ヘッドレスト用基材及びヘッドレスト
【課題】 組み付けに際して芯材を表皮内に容易に収容することができるヘッドレスト用基材、及びその基材を用いたヘッドレストを提供する。
【解決手段】 ステー18の両脚部18aの上端部及び両脚部18a間の架設部18bを包囲するように、それらの周囲に硬質材料よりなる芯材19を固設して、ヘッドレスト用基材13を構成する。芯材19の周囲に発泡弾性材を設けるとともに、その発泡弾性材を表皮14により包被して、ヘッドレスト11を構成する。ステー18の両脚部18aの上端には、それらの間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部18cを形成する。傾斜部18cと対応する芯材19の両端下部には、切欠部19aを形成する。
【解決手段】 ステー18の両脚部18aの上端部及び両脚部18a間の架設部18bを包囲するように、それらの周囲に硬質材料よりなる芯材19を固設して、ヘッドレスト用基材13を構成する。芯材19の周囲に発泡弾性材を設けるとともに、その発泡弾性材を表皮14により包被して、ヘッドレスト11を構成する。ステー18の両脚部18aの上端には、それらの間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部18cを形成する。傾斜部18cと対応する芯材19の両端下部には、切欠部19aを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の座席等に取り付けられるヘッドレストのためのヘッドレスト用基材、及びその基材を用いたヘッドレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のヘッドレストにおいては、袋状をなす表皮の内部に、ステーを収容するとともに、発泡原料を注入して発泡させることにより、発泡弾性材が表皮と一体に成形されている。このような構成のヘッドレストとして、従来、例えば特許文献1に開示されるようなヘッドレストが提案されている。すなわち、この従来構成においては、図13に示すように、袋状の表皮21内に収容されるヘッドレスト用基材22が、ステー23と、そのステー23の両脚部23aの上端部及び両脚部23a間の架設部23bの周囲に設けられた硬質材料よりなる芯材24とから構成されている。前記芯材24は、車両に対する後方からの衝突(以下、後方衝突という)において、乗員の頭部によってヘッドレストに加えられる後方への荷重を受け止めるためのものである。
【0003】
そして、このヘッドレスト用基材22を表皮21内に組み付ける場合には、図14(a)に示すように、ステー23の両脚部23aを表皮21の底部中央に形成された開口部21aから表皮21内に収容した後、表皮21の底部両側に形成された一対の挿通孔21bから外部に突出させる。そして、図14(b)に示すように、芯材24を開口部21aから表皮21内に収容させる。
【0004】
ところが、この従来構成においては、図14(b)に示すように、芯材24がステー23上で動かないように、芯材24の幅方向の寸法L1がステー23の両脚部23aの間隔よりも大きくなっている。このため、芯材24を開口部21aから表皮21内に収容する際に、図16(a)に示すように、開口部21aが長さ方向(矢印P方向)に引っ張られる。従って、開口部21aには閉鎖方向への力が作用し、開放しづらくなって、芯材24の開口部21a内の通過が困難であった。
【0005】
また、車両の後方衝突時には、ヘッドレストに対する乗員の後頭部の接触位置が通常使用時の接触位置よりも上方に移動するのを考慮して、芯材24の高さ方向の寸法L2が大きく設定されている。このため、図15に示すように、開口部21aの縁部を芯材24の頂部まで引き上げて、芯材24を表皮21内に収容するのが困難であった。すなわち、図15及び図16(b)に示すように、芯材24を表皮21内に納めるためには、表皮21の開口部21aの縁部21cを、矢印Rで示すように引き上げて、表皮21を芯材24に被せる。この場合、従来の構成においては、芯材24は、前述した広い全幅寸法L1にわたって、同一の寸法L2が確保されている。このため、挿通孔21bに脚部23aが挿通されて、表皮21は挿通孔21bの部分で拘束されているため、開口部21aの周辺の表皮21には無理な力が作用して、表皮21を芯材24に被せる作業が困難であるばかりでなく、表皮21には無理に伸ばされた伸長跡が形成されて外観が低下する。
【0006】
