説明

ヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置

【課題】1つの局部発振器を用い、発振周波数を可変させることなく複数の周波数信号を受信することができ、コストダウンと発振不良や周波数切替えの応答速度低下の改善を図ること。
【解決手段】マルチチャンネル通信装置において、希望波とイメージの関係にある2つの周波数を第1及び第2のチャンネルCH1,CH2として用い、ミキサ部は2つのミキサブロック(2,5,6、9,11)(3,7,8、12,13)を有し、一方のミキサブロックと他方のミキサブロックとでイメージとなるチャンネルの周波数信号を互いに逆相にして出力し、加算部10にて打ち消す。また、ミキサ27の前段に、第1のチャンネルを通過帯域とし、第2のチャンネルを阻止帯域とした第1のフィルタ23と、第2のチャンネルを通過帯域とし、第1のチャンネルを阻止帯域とした第2のフィルタ25とを備え、スイッチ22,26,24,28にて切替可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロダイン方式で複数のチャンネルを受信可能なマルチチャンネル通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信信号と局部発振器の局部発振信号とを混合して両方の信号の周波数差を、中間周波数に変換し、それを増幅したあとに復調する受信方式(スーパーヘテロダイン方式)を採用した通信装置がある。たとえば、コード信号により変調され送信機から送信された電波を受信してコード信号を復調し、コード信号に対応した制御信号を車両制御部に出力するようにしたスーパーヘテロダイン方式のキーレスエントリ受信機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかるキーレスエントリ受信機では、狭帯域の中間周波数フィルタと広帯域の中間周波数フィルタとを備え、中間周波数フィルタをいずれかに切り替え、局部発振器を制御して局部発振器の発振周波数を所定範囲内で掃引できるように構成している。中間周波数フィルタを広帯域にして受信信号強度に基づいて受信波信号を検索し、受信波信号を検出すると中間周波数フィルタを狭帯域にして受信信号強度に基づいて受信波信号の同調を判定し、上記発振周波数の掃引を同調と判定された掃引点にて停止させている。
【0003】
ところで、1つの周波数信号では当該帯域に妨害波が存在すると通信できない可能性がある。そこで、互いに帯域の異なる2つの周波数信号(マルチチャネル)を用いて通信することが考えられている。スーパーヘテロダイン方式の受信機において、マルチチャネル対応にするためには、PLLを用いて局部発振器の発振周波数を制御する構成が考えられる。又はチャンネル数に応じた数の局部発振器を備え、スイッチング用ダイオードを用いて局部発振器を切り替える構成とすることが考えられる。
【特許文献1】特開平11−348732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、PLL回路を用いて局部発振器の発振周波数を可変させるか、又は複数の局部発振器を備えなければならないので、コストアップになるといった問題がある。また、スイッチング用ダイオードに起因した発振不良やPLLを用いることによる希望周波数に切替えるまでの応答速度の低下といった問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、1つの局部発振器を用いて発振周波数を可変させることなく複数の周波数信号を受信することができ、コストダウンを図ることができ、発振不良や周波数切替えの応答速度低下が改善されたヘテロダイン方式のマルチキャリア通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置は、局部発振信号を生成する局部発振器と、アンテナからのFSK変調された受信信号と前記局部発振信号とを混合して周波数の差分となる中間周波数fIFの中間周波信号に変換するミキサ部と、前記ミキサ部で周波数変換された中間周波信号を検波する検波回路と、前記局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ高い周波数を第1のチャンネルとし、前記局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ低い周波数を第2のチャンネルとして、前記第1のチャンネルと前記第2のチャンネルの受信を切り替える切替手段とを具備し、一方のチャンネル受信時には前記ミキサ部にて前記局部発振信号と混合して希望波を中間周波信号に変換すると共に、前記ミキサ部又はその前段で前記希望波に対してイメージとなる他方のチャンネルの周波数信号を除去することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ高い周波数を第1のチャンネルとし、同一の局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ低い周波数を第2のチャンネルとし、第1のチャンネルと第2のチャンネルとを切り替えて受信するので、第1及び第2のチャンネルともに同一の局部発振信号を用いて同一の中間周波数fIFの中間周波信号に変換できる。