説明

ベルトの成形方法及び成形装置

【課題】 気泡のないベルトを成形することができるベルトの成形方法を提供する。
【解決手段】 外型1内に内型2が挿入されることによって、外型1の内周面と内型2の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ3に外型1と内型2の間の原料樹脂液4を押し上げて充填し、しかる後に成形キャビティ3内において原料樹脂液4を硬化させて環状のベルトを成形する。この際に、外型1と内型2の間の気体を排出して成形キャビティ3内を減圧すると共に外型1内に内型2を挿入して成形キャビティ3内に原料樹脂液4を押し上げて充填し、この充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タイミングベルト、プロファイルベルト、リブドベルト、平ベルトなど、ポリウレタン等で成形されるベルトの成形方法及びベルトの成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリウレタンなど樹脂製の環状のベルトを成形するにあたって、特公昭47−32824号公報や特公平2−29006号公報等で提供されているように、外型と内型からなる成形装置を用いて成形することが行なわれている。すなわち、外型の内周面と内型の外周面との間に円筒状の空洞部として形成される成形キャビティ内に、外型に設けた注入口から原料樹脂液を注入し、成形キャビティに充填した原料樹脂液を硬化させて成形を行なった後に、外型と内型を分離して脱型することによって、環状に成形されたベルトを得ることができるものである。
【0003】しかし、このように成形キャビティ内に細い注入口から原料樹脂液を注入する方式では、原料樹脂液を加圧しながら注入を行なう必要があり、この際に原料樹脂液に空気が巻き込まれるおそれがある。また注入口は通常は一箇所に設けられるので、注入口から成形キャビティ内に注入された原料樹脂液の液面は注入口の付近が高く、注入口より遠い箇所が低い状態で上昇し、原料樹脂液の液面が成形キャビティの上端に達する際に、注入口より遠く液面が低い箇所の原料樹脂液に空気が巻き込まれるおそれがある。このことは原料樹脂液の粘度が高く成形キャビティ内での流れが悪い場合に顕著に発生する。そしてこのように原料樹脂液に空気が巻き込まれると、気泡が混入されたベルトが成形されることになり、気泡による不良発生率が高くなるという問題があった。
【0004】そこで本出願人等によって次のような成形方法が提案されている。すなわち、上面が開口する外型の底部に原料樹脂液を供給しておき、この外型内に内型を挿入しながら、内型の下端部と外型の底部との間で原料樹脂液を押圧することによって、外型内に内型を挿入することで外型の内周面と内型の外周面との間に形成される成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填し、そして成形キャビティ内で原料樹脂液の架橋反応を進行させることによって原料樹脂液を硬化させ、この後に成形キャビティ内で原料樹脂液を硬化させてベルトを成形する方法である。
【0005】この方法によれば、注入口を通して原料樹脂液を加圧しながら注入する必要がないので、原料樹脂液を注入する際に空気が巻き込まれるような問題がなく、また原料樹脂液は成形キャビティ内に押し上げられながら充填されるために、成形キャビティ内での原料樹脂液の液面の高さは均等になっており、液面の低い箇所の原料樹脂液に空気が巻き込まれるような問題もなくなるものである。
【0006】このように、原料樹脂液に空気が巻き込まれることを防ぐことはできるものの、成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げながら充填する際に、原料樹脂液は成形キャビティ内に存在する空気に接しながら押し上げられるので、この空気によって原料樹脂液に気泡が混入するおそれがある。
【0007】そこで、成形キャビティ内の空気を排出して成形キャビティ内を減圧状態にした後、あるいは減圧しながら、外型内に内型を挿入して成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填を行なうことが検討されている。
【0008】しかし、上記のように空気を排出して成形キャビティ内を減圧すると、成形キャビティ内の空気が原料樹脂液に混入するようなことはなくなるが、このように成形キャビティ内を減圧状態にして成形を行なうと、原料樹脂液中に含有されている揮発成分から気泡が発生したり、あるいはベルトを補強するために成形キャビティ内にセットした心線に残存している水分から気泡が発生したりするおそれがある。そしてこのように発生した気泡が原料樹脂液から抜ける前に原料樹脂液が硬化して固化すると、この気泡は成形されたベルト中に残存することになり、気泡による不良が発生するおそれがあった。
【0009】また上記のように、外型内に内型を挿入することで外型の内周面と内型の外周面との間に形成される成形キャビティ内に原料樹脂液を充填し、成形キャビティ内で原料樹脂の架橋反応を進行させて硬化させるにあたって、内型の温度が原料樹脂液によって大きく奪われて内型の温度が大きく低下すると、内型は収縮して径が小さくなり、外型の内周面と内型の外周面との間隔が広がって成形キャビティの容積が大きくなる。このとき、原料樹脂の架橋速度が速いと、早い時点で原料樹脂液の粘度が高くなり過ぎ、この容積膨張に対して追従することが出来ずに内部にひけが発生し、この結果、最後に固まる成形品の内部に亀裂が生じるおそれがあり、亀裂による成形不良が発生し易いという問題があった。そして、このような亀裂による成形不良の発生を防止するには、成形キャビティの容積変化に追従する原料樹脂液、つまり架橋速度の遅い原料樹脂液を使用する必要があるが、この場合には架橋時間が長くなって成形サイクルが長くなり、生産性が低下することになるものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、気泡のないベルトを成形することができるベルトの成形方法及び成形装置を提供することを目的とするものであり、加えて亀裂による成形不良のないベルトを生産性高く成形することができるベルトの成形方法及び成形装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係るベルトの成形方法は、外型1内に内型2が挿入されることによって、外型1の内周面と内型2の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ3に外型1と内型2の間の原料樹脂液4を押し上げて充填し、しかる後に成形キャビティ3内において原料樹脂液4を硬化させて環状のベルトを成形するにあたって、外型1と内型2の間の気体を排出して成形キャビティ3内を減圧すると共に外型1内に内型2を挿入して成形キャビティ3内に原料樹脂液4を押し上げて充填し、この充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除することを特徴とするものである。
【0012】また請求項2の発明は、上記のベルトの成形方法において、成形キャビティ3内を真空度5mmHg以下に減圧することを特徴とするものである。
【0013】また請求項3の発明は、上記のベルトの成形方法において、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了を充填検出手段で検出し、充填検出手段による検出に基づいて減圧を解除するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】また請求項4の発明は、上記のベルトの成形方法において、充填検出手段をリミットスイッチ6を用いて形成し、外型1内に内型2を挿入して成形キャビティ3内への原料樹脂液4の充填が完了する直前あるいは充填の完了する状態の外型1と内型2の間の相対的な位置関係をリミットスイッチ6で検知することによって、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了を検出するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】また請求項5の発明は、上記のベルトの成形方法において、原料樹脂液4の架橋開始時には外型1と内型2のいずれか一方の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に設定すると共に外型1と内型2のいずれか他方の温度をそれよりも低い温度に設定し、架橋終了時点では外型1と内型2の温度が略等しくなるように架橋開始時に低い温度に設定した型を加熱することを特徴とするものである。
【0016】また請求項6の発明は、上記のベルトの成形方法において、原料樹脂液4の架橋開始時には外型1の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に設定すると共に内型2の温度を外型1の温度よりも低い温度に設定し、架橋終了時点では内型2の温度が外型1の温度と略等しくなるように内型2を加熱することを特徴とするものである。
【0017】また請求項7の発明は、上記のベルトの成形方法において、架橋終了の後に内型2を冷却して内型2の温度を外型1の温度よりも低い温度に設定することを特徴とするものである。
【0018】また請求項8の発明は、上記のベルトの成形方法において、内型2内に温水、油、水蒸気から選ばれる熱媒を通すことによって内型2を加熱し、内型2内に冷却水のような冷媒を通すことによって内型2を冷却するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】また請求項9の発明は、上記のベルトの成形方法において、内型2の表面を空冷することによって内型2を冷却するようにしたことを特徴とするものである。
