説明

ヘッドクリーニング方法及び装置

【課題】使用可能なインク吸収体の選択の幅を拡大でき、かつ、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができるヘッドクリーニング方法及び装置を提供する。
【解決手段】ノズル面30に沿って払拭ウェブ110を摺動させることにより、ノズル面30を払拭清掃する場合において、払拭ウェブ110の非湿潤領域を使用してノズル面30を払拭清掃したのち、払拭ウェブ110に湿潤領域を形成し、形成した湿潤領域を使用して、再度、ノズル面30を払拭清掃する。吸収力の高い非湿潤領域を使用して1回目の払拭を行うことにより拭き残しを防止し、吸収力を低下させた湿潤領域を使用して2回目の払拭を行うことにより払拭跡及びノズルからのインクの引き出しを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドクリーニング方法及び装置に係り、特に液体吸収体でノズル面を払拭清掃するヘッドクリーニング方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから微小なインクの液滴を吐出させて画像の記録を行うインクジェット記録装置では、連続して記録作業を行うと、ノズルから吐出されて霧状になったインクがノズル付近に付着、堆積して、ノズルが目詰まりを起こすことがある。このため、インクジェット記録装置では、定期的にノズル面のクリーニングが行われる。
【0003】
特許文献1では、このノズル面をクリーニングする方法として、ノズル面をブレードでワイピングしたのち、さらにノズル面をインク吸収体でワイピングする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−205712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、インク吸収体でノズル面をワイピングする方法の場合、使用するインク吸収体の吸収能力が高いと、インク吸収体によってノズルからインクが引き出されてしまい、インク吸収体が通過した後に小さな液滴が残ってしまう(以下、このような現象を「払拭跡」という。)という問題がある。
【0006】
一方、使用するインク吸収体の吸収能力が低いと、ノズル面の液滴を吸収しきれずに、ノズル面に大きな液滴が残ってしまう(以下、このような現象を「拭き残し」という。)という問題がある。
【0007】
そして、このような払拭跡や拭き残しは、ノズルから吐出される液滴の飛翔に悪影響を及ぼし、画像を劣化させる原因ともなる。
【0008】
これを回避するために、最適な吸収能力を持つインク吸収体を使用してノズル面をワイピングすることも考えられるが、インク吸収体の選択には限りがあるという問題がある。また、ノズルの穴径やノズル面の撥液膜耐性の条件によっては、所要の性能を満たすインク吸収体がない場合もある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、使用可能なインク吸収体の選択の幅を拡大でき、かつ、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができるヘッドクリーニング方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、走行する帯状の液体吸収体が巻き掛けられた押圧部材をヘッドのノズル面に押圧当接させ、該押圧部材を前記ヘッドのノズル面に沿って摺動させることにより、前記ヘッドのノズル面を前記液体吸収体で払拭清掃するヘッドクリーニング方法において、前記液体吸収体の非湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃する第1清掃工程と、前記液体吸収体に湿潤領域を形成する湿潤領域形成工程と、前記液体吸収体の湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃する第2清掃工程と、からなることを特徴とするヘッドクリーニング方法を提供する。
【0011】
本発明では、まず、液体吸収体の非湿潤領域を用いて、ヘッドのノズル面を払拭清掃する(第1清掃工程)。その後、液体吸収体に湿潤領域を形成し(湿潤領域形成工程)、形成した湿潤領域を用いて、ヘッドのノズル面を払拭清掃する(第2清掃工程)。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができる。すなわち、液体吸収体の非湿潤領域は、いまだ液体を吸収していないので、吸収能力が高く、このような吸収能力の高い非湿潤領域を用いてノズル面を払拭清掃することにより、拭き残しを防止することができる。その一方で、このような吸収能力の高い液体吸収体でノズル面を払拭清掃すると、ノズル面に払拭跡が生じるおそれがある。しかし、本発明では、非湿潤領域を用いてノズル面を払拭清掃したのち、液体吸収体を湿潤させて、吸収能力を低下させ、この吸収能力を低下させた液体吸収体を用いて、再度ノズル面を払拭清掃するので、先の払拭清掃時に払拭跡が生じた場合であっても、これを拭い去ることができる。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができる。また、これにより、使用可能な液体吸収体の条件を緩和でき、液体吸収体の選択の幅を拡大することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記湿潤領域形成工程では、前記液体吸収体の走行方向に対して前記押圧部材の上流側の前記液体吸収体に液体付与手段から液体を付与して前記湿潤領域を形成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、押圧部材の上流側の液体吸収体、すなわち、ヘッドのノズル面に摺接される前の液体吸収体に液体付与手段から液体が付与されて湿潤領域が形成される。これにより、簡単に液体吸収体の所定領域に湿潤領域を形成することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記第1清掃工程は、事前に前記ヘッドのノズル面に液体を付与して行われ、前記湿潤領域は、前記ノズル面のノズル形成領域以外の領域に付与された前記液体を前記液体吸収体に吸収させて形成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、事前にヘッドのノズル面に液体(たとえば、所定の洗浄液)を付与して第1清掃工程が行われる。そして、湿潤領域は、ノズル面のノズル形成領域以外の領域に付与された液体を液体吸収体に吸収させることにより形成される。すなわち、通常、ノズル面には、ノズルが形成されていない領域が存在し、また、この領域はノズルが形成された領域と比較してクリーンなので、この領域に付与された液体を液体吸収体に吸収させて、液体吸収体に湿潤領域を形成する。これにより、簡単に液体吸収体に湿潤領域を形成することができる。なお、この場合、必要に応じて液体吸収体を巻き戻して使用することとなる。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記湿潤領域形成工程は、前記ヘッドのノズル面に形成されたノズルから液体を滲み出させ、該液体を前記液体吸収体に吸収させて前記湿潤領域を形成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、湿潤領域は、ヘッドのノズル面に形成されたノズルから液体を滲み出させ、この滲み出させた液体を液体吸収体に吸収させることにより形成される。これにより、簡単に液体吸収体に湿潤領域を形成することができる。なお、この場合、必要に応じて液体吸収体を巻き戻して使用することとなる。
【0018】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記第1清掃工程は、前記押圧部材に対する前記ヘッドの相対的な移動方向に対して、前記液体吸収体を逆方向に走行させて行うことを特徴とする請求項1−4のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、押圧部材に対するヘッドの相対的な移動方向に対して、液体吸収体を逆方向に走行させて、第1清掃工程が行われる。これにより、ノズル面に対する液体吸収体の相対的な走行速度を大きくすることができ、清掃効果を高めることができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記第2清掃工程は、前記押圧部材に対する前記ヘッドの相対的な移動方向に対して、前記液体吸収体を逆方向に走行させて行うことを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0021】
本発明によれば、押圧部材に対するヘッドの相対的な移動方向に対して、液体吸収体を逆方向に走行させて、第2清掃工程が行われる。
【0022】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、前記第2清掃工程は、前記押圧部材に対する前記ヘッドの相対的な移動方向に対して、前記液体吸収体を同方向に走行させて行うことを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0023】
本発明によれば、押圧部材に対するヘッドの相対的な移動方向に対して、液体吸収体を同方向に走行させて、第2清掃工程が行われる。
【0024】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、前記湿潤領域形成工程では、前記第2清掃工程における前記ヘッドと前記液体吸収体との相対的な速度差が大きくなるほど、湿潤量を増やして前記湿潤領域を形成することを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法を提供する。
