル)及びRochelle塩(17.5g;83.25ミリモル)の混合物を、反応混合物に加えた。週末を経て攪拌した後、2つの層を分離し、(2x100mL)の水(200mL;11.10モル;200.0g)を用いて有機層を洗浄した。減圧上で有機溶媒を蒸発させ、所望の生成物を与えた(7.48g;GC:92面積%)。
チタンの決定:
Rochelle塩処理の前:14.5%;Rochelle塩処理の後:<5ppm。H NMR(CDCl,400MHz):5.23(d,0.42H,J=4Hz);5.20(d,0.48H,J=2Hz);5.16−5.08(m,0.14H);4.45(d,0.42H,J=4Hz);4.30−4.15(m,3H);4.11−3.96(m,0.8H);3.96−3.81(m,2.85H);3.54(bs,0.4H);2.97(bs,0.60H);2.60−2.42(m,1.1H);2.28−2.15(m,0.49H);1.97−1.79(m,1.79H);1.30(t,3.8H,J=8Hz);1.24−1.21(m,0.46H);1.21−1.16(m,3.12H);1.16−1.12(m,3H)。
13C NMR(CDCl,400MHz):174.1;172.9;103.9;102.2;70.2;69.6;69.4;66.6;61.9;61.2;49.9;47.0;25.1;23.9;23.7;21.9;21.7;14.2。
【実施例3】
【0137】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル
【0138】
【化34】

【0139】
1Lの丸底フラスコ中で、四塩化チタン(17.83ミリモル;1.96mL;3.38g)をジクロロメタン(70mL;1.092モル;92.75g)中に室温で溶解した。次いでジクロロメタン(70mL;1.092モル;92.75g)中に溶解されたチタンテトラ(イソプロポキシド)(17.83ミリモル;5.28mL;5.07g)を室温で滴下した。1時間の攪拌時間の後、ジクロロメタン(8.75mL;136.5ミリモル;11.59g)中に溶解されたトルエンを含まないエチルグリオキサレート(1.1当量;39.24ミリモル;3.55mL;4.0g)を室温で30分間かけて滴下した。15分後、ジクロロメタン(17.5mL;273.0ミリモル;23.19g)中に溶解された2,3−ジヒドロフラン(2.5g;1.000当量;35.67ミリモル;2.70mL)を室温で30分間かけて加えた。3時間の攪拌時間の後、イソプロピルアルコール(10当量;356.7ミリモル;27.26mL;21.44g)を滴下した。3時間後、水(175mL;9.72モル;175g)中に溶解された炭酸カリウム(1.75g;12.66ミリモル)及びジエタノールアミン(9.5g;90.6ミリモル)の混合物を、反応混合物に加えた。週末を経て攪拌した後、2つの層を分離し、(2x100mL)の水(200mL;11.10モル;200.0g)を用いて有機
層を洗浄した。減圧上で有機溶媒を蒸発させ、所望の生成物を与えた(7.0g;GC:96面積%)。
チタンの決定:
ジエタノールアミン処理の後:<5ppm。
【実施例4】
【0140】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル
【0141】
【化35】

【0142】
400mLのDCM及びTi(OiPr)(56.8g,0.2モル)が装入された丸底フラスコに、400mLのDCM中に溶解されたTiCl(22mL,0.2モル)を、室温で30分間かけて滴下した。17時間の攪拌時間の後、50mLのDCM中に溶解されたトルエンを含まないエチルグリオキシレート(45.2g,0.22モル,1.1当量)を室温で滴下した。15分後、100mLのDCM中に溶解された2,3−ジヒドロフラン(14g,0.2モル,1当量)を30分間かけて滴下し、混合物を室温で3時間攪拌した。次いでイソ−プロパノール(153mL,2モル,10当量)を滴下し、混合物を室温で4時間攪拌した。最後に、Rochelle塩の塩基性水性混合物(1000mLの水中の100g,10gのKCO)を滴下し、得られる混合物を室温で終夜攪拌した。2つの層を分離し、NaSOを用いて有機層を乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させた。得られる油(47.2g,GC:87面積%)を次の段階において直接用いることができる。
GC:保持時間:13.7分。
MS(E.I.70eV):173(16%,M−OiPr);159(22%,M−COEt);155(100%,173−HO);71(98%,173−CHOCOEt)。
MS(C.I.,アンモニア):(M+H):233.1353(理論値:233.1389);(M+NH:250.1593(理論値:250.1654)。
【実施例5】
【0143】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル
【0144】
【化36】

