説明

ヘルペス感染症を処置するための方法および組成物

プールされたヒト血漿から調製された免疫グロブリンを含んでなる組成物の投与によるヘルペス感染症および付随する疾病症状の処置または予防方法。免疫グロブリンの静脈および局所投与を含んでなる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘルペス感染症および付随する疾病症状の処置および/または予防のための免疫グロブリンを含んでなる組成物の投与に関する。本発明は本発明の組成物の静脈および局所投与に関する面を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルスは数百万年にわたり発生しておりそして天然に大量に散在している。族の構成員はヒト、ヒト以外の霊長類並びにほとんどの他の哺乳動物および脊椎動物において同定されていた。ヘルペスウイルスは、負に荷電された構造、例えば硫酸ヘパリンおよび/またはグリコサミドグリカン類を細胞表面上にヘルペスウイルス進入媒介物質の他に有する感染性細胞である包囲された二重ストランドDNAウイルスである。これらのウイルスの特徴は、それらが最初の感染後にそれらの宿主内に一生潜伏して残存しそして種々の内的および外的刺激で潜伏している感染された細胞のプールから多かれ少なかれしばしば再活性化することである。
【0003】
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、免疫適格宿主中では自己限定性疾病を示す一方で、免疫無防備状態にある患者および新生児においては重篤な生命を脅かす感染症を引き起こしうる。HSVは西洋では散在性急性脳炎の主要原因であり、未処置時には死亡率は70%を越える。新生児HSV感染症は、抗ヘルペス療法(アシクロヴィル(acyclovir))にもかかわらず、劣悪な予後を有する。分娩時にヘルペスに接触する新生児の25%は散在性ヘルペス感染症に進行しそして抗ウイルス療法にもかかわらず40%の死亡率をこうむる。従って、生命を脅かすHSV疾病を処置するための新方法が緊急に要望されている。
【0004】
免疫応答性人間でも、HSVは角膜感染症を引き起こして、永久的瘢痕、視力損失、および盲目をもたらしうる。上皮角膜炎が、HSVによる眼感染症の最も普遍的な表象である。急性ヘルペス疾病に伴う炎症を抑制するための抗ウイルス類およびステロイド類の利用にもかかわらず、慢性HSVは有意な眼の病的症状を引き起こし続ける。従って、HSV眼疾病を処置するための新方法が緊急に要望されている。
【発明の開示】
【0005】
発明の要旨
従って、一面において、本発明はプールされたヒト血漿から調製された免疫グロブリンA(IgA)を含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に静脈投与することによる哺乳動物における単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の処置または予防方法に関する。哺乳動物はヒト新生児でありうる。哺乳動物は免疫無防備状態にありおよび/またはヘルペス疾病に罹っていることもありうる。ヘルペス疾病は、脳炎、肺炎、肝炎、眼ヘルペス、水痘、帯状ヘルペス、耳帯状ヘルペス、帯状ヘルペス水痘、角膜炎、指ヘルペス、顔面ヘルペス、陰部ヘルペス、剣状ヘルペス、または口腔ヘルペスでありうる。前記のいずれかの1つより多いものが哺乳動物を苦しめるヘルペス疾病を特徴づける。
【0006】
ある態様では、IgAは組成物中に存在するいずれの免疫グロブリンの少なくとも約35%〜約55%を含んでなる(存在する合計免疫グロブリンの百分率としてのIgAの最少量は約35%〜約55%でありうる)。他の態様では、IgAは組成物中に存在するいずれの免疫グロブリンの少なくとも約60%〜約80%を含んでなる。
【0007】
別の面では、本発明はプールされたヒト血漿から調製された単量体状IgA、二量体状