【0025】
本発明によれば、第2清掃工程におけるヘッドと液体吸収体との相対的な速度差が大きくなるほど、湿潤量が増やされて、湿潤領域が形成される。すなわち、ヘッドに対する液体吸収体の相対的な速度が速くなるほど、吸収力が高くなるので、湿潤量を増やして、吸収能力を抑える。これにより、液体吸収体を適切な吸収能力に設定して、第2清掃工程を行うことができ、適切に払拭跡を除去することができる。
【0026】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成するために、走行する帯状の液体吸収体が巻き掛けられた押圧部材をヘッドのノズル面に押圧当接させ、該押圧部材を前記ヘッドのノズル面に沿って摺動させることにより、前記ヘッドのノズル面を前記液体吸収体で払拭清掃するヘッドクリーニング装置において、前記液体吸収体の走行方向に対して前記押圧部材の上流側の前記液体吸収体に液体を付与して湿潤させる液体付与手段と、前記液体吸収体の走行、前記押圧部材の摺動、及び、前記液体付与手段による液体の付与を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記液体吸収体の非湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃したのち、前記液体付与手段から前記液体吸収体に液体を付与して、前記液体吸収体に湿潤領域を形成し、該湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃するように制御することを特徴とするヘッドクリーニング装置を提供する。
【0027】
本発明では、まず、液体吸収体の非湿潤領域を用いてノズル面が払拭清掃される。その後、液体付与手段から液体吸収体に液体が付与されて、液体吸収体に湿潤領域が形成される。そして、その形成された湿潤領域を用いて、再度ノズル面が払拭清掃される。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができる。また、これにより、使用可能な液体吸収体の条件を緩和でき、液体吸収体の選択の幅を拡大することができる。
【0028】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するために、前記液体付与手段は、前記ヘッドと前記液体吸収体との相対的な速度差に応じて付与する液体量が可変されることを特徴とする請求項9に記載のヘッドクリーニング装置を提供する。
【0029】
本発明によれば、液体吸収体を湿潤させて払拭清掃する場合のヘッドと液体吸収体との相対的な速度差に応じて液体付与手段から液体吸収体に付与される液体量、すなわち、湿潤量が設定される。これにより、適切に払拭跡を除去することができる。
【0030】
請求項11に係る発明は、前記目的を達成するために、走行する帯状の液体吸収体が巻き掛けられた押圧部材をヘッドのノズル面に押圧当接させ、該押圧部材を前記ヘッドのノズル面に沿って摺動させることにより、前記ヘッドのノズル面を前記液体吸収体で払拭清掃するヘッドクリーニング装置において、前記ヘッドのノズル面に液体を付与する液体付与手段と、前記液体吸収体の走行、前記押圧部材の摺動、及び、前記液体付与手段による液体の付与を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記液体付与手段から前記ヘッドのノズル面に液体を付与したのち、前記液体吸収体の非湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃し、該払拭清掃後、前記ノズル面のノズル形成領域以外の領域を払拭することにより形成される湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を再度払拭清掃するように制御することを特徴とするヘッドクリーニング装置を提供する。
【0031】
本発明によれば、ヘッドのノズル面に液体付与手段から液体が付与された後、液体吸収体の非湿潤領域を用いて、ヘッドのノズル面が払拭清掃される。そして、その非湿潤領域を用いた払拭清掃の後、ノズル面のノズル形成領域以外の領域を払拭したことによって形成された湿潤領域を用いて、ノズル面が再度払拭清掃される。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができる。また、これにより、使用可能な液体吸収体の条件を緩和でき、液体吸収体の選択の幅を拡大することができる。
【0032】
請求項12に係る発明は、前記目的を達成するために、前記液体吸収体の湿潤領域を検出する湿潤領域検出手段を備えたことを特徴とする請求項9−11のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング装置を提供する。
【0033】
本発明によれば、液体吸収体の湿潤領域を検出することができる。これにより、適切に湿潤領域と非湿潤領域とを切り換えて、ノズル面を払拭清掃することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、使用可能なインク吸収体の選択の幅を拡大することができる。また、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面をクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】描画部の概略構成を示す側面図
【図2】描画部の概略構成を示す正面図
【図3】ヘッドクリーニング装置の構成を示す側面図
【図4】ヘッドクリーナの正面図
【図5】ヘッドクリーナの背面図
【図6】ヘッドクリーナの側面図
【図7】ヘッドクリーナの動作説明図
【図8】ラインヘッドの下面図
【図9】ヘッドクリーニング装置の動作説明図
【図10】ヘッドクリーナの第2の実施の形態の正面図
【図11】ヘッドクリーニング装置の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明に係るヘッドクリーニング方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0037】
[インクジェット記録装置(描画部)の構成]
図1は、本発明が適用されたインクジェット記録装置の描画部の概略構成を示す側面図である。
【0038】
同図に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置では、描画部10において、用紙(記録媒体)12が描画ドラム14の周面に吸着保持されて回転搬送される。そして、描画ドラム14によって回転搬送される用紙12に対して、描画ドラム14の周囲に配置された4本のラインヘッド16C、16M、16Y、16KからC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(クロ)の各色のインクの液滴を吐出させて、用紙12の記録面にカラー画像を描画する(いわゆる、ドラム搬送方式のラインプリンタ)。
【0039】
用紙12を回転搬送する描画ドラム14は、円筒状に形成されており、その両端から突出して設けられた回転軸18をインクジェット記録装置の本体フレーム20に設けられた軸受22に軸支されて(図2参照)、水平に設置されている。この回転軸18には、図示しない回転伝達機構を介してモータが連結されており、描画ドラム14は、このモータに駆動されて回転する。
【0040】
また、この描画ドラム14の周面には、グリッパ24が設けられている(本例では、外周面上の2カ所に設置)。用紙12は、このグリッパ24に先端部を把持されて、描画ドラム14の外周面上に保持される。
【0041】
さらに、この描画ドラム14の周面には、図示しない吸着穴が所定の配列パターンで多数形成されており、内部に向けてエアが吸引されている。描画ドラム14の周面に巻き掛けられた用紙12は、この吸着穴から内部に向けてエアが吸引されることにより、描画ドラム14の外周面上に吸着保持される。
【0042】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置において、用紙12は、前段の工程(たとえば、用紙12の記録面にインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液を付与する工程)から搬送ドラム26を介して、描画ドラム14に受け渡される。搬送ドラム26は、描画ドラム14に並列して配置されており、タイミングを合わせて、描画ドラム14に用紙12を受け渡す。
【0043】
また、描画後の用紙12は、搬送ドラム28を介して、後段の工程(たとえば、インクを乾燥させる工程)に受け渡される。搬送ドラム28は、描画ドラム14に並列して配置されており、タイミングを合わせて、描画ドラム14から用紙12を受け取る。
【0044】
4本のラインヘッド16C、16M、16Y、16K(以下「ヘッド」という)は、用紙幅に対応して形成されており、描画ドラム14の回転軸18を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置されている。この4本のヘッド16C、16M、16Y、16Kは、描画ドラム14の上方に設置されたヘッド支持フレーム40に取り付けられている。
【0045】
ヘッド支持フレーム40は、図2に示すように、描画ドラム14の回転軸18と直交するように配置された一対のサイドプレート42L、42Rと、その一対のサイドプレート42L、42Rを上端部において連結する連結フレーム44とで構成されている。
