説明

ベルトコンベア用搬送ベルト、ベルトコンベア用ガイド、及びベルトコンベア装置

【課題】真空吸着型タイミングベルトを使用するベルトコンベアにおける搬送パワーの節減、及びタイミングベルトの磨耗の低減を図る。
【解決手段】吸着穴84を有するタイミングベルトは、被搬送物載置面が、両サイドのガイドのトッププレート81,87より僅かに低く設定され、かつ、支持プレート(図示せず)によって下から支持されている。タイミングベルトは、全ての吸着穴84の直下に、タイミングベルトの幅方向に貫通する透孔を有し、左右のガイドに取り付けられた吸引パイプa1は、左右のトッププレート81,87に形成された吸引穴23を介して、前記透孔内のエアーを吸引することにより、被搬送物を吸着する。このとき、タイミングベルトは、支持プレートから浮上して被搬送物に当接(吸着)するので、支持プレートとの間に強い摩擦を生じない。故に、搬送パワーの節減と磨耗抑制効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルトコンベア装置に関し、更に、かかるベルトコンベア装置に使用して好適なガイド及び搬送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベルトコンベアにより被搬送物を搬送するとともに、この搬送プロセス中に、被搬送物に対して様々な処理を施すことは、極めて普通に実施されている周知技術であるが、この場合、例えば、搬送中に被搬送物の所定位置に印刷処理を施す場合には、この被搬送物の印刷位置にずれを生じないようにする必要がある。そして、このためには、搬送速度を正確に維持するだけでなく、被搬送物がベルト上で位置ずれを起こさないように安定に保持する必要があり、これを実現する手段としては、例えば、図23に示されるような吸着穴付きタイミングベルトを用いたベルトコンベアが広く用いられている。
【0003】
この図について説明すると、この図の(イ)は、ベルトコンベアを、その搬送方向に垂直な面で切断した断面図、(ロ)は、ベルトコンベアの部分的切欠断面図である。図において、タイミングベルト1は、歯部3と、吸着穴4の形成された背板部2とで構成され、この背板部の上に被搬送物である塗工シートSが載置されている。吸引ダクト5は、その吸引スリット6およびタイミングベルトの吸着穴4を介して被搬送物(塗工シート)を真空吸着し、タイミングベルト1は、左右の真空漏れ防止用のサイドレール板8により挟まれながら、真空吸着された被搬送物を載せて、吸着スリット6の開口面7の上を摺接走行する。
【特許文献】実開平04−072918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に説明した従来技術では、タイミングベルトは、吸引ダクトの吸着スリット6の開口面7の上を摺接走行するように構成されているが、この場合、被搬送物を真空吸着させる力によって、タイミングベルト自身も吸着スリット6の開口面7に強く圧接させられることになる。このため、タイミングベルトの走行時に、タイミングベルトの歯と、これが接する吸着スリット6の開口面7との間に強い摩擦が生じ、タイミングベルトを走行させるためには、多大の駆動力が必要であった。
【0005】
また、タイミングベルトを走行させると、上記の摩擦により、吸着スリット6の開口面7に摺接するタイミングベルトの歯の磨耗が激しいので、タイミングベルトの厚みが減りやすく、このため、被搬送物を搬送する速度が低下したり、最悪の場合には、搬送不能に至ることもあった。
更に、従来の真空吸着型ベルトコンベアは、搬送動作中に、被搬送物の存否にかかわらず、常に、搬送ベルト上の全ての領域で真空吸引を行っている。
【0006】
従って、被搬送物が少なく、搬送ベルト上に被搬送物が載置されていない領域が多い場合には、被搬送物を真空吸着するために極めて大きな吸引パワーを要し、エネルギーの利用効率が極めて悪い。