したがって、1つの局部発振器を用いて局部発振器を発振周波数を可変させることなく複数の周波数信号を受信することができ、コストダウンを図ることができ、発振不良や周波数切替えの応答速度低下を改善できる。
【0008】
また本発明は、上記ヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置において、前記ミキサ部は、2つのミキサブロックを有し、一方のミキサブロックと他方のミキサブロックとでイメージとなるチャンネルの周波数信号を互いに逆相にして出力し、打ち消すことを特徴とする。
【0009】
この構成により、ミキサ部にはウエーバ型、ハートレー型、ヒルバート型等の汎用的なイメージ除去ミキサを利用することができる。
【0010】
また本発明は、上記ヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置において、前記ミキサ部の前段に設けられ、前記第1のチャンネルを通過帯域とし、前記第2のチャンネルを阻止帯域とした第1のフィルタと、前記ミキサ部の前段に設けられ、前記第2のチャンネルを通過帯域とし、前記第1のチャンネルを阻止帯域とした第2のフィルタとを具備し、前記切替手段は、第1のチャンネルの受信時は、前記第1のフィルタを前記ミキサ部に接続すると共に前記第2のフィルタを切り離し、第2のチャンネルの受信時は、前記第2のフィルタを前記ミキサ部に接続すると共に前記第1のフィルタを切り離すことを特徴とする。
【0011】
この構成により、第1のフィルタと第2のフィルタを受信チャンネルに応じて切り替える簡単な構成でイメージを除去することができる。
【0012】
また本発明は、上記ヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置において、前記検波回路で検波されるいずれか一方のチャンネルの中間周波信号を反転させることを特徴とする。
【0013】
この構成により、局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ高い周波数を第1のチャンネルとし、同一の局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ低い周波数を第2のチャンネルとした場合、一方のチャンネルの希望波が反転して検出されるので、受信側において当該チャンネルの中間周波信号を反転させて検波することができる。
【0014】
また本発明は、上記ヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置において、前記アンテナで受信される第1及び第2のチャンネルのうち一方のチャンネルの送信信号が送信側において反転させていることを特徴とする。
【0015】
この構成により、局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ高い周波数を第1のチャンネルとし、同一の局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ低い周波数を第2のチャンネルとした場合、FSK変調方式の受信においては一方のチャンネルの希望波が反転して検出されるが、送信側において反転しているので受信側において当該チャンネルの中間周波信号を反転させる必要がなくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つの局部発振器を用いて発振周波数を可変させることなく複数の周波数信号を受信することができ、部品点数を削減してコストダウンを図ることができると共に、発振不良や周波数切替えの応答速度低下を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態は、車両側装置と携帯機との間で一方向通信または双方向通信を行う通信システムとし、特に一方の通信装置から送信されたマルチチャンネル信号を受信する通信装置である。