【0046】
一対のサイドプレート42L、42Rは、板状に形成されており、描画ドラム14を挟んで互いに対向するように配置されている。この一対のサイドプレート42L、42Rの内側面には、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kを取り付けるための取付部46C、46M、46Y、46Kが設けられている(図2では取付部46Y、46Kのみ図示)。
【0047】
取付部46C、46M、46Y、46Kは、描画ドラム14の回転軸18を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置されている。各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、その両端に形成された被取付部48C、48M、48Y、48K(図2では被取付部48Y、48Kのみ図示)を取付部46C、46M、46Y、46Kにビスで固定することにより、ヘッド支持フレーム40に取り付けられる。
【0048】
このようにしてヘッド支持フレーム40に取り付けられた各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、描画ドラム14の回転軸18を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置され、そのノズル面30C、30M、30Y、30Kが、描画ドラム14の外周面に対向して配置される。また、そのノズル面30C、30M、30Y、30Kが、描画ドラム14の外周面から所定高さの位置に位置し(描画ドラム14の外周面とノズル面30C、30M、30Y、30Kとの間に所定のギャップが形成される。)、ノズル面30C、30M、30Y、30Kに形成されたノズル列が用紙12の搬送方向と直交して配置される。
【0049】
このように配置された各ヘッド16C、16M、16Y、16Kからは、そのノズル面30C、30M、30Y、30Kに形成されたノズル列から描画ドラム14の外周面に向けて垂直にインクの液滴が吐出される。
【0050】
なお、ヘッド支持フレーム40は、描画ドラム14の回転軸18と平行な方向(=取り付けられたヘッド16C、16M、16Y、16Kの長手方向)に移動可能に設けられており、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kを所定のメンテナンス位置に退避できるように構成されている。この点については後述する。
【0051】
描画部10は、以上のように構成される。この描画部10において、用紙12は、前段の工程から搬送ドラム26を介して描画ドラム14に受け渡され、描画ドラム14の周面に吸着保持されながら回転搬送される。そして、その搬送過程で各ヘッド16C、16M、16Y、16Kの下を通過し、通過時に各ヘッド16C、16M、16Y、16Kから吐出されたインクの液滴が記録面に打滴されて、記録面にカラー画像が形成される。画像記録が終了した用紙12は、描画ドラム14から搬送ドラム28に受け渡され、後段の工程に搬送される。
【0052】
なお、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kの駆動制御(インクの吐出制御)、及び、描画ドラム14の駆動制御等は、図示しないシステムコントローラで行われる。このシステムコントローラは、インクジェット記録装置の全体の動作を統括制御し、所定の制御プログラムに従って各部の駆動を制御する。
【0053】
[ヘッド支持フレームの移動機構]
上記のように、ヘッド支持フレーム40は、描画ドラム14の回転軸18と平行な方向に移動可能に設けられている。以下、このヘッド支持フレーム40の移動機構について説明する。
【0054】
ヘッド支持フレーム40は、描画ドラム14の回転軸18と平行に配設された一対のガイドレール50、50にスライダ52、52を介してスライド自在に支持されている。ヘッド支持フレーム40は、このガイドレール50、50に沿ってスライド移動することにより、描画ドラム14の回転軸18と平行な方向にスライド移動する。
【0055】
また、ヘッド支持フレーム40には、ネジ棒54に螺合されたナット部56が連結されている。ネジ棒54は、ガイドレール50と平行に配設されており、その両端部をインクジェット記録装置の本体フレームに設けられた軸受58、58に回動自在に支持されている。このネジ棒54には、ヘッド送りモータ60が連結されており、このヘッド送りモータ60に駆動されて回転する。ヘッド支持フレーム40は、このヘッド送りモータ60を駆動して、ネジ棒54を回転させることにより、ガイドレール50、50に沿ってスライド移動する。すなわち、描画ドラム14の回転軸と平行な方向にスライド移動する。
【0056】
図示しないシステムコントローラは、ヘッド送りモータ60の駆動を制御して、ヘッド支持フレーム40の移動を制御し、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kを所定の描画位置からメンテナンス位置へ移動させる。あるいは、メンテナンス位置から描画位置に移動させる。
【0057】
各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、描画位置に位置すると、図2に実線で示すように、描画ドラム14の周囲に配置され、描画ドラム14によって回転搬送される用紙12に対して、画像の記録が可能になる。
【0058】
一方、メンテナンス位置に位置すると、図2に破線で示すように、描画ドラム14の周囲から退避する。これにより、描画ドラム14と各ヘッド16C、16M、16Y、16Kの双方のメンテナンスが可能になる。
【0059】
なお、このメンテナンス位置には、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kを保湿するための保湿ユニット62が設けられている。各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、長時間使用しない場合、この保湿ユニット62によってノズル面30C、30M、30Y、30Kが保湿され、乾燥による不吐出が防止される。
【0060】
描画位置とメンテナンス位置との間には、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃するためのヘッドクリーニング装置70が設けられている。
【0061】
各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、描画位置からメンテナンス位置に移動する工程(あるいは、メンテナンス位置から描画位置に移動する工程)で、そのノズル面30C、30M、30Y、30Kに払拭ウェブ(インク吸収体)が押圧当接され、これにより、ノズル面30C、30M、30Y、30Kが払拭清掃される。以下、このヘッドクリーニング装置70の構成について説明する。
【0062】
[ヘッドクリーニング装置の構成]
図3は、ヘッドクリーニング装置の構成を示す側面図である。
【0063】
同図に示すように、ヘッドクリーニング装置70は、洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kと、ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kとを備えて構成されている。この洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kと、ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kに対応して設けられており、図示しない支持フレームに取り付けられている。ヘッドクリーニング装置70は、この洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kと、ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kとが取り付けられた支持フレームをインクジェット記録装置の本体フレーム(図示せず)に取り付けることにより、描画位置とメンテナンス位置との間に設定された所定の設置位置に設置される。
【0064】
[洗浄液塗布ノズルの構成]
各洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kは、対応するヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに対向して設けられている。この洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kは、ノズル面30C、30M、30Y、30Kの幅に対応した噴射口を有しており、対応するヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに向けて洗浄液を噴射する。
【0065】
洗浄液は、図示しない洗浄液供給パイプを介して洗浄液タンクから供給され、その洗浄液供給パイプの途中に設けられた洗浄液噴射ポンプを駆動することにより、各洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kから洗浄液が噴射される。
【0066】
各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、描画位置からメンテナンス位置に移動する過程(あるいは、メンテナンス位置から描画位置に移動する過程)で、この洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kからノズル面30C、30M、30Y、30Kに向けて洗浄液が噴霧されることにより、ノズル面30C、30M、30Y、30Kに洗浄液が塗布される。