本願発明は、このような点に鑑み、被搬送物を真空吸着して搬送する形式のベルトコンベアにおいて、搬送ベルトを走行させるための駆動パワーおよび真空吸着のための吸引パワーを大幅に節減するとともに、搬送ベルトの磨耗が極めて少ないベルトコンベアを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1にかかるベルトコンベア用搬送ベルトは、背板部と、搬送ベルトの全長に亘って該背板部に形成された多数の吸着穴と、この多数の吸着穴の全ての直下に形成され、搬送ベルトの幅方向に貫通する透孔と、該透孔の下部に位置するベース部と、
を備えるものである。ここで、搬送ベルトの全長に亘り、ベース部の下部に多数の歯部が形成されたタイミングベルトとしてもよい。
【0008】
請求項3にかかるベルトコンベア用ガイドは、搬送ベルトのサイドに位置する一対のトッププレートと、トッププレートの全長に亘り形成され、一対のトッププレートの両者の対向面上に開口する多数の吸引穴と、搬送ベルトを下から指示する支持プレートと、吸引パイプ取り付け部と、この吸引パイプ取り付け部から前記吸引穴に到る吸引路とを備え、前記支持プレートは通気孔を有するとともに、支持プレートの上側面から前記トッププレートの上側面までのサイズが、搬送ベルトの厚さよりも僅かに大きく設定されている。ここで、一方のトッププレートに形成された多数の吸引穴と、他方のトッププレートに形成された多数の吸引穴とは、互いに形成位置を1/2周期ずらすのが望ましい。
【0009】
請求項4にかかるベルトコンベア装置は、吸引装置と、搬送ベルトの搬送方向の沿って配設された多数個の吸引穴とを備え、吸引装置は、吸引穴を介して吸引することにより、被搬送物を搬送ベルトに吸着せしめ、かつ、この吸引動作は、前記多数個の吸引穴を所定個数づつに分割した吸引ブロック毎に、搬送ベルトの搬送動作に同期して順番に実行されるものである。
【発明の効果】
【0010】
搬送ベルトを走行させるための駆動パワーおよび真空吸着のための吸引パワーを大幅に節減できる。
搬送ベルトの磨耗が極めて少なく、搬送速度が正確に維持される。
【実施例1】
【0011】
本願発明によるベルトコンベアの1実施例を上から見た平面図を図1に示す。この図において、86はタイミングベルト、84は、タイミングベルトに形成された吸着穴、83は、ベルトコンベアの前端部側に設けられた駆動輪、85は、ベルトコンベアの後端部側に設けられた従動輪、81および87は、タイミングベルトの両サイドに設けられた各ガイドのトッププレートである。
【0012】
23は、トッププレート1および7の底面部に形成された吸引穴であり、図に示されるように、各トッププレートの幅方向の中央付近から内側へ向かって扇状に開いた形状をしている。a1は、各ガイドのベース(後述する)に取り付けられた吸引パイプであり、このパイプにより、上記の吸引穴を介してタイミングベルトの歯間空隙(後述する)を真空吸引する。
【0013】
タイミングベルト86を、この図のX−Y平面で切断したときの断面図を図2の(ロ)に示す。本実施例のタイミングベルトは、図のように、2つのタイミングベルト89および90を積み重ねて接着した構造を有し、上側のタイミングベルト89の背板部に吸着穴84が形成されている。
【0014】
次に、タイミングベルトの両サイドのガイドの構造について説明する。ガイドを斜め上方から見た斜視図を図3に示す。ガイドは、内部に真空チャンバーを有する左右のベース21および22と、これらの間に架けられた支持プレート20と、支持プレート20とトッププレート81および87との間に介挿されたスペーサ18および19を備えている。なお、この図の仮想線(2点鎖線)で示された83は駆動輪、86はタイミングベルトであり、このタイミングベルトは、支持プレート20の上側を走行する。
【0015】
前述の各ガイドのベースに取り付けられた吸引パイプは、ベース内の真空チャンバーに繋がり、また、この真空チャンバーは、垂直方向に形成された孔によって前述の吸引穴84へ繋がっている。参考までに、片方のガイドを垂直方向に分解して斜め下方から見た斜視図を図4に示す。また、この図のベース21を斜め上方から見たときの斜視図を図5に示す。
【0016】
