説明

ヘッドキャップ装置、及び画像形成装置

【課題】コンパクトなスペースに収納退避させることができ、しかもその構成をシンプルとして低コストに実現でき、さらには、黒色ヘッドによる単色印刷時にも他のヘッドにキャッピングできるものとする。
【解決手段】
ヘッドキャップ装置60は、黒用、Y用、M用、C用インクジェットヘッド15、16、17、18のキャッッピングを行う各色用キャップ部材28、29、30、31をリンク機構で連結して、移動装置80で案内路70に沿って移動させる。リンク機構は、各色用キャップ部材の移動時においても各キャップ部材が水平状態を保ちつつ移動するよう連結する。案内路70は、水平部分70aと傾斜部分70bとを備えて構成される。移動装置は黒用キャップ部材28を水平部分70aで移動させるだけで、他のキャップ部材29、30、31を傾斜部分70bに沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン型インクジェットヘッドのノズル部を覆うヘッドキャップ装置、及びこのヘッドキャップ装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置等の画像形成装置として使用されるインクジェット式の画像形成装置として、紙幅方向に延設されるライン型ヘッドを、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応させて、記録媒体搬送方向に4台並べた構造のものが知られている。このような画像形成装置は、シリアル型インクジェット画像形成装置に比べて高速に印刷ができるが、同時にいくつかの重要な課題を有している。
【0003】
その課題の1つがヘッドキャップ装置のレイアウトと、その移動に関する問題である。即ち、このような画像形成装置では、画像形成装置の非使用時におけるインクジェットのインク吐出面の乾燥防止、及びインク高粘度化の防止の他、インク吐出面への異物付着防止のため、各インクヘッドに吐出面を閉塞するヘッドキャップ装置を配置する。このため、画像形装置には、このヘッドキャップ装置を配置するため、ラインヘッドの下方にキャップ部材を配置するスペース、キャップ部材を移動する移動機構のスペース、及びキャップを退避させるためのスペースが必要になる。
【0004】
例えば特許文献1では、用紙搬送ユニットに対してヘッドユニットを上方に上昇移動させてスペースを設け、このスペースにキャップ部材を用紙搬送と直交する方向から横に移動させて挿入させるものが記載されている。しかし、特許文献1に記載のものは、キャップ部材の退避位置寸法を考慮すれば、キャップ装置を配置するためのサイズが大きなものとなる。
【0005】
これに対処するため、特許文献2には、キャップ部材を退避させる場合にその方向を90度回転させてヘッドの隣にコンパクトに収納できるようにしたものが記載されている。しかし、特許文献2に記載のものは、キャップ部材が複雑な動作をなして移動するため、ヘッドノズル面にきれいに密着装着できなくなったり、キャップ部材に垂れたインクが流れてしまったりするという不具合が起こる場合がある。
【0006】
さらには、特許文献3には、ライン型インクジェットヘッドによる画像形成装置において、メンテナンス機構を積み重ねて退避させ、メンテナンス時にはそれを下方に移動させ次に搬送と平行の方向に移動させて、ヘッドと対向させるものが記載されている。しかし、特許文献3に記載のものは、移動させるための案内部材と駆動機構と駆動源とをそれぞれ水平移動用と垂直移動用の二つを持たねばならずスペースとコストの問題が発生する他、水平移動から垂直移動部への切替部で受け渡しの信頼性が問題になる可能性がある。
【0007】
また、近年例えば4色のインクを吐出できるフルカラーインクジェット装置において、印刷コスト低減のために黒単色で印刷出力する単色印刷処理を行う。このような単色印刷処理の場合、黒色ヘッドは連続的に使用されるが、他の色(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C))のヘッドは使用されないので、Y、M、Cヘッドのノズルのインクが高粘度化したり、乾燥したり、固着したりするという不具合が発生する。