説明

ベジタリアンミートとその製造方法

【課題】高含水率、高繊維、組織化特性および高栄養価を有するベジタリアンミートとその製造方法を提供する。
【解決手段】全粒大豆を浸漬、加熱および凝固し、ホエー除去後、含水率が約70%の大豆凝固物を得る。そして混合および押し出しを行った後、高含水率、高繊維、組織化特性および高栄養価を有するベジタリアンミートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベジタリアンミートに関し、より詳細には大豆をベースにしたベジタリアンミートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工業界は、例えば大豆または大豆蛋白由来の肉以外の蛋白質を、動物性肉製品の添加物または代替品として利用するため多大な努力と資金を費やしている。そのような比較的安価な原材料で天然の食材に似せた製品を製造しそれが大衆に受け入れられさえすれば、高まる世界的な食料不足が原材料の部分で回避できるということは、長年にわたって認められている。業界が直面する大きな障害の一つは、自然で慣れた噛みごたえや繊維状組織を植物性蛋白材料に付与することが出来ないことである。動物性の肉製品は、はっきりと認識でき、人が非常に好むような、確かな「食感(mouthfeel)」を与える組織を本質的に持っている。自然状態での植物性蛋白は一般に無定形の粉末の形をとり、疑う余地のない栄養価にもかかわらず、持っている特有の食感は肉の代わりとして消費者に全く受け入れられるものではない。さらに、植物性蛋白には一般的に、業界が除去したり隠したり出来ずにいる不愉快な「豆臭い」味という特徴がある。
【0003】
大豆粉、脱脂大豆粉、大豆蛋白分離物および濃縮物などの大豆蛋白材料から大豆ベジタリアンミート製品を製造するための様々な製法が開発されている。それら製法は概して、蛋白繊維の製造あるいは大豆蛋白材料の熱可塑性押し出し成形(thermoplastic extrusion)を含む方法によって大豆ベジタリアンミート製品を製造するといったものである。蛋白繊維の製造による人造肉製品の加工では、大豆材料から個々のフィラメントあるいは繊維を形成し、それら繊維を結合材で繊維束にし、冷却したのち、風味を加える。繊維束は最終的に良く見慣れた肉製品の形にされる。
【0004】
また、大豆蛋白材料から大豆ベジタリアンミート製品を得る押し出し成形法は、大豆蛋白材料と水の混合物を押し出し成形機で加熱および加圧して熱可塑性の塊を形成する工程と、その蛋白塊を冷却ダイに押し出して冷やし、収縮させて組織状構造を形成する工程とを含んでいる。大豆ベジタリアンミートを製造するための押し出し成形法は、例えば特許文献1〜10に開示されている。
【0005】
これらの従来の製造方法は、幅広く受け入れられることを阻む多くの欠点を抱えている。例えば、大豆蛋白の抽出と精製のコストは高い。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3488770号明細書
【特許文献2】米国特許第3911159号明細書
【特許文献3】米国特許第4245552号明細書
【特許文献4】米国特許第4128051号明細書
【特許文献5】米国特許第3935319号明細書
【特許文献6】米国特許第4057656号明細書
【特許文献7】カナダ特許第1059817号明細書
【特許文献8】イギリス特許第1454736明細書
【特許文献9】台湾特許第133321号明細書
【特許文献10】台湾特許第339263号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、高含水率、高繊維、組織化特性(texturization)および高栄養価を有するベジタリアンミートとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、全粒大豆を出発原材料として利用することで、従来法の高いコストを低減する。本発明のベジタリアンミートはベジタリアンハムまたはベジタリアンステーキに加工することができる。さらに本発明は、混合、味付け、およびそれぞれ異なる冷却ダイの利用によって、ベジタリアンミートおよびハムなどのベジタリアン製品を形成する。本発明は水和、混合および粘着性を改善するためのバインダー添加の工程を必要としない。
【0009】
本発明によるベジタリアンミートの代表的な製造方法は、全粒大豆を出発原料として利用し大豆凝固物を作る工程と、大豆凝固物と材料(ingredient)を混合して混合物を作る工程と、その混合物を押し出し食物流動物にする工程と、その食物流動物を異なった温度で加熱する工程と、食物流動物を冷却ダイに押し出しベジタリアンミートに成形する工程とを含む。
【0010】
大豆ベジタリアンミートの含水率は40〜70%であり、その繊維の引裂き強度は400〜1100g/cmである。
【0011】
本発明(1)は、
全粒大豆を大豆凝固物に加工する工程と、