【0145】
TiCl(OiPr)(0.1モル,ヘキサン中の1M)及び300mLのDCMが装入された丸底フラスコに、25mLのDCM中に溶解されたトルエンを含まないエチルグリオキシレート(22.6g,0.11モル,1.1当量)を室温で滴下した。室温における0.5時間の攪拌時間の後、50mLのDCM中に溶解された2,3−ジヒドロフラン(7g,0.1モル,1当量)を30分間かけて滴下し、混合物を室温で5時間攪拌した。次いでイソ−プロパノール(76mL,1モル,10当量)を室温で滴下し、混合物を終夜攪拌した。最後に、Rochelle塩の塩基性水性混合物(500mLの水中の50g,5gのKCO)を室温で滴下し、終夜攪拌した。2つの層を分離し、NaSOを用いて有機層を乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させた。得られる油(18.2g,GC:85面積%)を次の段階において直接用いることができる。
MS(E.I.70eV):173(16%,M−OiPr);159(22%,M−COEt);155(100%,173−HO);71(98%,173−CHOCOEt)。
MS(C.I.,アンモニア):(M+H):233.1353(理論値:233.1389);(M+NH:250.1593(理論値:250.1654)。
【実施例6】
【0146】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル
【0147】
【化37】

【0148】
400mLのDCM及びTi(OiPr)(28.4g,0.1モル)が装入された丸底フラスコに、400mLのDCM中に溶解されたTiCl(11mL,0.1モル)を、室温で30分かけて滴下した。17時間の攪拌時間の後、150mLのDCM中に溶解されたトルエンを含まないエチルグリオキシレート(90g,0.44モル,1.1当量)を室温で30分間かけて滴下した。15分後、150mLのDCM中に溶解された2,3−ジヒドロフラン(28g,0.4モル,1当量)を室温で30分間かけて滴下し、混合物を5時間攪拌した。次いでイソ−プロパノール(306mL,4モル,10当量)を室温で滴下し、混合物を3時間攪拌した。最後に、Rochelle塩の塩基性水性混合物(1000mLの水中の100g,10gのKCO)を室温で滴下し、終夜攪拌した。2つの層を分離し、NaSOを用いて有機層を乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させた。得られる油(81.5g,GC:70面積%)を次の段階において直接用いることができる。
GC:保持時間:13.7分。
MS(E.I.70eV):173(16%,M−OiPr);159(22%,M−COEt);155(100%,173−HO);71(98%,173−CHOCOEt)。
MS(C.I.,アンモニア):(M+H):233.1353(理論値:233.1389);(M+NH:250.1593(理論値:250.1654)。
【実施例7】
【0149】
a)1−(2−イソ−プロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)−1,2−エタンジオー

【0150】
【化38】

【0151】
0℃において600mLのエタノール及びNaBH(12.55g,0.33モル,1.1当量)が装入された2Lの丸底フラスコに、400mLのエタノール中に溶解されたヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル(70g,0.3モル,1当量)を、0℃において1時間かけて滴下した。室温で混合物が温まるのを許し、19時間攪拌した。0℃において冷却した後、100mLの水中に溶解されたジエタノールアミン塩酸塩(46.7g,0.33モル,1.1当量)を10分間かけて加え、8時間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、透明な黄色の固体を与えた。300mLの酢酸エチルで希釈した後、不均一な混合物をジカライト上で濾過した。混合物を次の段階において直接用いた。
【0152】
b)1−(2−イソ−プロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)−1,2−エタンジオール
【0153】
【化39】