【0020】本発明の請求項10に係るベルトの成形装置は、外型1と内型2とを具備して形成され、外型1内に内型2が挿入されることによって、外型1の内周面と内型2の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ3内に外型1と内型2の間の原料樹脂液4を押し上げて充填し、成形キャビティ3内において原料樹脂液4を硬化させて環状のベルトを成形する成形装置において、外型1と内型2の間の気体を排出して成形キャビティ3内を減圧する排気手段と、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了を検出する充填検出手段と、充填検出手段による検出に基づいて排気手段による減圧を解除する制御手段とを具備して成ることを特徴とするものである。
【0021】本発明の請求項11に係るベルトの成形装置は、外型1と内型2とを具備して形成され、外型1内に内型2が挿入されることによって、外型1の内周面と内型2の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ3内に外型1と内型2の間の原料樹脂液4を押し上げて充填し、成形キャビティ3内において原料樹脂液4を硬化させて環状のベルトを成形する成形装置において、外型1と内型2の間の気体を排出して成形キャビティ3内を減圧する排気口9を外型1に設け、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了の状態にまで外型1内に内型2が挿入されたときに排気口9と成形キャビティ3との連通を閉じるフランジ10を内型に設けて成ることを特徴とするものである。
【0022】また請求項12の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型1を加熱する外型加熱手段と、内型2を加熱する内型加熱手段と、内型2を冷却する内型冷却手段と、原料樹脂液4の架橋開始時には外型1の温度が原料樹脂液4を架橋させる温度になるように外型加熱手段で外型1を加熱すると共に内型2の温度を外型1の温度よりも低い温度になるように内型冷却手段で内型2を冷却し、且つ架橋終了時点では内型2の温度が外型1の温度と略等しくなるように内型加熱手段で内型2を加熱するよう、外型加熱手段と内型加熱手段と内型冷却手段をそれぞれ制御する温度制御手段とを具備して成ることを特徴とするものである。
【0023】また請求項13の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型加熱手段を、外型1内に設けられた熱媒を通す熱媒流路50を具備して形成し、内型加熱手段を、内型2内に設けられた熱媒を通す熱媒流路51を具備して形成して成ることを特徴とするものである。
【0024】また請求項14の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型冷却手段を、内型2内に設けられた冷媒を通す冷媒流路52を具備して形成して成ることを特徴とするものである。
【0025】また請求項15の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型冷却手段を、内型2の表面に空気を吹き付けて空冷する送風装置53で形成して成ることを特徴とするものである。
【0026】また請求項16の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型1に設けられた熱媒流路50と、この熱媒流路50に熱媒を供給する熱媒供給装置54とで外型加熱手段を形成すると共に、内型2に設けられた熱媒流路51と、この熱媒流路51に熱媒を供給する熱媒供給装置54とで内型加熱手段を形成し、熱媒供給装置54に設けた熱媒を加熱するヒータ55と熱媒を送り出すポンプ56を温度制御手段で制御するようにして成ることを特徴とするものである。
【0027】また請求項17の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型1に設けられた熱媒流路50と、この熱媒流路50に水蒸気を供給する水蒸気供給装置57とで外型加熱手段を形成すると共に、内型2に設けられた熱媒流路51と、この熱媒流路51に水蒸気を供給する水蒸気供給装置57とで内型加熱手段を形成し、水蒸気供給装置57から外型1の熱媒流路50や内型2の熱媒流路51に供給される水蒸気量及び圧力を温度制御手段で制御するようにして成ることを特徴とするものである。
【0028】また請求項18の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型1に設けられた冷媒流路52と、この冷媒流路52に冷媒を供給する冷媒供給装置58とで内型冷却手段を形成し、冷媒供給装置58に設けた冷媒を冷却する冷却機59と冷媒を送り出すポンプ60を温度センサー61で測定された内型2の温度に基づいて温度制御手段で制御するようにして成ることを特徴とするものである。
【0029】また請求項19の発明は、上記のベルトの成形装置において、温度センサー61として非接触で温度を測定する非接触型温度計62を用いて成ることを特徴とするものである。
【0030】
【発明の実施の形態】まず請求項1乃至4及び請求項10の発明の実施の形態について説明する。
【0031】図1乃至図3は成形装置の一例を示すものであり、外型1と内型2とで成形装置を形成するようにしてある。外型1は上面で円形に開口する成形用凹所39を設けて形成してあり、成形用凹所39の上部には全周に亘って内方へ開口する減圧室40が凹設してある。また外型1は型締めプレスの下盤19に取り付けてある。そして外型1にはその上面と減圧室40とに開口する排気口9が形成してあり、排気口9には排気ホース33を介して真空ポンプ等の排気装置34が接続してある。排気口9と排気ホース33と排気装置34とで排気手段が形成されるものである。
【0032】また内型2は円柱状に形成されるものであり、コア部42の上端部の外周に全周に亘って平面円形のフランジ10が張り出して設けて形成してある。コア部42の外径の半径は、外型1の成形用凹所39の内径の半径よりも成形するベルトの厚み寸法分小さくなるように形成してあり、外型1の成形用凹所39に内型2のコア部42を挿入したときに、成形用凹所39の内周面とコア部42の外周面との間にベルトを形成するための成形キャビティ3が形成されるようにしてある。タイミングベルトのような歯付きベルトを成形するときには、コア部42の外周面にその軸方向に沿った多数の平行な溝を設けたものを用いるものである。またフランジ10の外径は成形用凹所39の上型1の上面での開口の内径と等しい寸法で形成してある。
【0033】上記のように形成される成形装置でベルトを成形するにあたっては、先ず外型1と内型2を上下に分離した状態で、外型1の底部にポリウレタン等の原料樹脂液4を供給する。次に、内型2を固定したまま外型1を上昇させ、外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入させる。そして図2のように内型2のフランジ部10を成形用凹所39の上面の開口内に挿入させると、成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面との間の空洞部内はフランジ10で密閉された状態になるので、この時点から排気装置34を作動させて外型1の成形用凹所39と内型2のコア部42の間の空気を減圧室40を介して排気口9から排出し、外型1の成形用凹所39と内型2のコア部42の間の空洞部を減圧する。この時点では内型2のコア部42の下端は外型1の底部に供給された原料樹脂液4には届いていない。またこのように外型1の成形用凹所39と内型2のコア部42の間の空洞部を減圧することによって、原料樹脂液4の内部の気泡や、外型1の成形用凹所39の内周や内型2のコア部42の外周に必要に応じて配置されている補強用心線の内部の水分が除去される。
【0034】次いで、さらに外型1を上昇させて成形用凹所39内に内型2のコア部42を深く挿入すると、内型2のコア部42の下端部が外型1の底部の原料樹脂液4に届き、コア部42の下面と外型1の底面との間で押される。このように押された原料樹脂液4は図3に示すように、外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間の空洞部内を押し上げられる。そしてさらに外型1を上昇させて成形用凹所39内に内型2のコア部42を完全に挿入させることによって、図3のように外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間に形成される成形キャビティ3内に、成形用凹所39とコア部42の間を押し上げられる原料樹脂液4が充填される。このように成形キャビティ3内に原料樹脂液4を押し上げて充填するにあたって、成形キャビティ3内は減圧されているので、成形キャビティ3内の空気が原料樹脂液4に混入するようなことを防ぐことができるものである。
【0035】このとき、成形キャビティ3内に原料樹脂液4が充填完了する直前、あるいは充填の完了と同時に、排気装置34の作動を停止して減圧を解除し、成形キャビティ3内を大気圧に戻すようにしてある。このように成形キャビティ3内の減圧を解除して大気圧に戻すことによって、原料樹脂液4中に含有されている水分などの揮発分から気泡が発生したり、あるいは補強用の心線に残存している水分から気泡が発生したりすることを防ぐことができるものである。
