説明

ベルト及びベルトの製造方法

【課題】光沢を有する立体的形状が背面に形成されたベルト及びベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】外周面に周方向に所定の間隔で配置された複数の溝部21が形成された内型20に、歯布7と心線6と未加硫ゴムシート10からなる未加硫ベルトスリーブ11を巻き付けた後、その外周面を樹脂フィルム23で覆う。そして、内周面に周方向に所定の間隔で配置された複数の溝部27が形成されたパターンスリーブ26をベルトスリーブ11の外側に設置し、その周囲をジャケット28で覆い、加硫する。同時に、ベルトスリーブ11の外周面に、樹脂フィルム23を介してパターンスリーブ26の溝部27に対応するコグ部5を形成するとともに、ベルトスリーブ11の内周面に、内型20の複数の溝部21に対応する複数の歯部2を形成する。そして、加硫されたベルトスリーブ11の外周面から樹脂フィルム23を剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面に光沢を有する立体的パターンが形成されたベルト及びこのベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯付ベルト等の伝動ベルトは、機械内部など、使用時には見えない箇所に用いられることが多く、ベルト背面に意匠性が要求されることは少なかった。しかし、近年ベルトの使用環境が多様化したため、ベルト背面に美観性を有する立体的パターンを形成することが要求される場合がある。
【0003】
ベルト背面に立体的パターンを形成する方法として、研削及び研磨による方法がある。具体的には、ベルトを駆動ロールと従動ロールに懸架し、所定の張力下で走行させ、回転させた研削ホイールをベルト背面に当接させてベルト長手方向に延在する溝部(立体的パターン)を形成し、さらに、回転させた研磨ホイールをベルト背面に当接させて背面を研磨する。しかし、研削によって得られる立体的パターンは、ベルト長手方向に延在するものに限定される。また、研磨ホイールの砥石の目を細かくしても、光沢を有するほどに表面を平滑に仕上げることはできない。
【0004】
また、研削及び研磨による方法の他に、加硫工程において立体的パターンが形成された型を用いる方法がある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、立体的パターンが外周面に形成された円筒状の型に、未加硫のゴムシートを巻き付けて加熱加圧することにより、未加硫ゴムの加硫を行うと同時に、この立体的パターンをゴムシートの外周面に転写する。この場合、このゴムシートの外周面がベルトの背面となる。もしくは、内型に巻き付けられた未加硫ゴムシートの周囲を、立体的パターンが内面に形成された型で囲った状態で加硫し、この立体的パターンをゴムシートの内周面に転写する。この場合、このゴムシートの内周面がベルトの背面となる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−336846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、上記のような型を用いてベルトの背面に立体的パターンを形成する場合、型とゴムとの離型性を高めるため、型の表面に予め離型剤を塗布したり、型とゴムシートとの間にナイロンタフタ等の離型布を介在させたりする。しかし、離型剤を使用すると、塗布ムラにより外観不良が生じる場合がある。また、離型剤の乾燥が不十分な場合、加硫中に離型剤が蒸発して、ゴム内部にエアが残りベルト背面に凹凸が生じる。一方、ナイロンタフタ等の離型布を使用すると、織布の布目がベルト背面に転写されるため、平滑な表面を形成することができない。従って、光沢を有する、美観性の高い立体的パターンをベルト背面に形成することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、光沢を有する立体的形状が背面に形成されたベルト及びベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
請求項1のベルトは、ゴムを基材とするベルト本体を有し、前記ベルト本体の背面に立体的パターンが形成されており、前記背面のJIS−Z8741で規定する60度光沢度が40〜60であることを特徴とする。これにより、背面に立体的パターンが形成され、さらに、その背面の光沢度が高いことからベルトの美観が良好となる。
【0009】