【0067】
システムコントローラは、洗浄液噴射ポンプ及びヘッド送りモータ60の駆動を制御して、ノズル面30C、30M、30Y、30Kへの洗浄液の塗布を制御する。
【0068】
[ヘッドクリーナの構成]
各ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、対応するヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに対向して設けられており、対応するヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに帯状に形成された払拭ウェブ110を押圧ローラ118で押圧当接させる。各ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、描画位置からメンテナンス位置に移動する過程(あるいは、メンテナンス位置から描画位置に移動する過程)で、この払拭ウェブ110がノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧当接されることにより、ノズル面30C、30M、30Y、30Kが払拭清掃される。
【0069】
なお、各ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kの構成は共通しているので、ここでは、ヘッドクリーナ100として、その構成を説明する。
【0070】
図4はヘッドクリーナの正面図、図5はヘッドクリーナの背面図、図6はヘッドクリーナの側面図である。
【0071】
図4〜6に示すように、ヘッドクリーナ100は、帯状に形成された払拭ウェブ110を押圧ローラ118に巻き掛け、この押圧ローラ118に巻き掛けた払拭ウェブ110を対応するヘッド16(16C、16M、16Y,16K)のノズル面30(30C、30M、30Y、30K)に押圧当接させることにより、ヘッド16のノズル面30を払拭清掃する。
【0072】
このヘッドクリーナ100は、主として、本体フレーム112と、払拭ウェブ110を繰り出す繰出リール114と、払拭ウェブ110を巻き取る巻取リール116と、払拭ウェブ110をヘッド16のノズル面30に押圧当接させる押圧ローラ118と、繰出リール114を回転駆動して、払拭ウェブ110を繰出リール114に巻き戻す巻戻モータ120と、巻取リール116を回転駆動して、払拭ウェブ110を巻取リール116に巻き取る巻取モータ122と、払拭ウェブ110の湿潤領域を検出する湿潤領域検出センサ124と、本体フレーム112をヘッド16のノズル面30に対して垂直に進退移動させる昇降用シリンダ126とで構成されている。
【0073】
本体フレーム112は、L字状に形成されており、ヘッド16のノズル面30と平行に設けられる底面部112Aと、その底面部112Aに対して垂直に設けられる壁面部112Bとで構成されている。
【0074】
繰出リール114は、本体フレーム112の壁面部112Bに対して垂直(=対応するヘッドのノズル面と平行)に設けられており、その軸部114Aが、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に設けられた軸受130に回転自在に支持されている。後述するように、払拭ウェブ110は、その繰出側の巻芯110Aが、この繰出リール114に装着される。
【0075】
巻取リール116は、繰出リール114と同様に、本体フレーム112の壁面部112Bに対して垂直に設けられており、その軸部116Aが、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に設けられた軸受131に回転自在に支持されている。後述するように、払拭ウェブ110は、その巻取側の巻芯110Bが、この巻取リール116に装着される。
【0076】
この巻取リール116と繰出リール114は、一定の間隔をもって横方向に並列して配置されている。
【0077】
押圧ローラ118は、繰出リール114と巻取リール116の中間位置の上方に配置されており、繰出リール114と巻取リール116の間を走行する払拭ウェブ110が巻き掛けられる。この押圧ローラ118は、本体フレーム112の壁面部112Bに対して垂直に設けられており、その軸部118Aが、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に設けられた軸受132に回転自在に支持されている。
【0078】
繰出リール114から繰り出された払拭ウェブ110は、繰出リール114と押圧ローラ118との間に配置された繰出ガイドローラ134を介して押圧ローラ118に巻き掛けられる。この繰出ガイドローラ134は、本体フレーム112の壁面部112Bに対して垂直に設けられており、その軸部134Aが、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に設けられた軸受136に回転自在に支持されている。
【0079】
また、押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110は、押圧ローラ118と巻取リール116との間に配置された巻取ガイドローラ138を介して巻取リール116に巻き取られる。この巻取ガイドローラ138は、本体フレーム112の壁面部112Bに対して垂直に設けられており、その軸部136Aが、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に設けられた軸受140に回転自在に支持されている。
【0080】
巻戻モータ120は、繰出リール114の下方部に配置されており、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に垂直に取り付けられている。この巻戻モータ120の出力軸120Aは、壁面部112Bの外側に突出して設けられており、その先端には巻戻駆動ギア142が固着されている。
【0081】
上記繰出リール114の軸部114Aも壁面部112Bの外側に突出して設けられており、その先端には巻戻従動ギア144が固着されている。この巻戻従動ギア144は、巻戻アイドルギア146を介して、巻戻駆動ギア142に噛み合わされている。
【0082】
巻戻アイドルギア146は、本体フレーム112の壁面部112Bの外側に配置されており、その軸部146Aが本体フレーム112の壁面部112Bの外側に設けられた軸受148
に回転自在に支持されている。
【0083】
巻戻モータ120を駆動すると、巻戻駆動ギア142が回転し、その回転が巻戻アイドルギア146を介して巻戻従動ギア144に伝達される。これにより、繰出リール114が繰出方向と逆方向、すなわち、払拭ウェブ110を巻き取る方向に回転する。
【0084】
巻取モータ122は、巻取リール116の下方部に配置されており、本体フレーム112の壁面部112Bの内側に垂直に取り付けられている。この巻取モータ122出力軸122Aは、壁面部112Bの外側に突出して設けられており、その先端には巻取駆動ギア150が固着されている。
【0085】
上記巻取リール116の軸部116Aも壁面部112Bの外側に突出して設けられており、その先端には巻取従動ギア152が固着されている。この巻取従動ギア152は、巻取アイドルギア154を介して、巻取駆動ギア150に噛み合わされている。
【0086】
巻取アイドルギア154は、本体フレーム112の壁面部112Bの外側に配置されており、その軸部154Aが本体フレーム112の壁面部112Bの外側に設けられた軸受156に回転自在に支持されている。
【0087】
巻取モータ122を駆動すると、巻取駆動ギア150が回転し、その回転が巻取アイドルギア154を介して巻取従動ギア152に伝達される。これにより、巻取リール116が払拭ウェブ110を巻き取る方向に回転する。
【0088】
湿潤領域検出センサ124は、押圧ローラ118と巻取ガイドローラ138との間に配置されており、その間を走行する払拭ウェブ110の湿潤領域(いわゆる、ウェット領域)を検出する。この湿潤領域検出センサ124は、たとえば、投光部と受光部とを備えたフォトセンサで構成され、投光部から払拭ウェブ110に向けて投光した光の反射光を受光部で受光して、払拭ウェブ110の湿潤領域を検出する。また、この湿潤領域検出センサ124はシステムコントローラからの指令に応じて作動し、その検出結果をシステムコントローラに出力する。
【0089】
昇降用シリンダ126は、ヘッドクリーニング装置本体(図示せず)に固定されており、そのロッド126Aの先端に本体フレーム112が固定されている。本体フレーム112は、この昇降用シリンダ126を駆動することにより、対応するヘッド16のノズル面30に対して垂直に進退移動する。そして、この本体フレーム112が、ノズル面30に対して垂直に進退移動することにより、図7に示すように、押圧ローラ118が、所定の「押圧位置」と「退避位置」との間を移動する。
【0090】
押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110は、押圧ローラ118が押圧位置に位置すると、対応するヘッド16のノズル面30に押圧当接される。そして、退避位置に位置すると、対応するヘッド16のノズル面30から退避する。すなわち、ノズル面30に接触しないように、ノズル面30から離間する。
【0091】
ヘッドクリーナ100は、以上のように構成される。
【0092】