そのため、すべてのノズルから定期的にインクを強制吐出させる処理も行われているが、この処理を行うと単色印刷であるにもかかわらずYMCインクまで無駄に消費されてしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の画像形成装置にあっては、キャップ部材を配置、待避するための機構が複雑となりその配置スペースが大きくなったり、カラー画像形成装置における単色印刷時において使用しないヘッドのキャッピングが適切にできなかったりするという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、ヘッド不使用時にはキャッピングが可能であり、印刷時にはコンパクトに収納退避させることができ、しかもその構成をシンプルなものとして低コストに実現でき、さらには、黒色ヘッドによる単色印刷時にも他のヘッドにキャッピングをしておくことができるヘッドキャップ装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、搬送路を搬送される記録媒体の記録面側に媒体搬送方向に沿って複数個並設され、媒体幅方向に延設されると共に、それぞれ記録媒体に対して接近離間可能に配置されたライン型インクジェットヘッドでインクを吐出して画像を形成する画像形成手段に近接して配置され、前記ライン型インクジェットヘッドの各インク吐出部を保護する複数個のキャップ部材と、前記キャップ部材を移動させる移動装置と、を備えたヘッドキャップ装置において、前記移動装置は、前記キャップ部材を前記画像形成手段と前記搬送路との間において前記記録媒体搬送方向に案内する直送部分と、前記直送部分の、前記記録媒体搬送方向における前記画像形成手段よりも上流側に配置された端部から、前記キャップ部材を前記直送部分の延長線を挟んで前記画像形成手段側に離れる方向に案内する傾斜部分とを備えた案内路と、複数個のリンク部材を備え前記複数個のキャップ部材を連結し、前記複数個のキャップ部材が前記案内路に沿って移動するとき各キャップ部材の姿勢を保持するリンク機構と、を備えることを特徴とするヘッドキャップ装置である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のヘッドキャップ装置において、前記移動装置は、前記キャップ部材を移動するための駆動機構と、この駆動機構を駆動する駆動源とを有してなり、前記駆動機構は前記複数個のキャップ部材の中の端部に配置された1個のキャップ部材に対して駆動力を付与することによりすべてのキャップ部材を移動させることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2に記載のヘッドキャップ装置において、前記駆動力が付与される1個のキャップ部材は、その移動経路が記録媒体搬送方向の移動のみに限定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘッドキャップ装置において、前記キャップ部材は、黒ヘッド用のキャップ部材と、黒色以外の各色用のカラーヘッド用キャップ部材とを備えてなり、前記各キャップ部材は、等間隔ピッチに配置された前記複数個のライン型インクジェットヘッドの配置ピッチにあわせて配置され、前記駆動機構は、前記黒色ヘッドのみを使用して黒色記録を行う黒単色印刷モード時において、前記キャップ部材の列をヘッド部材の1つのピッチ寸法だけ移動させることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のヘッドキャップ装置において、用紙の搬送方向が水平方向であることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載のヘッドキャップ装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクジェットヘッドの不使用時にはキャッピングが可能でありながら、印刷時にはコンパクトに収納退避させることができるキャップ装置をシンプル且つ低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施例に係るキャップ装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】実施例に係るキャップ装置の動作状態を示す断面図である。
【図5】実施例に係る画像形成装置における隣接するキャップ部材の接続状態を示す模式図である。
【図6】実施例に係る画像形成装置の黒単色印刷状態を示す断面図である。
【図7】実施例に係る画像形成装置における黒単色印刷の処理を示すフローチャートである。
【図8】実施例に係る画像形成装置におけるキャップ部材の移動状態を示す断面図である。
【図9】実施例に係る画像系装置のフルカラー印刷状態を示す断面図である。