請求項2のベルトは、請求項1において、前記ベルト本体は、長手方向に所定の間隔で配置された複数の歯部と、心線が埋設された背部とを含むものであり、前記複数の歯部は、歯布により被覆されており、前記背面が、前記ベルト本体の前記複数の歯部と反対側の面であることを特徴とする。これにより、歯部と反対側の面に立体的パターンが形成され、さらに、その面の光沢度が高く美観性の良好な歯付きベルトを実現することができる。
【0010】
請求項3のベルトの製造方法は、内型に未加硫ベルトスリーブを巻きつける第1工程と、前記未加硫ベルトスリーブの外周面を、樹脂フィルムで覆う第2工程と、その内面に所定の立体的パターンが形成されたパターンスリーブを、前記未加硫ベルトスリーブの外側に設置する第3工程と、前記パターンスリーブの周囲をジャケットで覆った後に、前記ジャケットと前記内型との間で前記未加硫ベルトスリーブを加圧しながら、この未加硫ベルトスリーブを加硫しつつ、加硫されたベルトスリーブの外周面に前記樹脂フィルムを介して立体的パターンを形成する第4工程と、加硫された前記ベルトスリーブの外周面から前記樹脂フィルムを剥離する第5工程と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
樹脂フィルムをパターンスリーブと未加硫ベルトスリーブの間に介在させて加硫することにより、加熱によって流動化したゴムが、樹脂フィルムを伸ばしつつ、パターンスリーブの内面に形成された立体的パターンに流れ込む。そのため、加硫されたベルトスリーブの外周面には立体的パターンが形成される。また、流動化したゴムが樹脂フィルムに沿って均一に流れるため、樹脂フィルムが剥離されたベルトスリーブの外周面は、滑らかとなり、光沢を有するため、美観性が良好となる。
【0012】
請求項4のベルトの製造方法は、請求項3において、前記樹脂フィルムは、ポリメチルペンテンからなることを特徴とする。
【0013】
ポリメチルペンテンは、耐熱性に優れているため、加硫の際、樹脂フィルムが熱により溶融しない。また、ポリメチルペンテンは、表面張力が小さく、ゴムに対する剥離性が優れているため、加硫されたベルトスリーブの表面を汚すことなく、樹脂フィルムをベルトスリーブから容易に剥離することができる。
【0014】
請求項5のベルトの製造方法は、請求項4において、前記樹脂フィルムの厚みは、50μm以下であることを特徴とする。
【0015】
樹脂フィルムの厚みが50μmを超えると、第4工程において、樹脂フィルムが十分に伸びないため、パターンスリーブの立体的パターンに流動化したゴムが完全に流れ込まず、ベルトスリーブの外周面に立体的パターンが型に忠実に形成されない場合がある。また、樹脂フィルムの厚みが50μmを超えると、樹脂フィルムの巻き始めと巻き終わりの両端部の重なった領域がベルトスリーブ側に押し込まれることによって、ベルトスリーブの外周面に凹みが生じ、美観が損なわれる。従って、樹脂フィルムの厚みを50μm以下にすることにより、ベルトスリーブの外周面に立体的パターンを確実に形成することができるとともに、ベルトスリーブの外周面に凹みを発生させないようにすることができる。
【0016】
請求項6のベルトの製造方法は、請求項3〜5の何れかにおいて、前記樹脂フィルムは、前記未加硫ベルトスリーブに接する側の面に、マークが付着されており、前記第4工程において、前記ベルトスリーブの外周面に、前記マークを転写することを特徴とする。これにより、表面にマークが付されたベルトを製造することができる。
【0017】
請求項7のベルトの製造方法は、請求項3〜6の何れかにおいて、前記第1工程で、前記内型として、その外周面に周方向に所定間隔で配置された複数の溝部が形成されたものを使用し、前記第4工程において、前記ベルトスリーブの内周面に、前記複数の溝部に対応する複数の歯部を形成することを特徴とする。これにより、長手方向に所定の間隔で配置された複数の歯部を有し、その歯部と反対側の表面に光沢を有し、さらにその表面に立体的パターンが形成された歯付ベルトを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の歯付ベルト1は、長手方向に所定の間隔で配置された複数の歯部2と、長手方向に沿って心線6が埋設された背部3と、歯部2の表面を被覆する歯布7とから構成される。また、歯部2と背部3とはベルト本体を構成し、このベルト本体はゴムを基材とする。背部3の歯部2と反対側の面が、ベルト本体の背面4となっている。この背面4には、ベルト長手方向に所定の間隔で配置された複数のコグ部5が形成されている。このコグ部5の先端面には、カラーゴム組成物からなるマーク8が付されている。尚、この複数のコグ部5が、本発明の立体的パターンを構成している。