前記大豆凝固物と材料を混ぜ混合物を形成する工程と、
前記混合物を押し出して食物流動物を形成する工程と、
前記食物流動物を異なった温度で段階的に加熱する工程と、
前記食物流動物を冷却ダイで押し出しベジタリアンミートに成形する工程とを含むベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(2)は、前記ベジタリアンミートの含水率が約40〜70%である本発明(1)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(3)は、前記材料が小麦澱粉、大豆粉、重炭酸ソーダおよび/またはそれらの組合せを含む本発明(1)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(4)は、前記食物流動物の含水率が約40〜70%である本発明(1)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(5)は、前記段階的加熱が少なくとも3つの部分を含む本発明(1)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(6)は、前記加熱が6つの部分を含む本発明(1)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(7)は、前記段階的加熱の第2から第6の部分が、それぞれ90〜100℃、90〜110℃、150〜165℃および115〜125℃で行われる本発明(6)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(8)は、前記成形を冷却ダイで行う本発明(1)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(9)は、前記冷却ダイの温度を約100〜130℃にする本発明(8)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(10)は、前記冷却ダイの圧力を2から10kg/cmとする本発明(8)のベジタリアンミートの製造方法である。
本発明(11)は、含水率が40〜70%である本発明(1)の製造方法で製造されるベジタリアンミートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるベジタリアンミートは高含水率、高繊維、組織化特性、および高栄養価を備え、動物性肉に近い。また、全粒大豆が原材料として利用され、従来法に比べ製造コストが削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の上記に述べた目的、特長、長所等をさらに分り易く、図面をもって下記の通り説明を行う。
【0014】
次の記述は本発明を実施する上での最良の形態であるが、本発明の一般的な原理を説明することを目的にしたものであり、限定を目的としているととるべきでない。本発明の範囲は添付した特許請求の範囲を参照にすることにより最良に判断される。
【0015】
図1は本発明の好適な実施形態による大豆ベジタリアンミート製造のステップを示すフローチャートである。
【0016】
図1を参考にして説明する。従来のプロセスと比較し、本発明はS101で、全粒大豆を出発原料として用いる。ステップS103では、全粒大豆を洗い、約5から8時間水に浸す。ステップS105とS107において、大豆を浸した後、その大豆を水洗し、破砕して大豆スラリーにする。一般に、破砕にはグラインダーを用いる。破砕(crushing)あるいは摩砕(grinding)ステップにおける水分量の割合は、大豆の乾燥重量の約10から約15倍であるのが望ましい。破砕あるいは摩砕は常温で行うことが可能であるが、望ましくはスチーム注入下にて約80〜90oCで行う。この使用温度は破砕あるいは磨砕ステップ中においてリポキシダーゼの失活を助ける。破砕あるいは磨砕ステップでは大豆と水分の重量比が約1:15、望ましくは約1:10の大豆スラリーを得る。
【0017】
ステップS109で、大豆スラリーを約100から110oCで約2分から6分間加熱する。大豆スラリーはスチームケトル、熱交換器、スチームインジェクション調理器、または他の適当な調理器で加熱する。加熱ステップは破砕あるいは磨砕後直ちに、望ましくは5分以内に行う。ステップS111とS113で、加熱後、大豆スラリーをろ過して豆乳を得る。ろ過はローラーまたは振動メッシュで行う。
【0018】
ステップS115で、凝固剤を豆乳に加える。豆乳はこの時点で通常80oCから90oCであり、凝固剤の添加により凝固させる。凝固物は約50oC以下では生成されないが、約95oC以上で生成される凝固物は軟らかくなりすぎることに留意すべきである。豆乳のpHは5.9から6.3である。豆乳のpHは、必要ならば炭酸ナトリウムあるいは水酸化ナトリウムで上述の範囲内に調整できる。公知の凝固剤である2価の金属塩として、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸カルシウムを用いることができる。グルコノデルタラクトン(GDL)など他の凝固剤も用いることができる。望ましい凝固剤はGDLである。豆乳に対するGDLの重量比は約0.2%から0.6%、より望ましくは0.3%から0.4%である。