例えば、キーレスエントリシステム、ロック/アンロックシステム、車両情報表示システムにおける、車両側装置側の通信装置、又は携帯機側の通信装置である。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかるスーパーヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置の構成図である。本実施の形態のマルチチャンネル通信装置は、局部発振信号の周波数及び中間周波数を変えること無く、2つのチャンネルCH1、CH2の周波数信号を受信する受信部を備える。図1は主に受信部の構成が示されているが、双方向通信装置の場合には送信部も備える。
【0019】
アンテナ1に対して第1のミキサ2と第2のミキサ3とが並列に接続されている。第1及び第2のミキサ2,3に対して共通の局部発振器4から局部発振信号Loが供給される。局部発振器4から第1のミキサ2に局部発振信号Loが供給される経路には、局部発振信号Loの位相を90度移相する第1の90度移相器5と、第1の90度移相器5をバイパスして第1のミキサ2に局部発振信号Loを供給可能でスイッチ6が設けられたバイパス路とが設けられている。また、局部発振器4から第2のミキサ3に局部発振信号Loが供給される経路には、第2の90度移相器7と、第2の90度移相器7をバイパスして第2のミキサ3に局部発振信号Loを供給可能でスイッチ8が設けられたバイパス路とが設けられている。
【0020】
第1のミキサ2の出力段にはLPFで構成された第3の90度移相器9が接続され、第3の90度移相器9には2つの信号を加算する加算部10が接続されている。第3の90度移相器9の入力段と出力段との間に第3のスイッチ11を有するバイパス路が設けられている。
【0021】
また、第2のミキサ3の出力段にはLPFで構成された第4の90度移相器12が接続され、第4の90度移相器12の出力段に加算部10が接続されている。第4の90度移相器12の入力段と出力段との間に第4のスイッチ13を有するバイパス路が設けられている。
【0022】
加算部10の出力段は反転回路14を介して検波回路15に接続されている。反転回路14の入力段と出力段との間に第5のスイッチ16を有するバイパス路が設けられている。CPU17は第1〜第5のスイッチ6,8,11,13,16の制御端子に接続されて、それぞれのスイッチのON/OFFタイミングを制御している。第1のチャンネルCH1を受信する場合は、第1、第3のスイッチ6,11をOFFし、かつ第2、第4、第5のスイッチ8、13、16をONする。また、第2のチャンネルCH2を受信する場合は、第1、第3のスイッチ6,11をONし、かつ第2、第4、第5のスイッチ8、13、16をOFFする。このため、CPU17から第2、第4、第5のスイッチ8、13、16には反転回路18を経由して第1、第3のスイッチ6,11とは逆のHIGH/LOW信号を供給し、ON/OFFが逆となるようにしている。なお、スイッチ第1〜第5のスイッチ6,8,11,13,16は、トランジスタ、FET、ダイオードスイッチなどであり制御端子に所定の出力を加える事でスイッチング動作する。
【0023】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
最初に、図2を参照して、本実施の形態においてマルチチャンネル通信に用いる第1及び第2のチャンネルCH1,CH2の周波数について説明する。図示を省略した送信機から所定信号を周波数がf1,f2の搬送波でFSK(Frequency Shift Keying)変調して、交互に送信する。
【0024】
図2において、第1のチャンネルCH1の受信信号の周波数をf1、局部発振信号Loの周波数をf2とする。この場合にCH1の信号を受信したとするとミキサにおいて、第1のチャンネルCH1の受信信号(f1)と局部発振信号Lo(f2)とを混合して、第1の周波数信号(f1−f2)の中間周波数IFが生成される。
【0025】
このとき、図2に示すように、局部発振信号Lo(f2)から(f1−f2)だけ離れた位置(周波数=f3)に存在する周波数信号、いわゆるイメージ信号が存在すると、ミキサにおいてイメージ信号(f3)と局部発振信号Lo(f2)とが混合されて、イメージ信号(f3)と局部発振信号Lo(f2)との差(f2−f3)が、第1のチャンネルCH1の中間周波数IFと同一周波数に周波数変換される。このため、従来のスーパーヘテロダイン方式の受信機では、ミキサの前段又はイメージ除去ミキサを用いてイメージ信号(f3)を除去していた。
【0026】
