説明

ヘッドマウント装置及び装着フレーム

【課題】視力矯正用眼鏡を掛けたままでもヘッドマウント装置を頭部に安定的に装着することができるヘッドマウント装置を提供する。
【解決手段】画像情報に応じた画像を使用者の眼の網膜に投影する投影ユニットと、使用者の眼鏡の上部に装着可能に構成され、前記投影ユニットを搭載可能な装着フレームと、前記装着フレームに設けられ装着時に使用者の眼前に位置するフロントフレームと、前記フロントフレームの両端に連設された左右テンプルと、前記フロントフレームの中央部に設けられ、装着時に使用者の額部に当接可能な額パッドと、を備え、前記左右テンプルの略後半部分には、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲するロングモダン部が形成されることを特徴とするヘッドマウント装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像を表す画像光を使用者の眼に投影する投影ユニットを頭部に装着して使用するヘッドマウント装置及び装着フレームに関するものであり、特に使用者が眼鏡をかけている状態で頭部に装着して使用することができるヘッドマウント装置及び装着フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドマウント装置は、特許文献1に開示されているように、画像光を使用者の眼に投影する投影ユニットを頭部装着具を介して頭部に装着して、使用者の眼の網膜上に画像光を二次元方向に走査することにより使用者に画像情報に応じた画像を視認させる網膜走査ディスプレイとして構成されている。また、網膜走査ディスプレイ以外にも、液晶素子などの空間光変調素子を利用したヘッドマウント装置も知られている。ヘッドマウント装置には、外光により認識される背景に、網膜上に走査される画像光による画像を重ねて使用者に視認させるシースルー型のものがある。
【0003】
そして、投影ユニットを頭部に装着するための頭部装着具としては、眼鏡型の装着フレームのテンプル、或はテンプル始端のヨロイ部にブラケットを介して投影ユニットを着脱自在に装着する構成としている。一般的にテンプルは、通常の眼鏡と同様に頭部に沿って伸延し後端部分を耳にかけて使用するように構成されている。
【0004】
特に一定の重量を有する投影ユニットを頭部に安定して装着し得るように眼鏡型の装着フレームのテンプルには種々の工夫が施されている。特許文献1では、左右テンプルの中途部を前方向と後方向にV字状に折曲して平面視、側面視で略Z字状に形成し、使用者の頭部の形状に応じて左右テンプルを可及的にフィットさせることができるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239282公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、かかる構成の左右テンプルを有する眼鏡型の装着フレームは、通常の眼鏡をかけていない者のために構成されている。通常の眼鏡をかけている使用者、例えば、近視や乱視等の視力矯正用の眼鏡を必要としている使用者にとっては、一旦眼鏡を外して改めて眼鏡型の装着フレームを装着し直さなければならない。
【0007】
従って、上述したようなシースルー型のヘッドマウント装置の場合、画像光を眼に投影しながら画像を視認している間は、本来の眼鏡で自己の視力を矯正しながら投影画像と重複して周辺を視認するということができない。仮にヘッドマウント装置の眼鏡型の装着フレームを視力矯正用の眼鏡と共に装着しようとすると両方のテンプルが重なり、双方のモダン部を耳に掛ける構成が複雑となると共に、視力矯正用の眼鏡の前部にヘッドマウント装置のフロントフレームを上下で重ねることになる。そのため、投影ユニットを装着した装着フレームの安定性を欠き、頭部装着機能に支障をきたした。
【0008】
本発明は、使用者が眼鏡を掛けたままでもヘッドマウント装置を頭部に安定的に装着することができるヘッドマウント装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、画像情報に応じた画像を使用者の眼の網膜に投影する投影ユニットと、使用者の眼鏡の上部に装着可能に構成され、前記投影ユニットを搭載可能な装着フレームと、前記装着フレームに設けられ、装着時に使用者の眼前に位置するフロントフレームと、前記フロントフレームの両端に連設された左右テンプルと、前記フロントフレームの中央部に設けられ、装着時に使用者の額部に当接可能な額パッドと、を備え、前記左右テンプルの略後半部分には、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲するロングモダン部が形成されることを特徴とするヘッドマウント装置を提供するものである。