なお、払拭ウェブ110は、たとえば、ポリエステルやアクリル、ナイロン等の高密度繊維で構成され、次のようにしてヘッドクリーナ100に装着される。払拭ウェブ110は、両端に巻芯110A、110Bが取り付けられており、一方の巻芯(繰出側の巻芯)110Aにロール状に巻回された状態で提供される。この払拭ウェブ110をヘッドクリーナ100に装着する場合は、まず、繰出側の巻芯110Aを繰出リール114に装着する。そして、繰出リール114に装着した払拭ウェブ110を少しずつ繰り出しながら、繰出ガイドローラ134、押圧ローラ118、巻取ガイドローラ138の順に巻き掛け、先端の巻芯(巻取側の巻芯)110Bを巻取リール116に装着する。これにより、払拭ウェブ110がヘッドクリーナ100に装着される。
【0093】
払拭ウェブ110が装着されたヘッドクリーナ100は、巻取モータ122を回転駆動することにより、繰出リール114から巻取リール116に巻き取られる。これにより、押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110が走行する。
【0094】
この押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110は、ヘッド16の移動方向と平行に走行し、ヘッド16が、描画位置からメンテナンス位置に移動すると、逆方向に走行する。また、ヘッド16が、メンテナンス位置から描画位置に移動すると、同方向に走行する。
【0095】
なお、払拭ウェブ110は、繰出リール114に巻き戻すことができ、巻戻モータ120を回転駆動すると、繰出リール114に巻き戻される。
【0096】
システムコントローラは、巻戻モータ120、巻取モータ122、昇降用シリンダ126、及び、ヘッド送りモータ60の駆動を制御して、ヘッド16のノズル面30を清掃する。
【0097】
[ヘッドクリーニング方法]
次に、本実施の形態のヘッドクリーニング装置70を用いたヘッドのクリーニング方法について説明する。
【0098】
ヘッド16C、16M、16Y、16Kのクリーニングは、ノズル面30C、30M、30Y、30Kの全面に洗浄液を塗布したのち、払拭ウェブ110で払拭することにより行われる。そして、本実施の形態のヘッドクリーニング装置70では、ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭ウェブ110で払拭する際、2回に分けて払拭を実施する。すなわち、1回目の払拭は、通常の吸収力の高い状態の払拭ウェブ110で払拭し、2回目の払拭は、吸収力の低い状態の払拭ウェブ110で払拭する。このように、ノズル面30C、30M、30Y、30Kを2回に分けて払拭することにより、払拭跡や拭き残しを防止することができる。すなわち、1回目の払拭は、通常の吸収力の高い状態の払拭ウェブ110で払拭することにより、ノズル表面の大きな液滴を除去して、拭き残しを防止する。そして、その後の2回目の払拭は、吸収力の低い状態の払拭ウェブ110で払拭することにより、1回目の払拭時に発生した払拭跡を除去するとともに、ノズル穴からのインクの引き出しを防止する。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面30C、30M、30Y、30Kをクリーニングすることができる。
【0099】
ここで、払拭ウェブ110の吸収力の切り換えは、払拭ウェブ110を湿潤させることにより行われ、払拭ウェブ110に洗浄液を所定量吸収させることにより、吸収力が低下させられる。したがって、2回目の払拭は、払拭ウェブ110の湿潤させた領域(湿潤領域)を用いて行われる。
【0100】
そして、本実施の形態のヘッドクリーニング装置70では、この2回目の払拭で使用する湿潤領域を、ノズル面30Cのノズルが形成されていない領域を払拭ウェブ110で払拭することにより生成する。すなわち、図8に示すように、ノズル90は、ノズル面30の幅方向の全域に形成されているのではなく、記録対称とする用紙の幅に対応して形成される。したがって、通常、その両端には、ノズルが形成されていない領域(ノズル非形成領域)が形成される。このノズル非形成領域(図8において、両端の斜線領域)は、比較的クリーンな状態のため、この領域を払拭しても、払拭ウェブ110は汚れない。したがって、再度利用しても、ノズル面30を汚すことはない。
【0101】
このように、本実施の形態のヘッドクリーニング装置70では、1回目の払拭によりノズル非形成領域を払拭することにより生成される払拭ウェブ110の湿潤領域を用いて2回目の払拭を行う。
【0102】
なお、図8に示すヘッド16の例では、ノズル面30にノズル90が千鳥状に配置されて、ノズル列が形成されている。このようなノズル90の配置構成とすることにより、ヘッド16の長手方向(=用紙の搬送方向と直交する方向=用紙の幅方向)に投影される実質的なノズル90の間隔を狭めることができ、ノズル90の高密度化を図ることができる。
【0103】
以下、本実施の形態のヘッドクリーニング装置70を用いた具体的なヘッド16C、16M、16Y、16Kのクリーニング方法について説明する。
【0104】
まず、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに付着しているインク由来の付着物を溶解するためにノズル面30C、30M、30Y、30Kに洗浄液を塗布する。
【0105】
洗浄液の塗布は、ヘッド16C、16M、16Y、16Kを描画位置からメンテナンス位置に向けて移動(あるいは、メンテナンス位置から描画位置に移動)させるとともに、洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kから各ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに向けて洗浄液を噴射することにより行われる。具体的には、次のように行われる。すなわち、ヘッド16C、16M、16Y、16Kを描画位置からメンテナンス位置に向けて移動させると、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kの上を通過するので、そのヘッド16C、16M、16Y、16Kの通過に合わせて、各洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kから洗浄液を噴射する。これにより、ノズル非形成領域を含むノズル面30C、30M、30Y、30Kの全面に洗浄液が塗布される。
【0106】
洗浄液の塗布は、1度でもよいし、複数回実行するようにしてもよい。複数回実効する場合は、ヘッド16C、16M、16Y、16Kを複数回往復させて塗布する。
【0107】
洗浄液の塗布が終了すると、ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、一度、描画位置に復帰する。この後、1回目の払拭清掃が行われる。
【0108】
上記のように、この1回目の払拭は、通常の吸収力の高い状態の払拭ウェブを使用して行われる。すなわち、払拭ウェブ110の湿潤していない未使用の領域(非湿潤領域)を使用して行われる。具体的には、次のように行われる。
【0109】
まず、払拭ウェブの非湿潤領域の位置出し(頭出し)を行う。すなわち、非湿潤領域が押圧ローラ118に巻き掛けられるように(非湿潤領域がノズル面に当接するように)、払拭ウェブ110の位置出しを行う。この工程は、湿潤領域検出センサ124の出力に基づいて行われ、湿潤領域検出センサ124で湿潤領域が検出されなくなるまで、払拭ウェブ110を巻取リール116に巻き取ることにより行われる。
【0110】
このようにして、非湿潤領域の位置出しを行ったのち、払拭ウェブ110を巻き取り方向に一定の速度で走行させながら、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧当接させて、ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃する。具体的には、次のように行われる。
【0111】
まず、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、メンテナンス位置に向けて送られる。メンテナンス位置に向けて送られたヘッド16C、16M、16Y、16Kは、図9(a)に示すように、その一方側の端部(メンテナンス位置側の端部)が、押圧ローラ118の設置位置に到達すると一旦停止する。なお、このとき、クリーナ100C、100M、100Y、100Kの押圧ローラ118は、所定の退避位置に位置している。
【0112】
ヘッド16C、16M、16Y、16Kが停止すると、昇降用シリンダ126が駆動され、押圧ローラ118が押圧位置に移動する。この結果、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110が押圧当接される(図9(b)及び図7(a)参照)。
【0113】
この後、巻取モータ122が駆動されて、払拭ウェブ110が一定の速度で巻取リール116に巻き取られるとともに、ヘッド送りモータ60が駆動されて、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、メンテナンス位置に向けて一定の速度で送られる。この結果、図9(c)に示すように、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに沿って払拭ウェブ110が摺接され、ノズル面30C、30M、30Y、30Kが、走行する払拭ウェブ110によって払拭清掃される。
【0114】
なお、このとき払拭ウェブ110は、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの移動方向と逆方向に走行する。これにより、相対的な速度差を大きくすることができ、清掃効果を高めることができる。
【0115】