次に、図1において、V−W平面でベルトコンベアを切断したときの断面図を図6に示す(なお、この図では、従動輪85については表示を省略してある)。この図6において、28および29が各ベース内に形成された真空チャンバーである。なお、このベルトコンベアは、基準サイズをL(例えば、30センチ)としたとき、被搬送物の搬送方向のサイズが、その整数倍のサイズ、即ち、L,2L,3L,…というサイズの被搬送物を取り扱うように設計されている。そして、前記の真空チャンバーは、その搬送方向の長さが前記Lの長さごとに仕切られた複数の真空チャンバーで構成され、各仕切られた真空チャンバー毎に1つの吸引パイプが取り付けられている。
【0017】
本実施例における吸着搬送動作は、次のように行われる。図3において、スペーサ18及び19の高さSG1は、図2(ロ)の下側のタイミングベルト90の高さH1よりも僅かに(およそ0.5mm程度)高く設定されている。従って、前述の吸引パイプによる吸引を開始すると、トッププレート81および87に形成された吸引穴23を介して、上側のタイミングベルト89の隣接する歯と歯の間の空隙11(本願では、これを歯間空隙と定義する)のエアーが吸引され、これにより、タイミングベルトの吸着穴84を介して被搬送物が吸着される。
【0018】
なお、本実施例のベルトコンベアは、タイミングベルト86の幅より大きい被搬送物を搬送対象としている。そして、吸引が行われない状態では、タイミングベルトの背板部の上側面の高さは、図3に示されるように、トッププレート81および87の上側面の高さよりも僅かに(およそ0.5mm程度)低く設定されている。従って、この状態では、タイミングベルトを走行させても、トッププレート81および87の間に架けられた被搬送物は搬送されない。
【0019】
そして、前記歯間空隙の吸引を開始すると、吸着穴84を介して、タイミングベルト89の背板部の上側面と被搬送物の底面との間の間隙部分のエアーが吸引されることにより、タイミングベルト89が上昇して被搬送物と密着し、これにより、被搬送物の搬送が可能となる。なお、このタイミングベルトの上昇がスムーズに起きるようにするために、支持プレート20の数箇所に通気孔が設けられている(図3における通気孔48参照)。
【0020】
このように、本実施例では、被搬送物を真空吸着して搬送するときに、タイミングベルトは支持プレートから浮き上がって走行するので、走行時にタイミングベルトにかかる摩擦力は極めて小さくなる。従って、被搬送物を搬送する際に駆動輪に供給するパワーを、従来よりも大幅に節減できる。また、タイミングベルトの磨耗も極めて少なくなる。
【0021】
次に、吸引穴23による歯間空隙のエアーの吸引動作を図2により説明する。この図の(イ)は、トッププレート81を、同図(ロ)のタイミングベルトと同じ縮尺で表したものであり、これらの図から明らかなように、トッププレートの吸引穴23の搬送方向の長さは、タイミングベルトの2つの歯間空隙を同時にカバーしうる大きさに設定されている。また、トッププレート81と87に形成されている吸引穴は、図1に示されるように、互いに位置が1/2周期ずれているので、タイミングベルトの歯間空隙は、タイミングベルト走行時においても、常に、少なくとも一方のトッププレートの吸引穴により吸引される。即ち、常に、継続的に吸引動作が行われる。
【0022】
なお、ベース21および22として、前述のような真空チャンバーを有するものに代わり、図7の斜視図に示すように、ほぼLの長さの溝状部分30,31,32、…が形成されたベースを用いても良い。この図において、a1,b1,…は、L区間毎に取り付けられた吸引パイプである。参考までに、このようなベースを用いたガイドを、図1におけるV−W平面に相当する平面で切断したときの断面図を図8に示す。
【0023】
また、タイミングベルトについても、図2の(ロ)に示されるものに代えて、図9に示す構造のタイミングベルトを採用してもよい。このタイミングベルトは、表裏両面に歯を供えたベルトの一方の側に、吸着穴84を有する背板部13を接着した構造を持つ。そして、この図における寸法H3およびH4が、それぞれ、図2の(ロ)におけるH1およびH2に等しい値となるように設定することにより、所期の真空吸着動作を実行可能となる。
【0024】
次に、吸引のためのエネルギー消費量を大幅に節減できるように構成した本実施例の吸引制御システムについて説明する。
まず、L,2L,3L,4Lの4つのサイズの被搬送物を取り扱えるように設定したベルトコンベアの場合について説明する。