【0010】
また、ロングモダン部は、左右テンプルが側頭部と接する位置から平面視で内方に湾曲し始めて後頭部近辺に至ることを特徴とする。
また、ロングモダン部は、左右テンプルが側頭部と接する位置から側面視で下方に湾曲し始めて後頭部近辺に至ることを特徴とする。
また、ロングモダン部の最後端は、頭部外側方に湾曲した当接緩衝部としたことを特徴とする。
また、フロントフレームの下方には、フロントフレーム中央部を使用者の眼鏡の上端縁部に載置するための置台用パッドを配設したことを特徴とする。
また、額パッドの額当接面は、使用者の額面に沿って係合する湾曲面としたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明は、使用者の眼鏡の上部に装着可能に構成された装着フレームであって、装着時に使用者の眼前に位置するフロントフレームと、前記フロントフレームの両端に連設された左右テンプルと、前記フロントフレームの中央部に設けられ、装着時に使用者の額部に当接可能な額パッドと、を備え、前記左右テンプルの略後半部分には、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲するロングモダン部が形成されることを特徴とする装着フレームを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲状に形成したロングモダン部により、眼鏡をかけたままの使用者がヘッドマウント装置を着用する場合に、額パッドとロングモダン部との間で頭部を挟み込むような状態でヘッドマウント装置を装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態のヘッドマウント装置の装着フレームの構成を示す図である。
【図2】本実施形態のヘッドマウント装置の装着フレームの装着状態を示す側面図である。
【図3】本実施形態のヘッドマウント装置の構成を示す図である。
【図4】本実施形態のヘッドマウント装置の電気的構成及び光学的構成を示す図である。
【図5】本実施形態のヘッドマウント装置の装着フレームの装着状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の最良の実施形態は、画像情報に応じた画像を使用者の眼の網膜に投影する投影ユニットを眼鏡型の装着フレームに装着したヘッドマウント装置において、装着フレームのフロントフレームの両端に左右テンプルを連設すると共に、フロントフレームの中央部には、額パッドを設け、しかも、左右テンプルの略後半部分は、使用者の側頭部に沿って湾曲状に形成したロングモダン部としている。
【0015】
すなわち、ロングモダン部は、左右テンプルが側頭部と接する位置から、平面視かつ側面視で内方かつ下方に湾曲し始めて後頭部のやや下部近辺に至るように構成される。更には、ロングモダン部の後端部内側面には上下方向のスリットを形成した滑り止め部が形成される。ロングモダン部の最後端には頭部外側方にR状に折曲した当接緩衝部が形成される。フロントフレームの下方に配設された置台用パッドによって、フロントフレームを使用者の視力矯正用眼鏡の上端縁部に載置可能となる。装着時に使用者の額部に当接可能な額パッドの額当接面は、使用者の額面に沿って係合する湾曲面としている。
【0016】
以下、本発明の具体的な実施例を、図面を参照して詳説する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係るヘッドマウント装置10は、眼鏡型の装着フレーム100に投影ユニット30を着脱自在に装着可能に構成している。かかる装着フレーム100は、使用者の眼鏡の上部に装着可能に構成され、投影ユニット30を搭載可能に構成される。装着フレーム100は、細幅状でやや左右に湾曲した薄帯体のフロントフレーム110と、その左右に設けたヨロイ部112と、このヨロイ部112にヒンジ113を介して折畳み自在に連設した一対の左右テンプル114,114とよりなる。
【0018】
一対の左右テンプル114,114は中途部にZ状の弾性屈曲部116を介在している。具体的には、左右それぞれのテンプル114は、図2に示すように、ヘアピン状に中途で鋭角に折り返して形成された平面視略V字形状をなすテンプル前片116aと、このテンプル前片116aに連結されて使用者の側頭部(耳の上部付け根)から後頭部にかけてフィットするよう湾曲させて形成したテンプル後片116bとで構成している。
【0019】