このような不具合を解消するために、例えば図15に鎖線Qで示すように、芯材24の高さ方向の寸法L2を小さく設定して、芯材24を開口部21aから表皮21内に容易に収容可能に構成することも考えられる。また、図16(a)に鎖線で示すように、開口部21aの左右両端から切れ目21dを入れて、表皮21を開口部21aから前後両側に大きく扉状に開放できるように形成し、芯材24を表皮内に容易に収容できるように構成することも考えられる。
【特許文献1】特開平9−85755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記のように構成した場合には、次のような問題があった。すなわち、芯材24の高さ方向の寸法L2を小さく設定した場合には、前述した乗員頭部の上方への移動や乗員の体格差(例えば座高の高低差)等に対応できず、後方衝突時に、乗員からの荷重を有効に受け止め得ないおそれがあった。
【0008】
また、開口部21aを大きく開放できるように構成した場合には、開口部21aを封鎖状態に保持する専用の構成を設ける必要があって、コストのアップを招くとともに、発泡原料の発泡膨張時に、開口部から発泡原料が漏出しやすくなって、ヘッドレストの品質低下を招くことがあった。
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、芯材を表皮内に容易に収容できるとともに、ヘッドレストの外観を良好にできるヘッドレスト用基材、及びその基材を用いたヘッドレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、ヘッドレスト用基材に係る請求項1に記載の発明においては、ステーの両脚部の上端部及び両脚部間の架設部の周囲に芯材を設けたヘッドレスト用基材であって、前記架設部を前記両脚部の下端部間の間隔よりも短く形成するとともに、両脚部の上端部の芯材による被覆部と非被覆部との境界部間の間隔を、前記両脚部の下端部間の間隔よりも狭く形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記両脚部の上端部にはその上端部間の間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明においては請求項1または2に記載の発明において、前記芯材の両端下部に切欠部を形成し、前記境界部を切欠部のところに位置させたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明においては、請求項2または3に記載の発明において、前記芯材の側面を前記傾斜部に沿って傾斜させたことを特徴とする。
ヘッドレストに係る請求項5に記載の発明においては、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載のヘッドレスト用基材の芯材の周囲に発泡弾性材を設け、さらにその発泡弾性材を表皮により包被したことを特徴する。
【0014】
(作用)
この発明においては、ステーの架設部を前記両脚部の下端部間の間隔よりも短く形成するとともに、両脚部の上端部の芯材による被覆部と非被覆部との境界部間の間隔を前記両脚部の下端部間の間隔よりも狭く形成したことにより、表皮内へのヘッドレスト用基材の組み付けに際して、ステーの両脚部を表皮の開口部から表皮内に収容した後、表皮の挿通孔から外部に突出させると、挿通孔の部分の表皮が境界部まで案内されて、同部分が中央側に寄せられ、挿通孔間の間隔が狭くなる。これにより、開口部を開放しやすくなる。加えて、両脚部の上端部に、その上端部間の間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部を形成したことにより、芯材の幅を狭くできる。従って、開口部から表皮内に芯材を容易に収容することができる。一方、芯材の中央部分における高さ方向の寸法を充分確保出来るため、乗員の体格の相違等に対して適切に対応できる。また、表皮内への芯材の収容が容易になるため、開口部を大きく形成する必要がなく、従って、ヘッドレスト外観を低下させる発泡材料の漏洩を有効に防止できる。
【0015】
また、傾斜部と対応する芯材の両端下部に切欠部を形成すれば、芯材の両端部の高さ方向の寸法が、芯材の中央部分における高さ方向の寸法よりも小さくなる。これにより、ステーの両脚部を挿通孔に対して芯材の切欠部付近まで挿通した後、開口部の縁部を芯材の頂部まで引き上げて、芯材を表皮内へ簡単に収容することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、表皮内に芯材を容易に収容できて組み付けを簡単に行うことができるとともに、ヘッドレストの外観を向上できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、この実施形態のヘッドレスト11は、パッド部12と、そのパッド部12内に基端部を埋設してなるヘッドレスト用基材13とから構成されている。パッド部12は、袋状をなす表皮14内にヘッドレスト用基材13を収容するとともに、それらを図示しない成形型にセットした状態で、表皮14内に発泡ウレタン等の発泡原料を注入して発泡膨張させることにより、発泡弾性材15を表皮14と一体に成形した構成になっている。
