説明

ヘテロ六員環誘導体、その製造方法及び殺虫剤

【課題】殺虫剤等の生理活性物質として有用な新規ヘテロ六員環誘導体、該ヘテロ六員環誘導体の製造方法、及び前記ヘテロ六員環誘導体を有効成分として含有する殺虫剤の提供。
【解決手段】化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ六員環誘導体及びその製造方法に関する。より詳しくは、新規へテロ六員環誘導体、該誘導体の新規製造方法、及び前記誘導体を有効成分として含有する殺虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアジンやオキサジアジン等の飽和複素六員環が、農業害虫や衛生害虫の殺虫剤等として有用であることが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
例えば、3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]テトラヒドロ−5−メチル−N−ニトロ−4H−1,3,5−オキサジアジン−4−イミン(チアメトキサム)がネオニコチノイド系殺虫剤として市販されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−183918号公報。
【特許文献2】特開平3−218370号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記化学式(1)のヘテロ六員環誘導体に見られるような飽和複素六員環が連結された構造を有する化合物は報告されておらず、このような化合物の有用性についても、まだ検討されていない。
【0006】
そこで、本発明は、殺虫剤等の生理活性物質として有用な新規ヘテロ六員環誘導体、該へテロ六員環誘導体の製造方法、及び前記へテロ六員環誘導体を有効成分として含有する殺虫剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、まず、化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体を提供する。
【0008】
【化12】

【0009】
該ヘテロ六員環誘導体は殺虫剤等の生理活性物質として好適に用いられる。
次に、本発明では、化学式(2)で表される化合物と、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類とを反応させることによる化学式(4)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0010】
【化13】

【0011】
【化14】

【0012】
【化15】

また、本発明では、化学式(4)で表される化合物と、化学式(5)で表されるハロゲン類とを反応させることによる前記化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体の製造方法を提供する。
【0013】
【化16】

【0014】
【化17】

【0015】
【化18】

【0016】
さらに、本発明は、化学式(6)で表される化合物と、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類とを反応させることによる前記化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体の製造方法を提供する。
【0017】
【化19】