平面視略V字状に形成されたテンプル前片116aは、フロントフレーム110側をなす長片116cと、この長片116cとでV字形状をなす短片116dとからなる。短片116dは、側面視において、長片116cの折曲部116e下端から前方へ向け、やや斜め下方へ伸延させている。短片116dの先端部には、テンプル後片116bがろう付にて接合される。
【0020】
テンプル前片116aには、長片116cの後方側一部と短片116dとにより、後端部に平面視略V字状の第1V字状屈曲部116f及び第2V字状屈曲部116gが形成され、かかる第1V字状屈曲部116f及び第2V字状屈曲部116gにより、側面視において略Z字状の弾性屈曲部116が構成される。かかる左右テンプル114のZ字状の弾性屈曲部116より後方のテンプル後半部は、後述するロングモダン部117を構成している。
【0021】
このように、テンプル114の中途に、側面視における略Z字状の弾性屈曲部116を設けたため、従来の眼鏡などに見られる平面視直線状で側面視横J字状の単純なテンプルに比して、撓み量を更に増やすことができ、異なった顔幅や頭部形状に対し柔軟に対応させることができる。なお、本実施例の装着フレーム100においては、テンプル114の中途に側面視略Z字状の弾性屈曲部116が設けられているが、本発明に係る装着フレームが備えるテンプルとしては、弾性屈曲部116を有しないものであってもよい。
【0022】
左右テンプル114,114の前端には、ユニット装着用ブラケット31が設けられる。投影ユニット30は、フロントフレーム110の一方端の近傍に、このブラケット31を介して着脱自在に取付けられる。フロントフレーム110の中央部には、後述する左右テンプル114,114の後部に設けた後部保持機構としてのロングモダン部117と協動して、使用者の頭部を前後から挟持するように構成した前部保持機構としての前部保持ユニット200が設けられている。なお、投影ユニット30を眼鏡型の装着フレーム100に装着するための構成は、本実施例のユニット装着用ブラケット31に限定されない。投影ユニット30を装着フレーム100に装着するための構成は、例えば、投影ユニット30を装着フレーム100に対して上下方向や左右方向に位置調整可能に支持する位置調整機構を備えたものであってもよい。
【0023】
前部保持ユニット200は、下方開口の断面コ字状の板材の脚部中央を前方に側面視略L字状に折曲して構成した保持フレーム201と、この保持フレーム201の垂直板202の裏面に貼着した額パッド204と、この保持フレーム201の水平板203の下面に貼着した置台用パッド205とより構成されている。
【0024】
また、水平板203は二股状に構成され、左右のそれぞれの下面には置台用パッド205が貼着されている。この二股状の間隔は、使用者が従来の眼鏡を装着した場合に、そのレンズ位置に対応する間隔として構成されている。そのため、従来の眼鏡におけるフロントフレームやレンズリムや裸のレンズ等の上縁部の上面に、フロントフレーム110の置台用パッド205を載置することが可能になる。
【0025】
ここで、図5を用いて従来の眼鏡300の構成を説明しておく。図示するように眼鏡300は、例えば、左右のレンズの周辺を囲んだ玉型形状のリム301,301と、リム301をつなぐブリッジ302と、両端にヨロイ部303とヒンジ304を介して折曲自在に連結した左右一対のテンプル305,305とで構成される。テンプル305の後部、すなわち、テンプル先端の耳にかかる部分はモダン部306で耳あてとして機能するように構成される。
【0026】
かかる従来の眼鏡において、リム301を有しないでレンズに直接孔を穿孔してブリッジ302やヨロイ部303を連結するいわゆるツーポイント型の場合は、レンズが直接に上部に露出しているため前部保持ユニット200における置台用パッド205はレンズの上縁部上面に載置されることになり、結果的には典型的な眼鏡300のリム301上に載置支持されるのと同様である。同様にレンズに玉型形状のリム301をブリッジ302で連結したリム型眼鏡の場合は、左右のリム301の上縁部上面に前部保持ユニット200における置台用パッド205が載置される。なお、本実施形態における従来の眼鏡は、近視や乱視等の視力矯正用眼鏡やサングラス等が相当する。
【0027】
保持フレーム201の垂直板202は、ヘッドマウント装置10の装着フレーム100を頭部に装着した場合に、使用者の額部分が当接する位置になるように構成されている。垂直板202の裏面に貼着した額パッド204の額当接面は、図3に示すように、使用者の額面に沿って係合する湾曲面に形成されている。この湾曲面は、例えば、複数の使用者の額形状を測定することで平均的な額形状を決定し、その平均的な額形状に適合する形状に構成されてもよい。これにより、ヘッドマウント装置10を装着する際に額パッド204の額当接面がより使用者の額面にフィットすることができ、ヘッドマウント装置10を眼鏡300とともに掛ける際の安定性の向上を図ることができる。