【0036】ここで、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了を検出する充填検出手段として、リミットスイッチ6を設けるようにしてある。リミットスイッチ6は内型2とともに固定された状態にある枠体35に取り付けてある。そして外型1を上昇させて外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入させ、成形用凹所39内にコア部42が完全に挿入される直前まで外型1を上昇させた際にリミットスイッチ6のアクチエータ36に外型1の下端部外周に設けたフランジ37が接触するように、前もってリミットスイッチ6の取付位置を設定しておくことによって、リミットスイッチ6のオン作動で成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前を検出することができるものである。また外型1を上昇させて外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入させ、成形用凹所39内にコア部42が完全に挿入されるまで外型1を上昇させた際にリミットスイッチ6のアクチエータ36に外型1の下端部外周に設けたフランジ37が接触するように、前もってリミットスイッチ6の取付位置を設定しておくことによって、リミットスイッチ6のオン作動で成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了を検出することができるものである。
【0037】このリミットスイッチ6で形成される充填検出手段は、CPUあるいはリレー等で形成される制御手段に接続してあり、制御手段は上記の排気手段を形成する排気装置34に図4に示すように接続してある。そして充填検出手段で成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了が検出されると、この検出信号が制御手段に入力され、この検出信号に基づいて制御手段が働いて排気手段を形成する排気装置34の作動を停止させ、排気装置34による減圧を解除して成形キャビティ3内が大気圧に戻るようにしてある。このように、充填検出手段や制御手段を用いて排気手段の排気装置34を制御することによって、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填が完了直前あるいは充填完了になると自動的に減圧を解除させることができるものであり、成形の自動化が容易になるものである。尚、図1乃至3の実施の形態では、内型2に対する外型1の位置をリミットスイッチ6で検知して成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了を検出するようにしたが、外型1を固定すると共に内型2を下動させて外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入させるようにした場合には、外型1に対する内型2の位置をリミットスイッチ6で検知して、成形キャビティ3への原料樹脂液4の充填完了直前あるいは充填完了を検出するようにするものである。
【0038】上記のようにして成形キャビティ3内に原料樹脂液4を充填させた後、成形キャビティ3内で原料樹脂液4を硬化させて成形を行なうことができるものである。ここで、上記のように成形キャビティ3内の減圧を解除することによって原料樹脂液4中に気泡が発生しないようにしてあるので、気泡が存在しない成形品を得ることができるものである。そしてこのように成形が完了した後、脱型して成形品を取り出し、必要に応じて成形品を輪切りにすることによって環状のベルトを得ることができるものである。
【0039】次に上記の実施の形態について、実施例及び比較例を示す。
【0040】(実施例1)原料樹脂液4として、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーに硬化剤として3,3′−ジシクロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタンと可塑剤20phrを配合したものを用い、まず外型1と内型2を上下に分離した状態で、内型2のコア部42の外周にポリエステル心線を巻き付けると共に、外型1の成形用凹所39の底部に原料樹脂液4を供給した後、図2のように外型1の成形用凹所39に内型2のコア部42を挿入して成形用凹所39とコア部42の間の空洞部を密閉し、この空洞部を絶対圧で1mmHgの真空度に減圧した。50秒間保持して原料樹脂液4の脱泡を行なった後、外型1を一定速度で上昇させて外型1の成形用凹所39に内型2のコア部42を挿入させ、図1のように外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間に形成される成形キャビティ3内に原料樹脂液4が充填される直前に外型1の上昇速度を低下させた。そして成形キャビティ3内への原料樹脂液4の充填が完了すると同時に減圧を解除し、成形キャビティ3内を大気圧に戻した。この状態で成形キャビティ3内で原料樹脂液4を硬化させることによって成形を行ない、外型1と内型2を上下に分離させて脱型することによって、150歯の台形歯を5mmピッチで有する環状の歯付きベルト用成形品を得た。
【0041】(比較例1)減圧を絶対圧で7mmHgの真空度に設定するようにした他は、実施例1と同様にして環状の歯付きベルト用成形品を得た。
【0042】(比較例2)減圧を絶対圧で14mmHgの真空度に設定するようにした他は、実施例1と同様にして環状の歯付きベルト用成形品を得た。
【0043】実施例1、比較例1,2で得た歯付きベルト用成形品について、気泡の数を計測した。その結果、実施例1のものでは気泡が存しなかった。一方、比較例1のものでは直径0.5mmの気泡が多数存在し、また比較例2のものでは直径1mmの気泡が多数存在した。
【0044】上記のように、成形キャビティ3の減圧が7mmHgや14mmHgの真空度では、気泡が残存することを完全に防ぐことができない。従って請求項2の発明のように、成形キャビティ3内の減圧は5mmHgの真空度で行なうことが好ましい。成形キャビティ3内の減圧度は可能な限り低い程好ましいものであり、従って成形キャビティ3内の減圧度の下限は絶対真空の0mmHgである。
【0045】
【表1】


次に、請求項11の発明の実施の形態を説明する。
【0046】図5乃至図7は成形装置の一例を示すものであり、外型1と内型2とで成形装置を形成するようにしてある。外型1は前記図1乃至図3のものと大略同じ形状に形成してあるが、成形用凹所39の上部に全周に亘って内方へ開口させて凹設した減圧室40の内周下縁には、全周に亘って凹段部41が形成してある。凹段部41の内径は成形用凹所39の上面の開口の内径と等しい寸法に形成してある。また内型2も前記図1乃至図3のものと大略同じ形状に形成してあるが、コア部42の上端部の外周に全周に亘って張り出して設けたフランジ10の厚み(高さ)寸法は前記のものよりも大きく形成してある。
【0047】上記のように形成される成形装置でベルトを成形するにあたっては、先ず外型1と内型2を上下に分離した状態で、外型1の底部にポリウレタン等の原料樹脂液4を供給する。次に、内型2を固定したまま外型1を上昇させ、外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入させる。そして図5のように内型2のフランジ部10を成形用凹所39の上面の開口内に挿入させると、成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面との間の空洞部内はフランジ10で密閉された状態になるので、この時点から排気装置を作動させて外型1の成形用凹所39と内型2のコア部42の間の空気を減圧室40を介して排気口9から排出し、外型1の成形用凹所39と内型2のコア部42の間の空洞部を減圧する。この時点では内型2のコア部42の下端は外型1の底部に供給された原料樹脂液4には届いていない。またこのように外型1の成形用凹所39と内型2のコア部42の間の空洞部を減圧することによって、原料樹脂液4の内部の気泡や、外型1の成形用凹所39の内周や内型2のコア部42の外周に必要に応じて配置されている補強用心線の内部の水分が除去される。
【0048】次いで、さらに外型1を上昇させて成形用凹所39内に内型2のコア部42を深く挿入すると、内型2のコア部42の下端部が外型1の底部の原料樹脂液4に届き、コア部42の下面と外型1の底面との間で押される。このように押された原料樹脂液4は図6に示すように、外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間の空洞部内を押し上げられる。そしてさらに外型1を上昇させて成形用凹所39内に内型2のコア部42を完全に挿入させることによって、図7のように外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間に形成される成形キャビティ3内に、成形用凹所39とコア部42の間を押し上げられる原料樹脂液4が充填される。このように成形キャビティ3内に原料樹脂液4を押し上げて充填するにあたって、成形キャビティ3内は減圧されているので、成形キャビティ3内の空気が原料樹脂液4に混入するようなことを防ぐことができるものである。
【0049】ここで、図6のように外型1を上昇させて外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間に形成される成形キャビティ3内への原料樹脂液4の充填が完了する直前になると、内型2のフランジ10が外型1の凹段部41の内周に挿入され、外型1の減圧室40の内周の開口がフランジ10によって塞がれる。このように外型1の減圧室40の内周の開口が塞がれると、外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間の成形キャビティ3と、排気口9との間の連通が遮断されて、成形キャビティ3内の減圧が解除される。そして図6から図7へと外型1の成形用凹所39に内型2のコア部42がさらに深く挿入されると、外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間の容積が小さくなるので、成形キャビティ3内は減圧状態から大気圧状態、さらに加圧状態になる。このように成形キャビティ3内の減圧を解除することによって、原料樹脂液4中に含有されている水分などの揮発分から気泡が発生したり、あるいは補強用の心線に残存している水分から気泡が発生したりすることを防ぐことができるものである。