本発明は、第1のチャンネルCH1に対してイメージ信号となる周波数f3を、第2のチャンネルCH2として使用する。すなわち、第1のチャンネルCH1と第2のチャンネルCH2は、同一の局部発振信号Loによって同一の中間周波数IFに周波数変換される関係を有する。このため、局部発振器は1つ備えればよく、しかもPLLにより局部発振信号を可変させる必要もない。なお、図2において、同様にチャンネルCH2の信号を受信する際には、(f2−f3)の周波数の中間周波数IFが生成され、周波数f1の信号がイメージ信号となる。
【0027】
本実施の形態1のマルチチャンネル通信装置との間で一方向又は双方向通信を行う送信側の通信装置は、上述した希望波(CH1又はCH2)とイメージ信号(CH2又はCH1)といった周波数関係を有する2つの周波数信号を第1のチャンネルCH1、第2のチャンネルCH2として送信する。
【0028】
第1のチャンネルCH1を受信する場合(希望波RF(CH1)>Lo)、CPU17はローレベル信号を出力して、第1、第3のスイッチ6,11をOFFする。このとき、第2、第3、第4のスイッチ8、13、16に与えられる信号は反転回路18で反転してハイレベル信号に変換され、第2、第3、第4のスイッチ8、13、16はONになる。その結果、図3(a)に示す回路構成となる。
【0029】
局部発振器4で発生させた局部発振信号Loは90度移相器5を介して第1のミキサ2に供給されると共に、移相せずに第2のミキサ3に供給される。第1のミキサ2から同相(I)成分が取り出され、第2のミキサ3から直交(Q)成分が取り出される。第1のミキサ2から出力される同相(I)成分は数式(1−1)、第2のミキサ3から出力される直交(Q)成分は数式(1−2)で表わされる。数式中のARFは希望波、AimはARFに対するイメージ、ωRFは希望波の位相、ωLoは局部発振信号Loの位相である。
【数1】

第3の90度移相器9にて同相(I)成分(x(t))を90度遅らせると、sin(α+90°)=cosαなので、数式(1−1)は数式(1−3)のように変換できる。
【数2】

加算部10にて、直交(Q)成分である数式(1−2)と同相(I)成分である数式(1−3)とを加算すると、数式(1−4)に示すようにイメージが消去されて希望波xdtのみが残る。
【数3】

加算器10から出力された希望波xdtの中間周波数IFは反転されずに検波回路15で検波され、第1のチャンネルの受信データとして後段回路へ出力される。
【0030】
一方、第2のチャンネルCH2を受信する場合(希望波RF(CH2)<Lo)、CPU17はハイレベル信号を出力して、第1、第3のスイッチ6,11をONする。このとき、第2、第3、第4のスイッチ8、13、16に与えられる信号は反転回路18で反転してローレベル信号に変換され、第2、第3、第4のスイッチ8、13、16はOFFになる。その結果、図3(b)に示す回路構成となる。
【0031】
局部発振器4で発生させた局部発振信号Loはそのまま第1のミキサ2に供給されると共に、90度移相して第2のミキサ3に供給される。第1のミキサ2から直交(Q)成分が取り出され、第2のミキサ3から同相(I)成分が取り出される。第1のミキサ2から出力される直交(Q)成分は数式(2−1)、第2のミキサ3から出力される同相(I)成分は数式(2−2)で表わされる。
【数4】

第4の90度移相器12にて同相(I)成分(x(t))を90度遅らせると、cos(α+90°)=sinαなので、数式(2−1)は数式(2−3)のように変換できる。
【数5】

【0032】
加算部10にて、直交(Q)成分である数式(2−2)と同相(I)成分である数式(2−3)とを加算すると、数式(2−4)に示すようにイメージが消去されて希望波−2xdtのみが残る。
【数6】

なお、第2のチャンネルCH2を受信する場合、数式(2−4)に示すように希望波xdtはマイナスになっているので、第5のスイッチ14をOFFにして反転回路14にて−xdtを+xdtに変換する。希望波xdtの中間周波信号は検波回路15で検波され、第2のチャンネルの受信データとして後段回路へ出力される。
【0033】
このように、本実施の形態1によれば、スーパーヘテロダイン方式の受信機において希望波とイメージの関係にある2つの周波数を第1及び第2のチャンネルCH1,CH2として用い、第1のチャネル受信時には受信信号に局部発振信号を乗算して同相(I)成分と直交(Q)成分とに分離し、第1のチャンネルに対してイメージとなる第2のチャンネルの周波数信号が打ち消し合うように一方の周波数信号を移相させてから同相(I)成分と直交(Q)成分とを加算し、希望波となる第1のチャンネルの周波数信号を取り出すようにしたので、1つの局部発振器4を備えるだけでよく、またPLL回路を備える必要もないので、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができ、またスイッチング用ダイオードに起因した発振不良やPLLを用いることによる希望周波数に切替えるまでの応答速度の低下といった不具合を防止できる。