【0028】
また、垂直板202の裏面と水平板203の下面にそれぞれ貼着した額パッド204と置台用パッド205は柔軟な材料、例えばエラストマ等より構成しており、額部や眼鏡300のフロントフレーム上面に接触する際の感触や衝撃を緩衝するように構成されている。
【0029】
なお、本実施例では垂直板202の裏面と水平板203の下面とにそれぞれ貼着した額パッド204と置台用パッド205に関して説明しているが、本実施例における額パッド204と置台用パッド205の用語は、垂直板202の裏面と水平板203の下面とにそれぞれ貼着した緩衝材的機能を有する部材としての説明のみならず、側面視略L字状の保持フレーム201における垂直板202と水平板203そのものを指称する場合も含む。
【0030】
以上のように構成された前部保持ユニット200の保持フレーム201をフロントフレーム110に一体に取付けるに際しては、保持フレーム201の水平板203をフロントフレーム110下面に連結手段を介して一体的に取付ける。連結手段としては、接着剤や溶着により固定的に取付ける手段の他に、フロントフレーム110に対する保持フレーム201の位置調整が可能に取付け、使用者の頭部の大きさに対応した調整が可能に構成する場合もある。すなわち、フロントフレーム110に長孔を穿設し、保持フレーム201の水平板203にネジ孔を穿設してボルトにより両者を前後位置調整しながら固定する。このように構成することにより前部保持ユニット200と後述する後部保持機構としてのロングモダン部117との間で使用者の頭部を挟持しながらヘッドマウント装置10を装着する際に使用者の頭部の大きさに対応して保持フレーム201の前後位置を調整することができる。
【0031】
かかる構成のヘッドマウント装置10は、図3に示すように、画像信号に応じた強度のレーザ光を出射するコントロールユニット20と、コントロールユニット20から出射されたレーザ光を伝送する光ファイバケーブル50を備えた伝送ケーブル部51と、頭部に装着することで、伝送されたレーザ光を走査して画像光を形成し、その画像光を使用者の眼に入射することで画像を表示する投影ユニット30と、投影ユニット30を支持する眼鏡型の装着フレーム100とを備えている。
【0032】
なお、伝送ケーブル部51は、後述の投影ユニット30に備えられた水平走査部80及び垂直走査部90と後述の光源ユニット21(図4参照)との間で同期をとるための水平駆動信号61、垂直駆動信号62(図4参照)を伝送する駆動信号伝送用ケーブルや、投影ユニット30に対して電力を供給する電力供給ケーブルなども有している。
【0033】
コントロールユニット20は、内蔵したコンテンツ記憶部に記憶されたコンテンツ情報に基づいて画像信号を形成し、この画像信号に応じた強度のレーザ光を伝送ケーブル部51の光ファイバケーブル50へ出射する。また、コントロールユニット20には、外部入出力端子24が形成されており、外部からの画像信号を入力したり、図示しないパーソナルコンピュータ等との間で画像信号を形成するためのコンテンツ情報などの送受信を可能としている。なお、ここでコンテンツ情報とは、文字を表示させるためのデータ、画像を表示させるためのデータ及び動画を表示させるためのデータのうちの少なくとも1つのデータで構成されるものであり、例えば、パソコン等で使用される文書ファイルや画像ファイル、動画ファイル等である。
【0034】
投影ユニット30は、赤、緑、青の各色(R,G,B)毎に強度変調されたレーザ光を2次元方向に走査した画像光を使用者の眼99に入射させ、使用者の眼99の網膜上で画像光を2次元方向に走査することにより、使用者に画像情報に応じた画像を視認させる網膜走査ディスプレイを構成している。
【0035】
この投影ユニット30には、使用者の眼99と対向する位置にハーフミラー9が設けられている。そのため、外光Laはハーフミラー9を透過して使用者の眼99に入射され、投影ユニット30から出射される画像光Lbはハーフミラー9で反射して使用者の眼99に入射されて、使用者は外光Laによる外景に画像光Lbによる画像を重ねて視認することができる。
【0036】
このようにヘッドマウント装置10は、外光を透過しつつ、画像光を使用者の眼99に投射するシースルー型のヘッドマウント装置10としている。なお、本実施形態ではシースルー型のヘッドマウント装置10について説明するが、必ずしもシースルー型である必要はなく、又網膜走査型である必要もない。
【0037】
〔ヘッドマウント装置の電気的構成及び光学的構成〕
次に、図4を参照しながら、ヘッドマウント装置10の電気的構成及び光学的構成について説明する。
