説明

ヘルメット及びこれに用いられる保護フィルム

【課題】反射光が運転者に与える影響を低減して安全運転に寄与し得るとともに光による眩しさを低減しつつ歩行者側から運転者の顔が見えるようしたヘルメットを提供することである。
【解決手段】ヘルメット本体12に取り付けられて開口部12aを覆うシールド13を偏光板14により形成し、運転者の視界に入る反射光をシールド13の偏光フィルタ機能によりカットする。または、偏光フィルタ特性を持たない通常のシールドの外面に偏光板により形成される保護フィルムを貼り付けて、当該シールドに偏光フィルタ特性を持たせる。または、偏光板により形成されるベースフィルムに複数の剥ぎ取りフィルムを互いに剥離可能に積層した積層型の保護フィルムをシールドの外面に貼り付けて、当該シールドに偏光フィルタ特性を持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動2輪車や4輪車等の乗り物の運転者が着用するヘルメット及びそのシールドに貼り付けられる保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイ(自動2輪車)に乗るときは、ヘルメットの着用が日本では義務づけられている。事故等において、運転者の頭部を保護するためである。かかるヘルメットについては、種々の構成が知られている。例えば、比較的に低速で走る場合等には、フードの付いていないヘルメットが多用されている。一方、高速走行する場合には、シールドの付いているヘルメットが着用される。例えば、レース等で使用される場合である。かかるヘルメットは、内部に頭を含めて左右の頬の辺りまでを保護するものはジェット型ヘルメットと言われている。かかるジェット型ヘルメットは、基本的には顎の保護は行うことができない。顎まで保護できるものとしては、フルフェース型ヘルメットがある。かかるヘルメット内部での頭等の保護は、例えば、内挿材のスポンジ等を適宜厚さに変更することで行っている。ここで、ヘルメットに設けられるシールドは、例えば、スクリーン、シールドスクリーン、あるいはバイザー等と呼ばれる場合もある。
【0003】
かかるヘルメットに設けられるシールドは、従来は透明であったが、直射日光にさらされることから、現在では例えば特許文献1に記載されるヘルメットのように、スモークやアンバー等に着色されたものが多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−20121号公報(第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シールドの着色が原因で、例えば交差点を渡ろうとする歩行者が、オートバイの運転者の動向が探れないという問題が生じている。これは、シールドが着色されることにより、歩行者側から運転者の顔が見えないからである。つまり、歩行者はオートバイの運転者がこちらを見ていると思って道を渡り始めるが、実際には運転者は見ていないような場合である。かかる顔が見えないことによる不具合を回避するために、4輪車では、運転席及び助手席と前面ガラスには、色付きのフィルムを張るのを禁止している。
【0006】
一方、反射光は偏光であるので、シールドを着色したとしても、その「ギラつき」や「眩しさ」を十分に低減することができない場合がある。特に、オートバイの場合には、運転時に運転者の顔がほぼ垂直となる4輪車に対して、運転者は顔が略40°程下向きとなり上目使いの姿勢となるので、太陽光の反射の影響を敏感に受けてしまうのである。
【0007】
例えば、他の車両の近くを走行しているときには、オートバイの運転者は、対向車や前方車両のガラス、バンパー、ボディ等からの反射光を受けることになる。また、単独走行時であっても、道路の脇にある芝生や草木の葉、路面のセンターラインや路肩のライン、ゼブラ等からの反射光を受けることになる。さらに、トンネルに入ったときには、路面からの反射光が急に減少して視界が一瞬真っ暗になり、反対にトンネルから出たときには、路面からの反射光が急に増して視界が一瞬真っ白になり、その出入り前後における運転者の障害物等の視認性が低下することになる。
【0008】