【0018】
前記表皮14は、例えば所定形状に裁断した周面表皮材14aを筒状をなすように縫着するとともに、その周面表皮材14aの両側に一対の側面表皮材14b,14cを縫着して、全体として袋状となるように形成されている。表皮14の底部中央には、ヘッドレスト用基材13を収容したり発泡原料を注入したりするための開口部16が形成されている。開口部16の近傍に位置するように、表皮14の底部両側には、ヘッドレスト用基材13における後記ステー18の両脚部18aを挿通するための一対の挿通孔17が形成されている。
【0019】
図1〜図5に示すように、前記ヘッドレスト用基材13は、正面形ほぼ逆U字状のステー18と、そのステー18の両脚部18aの上端部及び両脚部18a間の架設部18bを包囲するように、それらの周囲にインサート成形等により一体的に形成された硬質発泡ウレタン等の硬質材料よりなる芯材19とから構成されている。前記ステー18の両脚部18aの上端部には、それらの間隔が上方の架設部18b側に向かって次第に狭まるように傾斜部18cが形成されている。従って、架設部18bの長さ(左右方向)は、両脚部18aの下端部間の間隔より狭くなっている。
【0020】
そして、芯材19の両側面19bは、それぞれ傾斜部18cの傾斜に沿うように傾斜している。ステー18の両傾斜部18cと対応するように、芯材19の両端下部にはほぼかぎ形状の切欠部19aが形成され、その切欠部19aにおける芯材19の両端下部が前記傾斜部18c上に位置している。このため、図4に示すように、前記両脚部18aの上端部である傾斜部18cの芯材19による被覆部と非被覆部との境界部20間の間隔S1bが、前記両脚部18aの下端部間の間隔S1aよりも狭く形成されている。また、前記境界部20は、前記切欠部19aのところに位置している。
【0021】
図5に示すように、芯材19の両端部の高さ方向の寸法L2bが、芯材19の中央部分における高さ方向の寸法L2aよりも小さくなるように形成されている。なお、前記表皮14の両挿通孔17の間隔は、この両脚部18aの平行部分の間隔S1aとほぼ等しくなるように形成されている。
【0022】
次に、前記のように構成されたヘッドレスト11の製造方法について説明する。
さて、このヘッドレスト11の製造に際して、表皮14内にヘッドレスト用基材13を組み付ける場合には、図6(a)に示すように、ステー18の両脚部18aを、表皮14の開口部16から表皮14内を通過させた後、表皮14の挿通孔17から外部に突出させる。このようにすれば、表皮14の挿通孔17の部分は、芯材19の両端における芯材19と傾斜部18cとの境界部20に向かって案内される。この場合、前記のように、前記境界部20間の間隔S1bが前記両脚部18aの下端部間の間隔S1aよりも狭く形成されている。このため、図6(b),図8,図9及び図10に示すように、ステー18の両脚部18aを挿通孔17に対して前記境界部20の位置まで挿通した状態においては、挿通孔17間の部分の表皮14に矢印Sで示すように内方への力が作用して中央側に寄せられ、従って、挿通孔17間の間隔が狭くなり、その挿通孔17の周辺の表皮14には、矢印Tで示すように、開口部16の開放方向への変形が許容されて、開口部16を大きく開放することができる。よって、芯材19の左右幅が小さく形成されていることと相まって、開口部16から表皮14内に芯材19を収容しやすくなる。
【0023】
また、ステー18の傾斜部18cと対応する芯材19の両端下部には切欠部19aが形成され、そのステー18の両脚部18aの部分における芯材19の高さ方向の寸法L2bが、芯材19の中央部分における高さ方向の寸法L2aよりも小さくなるように形成されている。このため、図7及び図10に示すように、ステー18の両脚部18aを挿通孔17に対して傾斜部18cの上部まで挿通した後、開口部16の縁部16aを矢印Uで示すように芯材19の頂部まで簡単に引き上げることができて、芯材19を表皮14内へ簡単に収容することができる。すなわち、芯材19の両端部の寸法L2bが中央部の寸法L2aよりも小さいため、挿通孔17にステー18の脚部18aが挿通することにより、挿通孔17の部分の表皮14が拘束されていても、表皮14に無理な力はほとんど作用しない。よって、ヘッドレスト用基材13を表皮14内に容易に収容して組み付けることができる。