【図10】実施例に係る画像形成装置におけるフルカラー印刷の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の画像形成装置に配置されたヘッドキャップ装置は、並設されたライン型インクジェットヘッドの各インクジェットヘッドに対応してノズル部を保護するキャップ部材と、これらのキャップ部材を移動させ移動装置を備えて構成される。移動装置は、キャップ部材を前記画像形成手段と前記記録媒体の前記搬送路との間において記録媒体搬送方向に配置された水平部分、及びキャップ部材をこの水平部分の前記直送部分の記録媒体搬送方向における前記画像形成手段よりも上流側に配置された端部から上方に離れる方向に案内する傾斜部分からなる案内路と、各キャップ部材を連結するリンク機構とを備え、各キャップ部材の姿勢が保持されつつ案内路に沿って移動される。そして、黒単色印刷処理に際しては、キャップ部材をインクジェットヘッド1個分だけ移動して、黒色のインクジェットヘッドが露出されて印刷可能となり、他のインクジェットヘッドにキャップ部材が被さるようになる。また、フルカラー印刷時にはすべてのキャップ部材がすべてインクジェットヘッドから待避してコンパクトに収納される。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例(以下では単に実施例と記載する)に係る画像形成装置について説明する。以下、画像形成装置は、C、M、Y、Kの4色のインクを使用するものとして説明するが、本発明はこれに限定されない。また、記録媒体は印刷用紙として説明するが、これは印刷用紙に限定されるものではなく、合成樹脂シート等の他の記録媒体を使用することができる。
【0020】
まず画像形成装置1の基本的な構成について説明する。図1及び図2は実施例に画像形成装置の概略構成を示す断面図である。ここで、図1は、すべてのインクジェットヘッドにキャップ部材が被せられた状態を示しており、図2は、すべてのインクジェットヘッドからキャップ部材が外されてフルカラー印刷が可能な状態を示している。
【0021】
本実施例に係る画像形成装置1は、4色のライン型インクヘッドを備える。即ち、画像形成装置1は、画像形成部として黒用ヘッドユニット2及びカラー用ヘッドユニット3を備える。黒用ヘッドユニット2は黒(K)用インクジェットヘッド15(以下黒用インクジェットヘッド15)を備え、カラー用ヘッドユニット3はイエロー(Y)用インクジェットヘッド16(以下Y用インクジェットヘッド16)、マゼンタ(M)用インクジェットヘッド17(以下M用インクジェットヘッド17)、シアン(C)用インクジェットヘッド18(以下C用インクジェットヘッド18)を備える。
【0022】
黒用ヘッドユニット2は、ワイヤー19で吊り下げられガイドプーリー20を介して巻き取りプーリー21が装着された昇降駆動モータ22によって上昇、下降できるよう配置される。また、カラー用ヘッドユニット3は、複数本のワイヤー23で吊り下げられガイドプーリー24及び25を介して巻き取りプーリー26が装着された昇降駆動モータ27によって上昇、下降できるよう配置される。図1では、黒用ヘッドユニット2、カラー用ヘッドユニット3は上死点から若干降下したキャッピング位置の高さ状態に配置された状態を示している。なお、図中符号32は上排出ローラでありその外表面はインク転写汚れ防止のために砥粒ローラになっている。また符号33は下排出ローラを示している。
【0023】
画像形成装置1において、記録媒体である印刷用紙は以下のように搬送されて印刷される。即ち、図示しない給紙装置から水平方向に給紙された印刷用紙4は搬送ローラ対5、6で搬送され、さらには搬送路を構成する無端広幅ベルト7によって搬送される。無端広幅ベルト7は、駆動ローラ8と2本の従動ローラ9、10とテンションローラ11に巻きつけられて所定の張力を与えられ、図示しない駆動装置によって図1中の矢印方向に沿って回転駆動される。
【0024】
実施例に係る画像形成装置1では、無端広幅ベルト7には多数の穴が形成されており、その穴を通して空気が吸引されることで印刷用紙の裏面が吸着される。このため無端広幅ベルト7の下方にはエアー吸引ダクト12が配置されている。エアー吸引ダクト12は図示しない吸引用ブロア装置によって、エアー吸引力を発生する。
【0025】