メンテナンス位置に向けて送られたヘッド16C、16M、16Y、16Kは、他方側の端部(描画位置側の端部)が、押圧ローラ118の設置位置に達すると、送りが停止される。そして、このヘッド16C、16M、16Y、16Kの送り停止に同期して、払拭ウェブ110の走行も停止される。これにより、1回目の払拭清掃が終了し、ノズル面30C、30M、30Y、30Kの全面が、払拭ウェブ110によって払拭清掃される。
【0116】
さて、上記のように、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kには、その両端部にノズル非形成領域が形成されており、図9(d)に示すように、1回目の払拭清掃では、このノズル非形成領域も払拭清掃される。そして、2回目の払拭清掃は、このノズル非形成領域を払拭清掃することにより払拭ウェブ110に形成される湿潤領域を用いて行われる。
【0117】
ここで、湿潤領域は、すでに巻取リール116側に巻き取られているので、所要の巻き戻し動作が行われる。すなわち、図9(e)に示すように、各ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、払拭ウェブ110の走行が停止されると、一旦、押圧ローラ118が退避位置に退避し、ノズル非形成領域を払拭した分、繰出リール114側に払拭ウェブ110が巻き戻される。
【0118】
なお、巻き戻し量は、ノズル非形成領域の長さ、払拭ウェブ110の走行速度、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの送り速度等から演算により求められる。
【0119】
以上のように、ノズル非形成領域を払拭した分、払拭ウェブ110を繰出リール114側に巻き戻して、2回目の払拭清掃のための湿潤領域を形成する。
【0120】
この湿潤領域の巻き戻し処理が行われる一方、ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、その一方側の端部が、押圧ローラ118の設置位置に位置するように戻される。
【0121】
湿潤領域の巻き戻し処理が完了し、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの一方側の端部が、押圧ローラ118の設置位置に位置すると、押圧ローラ118が押圧位置に移動し、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110が押圧当接される(図9(b)及び図7(a)参照)。
【0122】
この後、巻取モータ122が駆動されて、払拭ウェブ110が一定の速度で巻取リール116に巻き取られるとともに、ヘッド送りモータ60が駆動されて、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、メンテナンス位置に向けて一定の速度で送られる。この結果、図9(f)に示すように、払拭ウェブ110の湿潤領域が、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに摺接され、ノズル面30C、30M、30Y、30Kが、払拭ウェブ110の湿潤領域によって払拭清掃される。
【0123】
なお、この2回目の払拭清掃時も払拭ウェブ110は、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの移動方向と逆方向に走行する。これにより、相対的な速度差を大きくすることができ、清掃効果を高めることができる。
【0124】
なお、巻き戻した湿潤領域は限られているので、巻き戻した分の湿潤領域を用いてノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃できるように、2回目の払拭清掃は、払拭ウェブ110の走行速度が調整されて行われる。
【0125】
このように、2回目の払拭清掃は、払拭ウェブ110の湿潤領域を用いて行われる。そして、このように湿潤領域を用いてノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃することにより、1回目の払拭時に払拭跡が発生している場合には、これを効果的に除去することができる。また、このように湿潤領域を用いてノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃することにより、払拭によってノズル穴からのインクが引き出されるのも防止することができる(払拭跡が生じるのを防止できる。)。
各ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの他方側の端部が、押圧ローラ118を通過すると、払拭ウェブ110の走行が停止される。
【0126】
一方、ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、そのままメンテナンス位置に向けて送られる。
【0127】
払拭ウェブ110の走行が停止されたヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、押圧ローラ118が退避位置に退避され、これにより、クリーニング動作が終了する。
【0128】
この後、ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、必要に応じて、次回のクリーニングのために、非湿潤領域の位置出しが行われる。
【0129】
以上説明したように、本実施の形態のヘッドクリーニング装置70では、一度ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭ウェブ110で払拭清掃したのち、払拭ウェブ110の吸収力を低下させて、再度ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭ウェブ110で払拭清掃する。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面30C、30M、30Y、30Kをクリーニングすることができる。また、このように払拭ウェブ110を湿潤させて吸収力を切り換えることにより、使用可能な払拭ウェブの選択の幅も拡大することができる。
【0130】
なお、本例では、非湿潤領域を用いた1回目の払拭清掃は、1回だけ行う構成としているが、複数回行うようにしてもよい。すなわち、払拭ウェブ110を押圧当接させた状態でヘッド16C、16M、16Y、16Kを複数回往復移動させて、1回目の払拭清掃を行うようにしてもよい。同様に、湿潤領域を用いた2回目の払拭清掃も複数回行うようにしてもよい。
【0131】
また、本例では、湿潤領域を用いた2回目の払拭清掃を行う際、払拭ウェブ110をヘッド16C、16M、16Y、16Kの移動方向に対して逆方向に走行させているが、同方向に走行させて払拭清掃するようにしてもよい。この場合、ヘッド16C、16M、16Y、16Kをメンテナンス位置に向けて一定の速度で送りつつ、ノズル非形成領域を払拭清掃した分、払拭ウェブ110を巻き戻しながら、払拭ウェブ110をノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧当接させる。これにより、払拭ウェブ110をヘッド16C、16M、16Y、16Kの移動方向と同じ方向に走行させながら、ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃することができる。
【0132】
また、払拭ウェブ110を走行させずに停止させた状態で湿潤領域を用いた2回の払拭清掃を行うようにしてもよい。
【0133】
なお、2回目の払拭清掃時に使用する湿潤領域の湿潤量は、使用する払拭ウェブ110の吸収能力等に応じて適宜設定することが好ましい(一例としては、吸収力が20%程度低下するように湿潤させる。)。この場合、2回目の払拭清掃時におけるヘッド16C、16M、16Y、16Kと払拭ウェブ110との相対的な速度差が大きくなるほど、湿潤量を増やすことが好ましい。これにより、適切に吸収力を調整することができ、適切に2回目の払拭清掃を行うことができる。
【0134】
なお、湿潤量を調整する場合は、ノズル非形成領域に塗布する洗浄液の塗布量を調整して行う。
【0135】
また、本実施の形態のヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kには、それぞれ湿潤領域検出センサ124を設けているが、湿潤領域検出センサ124は、必ずしも設置する必要はなく、払拭ウェブ110の巻き取り、巻き戻し量を制御して、所要の位置出しを行うようにしてもよい。なお、湿潤領域検出センサ124を設置することにより、正確な位置出しが可能になるとともに、払拭ウェブ110の有無も検出することができるようになる。
【0136】
また、本例では、湿潤領域を形成する際、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに形成されたノズル非形成領域を走行する払拭ウェブ110で払拭することにより形成しているが、1回目の払拭清掃後、ノズルからインクを滲み出させ、これを払拭ウェブ110で払拭することにより形成することもできる。この場合、必ずしも全てのノズルからインクを滲み出させる必要はなく、湿潤領域を形成するのに必要な領域のノズルからインクを滲み出させればよい。
【0137】
また、通常、払拭ウェブ110に吸収された洗浄液は濡れ広がるので、未使用の領域に濡れ広がった領域を湿潤領域として使用するようにしてもよい。
【0138】