【0050】上記のようにして成形キャビティ3内に原料樹脂液4を充填させた後、成形キャビティ3内で原料樹脂液4を硬化させて成形を行なうことができるものである。ここで、上記のように成形キャビティ3内の減圧を解除することによって原料樹脂液4中に気泡が発生しないようにしてあるので、気泡が存在しない成形品を得ることができるものである。そしてこのように成形が完了した後、脱型して成形品を取り出し、必要に応じて成形品を輪切りにすることによってベルトを得ることができるものである。
【0051】上記の各実施の形態のように減圧操作を行ないながらベルトの成形を行なう際に、請求項5乃至9及び12乃至19の発明では、同時に、外型1と内型2の温度制御を行なう。この請求項5乃至9及び12乃至19の発明の実施の形態を以下に説明する。
【0052】図8は成形装置の一例を示すものであり、成形装置は外型1と内型2とで形成するようにしてある。外型1は成形用凹所39を上面で開口させて円筒状に形成してあり、型締めプレスの下盤(図示省略)に取り付けてある。外型1内には熱媒流路50が設けてある。
【0053】内型2は円柱形のコア部42の上面に蓋板63を張り出して設けることによって形成してあり、コア部42内は空洞部64に形成してある。この空洞部64で熱媒流路51と冷媒流路52が兼用して形成されるものである。コア部42の外径の半径は、外型1の成形用凹所39の内径の半径よりも成形するベルトの厚み寸法分小さくなるように形成してあり、外型1の成形用凹所39に内型2のコア部42を挿入したときに、成形用凹所39の内周面とコア部42の外周面との間にベルトを形成するための成形キャビティ3が形成されるようにしてある。タイミングベルトのような歯付きベルトを成形するときには、コア部42の外周面にその軸方向に沿った多数の平行な溝を設けたものを用いるものである。
【0054】図8において54は熱媒供給装置を示すものであり、熱媒槽65と、熱媒槽65内のヒータ55と、ポンプ56とを具備して形成してある。熱媒槽65には温水や油などの熱媒が貯留されているものであり、ヒータ55によって熱媒を加熱するようにしてある。熱媒槽65の上部には送出路66が接続してあり、ポンプ56がこの送出路66に設けてある。この送出路66は外型用送出路67と内型用送出路68とに分岐してあり、外型用送出路67は外型1の熱媒流路50の下部に、内型用送出路68は内型2の熱媒流路51の下部にそれぞれ接続してある。外型用送出路67には開閉バルブ69が、内型用送出路68には開閉バルブ70がそれぞれ設けてある。また熱媒槽65の下部には返送路71が接続してあり、返送路71は外型用返送路72と内型用返送路73に分岐して、外型用返送路72は外型1の熱媒流路50の上部に、内型用返送路73は内型2の熱媒流路51の上部にそれぞれ接続してある。外型用返送路72と内型用返送路73にはそれぞれ電磁弁等で形成される流量調整弁74,75が設けてあり、流量調整弁74,75は後述の温度制御装置76に電気的に接続し、温度制御装置76で制御されるようにしてある。外型1に設けた熱媒流路50と、この熱媒流路50に熱媒を供給する熱媒供給装置54とによって、外型加熱手段が形成されるものであり、また内型2に設けた熱媒流路51と、この熱媒流路51に熱媒を供給する熱媒供給装置54とによって、内型加熱手段が形成されるものである。
【0055】熱媒槽65で加熱された熱媒は、ポンプ56によって送出路66を通して送り出されると共に、送出路66から外型用送出路67を通って、外型1の熱媒流路50に供給され、この熱媒によって外型1を加熱することができる。熱媒流路50内の熱媒は外型用返送路72から返送路71を通して熱媒槽65に返送される。また熱媒は送出路66から内型用送出路68を通って、内型2の熱媒流路51に供給され、この熱媒によって内型2を加熱することができる。熱媒流路51内の熱媒は内型用返送路73から返送路71を通して熱媒槽65に返送される。
【0056】図8において58は冷媒供給装置を示すものであり、冷却機59とポンプ60とを具備して形成してある。冷却機59は冷水等の冷媒を10〜60℃の温度範囲で冷却するように形成されたものであり、冷却機59には冷媒送出路77と冷媒返送路78が接続してあり、ポンプ60は冷媒送出路77に設けてある。冷媒送出路77は三方弁で形成される切り換えバルブ79を介して上記の内型用送出路68に接続してあり、また冷媒返送路78は三方弁で形成される切り換えバルブ80を介して上記の内型用返送路73に接続してあり、冷媒送出路77は内型用送出路68を通して内型2の冷媒流路52に接続され、冷媒返送路78は内型用返送路73を通して内型2の冷媒流路52に接続されるものである。内型2に設けた冷媒流路52と冷媒供給装置58とによって、内型冷却手段が形成されるものである。
【0057】冷却機59で冷却された冷媒は、ポンプ60によって冷媒送出路77を通して送り出されると共に、冷媒送出路77から切り換えバルブ79を介して内型用送出路68を通って、内型2の冷媒流路52に供給され、この冷媒によって内型2を冷却することができる。冷媒流路52内の冷媒は内型用返送路73から切り換えバルブ80を介して冷媒返送路78を通って、冷却機59に返送される。
【0058】また、外型1と、内型2には温度センサー81,61がそれぞれ埋め込んで設けてあり、外型1の温度や内型2の温度を温度センサー81,61で計測するようにしてある。これらの温度センサー81,61はCPU及び、制御プログラムを格納したROM、データを一時記憶するためのRAM等からなる温度制御装置76に電気的に接続してあり、計測された温度データが温度制御装置76に入力されるようにしてある。この温度制御装置76には熱媒供給装置54のヒータ55とポンプ56が、また冷媒供給装置58の冷却機59とポンプ60がそれぞれ電気的に接続してあり、温度センサー81,61によって計測される外型1や内型2の温度データに基づいて、熱媒供給装置54のヒータ55やポンプ56、冷媒供給装置58の冷却機59やポンプ60を制御するようにしてある。この温度制御装置76で、外型加熱手段と内型加熱手段と内型冷却手段をそれぞれ制御する温度制御手段が形成されるものである。
【0059】上記のように形成される成形装置でベルトを成形するにあたっては、先ず図9(a)に示すように外型1と内型2を上下に分離した状態で、外型1の成形用凹所39の内面と内型2のコア部42の外面に離型剤を塗布し、また必要に応じてコア部42の外周に補強用の心線を巻き付ける。この離型剤の塗布や心線の巻き付けの工程では、開閉バルブ69を開にして送出路66と外型用送出路67とを連通させると共に送出路66と内型用送出路68との連通を閉じるように開閉バルブ70を閉にしてあり、熱媒供給装置54から供給される熱媒は外型1の熱媒流路50にのみ送られるようにして、外型1を加熱するようにしてある。外型1の温度は原料樹脂液4を架橋させる温度(原料樹脂液4の架橋反応を進行させることができる温度)に設定してあり、ポリウレタンの場合は通常100〜120℃である。外型1の温度の調整は、温度センサー81によって計測された外型1の温度データが温度制御装置76に入力されると、この温度データに基づいて、熱媒供給装置54のヒータ55とポンプ56の作動を温度制御装置76で制御することによって行なわれるようにしてある。すなわち、温度センサー81による外型1の計測温度が設定値よりも低いときには、ヒータ55の発熱量を高くして熱媒槽65内の熱媒の温度を高めると共に、ポンプ56による熱媒の送出量を多くして、外型1の温度を高めるように制御するものであり、逆に温度センサー81による外型1の計測温度が設定値よりも高いときには、ヒータ55の発熱量を低くして熱媒槽65内の熱媒の温度を低下させると共に、ポンプ56による熱媒の送出量を少なくして、外型1の温度を低下させるように制御するものである。
【0060】またこの離型剤の塗布や心線の巻き付けの工程では、切り換えバルブ79は冷媒送出路77と内型用送出路68とを連通させるように切り換えられており、切り換えバルブ80は内型用返送路73と冷媒返送路78を連通させると共に内型用返送路73と返送路71との連通を閉じるように切り換えられており、冷媒供給装置58から供給された冷媒が冷媒送出路77から内型用送出路68を通して内型2の冷媒流路52(このときは空洞部64は冷媒流路52となる)に送られ、内型2を冷却するようにしてある。内型2の温度は外型1の温度よりも低い温度に設定されるものであり、外型1より10〜70℃程度低く設定するのが好ましい。内型2の温度の調整は、温度センサー61によって計測された内型2の温度データが温度制御装置76に入力されると、この温度データに基づいて、冷媒供給装置58の冷却機59とポンプ60の作動を温度制御装置76で制御することによって行なわれるようにしてある。すなわち、温度センサー61による内型2の計測温度が設定値よりも高いときには、冷却機59の作動を高めて冷媒の温度を低くすると共に、ポンプ60による冷媒の送出量を多くして、内型2の温度を低くするように制御するものであり、逆に温度センサー61による内型2の計測温度が設定値よりも低いときには、冷却機59の作動を下げて冷媒の温度を上げると共に、ポンプ60による冷媒の送出量を多くして、内型2の温度を上げるように制御するものである。