IgA、および免疫グロブリンG(IgG)を含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に静脈投与することによる哺乳動物における単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の処置または予防方法であって、単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約35%〜約55%を含んでなる方法に関する。ある態様では、単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約60%〜約80%を含んでなる。他の態様では、単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約70%〜約95%を含んでなる。さらに別の態様では、単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約60%、少なくとも約80%、または組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約90%を含んでなる。
【0008】
別の面では、本発明はプールされたヒト血漿から調製されたIgGを含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に局所投与することを含んでなる哺乳動物におけるヘルペス疾病の処置または予防方法に関する。ヘルペス疾病は、水痘、帯状ヘルペス、耳帯状ヘルペス、帯状ヘルペス水痘、角膜炎、指ヘルペス、顔面ヘルペス、陰部ヘルペス、剣状ヘルペス、または口腔ヘルペスでありうる。
【0009】
別の面では、本発明はプールされたヒト血漿から調製されたIgGを含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に局所投与することによる哺乳動物における眼ヘルペス疾病の処置または予防方法に関する。
【0010】
さらに別の面では、本発明はプールされたヒト血漿から調製された有効量のIgGを含んでなる懸濁剤を哺乳動物の感染した眼に直接投与することによる哺乳動物における眼ヘルペス疾病の処置または予防方法に関する。
図面の簡単な記述
図1Aおよび1Bは、それぞれ、第一および第二のサイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィーカラムからの免疫グロブリンの溶離曲線のグラフ表示を示す。
【0011】
図2は150kDaにおける小さい帯を有する160kDaにおける主要な帯として泳動する精製されたIgA(第二のサイズ排除クロマトグラフィー精製段階後)のSDS−PAGEを示す。
【0012】
図3Aおよび3Bは本発明のIgA調合物(第二のサイズ排除クロマトグラフィー精製段階後)の、それぞれ、非還元SDS−PAGEおよびウェスタンブロットを示す。図3Aにおいて、特定の帯を囲む「箱」は、右から左に、完全なIgA、完全なIgG、IgMのμh−連鎖、および完全なIgAを表し、「IgA Bayer」は本発明の方法に従い製造されたIgAである。
【0013】
図4Aおよび4Bは図3Aおよび3Bに表示された通りの非還元条件下における分析に対応するそれぞれ還元されたSDS−PAGEおよびウェスタンブロットを示す。図4Aにおいて、特定の帯を囲む箱は、右から左に、αh−連鎖(60kDa)、γh−連鎖(55kDa)、μh−連鎖(70kDa)、およびαh−連鎖(60kDa)を表す。
発明の詳細な記述
本発明は、ヒト血清の単量体状IgAA(mIgA)および/または二量体状IgA(dIgA)画分の静脈投与による散在性HSV疾病の処置および予防のための新規な方法を提供する。本発明により得られる結果とは対照的に、IgG−枯渇血清によりHSV保護が得られないことはこれまでに示唆されていた(Raizman,M.B.and C.S.Foster,Curr.Eye.Res.7:823−829(1988)参照)。従って、本発明のIgA組成物はHSV感染症の処置のためにこれまでに使用されていなかった。
【0014】
IgA画分は、それらが典型的にはヒト血清からのIgG精製の副生物として廃棄されるため、莫大な商業的価値を有する。さらに、他の免疫グロブリンに優るIgAの使用は、IgAが補体系統の古典的経路を活性化せず且つ代替補体経路だけをゆっくり活性化させるため、有利である。従って、IgAは炎症を促進させない。
【0015】
本発明はまた、プールされたヒト血漿からの精製されたヒトIgGを局所処置により使用することによるHSV疾病の処置および予防のための新規な方法も提供する。本発明のこの面は、免疫グロブリンの注射が必要ないという追加利点を有する。患者は眼調剤中の局所用IgGを用いて患者自身で処置できる。プールされたヒト血漿からのIgGは、供血者のHSV−中和抗体水準に基づく供血者のスクリーニングを必要とせず、この目的に適格である。眼ヘルペス疾病の処置または予防に関しては、本発明の組成物は感染した眼の角膜に直接投与することができる。しかしながら、本発明に従う局所投与は眼疾病に限定されない。本発明のIgG組成物はHSV−関連疾病の他の症状発現に対して局所投与することができる。
