説明

ヘッド位置検出方法および記録媒体駆動装置

【課題】ヘッドを正確に位置決めすることができるヘッド位置検出方法および記録媒体駆動装置を提供する。
【解決手段】第1記録トラック25で第1磁性ドット28が等間隔で配列される。第2記録トラック25で第2磁性ドット28が第1磁性ドット28同士の間隔と等間隔で配列される。第2磁性ドット28は第1磁性ドット28に対してダウントラック方向にずれて配置される。その結果、相互に隣接する第1記録トラック25および第2記録トラック25で第1磁性ドット28および第2磁性ドット28が境界線31に沿って交互に配置される。ヘッド32が境界線31から乖離すると、第1記録トラック25から読み出される信号の第1出力と、第2記録トラック25から読み出される信号の第2出力との間に差分が生じる。こうした差分の大きさに応じてヘッド32の位置が特定される。その結果、オントラックが実現される。ヘッド32は正確に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上の記録トラックにヘッドを位置決めする記録媒体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるビットパターンドメディアは広く知られる。ビットパターンドメディアでは例えば磁気ディスクの周方向すなわちダウントラック方向に相互に並列に延びる複数筋の記録トラックが規定される。各記録トラックではダウントラック方向に磁性ドットが配列される。相互に隣接する2本の記録トラックでは、記録トラック同士の境界線に沿って交互に磁性ドットが配置される。読み出しヘッド素子が2本の記録トラック上を辿ると、読み出しヘッド素子は2本の記録トラックの磁性ドットから同時に磁気情報を読み出すことができる。
【特許文献1】特開2002−109712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば磁気ディスクの振動に基づき読み出しヘッド素子は所定の移動経路から外れてしまう。その結果、読み出しヘッド素子は、相互に隣接する2本の記録トラックにさらに隣接する他の記録トラック上に位置決めされてしまう。その結果、読み出し対象の2本の記録トラック以外の記録トラックから磁気情報が読み出されてしまう。したがって、磁気情報は正確に読み出されることができない。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ヘッドを正確に位置決めすることができるヘッド位置検出方法および記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、ヘッド位置検出方法は、ダウントラック方向に等間隔で配列される第1磁性ドットを区画する第1記録トラック、および、前記第1記録トラックに隣接し、ダウントラック方向に前記第1磁性ドット同士の間隔と等間隔で配列されつつ第1磁性ドットに対してダウントラック方向にずれて配置される第2磁性ドットを区画する第2記録トラックの境界線に沿ってヘッドおよび前記磁性ドットを相対移動させる工程と、前記第1磁性ドットから読み出される信号の第1出力、および、前記第2磁性ドットから読み出される信号の第2出力の差分に基づき前記ヘッドの位置を特定する位置情報を生成する工程とを備えることを特徴とする。
【0006】
こうしたヘッド位置検出方法によれば、第1記録トラックで第1磁性ドットが等間隔で配列される。第2記録トラックで第2磁性ドットが第1磁性ドット同士の間隔と等間隔で配列される。第2磁性ドットは第1磁性ドットに対してダウントラック方向にずれて配置される。その結果、相互に隣接する第1記録トラックおよび第2記録トラックで第1磁性ドットおよび第2磁性ドットが境界線に沿って交互に配置される。その結果、ヘッドが境界線から乖離すると、第1記録トラックから読み出される信号の第1出力と、第2記録トラックから読み出される信号の第2出力との間に差分が生じる。こうした差分の大きさに応じてヘッドの位置が特定される。その結果、オントラックが実現される。こうしてヘッドは正確に位置決めされる。
【0007】
記録媒体駆動装置は、ダウントラック方向に等間隔で配列される第1磁性ドットを区画する第1記録トラック、および、前記第1記録トラックに隣接し、ダウントラック方向に前記第1磁性ドット同士の間隔と等間隔で配列されつつ第1磁性ドットに対してダウントラック方向にずれて配置される第2磁性ドットを区画する第2記録トラックを規定する記録媒体と、前記記録媒体に向き合わせられて、前記磁性ドットから信号を読み出すヘッドと、前記ヘッドを支持し、前記記録トラックのトラック幅方向に前記ヘッドを移動させる駆動機構と、前記第1記録トラックおよび前記第2記録トラックの境界線に沿って前記記録媒体に対して相対移動する前記ヘッドから供給される前記第1磁性ドットから読み出される信号の第1出力、および、前記第2磁性ドットから読み出される信号の第2出力の差分を検出し、検出された差分に基づき前記駆動機構の動きを制御する制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、ヘッド位置検出方法および記録媒体駆動装置はヘッドを正確に位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明に係る記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウム(Al)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0011】