【0018】
【化20】

【0019】
【化21】

【0020】
また、本発明は、化合物(1)で表されるヘテロ六員環誘導体を有効成分として含有することを特徴とする殺虫剤を提供する。
【0021】
【化22】

【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照としながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0023】
A)ヘテロ六員環誘導体
本発明に係る新規ヘテロ六員環誘導体は、前記化学式(1)で表される。以下、本発明に係るヘテロ六員環誘導体について詳細に説明する。
【0024】
前記化学式(1)において、Wは、酸素原子、硫黄原子、NR又はメチレン基を表し、Rは水素原子又はC1〜C4のアルキル基を表す。C1〜C4のアルキル基は、1級、2級、3級のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0025】
Xは、窒素原子又はメチン基を表し、Yは、ニトロ基又はシアノ基を表す。Zは、C3〜C12のメチレン鎖、−CHCH=CHCH−、−CHC≡CCH−、−(CHO(CH−又は−(CHS(CH−を表す。
【0026】
Rは、置換又は無置換のヘテロ環又は芳香環を表す。ヘテロ環は特に限定されず、例えば3〜8員環の飽和又は不飽和のヘテロ環が挙げられるが、好適には5員又は6員環のヘテロ環が好ましい。5員又は6員環のヘテロ環の具体例としては、ピリジン、チアゾール、テトラヒドロフラン、フラン、チアゾール等が挙げられる。特に好適には、3−ピリジル基、5−チアゾリル基、3−テトラヒドロフリル基とするのが望ましい。
【0027】
ヘテロ環又は芳香環の置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれであってもよい)、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のハロゲン化アルキル基、C1〜C4のアルコキシ基、ジ(C1〜C4のアルキル)アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。好適には、塩素原子をヘテロ環又は芳香環の置換基とするのが好ましい。
【0028】
ヘテロ環又は芳香環の置換数は特に限定されず、1箇所又は複数箇所を置換してもよいが、1又は2箇所を置換するのが好ましい。置換数が2以上の場合、同一の置換基で置換してもよく、それぞれ異なる置換基で置換してもよい。
【0029】
本発明に係るヘテロ六員環誘導体は、広汎な農業害虫又は衛生害虫に対する優れた殺虫活性、殺ダニ活性、鎮痛作用、神経活性化作用等を有する。このため、これらの化合物を有効成分とする農業害虫又は衛生害虫の殺虫剤、殺ダニ剤、シロアリ等家屋害虫防除剤、動物薬、鎮痛剤、神経活性化剤等として使用することができる。
【0030】
B)ヘテロ六員環誘導体の製造方法1
化学式(1)のヘテロ六員環誘導体の好適な第1の製造方法について以下に説明する。なお、図1は、本発明に係るヘテロ六員環誘導体の第1の製造方法を説明するための概念図である。
【0031】
第一工程
化合物(2)で表される化合物と、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類とを、塩基の存在下で反応させる工程である(図1の符号(I)参照)。
【0032】
この第一工程において、化学式(2)で表される化合物2倍モルと、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類1倍モルとが反応することで、化合物(4)で表される化合物を1倍モル量生成することができる。
【0033】
本発明の第一工程において、化学式(2)で表される化合物の添加量は、好適には前記ジハロアルキレン類1倍モルに対して2.0〜4.0倍モルであることが好ましい。前記化学式(2)で表される化合物の添加量が、前記ジハロアルキレン類1.0倍モルに対して2.0倍未満である場合には、得られる化学式(4)で表される化合物の収率が低下してしまう。一方、前記化学式(2)で表される化合物の添加量が、前記ジハロアルキレン類1.0倍モルに対して4.0倍モルよりも多い場合には、反応に寄与しない前記化学式(2)で表される化合物が多量に反応系に存在してしまう。
【0034】
なお、化合物(2)の製造方法は、特開平02−235881号公報、特開平03−218370号公報、特開平04−273863号公報、特開平06−183918号公報やPest Manag Sci,57,165−176(2001)等に記載されているので、記載の方法もしくは、これらに準じた方法を用いて合成することができる。
【0035】
本発明の第一工程に用いる塩基については、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0036】
また、本発明の第一工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、油相としてはベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0038】
また、本発明の第一工程の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。また、第一工程の反応は、減圧下、常温下若しくは加圧下のいずれでも行えるが、常温下において行うことが好ましい。そして、第一工程の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0039】
第二工程
化学式(4)で表される化合物と、化学式(5)で表される化合物とを、塩基の存在下で反応させる工程である(図1の符号(II)参照)。
【0040】
この第二工程において、化学式(4)で表される化合物1倍モルと、化学式(5)で表される化合物2倍モルとが反応することで、化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体1倍モル量生成することができる。
【0041】
本発明の第二工程において、化学式(4)で表される化合物の添加量は、化学式(5)で表される化合物1倍モルに対して0.4〜0.6倍モルであることが好ましい。前記化学式(4)で表される化合物の添加量が、前記化学式(5)で表される化合物1倍モルに対して0.4倍未満である場合には、得られるヘテロ六員環誘導体の収率が低下してしまう。一方、前記化学式(4)で表される化合物の添加量が、前記化学式(5)で表される化合物1倍モルに対して0.6倍よりも多い場合には、反応に寄与しない前記化学式(4)で表される化合物が多量に反応系に存在してしまう。