黒用ヘッドユニット2とカラー用ヘッドユニット3において、各インクジェットヘッド16、17、18は、図示していない検出装置によって検出された印刷用紙の先端位置タイミングに合わせて、図示していないヘッド駆動装置によって駆動され、各インクジェットヘッド16、17、18先端のノズルからインクが順次吐出され、黒単色印刷またはフルカラーの画像が形成できる。この間、無端広幅ベルト7は速度変動がないように駆動されることで用紙を安定して搬送する。
【0026】
また、画像形成装置1は、インクの乾燥防止及び高粘度化を防止の他、インク吐出面への異物の付着を防止のため、各インクジェットヘッド15、16、17、18のインク吐出部であるノズル部46、47、48、49(図1及び図2には示していない:図3参照)、を覆うヘッドキャップ装置60を備えている。
【0027】
ヘッドキャップ装置60は、黒用インクジェットヘッド15に対応する黒用キャップ部材28、Y用インクジェットヘッド16に対応するY用キャップ部材29、M用インクジェットヘッド17に対応するM用キャップ部材30、C用インクジェットヘッド18に対応するC用キャップ部材31を備える。これらのキャップ部材28、29、30、31は、リンク部材50、51、52、53、54、55で構成されるリンク機構で連結されてキャップ部材列をなし、移動装置80(図示していない:図3参照)で案内路70に案内されて移動する。
【0028】
黒用キャップ部材28は、その内部にインク吸引装置を有するものとでき、この場合黒用インクジェットヘッド15のノズル部46からインクを強制的に吸引回収する機能を有する。吸引されたインクは黒用キャップ部材28の背面に設けられた図示しないパイプ部材を通して図示しない廃インクタンクに導かれるようになっている。Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30、及びC用キャップ部材31は、前記吸引機能を持たず、ヘッドの乾燥を防止する保湿機能を有するものとできる。後述するように黒用キャップ部材28は所定距離を水平移動するだけなので、可撓性を有するパイプ等によって廃インクを廃インクタンクに導くようにできる。
【0029】
このような画像形成装置1でフルカラー印刷を行う場合、ヘッドキャップ装置60は待避動作を行う。フルカラー印刷時、図2に示すように、黒用キャップ部材28、Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30、C用キャップ部材31は案内路70に沿ってすべて左側に移動してさらには斜め上方に退避する。このとき、黒用ヘッドユニット2、カラー用ヘッドユニット3は各キャップ部材28〜31に干渉することなく降下させることができる。そして、印刷用紙を搬送しながらその表面にフルカラーの画像を形成することができる。
【0030】
また、画像形成装置1で黒単色印刷を行う場合、黒用キャップ部材28、Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30、C用キャップ部材31はリンク機構に連結されつつ案内路70に沿ってキャップ部材1つ分移動する(図6参照)。このとき、黒用ヘッドユニット2は各キャップ部材28〜31に干渉することなく降下させることができる。そして、印刷用紙を搬送しながらその表面に黒単色の画像を形成することができる。
【0031】
次にヘッドキャップ装置60について説明する。図3は実施例に係るキャップ装置の概略構成を示す断面図、図4は実施例に係るキャップ装置の動作状態を示す断面図である。ここで、図3は黒用キャップ部材28が黒用インクジェットヘッド15を閉塞し、Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30、C用キャップ部材31がそれぞれ対応するインクジェットヘッド16、17、18を閉塞した状態を示し、図4は各キャップ部材が移動装置80で移動されC用キャップ部材31が案内路70を上昇している状態を示している。なお、これらの図ではフロント側に配置した機構のみを図示したが、奥側にも同様の機構が設けられている。
【0032】
本実施例に係る画像形成装置1は、案内路70として上ガイド部材34及び下ガイド部材35を配置している。本実施例では、案内路70は、黒用ヘッドユニット2及びカラー用ヘッドユニット3の下部であり、前記印刷用紙を搬送する無端広幅ベルト7の間でキャップ部材を無端広幅ベルト7に沿って案内する直送部分である水平部分70aと、キャップ部材29、30、31を、この水平部分70aの前記無端広幅ベルト7の搬送方向における前記カラー用ヘッドユニット3よりも上流側の端部(左端)から、前記水平部分70aの延長線を挟んでカラー用ヘッドユニット3側、即ち図中上側に離れる方向に案内する傾斜部分70bとから形成されている。このため、上ガイド部材34と下ガイド部材35はカラー用ヘッドユニット3の図中左側から円弧を描きながら斜め上方に持ち上がるように傾斜して配置されている。