この場合の吸引制御システムの全体的構成を図10に示す。この図において、21は、ベルトコンベアの一方のガイドのベースであり、そのL区間毎に1つの吸引パイプa1,b1,c1,…が取り付けられている(なお、もう一方のガイドのベースにも、同様に吸引パイプa1,b1,c1,…が取り付けられているが、この点の構成は省略する)。
【0025】
この図では、ベース21の各L区間に取り付けられた吸引パイプを、4L区間周期で同じ小文字のアルファベットを用いて表し、また、ベース21の各L区間を、それぞれに取り付けられている吸引パイプのアルファベットの大文字を用いて表している。
一方、50は真空ポンプ、53,54,555は開閉弁、R1〜R3はロータリー型吸引路切替装置(以下、「切替装置」と略記する)であり、真空ポンプ50は、これらの装置および開閉弁、並びに図示のように配設された吸引路を介して吸引を行う。
【0026】
また、51は設定装置であり、L〜4Lのうちのいずれのサイズの被搬送物を搬送するモードであるかに応じて、開閉弁及び切替装置を設定し、所期の搬送モードの運行を実現する。
最初に、Lサイズの被搬送物を搬送する場合の吸引モードについて説明する。このモードにおいては、設定装置51により全ての開閉弁を閉じ、切替装置R1のみを介して吸引を行う。
【0027】
切替装置R1の構造を図11により説明する。この図の(イ)は、切替装置の正面図、(ロ)は右側面図である。この右側面図のQ−S平面で切断した断面図を(ハ)に、また、正面図のT−R平面で切断した断面図を(ニ)に示す。切替装置の本体ボックス60の内部には、斜視図(ホ)に示されるディスク76が回転可能に取り付けられている。このディスクは、一方の側面のみに開口78を有するとともに、この開口からディスク周縁の円筒面へ向けて90度の角度で扇型に開口する開口74を備えている。
【0028】
なお、このディスクの75は、回転時のバランスを保つために設けた肉盗み部分である。また、上記断面図(ニ)において、71はモーター、72は、回転速度減速機構、79はディスク76の回転軸である。ここで、図10における真空ポンプ52からの吸引パイプ52は、図11における切替装置の吸引パイプ59に接続され、また、図10における吸引パイプa01,b01,c01,d01は、それぞれ、図11における切替装置の吸引パイプ55,56,57,58に接続される。
【0029】
そして、断面図(ハ)において、ベルトコンベアの搬送ベルトが4L区間走行する間に、ディスク76は時計方向に1回転するように回転速度が設定されている。これにより、真空ポンプの吸引パイプ52は、断面図(ハ)から明らかなように、ディスク76の開口78および開口74を経て、L区間毎に順番に吸引パイプa01,b01,c01,d01を介して吸引動作を実行する。
【0030】
そして、図10に示されるように、吸引パイプa01は、吸引パイプa0を介して4L区間毎の吸引パイプa1,a2,a3,…に接続され、吸引パイプb01,c01,及びd01についても、それぞれ同様に4L区間毎の吸引パイプに接続されている。そして、被搬送物の搬送開始時には、ディスク76の開口74は、吸引パイプa01,b01,c01,d01に対して図12の(イ)に示す角度位置関係となるように、設定装置51によって設定される。
【0031】
以上のように設定して、搬送の開始と同時にディスク76の回転を開始すると、搬送の進行に伴い、吸引パイプa01,b01,c01,d01の各吸引力は、図12の(ニ)のように変化する。この図12(ニ)において、横軸GLは被搬送物の搬送距離を表し、縦軸PWは、各吸引パイプの吸引力を表している。この図から明らかなように、常に、搬送ベルト上の被搬送物が存在する区間に取り付けられた吸引パイプのみ吸引力が最大になるように、また、その外の吸引パイプの吸引力はほぼ0となるように、切替装置により吸引パイプが切替選択される。
【0032】
そして、Lサイズの被搬送物を搬送するモードにおける定常的な搬送動作状態では、ベルトコンベア上には、4L区間につき1個の被搬送物が存在し、隣接する被搬送物相互間には3L区間の空白領域を生じるが、上記のように、4L区間毎の全ての吸引パイプの吸引力が最大になるように制御され、かつ、その外の被搬送物が存在しない区間の吸引パイプは吸引しないように制御しているので、真空ポンプ50の吸引パワーの利用効率がきわめて高く、従来のベルトコンベアに比し、省エネ効果が非常に大きい。