このような反射光の影響により、次のような不具合が運転者に生じることになる。例えば、反射光の「ギラつき」や「眩しさ」により運転者の視界が妨げられ、これが運転者の精神的ストレスを高め、また、集中力を散漫にさせることになる。また、路面や路面の補修箇所の照り返しによる反射光のパターンが不連続であると、これが運転者に対して精神的なストレスとなる。さらに、舗装によって路面の色が相違する場所でも、同様に当該色の違いによって反射光が不連続となり、運転者に対して精神的なストレスを与えるのである。さらに、対向車や前方車両のライトや尾灯、また、その光源、光量、色光の相違により、運転者が受ける反射光は様々であり、これらが運転者の視力に対するストレスを増すことになる。運転者が眼鏡を使用している場合には、遠方を見る際に眼鏡の上部に視線が行くことにより、反射光が直接目に入り、さらに疲労度を高めるのである。このように、4輪車に対してオートバイの運転者は光の反射の影響を受けることが多いのである。
【0009】
反射光による刺激が運転者にストレスとして蓄積されると、運転者の疲労が増し、安全運手に支障をきたすおそれがある。また、レース等での高速走行時には、走行風との関係でさらに前傾姿勢が求められるので、その影響は顕著となり、反射光の影響が適切な運転操作の妨げとなる場合もある。
【0010】
本発明の目的は、反射光が運転者に与える影響を低減して安全運転に寄与し得るヘルメットを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、光による眩しさを低減しつつ歩行者側から運転者の顔が見えるようしたヘルメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のヘルメットは、視界確保用の開口部を備えたヘルメット本体と、前記ヘルメット本体に取り付けられて前記開口部を覆うシールドとを備えたヘルメットであって、前記シールドが偏光板により形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の保護フィルムは、ヘルメットの視界確保用の開口部を覆うシールドの外面に貼り付けられる保護フィルムであって、偏光板により形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の保護フィルムは、ヘルメットの視界確保用の開口部を覆うシールドの外面に貼り付けられる保護フィルムであって、偏光板により形成されるベースフィルムと、前記ベースフィルムの一方の面に互いに剥離可能に積層され、使用者が順次剥ぎ取り可能な複数の剥ぎ取りフィルムとを有し、前記ベースフィルムの他方の面を前記シールド側に向けて該シールドの外面に貼り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘルメットの開口部を覆うシールドを偏光板で形成するようにしたので、運転者の視線に向く反射光をシールドによりカットして、運転者が反射光から受ける眩しさやストレス等を低減することができる。つまり、偏光板の偏光フィルタ機能により運転者の視線には反射光が入らないので、眩しさを気づかうストレスにより神経が刺激されることがなく、運転者は運転に集中でき、安全運転することができる。また、シールドを偏光板で形成することにより、シールドを着色しなくても光による眩しさを低減することができるので、光による眩しさを低減しつつ歩行者側からヘルメットを着用した運転者の顔を見えるようにすることができる。これにより、歩行者と運転者の双方の安全性を高めることができる。
【0016】
本発明によれば、ヘルメットのシールドの外面に貼り付けられる保護フィルムを偏光板で形成するようにしたので、この保護フィルムによりシールドに偏光フィルタ機能を付与して、運転者の視線に向く反射光をカットすることができる。これにより、シールドを偏光板で形成した場合と同様の効果を得ることができる。また、保護フィルムを偏光板で形成することにより、この保護フィルムをシールドに貼り付けることで、既存のヘルメットのシールドに容易に偏光フィルタ機能を持たせることができる。
【0017】