【0154】
0℃においてエタノール(50mL)及びNaBH(1.066g,28.19ミリモル,1.1当量)が装入された丸底フラスコに、エタノール(30mL)中に溶解されたヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル(7.44g,25.62ミリモル,1.000当量)を、0℃において1時間かけて滴下した。混合物が室温に温まるのを許し、週末を経て攪拌した。次いで水(18mL)中に溶解された塩化アンモニウム(2.056g,38.44ミリモル,1.5当量)を、0℃において反応混合物に滴下した。反応混合物を室温で4時間攪拌し、溶媒を減圧下で蒸発させて褐色の固体を与えた。次いで粗混合物に酢酸エチル(40mL)を加え、40℃で30分間温めた。ジカライト上で濾過した後、均一な混合物を減圧下で蒸発乾固し、所望の生成物を与えた(4.39g,;19.61ミリモル,0.7655当量,収率76.55%)。
ジアステレオ異性体の混合物:
H NMR(CDCl,400MHz):5.85(d,J=8Hz,0.11H);5.11−4.86(m,2H);4.3−3.6(m,7.7H);3.8−3.5
(m,3H);3.45(m,3.7H);2.49−2.0(m,3.4H);1.95−1.5(m,2.34);1.28(m,1.1H);1.20−1.12(m,6H)。
13C:NMR(CDCl;100MHz):(主ピーク)109.0;108.2;105.8;105.5;72.6;69.6;69.4;67.8;66.9;63.3;63.1;63.0;49.0;48.7;32.4;28.9;27.6;26.4;23.6;21.8;21.8;15.2;14.2。
GC:5.7分において異なる異性体のピーク 17%;6.07分 8.29%;6.32分 15.7%;6.7分 20.29%;6.9分 11.0%;10.6分 7.6%;10.8分 5%。
【実施例8】
【0155】
ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール
【0156】
【化40】

【0157】
50mLの丸底フラスコ中で、1−(2−イソ−プロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)−1,2−エタンジオール(2.21g;8.89ミリモル,1当量)をテトラヒドロフラン(9mL)中に溶解した。0℃で冷却した後、メタンスルホン酸(65mg;676.33μモル)を混合物に加えた。その後、反応混合物を45℃で30分間加熱した。室温で冷ました後、トリエチルアミン(0.3g;2.96ミリモル)を混合物に加えた。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル(9mL;91.98ミリモル)を室温で混合物に加えた。次いで混合物をジカライト上で濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させ、エンド/エキソビス−THF(1.562g;GC:71面積%)を、15/85 エンド/エキソジアステレオ異性体のジアステレオマー比で与えた。
【0158】
2つのジアステレオ異性体をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより分離した:溶離剤:AcOEt./ヘキサン 9/1。
GC:エキソヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール:保持時間:11.36分;エンドヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール:保持時間 11.57分。
H NMR:
エキソヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール:1.67(m,1H);2.13(m,1H);2.31(bs,1H);2.79(m,1H);3.8−3.9(m,3H);2.95(dd,1H,J=3.2Hz,J=10.3Hz);4.2(d,1H,J=3.1Hz);5.9(dd,1H,J=4.9Hz)。
エンドヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール:1.85(m,1H);1.94(bs,1H);2.27(m,1H);2.84(m,1H);3.6(dd,1H,J=7.1Hz,J=9.2Hz);3.89(m,1H);3.97(m,1H);4.43(dd,1H,J=6.8Hz,J=14.5Hz);5.68(d,1H,J=5.2Hz)。
【実施例9】
【0159】
a)テトラヒドロフロ[2,3−b]フラン−3(2H)−オン
【0160】
【化41】

【0161】
250mLの丸底フラスコにおいて、NaOCl(6.15g,14%w/w)を100mLの水中で希釈した。1M NaHCO水溶液を用いて溶液のpHを9.5に調整した。別の250mLの丸底フラスコにおいて、ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール(1g,7.7ミリモル,1当量)を15mLのAcOEt中に0℃で溶解した。次いで1mLの水中に溶解されたKBr(91mg,0.77ミリモル,0.1当量)を加え、続いてTEMPO(12mg,0.08ミリモル,0.01当量)を加えた。最後にNaOCl混合物を滴下した。0℃における15分間の攪拌の後、100mLのAcOEtを用いて混合物を3回抽出した。集めた有機層をNaSO上で乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させ、950mgの白色の固体,収率:96%を与えた。得られるテトラヒドロフロ[2,3−b]フラン−3(2H)−オンを、さらなる精製なしで次の段階において用いた。
【0162】
生成物は正確な質量により同定された:m/z:128.0473(理論的質量:128.0473)。
【0163】
b)(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの立体選択的製造
【0164】
【化42】