【0033】
次に、2Lサイズの被搬送物を搬送する場合の吸引モードについて説明する。この場合、設定装置51により、開閉弁555を開くとともに、開閉弁53および54を閉じ、切替装置R1およびR2を介して吸引を行う。そして、被搬送物の搬送開始時には、切替装置R1内のディスクの扇型開口の角度位置は、図12の(イ)に示す角度位置関係となるように、また、切替装置R2内のディスクの扇型開口の角度位置は、吸引パイプa02,b02,c02,d02に対して図12の(ロ)に示す角度位置になるように、それぞれ設定装置51によって設定する。
【0034】
以上のように設定して、搬送動作の開始と同時にこれらの切替装置内のディスクを回転作動させると、切替装置R2の吸引パイプa02,b02,c02,d02の各吸引力が変化する様子は、図12の(ニ)の波形をL区間だけ遅らせた同図の(ホ)によって表される。ここで、図10において、吸引パイプa02,b02,c02,d02も、それぞれ、吸引パイプa0,b0,c0,d0に接続されているので、吸引パイプa0,b0,c0,d0の各吸引力は、図12の(ニ)と(ホ)を合成して得られる図13の(イ)〜(ニ)によって表される。
【0035】
これらの図から明らかなように、搬送ベルト上で被搬送物の存在するほぼ2L区間だけが吸引パイプによって吸引され、被搬送物の存在しない区間は吸引動作が行われないので、高い吸引効率が得られる。
また、3Lサイズの被搬送物を搬送する場合の吸引モードでは、図10における開閉弁54も開放状態に設定して、R1〜R3の3台の切替装置を作動可能とし、被搬送物の搬送開始時の切替装置R3内のディスクの扇型開口の角度位置を、図11の(ハ)のように設定して始動する。
【0036】
この場合の吸引パイプa03,b03,c03,d03の各吸引力が変化する様子は、図12の(ホ)の波形をL区間だけ遅らせた図(この図は省略する)によって表される。そして、図10において、吸引パイプa03,b03,c03,d03も、それぞれ、吸引パイプa0,b0,c0,d0に接続されているので、吸引パイプa0,b0,c0,d0の各吸引力は、上記のa03,b03,c03,d03の各吸引力と、図12の(ニ)および(ホ)によって示される吸引力を合成して得られる図13の(ホ)〜(チ)によって示される。
【0037】
この図に示されるように、被搬送物の存在するほぼ3L区間のみが吸引され、被搬送物の存在しないL区間は吸引されないので、吸引パワーが節減される。
最後に、4Lサイズの被搬送物を搬送する場合の吸引モードについて説明する。この場合には、図10における全ての開閉弁を開放状態に設定するとともに、各切替装置を全て回転停止状態に維持し、かつ、各切替装置内のディスクの扇型開口の角度位置を、切替装置R1においては吸引パイプa01のみが吸引され、切替装置R2においては吸引パイプb02のみが吸引され、切替装置R3においては吸引パイプc03のみが吸引されるように設定する。このように設定して真空ポンプ50を作動させることにより、吸引パイプa0,b0,c0,d0が全て吸引動作を実行し、ガイドの全ての区間で吸引が行われる。
【0038】
以上、サイズが1L〜4Lの被搬送物を取り扱うように設定されたベルトコンベアにおいて使用する吸引制御システムについて説明したが、同様の考えに基づき、外のサイズ、例えば、1L〜6Lの被搬送物を取り扱うように設定されたベルトコンベアに使用する吸引制御システムを構築することができる。具体的には、次のように構成すればよい。
【0039】
即ち、ベルトコンベアのガイドに取り付けられた吸引パイプの中から、6L区間毎の吸引パイプを全て1つの吸引パイプに接続して、吸引パイプa0,b0,c0,d0,e0,f0を構成する。一方、5台の切替装置を設け、各切替装置には、ディスク周辺に6本の吸引パイプを等角度に配設するとともに、切替装置のディスクに形成された扇型開口の開角度を60度に設定する。
【0040】