本発明によれば、複数のフィルムを積層して成る保護フィルムのシールドに直接貼り付けられるベースフィルムを偏光板で形成するようにしたので、この保護フィルムによりシールドに偏光フィルタ機能を付与して、運転者の視線に向く反射光をカットすることができる。これにより、シールドを偏光板で形成した場合と同様の効果を得ることができる。また、保護フィルムに偏光フィルタ機能を持たせるようにしたので、この保護フィルムをシールドに貼り付けることにより、既存のヘルメットのシールドに容易に偏光フィルタ機能を持たせることができる。さらに、最もシールドの側に配置される最終のフィルム(ベースフィルム)のみを偏光板で形成するようにしたので、他のフィルム(剥ぎ取りフィルム)として偏光フィルタ機能を持たない通常のフィルムを用いて、この保護フィルムのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態であるヘルメットを示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示すシールドの断面図であり、(b)は同図(a)に示すシールドの変形例である。
【図3】図1に示すシールドの偏光軸の方向を示す説明図である。
【図4】(a)はオートバイが他のオートバイとともに道路を走行する様子を示す説明図であり、(b)はオートバイが単独で道路を走行する様子を示す説明図である。
【図5】オートバイが海岸沿いの道路を走行する様子を示す説明図である。
【図6】オートバイがレース場を走行する様子を示す説明図である。
【図7】オートバイがトンネルを出口に向けて走行する様子を示す説明図である。
【図8】図1に示すヘルメットの変形例であるジェット型のヘルメットを示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である保護フィルムのシールドへの装着前の状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示す保護フィルムをシールドに貼り付けた状態を示す斜視図である。
【図11】保護フィルムが貼り付けられたシールドの断面図である。
【図12】シールドに1枚の保護フィルムが貼り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1に示す本願発明のヘルメット11は、自動2輪車とも呼ばれるオートバイの運転者が着用する2輪車用のヘルメット11であり、これを着用する運転者の頭部や顔の全体を覆うフルフェース型となっている。このヘルメット11のヘルメット本体12(帽体やシェルとも呼ばれる)は外形が略卵形に形成されており、その下部には頭部挿入用の開口部(不図示)が形成されている。また、ヘルメット本体12の前方側には視界確保用として略楕円形状の開口部12aが形成されており、このヘルメット11を着用した運転者は、この開口部12aを介して外部を視認することができるようになっている。ヘルメット本体12の材質としては、例えば、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)、ポリカーボネイト樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂等が用いられている。これにより、ヘルメット本体12は所望の強度を有している。また、図示はしないが、ヘルメット本体12の内面には衝撃吸収用のライナーやクッションが取り付けられ、頭部挿入用の開口部には固定用のベルトが設けられている。
【0021】
ヘルメット本体12にはシールド13が取り付けられている。このシールド13は、スクリーン、シールドスクリーン、あるいはバイザー等とも呼ばれるものである。ヘルメット本体12の両側部にはそれぞれシールド支持部12b(図1においては一方のみを示す)が設けられ、これらのシールド支持部12bにはそれぞれ支軸(不図示)が内装されている。シールド13は略長方形であるとともにヘルメット本体12の外形に沿って湾曲した板状に形成されており、その両端部は対応するシールド支持部12bに差し込まれてシールド支持部12bの内部で支軸に支持されている。これにより、シールド13は、図1に示すように開口部12aの全面を覆う閉位置と、当該位置から上方に跳ね上げられて開口部12aを開放する開位置との間で開閉自在となっている。そして、オートバイの走行時には、シールド13は閉じた状態とされ、開口部12aはシールド13により覆われるようになっている。
【0022】
