説明

ヘッド移動機構及び画像形成装置

【課題】サーマルヘッド等の印画ヘッドの移動精度や移動速度を低下させることなく、ヘッド移動機構の小型化を図る。
【解決手段】サーマルヘッド10は、画像を形成する際の印画ポジションと、印画ポジションから離れた待機ポジションと、待機ポジションから印画ポジションと反対の方向に離れた退避ポジションとの間を移動可能であり、印画ポジションと待機ポジションとの間でサーマルヘッド10を移動させるための偏心カム53と、待機ポジションと退避ポジションとの間でサーマルヘッド10を移動させるためのラック55及びピニオン56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を形成する際の印画ポジションと、画像を形成する準備等の際の待機ポジションと、画像を形成しない際の退避ポジションとの間で印画ヘッドを移動させることが可能なヘッド移動機構及び画像形成装置に係るものである。そして、詳しくは、印画ヘッドの移動精度や移動速度を低下させることなく、ヘッド移動機構の小型化を図ることが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像を形成するための印画ヘッドを備える画像形成装置には、プリンタ、複写機、ファクシミリ等がある。そして、印画ヘッドとして、複数の発熱素子(例えば、発熱抵抗体)がライン状に配列されたサーマルヘッドを備えるライン型のサーマルプリンタが知られている。このサーマルプリンタには、主に、昇華方式、溶融方式、感熱方式があるが、いずれにしても、サーマルヘッドの発熱素子に、階調レベルに応じた選択的な通電を行い、その際に発生する熱エネルギを利用して、各種の記録用紙に画像を形成するようになっている。
【0003】
ここで、昇華方式のサーマルプリンタの場合には、プラテンローラに搬送されたインクリボン及び記録用紙に対し、サーマルヘッドを圧接させることで画像を形成する。そのため、サーマルヘッドは、プラテンに対して接離可能に構成されており、画像形成動作に応じてサーマルヘッドが昇降移動するように制御される。すなわち、サーマルヘッドは、画像を形成する際の印画ポジションと、画像を形成する準備等の際に印画ポジションから離れて待機する待機ポジションとの間を移動する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−1113号公報
【0004】
このサーマルヘッドの昇降動作には、回動可能に軸支持したヘッド支持部材をカムによって揺動させるカム機構が多く用いられている。そして、昇降動作の移動ストロークが印画ポジションと待機ポジションとの間の数ミリメートル程度であるので、カムは、その移動ストロークに相応の小型のものとなっている。また、サーマルヘッドの圧接具合は、カム形状の工夫等によって緻密な調整が容易にできるものである。すなわち、画像を形成する際は、小型で調整が容易なカム機構によってサーマルヘッドが昇降する。
【0005】
一方、サーマルヘッドのメンテナンスやインクリボンの交換の際には、サーマルヘッドを待機ポジションよりもさらに大きく印画ポジションから離間させ、退避させておくことがある。そして、メンテナンスやリボン交換の作業性を向上させるとともに、サーマルプリンタ内の精巧な各種の機構部やサーマルヘッドの発熱素子を汚損や破損等から保護している。
【0006】
このように、サーマルヘッドは、印画ポジションと待機ポジションとの間だけでなく、サーマルヘッドを退避させておく退避ポジションにも移動する。そして、待機ポジションと退避ポジションとの間の移動にも、カム機構が多く用いられている。そのため、サーマルヘッドの昇降用の小型カムと退避用の大型カムとを併用して連動させたり、大型カムに小型カムのプロフィールを一体的に形成したりしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この退避動作に要する移動ストロークは、数十ミリメートル以上と長いので、退避用の大型カムの寸法は、昇降用の小型カムの寸法と比較して何倍もの大きさとなってしまう。そのため、ヘッド移動機構をすべてカム機構で構成すると、大型カムを配置するためのスペースが必要となるだけでなく、大型カムを回動させるだけの駆動力も必要となるので、ヘッド移動機構が大型化するという問題がある。また、カム機構では、退避動作の際の移動速度が遅いという問題もある。さらにまた、クランク機構等、カム機構以外でヘッド移動機構を構成すると、移動精度が低くなってしまうため、今度は、サーマルヘッドの昇降動作に問題が生じる。