また、5台の切替装置のうちの4台の切替装置には開閉弁を接続するとともに、もう1つの開閉弁を真空ポンプと吸引パイプf0との間に配設する。そして、5台の切替装置にそれぞれ配設された6本の吸引パイプと前述の吸引パイプa0,b0,c0,d0,e0,f0を、図10における接続配置に準じて接続するとともに、被搬送物が6L区間搬送される間に、切替装置のディスクが1回転するように回転速度を設定する。
【0041】
なお、今までに説明した実施例では、搬送ベルトとして、吸着穴が形成された背板部を有するタイミングベルトを使用しているが、図14の断面図に示されるように、背板部を省略した構造のタイミングベルトを使用してもよい。この場合、このベルトの厚さ(H7+H8)が、図3におけるSG1+SG2よりも僅かに小さくなるように設定するとともに、H7をSG1よりも僅かに小さく設定することにより、トッププレートに形成された吸引穴によって、この搬送ベルトの上側に形成された歯の歯間空隙を吸引して真空吸着を行うことが可能になる。
【0042】
また、タイミング機能を果たすための歯を省いた図15の断面図に示すような搬送ベルトを使用して、真空吸着型ベルトコンベアを構成することもできる。この場合には、ベルトコンベアの前端部および後端部に設ける駆動輪及び従動輪として、いずれも歯を有しないプーリーを使用する。そして、ベルトの厚さ(H9+H10)が、図3におけるSG1+SG2よりも僅かに小さくなるように設定するとともに、H9がSG1よりも僅かに小さくなるように設定して、所期の真空吸着動作を実効可能とする。
【0043】
更に、このほかの例としては、例えば、図16に示される搬送ベルトを使用して真空吸着型の搬送を行うこともできる。この図は、搬送ベルトを拡大して示した斜視図であり、図における→Mがベルトの走行方向を表す。この搬送ベルトは、表面に多数の凹凸を形成することにより、被搬送物が搬送ベルト上で位置ずれを起こしにくいようにしている。
【0044】
そして、この搬送ベルトは、図に示されるように、表面に形成された凹凸によって、ベルトの幅方向に貫通する溝が形成される構造となっているので、この溝部分のエアーを、ベルトの両サイドから吸引することにより、被搬送物をベルトに吸着させて搬送することができる。そして、これを実現するためには、図3に示されるベルトコンベアにおいて、スペーサ18(および19)の高さSG1を、この搬送ベルトのベース部分の高さH5よりも僅かに高く設定するとともに、SG1+SG2が、搬送ベルトの厚さ(H5+H6)よりも僅かに高くなるように設定する。また、ベルトコンベアの駆動輪及び従動輪として、いずれも歯を有しないプーリーを使用する。
【実施例2】
【0045】
本実施例は、図17に示す断面構造を備えたベルトにより搬送を行うようにした真空吸着型ベルトコンベアである。
このベルトコンベアにおいて、搬送ベルトを駆動輪および従動輪へ巻装した状態を図18の模式図に示す。この図において、94および95は、それぞれ、ベルトコンベアの後端部側および前端部側に設けられたプーリー(従動輪)、96は歯付きプーリー(駆動輪)、97は、歯付きプーリー96に対する搬送ベルトの巻きつけ角度を大きくするために設けられたプーリーである。
【0046】
本実施例のベルトコンベアは、ガイドとして、図3に示されるガイドに準じた構造を使用する。そして、この場合、搬送ベルト93の厚さ(H11+H12)が、図3におけるSG1+SG2よりも僅かに小さくなるように設定するとともに、H11がSG1よりも僅かに小さくなるように設定することにより、所期の真空吸着動作を実行可能とする。
なお、本実施例では、歯付きプーリー96によって駆動するので、タイミング機能も実現される。
【実施例3】
【0047】
本実施例は、図19に示す従来から使用されている真空吸着型のタイミングベルトを用いたベルトコンベアである。本実施例において、タイミングベルトを、ベルトコンベアの駆動輪および従動輪へ巻装した状態を図20の模式図に示す。
【0048】
この図において、44および45は、それぞれ、ベルトコンベアの前端部側および後端部側に設けられたプーリー(従動輪)であり、これらのプーリーの外周には、図に示されるようにシートベルト40が巻装されている。そして、タイミングベルト35は、このシートベルトの外側を経て、歯付きプーリー(駆動輪)46に巻装されている。