ベース13の外側にはプリント基板(図示されず)が取り付けられる。プリント基板には、CPU(中央処理演算装置)やHDC(ハードディスクコントローラ)といったLSIチップのほか、コネクタが実装される。CPUやHDCの働きでHDD11の動作は制御される。コネクタには、例えばホストコンピュータのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブルが受け入れられる。CPUやHDCは電源用ケーブルから供給される電力に基づき動作する。
【0012】
収容空間には記録媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記録媒体に構成される。
【0013】
収容空間には駆動機構すなわちキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきアルミニウム(Al)から成型されればよい。
【0014】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダ22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0015】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は主磁極および副磁極の働きで単磁極ヘッドおよび磁気ディスク14を循環する。こういった循環の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に磁界は誘導される。この磁界の働きで磁気ディスク14に磁気情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子が用いられる。GMR素子やTMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。抵抗変化に基づき磁気ディスク14から磁気情報は読み出される。
【0016】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0017】
キャリッジブロック17にはボイスコイルモータ(VCM)23が連結される。ボイスコイルモータ23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダ22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0018】
図2は本発明の一実施形態に係る磁気ディスク14の構造を概略的に示す。磁気ディスク14の表裏面には磁気ディスク14の周方向すなわちダウントラック方向に沿って複数筋の記録トラック25、25…が延びる。記録トラック25は同心円状に形成される。磁気ディスク14の表裏面には、磁気ディスク14の半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば60本)のサーボ領域26が規定される。サーボ領域26の湾曲は電磁変換素子の移動経路に基づき設定される。隣接するサーボ領域26の間にはデータ領域27が確保される。こうして各記録トラック25にはサーボ領域26およびデータ領域27が交互に区画される。サーボ領域26には浮上ヘッドスライダ22の電磁変換素子の位置決め用の磁気情報が格納される。
【0019】
図3に示されるように、各記録トラック25では等間隔でダウントラック方向に複数の磁性ドット28が配列される。個々の磁性ドット28は、例えば磁気ディスク14の表面に直交する中心軸を有する円柱すなわち磁性ピラーから形成される。磁性ドット28の直径は例えば20nm程度に設定される。各磁性ドット28では、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に上向き(垂直方向に外向き)の磁化または下向き(垂直方向に内向き)の磁化が確立される。こうして各磁性ドット28に磁気情報が記録される。磁性ドット28同士は非磁性体29で磁気的に分離される。こうした磁性ドット28はサーボ領域26およびデータ領域27に配置される。
【0020】
各記録トラック25上で磁性ドット28同士は磁性ドット28の直径と同一の間隔で隔てられる。任意の記録トラック25の磁性ドット28は、隣接する記録トラック25の磁性ドット28に対してダウントラック方向にずれて配置される。例えば最外周記録トラック25および最内周記録トラック25の間に規定される中間位置では、任意の記録トラック25上で相互に隣接する磁性ドット28の中心軸同士の中間位置上を通過する半径線上に、隣接する記録トラック25の磁性ドット28の中心軸が配置される。隣接する記録トラック25同士の間には境界線31が規定される。相互に隣接する記録トラック25同士の間で磁性ドット28は境界線31に沿って交互に配列される。境界線31は磁気ディスク14のダウントラック方向に延びる。