【0019】
歯部2及び背部3はゴム組成物から構成される。ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPM)等のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(ACSM)、クロロプレンゴム、天然ゴム等の単独又は混合したものが挙げられる。
【0020】
また、上記ゴム組成物には、硫黄や有機過酸化物などの加硫剤、カーボンブラックやシリカなどの増強剤、炭酸カルシウムやタルクなどの充填剤、軟化剤、加工助剤、老化防止剤等が配合される。
【0021】
心線6は、ベルト本体を構成するゴムとの接着性を高めるための接着処理が施された撚コードが用いられる。撚コードを構成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、カーボン繊維等の低伸度高強度のものが用いられる。接着処理としては、例えば、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液を用いた処理が挙げられる。
【0022】
歯布7は、ベルト長手方向に延在する緯糸と、幅方向に延在する経糸とで織られた繊維織物で構成される。この繊維織物の材料としては、例えば、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、綿等であって、これらが単独あるいは組み合わせたものが用いられる。また、緯糸と経糸を構成する繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでもよい。
【0023】
また、上記繊維織物の織物構造としては、平織物、綾織物、朱子織物等の何れでもよい。この場合、緯糸には伸縮性を有するウーリーナイロン糸、ウレタン弾性糸、又は、ウレタン弾性糸とナイロン糸との混撚りを一部使用するのが好ましい。
【0024】
さらに、上記繊維織物としては、少なくとも2種類の緯糸と一種類の経糸とが織成された多重織(2重織)構造のものを採用することもできる。この場合、経糸にはナイロン繊維を使用し、緯糸にはフッ素系繊維、ナイロン繊維、又は、ウレタン弾性糸を使用することが好ましい。緯糸のうちの、少なくとも歯布7の表面側(歯付プーリとのかみ合い側)の緯糸としては、例えば、PTFE繊維などの摩擦係数が低いフッ素系繊維を使用することが好ましい。これにより、歯布7と歯付プーリとの間の摩擦を低減することができる。一方、歯布7の歯部2に接する側の緯糸には、ナイロン繊維やウレタン弾性糸などのフッ素系繊維以外の繊維を使用することが好ましい、これにより、歯布7と歯部2を構成するゴムとの接着力を高めることが可能となる。
【0025】
マーク8は、カラーゴム組成物で構成される。カラーゴム組成物のゴム成分としては、上述した歯部2及び背部3を構成するゴム成分と同じものを用いることができる。カラーゴム組成物には、加硫剤、加硫助剤、顔料等が含まれる。
【0026】
次に、上記の歯付ベルト1の製造方法について説明する。
先ず、金属材料からなる円筒状に形成された内型20を準備する。図2に示すように、この内型20の外周面には、周方向に所定の間隔で配置された複数の溝部21が形成されている。この溝部21は、歯付ベルト1の歯部2の凸状に対応する凹状に形成されている。歯布7をこの溝部21に沿わせながら内型20の外周面に巻き付ける。その上に心線6をスパイラル上に巻き付け、さらに、歯部2及び背部3を形成する未加硫ゴムシート10を巻き付けることにより、未加硫ベルトスリーブ11を形成する。即ち、内型20の外周面に、歯布7、心線6及び未加硫ゴムシート10からなる未加硫ベルトスリーブ11を巻き付ける(第1工程)。尚、未加硫ゴムシート10は、複数の歯部2と、複数のコグ部5を有する背部3の両方を形成できる容積(厚さ)を有するものが用いられる。
【0027】
次に、未加硫のカラーゴム組成物からなるマーク8が片側表面に付着された樹脂フィルム23を用意する。そして、未加硫ベルトスリーブ11の外周面にマーク8が接するように、樹脂フィルム23を1周巻き付ける(第2工程)。このとき、樹脂フィルム23の巻き始めと巻き終わりの両端部は、重なっている。
【0028】
