説明

ベルト切断方法および固定治具

【課題】円筒状のベルトを所定長さに切断する際にベルトを内部から簡単に固定できるようにする。
【解決手段】筒状のベルトを製品長さに切断する方法であって、前記ベルト内に挿入するシャフトに膨張チャックとするゴム管を外嵌した固定治具を用い、該固定治具のゴム管の外径を前記ベルトの内径以下とした状態で前記ベルトに挿通し、挿通後に前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させて前記ベルトの内周面に圧接して固定し、その後、前記固定治具で内部側より固定した前記ベルトの所要位置を外方から切断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルト切断方法および固定治具に関し、特に、画像形成装置において定着ベルト等に用いられる薄肉金属層を備えた円筒状のベルトを製品長さに切断する方法として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の定着部において、紙等にトナー画像を加熱定着するために定着ベルト(小径サイズでは定着ローラと称する場合もある)が用いられている。従来、定着ベルトはポリイミド樹脂等の樹脂から成形されており、該樹脂成形品からなるベルトを定着ベルトの長さに切断する方法として、特開2007−326164号公報(特許文献1)で図5(A)(B)に示すベルト切断方法が提案されている。
【0003】
前記特許文献1のベルト切断方法は、ベルト100の内径より大きい外径を有する保持体101を設け、該保持体101の外周面に所要の長さ間隔をあけて環状逃げ溝101a、101bを開口している。該保持体101をベルト100に嵌入した状態で、環状逃げ溝101a、101bに対向配置された刃物110でベルト100を環状逃げ溝101a、101bに沿って切断し、その後、保持体101からベルト100を取り出している。かつ、前記保持体101の内部に設けた配管103を穴101hに通して内部から該保持体101とベルト100との間に流体を噴出させ、流体圧力によってベルト100の内径を拡張して、ベルト100を保持体101に装着および取り出せるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−326164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のベルト100は、ポリイミド樹脂のベルト上にシリコーンゴムおよびPFAを積層した樹脂製であるため、該ベルト100内に保持体101を嵌入する際および保持体101から引き出す際、ベルト内面に流体圧を負荷して、ベルト100の内径を拡張させることが可能となる。
しかしながら、ベルトとするスリーブが樹脂製ではなく、アルミニウムやSUS等からなる薄肉金属基層に樹脂層を積層したベルトまたは薄肉金属層のみからなるベルトの場合、ベルトの内面に流体圧を負荷しても、樹脂製ベルトのように容易に拡張せず、ベルト内径より大きな外径の保持体101を嵌入することはできない。また、ベルトと保持体の間に圧力流体を供給する装置が必要となり、切断装置が複雑かつ大型となる問題もある。
【0006】
さらに、ベルトが樹脂製である場合、切断手段として刃物(カッター刃)を用いて押し切りをしている場合が多い。しかしながら、ベルトが薄肉金属基層を備える場合、カッター刃による押し切りでの切断は困難となる。かつ、カッター刃により切断しても、切断端面に歪みや変形が発生しやすく、かつ、カッター刃が摩耗しやすい問題がある。
【0007】
本発明は、ベルトが薄肉金属基層を備える場合に、該ベルトを定着ベルト等の製品寸法に容易に切断できる方法を提供することを課題としている。また、該ベルト等のスリーブを内部から固定できる簡単な構造の固定治具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、
筒状のベルトを製品長さに切断する方法であって、
前記ベルト内に挿入するシャフトに膨張チャックとするゴム管を外嵌した固定治具を用い、該固定治具のゴム管の外径を前記ベルトの内径以下とした状態で前記ベルトに挿通し、挿通後に前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させて前記ベルトの内周面に圧接して固定し、