【0016】
ここで提供される化合物は単純ヘルペスウイルスにより引き起こされる疾病の処置および予防のために使用することができる。下記の適応症は説明例として挙げられておりそして本発明の範囲を限定しようとするものでない:1)ヘルペスウイルスにより引き起こされる疾病兆候、例えば眼ヘルペス、口唇炎、生殖器炎、角膜炎、脳炎、肺炎、肝炎などのある患者における単純ヘルペスウイルス感染症の処置および/または予防;2)免疫無防備状態にある患者(例えば、エイズ患者、移植受容者、癌患者、遺伝ベースの免疫不全症のある患者)における単純ヘルペスウイルス感染症の処置および/または予防;3)新生児、乳児、幼児および子供における単純ヘルペスウイルス感染症の処置および/または予防;4)再発性ヘルペス疾病の維持または抑制療法のための単純ヘルペスウイルス陽性患者のための処置および/または予防;並びに5)老人における単純ヘルペスウイルス疾病の処置および/または予防。
【0017】
ここで使用される用語「有効量」は治療結果を生ずるのに充分な量を意味する。一般的に、治療結果は、生理学的工程を誘発もしくは促進させることにより、生理学的工程を遮断もしくは抑制することにより、または一般的に述べると疾病もしくは症状の排除もしくは減少を補助するかもしくはそれに寄与する生物学的作用を行うことにより得られる疾病または症状の客観的または主観的改良である。
【0018】
断らない限り、用語「精製された」は物質がその元の環境から除去されて相対的に大量の物質が組成物の他の成分と比べて増加したことを意味する。或いはまたはさらに、この用語は少なくとも1種の特定不純物が物質を含んでなる組成物から減少または除去されたことだけを示すために使用することができる。
【0019】
用語「製薬学的に許容可能な担体」は、本発明の活性化合物との混合用に適するいずれかの相容性無毒物質をさす。
【0020】
句「プールされた血漿から製造された」は、この句により修飾された免疫グロブリン調剤が供血者から生じたプールされた血漿から回収されたことを意味する。本発明の組成物はそのような供血者をHSV−中和抗体のそれらの水準を測定するためのスクリーニングにかける必要がない。
【0021】
本発明は、単純ヘルペスウイルスタイプ−1およびタイプ−2(HSV−1およびHSV−2)、水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV)、サイトメガロウイルス(CMV)、およびエプステイン−バルウイルス(EBV)を包含するヘルペスウイルス感染症の処置お
よび/または予防のための医学療法における組成物およびそれらの使用に関する。本発明は、再発性単純ヘルペスタイプ1または2、帯状ヘルペス(水痘、帯状ヘルペス)、耳帯状ヘルペス、帯状ヘルペス水痘、生殖器いぼ、またはヘルペス角膜炎、指ヘルペス、顔面ヘルペス、生殖器ヘルペス、剣状ヘルペス、および口腔ヘルペスの処置および/または予防において使用することができる。そのような疾病および症状は既知でありそして通常技術の医師により容易に診断される。
【0022】
本発明の静脈投与される組成物は散在性感染症の処置および/または予防のために使用することができ、それによりヘルペス関連疾病、例えばヘルペス脳炎を予防する。そのような組成物は新生児感染症の処置および/または予防のために使用することができ、それにより高い死亡率を一般に生ずる散在性感染症を処置または予防する。新生児および老人を包含する免疫無防備状態にあるヒトはそのような疾病に特に敏感でありそして本発明の組成物の投与から利点を受ける。
【0023】
IgAを含んでなる組成物の静脈投与は潜在性ヘルペス感染症、例えば脳炎をもたらす感染症に罹っている患者に特に利点を与えるが、そのような処置はヘルペス感染症の一般的な症状発現のいずれかに罹っている患者にとっても有利でありうることは認識されよう。同様に、本発明の免疫グロブリン組成物の局所投与はヘルペス感染症、例えば、角膜炎の局所的症状発現に罹っている患者に直接的に有利であるが、そのような組成物の投与は散在性ヘルペス感染症の影響に罹っている患者にも利点を与えうる。
【0024】
本発明の組成物は、本発明の化合物を製薬学的に許容可能な担体、および場合により、製薬学的に許容可能な賦形剤と標準的従来技術を用いて組み合わせるための従来技術を使用することにより製造することができる。局所調剤は、皮膚または他の影響を受けた領域を通る式IIまたはIIIの化合物の吸収または浸透を促進する物質も包含しうる。
