説明

ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離するための装置およびその方法

【課題】 既存のベルトコンベア設備を利用して、大幅に設備を変更することなく、ベルトコンベアにて搬送されている粒度分布を有する粉粒体、例えば、コークス製造における石炭を粒度によって効率よく分離する方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、粉粒体を搬送するベルト上に粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板が、前記粉粒体を搬送するベルトに対して所定の空隙を設けつつ、仕切板の下部が、搬送される粉粒体と接触できるように設けて、前記仕切板によって、ベルトにて搬送されている粒度分布を有する粉粒体を所定の空隙を掻い潜ることのできる粒度の小さい粉粒体と、仕切板によって堰き止められる粒度の大きい粉粒体とに分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離する装置およびその方法に関するものであり、より詳細には、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する石炭を粒度によって分離する装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークスを製造するための原料である石炭は、運搬船から荷揚げされ、一旦貯蔵ヤードで保管され、これを所定の大きさに粉砕し、コークス炉へとベルトコンベアにて搬送されている。粉砕された石炭は、コークス炉の炭化室に充填されて、コークス化される。得られるコークスの生産性および品質は、炭化室に充填される石炭の充填率の影響を受けるため、複数の銘柄の石炭を配合しその粉砕の程度を操作することで、石炭の充填率を制御することがなされている。
【0003】
原料用石炭の貯蔵ヤードの在庫量は、使用量と荷揚げ量によって大きく変動する。そこで、荷揚げから粉砕に至る工程で、1つの銘柄の石炭を、粒度の大きいものと小さいものとに分離して、異なる性状の原料として扱い、コークス生産用の原料炭の種類を増やすことにより、コークス生産用の原料炭の配合設計の選択肢を広げることができる。
粒度分布を有する粉粒体を機械的に分離する方法としては、例えば、非特許文献1に開示されているように、棒篩、回転篩、揺動篩、旋動篩、及び、振動篩などを挙げることができる。また、ベルトコンベアにて搬送される粉粒体を分離する技術として、例えば、特許文献1および特許文献2などを挙げることができる。
【非特許文献1】亀井(編者)、「化学機械の理論と計算(第2版)」、産業図書株式会社、昭和62年2月5日(第13刷)、p.469−p.493
【特許文献1】実公平6−20750号公報
【特許文献2】特開2003−25042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
棒篩、回転篩、揺動篩、旋動篩、及び、振動篩などを使用して、粒度分布を有する粉粒体を分級する方法が知られているが、既存のベルトコンベアにて搬送されている粉粒体を粒度に応じて分離するためには、ベルトコンベアを分断して新たな篩分け装置を設けるなどの大幅な設備変更が必要になるので好ましくない。また、篩を使用して分級する方法では、目詰まりが生じやすく、その都度、篩を清掃する必要があり分離効率が低下するという問題もある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、既存のベルトコンベア設備を利用して、大幅に設備を変更することなく、ベルトコンベアにて搬送されている粒度分布を有する粉粒体、例えば、コークス製造における石炭を粒度によって効率よく分離する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分離装置は、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離するための装置であって、粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板と前記仕切板を支持する架台とを有し、前記仕切板は、前記粉粒体を搬送するベルトに対して所定の空隙を設けつつ、上下動可能なように前記架台に支持されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の分離方法は、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離する方法であって、ベルトコンベアにて粒度分布を有する粉粒体を搬送し、ベルトコンベアにて搬送されている粉粒体と、ベルト上に所定の空隙を設けて設置され粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板とを接触させ、該仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体と、前記V字状の仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体とに分離することを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明は、粉粒体を搬送するベルト上に粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板が、前記粉粒体を搬送するベルトに対して所定の空隙を設けつつ、仕切板の下部が、搬送される粉粒体と接触できるように設けられているところに要旨がある。上記構成とすることによって、前記仕切板は、ベルトにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を所定の空隙を掻い潜ることのできる粒度の小さい粉粒体と、仕切板によって堰き止められる粒度の大きい粉粒体とに分離できる。前記仕切板は、粉粒体の搬送方向にV字状に開くように形成されているので、仕切板によって堰き止められる粒度の大きい粉粒体は、この仕切板に沿って移動し、ベルト上から排出される。また、前記仕切板は、上下動可能なように架台に支持されているので、前記仕切板を上下動することによって、ベルトと仕切板下部との間に形成される所定の空隙の高さを調整し、分離したい粉粒体の粒度を調整できる。
【0009】