【0024】
さらに、芯材19の両側面19bがステー18の傾斜部18cに沿って傾斜しているため、その芯材19は上部側ほど幅狭くなり、前述した縁部16aの引き上げによる芯材19の収容をさらに容易に行うことができる。
【0025】
そして、前記のようにして、ヘッドレスト用基材13を組み付けてなる表皮14を図示しない成形型にセットした状態で、表皮14内に発泡ウレタン等の発泡原料を注入して発泡膨張させる。これにより、図1〜図3に示すように、発泡弾性材15がヘッドレスト用基材13の芯材19を取り囲んだ状態で表皮14と一体に成形されて、ヘッドレスト11のパッド部12が形成される。
【0026】
このように製造されたヘッドレスト11においては、図1〜図4に示すように、ヘッドレスト用基材13の左右幅が小さくなっていても、中央部分における高さ方向の寸法L2aが、充分大きく確保されている。このため、このヘッドレスト11を装備した車両において、後方衝突が発生した場合、ヘッドレスト11に対する乗員の後頭部の位置が通常時よりも上方に移動しても、乗員の体格等にかかわらず、後方への荷重を適切に受け止めることができる。
【0027】
また、表皮14内に芯材19を収容する際に、表皮14に無理な伸長力が作用していないため、表皮14に伸長跡が形成されることはない。さらに、芯材19を開口部16から容易に収納できるため、開口部16を大きく形成する必要はなく、発泡原料の漏洩等を抑制できる。よって、外観の優れたヘッドレストを実現できる。
【0028】
図11は、前記とは異なる実施形態を示すものである。この図11の実施形態においては、芯材19の両端下部の切欠部19aが傾斜状をなしている点が異なるのみで、構成及び作用は、前記実施形態と同様である。従って、この実施形態においても、ヘッドレスト用基材13を表皮14内に容易に収容することができる。
【0029】
図12は、さらに異なる実施形態を示すものである。この図12の実施形態においては、ステー18の上端部の傾斜部18cが設けられておらず、その代わりに、ほぼ直角の折曲部18dを介して両脚部18aの下端部間の幅より狭い幅狭部18eが形成されている。従って、幅狭部18e間に両脚部18aの下端部間の幅より短い架設部18bが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態のヘッドレストを示す斜視図。
【図2】図1のヘッドレストの側断面図。
【図3】同じくヘッドレストの正断面図。
【図4】ヘッドレスト用基材を示す正面図。
【図5】図4のヘッドレスト用基材の側面図。
【図6】(a)及び(b)は表皮に対するヘッドレスト用基材の組み付け過程を順に示す斜視図。
【図7】図6(b)の組み付け過程における拡大側面図。
【図8】芯材の収容時における開口部の開放状態を示す簡略図。
【図9】芯材の収容時における挿通孔に対する脚部の挿通状態を示す簡略正面図。
【図10】芯材の収容時の状態を示す簡略側面図。
【図11】別の実施形態のヘッドレスト用基材を示す正面図。
【図12】さらに別の実施形態のヘッドレスト用基材を示す正面図。
【図13】従来のヘッドレストを示す斜視図。
【図14】(a)及び(b)は図11のヘッドレストの表皮に対するヘッドレスト用基材の組み付け過程を順に示す斜視図。
【図15】図12(b)の組み付け過程における拡大側面図。
【図16】(a)は開口部に対する力関係を示す簡略底面図、(b)は芯材の収容時の状態を示す簡略側面図。
【符号の説明】
【0031】
11…ヘッドレスト、12…パッド部、13…ヘッドレスト用基材、14…表皮、15…発泡弾性材、16…開口部、17…挿通孔、18…ステー、18a…脚部、18b…架設部、18c…傾斜部、19…芯材、19a…切欠部、19b…側面、20…境界部、S1a…間隔、S1b…間隔。
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の座席等に取り付けられるヘッドレストのためのヘッドレスト用基材、及びその基材を用いたヘッドレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のヘッドレストにおいては、袋状をなす表皮の内部に、ステーを収容するとともに、発泡原料を注入して発泡させることにより、発泡弾性材が表皮と一体に成形されている。このような構成のヘッドレストとして、従来、例えば特許文献1に開示されるようなヘッドレストが提案されている。すなわち、この従来構成においては、図13に示すように、袋状の表皮21内に収容されるヘッドレスト用基材22が、ステー23と、そのステー23の両脚部23aの上端部及び両脚部23a間の架設部23bの周囲に設けられた硬質材料よりなる芯材24とから構成されている。前記芯材24は、車両に対する後方からの衝突(以下、後方衝突という)において、乗員の頭部によってヘッドレストに加えられる後方への荷重を受け止めるためのものである。