【0033】
移動装置80は、駆動源である駆動モータ38と駆動機構とを備える。駆動機構は、前記駆動モータ38で駆動される小プーリー39と、大径部41a及び小経部41bを備えた2段プーリー41と、前記小プーリー39及び前記2段プーリー41の大径部41aに掛け回されたベルト40と、従動タイミングプーリー61と、2段プーリー41の小径部41a及び前記従動タイミングプーリー61に巻き掛けられた水平駆動タイミングベルト37と、を備えて構成されている。黒用キャップ部材28は、固定接続部材36で前記水平駆動タイミングベルト37に固着されている。また、移動装置80には各キャップ部材28、29、30、31を検出するセンサ56を備える。
【0034】
本実施例では、移動装置80の水平駆動タイミングベルト37には、黒用キャップ部材28だけが接続されており、他のキャップ部材29、30、31は黒用キャップ部材28にリンク機構で連結されて、黒用キャップ部材28の移動につれて移動する。
【0035】
従って水平駆動タイミングベルト37が駆動されて黒用キャップ部材28が図の左方向に移動すると、リンク部材で接続されているY用キャップ部材29とM用キャップ部材30とC用キャップ部材31も図の左方向に移動することになる。
【0036】
また、黒用インクジェットヘッド15、Y用インクジェットヘッド16、M用インクジェットヘッド17、C用インクジェットヘッド18は等ピッチで配置され、黒用キャップ部材28、Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30もリンク機構により同じピッチで配置される。
【0037】
黒用キャップ部材28の側面には、回転可能なローラ部材42a、42bが配置されている。このローラ部材42a、42bは上ガイド部材34と下ガイド部材35との間を転動して案内され、黒用キャップ部材28を案内路70の水平部分70aに沿って案内する。また、Y用キャップ部材29の側面には、回転可能なコロ状部材43が、同様にM用キャップ部材30の側面に回転可能なコロ状部材44が、そしてC用キャップ部材31の側面に回転可能なコロ状部材45が設けられており、上ガイド部材34と下ガイド部材35との間を案内する。
【0038】
次に各キャップ部材を連結するリンク機構について説明する。図5はM用キャップ部材とC用キャップ部材との連結状態を示す拡大模式図である。本実施例に係るヘッドキャップ装置60において、黒用キャップ部材28とY用キャップ部材29とは、棒状の上リンク部材52と下リンク部材53で接続され、Y用キャップ部材29とM用キャップ部材30とは上リンク54部材と下リンク55部材とで接続され、さらにはM用キャップ部材30とC用キャップ部材31とは上リンク部材50と下リンク部材51とで連結され、キャップ部材列をなしている。
【0039】
各リンク部材50、51、52、53、54、55は同寸法で平行となるよう、隣接するキャップ部材にそれぞれ回動可能に接続されている。これにより、各上リンク部材50、52、54と下リンク部材51、53、55とは各キャップ部材に接続された状態で平行四辺形の対辺をなし、平行リンク機構を構成する。このためキャップ部材28、29、30、31は、図5に示すように、その姿勢を維持し平行状態としたまま案内路70に沿って移動される。
【0040】
また、本例に係るヘッドキャップ装置60は、図4に示すように、M用キャップ部材30及びC用キャップ部材31が案内路70の水平部分70aから傾斜部分70bまで移動する場合でも互いに干渉することがない。また、他のキャップ部材もそれぞれ干渉することなく移動する。このため、黒用キャップ部材28は左上部分に欠き部を、また、Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30、C用キャップ部材31は、左上部分と右下部分に欠き部を設けている。
【0041】
次に実施例に係る画像形成装置1の印刷処理動作について説明する。まず、黒単色印刷の場合の動作について説明する。図6は黒単色印刷時の画像形成装置の状態を示す断面図、図7は黒単色印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【0042】