その後、前記固定治具で内部側より固定した前記ベルトの所要位置を外方から切断することを特徴とするベルト切断方法を提供している。
【0009】
前記のように、本発明では、ベルト内に挿通する固定治具として、圧縮すると膨張して外方へ突出するゴム管をシャフトに外嵌した固定治具を用い、該固定治具をベルト内に挿通する段階ではゴム管を圧縮せずにゴム管の外径をベルトの内径以下として、ベルト内にスムーズに挿入できるようにし、挿入後にゴム管を圧縮して膨張させ、この膨張させたゴム管をベルト内周面に圧接してベルトを内面側から固定している。
【0010】
前記固定治具は、例えば、小径の中心軸部の一端に段状に突出させた大径部を連続して設けている第1シャフトと、該第1シャフトの中心軸部に摺動自在に外嵌する第2シャフトと、該第2シャフトの前端と前記第1シャフトの大径部の後端との間に膨張チャックとしてゴム管を介在させ、前記第1シャフトの大径部の外径、第2シャフトの外径およびゴム管の外径は同等とすると共に前記ベルトの内径より小さくした固定治具とし、
前記固定治具を前記ベルト内に挿通した後に、前記第1シャフトと第2シャフトとを近接移動させて前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させ、該膨張させたゴム管の外周面を前記ベルトの内周面に圧接して前記ベルトを固定治具に固定し、
前記ベルトより外方に突出させる前記第1シャフトを回転駆動して連動して前記ベルトを回転させ、該ベルトの所要位置を片刃または両刃を有する回転刃で切断している。
【0011】
前記本発明のベルト切断方法は、ベルトが薄肉金属層を備え、所要長さに切断して定着ベルトとする場合に特に好適に用いられる。
前記薄肉金属層を有するベルトは、薄肉金属層の単体でもよいし、薄肉金属層の外周面にフッ素樹脂層等を積層したものでもよい。薄肉金属層はSUS、アルミニウム、ニッケル等からなり、該薄肉金属層の厚さは20μm〜60μm程度であるが、1mmの厚さの場合も切断可能である。
【0012】
前記固定治具は、前記第1シャフトの大径部の後端を前記第2シャフトの前端に近接させる方向に移動させて前記ゴム管を圧縮して膨張させ、該第2シャフトの外周面に切断用の環状受け溝を設け、該環状受け溝を覆う位置の前記ベルトに前記回転刃を接触させて切断することが好ましい。
なお、第1シャフトを移動せず、第2シャフトを後端から前方へと移動させて前記ゴム管を圧縮して膨張させてもよい。かつ、前記環状受け溝は第1シャフトの大径部の外周に設けてもよい。
【0013】
前記第2シャフトの後端側に、前記第1シャフトの中心軸部に外嵌固定する第3シャフトを備え、前記第2シャフトの前端と前記第1シャフトの大径部の後端との間の第1のゴム管と共に前記第3シャフトの前端と前記第2シャフトの後端との間に膨張チャックとなる第2ゴム管を備え、該第3シャフトの外径は第2シャフトの外径と同等とし、かつ、前記第2シャフトの長さ方向の両端側に切断用の第1環状受け溝と第2環状受け溝を設け、
前記第1シャフトの大径部を前記第2シャフト側へ設定寸法移動させ、該大径部と前記第3シャフトとの間で前記第2シャフトを移動させ、前記第1及び第2のゴム管を膨張させて前記ベルトの両側内面に固定し、前記一対の切断用の第1、第2環状受け溝に対応する位置で前記ベルトを切断して、所定長さとすることが好ましい。
【0014】
なお、ベルトを一カ所づつ切断する場合は、第3シャフトの代わりに第2シャフトの後端に当接して移動を阻止するストッパー材を押し当ててもよい。また、前記のように、第1シャフトは移動させず、第2シャフトの後端に押し当てて前進移動させる移動部材を設けてもよい。
【0015】
さらに、第1シャフトの大径部の先端はベルト挿入側の先端となるため、円錐形状に縮径することが好ましい。
【0016】
また、前記膨張チャックとするゴム管はシリコーンゴム、ウレタン等の弾性体から形成し、厚さは2mm〜15mmとしている。
【0017】
前記固定治具に設ける切断用の環状受け溝の空間に、切断刃装置の回転刃が切り込むようにしてもよいし、該環状受け溝に鋼等の金属製の刃受けを充填してもよい。
【0018】
前記本発明のベルト切断方法に用いる固定治具は、前記ベルトの切断時以外にも、金属スリーブ、樹脂スリーブ、複合層のスリーブ等を内面から保持固定した状態で、切断、表面加工及び他の加工を施す場合にも好適に用いられる。
【0019】
よって、第2の発明として、スリーブの固定治具であって、
