説明

ヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料および機能化繊維材料の処理方法。

【課題】 抗炎症・抗アレルギー作用のあるヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料及びその処理方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、ヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料である。本発明の処理方法は、ヘスペリジンを含有する加工液および/またはマイクロカプセル液を処理することを特徴とする機能化繊維材料の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症・抗アレルギー作用のあるヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘスペリジンは、食用である温州みかんの青みかんから得られる物質である。ヘスペリジンは、現在、抗炎症・抗アレルギー作用のある成分として、医薬品等に用いられている。
【0003】
ヘスペリジンは、食用である温州みかんの青みかんから得られることから、安全性の高い物質で、経皮刺激はない。
【0004】
しかし、これらの優れた作用を備えたヘスペリジンを繊維材料に処理し、その機能を繊維に付与する方法についてはまだ知られていない。ヘスペリジンを繊維材料に処理した場合には、繊維表面からヘスペリジンが肌を通して間接的に吸収・代謝されるため、その繊維材料を着用した場合には、抗炎症・抗アレルギー作用が期待される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗炎症・抗アレルギー作用のあるヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料及びその処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料である。本発明の処理方法は、ヘスペリジンを含有する加工液および/またはマイクロカプセル液を処理することを特徴とする機能化繊維材料の処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、抗炎症・抗アレルギー作用のあるヘスペリジンを繊維材料に処理する方法であり、このような処理により、抗炎症・抗アレルギー作用の期待される機能化繊維材料を得ることができる。
【課題を解決するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる繊維材料とは、天然繊維、合成繊維、再生繊維を単独或いは混合して作られる糸又は糸よりなる織物、編物、不織布等であるが、特に限定されるものではない。
【0009】
また、本発明のヘスペリジンを含有する加工液および/またはマイクロカプセル液を繊維材料に処理する際には、柔軟剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、防炎剤、帯電防止剤、撥水剤、消臭剤、遠赤外線放射機能剤、紫外線吸収剤、染料、染料定着剤、保湿剤、防湿剤、涼感加工剤、マイナスイオン加工剤、芳香剤、マイクロカプセル剤等の繊維用機能加工剤と併用することも可能である。
【0010】
本発明に用いられるヘスペリジンは、抗炎症・抗アレルギー作用が期待される本発明の機能化繊維材料及びその処理方法に用いる物質として最適である。
【0011】
上記のヘスペリジンを水に乳化する際には、水に不溶なヘスペリジンに界面活性剤を用いて乳化する方法が好ましいが、ヘスペリジンを有機溶剤等に溶解し、界面活性剤で水に分散することも可能である。このとき加える有機溶剤等としてはヘスペリジンを溶解するものであれば特に限定されないが、アルコール類、ジオール類、トリオール類、動物油、植物油、鉱物油等が挙げられる。
【0012】
本発明の繊維材料の処理方法としては、水にヘスペリジンを予め有機溶剤等に溶解した後、界面活性剤を用いて水に乳化し、その加工液中に繊維材料を浸漬して処理する。加工液の処理量は繊維重量に対して絞り率30〜120%が好ましいが特に限定はされない。乾燥工程は80〜200℃で1〜5分間行なう。加工液を繊維材料に処理する方法としては、浸漬以外にも塗布、噴霧して処理する方法があるが、特に限定はされない。
【0013】
一方、ヘスペリジンをマイクロカプセル化する方法としては、芯物質がヘスペリジンであり、被膜材がメラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの複合材料であることを特徴とするマイクロカプセルを製造する方法が有効である。
【0014】
また、ヘスペリジンをマイクロカプセル化して繊維材料に加工する方法では、マイクロカプセルの被膜材の影響により、より安定な状態で長期間付着させることができる。ヘスペリジンを内包するマイクロカプセルの大きさは特に限定はされないが、平均粒径が0.1μmから50μmであることが好ましく、繊維への加工性を考慮した場合には、1μmから10μmであることが好ましい。
【0015】
ヘスペリジンを芯物質とし、その溶出速度を調節可能な被膜材によりマイクロカプセル化する方法としては、マイクロカプセル生成技術において広く公知の界面重合法、in−situ法、相分離法、液中硬化被覆法、液中乾燥法及び噴霧・造粒法等が利用できるが、中でも界面重合法は目的とするヘスペリジンのマイクロカプセル化を効果的に可能にするので有用である。
【0016】
本発明において用いられる被膜材としては、ヘスペリジンに対して徐放性を有する物質であればいずれも使用可能であるが、特にメラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの複合材料が挙げられる。
【0017】
本発明におけるヘスペリジンを含む芯物質と被膜材の好ましい割合については特に限定されないが、長期間耐洗濯性、耐光性及び耐熱性を持続させるためには被膜材は多いことが好ましいが、徐放性を考慮すると被膜材は少ないことが好ましい。芯物質と被膜材の好ましい重量比は1:500〜1:10であるが、徐放性、耐洗濯性、耐光性及び耐熱性を考慮した場合には1:200〜1:10であることが好ましい。
【0018】
本発明のヘスペリジンを内包したマイクロカプセル化製剤は、耐洗濯性、耐光性及び耐熱性を必要とする場合には、繊維材料に対してマイクロカプセル化製剤として0.01%〜20%添加して使用することが好ましい。
【0019】
また、ヘスペリジンを含有する加工液および/またはマイクロカプセル液を長期間繊維に付着させる方法、耐洗濯性を向上させる方法としては、自己架橋型アクリル酸エステルあるいは分子内にカルボキシル基を有する共重合樹脂、アクリル・シリコン共重合樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エチレン酢ビ樹脂、メタアクリル酸樹脂、グリオキザール樹脂の1種又は2種以上からなる樹脂を併用して繊維材料に処理する方法が有効である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により詳細説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
(実施例1) ヘスペリジン0.1gをエタノール4gに溶解した後、オレイルアルコール4gを加えた。これにノニオン系界面活性剤を2g加え、水80g中にホモミキサ−で乳化した。得られた乳化液をヘスペリジンを含有する加工液とした。
【0022】
(実施例2) アラビヤゴム10gを水58gに溶解した後、酢酸2gを加えてpHを4.5に調節した。これにヘスペリジンを0.1g加え、平均粒径が5μmになるまでホモミキサ−で分散を行なった。得られた分散液をゆっくり撹拌しながら、メラミン樹脂5%水溶液を少量ずつ20g加えた。これを65℃で2時間撹拌してメラミン樹脂被膜のマイクロカプセル分散液を得た。
【0023】
(試験試料の作成及び耐洗濯性試験方法) 実施例1から2で得られた加工液の繊維材料への処理は、次に示す方法で行った。実施例1から2で得られた加工液それぞれ4部を水92部に希釈した後、アクリル系樹脂(大和化学工業株式会社製 ファイコート30G)をそれぞれ4部添加した処理液を調整した。これらの処理液を綿100%肌着(目付100g/m)に対して、しぼり率80%で処理した後、120℃で5分間乾燥した。また、洗濯はJISL−0217 103法に準じた方法で行った。得られた処理布及び洗濯後の処理布を試験試料とした。
【0024】
(付着量分析) 試験試料30×30cmを円筒濾紙紙No.84(東洋濾紙株式会社製)に入れ、メタノールを溶剤としてソックスレー抽出器で2時間抽出した。抽出後、メタノールにて100mlとし、高速液体クロマトグラフにより分析した。得られたヘスペリジンのピーク面積から繊維に付着した量を計算した。
【表1】