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、サーマルヘッド等の印画ヘッドの移動精度や移動速度を低下させることなく、ヘッド移動機構の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、画像を形成するための印画ヘッドを備え、前記印画ヘッドは、画像を形成する際の印画ポジションと、前記印画ポジションから離れた待機ポジションと、前記待機ポジションから前記印画ポジションと反対の方向に離れた退避ポジションとの間を移動可能であり、前記印画ポジションと前記待機ポジションとの間で前記印画ヘッドを移動させるためのカム機構と、前記待機ポジションと前記退避ポジションとの間で前記印画ヘッドを移動させるためのラック・アンド・ピニオン機構とを備えるヘッド移動機構である。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、上記のヘッド移動機構を備える画像形成装置である。
【0011】
(作用)
上記の請求項1及び請求項5に記載の発明は、印画ポジションと待機ポジションとの間の印画ヘッドの移動は、カム機構によって行う。また、待機ポジションと退避ポジションとの間の印画ヘッドの移動は、ラック・アンド・ピニオン機構によって行う。すなわち、移動ストロークが短く、移動精度が優先されるヘッド昇降区間には、移動精度に優れるカム機構を用い、移動ストロークが長く、移動速度が優先されるヘッド退避区間には、大型カムが必要なカム機構ではなく、ラック・アンド・ピニオン機構を用いるようになっている。
【発明の効果】
【0012】
上記の発明によれば、移動精度が優先される印画ポジションと待機ポジションとの間をカム機構とし、移動速度が優先される待機ポジションと退避ポジションとの間をラック・アンド・ピニオン機構としているので、それぞれの占有スペースを必要最低限のものとしながら、適切な形態の機構で印画ヘッドを移動させることができる。そのため、印画ヘッドの移動精度や移動速度を低下させることなく、ヘッド移動機構の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、本発明の画像形成装置として、昇華式のサーマルプリンタ1を例に挙げて説明する。そして、本発明のヘッド移動機構50は、このサーマルプリンタ1に実装されるものとする。
【0014】
図1は、本実施形態のサーマルプリンタ1の基本構成を示す側面図である。
また、図2は、図1に示すサーマルヘッド10(本発明における印画ヘッドに相当するもの)の各ポジション(印画ポジション、待機ポジション、及び退避ポジション)を示す側面図である。
【0015】
本実施形態のサーマルプリンタ1は、図1及び図2に示すように、複数の発熱素子(例えば、発熱抵抗体)がライン状に配列されたサーマルヘッド10を備えている。そして、サーマルヘッド10の発熱素子に通電したときの発熱エネルギを利用してインクリボン31に塗布された昇華性染料を昇華させ、記録用紙41上に転写させて画像を形成するように構成されている。
【0016】
ここで、記録用紙41は、ロール状に巻かれたものであり、図1に示すように、ペーパーホルダ42に保持されている。そして、ペーパーホルダ42がサーマルプリンタ1内の所定の場所にセットされていれば、一対の給紙ローラ14により、記録用紙41が必要に応じてペーパーホルダ42から引き出される。
【0017】
また、引き出された記録用紙41は、キャプスタンローラ12(駆動ローラ)及びピンチローラ13(従動ローラ)によって搬送される。すなわち、記録用紙41は、キャプスタンローラ12とピンチローラ13との間に挟持され、キャプスタンローラ12の回転駆動によってサーマルヘッド10に向けて導かれる。そして、この際、記録用紙41が搬送ガイド15によって案内されるので、記録用紙41の先端部がプラテンローラ11(本発明におけるプラテンに相当するもの)に衝突して座屈等することなく、サーマルヘッド10とプラテンローラ11との間に確実に搬送される。なお、プラテンローラ11のようなローラ形状以外のプラテン(例えば、板状)を使用することもできる。
【0018】
一方、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色ごとに色分けされるとともに、透明なラミネートインク(L)が塗布されたインクリボン31は、リボンカセット(図示せず)内に収められている。そして、色変換処理された階調データに応じてリボンカセットの供給リール32から巻き出され、プラテンローラ11及び記録用紙41の上側を通るように2つのガイドローラ19によって導かれた後、リボンカセットの巻取りリール33に巻き取られる。
【0019】
このようなサーマルプリンタ1によって画像を形成する際は、画像を形成する準備等のためにプラテンローラ11から離れるように上昇していたサーマルヘッド10が下降し、プラテンローラ11を押圧する(図1及び図2(a)参照)。すなわち、サーマルヘッド10は、ヘッド移動機構50により、プラテンローラ11から離れて待機していた待機ポジション(図2(b)参照)から印画ポジション(図2(a)参照)まで移動する。そして、プラテンローラ11を押圧し、サーマルヘッド10とプラテンローラ11との間でインクリボン31及び記録用紙41を挟持する。