このヘルメット11では、開口部12aに入射される反射光をカットするために、シールド13を偏光フィルタとしての機能を有する偏光板14により形成するようにしている。図2(a)に示すように、偏光板14は、ポリカーボネイト等の合成樹脂により板状に形成された一対の透明板14a,14bの間に偏光フィルタ機能を有する偏光フィルム14cを挟み込み、これらを溶着や接着等の手段により一体化して形成されており、これを所定の形状に切り出すことによりシールド13が形成される。この偏光板14に用いられる偏光フィルム14cとしては、例えば、ポリビニール・アルコールフィルムを、ヨウ素液を繰り返し塗布しながら一定方向に引き伸ばして形成したものが用いられるが、他の材質や方法で形成された偏光フィルムを用いるようにしてもよい。
【0023】
本実施の形態においては、一対の透明板14a,14bの間に偏光フィルム14cを挟み込んで偏光板14つまりシールド13を形成するようにしているが、これに限らず、例えば図2(b)に示すように、透明板14aの一方の面に偏光フィルム14cを接着、溶着等により貼り付けた構造としてもよく、また、シールド13自体を偏光フィルム14cで形成するようにしてもよい。
【0024】
このシールド13の偏光フィルタ特性は、図3に示すように、このヘルメット11を着用した運転者が前方を向いた状態において偏光軸Sが水平(透過軸が垂直)となるように設定されている。つまり、偏光フィルム14cの偏光軸Sはシールド13の幅方向に沿って延びており、このヘルメット11を着用した運転者の視界に対して水平となっている。これにより、このヘルメット11を着用した運転者に対して横方向に振動する偏光はシールド13によりカット(遮断)されて運転者の目には達せず、縦方向に振動する偏光のみが運転者の目に達することになる。したがって、反射面に対して水平方向に振動する反射光は、シールド13によりカットされ、このヘルメット11を着用したオートバイの運転者が反射光から受ける影響は低減されることになる。以下に、このシールド13により反射光が低減される例を示す。
【0025】
このヘルメット11を着用したオートバイ21の運転者が、図4(a)に示すように、他のオートバイ22とともに道路を走行している場合を想定する。この場合、オートバイ21の運転者は他のオートバイ22のボディやナンバープレート等からの反射光を受けることになる。しかし、本願発明のヘルメット11はシールド13が偏光フィルタ特性を有する偏光板14で形成されているので、他のオートバイ22からの反射光はシールド13によりカットされ、このヘルメット11を着用した運転者の目に達しないのである。
【0026】
また、図4(b)に示すように、このヘルメット11を着用したオートバイ21の運転者が単独で道路を走行している場合であっても、運転者は、路面やセンターラインあるいは道路の脇にある芝生や草木の葉から反射光を受けることになる。しかし、この場合においても、本願発明のヘルメット11はシールド13が偏光フィルタ機能を有する偏光板14で形成されているので、当該路面等からの反射光はシールド13によりカットされ、このヘルメット11を着用した運転者の目に達しないのである。
【0027】
図5に示すように、このヘルメット11を着用したオートバイ21の運転者が海岸沿いの道路を走行する場合には、太陽光が海面で反射して海面は反射光によりギラつき、眩しさは相当のものとなる。しかし、このような場合でも、海面からの反射光は偏光板14で形成されたシールド13によりカットされ、このヘルメット11を着用した運転者の目に達しないのである。これにより、海面のギラつきは低減され、運転者に対する反射光の影響は小さくなるのである。
【0028】
図6に示すように、レース場においてオートバイ21が高速で走行する場合には、運転者には高い集中力や一瞬の判断が要求される。このようなレース中において、路面や路肩の縁石等からの反射光が運転者に達すると、走行ラインの先が見えなくなるなど運転者の視界が妨げられたり、運転者の精神的ストレスが高められたりする。そして、これらの影響により、運転者の適切な操作が妨げられることになる。しかし、このような場合でも、本願発明のヘルメット11を着用することにより、路面等からの反射光を偏光フィルタ機能を有するシールド13によりカットして、運転者に対する反射光の影響を低減させることができるのである。これにより、このヘルメット11を着用した運転者の走行ラインの視認性や集中力が高められ、レース中において適切な運転操作が可能となるのである。
【0029】