【0165】
一般的にJ.Org.Chem.69,2004年,7822−7829においてGhosh et alにより記載された方法に従い、テトラヒドロフロ[2,3−b]フラン−3(2H)−オン(950mg,7.42ミリモル,1当量)を、0℃において50mLのエタノール中に溶解した。NaBH(302.4mg,8ミリモル,1.07当量)を混合物に一度に加えた。1時間の攪拌時間の後、ジエタノールアミン塩酸塩(3.2g,8ミリモル,1.07当量)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。不均一な混合物をジカライト上で濾過し、20mLの温AcOEtで洗浄した。減圧下における有機溶媒の蒸発の後、1500mgのヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールを40%の質(面積%)で与えた;最高収率:60%。ジアステレオ異性体過剰率:エキソ(3S,3aS,6aR)/エンド(3R,3aS,6aR):18.5/81.5。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Halがハロゲン基であり、nが0、1、2又は3であり、Rがアルキル又はアリールアルキルである式Ti(Hal)(OR)4−nのチタン塩の存在下に、式(II)の2,3−ジヒドロフランを式(III)のグリオキシレート誘導体と反応させ、得られる反応生成物を続いて式(IV)のアルコールと反応させて式(V)の化合物を生成せしめることを含んでなる:
【化1】

[式中、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、そしてRはアルキル又はアリールアルキルである]
式(V)の化合物の製造方法。
【請求項2】
チタン塩が式Ti(Hal)(OR)4−nの化合物であり、ここでnが1、2又は3である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がC1−4アルキルである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
がC1−4アルキルである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
チタン塩の存在下で式(II)の2,3−ジヒドロフランを式(III)のグリオキシレート誘導体と反応させ、続いて反応生成物を式(IV)のアルコールと反応させて式(V)の化合物を生成せしめる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
得られる式(V)の化合物を含有する反応混合物をRochelle塩で処理して残留チタン化合物の除去を行なう請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
Rochelle塩を用いる処理をアルカリ性媒体中で行なう請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(Va):
【化2】

[式中、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、但しRがメチルである場合、Rはメチル又はエチルではない]
の化合物ならびにその立体異性体及びラセミ混合物。
【請求項9】
ヒドロキシ−(2−イソプロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)酢酸エチル。
【請求項10】
式(V)の化合物を還元して式(VI)の化合物を生成せしめることを含んでなる:
【化3】

[式中、R及びRは請求項1で定義されたとおりである]
式(VI)の化合物の製造方法。
【請求項11】
ボロハイドライド還元剤を用いて還元を行なう請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(VI):
【化4】

[式中、Rは請求項1で定義されたとおりである]
の化合物。
【請求項13】
1−(2−イソ−プロポキシテトラヒドロ−3−フラニル)−1,2−エタンジオール。
【請求項14】
式(VI)の化合物を環化して式(I)の化合物を生成せしめる:
【化5】

ことを含んでなる式(I)の化合物の製造方法。
【請求項15】
強プロトン酸を用いる処理により、式(VI)の化合物の環化を行なう請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a)nが0、1、2又は3であり、Rがアルキル又はアリールアルキルである式Ti(Hal)(OR)4−nのチタン塩の存在下に、式(II)の2,3−ジヒドロフランを式(III)のグリオキシレート誘導体と反応させ、得られる反応生成物を続いて式(I
V)のアルコールと反応させて式(V)の化合物を生成せしめ:
【化6】

[式中、Rはアルキル又はアリールアルキルであり、Rはアルキル又はアリールアルキルである];そして
b)得られる式(V)の化合物を還元して式(VI)の化合物を生成せしめ:
【化7】

そして
c)式(VI)の化合物を環化して式(I)の化合物を生成せしめ:
【化8】

そして必要に応じて続いて(i)得られる式(I)の化合物をキラル分離に供して式(Ia):
【化9】

の(3R,3aS,6aR)ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールを単離し、及び/又は
(ii)得られる式(I)の化合物を酸化して式(I’):
【化10】

の化合物を生成せしめ、続いて式(I’)の化合物を還元して式(Ia)の化合物とする段階を含んでなる式(I)のヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜7及び16のいずれかに従って製造される式(I)又は式(Ia)の中間体を用いて合成される[(1S,2R)−3−[[(4−アミノフェニル)スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−カルバミン酸(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル。

【公表番号】特表2010−509290(P2010−509290A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535738(P2009−535738)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062119
【国際公開番号】WO2008/055970
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】