【0025】
(耐光性試験及び耐熱性試験) 実施例1から2で得られた加工液の耐光性試験は、JISL0842カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法に準じて行った。耐光試験器はスガ試験機械株式会社製の紫外線ロングライフフェードメーターを用い、ブラックパネル温度63±3℃で40時間紫外線照射して行った。耐熱性試験は試験試料を150℃の恒温器中で10分間放置した後、室温まで冷却して行った。変色の評価はそれぞれ試験試料を未加工布と比較して行った。
【表2】

【0026】
(効果の評価) 前記の実施例1から2で得られた加工液について、抗炎症・抗アレルギー作用の評価を行った。試験試料は実施例1から2で得られた加工液それぞれ4部を水92部に希釈した後、アクリル系樹脂(大和化学工業株式会社製 ファイコート30G)をそれぞれ4部添加した処理液を調整した。これらの処理液を綿100%肌着(目付100g/m)に対して、しぼり率80%で処理した後、120℃で5分間乾燥した。また、比較例として未加工の肌着を用いた。この試料を2週間昼間のみ着用し、着用による効果について解答を得た被験者は5人で行った。その結果を表3に示す。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペリジンを処理したことを特徴とする機能化繊維材料および機能化繊維材料の処理方法。

【公開番号】特開2006−257612(P2006−257612A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117477(P2005−117477)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000208260)大和化学工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】