【0049】
本実施例では、以上のような巻装形態を採ることにより、タイミングベルトの両サイドから歯間空隙のエアーを吸引した際に、タイミングベルトの下方から歯間空隙へエアーが供給されるのをシートベルト40によって遮断し、被搬送物が確実に吸着されるようにしている。
【0050】
次に、本実施例におけるガイドについて説明する。まず、本実施例のベルトコンベアを、図1のV−W平面に対応する平面で切断したときの断面図を図21に示す(なお、この図では、駆動輪46等に関する構造は省略してある)。左右のガイドは、真空チャンバーを備えたベース21および22と、両ベース間に架けられた支持プレート20と、底面部に吸引穴が形成されたトッププレート36および37と、これらのトッププレートと支持プレートとの間に介挿された気密保持用の弾性を有する極薄板38および41並びにシートベルトガイド用のプレート39および42から構成されている。
【0051】
この図に示されるように、シートベルト40は、シートベルトガイド用プレート39および42によって左右を規制されながら、左右の端部を支持プレート20と極薄板38および41によって上下に挟まれて走行する。また、タイミングベルト35は、左右の端部を極薄板38および41の上側に乗せた状態で走行する。参考までに、トッププレート36の前端部付近の拡大斜視図を図22に示す。
【0052】
本実施例において、吸引パイプa1により吸引動作を開始すると、タイミングベルト35が上昇して被搬送物に密着するとともに、シートベルト40も上昇してタイミングベルト35の歯に密着する。なお、このシートベルトの上昇を起き易くするために、支持プレート20の数箇所に通気孔が設けられている(図22における通気孔48参照)。
【0053】
そして、図22に示されるように、トッププレート36(および37)の底面の内側付近は、わずかに上へ向けたテーパ面となっており、更に、極薄板38および41が弾性を有するため、前述のシートベルトの上昇時には、極薄板38および41の端部付近が、シートベルトによって上方へ押されて、図22における→Pで示される様に湾曲し、タイミングベルト35と接するようになる。
【00】
これにより、支持プレート20とシートベルト40との間に生ずる空隙部分の空気が吸引されるのを、確実に防止している。
なお、以上に説明した実施例2および3のベルトコンベアに使用する吸引制御システムとしては、実施例1において説明した吸引制御システムをそのまま使用することができる。
【0046】
以上、本発明について、3つの実施例と、いくつかの構成変更例について説明したが、勿論、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。そして、当業者であれば、以上に述べた構造的変更の他に、この発明の技術思想の範囲で、更に細部にさまざまな変更を施した実施例を構成することも可能であるが、そのような実施例が本発明の範囲から除外されるものではないことも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるベルトコンベア装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】同実施例における吸引穴およびタイミングベルトの断面を示す図である。
【図3】同実施例におけるガイドの拡大斜視図である。
【図4】同実施例におけるガイドの分解斜視図である。
【図5】同実施例におけるベースの斜視図である。
【図6】同実施例の断面図である。
【図7】同実施例におけるベースの他の構成例を示す図である。
【図8】同他の構成例を用いたガイドの断面図である。
【図9】同実施例におけるタイミングベルトの他の構成例を示す図である。
【図10】同実施例における吸引制御システムの全体図である。
【図11】同吸引制御システムに用いるロータリー型吸引路切替装置を示す図である。
【図12】同ロータリー型吸引路切替装置の動作を説明する図である。
【図13】本実施例における吸引パイプの吸引力を示す図である。
【図14】同実施例におけるタイミングベルトのもう1つの構成例を示す図である。
【図15】同実施例におけるタイミングベルトの更に他の構成例を示す図である。