黒単色印刷に際して、画像形成装置1は、すべてのノズル部46、47、48、49にキャップ部材28、29、30、31を密着させた状態(初期状態:図3)において、黒用インクジェットヘッド15のノズル部46の吸引パージ動作を行う(ステップSA1)。これにより、ノズル部46のインク汚れなどを解消する。
【0043】
次いで、この状態から黒用ヘッドユニット2、黒用ヘッドユニット2とカラー用ヘッドユニット3を若干上昇させる(ステップSA2)。すると各キャップ部材28、29、30、31と各ノズル部46、47、48、49との密着が解除される。その後、移動装置80の駆動モータ38を駆動して水平駆動タイミングベルト37を移動させ、キャップ部材列を水平部分70aに沿って、図中左方向に1ヘッドピッチ分だけ移動させる。これにより、黒用キャップ部材28がY用インクジェットヘッド16の直下に、Y用キャップ部材29がM用インクジェットヘッド17の直下に、M用キャップ部材30がC用インクジェットヘッド18の直下に、C用キャップ部材31がカラー用ヘッドユニット3から図中左側に外れた位置に配置される(ステップSA3)。この移動制御は、センサ56でC用キャップ部材31を検出することにより行う。
【0044】
そして、カラー用ヘッドユニット3を下降させ、Y用インクジェットヘッド16、M用インクジェットヘッド17、C用インクジェットヘッド18のノズル部47、48、49を黒用キャップ部材28、Y用キャップ部材29、M用キャップ部材30に密着させる(ステップSA4)。さらには、黒用ヘッドユニット2を下降させて黒単色印刷の準備を行い(ステップSA5)、黒印刷を開始する(ステップSA6)。
【0045】
印刷が終了すると、黒用ヘッドユニット2及びカラー用ヘッドユニット3を上昇させ(ステップSA7)、移動装置80を駆動して各キャップ部材28、29、30、31を元の位置に移動して(ステップSA8)、黒用ヘッドユニット2及びカラー用ヘッドユニット3を下降させインクジェットヘッド15、16、17、18のノズル部47、48、49を覆う(ステップSA9)。
【0046】
次にフルカラー印刷の場合の動作について説明する。図8は実施例に係る画像形成装置におけるキャップ部材の移動状態を示す断面図、図9は実施例に係る画像系装置のフルカラー印刷状態を示す断面図、図10は実施例に係る画像形成装置におけるフルカラー印刷の処理を示すフローチャートである。
まず、すべてのノズル部46、47、48、49にキャップ部材28、29、30、31を密着させた状態(初期状態:図3)において、黒用インクジェットヘッド15のノズル部46について吸引パージ動作を行う(ステップSB1)。これにより、ノズル部46のインク汚れなどを解消する。
【0047】
次いで、黒用ヘッドユニット2とカラー用ヘッドユニット3とを若干上昇させる(ステップSB2)。すると各キャップ部材28、29、30、31と各ノズル部46、47、48、49との密着が解除される。その後、移動装置80の駆動モータ38を駆動して水平駆動タイミングベルト37を移動させ、キャップ部材列を図中左方向に1ヘッドピッチだけ移動させる。
【0048】
これにより、黒用キャップ部材28がY用インクジェットヘッド16の直下に、Y用キャップ部材29がM用インクジェットヘッド17の直下に、M用キャップ部材30がC用インクジェットヘッド18の直下に、C用キャップ部材31がカラー用ヘッドユニット3から図中左側に外れた位置に配置される(ステップSB3)。この移動制御は、センサ56でC用キャップ部材31を検出することにより行う。この状態でカラー用ヘッドユニット3を下降して(ステップSB4)、黒用キャップ部材28とY用インクジェットヘッド16のノズル部47を密着させ吸引パージを行う(ステップSB5)。
【0049】
そして、カラー用ヘッドユニット3を上昇させ(ステップSB6)、移動装置80を駆動して、キャップ部材列を図中左方向に1ヘッドピッチだけ移動させる。これにより黒用キャップ部材28がM用インクジェットヘッド17の直下に、Y用キャップ部材29がC用インクジェットヘッド18の直下に、M用キャップ部材30は水平部分70aにおいてカラー用ヘッドユニット3から図中左側に外れた位置に、C用キャップ部材31は傾斜部分70bに配置される(図8参照)。この移動制御は、センサ56でM用キャップ部材30を検出することにより行う。この状態でカラー用ヘッドユニット3を下降して(ステップSB8)、黒用キャップ部材28とM用インクジェットヘッド18のノズル部48を密着させ吸引パージを行う(ステップSB9)。
【0050】