【0025】
製薬学的組成物中の活性成分、例えば本発明の免疫グロブリン調剤の量は患者の条件、ヘルペス感染症の重篤度、使用する特定化合物の効力、特定調剤および所望する濃度により広く変動または調節することができる。一般に、活性成分の量は組成物の約0.05%〜約25重量%、約0.1%〜約10重量%、または組成物の約3%〜約16%の範囲であろう。
【0026】
外部組織、例えば口、眼および皮膚の感染症に関しては、調剤は活性成分を例えば組成物の約0.05〜約25重量%の、または約0.1〜約10%w/wの量で含有する局所軟膏剤またはクリーム剤として適用することができる。軟膏剤に調合される場合には、活性成分をパラフィン系または水−混和性軟膏ベースのいずれかと共に使用することができる。或いは、活性成分を水中油滴型クリームベースを含むクリーム剤の中に調合することもできる。
【0027】
眼内への局所投与に適する調剤は点眼剤を包含し、ここで本発明の組成物を適当な担体、とくに水性溶媒中に溶解または懸濁させる。活性成分はそのような調剤中に約0.05〜約25%の、有利には約0.5〜約10%の濃度で存在しうる。
【0028】
口内への局所投与に適する調剤は、本発明の組成物を香料入りベース、例えばスクロースおよびアカシアまたはタオラガカント中に含んでなるロゼンジ剤;活性成分を不活性ベース、例えば、ゼラチンおよびグリセリン中に含んでなる香錠;並びに活性成分を適当な液体担体中に含んでなる口洗浄剤を包含する。
【0029】
眼用薬用量形態は、本発明の組成物の治療水準を即座に与えるための点眼剤およびより遅い放出速度または就寝時使用のために設計された眼の軟膏剤を包含する。
【0030】
本発明の点眼剤薬用量は、場合により、塩化ベンズアルコニウム、メチルパラベン、エデト酸二ナトリウム、チメルソル、およびクロルブタノールを包含するがそれらに限定されない群からの防腐剤;クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、および乳酸ナトリウムを包含するがそれらに限定されない群からの緩衝剤;ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、セチルアルコール、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシ−プロピレンメチルセルロースを包含するがそれらに限定されない群からの賦形剤;硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、燐酸一ナトリウムまたは二ナトリウムを包含するがそれらに限定されない群からのpH調節剤;精製水USP;ポロキサマー407または188、ポリソルベート80;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物;並びに鉱油USPを包含するがそれらに限定されない1種もしくはそれ以上の適当な製薬学的に許容可能な不活性賦形剤を包含するであろう。前記の不活性賦形剤は、担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、乳化剤、および他の調剤助剤としての種々の機能に役立つ。
【0031】
調剤の長期分配のためまたは睡眠中の使用のための眼の軟膏剤薬用量形態は、場合により、クロルブタノール、ポリエチレン鉱油ゲル、白色ペトロラタムUSP、鉱油USP、ペトロラタムおよびラノリンアルコール、精製水USP、ポリビニルアルコールゲルおよび同様な生成物を包含するがそれらに限定されない1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容可能な不活性賦形剤を包含するであろう。上記の賦形剤は、担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、乳化剤、および他の調剤助剤としての種々の機能に役立つ。
【0032】
本発明の組成物はまた、調剤の即座の治療水準を与えるための頬粘膜への適用使用のために製造された溶液および懸濁液を含んでなる薬用量形態も包含する。
【0033】