【0038】
図4に示すように、ヘッドマウント装置10は、コントロールユニット20と、ハーフミラー9と、投影ユニット30とを備え、コントロールユニット20内には、ヘッドマウント装置10全体の動作を統括制御する制御部22と、この制御部22から供給される画像信号Sから画像情報を画素単位で読み出し、読み出した画素単位の画像情報に基づいてR(赤色),G(緑色),B(青色)の各色毎に強度変調されたレーザ光を生成して出射する光源ユニット21が設けられている。なお、光源ユニット21をコントロールユニット20内に設けるのではなく、投影ユニット30内に設けるようにしてもよい。
【0039】
〔光源ユニット21〕
光源ユニット21には、画像を合成するための要素となる信号等を発生する画像信号供給回路60が設けられている。外部入出力端子24を介して外部接続した図示しない機器類から供給される画像データや、比較的大容量の記憶領域を有するコンテンツ記憶部23に予め記憶されたコンテンツ情報に基づく画像データが制御部22に入力されると、制御部22はその画像データに基づいて画像信号Sを生成して画像信号供給回路60に送る。画像信号供給回路60は、画像信号Sに基づいて、表示画像を形成するための要素となる各信号を画素単位で生成する。すなわち、画像信号供給回路60からは、R(赤色)画像信号60r,G(緑色)画像信号60g,B(青色)画像信号60bが生成されて出力される。また、画像信号供給回路60は、水平走査部80で使用される水平駆動信号61と、垂直走査部90で使用される垂直駆動信号62とをそれぞれ出力する。なお、コンテンツ記憶部23は、例えば、ハードディスクの如き磁気的記憶媒体や、CD−Rの如き光学的記憶媒体や、フラッシュメモリ等とすることができる。
【0040】
光源ユニット21は、3個のレーザ63,64,65と、各レーザ63,64,65より出射されたレーザ光を平行光にコリメートするように設けられたコリメート光学系71,72,73と、このコリメートされたレーザ光を合波するためのダイクロイックミラー74,75,76と、合波されたレーザ光を光ファイバケーブル50に導く結合光学系77とが設けられている。
【0041】
3個のレーザ63,64,65は、それぞれRレーザドライバ66,Gレーザドライバ67,Bレーザドライバ68を介して画像信号供給回路60に接続されている。画像信号供給回路60は、生成したR画像信号60r,G画像信号60g,B画像信号60bに基づいて、各レーザ63,64,65から出射するレーザービームの強度を、それぞれRレーザドライバ66,Gレーザドライバ67,Bレーザドライバ68を介して変調する。
【0042】
〔投影ユニット30〕
光源ユニット21と使用者の眼99との間に位置する投影ユニット30には、光源ユニット21で生成され、光ファイバケーブル50を介して出射されるレーザ光を平行光化するコリメート光学系79と、このコリメート光学系79で平行光化されたレーザ光を画像表示のために水平方向に往復走査する水平走査部80と、水平走査部80で水平方向に走査されたレーザ光を垂直方向に走査する垂直走査部90と、水平走査部80と垂直走査部90との間に設けられた第1リレー光学系85と、このように水平方向と垂直方向に走査されたレーザ光を瞳孔99aへ出射するための第2リレー光学系95とが設けられている。
【0043】
水平走査部80は、レーザ光を水平方向に走査するため偏向面を有する共振型の偏向素子81と、この偏向素子81を共振させて偏向素子81の偏向面を揺動させる駆動信号を水平駆動信号61に基づいて発生する水平走査駆動回路82を備えている。
【0044】
一方、垂直走査部90は、レーザ光を垂直方向に走査するため偏向面を有する偏向素子91と、この偏向素子91の偏向面を揺動させる駆動信号を垂直駆動信号62に基づいて発生する垂直走査制御回路92とを備え、表示すべき画像の1フレームごとに、画像を形成するためのレーザ光を最初の水平走査線から最後の水平走査線に向かって垂直に走査する。ここで「水平走査線」とは、水平走査部80による水平方向への1走査を意味する。
【0045】
また、水平走査部80と垂直走査部90との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系85は、水平走査部80の偏向素子81の偏向面によって水平方向に走査されたレーザ光を垂直走査部90の偏向素子91の偏向面に収束させる。そして、このレーザ光が偏向素子91の偏向面によって垂直方向に走査されて画像光Lbとして、正の屈折力を持つ2つのレンズ95a,95bが直列配置された第2リレー光学系95を介して、眼99の前方に位置させたハーフミラー9で反射されて使用者の瞳孔99aに入射し、網膜99b上に画像信号Sに応じた表示画像が投影される。これにより、使用者はこの画像光Lbを、表示画像として認識することとなる。