図7に示すように、トンネル内を走行中のオートバイ21がトンネルから出るときには、路面からの反射光が急に増して視界が一瞬真っ白になり、運転者の視認性が一時的に低下するおそれがある。しかし、このような場合でも、本願発明のヘルメット11では、トンネルから出た直後の路面等からの反射光は偏光フィルタ機能を持ったシールド13によりカットされるので、運転者の視界が真っ白になることがない。したがって、トンネルから出た直後においても、このヘルメット11を着用した運転者の視界は確保され、安全性が高められるのである。
【0030】
このように、本願発明のヘルメット11では、そのシールド13が偏光フィルタ機能を有する偏光板14で形成されるので、運転者の視線に向く反射光をシールド13によりカットして、運転者が反射光から受ける眩しさやストレス等の影響を低減することができる。つまり、シールド13の偏光フィルタ機能により、運転者の視線には路面等からの反射光が入らないので、眩しさを気づかうストレスにより神経が刺激されることがなく、疲労等を低減できるのである。そして、これにより、このヘルメット11を着用した運転者は運転に集中することができ、安全運転に繋がるのである。
【0031】
また、シールド13を偏光板14で形成することにより、シールド13自体にスモーク等の着色を施さなくても、光による眩しさを低減することができる。したがって、シールド13として無色透明または色の薄いものを用いて、歩行者側からヘルメット11を着用した運転者の顔を見えるようにすることができる。そして、これにより、歩行者が運転者の顔を確認して歩行することができるようになるので、歩行者と運転者の双方の安全性を高めることができるのである。
【0032】
このように、シールド13を偏光板14で形成することにより、シールド13を着色しなくても光による眩しさを低減することができるので、光による眩しさを低減しつつ歩行者側からヘルメット11を着用した運転者の顔を見えるようにして、歩行者と運転者の双方の安全性を高めることができる。
【0033】
図8は図1に示すヘルメットの変形例であるジェット型のヘルメットを示す斜視図である。
【0034】
図1に示す場合では、本願発明のヘルメット11はフルフェース型とされているが、これに限らず、例えば図8に示すようなジェット型のヘルメット31に本願発明を適用してもよい。ジェット型のヘルメット31では、ヘルメット本体32に設けられる視界確保用の開口部32aはヘルメット本体32の下端にまで延びており、頭部挿入用の開口部に連ねられている。つまり、ジェット型のヘルメット31には運転者の顎を保護するためのチンガード部分が設けられておらず、運転者の顎は開口部32aから外部に露出している。このヘルメット31に用いられるシールド33は、フルフェース型のヘルメット11と同様に、ヘルメット本体32の両側部に設けられたシールド支持部32bに支持されて、視界確保用の開口部32aを覆う閉位置と、そこから上方に跳ね上げられた開位置との間で開閉自在となっている。
【0035】
このジェット型のヘルメット31においても、シールド33は、図2に示すフルフェース型のヘルメット11のシールド13と同様に、偏光フィルタ機能を有する偏光板14で形成されている。これにより、前述したフルフェース型のヘルメット11と同様な効果を、このジェット型のヘルメット31においても得ることができる。
【0036】
図9は本発明の他の実施の形態である保護フィルムのシールドへの装着前の状態を示す斜視図であり、図10は図9に示す保護フィルムをシールドに貼り付けた状態を示す斜視図である。また、図11は保護フィルムが貼り付けられたシールドの断面図である。
【0037】
図1に示すヘルメット11では、ヘルメット本体12に取り付けられるシールド13を偏光板14で形成することにより、当該シールド13自体に偏光フィルタ機能を持たせるようにしている。これに対して、図9に示すヘルメット41では、そのヘルメット本体42に形成される視界確保用の開口部42aをヘルメット本体42に取り付けられるシールド43で覆う構造は同様であるが、シールド43自体は偏光フィルタ機能を有していない。その代わり、このヘルメット41では、偏光フィルタ機能を有していないシールド43の外面に、偏光フィルタ機能を有する積層型の保護フィルム44を貼り付けて、シールド43に偏光フィルタ機能を付加するようにしている。
【0038】