本発明の頬粘膜薬用量形態は場合により、以上で「点眼剤」薬用量形態に関して挙げられた防腐剤、緩衝剤、賦形剤、およびpH調節剤を包含するがそれらに限定されない1種もしくはそれ以上の適当な製薬学的に許容可能な不活性賦形剤を包含するであろう。前記のように、上記の不活性賦形剤は、担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、乳化剤、および他の調剤助剤としての種々の機能に役立つ。
【0034】
本発明の組成物はまた、軟膏剤、ゲル剤、およびクリーム剤を包含する種々の形態で製造されるHSV感染症の皮膚症状発現の局所処理における使用のための薬用量形態も包含する。これらの調剤は、場合により、1種もしくはそれ以上の下記の適当な製薬学的に許容可能な賦形剤を包含する:ミリスチン酸イソプロピルNF、トロールアミンNF、SDアルコール40(20%)、白色ペトロラタムUSP、ラノリンアルコール類NF、鉱油USP、ポリビニルアルコールゲル、セトステアリルアルコールNF、乳酸USP、ステアリン酸カルシウム、デキストラン、ステアリン酸ポリオキシル40、メチルパラベン、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)ベース、合成蜜蝋(Bワックス)、酢酸カルシウム、精製水USPおよび同様な生成物。上記の賦形剤は、担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、乳化剤、および他の調剤助剤としての種々の機能に役立つ。
【0035】
本発明の組成物はまた、膣坐剤、ゲル剤、および錠剤を包含する膣挿入用の薬用量形態で製造されるHSV感染症、とくにHSV−2の女性生殖器症状発現処置における局所使用のための薬用量形態も包含する。これらの調剤は、場合により、ミリスチン酸イソプロピルNF、鉱油USP、ステアリルアルコールNF、安息香酸USP、ステアリン酸ペゴキシル7、メチルパラベン、プロピルパラベン、プロピレングリコール、ブチル化されたヒドロキシアニソール、ヤシまたはパーム核油トリグリセリド類、ポリソルベート60ま
たはポリソルベート8、ペグリコル5、ステアリン酸PEG−100およびモノステアリン酸ソルビタン、乳酸カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖カラゲナンコーンスターチ、ラクトース、乳酸カルシウム、二酸化珪素および精製水USPをとりわけ包含するがそれらに限定されない1種もしくはそれ以上の適当な製薬学的に許容可能な賦形剤を包含しうる。上記の賦形剤は、担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、乳化剤、および他の調剤助剤としての種々の機能に役立つ。
【0036】
静脈投与に関して、本発明の免疫グロブリン組成物の薬用量および投与方法は、処置される特定症状の重篤度および性質、処置期間、使用される補助療法、処置対象の年齢および身体症状に応じて変動するであろう。しかしながら、静脈投与用の1回薬用量は、典型的には、1キログラムの体重当たり約50mg〜約10g、または1キログラムの体重当たり約100mg〜約5gの範囲でありうる(断らない限り、ここで使用される「mg/kg」または「g/kg」で表示される単位は1キログラムの体重当たりのミリグラムまたはグラムをさす)。
【実施例】
【0037】
実施例1 HSVの成長およびウイルス株の調製
単純ヘルペスウイルス(HSV−1 Walki)をアフリカ・グリーン・モンキー腎細胞(ベロ細胞;ATCC CCL−81)上で定型的に増殖させたが、多くの組織−培養系統をHSVの成長および定量化用に使用することができる(Herpes Simplex Virus Protocols,1998,Ed.S.M.Brown & A.R.MacLean,Humana Press,Totowa,New JerseY)。ベロ細胞を、5%の胎牛血清(FCS)、2mMのグルタミン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンが補充されたM199培地の中で細胞培養フラスコ(例えば、175cm/25−50ml)中で37℃において5%のCOの存在下で成長させた。細胞を1週間に2回1:4分裂させた(細胞生存率>95%)。ウイルス感染用に、培地を回収し、細胞をハンク溶液で洗浄し、0.05%のトリプシン、0.02%のEDTA(セロメド(Seromed)、L2143)でトリプシン処理し、細胞培養フラスコ中で1ml当たり4×10個の細胞濃度で接種し、そして24時間にわたり37℃において5%のCOの存在下でインキュベートした。培地を回収しそしてウイルス懸濁液を<0.05の感染多重度で175cmの表面積当たり2mlの量で加えた。フラスコを37℃において5%のCOの存在下で時々攪拌しながら1時間放置してウイルスを細胞全体に分布させた。培地を175cmの組織培養フラスコ当たり50mlの最終容量となるまで加えた。全ての細胞が感染の兆候を示すまで(約2−3日間)、培養物をインキュベートした。ウイルスを回収するために、フラスコを2回にわたり−80℃において凍結させそして37℃において(水浴中で)解凍した。細胞破片を遠心(300g、10分間、4℃)により回収しそして上澄み液をアリコート中で−80℃において貯蔵した。