【0042】
本発明の第二工程で用いる塩基については、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0043】
また、本発明の第二工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、油相としてはベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0045】
また、本発明の第二工程の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。また、第二工程の反応は、減圧下、常温下若しくは加圧下のいずれでも行えるが、常温下において行うことが好ましい。そして、第二工程の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0046】
さらに、本発明の第一工程と第二工程は、その間に中間体である化学式(4)で表される化合物の単離工程を経ることなく、連続して行うこともできる。この場合、第一工程終了後に、第二工程に用いる化学式(5)で表される化合物及び塩基を一定量添加し、所定の反応温度とすることにより、引き続き第二工程の反応を行うことができる。
【0047】
本発明に係る製造方法1を用いることにより、比較的汎用性の高い物質を原料として用いて、本発明に係るヘテロ六員環誘導体を製造することができる。
【0048】
C)ヘテロ六員環誘導体の製造方法2
化学式(1)のヘテロ六員環誘導体の好適な第2の製造方法について以下に説明する。なお、図2は、本発明に係るヘテロ六員環誘導体の第2の製造方法を説明するための概念図である。
【0049】
本製造方法において、化合物(6)で表される化合物と、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類とを、塩基の存在下で反応させる(図2参照)。
【0050】
この反応において、化学式(6)で表される化合物2倍モルと、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類1倍モルとが反応することで、化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体を1倍モル量生成することができる。
【0051】
本製造方法において、化学式(6)で表される化合物の添加量は、好適には前記ジハロアルキレン類1倍モルに対して1.8〜2.2倍モルであることが好ましい。前記化学式(3)で表される化合物の添加量が、前記ジハロアルキレン類1.0倍モルに対して1.8倍未満である場合には、得られるヘテロ六員環誘導体の収率が低下してしまう。一方、前記化学式(6)で表される化合物の添加量が、前記化学式(3)で表される化合物1倍モルに対して2.2倍よりも多い場合には、反応に寄与しない前記化学式(6)で表される化合物が多量に反応系に存在してしまう。
【0052】
なお、化合物(6)の製造方法は、特開平02−235881号公報、特開平03−218370号公報、特開平04−273863号公報、特開平06−183918号公報やPest Manag Sci,57,165−176(2001)等に記載されているので、記載の方法もしくは、これらに準じた方法を用いて合成することができる。
【0053】
本製造方法で用いる塩基については、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0054】
また、本製造方法では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、油相としてはベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0056】
また、本製造方法の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。また、本製造方法の反応は、減圧下、常温下若しくは加圧下のいずれでも行えるが、常温下において行うことが好ましい。そして、本製造方法の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0057】
本発明に係る製造方法2を用いることにより、一工程で本発明に係るヘテロ六員環誘導体を製造することができる。
【0058】
D)農園芸用殺虫剤
本発明に係るヘテロ六員環誘導体は、農園芸用殺虫剤の有効成分として好適に用いられる。前記ヘテロ六員環誘導体を有効成分として含有する殺虫剤について、以下に説明する。
【0059】
本発明に係るヘテロ六員環誘導体が防除作用を有する農業害虫として以下の害虫が挙げられる。鱗翅目害虫として、例えば、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、オオタバコガ類(Heliothis sp. )、カブラヤガ(Agrotis segetum)、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)、コナガ(Plutella xylostella)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、サンカメイガ(Scirpophaga incertulas)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、マメシンクイガ(Leguminivora glycinivorella)、モモシンクイガ(Carposina niponensis)、モンシロチョウ(Piers rapae crucivora)、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyes orana fasciata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、半翅目害虫として、例えば、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis erysimi)、ミカンキジラミ(Diaphorina citri)、ミカンワタカイガラムシ(Pulvinaria aurantii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ヤノネカイガラムシ(Unaspis yanonensis)、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)等が挙げられる。