【0046】
また、第2リレー光学系95においては、レンズ95aによって、それぞれのレーザ光がそのレーザ光の中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束レーザ光に変換される。そして、レンズ95bによってそれぞれほぼ平行なレーザ光となると共に、これらのレーザ光の中心線が使用者の瞳孔99aに収束するように変換される。このレンズ95a,95bは、走査部で走査された画像光Lb(レーザ光)を使用者の眼99に入射させて、使用者の網膜99b上に画像信号Sに応じた画像を投影する接眼光学系として機能する。
【0047】
なお、本実施例に係るヘッドマウント装置10が備える網膜走査型の投影ユニット30は、投影ユニットの一例であり、投影ユニットとしては、他の構成のものが採用されてもよい。投影ユニットの構成としては、網膜走査型の他、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)等を備える構成が挙げられる。
【0048】
以上のように構成されたヘッドマウント装置10において、本件発明の要旨となるのは、前部保持ユニット200とロングモダン部117とによって使用者の頭部を挟み込むような状態でヘッドマウント装置10を装着する点である。そのための構成として、側面視略L字状の保持フレーム201に貼着した額パッド204と置台用パッド205を有する前部保持ユニット200と共に、一対の左右テンプル114の後半部、すなわち、Z状の弾性屈曲部116(図2参照)の後方部分となる側頭部接触部分後方のロングモダン部117に後部保持機構が形成されている。
【0049】
すなわち、図2及び図3に示すように、眼鏡型の装着フレーム100を頭部に装着する場合には、使用者の側頭部に沿ってロングモダン部117の後端をずらし後頭部まで持っていく。ここで、特にロングモダン部117のこめかみから後ろの側頭部と接する部分より後方にかけては、平面視で内側に湾曲し始めるように構成されている。具体的には、最終的にはロングモダン部117の最後端が、使用者の後頭部近傍に至る長さで湾曲形状とされている。かかるロングモダン部117の形状構成を、後部保持機構とする。
【0050】
このように後部保持機構を構成することにより上述した前部保持ユニット200との間で後頭部を後ろから押圧して装着フレーム100の頭部に対する密着効果をあげて確実な装着機能を果たすことができる。
【0051】
また、左右テンプル114,114のZ状の弾性屈曲部116から後方のロングモダン部117は、側面視で下方に向かって湾曲し始めて後頭部近辺に至るように形成される。このように下方湾曲で後頭部近辺に至るように構成することにより、眼鏡300を着用したままその上方側に眼鏡型の装着フレーム100を掛けると、前後から頭部を挟んでヘッドマウント装置を装着出来る構成としている。さらにこれに加えて、テンプルの後半部分であるロングモダン部117が眼鏡300のテンプルの外側で交差しそのまま側面視で眼鏡300のテンプルの下方に伸延して後頭部近辺に至る状態となる。これにより、ロングモダン部117の一部(眼鏡300のテンプルとの交差部分より前方)が、眼鏡300のテンプルの上方に載置される。これにより、投影ユニット30の荷重を、前部保持ユニット200及びロングモダン部117の各部に加えて眼鏡300のテンプルにも分散することができ、ヘッドマウント装置10の装着安定性を向上させることができる。
【0052】
また、図5に示すように、左右テンプル114,114におけるロングモダン部117の後端部の内側面は上下方向のスリットを入れて、縦方向に凹凸条を形成した滑り止め部117aを形成している。このように滑り止め部117aを構成することにより、ロングモダン部117の後端部を確実に後頭部に当接して滑ることを防止し、後部保持機構を確実に機能させることができる。
【0053】
また、図1及び図3に示すように、左右テンプル114,114におけるロングモダン部117の最後端は頭部外側方に湾曲した当接緩衝部117bとしている。このように当接緩衝部117bを形成することにより、本件発明のヘッドマウント装置10の頭部への装着時にロングモダン部117の最後端を側頭部に沿って後方に滑らせる際、頭部外側方に湾曲した折曲部分先端を側頭部表面と干渉させることなく円滑に滑らせることができ、眼鏡型の装着フレーム100の装着操作を安全に行うことができる。
【0054】
以上説明した本実施例では、ロングモダン部117がテンプル114とは異なる材質により構成される態様を図示しているが、これに限定されない。つまり、本発明に係るロングモダン部としては、テンプル114の材質がそのまま本実施例のロングモダン部117と同様の形状に形成された部分であってもよい。