また、本例では、インク由来の付着物が溶解するために、事前にノズル面30C、30M、30Y、30Kに洗浄液を塗布して、ノズル面30C、30M、30Y、30Kをウェット化しているが、ノズル面30C、30M、30Y、30Kをウェット化する方法は、これに限定されるものではない。たとえば、インクをウェット液に用いることもできる。この場合、ノズル面30C、30M、30Y、30Kに形成されたノズルからインクを滲み出させて、ノズル面30C、30M、30Y、30Kをウェット化する。また、この場合、キャップでノズル面30C、30M、30Y、30Kを封止して、キャップ内を減圧し、ノズル面30C、30M、30Y、30Kにインクを吸引して、ノズルからインクを滲み出させる。あるいは、インクタンクからヘッドまでの流路を加圧してノズル面からインクを滲み出させる。
【0139】
なお、このようにインクをウェット液として使用する場合、洗浄液塗布ノズル80C、80M、80Y、80Kを省くことができる。
【0140】
[第2の実施の形態]
図10は、ヘッドクリーナの第2の実施の形態の正面図である。同図に示すように、本実施の形態のヘッドクリーナ200には、払拭ウェブ110に洗浄液を付与して湿潤させるための湿潤液付与ノズル210が備えられている。
【0141】
なお、この湿潤液付与ノズル210が備えられている点以外は上述した第1の実施の形態のヘッドクリーナ100と同じである。したがって、ここでは、この湿潤液付与ノズル210についてのみ説明する。
【0142】
図10に示すように、湿潤液付与ノズル210は、繰出ガイドローラ134と押圧ローラ118との間(巻取リール116に巻き取る時の払拭ウェブ110の走行方向に対して押圧ローラ118の上流側)に設置されている。この湿潤液付与ノズル210は、払拭ウェブ110の幅に対応した噴射口を有しており、繰出ガイドローラ134と押圧ローラ118との間を走行する払拭ウェブ110(巻取リール116に巻き取る時の払拭ウェブ110の走行方向に対して押圧ローラ118の上流側の払拭ウェブ110)に湿潤液を噴射して、払拭ウェブ110を湿潤させる。これにより、ヘッド16のノズル面30に押圧当接される前の払拭ウェブ110を湿潤させることができる。
【0143】
湿潤液は、湿潤液付与ノズル210に接続された湿潤液供給パイプ212を介して湿潤液タンク214から供給され、その湿潤液供給パイプ212の途中に設けられた湿潤液噴射ポンプ216を駆動することにより、湿潤液付与ノズル210から湿潤液が噴射される。
【0144】
[ヘッドクリーニング方法]
次に、本実施の形態のヘッドクリーナを用いたヘッドのクリーニング方法について説明する。
【0145】
払拭ウェブ110の吸収力を切り換えて、ノズル面30C、30M、30Y、30Kを2回に分けて払拭する点は上述した第1の実施の形態のクリーニング方法と同じである。すなわち、1回目は、通常の吸収力の高い状態の払拭ウェブ110で払拭し、2回目は、湿潤させて吸収力の低い状態の払拭ウェブ110で払拭する。
【0146】
まず、払拭ウェブの非湿潤領域の位置出しが行われる。上記のように、1回目の払拭は、通常の吸収力の高い状態の払拭ウェブ、すなわち、湿潤していない未使用の領域(非湿潤領域)を使用して行われるので、この非湿潤領域の位置出しが行われる。なお、非湿潤領域の位置出しが既に完了している場合は、この処理は不要である。
【0147】
非湿潤領域が位置出しされると、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、メンテナンス位置に向けて送られる。メンテナンス位置に向けて送られたヘッド16C、16M、16Y、16Kは、図11(a)に示すように、その一方側の端部(メンテナンス位置側の端部)が、押圧ローラ118の設置位置に到達すると一旦停止する。なお、このとき、クリーナ100C、100M、100Y、100Kの押圧ローラ118は、所定の退避位置に位置している。
【0148】
ヘッド16C、16M、16Y、16Kが停止すると、昇降用シリンダ126が駆動され、押圧ローラ118が押圧位置に移動する。この結果、各ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110が押圧当接される(図11(b)及び図7(a)参照)。
【0149】
この後、巻取モータ122が駆動されて、払拭ウェブ110が一定の速度で巻取リール116に巻き取られるとともに、ヘッド送りモータ60が駆動されて、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、メンテナンス位置に向けて一定の速度で送られる。この結果、図11(c)に示すように、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに沿って払拭ウェブ110が摺接され、ノズル面30C、30M、30Y、30Kが、走行する払拭ウェブ110によって払拭清掃される。
【0150】
なお、このとき払拭ウェブ110は、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの移動方向と逆方向に走行する。これにより、相対的な速度差を大きくすることができ、清掃効果を高めることができる。
【0151】
メンテナンス位置に向けて送られたヘッド16C、16M、16Y、16Kは、他方側の端部(描画位置側の端部)が、押圧ローラ118の設置位置に達すると、送りが停止される。そして、このヘッド16C、16M、16Y、16Kの送り停止に同期して、払拭ウェブ110の走行も停止される。これにより、1回目の払拭清掃が終了し、ノズル面30C、30M、30Y、30Kの全面が、払拭ウェブ110によって払拭清掃される。
【0152】
1回目の払拭清掃が終了すると、図11(d)に示すように、押圧ローラ118が一旦退避位置に退避する。また、ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、その一方側の端部が、押圧ローラ118の設置位置に位置するように戻される。
【0153】
ヘッド16C、16M、16Y、16Kの一方側の端部が、押圧ローラ118の設置位置に位置すると、図11(e)に示すように、押圧ローラ118が押圧位置に移動し、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに押圧ローラ118に巻き掛けられた払拭ウェブ110が押圧当接される。
【0154】
この後、巻取モータ122が駆動されて、払拭ウェブ110が一定の速度で巻取リール116に巻き取られるとともに、ヘッド送りモータ60が駆動されて、ヘッド16C、16M、16Y、16Kが、メンテナンス位置に向けて一定の速度で送られる。また、これと同時に湿潤液噴射ポンプ216が駆動され、湿潤液付与ノズル210から払拭ウェブ110に向けて湿潤液が噴射される。これにより、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに摺接される前の払拭ウェブ110(=押圧ローラ118の上流側の払拭ウェブ110)に湿潤液が付与され、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに摺接される前の払拭ウェブ110が湿潤される(湿潤領域が形成される。)。そして、このように湿潤液付与ノズル210から払拭ウェブ110に向けて湿潤液を噴射しながら払拭ウェブ110を巻取リール116に巻き取ることにより、図11(f)に示すように、払拭ウェブ110の湿潤領域が、ヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに摺接され、ノズル面30C、30M、30Y、30Kが、払拭ウェブ110の湿潤領域によって払拭清掃される。
【0155】
このように、2回目の払拭清掃は、払拭ウェブ110の湿潤領域を用いて行われる。そして、このように湿潤領域を用いて2回目の払拭清掃を行うことにより、1回目の払拭時に払拭跡が発生している場合であっても、これを効果的に除去することができる。また、このように湿潤領域を用いて2回目の払拭清掃を行うことにより、払拭によってノズル穴からのインクが引き出されるのも防止することができる。
【0156】
各ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、ヘッド16C、16M、16Y、16Kの他方側の端部が、押圧ローラ118を通過すると、払拭ウェブ110の走行が停止される。また、これと同時に湿潤液噴射ポンプ216の駆動も停止される。
【0157】
一方、ヘッド16C、16M、16Y、16Kは、そのままメンテナンス位置に向けて送られる。
【0158】
払拭ウェブ110の走行が停止されたヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、押圧ローラ118が退避位置に退避され、これにより、クリーニング動作が終了する。
【0159】
この後、ヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kは、必要に応じて、次回のクリーニングのために、非湿潤領域の位置出しが行われる。
【0160】
以上説明したように、本実施の形態においても、一度ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭ウェブ110で払拭清掃したのち、払拭ウェブ110の吸収力を低下させて、再度ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭ウェブ110で払拭清掃する。これにより、払拭跡や拭き残しを生じさせることなくノズル面30C、30M、30Y、30Kをクリーニングすることができる。また、このように払拭ウェブ110を湿潤させて吸収力を切り換えることにより、使用可能な払拭ウェブの選択の幅も拡大することができる。
【0161】