【0034】
上記の説明では、ハートレー式のイメージリジェクションミキサを例示したが、ウエーバ型、ヒルバート型等の他の形式のイメージリジェクションミキサを用いることも可能である。
【0035】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、イメージリジェクションミキサを用いないで、ミキサの前段に設けた2つのフィルタを切り替えて希望波とイメージの関係にある2つの周波数信号を受信するようにしている。
【0036】
図4は、本実施の形態に係るスーパーヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置の構成図である。アンテナ21の出力端に対して第1のスイッチ22を介して第1のフィルタ23が接続されると共に、第2のスイッチ24を介して第2のフィルタ25が接続されている。
【0037】
第1のフィルタ23は、図2に示すようにヘテロダイン方式の受信において希望波と第1のチャンネルCH1(f1=Lo+fIF)を通過帯域とし、第1のチャンネルCH1に対してイメージの関係にある第2のチャンネルCH2(f3=Lo−fIF)を阻止帯域とする周波数特性を有する。第2のフィルタ25は、第2のチャンネルCH2(f3=Lo−fIF)を通過帯域とし、第1のチャンネルCH1(f1=Lo+fIF)を阻止帯域とする周波数特性を有する。
【0038】
第1のフィルタ23の出力段は、第3のスイッチ26を介してミキサ27に接続され、第2のフィルタ25の出力段は、第4のスイッチ28を介してミキサ27に接続されている。ミキサ27に対して局部発振器29から局部発振信号Loが供給される。局部発振信号Loは、図2に示すように第1及び第2のチャンネルCH1、CH2の周波数信号を同一周波数(fIF)の中間周波数IFに周波数変換する周波数f3である。ミキサ27の出力段には反転回路30が接続され、さらに反転回路30の後段に中間周波信号を検波して受信データを得る検波回路31が接続されている。また、反転回路30の入力段と出力段との間にスイッチ32を有するバイパス経路が設けられている。第1〜第5のスイッチ22,24,26,28,32はCPU33によってON/OFF制御される。第1のチャンネルCH1受信時は、第1、第3、第5のスイッチ22,26,32をONする。また、第2のチャンネルCH2を受信する場合は、第2、第4のスイッチ24,28をONし、かつ第1、第3、第5のスイッチ22、26、32をOFFする。このため、第2、第4のスイッチ24、28には反転回路34を経由して第1、第3、第5のスイッチ22,26、32とは逆のハイレベル/ローレベル信号を与えている。
【0039】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
本実施の形態2のマルチチャンネル通信装置との間で一方向又は双方向通信を行う送信側の通信装置は、上述した希望波(CH1又はCH2)とイメージ信号(CH2又はCH1)といった周波数関係を有する2つの周波数信号を第1のチャンネルCH1、第2のチャンネルCH2として送信する。
【0040】
第1のチャンネルCH1を受信する場合(希望波RF(CH1)>Lo)、CPU33はハイレベル信号を出力して、第1、第3、第5のスイッチ22、26、32をONする。このとき、第2、第4のスイッチ24、28に与えられる信号は反転回路34で反転してローレベル信号に変換され、第2、第4のスイッチ24、28はOFFになる。
【0041】
アンテナ21で受信された受信信号は第1のチャンネルCH1と第2のチャンネルCH2の双方の周波数信号を含んでいる。かかる受信信号が第1のフィルタ23に入力され、第1のチャンネルCH1(f1=Lo+fIF)が通過し、第1のチャンネルCH1の周波数信号に対してイメージとなる第2のチャンネルCH2(f3=Lo−fIF)の周波数信号が除去される。第1のフィルタ23によって第2のチャンネルCH2の周波数信号が除去された受信信号はONしている第3のスイッチ26を介してミキサ27へ入力される。
【0042】
ミキサ27に対して局部発振器29から局部発振信号Loが供給され、受信信号と局部発振信号Loと乗算されることで、希望波となる第1のチャンネルCH1(f1=Lo+fIF)が所望の中間周波数IFに周波数変換される。かかる中間周波信号はONしている第5のスイッチ32を介して検波回路31に入力して検波され、検波データが受信データとして後段回路へ出力される。このようにして第1のチャンネルCH1の受信データが得られる。