【0061】次に、図9(a)のように外型1の成形用凹所39の底部にポリウレタン等の原料樹脂液4を供給する。このように原料樹脂液4を供給した時点では外型1の温度は原料樹脂液4を架橋させる温度に設定されていると共に内型2の温度は外型1の温度よりも低い温度に設定されている。この後、外型1を上動させるか、あるいは内型2を下動させることによって、外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入させる。そして外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を深く挿入すると、図9(b)に示すように、内型2のコア部42の下端部が外型1の成形用凹所39の底部の原料樹脂液4に差し込まれ、コア部42の下面と成形用凹所39の底面との間で原料樹脂液4が押される。このように押された原料樹脂液4は図9(b)に示すように、外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間の空洞部内を押し上げられる。そしてさらに外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を完全に挿入させることによって、図9(c)のように外型1の成形用凹所39の内周面と内型2のコア部42の外周面の間に形成される成形キャビティ3内に、成形用凹所39とコア部42の間を押し上げられる原料樹脂液4が充填される。
【0062】ここで、上記のように原料樹脂液4は外型1への内型2の挿入に伴って外型1と内型2間に形成される成形キャビティ3内に押し上げられて充填されるので、注入口を通して原料樹脂液4を加圧しながら注入するような必要がなくなり、原料樹脂液4を注入する際に空気が巻き込まれるような問題がなくなると共に、また原料樹脂液4は成形キャビティ3内に押し上げられながら充填されるために、成形キャビティ3内での原料樹脂液4の液面の高さは均等になっており、液面の低い箇所の原料樹脂液4に空気が巻き込まれるような問題もなくなるものである。
【0063】そして上記のように、外型1の温度は原料樹脂液4を架橋させる温度に設定されているので、原料樹脂液4を外型1内に供給した時点で原料樹脂液4は架橋を開始するが、外型1の成形用凹所39内に内型2のコア部42を挿入して外型1と内型2の間の成形キャビティ3内に原料樹脂液4が充填されるまでは、原料樹脂液4は流動状態にある。そして成形キャビティ3内に原料樹脂液4が充填された後、開閉バルブ69,70のいずれもが開いて、送出路66を外型用送出路67と内型用送出路68のいずれとも連通させるように切り換えられ、熱媒供給装置54から供給される熱媒は外型1の熱媒流路50と内型2の熱媒流路51(このときは空洞部64は熱媒流路51となる)の両方に送られる。このとき同時に、切り換えバルブ79は冷媒送出路77と内型用送出路68の連通を閉じるように切り換えられており、切り換えバルブ80は内型用返送路73と冷媒返送路78の連通を閉じると共に内型用返送路73と返送路71とを連通させるように切り換えられている。このように外型1の熱媒流路50に熱媒を通すことによって、外型1の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に保持すると共に、内型2の熱媒流路51に熱媒を通すことによって、内型2の温度を上昇させ、成形キャビティ3内の原料樹脂液4の架橋反応を促進するものである。
【0064】ここで、原料樹脂液4を外型1内に供給して架橋を開始する時点から成形キャビティ3内で原料樹脂液4の架橋が進行する間、内型2の温度は外型1の温度よりも低い温度に設定されているので、内型2の温度が原料樹脂液4によって大きく奪われて内型2の温度が大きく低下することがなくなる。従って、内型2の温度が大きく低下することによる内型2の寸法収縮で内型2の径が小さくなることを防ぐことができ、外型1の内周面と内型2の外周面との間隔が広がって成形キャビティ3の容積が大きくなることを防ぐことができるものであり、成形キャビティ3の容積が大きくなることに起因して成形品に亀裂が生じることを防止することができ、亀裂による成形不良の発生を低減することができるものである。架橋開始時点での内型2の温度を原料樹脂液4の温度よりも低く設定すれば、内型2の温度が原料樹脂液4に奪われることがなくなるので好ましいが、内型2の温度が低過ぎると、内型2を原料樹脂液4の架橋反応を進行させる温度にまで上昇させるのに時間がかかって、成形に要する時間が長くなり、生産性が低下する。従って、架橋開始時点での内型2の温度は原料樹脂液4の温度よりも必ずしも低く設定する必要はなく、外型1の温度より低い温度であればよい。
【0065】上記のように外型1の熱媒流路50と内型2の熱媒流路51に熱媒を通すことによって、外型1の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に保持すると共に内型2の温度を徐々に上昇させるが、これらの温度調整は、温度センサー81,61によって計測された外型1や内型2の温度データに基づいて、上記のように温度制御装置76で熱媒供給装置54のヒータ55とポンプ56の作動を制御すると共に、外型用返送路72と内型用返送路73に設けた流量調整弁74,75を温度制御装置76で制御することによって行なわれるようにしてある。すなわち、外型1の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に保持すると同時に内型2の温度を上昇させるために、ヒータ55の発熱量を高くして熱媒槽65の熱媒の温度を高めると共に、ポンプ56による熱媒の送出量を多くするように制御するが、さらに外型1の熱媒流路50と内型2の熱媒流路51に通す熱媒の量を個別に調整して、外型1の温度と内型2の温度を個別に制御する必要がある。そこで、温度センサー81,61によって計測された外型1や内型2の温度データに基づいて、外型用返送路72と内型用返送路73に設けた流量調整弁74,75を温度制御装置76で制御し、外型用返送路72や内型用返送路73を通過する熱媒の流量を調整することによって、外型1の熱媒流路50と内型2の熱媒流路51に通される熱媒の量を個別に調整するようにしてある。つまり、温度センサー81によって計測される外型1の温度が設定値より低いときには流量調整弁74の開口を大きくして外型1の熱媒流路50への熱媒の流量を増加させ、温度センサー81によって計測される外型1の温度が設定値より高いときには流量調整弁74の開口を小さくして外型1の熱媒流路50への熱媒の流量を減少させるものであり、また温度センサー61によって計測される内型2の上昇温度が設定値より低いときには流量調整弁75の開口を大きくして内型2の熱媒流路51への熱媒の流量を増加させ、温度センサー61によって計測される内型2の上昇温度が設定値より高いときには流量調整弁75の開口を小さくして内型2の熱媒流路51への熱媒の流量を減少させるものである。
【0066】内型2の温度は架橋終了時点、すなわち、成形キャビティ3内の原料樹脂の架橋が終了して分子の三次元化がほぼ完了し、成形キャビティ3内から成形品を取り出すことができる時点で、外型1の温度とほぼ同じ温度になるように設定されるものである。このとき、外型1と内型の温度差は±10℃以内であれば良いが、好ましくは±5℃である。このように架橋が終了した後、開閉バルブ69が開くと共に開閉バルブ70が閉じて、送出路66と外型用送出路67とを連通させると共に送出路66と内型用送出路68との連通を閉じるように切り換えられ、熱媒供給装置54から供給される熱媒は外型1の熱媒流路50にのみ送られるようにして、外型1が原料樹脂液4を架橋させる温度を保持するよう加熱するようにしてある。また同時に、切り換えバルブ79は冷媒送出路77と内型用送出路68とを連通させるように切り換えられ、切り換えバルブ80は内型用返送路73と冷媒返送路78を連通させると共に内型用返送路73と返送路71との連通を閉じるように切り換えられ、冷媒供給装置58から供給された冷媒が冷媒送出路77から内型用送出路68を通して内型2の冷媒流路52(このときは空洞部64は冷媒流路52となる)に送られるようにして、内型2を外型1よりも低い温度になるよう冷却するようにしてある。
【0067】このように、内型2を冷却した後、外型1と内型2を分離し、脱型して成形キャビティ3で成形された成形品を取り出し、必要に応じて成形品を輪切りにすることによって環状のベルトを得ることができるものである。成形品を脱型したあと、上記で説明した次の成形が開始されるものである。ここで、上記のように、架橋開始時点での内型2の温度を外型1の温度より低い温度に設定することによって、亀裂による成形不良の発生を防止することができるので、架橋速度の速い原料樹脂液を使用することが可能になる。従って、短い架橋時間で成形をおこなって成形サイクルを短くすることができ、生産性高くベルトの成形を行なうことができるものである。
【0068】次に上記の成形の脱型から充填完了、冷却に至るまでの1サイクルの外型1と内型2の温度について、具体例を示す。
【0069】すなわち、原料樹脂液4として、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーに硬化剤として3,3′−ジシクロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタンと可塑剤30phrを配合した液温60℃のものを用い、また心線として芳香族ポリアミド繊維を用いた。そして温度制御装置76で上記のように熱媒供給装置54や冷媒供給装置58などを制御することによって、表2のように外型1と内型2の温度を調整しながら成形を行なった。このように成形して得られたベルトには亀裂不良は発生しなかった。
【0070】
【表2】


上記の実施の形態では、外型1は原料樹脂液4を架橋させる一定の温度に保持するようにしているが、次の具体例に示すように、脱型、離型剤塗布、心線巻き付けの工程では外型1を冷却するようにしてもよい。
【0071】すなわち、原料樹脂液4として、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーに硬化剤として3,3′−ジシクロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタンと可塑剤30phrを配合した液温60℃のものを用い、また心線としてポリエステル繊維を用いた。そして温度制御装置76で上記のように熱媒供給装置54や冷媒供給装置58などを制御することによって、表3のように外型1と内型2の温度を調整しながら成形を行なった。このように成形して得られたベルトには亀裂不良は発生しなかった。