この保護フィルム44は、ティアオフシールド(tear off shield)や捨てバイザー等とも呼ばれる積層型のものであり、特にレースにおいて使用されるものである。すなわち、オートバイのレースにおいては、前を走行するオートバイが排出する排ガスや潤滑油等がヘルメットのシールドに付着することにより、シールドが短時間で汚れて視界が妨げられる。かかる場合においては、運転者がシールドの汚れを手で清掃する余裕はないので、通常、シールドの外面に保護フィルムが貼り付けられる。この保護フィルムは複数枚のフィルムを互いに剥離可能に積層して形成されており、フィルム外面が汚れたときに外側から順に一枚ずつ運転者がフィルムを剥ぎ取ることにより、新しいフィルムを外面に出して視界を確保することができる。また、保護フィルムは、シールドの外面をキズ等から保護する機能も有する。
【0039】
本発明の保護フィルム44は、図11に示すように、ベースフィルム44aの一方の面に3枚の剥ぎ取りフィルム44bを、例えば、接着、静電気等により互いに剥離可能に積層して形成されている。そして、この保護フィルム44では、ベースフィルム44aのみが偏光フィルタ機能を有する偏光板45で形成され、他の3枚の剥ぎ取りフィルム44bは偏光フィルタ機能を有していない通常のフィルムで形成されている。ベースフィルム44aを形成する偏光板45としては、例えば偏光フィルタ特性を有する偏光フィルムを薄い透明フィルムにより挟んで一体化したものが用いられるが、偏光フィルム自体をベースフィルムとして用いるようにしてもよい。また、偏光フィルムとしては、図2に示すシールド13に用いられる偏光フィルム14cと同様なものが用いられるが、他の材質や方法の偏光フィルムを用いるようにしてもよい。なお、ベースフィルム44aの偏光軸は、図3に示す場合と同様に、この保護フィルム44が装着されたヘルメット41を着用した運転者が前方を見たときに水平となるように設定されているが、その偏光軸の方向は任意に設定することもできる。
【0040】
シールド43の両側部の外面にはそれぞれ装着用の突起部46a,46bが設けられ、保護フィルム44には各突起部46a,46bに対応して一対の切り欠き47a,47bが形成されている。そして、保護フィルム44は、ベースフィルム44aの剥ぎ取りフィルム44bが積層される面とは反対側の面をシールド43の側に向けてシールド43の外面に貼り付けられる。このとき、各切り欠き47a,47bは対応する突起部46a,46bに係合し、これにより保護フィルム44はシールド43に確実に保持される。このように、この保護フィルム44は、ベースフィルム44aを最もシールド43の側つまりベースフィルム44aを最も内側としてシールド43の外面に貼り付けられるようになっている。
【0041】
各フィルム44a,44bの一方の端部は互いに少し剥がされた状態となっており、運転者はこの端部を掴んで、これらのフィルム44a,44bを外側から順次剥ぎ取ることができるようになっている。つまり、保護フィルム44の外面に汚れが付着すると、運転者は汚れた剥ぎ取りフィルム44bを外側から順次剥ぎ取って新しい剥ぎ取りフィルム44bを露出させて視界を確保することができる。そして、この保護フィルム44では、最後の1枚のベースフィルム44aのみが偏光フィルタ機能を有しているので、他の剥ぎ取りフィルム44bが剥ぎ取られても、最後のベースフィルム44aが剥ぎ取られるまではシールド43に偏光フィルタ機能を保持させることができるのである。
【0042】
このように、このヘルメット41では、シールド43自体に偏光フィルタ機能を持たせるのではなく、シールド43に貼り付けられる保護フィルム44に偏光フィルタ機能を持たせるようにしている。シールド43自体ではなく、シールド43に貼り付けられる保護フィルム44に偏光フィルタ機能を持たせたるようにしても、シールド43自体に偏光フィルタ機能を持たせた図1に示すシールド13の場合と同様に、シールド43つまり保護フィルム44により反射光をカットして、運転者のストレス等を低減させるという効果を得ることができる。
【0043】
また、保護フィルム44に偏光フィルタ機能を持たせるようにしたので、この保護フィルム44をシールド43に貼り付けることにより、既存のヘルメット41のシールド43に容易に偏光フィルタ機能を持たせることができる。つまり、偏光フィルタ機能を持たないシールド43を備えたヘルメット41を既に所有している場合であっても、本発明の保護フィルム44をシールド43に貼り付けることにより、シールド43に容易に偏光フィルタ機能を持たせることができるのである。したがって、図1に示すような偏光フィルタ機能を備えたヘルメット11を新たに購入することなく、本発明の保護フィルム44をシールド43に貼り付けることにより、偏光フィルタ機能を備えたヘルメットを安価に得ることができるのである。