ここで、樹脂フィルム23は、上記ベルトスリーブ11の加硫の際に溶融しないような高い耐熱性を有し、さらに、ゴムに対する剥離性が優れているものが用いられる。樹脂フィルム23は、融点が228℃以上、ビカット(Vicat)法による軟化点が160℃以上であることが好ましい。また、樹脂フィルム23は、降伏点強度が21.6MPa以上、破断点強度が22.6MPa以上、破断点伸びが150%以下であることが好ましい。樹脂フィルム23としては、特に、ポリメチルペンテン(PMP)フィルムが好適に用いられる。ポリメチルペンテンフィルムとしては、三井化学株式会社製のTPXで作られたオピュランフィルムが用いられる。ポリメチルペンテンは、高い耐熱性を有し、さらに、表面張力が24dyne/cmと小さいため、ゴムに対する剥離性が優れている。
【0029】
次に、図3に示すように、複数本のガイド棒24を未加硫ベルトスリーブ11の外周面に装着する。具体的には、ガイド棒24の端部の固定片25を、内型20の上面に設けた固定用孔22に差し込むことにより装着する。
【0030】
次に、加硫ゴムからなる円筒状に形成されたパターンスリーブ26を用意する。パターンスリーブ26の内周面には、周方向に沿って所定の間隔で複数の溝部27が形成されている。この溝部27は、歯付ベルト1のコグ部5の凸状に対応した凹状に形成されている。そして、図4に示すように、このパターンスリーブ26を拡径しつつ、ガイド棒24に沿って未加硫ベルトスリーブ11の外側に嵌め込んで装着する。その後ガイド棒24を抜き取る。このように、パターンスリーブ26を未加硫ベルトスリーブ11の外側に設置する(第3工程)。ガイド棒24を用いることによって、内型20の溝部21に対してパターンスリーブ26の溝部27を位置合わせした状態でパターンスリーブ26の装着を行なうことができる。
【0031】
次に、パターンスリーブ26の周囲をジャケット28で覆い、加硫缶(図示省略)に入れて密閉した後、パターンスリーブ26を縮径させつつ未加硫ベルトスリーブ11を加熱加圧し、同時に、未加硫ベルトスリーブ11の加硫を行う。このとき、図5に示すように、加硫されたベルトスリーブ11の外周面に樹脂フィルム23を介してパターンスリーブ26の溝部21に対応するコグ部5が形成されるとともに、ベルトスリーブ11の内周面に内型20の複数の溝部27に対応する複数の歯部2が形成される。さらに、樹脂フィルム23からマーク8がベルトスリーブ11に転写される。以上の工程が第4工程である。尚、この加熱加圧は、温度130〜180℃、加圧力0.20〜0.85MPaで、25〜30分程度行う。この場合、コグ部5が形成されるときの温度は、160〜180℃となる。
【0032】
第4工程について詳細に説明する。未加硫ゴムシート10は、熱により流動状となり、樹脂フィルム23を伸ばしながらパターンスリーブ26の溝部27に流れ込む。これによりベルトスリーブ11の外周面にコグ部5が形成される。コグ部5が形成されるときの加熱温度は、樹脂フィルム23の融点よりも低く、軟化点よりも高いため、樹脂フィルム23は溶融することなく、柔らかくなった状態で伸長する。また、樹脂フィルム23の厚みが50μmを超えると、樹脂フィルム23が十分に伸びないため、パターンスリーブ26の溝部27に流動状のゴム組成物が完全に流れ込まず、コグ部5が正確に形成されない場合がある。従って、コグ部5を確実に形成するには、樹脂フィルム23の厚みは50μm以下にすることが好ましい。
【0033】
また、熱により流動状となったゴム組成物は、心線6の隙間を通過し、歯布7を押し広げながら内型20の溝部21へ流れ込む。これによりベルトスリーブ11の内周面に歯部2が形成される。このとき、歯布7が内型20の溝部21に沿うように予め型付けされているため、流動状のゴムは歯布7をスムーズに押し広げて内型20の溝部21の表面に密着させることができる。
【0034】
さらに、樹脂フィルム23に付着されたマーク8は、加圧によってベルトスリーブ11の表面に押し込まれ、さらに、加硫によってベルトスリーブ11と一体化する。これにより、ベルトスリーブ11の外周面は、マーク8の無い領域とマーク8の有る領域とで段差の無い平坦面に形成される。
【0035】
加硫を行った後、ジャケット28、パターンスリーブ26を取り外し、さらに、外周面に樹脂フィルム23が密着したベルトスリーブ11を内型20から抜き取る。次に、この加硫されたベルトスリーブ11の外周面から樹脂フィルム23を剥離する(第5工程)。さらに、このベルトスリーブ11を2つの回転ロールに懸架し、所定の張力を与えて回転させながらカッターによって所定の幅に切断することで図1に示す個々の歯付ベルト1に仕上げる。なお、ベルトスリーブ11の外周面が、歯付ベルト1の背面4となる。