甲虫目害虫として、例えば、アズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)、イネドロオイムシ(Oulema oryzae)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コクゾウムシ(Sitophilus zeamais)、タバコシバンムシ(Lasioderma serricorne)、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintiotopunctata)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、ヒラタキクイムシ(Lyctus brunneus)、マメコガネ(Popillia japonica)、総翅目害虫として、例えば、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミナミキロアザミウマ(Thrips palmi)、イネアザミウマ(Stenchaetothrips biformis)、双翅目害虫として、例えば、アカイエカ(Culex pipiens)、イエバエ(Musca domestica)、イネハモグリバエ(Agromyza oryzae)、ウリミバエ(Dacus(Zeugodacus) cucurbitae)、ダイズサヤタマバエ(Asphondylia sp.)、タマネギバエ(Delia antiqua)、タネバエ(Delia platura )、ミカンコミバエ(Dacus(Bactrocera) dorsalis)、網翅目害虫として、例えば、チャバネゴキブリ(Batella germanica)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、直翅目害虫として、例えば、トノサマバッタ(Locusta migratoria)、ダニ目害虫として、例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、動物に寄生するダニ類として、例えばヒメダニ(Ornithodoros)、ノミ類として、例えばネコノミ(Ctenocephalides felis)及びイヌノミ(Ctenocephalides canis)、シラミ類として、例えばタンカクハジラミ(Menopon)、吸虫類、条虫類、線虫類、コクシジウム等が挙げられる。
【0060】
本発明に係るヘテロ六員環誘導体を農園芸用殺虫剤の有効成分として用いる形態については特に限定されず、例えば、何らの成分も加えずそのまま単独で用いてもよいし、必要に応じて固体担体、液体担体、界面活性剤、その他の製剤補助剤と混合して粉剤、水和剤、粒剤、乳剤等の種々の形態に製剤して使用してもよい。その際、これらの製剤には有効成分として本発明に係るヘテロ六員環誘導体を0.1〜95重量%、より好ましくは0.5〜90重量%、更に好ましくは2〜70重量%含まれるように製剤することが好ましい。
【0061】
また、前記製剤補助剤として使用する物質については特に限定されず、使用目的や所望の効果等を考慮して適宜選択することができるが、好適な担体、希釈剤、界面活性剤等を以下に例示する。
【0062】
固体担体として、タルク、カオリン、ベントナイト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレー等を用いることができる。
【0063】
液体希釈剤として、水、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アルコール等を用いることができる。
【0064】
界面活性剤はその効果により使いわけることが好ましく、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を用いることができる。分散剤として、リグニンスルホン酸塩、ジブチルナフタリンスルホン酸塩等を用いることができる。湿潤剤として、アルキルスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩等を用いることができる。
【0065】
本発明に係る農園芸用殺虫剤の使用方法については特に限定されず、例えば、そのまま使用してもよいし、水等の希釈剤により所望の濃度に希釈して使用してもよいし、複数種類の本発明に係るヘテロ六員環誘導体を混用してもよいし、本発明に係る農園芸用殺虫剤の効果を阻害しない範囲で他の薬剤等と混用してもよい。混用できる薬剤としては、特に限定されず、例えば、他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料等を用いることができる。
【0066】
前記製剤には、そのまま使用するものと、水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用するものとがある。希釈して使用するときの本発明に係るヘテロ六員環誘導体の濃度は、0.001〜1.0%の範囲が好ましい。また、本発明に係るヘテロ六員環誘導体の使用量は、畑、田、果樹園、温室等の農園芸用地1haあたり、好ましくは、20〜5000g、より好ましくは50〜1000gである。これらの使用濃度及び使用量は剤形、使用時期、使用方法、使用場所、対象作物等によっても異なるため、上記の範囲に限定することなく増減するのは勿論可能である。更に、本発明に係るヘテロ六員環誘導体は他の有効成分、例えば、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤と組み合わせて使用することもできる。
【実施例】
【0067】
以下、製造例、製剤例、試験例を示し、本発明を具体的に説明する。まず、製造例について示す。また、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す製造例に限定されない。本発明において用いられる化合物は、適宜、市販品を使用することもできる。なお、各実施例で得られた目的化合物の物性知の測定は表に示す条件で行った。
【0068】
【表1】