【0003】
そして、このヘッドレスト用基材22を表皮21内に組み付ける場合には、図14(a)に示すように、ステー23の両脚部23aを表皮21の底部中央に形成された開口部21aから表皮21内に収容した後、表皮21の底部両側に形成された一対の挿通孔21bから外部に突出させる。そして、図14(b)に示すように、芯材24を開口部21aから表皮21内に収容させる。
【0004】
ところが、この従来構成においては、図14(b)に示すように、芯材24がステー23上で動かないように、芯材24の幅方向の寸法L1がステー23の両脚部23aの間隔よりも大きくなっている。このため、芯材24を開口部21aから表皮21内に収容する際に、図16(a)に示すように、開口部21aが長さ方向(矢印P方向)に引っ張られる。従って、開口部21aには閉鎖方向への力が作用し、開放しづらくなって、芯材24の開口部21a内の通過が困難であった。
【0005】
また、車両の後方衝突時には、ヘッドレストに対する乗員の後頭部の接触位置が通常使用時の接触位置よりも上方に移動するのを考慮して、芯材24の高さ方向の寸法L2が大きく設定されている。このため、図15に示すように、開口部21aの縁部を芯材24の頂部まで引き上げて、芯材24を表皮21内に収容するのが困難であった。すなわち、図15及び図16(b)に示すように、芯材24を表皮21内に納めるためには、表皮21の開口部21aの縁部21cを、矢印Rで示すように引き上げて、表皮21を芯材24に被せる。この場合、従来の構成においては、芯材24は、前述した広い全幅寸法L1にわたって、同一の寸法L2が確保されている。このため、挿通孔21bに脚部23aが挿通されて、表皮21は挿通孔21bの部分で拘束されているため、開口部21aの周辺の表皮21には無理な力が作用して、表皮21を芯材24に被せる作業が困難であるばかりでなく、表皮21には無理に伸ばされた伸長跡が形成されて外観が低下する。
【0006】
このような不具合を解消するために、例えば図15に鎖線Qで示すように、芯材24の高さ方向の寸法L2を小さく設定して、芯材24を開口部21aから表皮21内に容易に収容可能に構成することも考えられる。また、図16(a)に鎖線で示すように、開口部21aの左右両端から切れ目21dを入れて、表皮21を開口部21aから前後両側に大きく扉状に開放できるように形成し、芯材24を表皮内に容易に収容できるように構成することも考えられる。
【特許文献1】特開平9−85755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記のように構成した場合には、次のような問題があった。すなわち、芯材24の高さ方向の寸法L2を小さく設定した場合には、前述した乗員頭部の上方への移動や乗員の体格差(例えば座高の高低差)等に対応できず、後方衝突時に、乗員からの荷重を有効に受け止め得ないおそれがあった。
【0008】
また、開口部21aを大きく開放できるように構成した場合には、開口部21aを封鎖状態に保持する専用の構成を設ける必要があって、コストのアップを招くとともに、発泡原料の発泡膨張時に、開口部から発泡原料が漏出しやすくなって、ヘッドレストの品質低下を招くことがあった。
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、芯材を表皮内に容易に収容できるとともに、ヘッドレストの外観を良好にできるヘッドレスト用基材、及びその基材を用いたヘッドレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、ヘッドレスト用基材に係る請求項1に記載の発明においては、ステーの両脚部の上端部及び両脚部間の架設部の周囲に芯材を設けたヘッドレスト用基材であって、前記架設部を前記両脚部の下端部間の間隔よりも短く形成するとともに、両脚部の上端部の芯材による被覆部と非被覆部との境界部間の間隔を、前記両脚部の下端部間の間隔よりも狭く形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記両脚部の上端部にはその上端部間の間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明においては請求項1または2に記載の発明において、前記芯材の両端下部に切欠部を形成し、前記境界部を切欠部のところに位置させたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明においては、請求項2または3に記載の発明において、前記芯材の側面を前記傾斜部に沿って傾斜させたことを特徴とする。