【0072】
【表3】


また、図8に示す実施の形態では、内型2内に冷媒流路52を設け、冷媒流路52内に冷媒を通すことによって内型2の冷却を行なうようにしたが、成形品を脱型して内型2を外型1から分離した状態で冷却する場合には、内型2の表面に冷風を吹き付けて空冷することによって行なうことができる。図10はその一例を示すものであり、枠体43に取り付けた一対のエアーノズル83を具備して送風装置53が形成してあり、各エアーノズル83はエアー配管84によってエアーポンプ等に接続してある。エアー配管84には電磁弁等で形成される流量調整バルブ85が設けてあり、流量調整バルブ85は温度制御装置76に電気的に接続して、温度制御装置76によって制御されるようにしてある。上記の送風装置53によって内型冷却手段が形成されるものである。
【0073】そしてこのものでは、送風装置53のエアーノズル83から内型2の表面に空気を吹き付けることによって、内型2を空冷するようにしてあり、内型2に設けた温度センサー61によって計測される内型2の温度データに基づいて、温度制御装置10で流量調整バルブ85を調整し、内型2の温度を制御するようにしてある。すなわち、温度センサー61による内型2の計測温度が設定値よりも高いときには、流量調整バルブ85の開口を大きくしてエアーノズル83から内型2の表面に吹き付けられる空気量を多くし、内型2の温度を低くするように制御するものであり、逆に温度センサー61による内型2の計測温度が設定値よりも低いときには、流量調整バルブ85の開口を小さくしてエアーノズル83から内型2の表面に吹き付けられる空気量を少なくし、内型2の温度を上げるように制御するものである。
【0074】ここで、上記のように内型2を外型1から分離した状態で冷却する場合には、温度センサー61として内型2に埋め込むタイプのものの他に、図10に示すような、内型2の外部から非接触で内型2の表面の温度を測定する非接触型温度計62を使用することができるものである。この非接触型温度計62としては、温度を放射熱を利用して測定する放射温度計などを用いることができる。非接触型温度計62は進退移動されるようにしておき、内型2の温度を測定するときには非接触型温度計62を前進させて内型2に接近させ、温度測定が終了した後に非接触型温度計62を後退させて内型2から離すようにするのがよい。
【0075】図8の実施の形態では、熱媒として温水や油等を用いるようにしたが、水蒸気を熱媒として用いて外型1や内型2の加熱を行なうことができるものである。図11はその一例を示すものであり、図11において57はボイラー等で形成される水蒸気供給装置である。水蒸気供給装置57には送出路66と返送路71が接続してあり、ポンプ56を具備しない他は図8の場合と同様にして、送出路66は外型用送出路67及び内型用送出路68で外型1の熱媒流路50の上部と内型2の熱媒流路51の下部にそれぞれ接続してあり、返送路71は外型用返送路72及び内型用返送路73で外型1の熱媒流路50と内型2の熱媒流路51にそれぞれ接続してある。外型用送出路67と内型用送出路68にはそれぞれ電磁弁等で形成される流量調整弁86,87が設けてあり、流量調整弁86,87は温度制御装置76に電気的に接続して、温度制御装置76によって制御されるようにしてある。外型用送出路67と内型用送出路68にはさらに、流量調整弁86,87よりも熱媒流路50,51側において圧力ゲージ88,89が設けてある。この圧力ゲージ88,89は温度制御装置76に電気的に接続してあり、圧力ゲージ88,89で計測された外型用送出路67と内型用送出路68内の水蒸気の水蒸気圧のデータが温度制御装置76に入力されるようにしてある。外型1に設けた熱媒流路50と、この熱媒流路50に水蒸気を供給する水蒸気供給装置57とによって、外型加熱手段が形成されるものであり、また内型2に設けた熱媒流路51と、この熱媒流路51に水蒸気を供給する水蒸気供給装置57とによって、内型加熱手段が形成されるものである。また、図8に示したものと同様な内型冷却手段も具備されている。
【0076】水蒸気供給装置57で加熱された水蒸気は送出路66を通して送り出されると共に、送出路66から開いた開閉バルブ69を介して外型用送出路67を通って、外型1の熱媒流路50に供給され、この水蒸気によって外型1を加熱することができる。熱媒流路50内の水蒸気は外型用返送路72から返送路71を通して水蒸気供給装置57に返送される。ここで、蒸気は返送せずに大気放出してもよい。また開閉バルブ70が開くことによって、水蒸気は送出路66から開閉バルブ70を介して内型用送出路68を通って、内型2の熱媒流路51に供給され、この水蒸気によって内型2を加熱することができる。熱媒流路51内の水蒸気は内型用返送路73から返送路71を通して水蒸気供給装置57に返送される。このときも蒸気は返送せずに大気放出してもよい。また、外型用送出路67や内型用送出路68にそれぞれ圧力調整弁90,91を設けて、各々個別に蒸気圧力の設定が可能なようにして、温調精度を向上させるようにしてある。
【0077】そしてこのものでは、外型1や内型2の温度の調整は、温度センサー81,61によって計測された外型1や内型2の温度データに基づいて、温度制御装置76で流量調整弁86,87を制御し、外型1や内型2の熱媒流路50,51に供給される水蒸気の水蒸気量を調整することによって行なうことができる。すなわち、温度センサー81による外型1の計測温度が設定値よりも低いときには、流量調整弁86の開口を大きくして外型1の熱媒流路50に供給される水蒸気の水蒸気量を多くし、外型1の温度を高めるように制御するものであり、逆に温度センサー81による外型1の計測温度が設定値よりも高いときには、流量調整弁86の開口を小さくして外型1の熱媒流路50に供給される水蒸気の水蒸気量を少なくし、外型1の温度を低下させるように制御するものである。熱媒流路50に供給される水蒸気の水蒸気圧は圧力ゲージ88で計測されて温度制御装置76に入力される。また内型2の場合も同様にして、温度センサー61による内型2の計測温度が設定値よりも低いときには、流量調整弁87の開口を大きくして内型2の熱媒流路51に供給される水蒸気の水蒸気量を多くし、逆に温度センサー61による内型2の計測温度が設定値よりも高いときには、流量調整弁87の開口を小さくして内型2の熱媒流路51に供給される水蒸気の水蒸気量を少なくするものである。熱媒流路51に供給される水蒸気の水蒸気圧は圧力ゲージ89で計測されて温度制御装置76に入力される。
【0078】尚、上記の各実施の形態では、原料樹脂液4の架橋開始時には外型1の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に設定すると共に内型2の温度を外型1の温度よりも低い温度に設定し、架橋終了時点では内型2の温度が外型1の温度と略等しくなるように内型2を加熱するようにしたが、逆に、原料樹脂液4の架橋開始時には内型2の温度を原料樹脂液4を架橋させる温度に設定すると共に外型1の温度を内型2の温度よりも低い温度に設定し、架橋終了時点では外型1の温度が内型2の温度と略等しくなるように外型1を加熱するようにしてもよい。
【0079】
【発明の効果】上記のように本発明の請求項1に係るベルトの成形方法は、外型内に内型が挿入されることによって、外型の内周面と内型の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティに外型と内型の間の原料樹脂液を押し上げて充填し、しかる後に成形キャビティ内において原料樹脂液を硬化させて環状のベルトを成形するにあたって、外型と内型の間の気体を排出して成形キャビティ内を減圧すると共に外型内に内型を挿入して成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填し、この充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除するようにしたので、成形キャビティ内を減圧することによって、原料樹脂液に成形キャビティ内の気体が接触することなく成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填させることができ、原料樹脂液に成形キャビティ内の気体が混入されることを防ぐことができるものであり、しかも成形キャビティ内への原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除することによって、原料樹脂液中に含有されている揮発分から気泡が発生することを防ぐことができるものであり、気泡のないベルトを成形することができるものである。
【0080】また請求項2の発明は、上記のベルトの成形方法において、成形キャビティ内を真空度5mmHg以下に減圧するようにしたので、成形キャビティ内に残存する気体が原料樹脂液に作用することを確実に防ぐことができ、気泡のないベルトを成形することができるものである。
【0081】また請求項3の発明は、上記のベルトの成形方法において、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了を充填検出手段で検出し、充填検出手段による検出に基づいて減圧を解除するようにしたので、原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了の時点で確実に減圧を解除することができるものである。