【0043】
第2のチャンネルCH2を受信する場合(希望波RF(CH2)<Lo)、CPU33はOFF信号(ローレベル)を出力して、第1、第3、第5のスイッチ22、26、32をOFFすると共に、反転回路34でハイレベル信号に変換して第2、第4のスイッチ24、28をONする。
【0044】
アンテナ21で受信された第1のチャンネルCH1と第2のチャンネルCH2の双方の周波数信号を含んでいる受信信号は、第2のフィルタ25に入力される。第2のフィルタ25は、第2のチャンネルCH2(f3=Lo−fIF)の周波数信号は通過させると共に、第2のチャンネルCH2に対してイメージとなる第1のチャンネルCH1(f1=Lo+fIF)の周波数信号は除去する。第2のフィルタ25によって第1のチャンネルCH1の周波数信号が除去された受信信号はONしている第4のスイッチ28を介してミキサ27へ入力される。
【0045】
ミキサ27において、受信信号と局部発振信号Loとが乗算されることで、希望波となる第2のチャンネルCH2(f2=Lo−fIF)が所望の中間周波数IFに周波数変換される。かかる中間周波信号は、上述した通り第1のチャンネルCH1とは極性は反転しているので、反転回路30で反転させてから検波回路31に入力している。検波回路31の検波データは受信データとして後段回路へ出力される。このようにして第2のチャンネルCH2の受信データが得られる。
【0046】
このように、本実施の形態2では、ミキサ27の前段に第1及び2のフィルタ23,25を並列に設け、第1のフィルタ23には第1のチャンネルCH1を通過帯域とすると共に第1のチャンネルCHを希望波とした場合のイメージとなる第2のチャンネルCH2を阻止帯域としたフィルタ特性を持たせ、第2のフィルタ25には第2のチャンネルCH2を通過帯域とすると共に第1のチャンネルCH1を阻止帯域としたフィルタ特性を持たせ、第1〜第4のスイッチ22,26,24,28にて受信チャンネルに応じた一方のフィルタを選択するように構成した。これにより、1つの局部発振器29を備えるだけでマルチチャンネルに対応でき、またPLL回路を備える必要もないので、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができ、またスイッチング用ダイオードに起因した発振不良やPLLを用いることによる希望周波数に切替えるまでの応答速度の低下といった不具合を防止できる。
【0047】
なお、第1及び第2の実施の形態では、希望波とイメージの関係にある2つの周波数信号を受信する関係から、一方の周波数信号を反転させる反転回路14、30を備えている。送信側において一方の周波数信号を反転させ送信することにより、受信側で反転処理する必要性がなくなる。
【0048】
図5(a)は一方の周波数信号を反転させ送信するマルチチャンネル通信装置の構成図である。送信側となるマルチチャンネル通信装置40は、CPU41から出力される送信データを反転回路42で反転させてから変調回路43へ供給する経路と、スイッチ45を介して反転回路42をバイパスして変調回路43へ供給する経路とをスイッチ45のON/OFFにて切替え可能に構成されている。変調回路43では、PLL46で位相制御された局部発振信号が供給され、搬送波を送信データにてFSK変調する。前述したように、希望波とイメージの関係となるチャンネルCH1とチャンネルCH2の搬送波を送信データにてFSK変調して送信する。送信信号は増幅器44で増幅後、アンテナ47から送信される。第1及び第2の実施の形態のマルチチャンネル通信装置が受信側のマルチチャンネル通信装置となって受信する。但し、第1及び第2の実施の形態のマルチチャンネル通信装置から図1、図4に示す反転回路14、30は削減されている。
【0049】
また、図5(b)に示すように、第1及び第2のチャンネルCH1、CH2に対応した変調回路51,52を別々に設け、第2のチャンネルCH2の変調回路52の前段に反転回路42を設けるように構成することもできる。変調回路51,52の出力はスイッチ53で選択して増幅器44へ入力する。
【0050】
以上のように、送信側のマルチチャンネル通信装置において、一方の周波数信号を反転させ送信することにより、受信側で反転処理する必要性がなくなり、受信側のマルチチャンネル通信装置の構成を簡略化できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両側装置と携帯機との間で一方向通信または双方向通信を行う各種のシステム、例えばキーレスエントリシステム、ロック/アンロックシステム、車両情報表示システム等の通信システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施の形態にかかるスーパーヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置の構成図