【0020】
この状態で、図1に示すキャプスタンローラ12をCW方向(時計回り)に回転駆動するとともに、巻取りリール33でインクリボン31を巻き取ると、記録用紙41及びインクリボン31が印画の開始地点から印画の終了地点まで送り方向(図1では、右方向)に搬送される。そして、この間にサーマルヘッド10に階調データを入力すると、記録用紙41の幅方向に配列された発熱素子が選択的に通電駆動される。そのため、サーマルヘッド10から熱エネルギが発生し、それによってインクリボン31のイエロー(Y)のインク(1番目のインク)が昇華され、記録用紙41上に転写される。
【0021】
また、サーマルヘッド10とプラテンローラ11との間で記録用紙41上に重ね合わされ、イエロー(Y)のインクが転写されたインクリボン31は、その後、記録用紙41の送り方向に対し、サーマルヘッド10及びプラテンローラ11よりも下流側に設けられたリボン剥離部材16によって記録用紙41から剥離される。すなわち、インクリボン31は、インクの転写が終了すると、サーマルヘッド10の押圧力と熱とによって記録用紙41に強く貼り付いた状態となっている。そこで、ブレード状のリボン剥離部材16の先端部をインクリボン31の背面側に当接させ、記録用紙41の送り方向に対して所定の角度でインクリボン31を引き離すことにより、記録用紙41からインクリボン31を剥離させている。
【0022】
このようにしてイエロー(Y)の転写を行った後に、次のマゼンタ(M)を転写するための準備を行う。すなわち、カラー印画の場合には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のインクを各色ごとに転写するので、1色の転写が終わるたびに、下降していたサーマルヘッド10を上昇させ、印画ポジション(図2(a)参照)から離れた待機ポジション(図2(b)参照)に戻して、サーマルヘッド10による記録用紙41の押圧を解除する。そして今度は、キャプスタンローラ12をCCW方向(反時計回り)に逆回転駆動させ、印画の開始地点まで記録用紙41を戻し方向(図1では、左方向)に搬送する。
【0023】
次に、イエロー(Y)の転写と同様にして、2番目のマゼンタ(M)の転写を行う。すなわち、ヘッド移動機構50によってサーマルヘッド10を印画ポジションに移動させ、プラテンローラ11との間にインクリボン31及び記録用紙41を挟持する。そして、記録用紙41を印画の終了地点まで送り方向に搬送しながらインクリボン31のマゼンタ(M)の転写を行う。また、マゼンタ(M)を転写した後は、同様にして、3番目のシアン(C)の転写を行う。さらにまた、各カラーインク(Y,M,C)によって形成された画像を紫外線等から保護し、耐光性を向上させるため、最後にラミネートインク(L)を転写する。
【0024】
最後のラミネートインク(L)の転写が終了し、カラー画像が形成された印画後の記録用紙41は、図1に示すデカールローラ17により、記録用紙41に付けられたカールの方向(ロール状の巻き内方向)と逆方向(図1では、上方向)に屈曲されてカールが矯正される。その後、記録用紙41は、カッタ18によって所定の長さに切断され、排紙口20から排紙される。
【0025】
したがって、サーマルヘッド10は、ヘッド移動機構50により、1番目のイエロー(Y)のインクの転写開始から4番目(最後)のラミネートインク(L)の転写終了までの間に、画像を形成する際の印画ポジション(図2(a)参照)と、印画ポジションから離れた待機ポジション(図2(b)参照)との間を4往復移動する。そして、この間の移動ストロークは、数ミリメートル程度と短いが、プラテンローラ11を押圧して転写を行うため、ヘッド移動機構50には、高い移動精度が求められる。
【0026】
また、転写によってインクリボン31が消費され、その交換を行う際や、サーマルヘッド10のメンテナンスを行う際には、ヘッド移動機構50により、サーマルヘッド10を待機ポジションよりもさらに大きく印画ポジションから離間させる。すなわち、メンテナンスやリボン交換の作業性を向上させるとともに、サーマルプリンタ1内の精巧な各種の機構部やサーマルヘッド10の発熱素子を汚損や破損等から保護するため、待機ポジションから印画ポジションと反対の方向に離れた退避ポジション(図2(c)参照)にサーマルヘッド10を移動させる。そして、待機ポジションと退避ポジションとの間の移動ストロークは、数十ミリメートル以上と長いので、ヘッド移動機構50には、小型化及び素早い移動動作が求められることとなる。
【0027】
図3から図5は、本実施形態のヘッド移動機構50を示す側面図である。