小径の中心軸部の一端に段状に突出させた大径部を連続して設けている第1シャフトと、該第1シャフトの中心軸部に摺動自在に外嵌する第2シャフトと、該第2シャフトの前端と前記第1シャフトの大径部の後端との間に膨張チャックとしてゴム管を介在させ、前記第1シャフトの大径部の外径、第2シャフトの外径およびゴム管の外径は同等とすると共に前記スリーブの内径より小さくしており、
前記固定治具を前記スリーブ内に挿通した後に、前記第1シャフトを第2シャフトに近接移動させて前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させ、該膨張させたゴム管の外周面を前記スリーブの内周面に圧接固定することを特徴とする固定治具を提供している。
【発明の効果】
【0020】
前記した本発明のベルト切断方法によれば、ベルトに伸びがなく拡張しない場合において、該ベルトの内径より外径を小さくした固定治具をベルトに挿入するため、ベルトへの固定治具の挿入を容易に行える。また、ベルト内に挿入した後に固定治具のシャフトを移動させるだけで膨張チャックのゴム管を圧縮して外径方向に膨出させることができ、この膨出させたゴム管の外周面をベルト内面に押し当ててベルトを固定治具に簡単に固定することができる。
【0021】
また、本発明の固定治具を用いると、ベルト等の筒体を内部から簡単に保持でき、変形しやすい筒体を外部から切断や表面加工等の種々の加工を容易に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の切断方法により切断されて形成される定着ベルトの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、固定治具と切断刃装置とを備えた切断設備でベルトを切断する方法を示す図面である。
【図3】前記固定治具のゴム管を圧縮して膨張チャックとして機能させている状態を示す要部断面図である。
【図4】本発明の変形例を示す図面である。
【図5】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態では、図2に示す薄肉金属層を基層として備えた長尺なベルト1を所定長さに切断して、図1に示す画像形成装置に用いる定着ベルト2としている。該定着ベルト2はベルト1から形成し、前記ベルト1を図1に示す長円状の円筒体として用い、軸線方向の両端の内周面に金属製丸棒からなる支軸3を軸架している。
【0024】
前記ベルト1は厚さ20μm〜60μmのSUS304(またはアルミニウム、ニッケル等)からなる薄肉金属基層1aの外周面にシリコーンゴム層1bを積層し、該シリコーンゴム層1bの外周面にフッ素樹脂層1cを積層している。
【0025】
図2に示す切断装置はベルト1を内面側から固定する固定治具10と、固定治具10に外嵌固定したベルト1を回転切断する切断刃装置20とを備えている。
【0026】
固定治具10は、第1シャフト11、第2シャフト12、第3シャフト13、膨張チャックとして機能させる第1ゴム管14と第2ゴム管15とからなる。
【0027】
第1シャフト11は小径の中心軸部11aの前端に段状に突出させた大径部11bを連続して設け、大径部11bの先端を台円錐状に傾斜させて挿入部としている。該大径部11bの外径R1は前記ベルト1の内径R2より若干小さくして大径部11bがベルト1内に容易に挿入できる寸法としている。本実施形態ではベルト1の内径R2を18.0mmとし、大径部11bの外径R1を17.9mmとしている。
【0028】
第2シャフト12は第1シャフト11の中心軸部11aに摺動自在に外嵌するスリーブとし、第2シャフト12の外径は第1シャフト11の大径部11bの外径と同等としている。該第2シャフト12の長さ方向の両端近傍に切断用の第1環状受け溝16と第2環状受け溝17を外周面に開口して設けている。該第1環状受け溝16と第2環状受け溝17間の寸法は定着ベルト2の長さと対応させている。
前記第2シャフト12の前端面12aと前記大径部11bの後端面11b1の間に前記第1ゴム管14を介在させている。
【0029】
第3シャフト13は第2シャフト12と同形状のスリーブからなる。第3シャフト13は第2シャフト12の後端面12bとの間に第2ゴム管15を介在させて第1シャフト11の中心軸部11aに外嵌固定している。該固定は、第3シャフト13の内周面から突出した固定片13aを中心軸部11aの外周面に設けた固定溝11dに挿入して固定している。なお、他の固定方法でもよい。