【0082】また請求項4の発明は、上記のベルトの成形方法において、充填検出手段をリミットスイッチを用いて形成し、外型内に内型を挿入して成形キャビティ内への原料樹脂液の充填が完了する直前あるいは充填の完了する状態の外型と内型の間の相対的な位置関係をリミットスイッチで検知することによって、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了を検出するようにしたので、成形キャビティ内に原料樹脂液を充填させる際の外型と内型の相対的な動作をリミットスイッチで検知して、充填の完了直前あるいは充填の完了を確実に検出することができるものである。
【0083】また請求項5の発明は、上記のベルトの成形方法において、原料樹脂液の架橋開始時には外型と内型のいずれか一方の温度を原料樹脂液を架橋させる温度に設定すると共に外型と内型のいずれか他方の温度をそれよりも低い温度に設定し、架橋終了時点では外型と内型の温度が略等しくなるように架橋開始時に低い温度に設定した型を加熱するようにしたので、成形キャビティの容積が大きくなることに起因して成形品に亀裂が生じることを防止することができ、亀裂による成形不良の発生を低減することができるものである。
【0084】また請求項6の発明は、上記のベルトの成形方法において、原料樹脂液の架橋開始時には外型の温度を原料樹脂液を架橋させる温度に設定すると共に内型の温度を外型の温度よりも低い温度に設定し、架橋終了時点では内型の温度が外型の温度と略等しくなるように内型を加熱するようにしたので、原料樹脂液の架橋開始時に外型の温度よりも低い温度に設定されている内型の温度が原料樹脂液によって大きく奪われて内型の温度が大きく低下することがなくなり、内型の温度が大きく低下することによる内型の寸法収縮で外型の内周面と内型の外周面との間の成形キャビティの容積が大きくなることを防ぐことができるものであり、成形キャビティの容積が大きくなることに起因して成形品に亀裂が生じることを防止することができ、亀裂による成形不良の発生を低減することができるものである。またこのように亀裂による成形不良の発生を防止することができるので、架橋速度の速い原料樹脂液を使用することが可能になり、短い架橋時間で成形をおこなって成形サイクルを短くすることができ、生産性高くベルトの成形を行なうことができるものである。
【0085】また請求項7の発明は、上記のベルトの成形方法において、架橋終了の後に内型を冷却して内型の温度を外型の温度よりも低い温度に設定するようにしたので、次の成形のサイクルにすぐに移行することができ、成形の生産性を向上することができるものである。
【0086】また請求項8の発明は、上記のベルトの成形方法において、内型内に温水、油、水蒸気から選ばれる熱媒を通すことによって内型を加熱し、内型内に冷却水のような冷媒を通すことによって内型を冷却するようにしたので、熱媒や冷媒の作用で内型の加熱や冷却を効率良く行なうことができるものである。
【0087】また請求項9の発明は、上記のベルトの成形方法において、内型の表面を空冷することによって内型を冷却するようにしたので、内型の表面の直接冷却することができ、内型の冷却を効率良く行なうことができるものである。
【0088】本発明の請求項10に係るベルトの成形装置は、外型と内型とを具備して形成され、外型内に内型が挿入されることによって、外型の内周面と内型の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ内に外型と内型の間の原料樹脂液を押し上げて充填し、成形キャビティ内において原料樹脂液を硬化させて環状のベルトを成形する成形装置において、外型と内型の間の気体を排出して成形キャビティ内を減圧する排気手段と、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了を検出する充填検出手段と、充填検出手段による検出に基づいて排気手段による減圧を解除する制御手段とを具備するので、排気手段で成形キャビティ内を減圧することによって、原料樹脂液に成形キャビティ内の気体が接触することなく成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填させることができ、原料樹脂液に成形キャビティ内の気体が混入されることを防ぐことができると共に、制御手段で成形キャビティ内への原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除することによって、原料樹脂液中に含有されている揮発分から気泡が発生することを防ぐことができるものであり、気泡のないベルトを成形することができるものである。また充填検出手段や制御手段を用いて排気手段を制御することによって、成形キャビティへの原料樹脂液の充填が完了直前あるいは充填完了になると自動的に減圧を解除させることができ、成形の自動化が容易になるものである。
【0089】本発明の請求項11に係るベルトの成形装置は、外型と内型とを具備して形成され、外型内に内型が挿入されることによって、外型の内周面と内型の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ内に外型と内型の間の原料樹脂液を押し上げて充填し、成形キャビティ内において原料樹脂液を硬化させて環状のベルトを成形する成形装置において、外型と内型の間の気体を排出して成形キャビティ内を減圧する排気口を外型に設け、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了の状態にまで外型内に内型が挿入されたときに排気口と成形キャビティとの連通を閉じるフランジを内型に設けるようにしたので、排気口を通して成形キャビティ内を減圧することによって、原料樹脂液に成形キャビティ内の気体が接触することなく成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填させることができ、原料樹脂液に成形キャビティ内の気体が混入されることを防ぐことができると共に、排気口と成形キャビティとの連通を内型のフランジで閉じて、成形キャビティ内への原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除することによって、原料樹脂液中に含有されている水分から気泡が発生することを防ぐことができるものであり、気泡のないベルトを成形することができるものである。また成形キャビティ内の減圧の解除は外型内への内型の挿入の動作に伴って自動的に行なわれるものであり、上記のような充填検出手段や制御手段を具備するような必要がなくなって、装置の構成をシンプルなものとすることができるものである。
【0090】また請求項12の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型を加熱する外型加熱手段と、内型を加熱する内型加熱手段と、内型を冷却する内型冷却手段と、原料樹脂の架橋開始時には外型の温度が原料樹脂を架橋させる温度になるように外型加熱手段で外型を加熱すると共に内型の温度を外型の温度よりも低い温度になるように内型冷却手段で内型を冷却し、且つ架橋終了時点では内型の温度が外型の温度と略等しくなるように内型加熱手段で内型を加熱するよう、外型加熱手段と内型加熱手段と内型冷却手段をそれぞれ制御する温度制御手段とを具備するので、上記のように亀裂による成形不良の発生を低減して、生産性高くベルトの成形を行なうにあたって、外型の加熱や内型の加熱・冷却を温度制御手段で制御しながら成形を行なうことができ、成形の自動化が容易になるものである。
【0091】また請求項13の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型加熱手段を、外型内に設けられた熱媒を通す熱媒流路を具備して形成し、内型加熱手段を、内型内に設けられた熱媒を通す熱媒流路を具備して形成したので、熱媒の作用で外型や内型の加熱を効率良く行なうことができるものである。
【0092】また請求項14の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型冷却手段を、内型内に設けられた冷媒を通す冷媒流路を具備して形成したので、冷媒の作用で内型の冷却を効率良く行なうことができるものである。
【0093】また請求項15の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型冷却手段を、内型の表面に空気を吹き付けて空冷する送風装置で形成したので、内型の表面を直接冷却することができ、内型の冷却を効率良く行なうことができるものである。
【0094】また請求項16の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に熱媒を供給する熱媒供給装置とで外型加熱手段を形成すると共に、内型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に熱媒を供給する熱媒供給装置とで内型加熱手段を形成し、熱媒供給装置に設けた熱媒を加熱するヒータと熱媒を送り出すポンプを温度制御手段で制御するようにしたので、ヒータによる熱媒の温度調整とポンプによる熱媒流路への熱媒の送り出し量の調整で、外型や内型の温度制御を正確に行なうことができるものである。
【0095】また請求項17の発明は、上記のベルトの成形装置において、外型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に水蒸気を供給する水蒸気供給装置とで外型加熱手段を形成すると共に、内型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に水蒸気を供給する水蒸気供給装置とで内型加熱手段を形成し、水蒸気供給装置から外型の熱媒流路や内型の熱媒流路に供給される水蒸気量を温度制御手段で制御するようにしたので、熱媒流路に供給する水蒸気量の調整で、外型や内型の温度制御を正確に行なうことができるものである。