【0036】
上述したように、樹脂フィルム23は、加熱温度よりも高い融点を有するため、溶融することがない。そのため、樹脂フィルム23はベルトスリーブ11に溶着しない。また、樹脂フィルム23は、表面張力が小さく、ゴムに対する剥離性が高いため、ベルトスリーブ11の外周面を汚すことなく、樹脂フィルム23をベルトスリーブ11から容易に剥離することができる。また、流動化したゴム組成物は、樹脂フィルム23に沿って均一に流れる。そのため、樹脂フィルム23を剥離することにより現れたベルトスリーブ11の外周面(歯付ベルト1の背面4)は、滑らかで、光沢を有するため、美観性が良好となる。このベルトスリーブ11の外周面(歯付ベルト1の背面4)は、JIS−Z8741で規定する60度光沢度が40〜60となる。
【0037】
また、樹脂フィルム23の強度が低すぎると、ベルトスリーブ11から樹脂フィルム23を剥がす際、すぐに引き裂かれたり破断したりする。そのため、樹脂フィルム23は、降伏点強度が21.6MPa以上、破断点強度が22.6MPa以上の強度を有することが好ましい。また、同じ強度であっても、伸びが高すぎると、ベルトスリーブ11から樹脂フィルム23を剥がす際、樹脂フィルム23が過剰に伸び、剥がす途中で破れたりする。そのため、樹脂フィルム23は、破断点伸びが150%以下であることが好ましい。即ち、樹脂フィルム23は、降伏点強度が21.6MPa以上、破断点強度が22.6MPaであって、破断点伸びが150%以下であるという特性を有することにより、ベルトスリーブ11から剥離し易くなる。
【0038】
また、樹脂フィルム23の巻き始めと巻き終わりの両端部の重なった領域は、加硫工程の際、ベルトスリーブ11側に押し込まれるため、ベルトスリーブ11の外周面には樹脂フィルム1枚分の凹みが生じる。このとき、樹脂フィルム23の厚みが50μmを大きく超えると、この凹みが目立ち、美観が損なわれる。従って、上述したように第4工程においてコグ部5を確実に形成するためだけでなく、この凹みをほとんど目立たせないためにも、樹脂フィルム23の厚みは50μm以下にすることが好ましい。
【0039】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0040】
1] 背面4に形成される立体的パターンは、ベルト長手方向に所定の間隔で配置された複数のコグ部5に限定されない。例えば、社名や商品名を立体的に形成したものでもよい。
【0041】
2] マーク8は、コグ部5の先端面に付されるものに限定されない。複数のコグ部5に亘って付されてもよい。即ち、隣接するコグ部5間の溝部にもマーク8を付してもよい。また、マーク8を背面4に全く付さなくてもよい。
【0042】
3] 樹脂フィルム23とパターンスリーブ26とを用いて製造されるベルトは歯付ベルト1に限定されない。例えば、本実施形態の内型20に代えて、外周面が平坦に形成された内型を用いて、平ベルト、Vベルト、又は、Vリブドベルトを製造してもよい。Vベルトは、ベルト長手方向を直交する断面がV字状のベルトである。Vリブドベルトは、長手方向に延びる複数のリブ部を有するベルトである。Vリブドベルトの場合、複数のコグ部が形成されるベルト本体の背面は、リブ部と反対側の面である。
【実施例】
【0043】
以下、具体的な実施例を伴って本発明の効果を検証する。
【0044】
水素化ニトリルゴム(H−NBR)に不飽和カルボン酸金属塩を配合した複合ポリマー体と、水酸化ニトリルゴムとの混合ゴムに、加硫剤として有機過酸化物を添加して、未加硫ゴム組成物を用意した。この未加硫ゴム組成物から、250mm×150mm×3.2mmの未加硫ゴムシートを1枚作製した。この未加硫ゴムシートの片側表面の半分を、融点が228℃、ビカット軟化点が160℃のポリメチルペンテンフィルム(三井化学株式会社製オピュランフィルム)で覆い、上下2枚のアルミ板の間に挟んで、30分間、温度165℃のプレスを行い、ゴムシートを加硫した。
【0045】
次に、加硫されたゴムシートからポリメチルペンテンフィルムを剥離した。表1に示すように、ポリメチルペンテンフィルムに覆われて加硫されたゴムシートの表面を実施例とし、ポリメチルペンテンフィルムに被覆されず直接アルミ板が接して加硫されたゴムシート表面を比較例とする。
【0046】