【0038】
ウイルス株の力価をプラーク検定で測定した。簡単に述べると、ベロ細胞を24−ウエル組織培養板のウエル当たり4×10個の細胞の濃度で接種した。24時間のインキュベーション時間(37℃、5%のCO)後に、細胞に10−2〜10−8の範囲内のウイルス株の希釈物を感染させた。感染容量はウエル当たり100μlであった。感染後の37℃、5%のCOにおける1時間のインキュベーション後に、細胞を静かに除去し、1mlの被覆培地(MEME(イーグル塩を含むMEME−イーグル)中の0.5%のメチルセルロース、0.225%の炭酸水素ナトリウム、2mMのグルタミン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5%のFCS)で被覆し、そして3日間にわたり37℃において5%のCOの存在下で放置した。細胞を4%のホルマリンを用いて少なくとも30分間にわたり固定し、水で洗浄し、ギームザ溶液(メルク(Merck)、ダルムスタッド)で30分間にわたり染色しそして再び洗浄した。
板を乾燥した後に、プラークを計数しそしてウイルス株の力価を計算した。
実施例2 致死攻撃モデル
Balb/cABom雌マウス(体重19g、年齢7週間)を購入し(M&B A/S、デンマーク)、そして1週間後に接種した。氷冷PBS(〜5×10pfu)中の50μlの希釈されたウイルス懸濁液を軽くエーテル麻酔がかけられたマウスの外鼻腔に適用すると、7−10日間後に90−100%の死亡率を生じた。感染させた動物を毎日疾病の兆候(脳炎、麻痺、呼吸症状)に関して点検しそして死にかけた動物は安楽死させた。
実施例3 眼ヘルペスモデル
Balb/cABom雌マウス(体重19g、年齢7週間)を購入し(M&B A/S、デンマーク)、そして1週間後に接種した。マウスをエーテルにより麻酔をかけそして右角膜を、垂直に3回そして水平に3回、殺菌30−ゲージ針を用いて剥離した。5μlのウイルス懸濁液(5×10pfu HSV−1 Walki)を乱切りされた角膜に適用した。マウスを毎日ヘルペス感染症の兆候(眼瞼炎、角膜炎、脳炎)に関して点検した。死にかけた動物は安楽死させた。
実施例4 免疫グロブリン画分
ヒト免疫グロブリン画分である、IgG、単量体状IgA(mIgA)、および二量体状IgA(dIgA)を下記の通りにして製造した。
【0039】
実施例で使用されたIgGは、出発物質としてコーン(Cohn)画分II+IIIを用いてプールされたヒト血漿から精製された商業等級IgG(5%のGAMIMMUNE
N、バイエル・コープ(Bayer Corp.)、ピッツバーグ、ペンシルバニア州)であった。ヒト血漿からの単量体状IgAおよびdIgAを2つの連続的なサイズ排除クロマトグラフィー段階によりスーパーデックス(SUPERDEX)200上でバイオロジック(BIOLOGIC)クロマトグラフィー台(バイオ・ラド(Bio Rad)、リッチモンド、カリフォルニア州)を用いて精製した。IGIV−C方法(引用することにより全てが本発明の内容となる米国特許第6,307,028号明細書参照)の廃棄流であるQ−セファロース(Q−SEPHAROSE)クロマトグラフィー段階の高−塩片が出発物質として使用されそして13mg/mlのIgAを45%の純度で含有していた。
【0040】