なお、図3は、サーマルヘッド10が待機ポジションにある状態を示し、図4は、サーマルヘッド10が印画ポジションにある状態を示し、図5は、サーマルヘッド10が退避ポジションにある状態を示している。
【0028】
図3に示す待機ポジションでは、サーマルヘッド10は、印画指令が入力され次第、画像形成動作に即座に移行できるように、プラテンローラ11から数ミリメートル離れた位置に配置される。そして、サーマルヘッド10は、ヘッド移動機構50によって移動可能となっている。
【0029】
ここで、ヘッド移動機構50は、揺動アーム51、ヘッドホルダ52、偏心カム53(本発明におけるカム機構に相当するもの)、引張りスプリング54、及びラック55とピニオン56(本発明におけるラック・アンド・ピニオン機構に相当するもの)によって構成されたものである。そして、サーマルヘッド10は、揺動アーム51の先端部に設けられたヘッドホルダ52に装着されている。
【0030】
揺動アーム51は、板金等によって形成されたものであり、揺動アーム51の後端部がサーマルプリンタ1の本体フレーム2に回動可能に支持されている。すなわち、本体フレーム2に回転支持軸3が設けられ、この回転支持軸3に揺動アーム51の後端部が支持されている。そのため、揺動アーム51は、ヘッドホルダ52が設けられた先端部が回転支持軸3を中心として円弧軌道上を回動するので、サーマルヘッド10は、揺動アーム51の動きに伴って移動することが可能となる。
【0031】
また、揺動アーム51に設けられたヘッドホルダ52は、サーマルヘッド10の装着面がプラテンローラ11に対して略平行となるように固定されている。すなわち、揺動アーム51が回転支持軸3を中心として円弧軌道上を回動し、サーマルヘッド10が下降すると、サーマルヘッド10に配列された発熱素子がプラテンローラ11の表面と対向するようになる。
【0032】
さらにまた、揺動アーム51を回動させ、サーマルヘッド10をプラテンローラ11に向けて下降させることができるように、揺動アーム51の先端側には、偏心カム53が設置されている。一方、揺動アーム51は、引張りスプリング54により、揺動アーム51が引き上げられる方向(サーマルヘッド10がプラテンローラ11から離れて上昇する方向)に常に付勢されている。そのため、偏心カム53は、引張りスプリング54の付勢力により、本体フレーム2から突出した当接ピン4に当接する。
【0033】
図3に示す待機ポジションにおいては、偏心カム53が所定の偏心位置で当接ピン4との当接している。この偏心位置では、偏心カム53がサーマルヘッド10を下降させないだけでなく、引張りスプリング54の付勢力によって揺動アーム51が引き上げられている。そのため、サーマルヘッド10は、プラテンローラ11から数ミリメートル離れた待機ポジションに維持される。
【0034】
また、偏心カム53は、揺動アーム51上に固定された駆動モータ(図示せず)のベルト伝達によって駆動され、偏心カム53の回転角が制御される。そして、サーマルプリンタ1に印画指令が入力された場合には、駆動モータによって偏心カム53が所定の角度だけ回動し、当接ピン4との当接位置が変化する。その結果、揺動アーム51が引張りスプリング54の付勢力に抗して押し下げられ、揺動アーム51が回転支持軸3を中心として回動し、サーマルヘッド10が下降する。
【0035】
図4に示す印画ポジションは、サーマルヘッド10が下降した状態であり、偏心カム53による揺動アーム51の押下げによってサーマルヘッド10がプラテンローラ11を押圧する。この際、偏心カム53の回転角の制御により、高い移動精度でサーマルヘッド10を下降させることができるので、プラテンローラ11に対する押圧力は、インクリボン31(図1参照)の各インク(Y,M,C,L)の転写に最適となるように調整される。なお、図示していないが、印画ポジションでは、サーマルヘッド10とプラテンローラ11との間にインクリボン31及び記録用紙41が挟持される。
【0036】
また、図3に示す待機ポジションから図4に示す印画ポジションまでのサーマルヘッド10の移動ストロークは、数ミリメートル程度であるので、偏心カム53は、その移動ストロークに合わせた小型のものとなっている。そして、各インク(Y,M,C,L)の転写の終了後は、偏心カム53の逆回転制御によって当接ピン4との当接位置を元に戻す。すると、引張りスプリング54の付勢力によってサーマルヘッド10が上昇するので、今度は、サーマルヘッド10が図4に示す印画ポジションから図3に示す待機ポジションに復帰する。
【0037】
このように、サーマルヘッド10は、ヘッド移動機構50のカム機構を構成する偏心カム53により、画像を形成する際の印画ポジション(図4参照)と、印画ポジションから離れた待機ポジション(図3参照)との間を移動可能となっている。そして、印画ポジションでは、偏心カム53によってサーマルヘッド10がプラテンローラ11を適度に押圧し、サーマルヘッド10の熱エネルギでインクリボン31(図1参照)の各インク(Y,M,C,L)を転写して、記録用紙41に画像を形成する。