【0021】
浮上ヘッドスライダ22の読み出しヘッド素子32は境界線31上を辿る。読み出しヘッド素子32の中心線CLが境界線31上に位置決めされると、オントラックが実現される。読み出しヘッド素子32のエッジ32a、32a同士の間隔すなわちコア幅CWは、クロストラック方向に規定される記録トラック25のトラック幅TWの1倍以上で2倍より小さい幅に設定される。ここでは、コア幅CWはトラック幅TWの1.5倍に設定される。トラック幅TWは磁性ドット28の直径と同一に規定される。読み出しヘッド素子32が境界線31上を辿ると、読み出しヘッド素子32には2本の記録トラック25の磁性ドット28から交互に磁界が作用する。磁性ドット28は境界線31に沿って交互に配列されることから、読み出しヘッド素子32は各磁性ドット28から順番に個別に磁気情報を読み出すことができる。読み出し処理の詳細は後述される。
【0022】
図4に示されるように、例えば外周側の記録トラック25上では、浮上ヘッドスライダ22すなわち読み出しヘッド素子32にスキュー角θが規定される。スキュー角θは、読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との交差角で規定される。こうした磁気ディスク14上では、任意の記録トラック25上で相互に隣接する磁性ドット28の中心軸同士の中間位置上を通過する半径線に、交差角θで交差する交差線上に隣接する記録トラック25の磁性ドット28の中心軸が配置される。こうして相互に隣接する記録トラック25同士の間で磁性ドット28はスキュー角θに応じたずれ量でダウントラック方向にずれて配置される。各記録トラック25上で相互に隣接する磁性ドット28同士の間隔は磁気ディスク14上で一様に規定される。
【0023】
同様に、図5に示されるように、例えば内周側の記録トラック25上では、浮上ヘッドスライダ22すなわち読み出しヘッド素子32にスキュー角θが規定される。任意の記録トラック25上で相互に隣接する磁性ドット28の中心軸同士の中間位置上を通過する半径線に、交差角θで交差する交差線上に隣接する記録トラック25の磁性ドット28の中心軸が配置される。こうして相互に隣接する記録トラック25同士の間で磁性ドット28はスキュー角θに応じたずれ量でダウントラック方向にずれて配置される。このスキュー角θは、中間位置の記録トラック25に対して前述のスキュー角θと正反対に規定される。スキュー角θ、θは前述の中間位置の記録トラック25から外周側や内周側に遠ざかるにつれてそれぞれ増大する。こうしたスキュー角θ、θに応じて記録トラック25ごとに磁性ドット28のずれ量が決定されればよい。
【0024】
図6に示されるように、磁気ディスク14は基板41を備える。基板41は例えばガラス基板から形成される。基板41の表面には裏打ち層42が広がる。裏打ち層42は例えば炭化鉄タンタル(FeTaC)膜やニッケル鉄(NiFe)膜といった軟磁性体から構成されればよい。裏打ち層42では、基板41の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。裏打ち層42の表面にはタンタル(Ta)密着層43が広がる。タンタル密着層43は非晶質構造を有する。タンタル密着層43の表面にはルテニウム(Ru)下地層44が広がる。ルテニウム下地層44は多結晶構造を有する。隣接する結晶同士は密着する。
【0025】
ルテニウム下地層44の表面には記録磁性層45が広がる。記録磁性層45に前述の磁性ドット28および非磁性体29が形成される。磁性ドット28および非磁性体29の間に規定される境界面は基板41の表面に直交する垂直方向に規定される。記録磁性層45では、基板41の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。磁性ドット28は例えばコバルトクロム白金(CoCrPt)から形成される。記録磁性層45の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜46やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜47で被覆される。
【0026】
図7に示されるように、HDD11には制御回路すなわちトラッキング制御回路51が組み込まれる。トラッキング制御回路51は、読み出しヘッド素子32から供給される信号に基づきトラッキングサーボ制御を実現する。トラッキングサーボ制御では、浮上ヘッドスライダ22上の読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との乖離量に基づき支軸18回りでキャリッジ16の回転量が決定される。キャリッジ16は浮上ヘッドスライダ22を境界線31に向かって移動させる。こういったトラッキングサーボ制御の働きに基づき、読み出しヘッド素子32の中心線CLは磁気ディスク14の境界線31上を辿ることができる。
【0027】