なお、本例では、非湿潤領域を用いた1回目の払拭清掃は、1回だけ行う構成としているが、複数回行うようにしてもよい。すなわち、払拭ウェブ110を押圧当接させた状態でヘッド16C、16M、16Y、16Kを複数回往復移動させて、1回目の払拭清掃を行うようにしてもよい。同様に、湿潤領域を用いた2回目の払拭清掃も複数回行うようにしてもよい。
【0162】
また、本例では、湿潤領域を用いた2回目の払拭清掃を行う際、払拭ウェブ110をヘッド16C、16M、16Y、16Kの移動方向に対して逆方向に走行させているが、同方向に走行させて払拭清掃するようにしてもよい。この場合、たとえば、メンテナンス位置から描画位置に向かうヘッド16C、16M、16Y、16Kのノズル面30C、30M、30Y、30Kに払拭ウェブ110を押圧当接させて、ノズル面30C、30M、30Y、30Kを払拭清掃する。
【0163】
また、払拭ウェブ110を走行させずに停止させた状態で2回の払拭清掃を行うようにしてもよい。
【0164】
なお、2回目の払拭清掃時に使用する湿潤領域の湿潤量は、使用する払拭ウェブ110の吸収能力等に応じて適宜設定することが好ましい(一例としては、吸収力が20%程度低下するように湿潤させる。)。この場合、2回目の払拭清掃時におけるヘッド16C、16M、16Y、16Kと払拭ウェブ110との相対的な速度差が大きくなるほど、湿潤量(湿潤液付与ノズル210から付与する湿潤液の供給量)を増やすことが好ましい。これにより、適切に吸収力を調整することができ、適切に2回目の払拭清掃を行うことができる。
【0165】
また、本実施の形態のヘッドクリーナ100C、100M、100Y、100Kには、それぞれ湿潤領域検出センサ124を設けているが、湿潤領域検出センサ124は、必ずしも設置する必要はなく、払拭ウェブ110の巻き取り、巻き戻し量を制御して、所要の位置出しを行うようにしてもよい。なお、湿潤領域検出センサ124を設置することにより、正確な位置出しが可能になるとともに、払拭ウェブ110の有無も検出することができるようになる。
【0166】
また、上記一連の実施の形態では、ラインヘッドのノズル面を払拭清掃する場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。いわゆるシャトルスキャン方式のヘッドのノズル面を払拭清掃する場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0167】
10…描画部、12…用紙(記録媒体)、14…描画ドラム、16(16C、16M、16Y、16K)…ラインヘッド、18…回転軸、20…本体フレーム、22…軸受、24…グリッパ、26…搬送ドラム、28…搬送ドラム、30(30C、30M、30Y、30K)…ノズル面、40…ヘッド支持フレーム、42L、42R…サイドプレート、44…連結フレーム、46C、46M、46Y、46K…取付部、48C、48M、48Y、48K…被取付部、50…ガイドレール、52…スライダ、54…ネジ棒、56…ナット部、58…軸受、60…ヘッド送りモータ、62…保湿ユニット、70…ヘッドクリーニング装置、80(80C、80M、80Y、80K)…洗浄液塗布ノズル、90…ノズル、100(100C、100M、100Y、100K)…ヘッドクリーナ、110…払拭ウェブ、110A、110B…巻芯、112…本体フレーム、112A…底面部、112B…壁面部、114…繰出リール、114A…軸部、116…巻取リール、116A…軸部、118…押圧ローラ、118A…軸部、120…巻戻モータ、122…巻取モータ、124…湿潤領域検出センサ、126…昇降用シリンダ、130…軸受、131…軸受、132…軸受、134…繰出ガイドローラ、134A…軸部、136…軸受、138…巻取ガイドローラ、138A…軸部、140…軸受、142…巻戻駆動ギア、144…巻戻従動ギア、146…巻戻アイドルギア、146A…軸部、148…軸受、150…巻取駆動ギア、152…巻取従動ギア、154…巻取アイドルギア、154A…軸部、156…軸受、200…ヘッドクリーナ、210…湿潤液付与ノズル、212…湿潤液供給パイプ、214…湿潤液タンク、216…湿潤液噴射ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する帯状の液体吸収体が巻き掛けられた押圧部材をヘッドのノズル面に押圧当接させ、該押圧部材を前記ヘッドのノズル面に沿って摺動させることにより、前記ヘッドのノズル面を前記液体吸収体で払拭清掃するヘッドクリーニング方法において、
前記液体吸収体の非湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃する第1清掃工程と、
前記液体吸収体に湿潤領域を形成する湿潤領域形成工程と、
前記液体吸収体の湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃する第2清掃工程と、
からなることを特徴とするヘッドクリーニング方法。
【請求項2】
前記湿潤領域形成工程では、前記液体吸収体の走行方向に対して前記押圧部材の上流側の前記液体吸収体に液体付与手段から液体を付与して前記湿潤領域を形成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項3】
前記第1清掃工程は、事前に前記ヘッドのノズル面に液体を付与して行われ、前記湿潤領域は、前記ノズル面のノズル形成領域以外の領域に付与された前記液体を前記液体吸収体に吸収させて形成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項4】
前記湿潤領域形成工程は、前記ヘッドのノズル面に形成されたノズルから液体を滲み出させ、該液体を前記液体吸収体に吸収させて前記湿潤領域を形成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項5】
前記第1清掃工程は、前記押圧部材に対する前記ヘッドの相対的な移動方向に対して、前記液体吸収体を逆方向に走行させて行うことを特徴とする請求項1−4のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項6】
前記第2清掃工程は、前記押圧部材に対する前記ヘッドの相対的な移動方向に対して、前記液体吸収体を逆方向に走行させて行うことを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項7】
前記第2清掃工程は、前記押圧部材に対する前記ヘッドの相対的な移動方向に対して、前記液体吸収体を同方向に走行させて行うことを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項8】
前記湿潤領域形成工程では、前記第2清掃工程における前記ヘッドと前記液体吸収体との相対的な速度差が大きくなるほど、湿潤量を増やして前記湿潤領域を形成することを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング方法。
【請求項9】
走行する帯状の液体吸収体が巻き掛けられた押圧部材をヘッドのノズル面に押圧当接させ、該押圧部材を前記ヘッドのノズル面に沿って摺動させることにより、前記ヘッドのノズル面を前記液体吸収体で払拭清掃するヘッドクリーニング装置において、
前記液体吸収体の走行方向に対して前記押圧部材の上流側の前記液体吸収体に液体を付与して湿潤させる液体付与手段と、
前記液体吸収体の走行、前記押圧部材の摺動、及び、前記液体付与手段による液体の付与を制御する制御手段と、
を備え、前記制御手段は、前記液体吸収体の非湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃したのち、前記液体付与手段から前記液体吸収体に液体を付与して、前記液体吸収体に湿潤領域を形成し、該湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃するように制御することを特徴とするヘッドクリーニング装置。
【請求項10】
前記液体付与手段は、前記ヘッドと前記液体吸収体との相対的な速度差に応じて付与する液体量が可変されることを特徴とする請求項9に記載のヘッドクリーニング装置。
【請求項11】
走行する帯状の液体吸収体が巻き掛けられた押圧部材をヘッドのノズル面に押圧当接させ、該押圧部材を前記ヘッドのノズル面に沿って摺動させることにより、前記ヘッドのノズル面を前記液体吸収体で払拭清掃するヘッドクリーニング装置において、
前記ヘッドのノズル面に液体を付与する液体付与手段と、
前記液体吸収体の走行、前記押圧部材の摺動、及び、前記液体付与手段による液体の付与を制御する制御手段と、
を備え、前記制御手段は、前記液体付与手段から前記ヘッドのノズル面に液体を付与したのち、前記液体吸収体の非湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を払拭清掃し、該払拭清掃後、前記ノズル面のノズル形成領域以外の領域を払拭することにより形成される湿潤領域を用いて、前記ヘッドのノズル面を再度払拭清掃するように制御することを特徴とするヘッドクリーニング装置。
【請求項12】
前記液体吸収体の湿潤領域を検出する湿潤領域検出手段を備えたことを特徴とする請求項9−11のいずれか一項に記載のヘッドクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−234666(P2010−234666A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85584(P2009−85584)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】