【0038】
一方、画像形成動作が終了し、例えば、インクリボン31を交換したり電源を遮断したりする場合等、画像を形成しない際には、メンテナンス性の向上やサーマルプリンタ1内の各種の機構部の保護等のため、サーマルヘッド10を図5に示す退避ポジションまで退避させる。
【0039】
図5に示す退避ポジションは、待機ポジション(図3参照)から印画ポジション(図4参照)と反対の方向に離れた位置にあり、この退避ポジションになると、サーマルヘッド10は、プラテンローラ11に対し、待機ポジションよりもさらに離れるようになる。そのため、図3に示す待機ポジションから図5に示す退避ポジションまでのサーマルヘッド10の移動ストロークは、数十ミリメートル以上と長くなっている。
【0040】
そこで、ヘッド移動機構50は、偏心カム53によって構成されるカム機構に加えて、ラック55及びピニオン56によって構成されるラック・アンド・ピニオン機構を備えている。すなわち、ラック55が本体フレーム2に設置されており、このラック55にピニオン56がかみ合うようになっている。そして、ラック55は、揺動アーム51の回動軌跡に沿うようにして、円弧軌道を形成している。
【0041】
また、ピニオン56は、揺動アーム51の先端側に、偏心カム53に隣接して設置されている。このピニオン56は、偏心カム53とは別の駆動モータ(図示せず)によって伝達駆動され、サーマルプリンタ1の動作状況に応じて正逆回転するように制御される。そのため、ピニオン56をCW方向に回転させれば、ピニオン56がラック55の右方向に進むので、図3に示す状態から揺動アーム51がさらに引き上げられる。その結果、サーマルヘッド10が待機ポジション(図3参照)から退避ポジション(図5参照)へと移動する。なお、この場合、ラック55をさらに延長することで揺動アーム51の回転範囲を大きくできるので、サーマルヘッド10をより奥まった位置(待機ポジションからより離れた位置)まで退避させることができる。
【0042】
ところで、図3に示す待機ポジションから図5に示す退避ポジションまでのサーマルヘッド10の移動は、円滑に行なわれなければならない。すなわち、偏心カム53の回転による揺動アーム51の駆動状態からピニオン56がラック55にかみ合う駆動状態への切替えが一連の動作として実行される必要がある。そのため、サーマルヘッド10を待機ポジションから退避ポジションに移動させる際は、偏心カム53が当接ピン4に当接しないように偏心カム53の回転制御がなされる。すると、揺動アーム51が引張りスプリング54の付勢力によって待機ポジションからさらに引っ張られ、ピニオン56がラック55にかみ合う。
【0043】
このように、サーマルヘッド10は、ヘッド移動機構50のラック・アンド・ピニオン機構を構成するラック55及びピニオン56により、印画ポジション(図4参照)から離れた待機ポジション(図3参照)と、待機ポジションから印画ポジション(図4参照)と反対の方向に離れた退避ポジション(図5参照)との間を移動可能となっている。すなわち、印画ポジションと待機ポジションとの間は、偏心カム53(カム機構)によってサーマルヘッド10が移動し、待機ポジションと退避ポジションとの間は、ラック55及びピニオン56(ラック・アンド・ピニオン機構)によってサーマルヘッド10が移動する。そして、ラック55及びピニオン56によるサーマルヘッド10の移動ストローク(待機ポジションと退避ポジションとの間の距離)は、偏心カム53による移動ストローク(印画ポジションと待機ポジションとの間の距離)よりも長く設定されている。
【0044】
したがって、サーマルヘッド10をプラテンローラ11から大きく離間させる必要があるメンテナンスやインクリボン31の交換の際は、長い移動ストロークを経てサーマルヘッド10が退避ポジションに退避する。その結果、メンテナンスやリボン交換の作業性が向上するだけでなく、サーマルプリンタ1内の精巧な各種の機構部やサーマルヘッド10の発熱素子を汚損や破損等から保護できるようになる。
【0045】
また、移動ストロークが短く、移動精度が優先される印画ポジションと待機ポジションとの間には、サーマルヘッド10の移動に偏心カム53(カム機構)が用いられ、移動ストロークが長く、移動速度が優先される待機ポジションと退避ポジションとの間には、ラック55及びピニオン56(ラック・アンド・ピニオン機構)が用いられている。そのため、ヘッド移動機構50は、偏心カム53やラック55及びピニオン56が適材適所に配置され、必要な移動精度や移動速度が得られるだけでなく、必要最低限の大きさでサーマルプリンタ1内に配置及び収容できるようになる。すなわち、各ポジションへの移動時の精度や速度を低下させることなく小型化及び軽量化が可能であり、コストダウンを図ることができるものとなっている。