【0055】
以下、図5を用いて、本発明に係るヘッドマウント装置10を眼鏡300の使用者が使用する場合の手順について説明する。使用者は前述した従来の眼鏡300を着用したままこの眼鏡に重ねて本発明に係るヘッドマウント装置10を装着することになる。
【0056】
まず、ロングモダン部117の後端を使用者の側頭部に沿ってずらしながら後頭部まで持っていく。特にロングモダン部117はこめかみから後ろの側頭部と接する部分から後方にかけて平面視で内側に湾曲し、側面視で下方に湾曲し始めた形状となっているので、最後端が使用者の後頭部近傍に至りかかる後部保持機構(滑り止め部117a等)により頭部を後方から押圧することになる。かかる作業の際に、ロングモダン部117の最後端は、頭部外側方に湾曲した当接緩衝部117bとなっているので、ヘッドマウント装置10を頭部に着脱する際にロングモダン部117の最後端が頭部や顔と安全に接触し従来の眼鏡300に重ねて装着する操作を安心して行える。
【0057】
他方、前部保持機構としての前部保持ユニット200の保持フレーム201では、垂直板202裏面に貼着した額パッド204が使用者の額部分に当接し、ロングモダン部117の後部保持機構(滑り止め部117a等)と協動して使用者の頭部を前後から挟持して眼鏡型の装着フレーム100を確実に装着できる。
【0058】
しかも、前部保持ユニット200においては、保持フレーム201の水平板203の下面に貼着した置台用パッド205を使用者の眼鏡300の上端縁部に載置し、フロントフレーム110の中央部を眼鏡300の前端部で支持し、ヘッドマウント装置10の前部及び後部での頭部挟持機能と前部における載置支持機能との両方でヘッドマウント装置10のより安定的な装着を行うことができる。このように、本実施例に係る装着フレーム100によれば、すでに着用した眼鏡300のフレーム上部において額パッド204や置台用パッド205によってフロントフレーム110を安定して固定することができ、眼鏡300をかけたままの使用者に対して安定したヘッドマウント装置10の装着ができる。
【0059】
上述してきたように本実施形態に係るヘッドマウント装置によれば、以下のような効果がある。
【0060】
(1)フロントフレーム110の中央部には、装着時に使用者の額部に当接可能な額パッド204を設け、しかも左右テンプル114,114の略後半部分は、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲状に形成したロングモダン部117としたので、眼鏡300をかけたままの使用者がヘッドマウント装置10を使用する場合に、額パッド204とロングモダン部117との間で前後から頭部を挟み込むような状態でヘッドマウント装置10を頭部に装着することができ、眼鏡300が何ら支障にならずに確実にヘッドマウント装置10を頭部に装着出来る効果がある。
【0061】
(2)また、ロングモダン部117は、左右テンプル114,114が側頭部と接する位置から平面視で内方に湾曲し始めて後頭部近辺に至るようにしたので、ロングモダン部117が使用者の側頭部から後頭部にかけて可及的に密着することができ、特にロングモダン部117の終端が後頭部近辺に至るためフロントフレーム110の中央の額パッド204との間で前後から頭部を挟んでヘッドマウント装置10を装着出来ることになり、より確実な装着効果を上げることが出来る効果がある。
【0062】
(3)また、ロングモダン部117は左右テンプル114,114が側頭部と接する位置から側面視で下方に湾曲し始めて後頭部近辺に至るようにしたので、前後から頭部を挟んでヘッドマウント装置10を装着出来る構成に加えて、テンプル114の後半部分であるロングモダン部117が眼鏡300のテンプル305で交差してそのまま側面視で眼鏡300のテンプルの下方に伸延して後頭部近辺に至るのでヘッドマウント装置10全体が頭部を挟持した状態となりヘッドマウント装置10の装着安定性を向上することが出来る効果がある。また、ロングモダン部117の一部(眼鏡300のテンプルとの交差部分より前方)が、眼鏡300のテンプルの上方に載置されことにより、投影ユニット30の荷重を、前部保持ユニット200及びロングモダン部117の各部に加えて眼鏡300のテンプルにも分散することができ、ヘッドマウント装置10の装着安定性を向上させることができる効果がある。
【0063】
(4)また、ロングモダン部117の最後端は、頭部外側方に湾曲した当接緩衝部117bとしたので、ヘッドマウント装置を頭部に着脱する際にロングモダン部の最後端が頭部や顔と接触しても安全である。