【0069】
<製造例1>
3,3’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナン(化合物番号1)
3−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナン(272 mg, 1mmol)を15mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、氷冷下、この溶液に60mgの水素化ナトリウム(パラフィンオイル分散中60%有効成分)を加えた。その後室温で1時間攪拌した。再び氷冷し、1,6−ジヨードヘキサン(160mg, 0.47mmol)を滴下した。その後40時間室温で攪拌を続けた。1mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ジメチルホルムアミド(DMF)を減圧溜去した。残った油状物をクロロホルムとメタノールの9:1の混合溶出溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離を行なった。目的物の粗結晶はメタノールから再結晶することにより精製した。収量は97mg(33%)であった。
【0070】
<製造例2>
1,1’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル] テトラヒドロ−5−メチル‐N−ニトロ−1,3,5−トリアジン−2(1H)イミン)(化合物番号2)
1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]テトラヒドロ−5−メチル‐N−ニトロ−1,3,5−トリアジン−2(1H)イミン(286mg、1mmol)を15mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、これに氷冷下50mgの水素化ナトリウム(パラフィンオイル分散中60%有効成分)を加え、その後室温で1時間攪拌した。再び氷冷し、1,6−ジヨードヘキサン(150mg、0.44mmol)を滴下した。33時間室温で攪拌を続けた。1mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ジメチルホルムアミド(DMF)を減圧溜去した。 残った油状物をクロロホルムとメタノールの9:1の混合溶出溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離を行なった。目的物の粗結晶をアセトンで洗い、精製した。収量は126mg(44%)であった。
【0071】
<製造例3>
3,3’−(1,6−ヘキサジイル)ビス[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−チオジアジナン(化合物番号3)
製造例1で用いた3−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナンの代わりに3−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−チオジアジナンを用いた以外は同様の操作を行った。再結晶はメタノールで行った。収率は10%であった。
【0072】
<製造例4>
3,3’−(1,4−ブタンジイル)ビス[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナン(化合物番号4)
3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナン(277mg, 1mmol)を15mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、氷冷下この溶液に60mgの水素化ナトリウム(パラフィンオイル分散中60%有効成分)を加えた。その後室温で1時間攪拌した。再び氷冷し、1,4−ジブロモブタン(100mg, 0.46mmol)を滴下した。その後40時間室温で攪拌を続けた。1mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、ジメチルホルムアミド(DMF)を減圧溜去した。 残った油状物をクロロホルムとメタノールの9:1の混合溶出溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離を行なった。目的物の粗結晶はメタノールから再結晶することにより精製した。収量は171mg(61%)であった。
【0073】
<製造例5>
3,3’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナン(化合物番号5)
製造例1で用いた化合物3−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナンの代わりに1−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナンを用いた以外は同様の操作を行った。収率は35%であった。
【0074】
<製造例6>
3,3’−(1,8−オクタジイル)ビス[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナン(化合物番号6)
製造例4で用いた1,4−ジブロモブタンの代わりに1,8−ジヨードオクタンを用いた以外は同様の操作を行った。収率は33%であった。
【0075】
<製造例7>
1,1’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル] テトラヒドロ−5−メチル‐N−ニトロ−1,3,5−トリアジン−2(1H)イミン(化合物番号7)
製造例2で用いた化合物1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−テトラヒドロ−5−メチル‐N−ニトロ‐1,3,5−トリアジン−2(1H)イミンの代わりに1−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]‐テトラヒドロ−5−メチル−N−ニトロ‐1,3,5−トリアジン−2(1H)イミンを用いた以外は同様の操作を行った。収率は50%であった。