【0096】また請求項18の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型に設けられた冷媒流路と、この冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給装置とで内型冷却手段を形成し、温度センサーで測定された内型の温度に基づいて冷媒供給装置に設けた冷媒を冷却する冷却機と冷媒を送り出すポンプを温度制御手段で制御するようにしたので、冷却機による熱媒の温度調整とポンプによる冷媒流路への冷媒の送り出し量の調整で、内型の温度制御を正確に行なうことができるものである。
【0097】また請求項19の発明は、上記のベルトの成形装置において、内型の温度を測定する温度センサーとして非接触で温度を測定する非接触型温度計を用いるようにしたので、内型に温度センサーを組み込む必要なく、内型の外部から内型の温度を測定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の実施の形態における、成形の一工程での断面図である。
【図3】同上の実施の形態における、成形の一工程での断面図である。
【図4】同上の実施の形態における、制御系のブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態の他例を示す断面図である。
【図6】同上の実施の形態における、成形の一工程での断面図である。
【図7】同上の実施の形態における、成形の一工程での断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図9】同上の実施の形態におけるベルトの成形の各工程を示すものであり、(a),(b),(c)はそれぞれ断面図である。
【図10】同上の実施の形態の他例を示す概略図である。
【図11】同上の実施の形態のさらに他例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 外型
2 内型
3 成形キャビティ
4 原料樹脂液
6 リミットスイッチ
9 排気口
10 フランジ
50 熱媒流路
51 熱媒流路
52 冷媒流路
53 送風装置
54 熱媒供給装置
55 ヒータ
56 ポンプ
57 水蒸気供給装置
58 冷媒供給装置
59 冷却機
60 ポンプ
61 温度センサー
62 非接触型温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外型内に内型が挿入されることによって、外型の内周面と内型の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティに外型と内型の間の原料樹脂液を押し上げて充填し、しかる後に成形キャビティ内において原料樹脂液を硬化させて環状のベルトを成形するにあたって、外型と内型の間の気体を排出して成形キャビティ内を減圧すると共に外型内に内型を挿入して成形キャビティ内に原料樹脂液を押し上げて充填し、この充填完了直前あるいは充填完了と同時に減圧を解除することを特徴とするベルトの成形方法。
【請求項2】 成形キャビティ内を真空度5mmHg以下に減圧することを特徴とする請求項1に記載のベルトの成形方法。
【請求項3】 成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了を充填検出手段で検出し、充填検出手段による検出に基づいて減圧を解除するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトの成形方法。
【請求項4】 充填検出手段をリミットスイッチを用いて形成し、外型内に内型を挿入して成形キャビティ内への原料樹脂液の充填が完了する直前あるいは充填の完了する状態の外型と内型の間の相対的な位置関係をリミットスイッチで検知することによって、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了を検出するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のベルトの成形方法。
【請求項5】 原料樹脂液の架橋開始時には外型と内型のいずれか一方の温度を原料樹脂液を架橋させる温度に設定すると共に外型と内型のいずれか他方の温度をそれよりも低い温度に設定し、架橋終了時点では外型と内型の温度が略等しくなるように架橋開始時に低い温度に設定した型を加熱することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のベルトの成形方法。
【請求項6】 原料樹脂液の架橋開始時には外型の温度を原料樹脂液を架橋させる温度に設定すると共に内型の温度を外型の温度よりも低い温度に設定し、架橋終了時点では内型の温度が外型の温度と略等しくなるように内型を加熱することを特徴とする請求項5に記載のベルトの成形方法。
【請求項7】 架橋終了の後に内型を冷却して内型の温度を外型の温度よりも低い温度に設定することを特徴とする請求項6に記載のベルトの成形方法。
【請求項8】 内型内に温水、油、水蒸気から選ばれる熱媒を通すことによって内型を加熱し、内型内に冷却水のような冷媒を通すことによって内型を冷却するようにしたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のベルトの成形方法。
【請求項9】内型の表面を空冷することによって内型を冷却するようにしたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のベルトの成形方法。
【請求項10】 外型と内型とを具備して形成され、外型内に内型が挿入されることによって、外型の内周面と内型の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ内に外型と内型の間の原料樹脂液を押し上げて充填し、成形キャビティ内において原料樹脂液を硬化させて環状のベルトを成形する成形装置において、外型と内型の間の気体を排出して成形キャビティ内を減圧する排気手段と、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了を検出する充填検出手段と、充填検出手段による検出に基づいて排気手段による減圧を解除する制御手段とを具備して成ることを特徴とするベルトの成形装置。
【請求項11】 外型と内型とを具備して形成され、外型内に内型が挿入されることによって、外型の内周面と内型の外周面との間の空洞部として形成される成形キャビティ内に外型と内型の間の原料樹脂液を押し上げて充填し、成形キャビティ内において原料樹脂液を硬化させて環状のベルトを成形する成形装置において、外型と内型の間の気体を排出して成形キャビティ内を減圧する排気口を外型に設け、成形キャビティへの原料樹脂液の充填完了直前あるいは充填完了の状態にまで外型内に内型が挿入されたときに排気口と成形キャビティとの連通を閉じるフランジを内型に設けて成ることを特徴とするベルトの成形装置。
【請求項12】 外型を加熱する外型加熱手段と、内型を加熱する内型加熱手段と、内型を冷却する内型冷却手段と、原料樹脂の架橋開始時には外型の温度が原料樹脂を架橋させる温度になるように外型加熱手段で外型を加熱すると共に内型の温度を外型の温度よりも低い温度になるように内型冷却手段で内型を冷却し、且つ架橋終了時点では内型の温度が外型の温度と略等しくなるように内型加熱手段で内型を加熱するよう、外型加熱手段と内型加熱手段と内型冷却手段をそれぞれ制御する温度制御手段とを具備して成ることを特徴とする請求項10又は11に記載のベルトの成形装置。
【請求項13】 外型加熱手段を、外型内に設けられた熱媒を通す熱媒流路を具備して形成し、内型加熱手段を、内型内に設けられた熱媒を通す熱媒流路を具備して形成して成ることを特徴とする請求項12に記載のベルトの成形装置。
【請求項14】 内型冷却手段を、内型内に設けられた冷媒を通す冷媒流路を具備して形成して成ることを特徴とする請求項12に記載のベルトの成形装置。
【請求項15】 内型冷却手段を、内型の表面に空気を吹き付けて空冷する送風装置で形成して成ることを特徴とする請求項12に記載のベルトの成形装置。
【請求項16】 外型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に熱媒を供給する熱媒供給装置とで外型加熱手段を形成すると共に、内型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に熱媒を供給する熱媒供給装置とで内型加熱手段を形成し、熱媒供給装置に設けた熱媒を加熱するヒータと熱媒を送り出すポンプを温度制御手段で制御するようにして成ることを特徴とする請求項12又は13に記載のベルトの成形装置。
【請求項17】 外型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に水蒸気を供給する水蒸気供給装置とで外型加熱手段を形成すると共に、内型に設けられた熱媒流路と、この熱媒流路に水蒸気を供給する水蒸気供給装置とで内型加熱手段を形成し、水蒸気供給装置から外型の熱媒流路や内型の熱媒流路に供給される水蒸気量を温度制御手段で制御するようにして成ることを特徴とする請求項12又は13に記載のベルトの成形装置。
【請求項18】 内型に設けられた冷媒流路と、この冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給装置とで内型冷却手段を形成し、冷媒供給装置に設けた冷媒を冷却する冷却機と冷媒を送り出すポンプを温度センサーで測定された内型の温度に基づいて温度制御手段で制御するようにして成ることを特徴とする請求項12,13,14,16,17のいずれかに記載のベルトの成形装置。
【請求項19】 内型の温度を測定する温度センサーとして非接触で温度を測定する非接触型温度計を用いて成ることを特徴とする請求項12乃至18のいずれかに記載のベルト成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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