ヘッドレストに係る請求項5に記載の発明においては、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載のヘッドレスト用基材の芯材の周囲に発泡弾性材を設け、さらにその発泡弾性材を表皮により包被したことを特徴する。
【0014】
(作用)
この発明においては、ステーの架設部を前記両脚部の下端部間の間隔よりも短く形成するとともに、両脚部の上端部の芯材による被覆部と非被覆部との境界部間の間隔を前記両脚部の下端部間の間隔よりも狭く形成したことにより、表皮内へのヘッドレスト用基材の組み付けに際して、ステーの両脚部を表皮の開口部から表皮内に収容した後、表皮の挿通孔から外部に突出させると、挿通孔の部分の表皮が境界部まで案内されて、同部分が中央側に寄せられ、挿通孔間の間隔が狭くなる。これにより、開口部を開放しやすくなる。加えて、両脚部の上端部に、その上端部間の間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部を形成したことにより、芯材の幅を狭くできる。従って、開口部から表皮内に芯材を容易に収容することができる。一方、芯材の中央部分における高さ方向の寸法を充分確保出来るため、乗員の体格の相違等に対して適切に対応できる。また、表皮内への芯材の収容が容易になるため、開口部を大きく形成する必要がなく、従って、ヘッドレスト外観を低下させる発泡材料の漏洩を有効に防止できる。
【0015】
また、傾斜部と対応する芯材の両端下部に切欠部を形成すれば、芯材の両端部の高さ方向の寸法が、芯材の中央部分における高さ方向の寸法よりも小さくなる。これにより、ステーの両脚部を挿通孔に対して芯材の切欠部付近まで挿通した後、開口部の縁部を芯材の頂部まで引き上げて、芯材を表皮内へ簡単に収容することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、表皮内に芯材を容易に収容できて組み付けを簡単に行うことができるとともに、ヘッドレストの外観を向上できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、この実施形態のヘッドレスト11は、パッド部12と、そのパッド部12内に基端部を埋設してなるヘッドレスト用基材13とから構成されている。パッド部12は、袋状をなす表皮14内にヘッドレスト用基材13を収容するとともに、それらを図示しない成形型にセットした状態で、表皮14内に発泡ウレタン等の発泡原料を注入して発泡膨張させることにより、発泡弾性材15を表皮14と一体に成形した構成になっている。
【0018】
前記表皮14は、例えば所定形状に裁断した周面表皮材14aを筒状をなすように縫着するとともに、その周面表皮材14aの両側に一対の側面表皮材14b,14cを縫着して、全体として袋状となるように形成されている。表皮14の底部中央には、ヘッドレスト用基材13を収容したり発泡原料を注入したりするための開口部16が形成されている。開口部16の近傍に位置するように、表皮14の底部両側には、ヘッドレスト用基材13における後記ステー18の両脚部18aを挿通するための一対の挿通孔17が形成されている。
【0019】
図1〜図5に示すように、前記ヘッドレスト用基材13は、正面形ほぼ逆U字状のステー18と、そのステー18の両脚部18aの上端部及び両脚部18a間の架設部18bを包囲するように、それらの周囲にインサート成形等により一体的に形成された硬質発泡ウレタン等の硬質材料よりなる芯材19とから構成されている。前記ステー18の両脚部18aの上端部には、それらの間隔が上方の架設部18b側に向かって次第に狭まるように傾斜部18cが形成されている。従って、架設部18bの長さ(左右方向)は、両脚部18aの下端部間の間隔より狭くなっている。
【0020】
そして、芯材19の両側面19bは、それぞれ傾斜部18cの傾斜に沿うように傾斜している。ステー18の両傾斜部18cと対応するように、芯材19の両端下部にはほぼかぎ形状の切欠部19aが形成され、その切欠部19aにおける芯材19の両端下部が前記傾斜部18c上に位置している。このため、図4に示すように、前記両脚部18aの上端部である傾斜部18cの芯材19による被覆部と非被覆部との境界部20間の間隔S1bが、前記両脚部18aの下端部間の間隔S1aよりも狭く形成されている。また、前記境界部20は、前記切欠部19aのところに位置している。