【0030】
前記切断用の第1、第2環状受け溝16、17は同一形状とし、溝の幅を1〜4mmとし、溝深さを0.5mm〜4.0mmとしている。
【0031】
膨張チャックとする前記第1ゴム管14および第2ゴム管15は本実施形態ではシリコーンゴム製とし、厚さtを2〜15mmとしている。該第1、第2ゴム管14、15は原形の外径は第1シャフト11の大径部11bの外径、第2シャフト12および第3シャフト13の外径と同等とし、圧縮されると外方へ膨出してベルト1の内径より大となり、ベルト1の内周面に圧接する寸法に設定している。
【0032】
前記のように、固定治具10は第1シャフト11の中心軸部11aに第2シャフト12を摺動自在に外嵌すると共に第3シャフト13は固定し、第1シャフト11の大径部11bと第2シャフト12の間に第1ゴム管14、第2シャフト12と第3シャフト13の間に第2ゴム管15を介在させて組み立てている。
【0033】
該構成の固定治具10は、第1シャフト11を図2中で矢印方向Yへ後退移動させ、大径部11bを第2シャフト12側へ近接移動させると、第2シャフト12は後退するが、第2ゴム管15を介して第3シャフト13で移動が規制されるため、第2ゴム管15を圧縮して外方へ膨出させる。さらに、大径部11bが後退することで、大径部11bの後端面と第2シャフト12の前端面の幅が狭まり、第1ゴム管14も圧縮して外方へ膨出させることができる。
このように、第1シャフト11を後退移動させた状態から前進移動させると、第1ゴム管14、第2ゴム管15の圧縮を解いて原形に戻すことができる。
【0034】
このように、第1シャフト11を後退移動させることで、第1、第2ゴム管14、15を同時に膨出させることができ、固定治具10をベルト1内に挿入した状態で第1シャフト11を移動させることで、ベルト1の内周面に第1ゴム管14、第2ゴム管15を押し当てて固定することができる。
また、第1シャフトを前記後退位置から前進させると、第1ゴム管14および第2ゴム管15を原形に戻してベルト1との圧接を解き、切断されたベルトを固定治具10からスムーズに取り外すことができる。
【0035】
前記固定治具10をベルト1の内部に挿入し、第1、第2ゴム管14、15を介してベルト1を固定した後に、固定治具10の第1シャフト11を回転駆動してベルト1を連動して回転させ、この状態で切断刃装置20をベルト1へと移動させ、切断用の第1環状受け溝16および第2環状受け溝17と対応する位置に回転刃22を位置させ、該回転刃22をベルト1と接触させてベルト1の回転に従動させ、ベルト1を回転切断するようにしている。回転刃22の材質は超硬合金としている。
【0036】
詳細には、第1シャフト11の後端をモータ23の出力軸23aと連結し、ベルト1を固定治具10に外嵌した後にモータ23を回転駆動している。
固定治具10の配置位置に対して軸直角方向に一対の切断刃装置20を配置し、固定治具10に向かって前進および後退の往復移動できるように設定している。該切断刃装置20はフレーム25に軸架した主軸26に片刃の回転刃22を回転自在に取り付け、回転刃22が回転するベルト1に接すると回転刃22が従動回転するようにしている。
【0037】
本実施形態では、固定治具10の第2シャフト12に設けた切断用の第1、第2環状受け溝16と17に対応する位置に一対の切断刃装置20の回転刃22、22を配置し、べルト1の2箇所を同時に切断するようにしている。なお、切断刃装置20は1個とし、第1環状受け溝16と対応する位置でベルト1を切断した後に、ベルト1より固定治具10を抜き、ベルト1を逆向きにして再度固定治具10を挿入して位置合わせした後にベルト1を切断してもよい。
【0038】
前記モータ23で回転駆動される第1シャフト11の回転数は30〜400rpmの範囲とすることが好ましい。第1シャフト11と連動するベルト1は前記回転数で回転され、ベルト1の回転に応じて回転刃22が従動して、ベルト1を外周に沿って切断していく。
【0039】
前記固定治具10および切断刃装置20を備えた切断設備により、ベルト1を定着ベルト2の寸法に切断している。