【0076】
<製造例8>
3,3’−(1,6−ヘキサジイル)ビス[(2−クロロ‐5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−チオジアジナン(化合物番号8)
製造例5で用いた3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−オキサジアジナンの代わりに3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−4−ニトロイミノ1,3,5−チオジアジナンを用いた以外は同様の操作を行った。再結晶はメタノールで行った。収率は20%であった。
【0077】
上記各製造例におけるヘテロ六員環誘導体を表2に示す。また上記各製造例で得られた各へテロ六員環誘導体のIRスペクトル及びH NMRデータを表3に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
続いて、製剤例と試験例を示し、本発明に係るヘテロ六員環誘導体の有効性について検証した。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す製剤例や試験例等に限定されない。
【0081】
<製剤例1;粉剤>
化合物1を3重量部、クレー40重量部、タルク57重量部をそれぞれ粉砕混合することで粉剤を調製し、散粉として使用した。
【0082】
<製剤例2;水和剤>
化合物3を50重量部、リグニンスルホン酸塩5重量部、アルキルスルホン酸塩3重量部、珪藻土42重量部をそれぞれ粉砕混合することで水和剤を調製し、水で希釈して使用した。
【0083】
<製剤例3;粒剤>
化合物5を5重量部、ベントナイト43重量部、クレー45重量部、リグニンスルホン酸塩7重量部を均一に混合して、水を加えて練り合わせた後、押し出し式造粒機で粒状に加工乾燥して粒剤として使用した。
【0084】
<製剤例4;乳剤>
化合物7を20重量部、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ−テル10重量部、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレ−ト3重量部、キシレン67重量部を均一に混合溶解させて乳剤として使用した。
【0085】
本発明に係る化合物の害虫防除効果を検証する目的で、前記製造例で製造した化合物を有効成分とする製剤を実用に即した条件で使用した試験を行った。
【0086】
<試験例1>
ハスモンヨトウの防除効果について試験を行った。
キャベツ葉を、製剤例2に準じて調整した水和剤を水で5000倍に希釈して100μg/mlとした薬液に浸漬し、直径9cmシャーレの底に敷いたろ紙上に置いた。この処理葉に10頭のハスモンヨトウ2齢幼虫を放虫して、シャーレの蓋をし、25℃の定温室内に静置した。120時間後に生死虫数を調査した。
その結果、有効成分濃度100μg/mlで、化合物1,2,5,6,7,8は100%の優れた死虫率を示した。
【0087】
<試験例2>
トマトハモグリバエ防除効果について試験を行った。
いんげんまめの実生苗を根元から切り取り、水道水を入れた100ml容の試験瓶に1本差しにした。このいんげんまめ苗50本当たり200頭のトマトハモグリバエ成虫を放した。室温でトマトハモグリバエ成虫に3日間卵を産下させたいんげんまめ子葉(2枚)を、製剤例2に準じて調整した水和剤を水で5000倍に希釈して100μg/mlとした薬液に浸漬し、再度水道水を入れた100ml容の試験瓶に1本差しにして、25℃の定温室内に静置した。14日後にマイン数を調査した。
その結果、有効成分濃度100μg/mlで、化合物1,2,3,4,5,6,8は死虫率70%以上の優れた殺虫効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係るヘテロ六員環誘導体の第1の製造方法を説明するための概念図である。
【図2】本発明に係るヘテロ六員環誘導体の第2の製造方法を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0089】
(I) 第一工程
(II) 第二工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体。
【化1】

【請求項2】
化学式(2)で表される化合物と、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類とを反応させることによる化学式(4)で表される化合物の製造方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項3】
化学式(4)で表される化合物と、化学式(5)で表されるハロゲン類とを反応させることによる化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体の製造方法。
【化5】

【化6】

【化7】

【請求項4】
化学式(6)で表される化合物と、化学式(3)で表されるジハロアルキレン類とを反応させることによる化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体の製造方法。
【化8】

【化9】

【化10】

【請求項5】
化学式(1)で表されるヘテロ六員環誘導体を有効成分として含有する殺虫剤。
【化11】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−107973(P2009−107973A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282500(P2007−282500)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】