【0021】
図5に示すように、芯材19の両端部の高さ方向の寸法L2bが、芯材19の中央部分における高さ方向の寸法L2aよりも小さくなるように形成されている。なお、前記表皮14の両挿通孔17の間隔は、この両脚部18aの平行部分の間隔S1aとほぼ等しくなるように形成されている。
【0022】
次に、前記のように構成されたヘッドレスト11の製造方法について説明する。
さて、このヘッドレスト11の製造に際して、表皮14内にヘッドレスト用基材13を組み付ける場合には、図6(a)に示すように、ステー18の両脚部18aを、表皮14の開口部16から表皮14内を通過させた後、表皮14の挿通孔17から外部に突出させる。このようにすれば、表皮14の挿通孔17の部分は、芯材19の両端における芯材19と傾斜部18cとの境界部20に向かって案内される。この場合、前記のように、前記境界部20間の間隔S1bが前記両脚部18aの下端部間の間隔S1aよりも狭く形成されている。このため、図6(b),図8,図9及び図10に示すように、ステー18の両脚部18aを挿通孔17に対して前記境界部20の位置まで挿通した状態においては、挿通孔17間の部分の表皮14に矢印Sで示すように内方への力が作用して中央側に寄せられ、従って、挿通孔17間の間隔が狭くなり、その挿通孔17の周辺の表皮14には、矢印Tで示すように、開口部16の開放方向への変形が許容されて、開口部16を大きく開放することができる。よって、芯材19の左右幅が小さく形成されていることと相まって、開口部16から表皮14内に芯材19を収容しやすくなる。
【0023】
また、ステー18の傾斜部18cと対応する芯材19の両端下部には切欠部19aが形成され、そのステー18の両脚部18aの部分における芯材19の高さ方向の寸法L2bが、芯材19の中央部分における高さ方向の寸法L2aよりも小さくなるように形成されている。このため、図7及び図10に示すように、ステー18の両脚部18aを挿通孔17に対して傾斜部18cの上部まで挿通した後、開口部16の縁部16aを矢印Uで示すように芯材19の頂部まで簡単に引き上げることができて、芯材19を表皮14内へ簡単に収容することができる。すなわち、芯材19の両端部の寸法L2bが中央部の寸法L2aよりも小さいため、挿通孔17にステー18の脚部18aが挿通することにより、挿通孔17の部分の表皮14が拘束されていても、表皮14に無理な力はほとんど作用しない。よって、ヘッドレスト用基材13を表皮14内に容易に収容して組み付けることができる。
【0024】
さらに、芯材19の両側面19bがステー18の傾斜部18cに沿って傾斜しているため、その芯材19は上部側ほど幅狭くなり、前述した縁部16aの引き上げによる芯材19の収容をさらに容易に行うことができる。
【0025】
そして、前記のようにして、ヘッドレスト用基材13を組み付けてなる表皮14を図示しない成形型にセットした状態で、表皮14内に発泡ウレタン等の発泡原料を注入して発泡膨張させる。これにより、図1〜図3に示すように、発泡弾性材15がヘッドレスト用基材13の芯材19を取り囲んだ状態で表皮14と一体に成形されて、ヘッドレスト11のパッド部12が形成される。
【0026】
このように製造されたヘッドレスト11においては、図1〜図4に示すように、ヘッドレスト用基材13の左右幅が小さくなっていても、中央部分における高さ方向の寸法L2aが、充分大きく確保されている。このため、このヘッドレスト11を装備した車両において、後方衝突が発生した場合、ヘッドレスト11に対する乗員の後頭部の位置が通常時よりも上方に移動しても、乗員の体格等にかかわらず、後方への荷重を適切に受け止めることができる。
【0027】
また、表皮14内に芯材19を収容する際に、表皮14に無理な伸長力が作用していないため、表皮14に伸長跡が形成されることはない。さらに、芯材19を開口部16から容易に収納できるため、開口部16を大きく形成する必要はなく、発泡原料の漏洩等を抑制できる。よって、外観の優れたヘッドレストを実現できる。
【0028】
図11は、前記とは異なる実施形態を示すものである。この図11の実施形態においては、芯材19の両端下部の切欠部19aが傾斜状をなしている点が異なるのみで、構成及び作用は、前記実施形態と同様である。従って、この実施形態においても、ヘッドレスト用基材13を表皮14内に容易に収容することができる。
【0029】