該切断工程の第1工程で、固定治具10にベルト1を被せる。言い換えると、ベルト1の中空部に一端開口から固定治具10を挿入する。この挿入は第1シャフト11の円錐形状とした前端側から挿入していく。この段階では、図2に示すように、固定治具10の第1、第2ゴム管14、15を外方へ膨出させていないため、固定治具10の外径はベルト1の内径より小さく隙間がある設定としているため、固定治具10をベルト1にスムーズに挿入できる。
【0040】
第2工程で固定治具10によるベルト1の固定を行う。即ち、図3に示すように、第1シャフト11を後方へ移動させて、第2シャフト11の前端と第1シャフト11の大径部後端との隙間、第2シャフト12の後端と第3シャフト13の前端との隙間を狭め、第1ゴム管14、第2ゴム管15を圧縮して外方へ膨張させる。膨張した第1ゴム管14と第2ゴム管15の先端はそれぞれベルト1の内周面に環状に圧接し、ベルト1を固定治具10に固定する。該第1、第2ゴム管14、15は第1、第2の環状受け溝16 17にそれぞれ近接した位置であり、切断位置に近接した位置でベルト1を固定することができる。
【0041】
第3工程でベルト1の回転を行う。即ち、第1シャフト11をモータ23で回転駆動してベルト1を回転させる。同時に、一対の切断刃装置20を固定治具10で固定したベルト1側へと移動させ、回転刃22を、ベルト1の第1、第2の環状受け溝16、17に被せた部分に接触させる。接触させた回転刃22は回転するベルト1に従動して回転し、ベルト1の外周に沿って回転しながら切断していく。
【0042】
切断後の第4工程で、切断刃装置20を後退移動させると共に、モータ23による第1シャフト11の回転を停止する。かつ、第1シャフト11を前進させて元の位置に戻す。これにより、第1ゴム管14、第2ゴム管15は圧縮を解かれて元の位置に戻り、切断されたベルト1の内周面から外れて固定をとく。これにより、切断で所定長さとした定着ベルト2を固定治具10から簡単に引き出して取り外すことができる。
【0043】
前記のように、本発明のベルトの切断方法では、第1、第2、第3シャフト11〜13および膨張チャックとする第1、第2ゴム管14、15を組み合わせた固定治具10をベルト1内にスムーズに挿入でき、挿入後に第1シャフト11を移動させるだけで第1、第2ゴム管14、15を膨出させてベルト1の内周面に圧接させることで、簡単にベルト1を内部側から固定できる利点を有する。
特に、固定治具10にベルト1を被せる段階では、固定治具10の外径はベルト1の内径より小さくしているため、伸びがない薄肉金属基層を含むベルト1内に固定治具10をスムーズに通すことができる。
【0044】
さらに、固定治具10の第1シャフト11を回転駆動してベルト1を回転させることで、回転刃22を従動回転させてベルト1の外周を切断していくため、押し切り時に発生しやすいベルト切断端面の歪みや変形を防止できる。
【0045】
図4に前記実施形態の変形例を示す。
該変形例では、切断刃装置20の回転刃22Bとして両刃を用いている。また、固定治具10の外周面に開口する第1、第2環状受け溝16、17に焼き入れした鋼(SUJ2)製の刃受30を充填している。この変形例ではベルト1の回転数は30〜400rpmとしている。
他の構成及び作用は前記実施形態と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
本発明は前記実施形態および変形例に限定されず、固定治具10は第1シャフトと第2シャフトと第1ゴム管とで構成し、第2シャフトの後端を他のストッパで保持し、第1シャフトを第2シャフトに近接移動させて第1ゴム管を膨張し、該第1ゴム管でベルトの内面を固定し、該ベルトを1カ所づつ切断する構成としてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では薄肉金属基層を含む複層のベルトを切断して定着ベルトの長さとしているが、金属層の単層のみのベルト、さらにポリイミド樹脂等からなる樹脂製のベルトの切断にも好適に利用できる。かつ、定着ベルトの切断に限定されず、他のベルトおよび小径スリーブからなるローラの切断にも提供できる。
【0048】
また、前記固定治具10は、筒体の切断に限定されず、筒体を内部から固定して加工処理する必要がある場合に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ベルト
2 定着ベルト
10 固定治具
11 第1シャフト
11a 中心軸部
11b 大径部
12 第2シャフト
13 第3シャフト
14 膨張チャックとなる第1ゴム管