簡単に述べると、20mlの出発物質を2−リットルの200XK 50/1 00 スーパーデックス200カラム(5cm×93cm、ファーマシア(Pharmacia)、アップサラ、スウェーデン)に適用しそしてトリス緩衝食塩水緩衝液(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)の中で10ml/分で実験した。画分を比濁法であるSDS−PAGEおよびサイズ排除−FPLCにより分析した。単量体状IgAに関して陽性である画分をプールし、アミコン(AMICON)濃縮室(YM 10 膜、室温)を用いて10mlの最終容量に濃縮し、そしてスーパーデックス200カラムに最初の実験と同じ実験条件を用いて再適用した。最終生成物をpH4.25の0.2Mグリシン中で調合しそして0.2μm膜を用いて殺菌濾過した。第一クロマトグラフィーの溶離曲線(280nm)は5個の蛋白質ピークを有し、それらは免疫比濁法によりIgM、dIgA、mIgA、IgGおよびアルブミンとして同定された(図1A参照)。スーパーデックス200上のmIgAおよびdIgAピークの再クロマトグラフィーは1個の主要蛋白質ピークおよび2個の小さい肩を生じ、それらはmIg、dIgA、およびIgGをそれぞれ含有していた(図1B参照)。mIgAまたはdIgAを含有する画分がプールされた。IgAの同一性はSDS−PAGEおよびウェスタンブロットによりさらに確認された(図2、3A、3B、4A、および4B参照)。アリコートを−70℃において貯蔵した。
実施例5 眼HSV−疾病の予防/処置用のヒトIgG
眼ヘルペスモデル用に、免疫グロブリン懸濁液をPBS中で感染動物の処置前に25m
g/mlの最終濃度に希釈した。5マイクロlの希釈された免疫グロブリン懸濁液を感染した眼の角膜上に1日3回直接適用することにより、マウスを局所処置した。感染当日には、感染前1時間、感染後(p.i.)1時間、および感染後5時間に処置を行った。感染後1日目から感染後4日目まで、動物を午前7時、午後2時および午後7時に1日3回処置した。
【0041】
マウスにHSVを一方の眼の角膜上に感染させそして感染当日およびその後の4日間にわたり1日3回、上記の通りにしてヒトIgG、mIgAおよびdIgA、またはプラシーボ(燐酸塩緩衝食塩水、PBS=150mMのNaCl、20mMの燐酸塩、pH7.0−7.4)で処置した。感染後7日目に、各処置を受けている合計10匹の感染マウスの中で、下記の数が生存した:
【0042】
【表1】

【0043】
感染後7日間に、プラシーボだけで処置された全ての動物は眼HSV疾病を致死的なHSV脳炎と合併して発症したが、局所IgGで1日3回処置された10匹の動物の中の7匹が生存しておりそして眼HSV−疾病の兆候を示さなかった。
実施例6 散在性HSV疾病の予防/処置用のヒトdIgA
致死攻撃モデルにおいて、動物を尾静脈内への免疫グロブリン懸濁液の注射により処置した。処置は感染前1時間および感染後24時間に行った。感染当日に、2mgの免疫グロブリンを適用し、感染翌日にはさらに2mgを与えた。
【0044】
マウスにHSVを鼻内感染させそして感染当日および感染翌日にIgG、mIgA、dIgAまたはプラシーボ(燐酸塩緩衝食塩水、PBS)の静脈注射により処置した。感染後7日目に、合計10匹の感染マウスの中で、下記の数が生存した:
【0045】
【表2】

【0046】
感染後7日間に、全てのプラシーボ−処置動物は致死的な散在性HSV−感染症に負けたが、静脈内dIgAで処置された10匹の動物の中の7匹および静脈内mIgAで処置された10匹の動物の中の5匹が生存した。
【0047】
本発明の前記の実施例は説明のためだけであり、そして本発明を何らかの方法で限定しようとするものではない。当業者は前記事項の種々の改変が本発明の意図する範囲内にあることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A−1B】図1Aおよび1Bは、それぞれ、第一および第二のサイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィーカラムからの免疫グロブリンの溶離曲線のグラフ表示を示す。
【図2】図2は150kDaにおける小さい帯を有する160kDaにおける主要な帯として泳動する精製されたIgA(第二のサイズ排除クロマトグラフィー精製段階後)のSDS−PAGEを示す。
【図3A−3B】図3Aおよび3Bは本発明のIgA調合物(第二のサイズ排除クロマトグラフィー精製段階後)の、それぞれ、非還元SDS−PAGEおよびウェスタンブロットを示す。
【図4A−4B】図4Aおよび4Bは図3Aおよび3Bに表示された通りの非還元条件下における分析に対応するそれぞれ還元されたSDS−PAGEおよびウェスタンブロットを示す。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の処置または予防方法であって、プールされたヒト血漿から調製された免疫グロブリンA(IgA)を含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に静脈投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒト新生児である請求項1の方法。