上記の加硫されたゴムシートの実施例と比較例の表面について、それぞれ光沢度を測定した。光沢度は、JIS−Z8741、ISO2813、ASTMD523、DIN67530に準拠した、日本電色工業株式会社製光沢計VG2000を用い、投受光角60°で測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すとおり、ポリメチルペンテンフィルムに覆われて加硫された実施例1の表面の光沢度は、直接アルミ板に接して加硫された比較例の表面の光沢度よりも高くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る歯付ベルトの斜視図である。
【図2】歯付ベルト製造工程における、内型に未加硫ベルトスリーブを巻き付けた状態の断面図である。
【図3】歯付ベルト製造工程における、パターンスリーブを装着する直前の斜視図である。
【図4】歯付ベルト製造工程における、パターンスリーブを装着する途中の斜視図である。
【図5】歯付ベルト製造工程における、加硫後の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 背部
4 背面
5 コグ部(立体的パターン)
6 心線
7 歯布
8 マーク
11 ベルトスリーブ
20 内型
21 溝部
23 樹脂フィルム
26 パターンスリーブ
27 溝部(立体的パターン)
28 ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを基材とするベルト本体を有し、前記ベルト本体の背面に立体的パターンが形成されており、前記背面のJIS−Z8741で規定する60度光沢度が40〜60であることを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記ベルト本体は、長手方向に所定の間隔で配置された複数の歯部と、心線が埋設された背部とを含むものであり、
前記複数の歯部は、歯布により被覆されており、
前記背面が、前記ベルト本体の前記複数の歯部と反対側の面であることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
内型に未加硫ベルトスリーブを巻きつける第1工程と、
前記未加硫ベルトスリーブの外周面を、樹脂フィルムで覆う第2工程と、
その内面に所定の立体的パターンが形成されたパターンスリーブを、前記未加硫ベルトスリーブの外側に設置する第3工程と、
前記パターンスリーブの周囲をジャケットで覆った後に、前記ジャケットと前記内型との間で前記未加硫ベルトスリーブを加圧しながら、この未加硫ベルトスリーブを加硫しつつ、加硫されたベルトスリーブの外周面に前記樹脂フィルムを介して立体的パターンを形成する第4工程と、
加硫された前記ベルトスリーブの外周面から前記樹脂フィルムを剥離する第5工程と、
を備えていることを特徴とするベルトの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルムは、ポリメチルペンテンからなることを特徴とする請求項3に記載のベルトの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの厚みは、50μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のベルトの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂フィルムは、前記未加硫ベルトスリーブに接する側の面に、マークが付着されており、
前記第4工程において、前記ベルトスリーブの外周面に、前記マークを転写することを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載のベルトの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程において、前記内型として、その外周面に周方向に所定間隔で配置された複数の溝部が形成されたものを使用し、
前記第4工程において、前記ベルトスリーブの内周面に、前記複数の溝部に対応する複数の歯部を形成することを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載のベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−304021(P2008−304021A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153487(P2007−153487)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】