図12は、さらに異なる実施形態を示すものである。この図12の実施形態においては、ステー18の上端部の傾斜部18cが設けられておらず、その代わりに、ほぼ直角の折曲部18dを介して両脚部18aの下端部間の幅より狭い幅狭部18eが形成されている。従って、幅狭部18e間に両脚部18aの下端部間の幅より短い架設部18bが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態のヘッドレストを示す斜視図。
【図2】図1のヘッドレストの側断面図。
【図3】同じくヘッドレストの正断面図。
【図4】ヘッドレスト用基材を示す正面図。
【図5】図4のヘッドレスト用基材の側面図。
【図6】(a)及び(b)は表皮に対するヘッドレスト用基材の組み付け過程を順に示す斜視図。
【図7】図6(b)の組み付け過程における拡大側面図。
【図8】芯材の収容時における開口部の開放状態を示す簡略図。
【図9】芯材の収容時における挿通孔に対する脚部の挿通状態を示す簡略正面図。
【図10】芯材の収容時の状態を示す簡略側面図。
【図11】別の実施形態のヘッドレスト用基材を示す正面図。
【図12】さらに別の実施形態のヘッドレスト用基材を示す正面図。
【図13】従来のヘッドレストを示す斜視図。
【図14】(a)及び(b)は図11のヘッドレストの表皮に対するヘッドレスト用基材の組み付け過程を順に示す斜視図。
【図15】図12(b)の組み付け過程における拡大側面図。
【図16】(a)は開口部に対する力関係を示す簡略底面図、(b)は芯材の収容時の状態を示す簡略側面図。
【符号の説明】
【0031】
11…ヘッドレスト、12…パッド部、13…ヘッドレスト用基材、14…表皮、15…発泡弾性材、16…開口部、17…挿通孔、18…ステー、18a…脚部、18b…架設部、18c…傾斜部、19…芯材、19a…切欠部、19b…側面、20…境界部、S1a…間隔、S1b…間隔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーの両脚部の上端部及び両脚部間の架設部の周囲に芯材を設けたヘッドレスト用基材であって、
前記架設部を前記両脚部の下端部間の間隔よりも短く形成するとともに、両脚部の上端部の芯材による被覆部と非被覆部との境界部間の間隔を、前記両脚部の下端部間の間隔よりも狭く形成したヘッドレスト用基材。
【請求項2】
前記両脚部の上端部にはその上端部間の間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部を形成した請求項1に記載のヘッドレスト用基材。
【請求項3】
前記芯材の両端下部に切欠部を形成し、前記境界部を切欠部のところに位置させた請求項1または2に記載のヘッドレスト用基材。
【請求項4】
前記芯材の側面を前記傾斜部に沿って傾斜させた請求項2または3に記載のヘッドレスト用基材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載のヘッドレスト用基材の芯材の周囲に発泡弾性材を設け、さらにその発泡弾性材を表皮により包被したヘッドレスト。
【請求項1】
ステーの両脚部の上端部及び両脚部間の架設部の周囲に芯材を設けたヘッドレスト用基材であって、
前記架設部を前記両脚部の下端部間の間隔よりも短く形成するとともに、両脚部の上端部の芯材による被覆部と非被覆部との境界部間の間隔を、前記両脚部の下端部間の間隔よりも狭く形成したヘッドレスト用基材。
【請求項2】
前記両脚部の上端部にはその上端部間の間隔が上方へ向かって狭まるように傾斜部を形成した請求項1に記載のヘッドレスト用基材。
【請求項3】
前記芯材の両端下部に切欠部を形成し、前記境界部を切欠部のところに位置させた請求項1または2に記載のヘッドレスト用基材。
【請求項4】
前記芯材の側面を前記傾斜部に沿って傾斜させた請求項2または3に記載のヘッドレスト用基材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載のヘッドレスト用基材の芯材の周囲に発泡弾性材を設け、さらにその発泡弾性材を表皮により包被したヘッドレスト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−15825(P2006−15825A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193829(P2004−193829)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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