本発明において、前記仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体を取出すためのシュートがベルトに沿って備えられていることも好ましい態様である。斯かるシュートを利用すれば、ベルトから排出される粉粒体を容易に集めることができ、分離後の回収収率が高くなる。
【0010】
さらに本発明において、前記仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体を掻き集めるための誘導手段が備えられていることも好ましい態様である。仕切板を掻い潜った粉粒体は、V字状の仕切板に堰き止められて、仕切板に沿ってベルトから排出される粒度の大きい粉粒体の動きに伴って、ベルト幅方向に広がる傾向があり、このままでは搬送中に粒度の小さい粉粒体がベルトからこぼれやすくなる。そのため、本発明の好ましい態様では、V字状の仕切板の後方に前記誘導手段を設けておくことによって、ベルト幅方向に広がった粉粒体をベルト中央部に掻き集めることができる。本発明は、コークス製造において、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する石炭を粒度によって分離するための装置および分離方法として好適である。1つの銘柄の石炭から、粒度が異なる2つの原料炭を得ることができ、コークスを生産するための原料炭の種類が増えて配合設計の弾力性が増すからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒度分布を有する粉粒体を分離する際に目詰まりなどの問題がなく、粒度によって効率よく分離できる。本発明の分離装置は、従来の設備の大幅な変更などを伴うことなく、既設のベルトコンベアのラインに設置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の分離装置は、ベルトコンベア(以下、単に「ベルト」と称する場合がある)にて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離するための装置であって、粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板と前記仕切板を支持する架台とを有し、前記仕切板は、前記粉粒体を搬送するベルトに対して所定の空隙を設けつつ、上下動可能なように前記架台に支持されていることを特徴とする。以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら説明するが、本発明は、図面に示された態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施態様における分離装置を例示する平面図であり、図2は側面図であり、図3は、粉粒体が搬送されてくる方から見た正面図である。図2では、V字状の仕切板1は、表面にねじ溝が設けられた支柱3を介して架台5に上下動可能なように支持されている。前記支柱3は、その下部が、ボルトとナットなどの固定手段により、V字状の仕切板に固定されている(図示せず)。また、前記支柱3は、その上部を螺合するナット7によって架台に支持され、前記ナット7を軸周りに回動させる手動調節によって、V字状の仕切板の上下動が可能になる。
【0014】
V字状の仕切板を上下動可能なように支持する機構として、シリンダ機構を採用することも好ましい態様である(図示せず)。架台にシリンダをシリンダロッドが下向きになるように取付け、シリンダロッドの先端とV字状の仕切板とを固定する。シリンダロッドを上下動させることにより、V字状の仕切板が上下動する。
【0015】
前記V字状の仕切板の幅は、粉粒体を搬送するベルトの幅よりもやや大きくすることが好ましい(図1参照)。粉粒体を搬送するベルトの幅方向全体で、仕切板を掻い潜ることのできる粒度の小さい粉粒体と仕切板によって堰き止められる粒度の大きい粉粒体とに分離し、堰き止められた粒度の大きい粉粒体を仕切板に沿ってベルトから排出するためである。V字状の仕切板の材質は、特に限定されるものではないが、金属製、木製、若しくは、プラスチック製などであればよい。
【0016】
架台5は、V字状の仕切板を支持するためにベルト上に設けられたフレーム部分と、ベルト下部をベルトと略平行に設けられたフレーム部分とを有する。前記フレーム部分が、必要に応じて、支柱、継手などを介して、V字状の仕切板、後述するシュートや誘導手段などを支持する。また、架台5を、ベルトコンベアとは分離独立して構成することによって、本発明の分離装置をベルトコンベアラインの任意の箇所に設置できるが、好ましくはベルトのヘッドよりできるだけ離れた方が、分離した粉粒体を回収する部分を容易に設置することができる。
【0017】
本発明の分離装置には、前記仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体を取出すためのシュートがベルトに沿って備えられていることが好ましい。図2では、底板と側板とからなる断面略U字状のシュート9が、架台5に固定されている。粉粒体が搬送されて来る側のシュートの側板の先端部10(ベルト側)は、ベルト上に設けられているV字状の仕切板と略平行になるように設けられているので(図1及び図2)、ベルト上から排出される粉粒体をシュートに取出すことが容易になる。
【0018】
本発明の分離装置には、前記仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体を掻き集めるための誘導手段11が備えられていることが好ましい。前記誘導手段は、V字状仕切板の後方に、粉粒体の進行方向にハの字状に狭くなるように継手13を介して架台5に支持されている。
【0019】
前記誘導手段11としては、ゴム製の板状部材を使用することが好適である。ゴム製の板状部材とすることによって、ベルトに当接させる際にベルト表面の摩耗劣化を抑制できる。
【0020】
本発明の粉粒体の分離方法は、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離する方法であって、ベルトコンベアにて粒度分布を有する粉粒体を搬送し、ベルトコンベアにて搬送されている粉粒体と、ベルト上に所定の空隙を設けて設置され粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板とを接触させ、該仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体と、該V字状の仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体とに分離することを特徴とする。