さらには、カラー用ヘッドユニット3を上昇させ(ステップSB10)、移動装置80を駆動して、キャップ部材列を図中左方向に1ヘッドピッチだけ移動させる(ステップSB11)。次いでカラー用ヘッドユニット3の下降(ステップSB12)、C用インクジェットヘッド18のノズル部49の吸引パージ(ステップSB13)、カラー用ヘッドユニット3の上昇(ステップSB14)を行う。
【0051】
これで、インクジェットヘッド15、16、17、18の吸引パージを終了し、その後移動装置80を駆動してキャップ部材列を移動させ、すべてのキャップ部材28、29、30、31が、インクジェットヘッド15、16、17、18から外れた位置に移動する(ステップSB16)。この移動制御はセンサ56で黒用キャップ部材28を検出することにより行う。この状態で、図9に示すように、キャップ部材29、30、31は案内路70の傾斜部分70bに、黒用キャップ部材28は案内路70の水平部分70aに配置される。
【0052】
次いで黒用ヘッドユニット2とカラー用ヘッドユニット3とを下降して、黒色とY、M、Cの各色の印刷ができる状態とし(ステップSB17)、フルカラー印刷を実行する(ステップSB18)。
【0053】
フルカラー印刷が終了すると、黒用ヘッドユニット2及びカラー用ヘッドユニット3を上昇させ(ステップSB19)、移動装置80を駆動して各キャップ部材28、29、30、31を元の位置に移動して(ステップSB20)、黒用ヘッドユニット2及びカラー用ヘッドユニット3を下降させインクジェットヘッド15、16、17、18のノズル部47、48、49をキャップ部材28、29、30、31で覆う(ステップSB21)。
【0054】
以上のように、本実施例によれば、複数個のキャップ部材が一定の間隔を保持しながらリンク機構で水平状態に保たれたまま、案内部材レールに沿って縦方向にコンパクトに並べられた状態で待避させることができ、少ないスペースでヘッドキャップ装置を配置することができ、ひいては画像形成装置の省スペース化を実現できる。
【0055】
また、本実施例によれば、キャップ部材列の端部にある黒用キャップ部材だけに駆動力を付与するだけですべてのキャップ部材を移動することができ、しかもキャップ部材列の移動の途中からキャップ部材の移動方向を縦方向に変更することができるので、ヘッドキャップ装置の構成を簡素化してコストダウンを図ることができる。
【0056】
また、本実施例によれば、駆動力が付与さえる黒キャップ部材は、その移動経路が水平方向だけであるので、駆動装置として水平往復動する1つのタイミングベルトで黒キャップ部材の水平方向の移動及び他キャップ部材の上下方向の移動を行うことができるのでヘッドキャップ装置を簡素化してコストダウンを図ることができる。
【0057】
また、本実施例によれば、黒単色印刷を行うに際しては、キャップ部材列をインクジェットヘッドの1つのピッチ分だけ移動させればよいので、フルカラー画像形成装置で黒単色印刷に対応することができ、その際使用しないカラーヘッドを確実にキャッピングしておくことができる。
【0058】
<他の実施例>
前記実施例では、黒用ヘッドユニット及びカラー用ヘッドユニットの昇降は、ワイヤーを昇降駆動モータで駆動する機構を用いて行ったが、これは歯車列やラックピニオンを使用した他の機構で実現することができる。また、黒キャップ部材の駆動には、水平駆動タイミングベルトを使用したが、黒キャップの駆動はラックピニオンを使用した他の機構で行うことができる。さらには、各キャップ部材を連結する機構として2本の棒状部材を使用した例を説明したが、噛合する歯車列を使用した機構など他の機構を使用することができる。
【0059】
また、前記印刷用紙を搬送する無端広幅ベルトを水平方向に移動させるものとし、キャップ部材を案内する案内路の直送部分を水平部分とて水平に配置するものとしたがが、これらは水平方向に対して傾斜して、あるいは垂直方向に配置してもよい。さらに、フルカラー印刷に際しては、すべてのインクジェットヘッドを吸引パージする処理を行う例について説明したが、吸引パージは必要に応じて行えば足り、他の手順により印刷を行うことができる。
【0060】
以上説明したように、本発明によればリンク機構で連結したキャップ部材を案内路に沿って移動するようにしたので、黒用キャップ部材を水平方向に往復動させるだけの簡単な移動装置で必要に応じて4個のキャップ部材をすべて退避させることができ、装置を小さなスペースに配置することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置