トラッキング制御回路51には読み出し回路52から読み出しヘッド素子32の信号が供給される。読み出し回路52は読み出しヘッド素子32にセンス電流を供給する。読み出しヘッド素子32の抵抗変化はセンス電流の電圧変化に現れる。電圧変化に基づき検出された信号は出力演算回路53に供給される。出力演算回路53は、読み出し回路52から供給される信号の出力の変化を検出する。検出された出力の変化に基づき、出力演算回路53では、読み出しヘッド素子32の位置を特定する位置情報が生成される。位置情報に基づき制御信号は生成される。制御信号はボイスコイルモータ23に供給される。ボイスコイルモータ23は制御信号の大きさに基づき支軸18回りでキャリッジ16を回転させる。キャリッジ16の回転に基づき読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との乖離は解消される。こうしてトラッキングサーボ制御は実現される。
【0028】
読み出しヘッド素子32の中心線CLが境界線31上を辿る場合には、境界線31を挟む2本の記録トラック25上に均等に配置される。その結果、オントラックが確立される場合には、相互に隣接する記録トラック25の磁性ドット28から同一の出力の信号が読み出される。その一方で、読み出しヘッド素子32の中心線CLが境界線31から一方の記録トラック25側に外れると、読み出しヘッド素子32はオントラック時に比べて一方の記録トラック25の磁性ドット28に大きな面積で向き合わせられる。この磁性ドット28から読み出される出力は増大する。同時に、読み出しヘッド素子32はオントラック時に比べて一方の記録トラック25に隣接する他方の記録トラック25の磁性ドット28に小さな面積で向き合わせられる。この磁性ドット28から読み出される出力は減少する。したがって、読み出しヘッド素子32のエッジ32a、32bが当該2本の記録トラック25上に留められる場合、読み出しヘッド素子32の出力は半径方向位置に応じて変化する。
【0029】
いま、書き込みヘッド素子すなわち単磁極ヘッドが磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、主磁極から漏れ出る磁界は磁性ドット28で記録磁性層45に作用する。記録磁性層45には、記録磁性層45の表面に直交する垂直方向に磁界は誘導される。磁界は裏打ち層42から単磁極ヘッドの副磁極に循環する。こうして記録磁性層45では1個の磁性ドット28ごとに上向き(垂直方向に外向き)の磁化または下向き(垂直方向に内向き)の磁化が確立される。こうして磁気情報は記録される。その一方で、読み出しヘッド素子32が磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、記録磁性層45の磁性ドット28から漏れ出る磁界は読み出しヘッド素子32のスピンバルブ膜やトンネル接合膜に作用する。スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から磁気情報は読み出される。
【0030】
いま、磁気ディスク14の回転中に読み出しヘッド素子32の中心線CLが境界線31上に位置決めされる場面を想定する。例えば磁気ディスク14の中間位置では、図8に示されるように、読み出しヘッド素子32は境界線31上を辿る。ここでは、磁化の向きが上向きの場合に正の信号が読み出される。磁化の向きが下向きの場合に負の信号が読み出される。正の信号および負の信号は「1」および「0(ゼロ)」のいずれかにそれぞれ相当する。読み出しヘッド素子32がサーボ領域26上に配置されると、読み出しヘッド素子32は、境界線31を挟んで相互に隣接する記録トラック25の磁性ドット28から交互に磁界を受ける。
【0031】
その結果、図9に示されるように、正および負の出力が検出される。読み出しヘッド素子32の中心線CLは境界線31上に位置決めされることから、相互に隣接する記録トラック25の磁性ドット28から均等な出力が供給される。したがって、図10に示されるように、各磁性ドット28から読み出される信号の出力の絶対値はすべて等しく規定される。出力演算回路53では、一方の記録トラック25からの出力と他方の記録トラック25からの出力との差分「0(ゼロ)」が検出される。したがって、差分「0」が検出される限り、読み出しヘッド素子32の中心線CLは境界線31上に位置決めされていることが確認される。
【0032】
例えば浮上ヘッドスライダ22や磁気ディスク14の振動その他の要因に基づき境界線31から半径方向に読み出しヘッド素子32のずれが観察される。図11に示されるように、読み出しヘッド素子32の中心線CLが境界線31から外周側にずれて位置決めされる場面を想定する。前述と同様に、読み出しヘッド素子32は境界線31上を辿る。図12に示されるように、内周側の記録トラック25の磁性ドット28からの出力は減少する一方で外周側の記録トラック25の磁性ドット28からの出力は増大する。図13に示されるように、各磁性ドット28から読み出される信号の出力の絶対値には差分Dが生じる。出力演算回路53では、内周側の記録トラック25からの出力と外周側の記録トラック25からの出力との差分Dが算出される。算出される差分Dは読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との乖離量Eに相当する。こうして出力演算回路53では、読み出しヘッド素子32の位置を特定する位置情報が生成される。差分Dと乖離量Eとの相関関係は予め算出されればよい。
【0033】