【0019】
ステップS117とS119で、大豆ホエーを除き大豆凝固物を得る。その凝固物を圧搾し、ろ過により上澄み液を除く。例えば、約0.05から約0.2psiで約15から20分間とする。大豆凝固物は“とうふ”に似ており、含水率は40から70%、より望ましくは70%である。
【0020】
ステップS121で、大豆凝固物を小麦澱粉、大豆粉および重炭酸ナトリウムのうちの少なくとも一つと混ぜ、混合物を作る。大豆凝固物、小麦澱粉、大豆粉および重炭酸ナトリウムの比率は、約100〜120:10〜20:40〜50:1〜10、より望ましくは約100〜110:10〜15:40〜45:2〜8である。
【0021】
ステップS123で、押し出し成形機に水を供給し、押し出しを行って食物流動物を形成する。一実施形態において、食物流動物の含水率は40〜70%、より望ましくは50〜60%である。押し出し成形機における食物流動物の流速は、20kg/hrから35kg/hr、より望ましくは25kg/hrから30kg/hrである。また、食物流動物は押し出し成形機のバレルにより、押し出しのステップの間中加熱される。バレルは少なくとも3つ、望ましくは6つの加熱領域を有し、第4と第5の加熱領域は第2と第3加熱領域よりも熱い。第1領域の温度は約10〜30oC、より望ましくは約15〜25oCである。段階的に加熱を行う第2から第6領域の温度は、それぞれ90〜110oC、90〜115oC、145〜165oC、140〜165oCおよび100〜140oCであり、より望ましくは約90〜100oC、90〜110oC、150〜160oC、150〜165oCおよび115〜125oCである。押し出し成形機のスクリューは移動、加圧、混合、練りおよび切断力を提供する。スクリューの回転速度は約120から160rpm、より望ましくは約130から150rpmである。加えて、バレルは押し出し成形工程を通し、加熱、殺菌、酵素の失活、および組織化に十分なエンタルピーを提供する。
【0022】
ステップS125で、最後に食物流動物を、本発明の冷却ダイで成形し、冷やして大豆ベジタリアンミートを得る。冷却ダイは第1半部と第2半部からなり、それらが結合するとダイ内にスペースが形成される。冷却ダイのスペースは注入口とそれに連結するマニホールドを備える。食物流動物は注入口から冷却ダイに入れられる。マニホールドは45から90度の角度範囲で延伸し平面状を成している。また、冷却ダイは4つの長さ(length)(4つの部分)を含んでいる。適切な冷却ダイは円形、四角形またはフラットなどで、特にフラットダイが望ましい。ダイの温度は90から140℃、より望ましくは約100から130℃とし、ダイの圧力1から15kg/cm、より望ましくは約2から10kg/cmとする。
【0023】
本発明の好適な実施形態において、大豆蛋白分離物の代わりに、出発原材料とし全粒大豆を用いる。本発明の大豆ベジタリアンミートは、高含水率、高繊維、組織化特性、および高栄養価を特徴としており、含水率は約40%から70%、繊維の引裂き強度は400〜1100g/cmである。この大豆ベジタリアンミートは動物性肉に近い。
【実施例】
【0024】
実施例1
全粒大豆を浸漬、磨砕、加熱およびろ過して豆乳を得た。豆乳に対し0.2%から0.5%のGDLを80oCの豆乳に加えた。ホエーを除き、大豆凝固物を得た。その大豆凝固物、小麦澱粉、大豆粉および重炭酸ナトリウムを混合した。大豆疑乳、小麦澱粉、大豆粉および重炭酸ナトリウムの比率は100%:11%:43%:5%とした。その混合物と水を供給装置と水ポンプで押し出し成形機に送り込み、加熱した。押し出しの時点で食物流動物の含水率は50〜70%であった。押し出し成形機において食物流動物の流速は25から35kg/hrとし、段階的に加熱する第2から第6領域の温度は、それぞれ90oC、110oC、165oC、160oCおよび120oCとした。4つの部分のフラット冷却ダイ(上部蓋のサイズは149×105×26mm(長さ、幅、高さ)、ベースのサイズは149×105×34mm、上部蓋の中央突出部のサイズは149× 50×2mm、ベースの中央凹部のサイズは149×50×5mmで)を用いた。上部蓋とベースを組み合わせて食物流動物の流動スペースを形成した。そのサイズは149×50×3mmである。ダイの温度は100〜130℃とし、循環水で85〜95℃に冷却した。ダイの圧力は2から10kg/cmとした。本発明の大豆ベジタリアンミートは、高含水率、高繊維、組織化特性および高栄養価を備え、含水率は約40%〜70%、繊維の引裂き強度は400〜1100g/cmであった。