【0044】
さらに、この保護フィルム44では、最もシールド43の側に配置されるベースフィルム44aのみを偏光板45で形成するようにしている。これにより、他の剥ぎ取りフィルム44bとして偏光フィルタ機能を持たない通常のフィルムを用いて、この保護フィルム44のコストを低減することができる。
【0045】
図12はシールドに1枚の保護フィルムが貼り付けられた状態を示す斜視図である。
【0046】
図9に示す保護フィルム44は、ベースフィルム44aに複数の剥ぎ取りフィルム44bを積層した積層型となっている。
【0047】
これに対して、図12に示すように、シールド43に1枚のフィルムのみからなる保護フィルム51を貼り付ける構造としてもよい。このような構造でも、積層型の保護フィルム44と同様に、保護フィルム51を貼り付けることにより、シールド43に偏光フィルタ機能を容易且つ安価に付与することができる。この保護フィルム51としては、図9に示す保護フィルム44のベースフィルム44aと同様の偏光板45を用いることができる。
【0048】
なお、図12においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、シールドを構成する透明板は透明に形成されるが、これに限らず、透明板をスモークやアンバー等に着色するようにしてもよく、また、偏光フィルム自体をスモークやアンバー等に着色するようにしてもよい。
【0050】
また、偏光フィルムの偏光軸は、水平に限らず、任意の方向に設定してもよく、また、複数の偏光フィルムを互いに偏光軸の方向をずらして重ねて設けるようにしてもよい。
【0051】
さらに、前記実施の形態においては、オートバイの運転者が着用するオートバイ用のヘルメットに本発明を適用しているが、これに限らず、例えばオープンカー等の4輪車や作業者用のヘルメットにも本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
11 ヘルメット
12 ヘルメット本体
12a 開口部
12b シールド支持部
13 シールド
14 偏光板
14a,14b 透明板
14c 偏光フィルム
21,22 オートバイ
31 ヘルメット
32 ヘルメット本体
32a 開口部
32b シールド支持部
33 シールド
41 ヘルメット
42 ヘルメット本体
42a 開口部
43 シールド
44 保護フィルム
44a ベースフィルム
44b 剥ぎ取りフィルム
45 偏光板
46a,46b 突起部
47a,47b 切り欠き
51 保護フィルム
S 偏光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視界確保用の開口部を備えたヘルメット本体と、前記ヘルメット本体に取り付けられて前記開口部を覆うシールドとを備えたヘルメットであって、
前記シールドが偏光板により形成されていることを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
ヘルメットの視界確保用の開口部を覆うシールドの外面に貼り付けられる保護フィルムであって、
偏光板により形成されていることを特徴とする保護フィルム。
【請求項3】
ヘルメットの視界確保用の開口部を覆うシールドの外面に貼り付けられる保護フィルムであって、
偏光板により形成されるベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一方の面に互いに剥離可能に積層され、使用者が順次剥ぎ取り可能な複数の剥ぎ取りフィルムとを有し、
前記ベースフィルムの他方の面を前記シールド側に向けて該シールドの外面に貼り付けられることを特徴とする保護フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−209492(P2010−209492A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56897(P2009−56897)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(598096245)ジョイボンド株式会社 (5)
【Fターム(参考)】