2 黒用ヘッドユニット
3 カラー用ヘッドユニット
4 用紙(記録媒体)
5、6 搬送ローラ対
7 無端広幅ベルト(搬送路)
8 駆動ローラ
9、10 従動ローラ
11 テンションローラ
12 エアー吸引ダクト
15 黒用インクジェットヘッド
16 Y用インクジェットヘッド
17 M用インクジェットヘッド
18 C用インクジェットヘッド
18 M用インクジェットヘッド
19 ワイヤー
20 ガイドプーリー
21 巻き取りプーリー
22 昇降駆動モータ
23 ワイヤー
24、25 ガイドプーリー
26 プーリー
27 昇降駆動モータ
28 黒用キャップ部材
29 Y用キャップ部材
30 M用キャップ部材
31 C用キャップ部材
34 上ガイド部材
35 下ガイド部材
36 固定接続部材
37 水平駆動タイミングベルト
38 駆動モータ
39 小プーリー
40 ベルト
41 2段プーリー
41a 大径部
41b 小経部
42a、42b ローラ部材
43 コロ状部材
44 コロ状部材
45 コロ状部材
46、47、48、49 ノズル部
50、52、54 上リンク部材
51、53、55 下リンク部材
56 センサ
60 ヘッドキャップ装置
61 従動タイミングプーリー
70 案内路
70a 水平部分(直送部分)
70b 傾斜部分
80 移動装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2002−120386号公報
【特許文献2】特開2009−18482号公報
【特許文献3】特開2008−307714号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を搬送される記録媒体の記録面側に媒体搬送方向に沿って複数個並設され、媒体幅方向に延設されると共に、それぞれ記録媒体に対して接近離間可能に配置されたライン型インクジェットヘッドでインクを吐出して画像を形成する画像形成手段に近接して配置され、前記ライン型インクジェットヘッドの各インク吐出部を保護する複数個のキャップ部材と、前記キャップ部材を移動させる移動装置と、を備えたヘッドキャップ装置において、
前記移動装置は、
前記キャップ部材を前記画像形成手段と前記搬送路との間において前記記録媒体搬送方向に案内する直送部分と、前記直送部分の、前記記録媒体搬送方向における前記画像形成手段よりも上流側に配置された端部から、前記キャップ部材を前記直送部分の延長線を挟んで前記画像形成手段側に離れる方向に案内する傾斜部分とを備えた案内路と、
複数個のリンク部材を備え前記複数個のキャップ部材を連結し、前記複数個のキャップ部材が前記案内路に沿って移動するとき各キャップ部材の姿勢を保持するリンク機構と、
を備えることを特徴とするヘッドキャップ装置。
【請求項2】
前記移動装置は、
前記キャップ部材を移動するための駆動機構と、この駆動機構を駆動する駆動源とを有してなり、
前記駆動機構は前記複数個のキャップ部材の中の端部に配置された1個のキャップ部材に対して駆動力を付与することによりすべてのキャップ部材を移動させることを特徴とする請求項1に記載のヘッドキャップ装置。
【請求項3】
前記駆動力が付与される1個のキャップ部材は、その移動経路が記録媒体搬送方向の移動のみに限定されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドキャップ装置。
【請求項4】
前記キャップ部材は、黒ヘッド用のキャップ部材と、黒色以外の各色用のカラーヘッド用キャップ部材とを備えてなり、
前記各キャップ部材は、等間隔ピッチに配置された前記複数個のライン型インクジェットヘッドの配置ピッチにあわせて配置され、
前記駆動機構は、前記黒色ヘッドのみを使用して黒色記録を行う黒単色印刷モード時において、前記キャップ部材の列をヘッド部材の1つのピッチ寸法だけ移動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘッドキャップ装置。
【請求項5】
用紙の搬送方向が水平方向であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のヘッドキャップ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のヘッドキャップ装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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