生成された位置情報に基づき制御信号は生成される。制御信号はボイスコイルモータ23に供給される。ボイスコイルモータ23は制御信号の大きさに基づき支軸18回りでキャリッジ16を回転させる。こうして読み出しヘッド素子32の中心線CLは境界線31上に位置決めされる。このとき、データ領域27では単磁極ヘッドの書き込み動作が許容される。単磁極ヘッドはデータ領域27で各磁性ドット28に磁気情報を書き込む。同様に、読み出しヘッド素子32は、データ領域27で各磁性ドット28から磁気情報を読み出す。こうして読み出しヘッド素子32は、サーボ領域26で位置決めされつつ、データ領域27で読み出し動作を実施する。
【0034】
次に、図14に示されるように、読み出しヘッド素子32の中心線CLが境界線31から内周側にずれて位置決めされる場面を想定する。前述と同様に、読み出しヘッド素子32は境界線31上を辿る。その結果、図15に示されるように、内周側の記録トラック25の磁性ドット28からの出力は増大する一方で外周側の記録トラック25の磁性ドット28からの出力は減少する。図16に示されるように、各磁性ドット28から読み出される信号の出力の絶対値には差分Dが生じる。出力演算回路53では、内周側の記録トラック25からの出力と外周側の記録トラック25からの出力との差分Dが算出される。算出される差分Dは読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との乖離量Eに相当する。こうして出力演算回路53では、読み出しヘッド素子32の位置を特定する位置情報が生成される。その後、前述と同様に、読み出しヘッド素子32の中心線CLは境界線31上に位置決めされる。なお、磁気ディスク14の内周側や外周側でも同様の処理が実施される。
【0035】
以上のようなHDD11では、トラッキングサーボ制御にあたって、読み出しヘッド素子32は境界線31上を辿る。このとき、読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との間に乖離が生じると、相互に隣接する記録トラック25の一方からの出力と他方からの出力との間に差分Dが生じる。こうした差分Dの大きさに応じて中心線CLと境界線31との乖離量Eが算出される。乖離量Eに基づき読み出しヘッド素子32の位置情報が生成される。生成された位置情報に基づきキャリッジ16の制御信号は生成される。その結果、読み出しヘッド素子32の中心線CLは境界線31上を辿り続けることができる。こうして読み出しヘッド素子32すなわち電磁変換素子は磁気ディスク14上で正確に位置決めされる。
【0036】
以上のようなHDD11では、データ領域27で読み出しヘッド素子32の位置決めが実施されてもよい。このとき、図17に示されるように、磁気ディスク14ではデータ領域27は複数のサブセクタ61に分割される。ここでは、各データ領域27は9個のサブセクタ61に分割される。各サブセクタ61には所定の数の磁性ドット28が配列される。トラッキング制御回路51は、位置決めに使用する任意の1つのサブセクタ61を選択する。このとき、サブセクタ61内で任意の範囲を占める領域62が選択されてもよい。サブセクタ61の選択や領域62の範囲は、HDD11内で位置決め処理以外の処理に割かれる処理の量に応じて決定される。例えば位置決め処理以外の処理が多ければ、1つのサブセクタ61内の小さい範囲の領域62が選択されればよい。その結果、HDD11では複数の処理が同時に効率的に実施されることができる。
【0037】
こうしたHDD11では、データ領域27内で、読み出しヘッド素子32の位置決め処理と信号の復調処理とが同時に実施されてもよい。読み出しヘッド素子32は境界線31上を辿る。読み出しヘッド素子32は、相互に隣接する記録トラック25の磁性ドット28から磁気情報を読み出す。図18に示されるように、磁性ドット28の正負に応じて出力が検出される。このとき、出力「0(ゼロ)」が信号の閾値に設定される。閾値より大きければ正、閾値より小さければ負が検出される。こうして信号の出力では磁性ドット28の正負が検出される。磁気情報が読み出される。同時に、前述と同様に、各磁性ドット28から読み出される信号の出力の絶対値が算出される。読み出しヘッド素子32の中心線CLと境界線31との間に乖離が生じていれば、絶対値には差分Dが生じる。その後、前述と同様の処理が実施される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの部分平面図である。
【図3】磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図4】磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図5】磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図6】図3の6−6線に沿った部分拡大断面図である。
【図7】トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図8】読み出しヘッド素子の移動経路を示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図9】読み出しヘッド素子の出力値の波形を示すグラフである。