【0046】
さらにまた、印画ポジション、待機ポジション、及び退避ポジションは、同一の円弧軌道上に配置されており、ラック55は、待機ポジションと退避ポジションとの間の円弧軌道に沿って本体フレーム2に設けられている。そのため、揺動アーム51は、回転支持軸3に軸支持されるだけの簡潔な構造となり、偏心カム53やピニオン56を回転させるだけで、サーマルヘッド10を高い精度で移動させることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形等が可能である。すなわち、
(1)本実施形態は、サーマルプリンタ1のサーマルヘッド10のヘッド移動機構50としているが、これに限らず、各種のプリンタ、複写機、ファクシミリ等の印画ヘッドの移動に適用することができる。
【0048】
(2)本実施形態では、ラック・アンド・ピニオン機構のラック55を本体フレーム2側に配置し、ピニオン56を揺動アーム51側に配置しているが、これに限られることなく、サーマルプリンタ1内のレイアウトに適応した配置であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態のサーマルプリンタの基本構成を示す側面図である。
【図2】図1に示すサーマルヘッドの各ポジションを示す側面図である。
【図3】本実施形態のヘッド移動機構を示す側面図であり、サーマルヘッドが待機ポジションにある状態を示している。
【図4】本実施形態のヘッド移動機構を示す側面図であり、サーマルヘッドが印画ポジションにある状態を示している。
【図5】本実施形態のヘッド移動機構を示す側面図であり、サーマルヘッドが退避ポジションにある状態を示している。
【符号の説明】
【0050】
1 サーマルプリンタ(画像形成装置)
10 サーマルヘッド(印画ヘッド)
11 プラテンローラ(プラテン)
50 ヘッド移動機構
53 偏心カム(カム機構)
55 ラック(ラック・アンド・ピニオン機構)
56 ピニオン(ラック・アンド・ピニオン機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成するための印画ヘッドを備え、
前記印画ヘッドは、
画像を形成する際の印画ポジションと、
前記印画ポジションから離れた待機ポジションと、
前記待機ポジションから前記印画ポジションと反対の方向に離れた退避ポジションと
の間を移動可能であり、
前記印画ポジションと前記待機ポジションとの間で前記印画ヘッドを移動させるためのカム機構と、
前記待機ポジションと前記退避ポジションとの間で前記印画ヘッドを移動させるためのラック・アンド・ピニオン機構と
を備えるヘッド移動機構。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッド移動機構において、
前記印画ヘッドに対向するプラテンを備え、
前記カム機構は、前記印画ポジションでは、前記印画ヘッドを前記プラテンに押圧させる
ヘッド移動機構。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッド移動機構において、
前記印画ポジション、前記待機ポジション、及び前記退避ポジションは、同一の円弧軌道上に配置されており、
前記ラック・アンド・ピニオン機構のラックは、前記待機ポジションと前記退避ポジションとの間の円弧軌道に沿って設けられている
ヘッド移動機構。
【請求項4】
請求項1に記載のヘッド移動機構において、
前記ラック・アンド・ピニオン機構による前記印画ヘッドの移動距離は、前記カム機構による前記印画ヘッドの移動距離よりも長く設定されている
ヘッド移動機構。
【請求項5】
画像を形成するための印画ヘッドを備え、
前記印画ヘッドは、
画像を形成する際の印画ポジションと、
前記印画ポジションから離れた待機ポジションと、
前記待機ポジションから前記印画ポジションと反対の方向に離れた退避ポジションと
の間を移動可能であり、
前記印画ポジションと前記待機ポジションとの間で前記印画ヘッドを移動させるためのカム機構と、
前記待機ポジションと前記退避ポジションとの間で前記印画ヘッドを移動させるためのラック・アンド・ピニオン機構と
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−285980(P2009−285980A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140765(P2008−140765)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】