15 膨張チャックとなる第2ゴム管
16 切断用の第1の環状受け溝
17 切断用の第2の環状受け溝
20 切断刃装置
22 回転刃
23 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のベルトを製品長さに切断する方法であって、
前記ベルト内に挿入するシャフトに膨張チャックとするゴム管を外嵌した固定治具を用い、該固定治具のゴム管の外径を前記ベルトの内径以下とした状態で前記ベルトに挿通し、挿通後に前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させて前記ベルトの内周面に圧接して固定し、
その後、前記固定治具で内部側より固定した前記ベルトの所要位置を外方から切断することを特徴とするベルト切断方法。
【請求項2】
前記固定治具は、小径の中心軸部の一端に段状に突出させた大径部を連続して設けている第1シャフトと、該第1シャフトの中心軸部に摺動自在に外嵌する第2シャフトと、該第2シャフトの前端と前記第1シャフトの大径部の後端との間に前記膨張チャックとするゴム管を介在させ、前記第1シャフトの大径部の外径、第2シャフトの外径およびゴム管の外径は同等とすると共に前記ベルトの内径より小さくした固定治具とし、
前記固定治具を前記ベルト内に挿通した後に、前記第1シャフトと第2シャフトとを近接移動させて前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させ、該膨張させたゴム管の外周面を前記ベルトの内周面に圧接して前記ベルトを固定治具に固定し、
前記ベルトより外方に突出させる前記第1シャフトを回転駆動して連動して前記ベルトを回転させ、該ベルトの所要位置を片刃または両刃を有する回転刃で切断する請求項1に記載のベルト切断方法。
【請求項3】
前記ベルトは薄肉金属層を備え、所要長さに切断して定着ベルトとするものである請求項1または請求項2に記載のベルト切断方法。
【請求項4】
前記固定治具は、前記第1シャフトの大径部の後端を前記第2シャフトの前端に近接させる方向に移動させて前記ゴム管を圧縮して膨張させ、該第2シャフトの外周面に切断用の環状受け溝を設け、該環状受け溝を覆う位置の前記ベルトに前記回転刃を接触させて切断する請求項2または請求項3に記載のベルト切断方法。
【請求項5】
前記第2シャフトの後端側に、前記第1シャフトの中心軸部に外嵌固定する第3シャフトを備え、前記第2シャフトの前端と前記第1シャフトの大径部の後端との間の第1のゴム管と共に前記第3シャフトの前端と前記第2シャフトの後端との間に膨張チャックとなる第2ゴム管を備え、該第3シャフトの外径は第2シャフトの外径と同等とし、かつ、前記第2シャフトの長さ方向の両端側に切断用の第1環状受け溝と第2環状受け溝を設け、 前記第1シャフトの大径部を前記第2シャフト側へ設定寸法移動させ、該大径部と前記第3シャフトとの間で前記第2シャフトを移動させ、前記第1及び第2のゴム管を膨張させて前記ベルトの両側内面に固定し、前記一対の切断用の第1、第2環状受け溝に対応する位置で前記ベルトを切断して、所定長さとする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のベルト切断方法。
【請求項6】
スリーブの固定治具であって、
小径の中心軸部の一端に段状に突出させた大径部を連続して設けている第1シャフトと、該第1シャフトの中心軸部に摺動自在に外嵌する第2シャフトと、該第2シャフトの前端と前記第1シャフトの大径部の後端との間に膨張チャックとしてゴム管を介在させ、前記第1シャフトの大径部の外径、第2シャフトの外径およびゴム管の外径は同等とすると共に前記スリーブの内径より小さくしており、
前記固定治具を前記スリーブ内に挿通した後に、前記第1シャフトを第2シャフトに近接移動させて前記ゴム管を圧縮して外方へ膨張させ、該膨張させたゴム管の外周面を前記スリーブの内周面に圧接固定することを特徴とする固定治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52470(P2013−52470A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191737(P2011−191737)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】