【図16】同実施例におけるタイミングベルトの更に別の構成例を示す図である。
【図17】本発明によるベルトコンベア装置の第2の実施例において用いるタイミングベルトの断面図である。
【図18】同実施例におけるタイミングベルトの巻装状態を示す図である。
【図19】本発明によるベルトコンベア装置の第3の実施例において用いるタイミングベルトの断面図である。
【図20】同実施例におけるタイミングベルトの巻装状態を示す図である。
【図21】同実施例のベルトコンベアの断面図である。
【図22】同実施例におけるガイドの拡大斜視図である。
【図23】従来の真空吸着型ベルトコンベアを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
11 ・・・ 歯間空隙
18,19、73 ・・・ スペーサ
20 ・・・ 支持プレート
21、22 ・・・ ベース
23,47 ・・・ 吸引穴
24,25,27 ・・・ 孔
28,29 ・・・ 真空チャンバー
36、81、87 ・・・ トッププレート
40 ・・・ シートベルト
44,45,94,95,97 ・・・ プーリー
46、96 ・・・ 歯付きプーリー
48 ・・・ 通気孔
50 ・・・ 真空ポンプ
51 ・・・ 設定装置
53,54,555 ・・・ 開閉弁
71 ・・・ モーター
72 ・・・ 減速機構
74 ・・・ 扇型開口
76 ・・・ ディスク
78 ・・・ 開口
83 ・・・ 駆動輪
84 ・・・ 吸着穴
85 ・・・ 従動輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベア用搬送ベルトであって、
(1)背板部と、
(2)搬送ベルトの全長に亘って該背板部に形成された多数の吸着穴と、
(3)該多数の吸着穴の全ての直下に形成され、搬送ベルトの幅方向に貫通する透孔と、
(4)該透孔の下部に位置するベース部と、
を備えていることを特徴とするベルトコンベア用搬送ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ベルトにおいて、搬送ベルトの全長に亘り、前記ベース部の下部に多数の歯部が形成されていることを特徴とする搬送ベルト。
【請求項3】
ベルトコンベア用ガイドであって、
(1)搬送ベルトのサイドに位置する一対のトッププレートと、
(2)該一対のトッププレートのそれぞれの全長に亘り形成され、該一対のトッププレートの両者の対向面上に開口する多数の吸引穴と、
(3)搬送ベルトを下から指示する支持プレートと、
(4)吸引パイプ取り付け部と、
(5)該吸引パイプ取り付け部から前記吸引穴に到る吸引路と、
を備え、
更に、
前記支持プレートは通気孔を有するとともに、該支持プレートの上側面から前記トッププレートの上側面までのサイズが、搬送ベルトの厚さよりも僅かに大きく設定されていることを特徴とすることをベルトコンベア用ガイド。
【請求項4】
請求項3に記載のベルトコンベア用ガイドにおいて、前記一対のトッププレートのうちの一方のトッププレートに形成された多数の吸引穴と、他方のトッププレートに形成された多数の吸引穴は、互いに形成位置が1/2周期ずれていることを特徴とすることをベルトコンベア用ガイド。
【請求項5】
被搬送物を真空吸着して搬送するベルトコンベア装置であって、
(1)吸引装置と、
(2)搬送ベルトの搬送方向の沿って配設された多数個の吸引穴と、
を備え、
更に、
前記吸引装置は、前記吸引穴を介して真空吸引することにより、被搬送物を搬送ベルトに吸着せしめるとともに、前記真空吸引は、前記多数個の吸引穴を所定個数づつに分割した吸引ブロック毎に、搬送ベルトの搬送動作に同期して順番に実行されることを特徴とするベルトコンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−19094(P2008−19094A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218957(P2006−218957)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506273526)
【Fターム(参考)】