【0025】
実施例2
大豆凝固物と小麦澱粉の比率を70%:30%に変え、pH値を炭酸ナトリウムあるいは水酸化ナトリウムで7〜8に調整したこと以外は、実施例1で行ったのと同じ手順を繰り返した。同時に醤油、砂糖、塩、グルタミン酸一ナトリウム、色素およびフレーバー(表1参照)を素材に加えた。押し出し成形機において、含水率は40%から70%、食物流動物の流速は約30から35kg/hr、スクリューの回転速度は160rpm、および段階的に加熱する第2から第6領域の温度はそれぞれ90oC、100oC、130oC、150oCおよび145oCとした。4つの部分からなる冷却ダイ(上部蓋のサイズは150×150×26mm(長さ、幅、高さ)、上部蓋の中央突出部のサイズは150×100×2mm、ベースのサイズは150×150×40mm、中央凹部のサイズは150×100×12mm。上部蓋とベースを組み合わせて食物流動物の流動スペースを形成した。そのサイズは150×100×10mmである)を用いた。ダイの温度は130〜140oCとし、ダイの圧力は約1〜4kg/cmとした。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明の大豆ベジタリアンミートは、高含水率、高繊維、組織化特性および高栄養価を備え、含水率は約60〜65%、繊維の引裂き強度は3500〜6500g/cmであった。上述の実施例においては、フラット冷却ダイが使用されたが、種々の冷却ダイを用いて各種大豆ベジタリアンミートを製造できることに注目されたい。例えば円形冷却ダイはベジタリアンハムの製造に、フラット冷却ダイはベジタリアンステーキに、そして四角形の冷却ダイは細長状ベジタリアンミートの製造に用いられる。
【0028】
以上、好適な実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれら実施例に限定はされないと解されるべきであり、つまり本発明は、(当業者であれば自明であるような)各種変更および均等なアレンジをカバーするものである。上に掲げた実施例は、本発明の原理を説明するための最良の態様を提示すべく選択し記載したものである。即ち、添付の特許請求の範囲は、かかる各種変更および均等なアレンジが全て包含されるように、最も広い意味に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係わる好適な実施形態による大豆ベジタリアンミート製造のステップを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全粒大豆を大豆凝固物に加工する工程と、
前記大豆凝固物と材料を混ぜ混合物を形成する工程と、
前記混合物を押し出して食物流動物を形成する工程と、
前記食物流動物を異なった温度で段階的に加熱する工程と、
前記食物流動物を冷却ダイで押し出しベジタリアンミートに成形する工程とを含むベジタリアンミートの製造方法。
【請求項2】
前記ベジタリアンミートの含水率が約40〜70%である請求項1記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項3】
前記材料が小麦澱粉、大豆粉、重炭酸ソーダおよび/またはそれらの組合せを含む請求項1記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項4】
前記食物流動物の含水率が約40〜70%である請求項1記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項5】
前記段階的加熱が少なくとも3つの部分を含む請求項1記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項6】
前記加熱が6つの部分を含む請求項1記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項7】
前記段階的加熱の第2から第6の部分が、それぞれ90〜100℃、90〜110℃、150〜165℃および115〜125℃で行われる請求項6記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項8】
前記成形を冷却ダイで行う請求項1記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項9】
前記冷却ダイの温度を約100〜130℃にする請求項8記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項10】
前記冷却ダイの圧力を2から10kg/cmとする請求項8記載のベジタリアンミートの製造方法。
【請求項11】
含水率が40〜70%である請求項1記載の製造方法で製造されるベジタリアンミート。

【図1】
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