【図2】第1及び第2のチャンネルCH1,CH2の周波数関係を説明するための説明図
【図3】(a)第1の実施の形態において第1のチャンネルCH1を受信する場合の回路構成図、(b)第1の実施の形態において第2のチャンネルCH2を受信する場合の回路構成図
【図4】第2の実施の形態に係るスーパーヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置の構成図
【図5】(a)PLLを用いたマルチチャンネル通信装置の構成図、(b)複数の変調回路を用いたマルチチャンネル通信装置の構成図
【符号の説明】
【0053】
1、21…アンテナ
2…第1のミキサ
3…第2のミキサ
4、29…局部発振器
5…第1の90度移相器
6…第1のスイッチ
7…第2の90度移相器
8…第2のスイッチ
9…第3の90度移相器
10…加算部
11…第3のスイッチ
12…第4の90度移相器
13…第4のスイッチ
14、30…反転回路
15、31…検波回路
16…第5のスイッチ
17、33…CPU
27…ミキサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振信号を生成する局部発振器と、
アンテナからのFSK変調された受信信号と前記局部発振信号とを混合して周波数の差分となる中間周波数fIFの中間周波信号に変換するミキサ部と、
前記ミキサ部で周波数変換された中間周波信号を検波する検波回路と、
前記局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ高い周波数を第1のチャンネルとし、前記局部発振信号よりも中間周波数fIFだけ低い周波数を第2のチャンネルとして、前記第1のチャンネルと前記第2のチャンネルの受信を切り替える切替手段とを具備し、
一方のチャンネル受信時には前記ミキサ部にて前記局部発振信号と混合して希望波を中間周波信号に変換すると共に、前記ミキサ部又はその前段で前記希望波に対してイメージとなる他方のチャンネルの周波数信号を除去することを特徴とするヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置。
【請求項2】
前記ミキサ部は、2つのミキサブロックを有し、一方のミキサブロックと他方のミキサブロックとでイメージとなるチャンネルの周波数信号を互いに逆相にして出力し、打ち消すことを特徴とする請求項1記載のヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置。
【請求項3】
前記ミキサ部の前段に設けられ、前記第1のチャンネルを通過帯域とし、前記第2のチャンネルを阻止帯域とした第1のフィルタと、
前記ミキサ部の前段に設けられ、前記第2のチャンネルを通過帯域とし、前記第1のチャンネルを阻止帯域とした第2のフィルタと、を具備し、
前記切替手段は、第1のチャンネルの受信時は、前記第1のフィルタを前記ミキサ部に接続すると共に前記第2のフィルタを切り離し、第2のチャンネルの受信時は、前記第2のフィルタを前記ミキサ部に接続すると共に前記第1のフィルタを切り離すことを特徴とする請求項1記載のヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置。
【請求項4】
前記検波回路で検波されるいずれか一方のチャンネルの中間周波信号を反転させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置。
【請求項5】
前記アンテナで受信される第1及び第2のチャンネルのうち一方のチャンネルの送信信号が送信側において反転させていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘテロダイン方式のマルチチャンネル通信装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−114816(P2010−114816A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287635(P2008−287635)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】