【0064】
(5)また、フロントフレーム110の下方には、フロントフレーム中央部を使用者の眼鏡300の上端縁部に載置するための置台用パッド205を配設したので、額パッド204とロングモダン部117の後端部との間で前後から頭部を挟んでヘッドマウント装置を装着する際に、ロングモダン部117が眼鏡300のテンプル305と交差して後頭部に至ると共に、置台用パッド205を介して使用者の眼鏡300の上端縁部にフロントフレーム110中央部を載置することができるので、ヘッドマウント装置10の前部と後部の両方で使用者の眼鏡300と重ねることができヘッドマウント装置10のより安定的な装着が出来る効果がある。
【0065】
(6)また、額パッド204の額当接面は、使用者の額面に沿って係合する湾曲面としたので、額パッド204とロングモダン部117との間で前後から頭部を挟んでヘッドマウント装置10を装着する際に額パッド204の額当接面がより使用者の額面にフィットすることができ、ヘッドマウント装置10の装着時における頭部への前後挟持機能をより向上し、眼鏡300とともに掛ける際の安定性の向上を図ることが出来る効果がある。
【符号の説明】
【0066】
10 ヘッドマウント装置
20 コントロールユニット
21 光源ユニット
30 投影ユニット
50 光ファイバケーブル
100 装着フレーム
110 フロントフレーム
114 テンプル
116 弾力屈曲部
117 ロングモダン部
117a 滑り止め部
117b 当接緩衝部
200 前部保持ユニット
204 額パッド
205 置台用パッド
300 眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に応じた画像を使用者の眼の網膜に投影する投影ユニットと、
使用者の眼鏡の上部に装着可能に構成され、前記投影ユニットを搭載可能な装着フレームと、
前記装着フレームに設けられ、装着時に使用者の眼前に位置するフロントフレームと、
前記フロントフレームの両端に連設された左右テンプルと、
前記フロントフレームの中央部に設けられ、装着時に使用者の額部に当接可能な額パッドと、を備え、
前記左右テンプルの略後半部分には、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲するロングモダン部が形成されることを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項2】
前記ロングモダン部は、前記左右テンプルが側頭部と接する位置から平面視で内方に湾曲し始めて後頭部近辺に至ることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウント装置。
【請求項3】
前記ロングモダン部は、前記左右テンプルが側頭部と接する位置から側面視で下方に湾曲し始めて後頭部近辺に至ることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドマウント装置。
【請求項4】
前記ロングモダン部は、その最後端に設けられ、頭部外側方に湾曲する当接緩衝部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のヘッドマウント装置。
【請求項5】
前記フロントフレームの下方には、フロントフレーム中央部を使用者の眼鏡の上端縁部に載置するための置台用パッドを配設したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のヘッドマウント装置。
【請求項6】
前記額パッドの額当接面には、使用者の額面に沿って係合する湾曲面が形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のヘッドマウント装置。
【請求項7】
使用者の眼鏡の上部に装着可能に構成された装着フレームであって、
装着時に使用者の眼前に位置するフロントフレームと、
前記フロントフレームの両端に連設された左右テンプルと、
前記フロントフレームの中央部に設けられ、装着時に使用者の額部に当接可能な額パッドと、を備え、
前記左右テンプルの略後半部分には、使用者の後頭部近辺に沿って湾曲するロングモダン部が形成されることを特徴とする装着フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46143(P2013−46143A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181496(P2011−181496)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】