【0021】
すなわち、本発明の分離方法では、ベルトとV字状仕切板下部との間に設けられた空隙の大きさを利用して、該仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体と、該V字状の仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体とに分離する。前記所定の空隙の高さは、V字状の仕切板を上下動させることによって調整できる。また、所定の空隙の形状は、粉粒体を搬送するベルトの幅方向に一定になるような直線構造ではなく、ベルトにたわみを持たせて下側に凸になる曲線構造とすることが好ましい。下側に凸になる曲線構造とすることによって、ベルトの横から粉体がこぼれることなく輸送でき、一般に用いられるベルトのトラフ角に対応可能となるからである。
【0022】
ベルトコンベアにて粉粒体を搬送する速度(ベルト速度)は、分離する粉粒体の大きさや性状などに応じて適宜設定すれば良く、搬送する石炭の量で決定されるが、通常、1m/分〜200m/分であることが好ましい。また、粉粒体の処理量は、ベルトの幅に応じて適宜変更することができるが、例えば、50kg/分〜70ton/分であることが好ましい。
【0023】
本発明の粉粒体の分離方法は、コークスを製造する際にベルトコンベアにて搬送する石炭を、粒度分布に応じて分離するのに好適である。
【実施例】
【0024】
ベルト速度24m/分で搬送するベルト上に、石炭が搬送される方向にV字状に開く仕切板をベルトとV字状の仕切板下部との空隙を7mm(ベルトをたわませた底の部分と仕切板下部との空隙)になるように設置した。表1に示す石炭A〜Cをベルト上に1回に載せる量を3.5〜4.0kgとして、ほぼ均一な厚み(約10〜200mm)で、搬送しているベルト上に8回載せて合計で28〜32kgの石炭の分離を行った。すなわち、ベルトによって搬送された石炭A〜Cを、前記仕切板の下部と接触させて前記仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体と該V字状の仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体に分離した。また、分離した粉粒体のそれぞれの粒度分布を表1に併せて示した。
【0025】
【表1】

【0026】
表1より、平均粒度が10mmの分離前の石炭Aを処理したところ、仕切板によって堰き止められベルトから排出された分(堰止分)の平均粒度は17mmであり、仕切板を掻い潜った分(通過分)の平均粒度は5mmであった。また、分離に際しては、目詰まりなどのトラブルも発生しなかった。これらの結果より、本発明の分離処理により、粒度分布を有する粉粒体を、平均粒度の大きいものと平均粒度の小さいものとに効率よく分離できることが分かる。また、表1より、石炭B(平均粒度4mm)および石炭C(平均粒度7mm)についても同様の結果が得られていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離するための装置および方法として好適である。特に、コークス製造において原料として使用する粒度分布を有する石炭をベルトコンベアにて搬送する際に、粒度によって分離する装置および方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の分離装置を例示する平面図である。
【図2】本発明の分離装置を例示する側面図である。
【図3】本発明の分離装置を例示する正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1:V字状仕切板、3:支柱、5:架台、7:ナット、9:シュート、10:シュートの側板の先端部、11:誘導手段、13:継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離するための装置であって、粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板と前記仕切板を支持する架台とを有し、前記仕切板は、前記粉粒体を搬送するベルトに対して所定の空隙を設けつつ、上下動可能なように架台に支持されていることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体を取出すためのシュートがベルトに沿って備えられている請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体を掻き集めるための誘導手段が備えられている請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項4】
コークス製造において、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する石炭を粒度によって分離するために使用されるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項5】
ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する粉粒体を粒度によって分離する方法であって、ベルトコンベアにて粒度分布を有する粉粒体を搬送し、
ベルトコンベアにて搬送されている粉粒体と、ベルト上に所定の空隙を設けて設置され粉粒体の搬送方向にV字状に開く仕切板とを接触させ、該仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体と、該V字状の仕切板によってベルト上から排出される粒度の大きい粉粒体とに分離することを特徴とする粉粒体の分離方法。
【請求項6】
前記仕切板を掻い潜る粒度の小さい粉粒体を、ベルト上に設けた誘導手段によって掻き集める請求項5に記載の分離方法。
【請求項7】
コークス製造において、ベルトコンベアにて搬送される粒度分布を有する石炭を粒度によって分離する請求項5又は6に記載の分離方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−289265(P2006−289265A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113762(P2005−113762)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】