【図10】読み出しヘッド素子の出力値の絶対値の波形を示すグラフである。
【図11】読み出しヘッド素子の移動経路を示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図12】読み出しヘッド素子の出力値の波形を示すグラフである。
【図13】読み出しヘッド素子の出力値の絶対値の波形を示すグラフである。
【図14】読み出しヘッド素子の移動経路を示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図15】読み出しヘッド素子の出力値の波形を示すグラフである。
【図16】読み出しヘッド素子の出力値の絶対値の波形を示すグラフである。
【図17】磁気ディスクの記録トラックの構造を概略的に示す概念図である。
【図18】読み出しヘッド素子の出力値およびその絶対値の波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
11 記録媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、16 駆動機構(キャリッジ)、25 第1記録トラック・第2記録トラック(記録トラック)、26 サーボ領域、27 データ領域、28 第1磁性ドット・第2磁性ドット(磁性ドット)、31 境界線、32 ヘッド(読み出しヘッド素子)、51 制御回路(トラッキング制御回路)、61 サブセクタ、D 差分、CW コア幅、TW トラック幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウントラック方向に等間隔で配列される第1磁性ドットを区画する第1記録トラック、および、前記第1記録トラックに隣接し、ダウントラック方向に前記第1磁性ドット同士の間隔と等間隔で配列されつつ第1磁性ドットに対してダウントラック方向にずれて配置される第2磁性ドットを区画する第2記録トラックの境界線に沿ってヘッドおよび前記磁性ドットを相対移動させる工程と、
前記第1磁性ドットから読み出される信号の第1出力、および、前記第2磁性ドットから読み出される信号の第2出力の差分に基づき前記ヘッドの位置を特定する位置情報を生成する工程とを備えることを特徴とするヘッド位置検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッド位置検出方法において、前記ヘッドのコア幅は前記記録トラックのトラック幅の1倍以上で2倍より小さいことを特徴とするヘッド位置検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘッド位置検出方法において、前記記録トラックには、磁気情報を格納するデータ領域と、前記データ領域に隣接しつつ前記ヘッドの位置決め用の磁気情報を格納するサーボ領域とが規定され、前記位置情報の生成にあたって前記ヘッドは前記データ領域の磁性ドットから信号が読み出されることを特徴とするヘッド位置検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載のヘッド位置検出方法において、前記データ領域は複数のサブセクタに分割され、前記位置情報の生成にあたって前記信号の読み出し対象の前記サブセクタが任意に選択されることを特徴とするヘッド位置検出方法。
【請求項5】
請求項3に記載のヘッド位置検出方法において、前記位置情報の生成と同時に前記データ領域の磁性ドットから信号が読み出されることを特徴とするヘッド位置検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のヘッド位置検出方法において、前記第1記録磁性ドットおよび前記第2磁性ドットは、前記ヘッドのスキュー角に応じたずれ量でダウントラック方向にずれて配置されることを特徴とするヘッド位置検出方法。
【請求項7】
ダウントラック方向に等間隔で配列される第1磁性ドットを区画する第1記録トラック、および、前記第1記録トラックに隣接し、ダウントラック方向に前記第1磁性ドット同士の間隔と等間隔で配列されつつ第1磁性ドットに対してダウントラック方向にずれて配置される第2磁性ドットを区画する第2記録トラックを規定する記録媒体と、
前記記録媒体に向き合わせられて、前記磁性ドットから信号を読み出すヘッドと、
前記ヘッドを支持し、前記記録トラックのトラック幅方向に前記ヘッドを移動させる駆動機構と、
前記第1記録トラックおよび前記第2記録トラックの境界線に沿って前記記録媒体に対して相対移動する前記ヘッドから供給される前記第1磁性ドットから読み出される信号の第1出力、および、前記第2磁性ドットから読み出される信号の第2出力の差分を検出し、検出された差分に基づき前記駆動機構の動きを制御する制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−44833(P2010−44833A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208823(P2008−208823)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】