【請求項3】
哺乳動物が免疫無防備状態である請求項1の方法。
【請求項4】
哺乳動物がヘルペス疾病に罹っている請求項1の方法。
【請求項5】
疾病が脳炎、肺炎、肝炎、眼ヘルペス、水痘、帯状ヘルペス、耳帯状ヘルペス、帯状ヘルペス水痘、角膜炎、指ヘルペス、顔面ヘルペス、陰部ヘルペス、剣状ヘルペス、および口腔ヘルペスよりなる群から選択される請求項4の方法。
【請求項6】
疾病が脳炎、肺炎、肝炎、水痘、耳帯状ヘルペス、および帯状ヘルペス水痘よりなる群から選択される請求項4の方法。
【請求項7】
疾病が脳炎である請求項4の方法。
【請求項8】
IgAが組成物中に存在するいずれの免疫グロブリンの少なくとも約35%〜約55%を含んでなる請求項1の方法。
【請求項9】
IgAが組成物中に存在するいずれの免疫グロブリンの少なくとも約60%〜約80%を含んでなる請求項1の方法。
【請求項10】
哺乳動物における単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の処置または予防方法であって、プールされたヒト血漿から調製された単量体状IgA、二量体状IgA、およびIgGを含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に静脈投与することを含んでなり、単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約35%〜約55%を含んでなる方法。
【請求項11】
単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約60%〜約80%を含んでなる請求項10の方法。
【請求項12】
単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約70%〜約95%を含んでなる請求項10の方法。
【請求項13】
単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約60%を含んでなる請求項10の方法。
【請求項14】
単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約80%を含んでなる請求項10の方法。
【請求項15】
単量体状および二量体状IgAが組成物中に存在する合計免疫グロブリンの少なくとも約90%を含んでなる請求項10の方法。
【請求項16】
哺乳動物におけるヘルペス疾病の処置または予防方法であって、プールされたヒト血漿から調製された免疫グロブリンG(IgG)を含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に局
所投与することを含んでなる方法。
【請求項17】
ヘルペス疾病が水痘、帯状ヘルペス、耳帯状ヘルペス、帯状ヘルペス水痘、角膜炎、指ヘルペス、顔面ヘルペス、陰部ヘルペス、剣状ヘルペス、および口腔ヘルペスよりなる群から選択される請求項16の方法。
【請求項18】
哺乳動物における眼ヘルペス疾病の処置または予防方法であって、プールされたヒト血漿から調製された免疫グロブリンG(IgG)を含んでなる有効量の組成物を哺乳動物に局所投与することを含んでなる方法。
【請求項19】
ヘルペス疾病が角膜炎である請求項18の方法。
【請求項20】
哺乳動物における眼ヘルペス疾病の処置または予防方法であって、プールされたヒト血漿から調製された有効量の免疫グロブリンG(IgG)を含んでなる懸濁剤を哺乳動物の感染した眼に直接投与することを含んでなる方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−504268(P2007−504268A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526176(P2006−526176)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/028559
【国際公開番号】WO2005/025617
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506074484)タレクリス・バイオセラピユーテイクス・インコーポレーテツド (10)
【Fターム(参考)】