説明

ベルト式濃縮機及びその運転方法

【課題】汚泥を搬送しつつ濃縮中のベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させ得るベルト式濃縮機を提供する。
【解決手段】一対のローラ3a,3bに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルト2と、この無端ベルト2上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口4aと、この無端ベルト2の他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口4bと、この無端ベルト2の下方にこの無端ベルト2を透過した透過水を排出する排水口4cとが設けられたベルト式濃縮機1において、前記無端ベルト2により搬送される汚泥を鋤くための複数の汚泥セパレータ10が前記無端ベルト2面に接して配設されると共に、これらの汚泥セパレータ10内に、前記無端ベルト2を洗浄するための洗浄スプレイが収納されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式濃縮機の改善に関するものであり、より詳しくは、濃縮(運転)中のベルトの目詰まりを解消して濾過を促進させるようにしたベルト式濃縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、各家庭で生じた家庭廃水等は下水道を通して下水処理場に送られ、ここにおいて浄化処理されて放水されているが、家庭廃水等に含まれている固形分は下水処理場の最初沈殿池の底部に沈殿する。また、その最初沈殿液上澄液は活性汚泥法等を用いて処理され、活性汚泥を含む処理液は上澄水と固形分に分離するために最終沈殿池に移され、固形分は最終沈殿池の底部に沈殿する。
【0003】
この最初沈殿池や最終沈殿池の底部に沈殿した固形分は、汚泥として一部を除いて抜き取られると共に、所定の範囲の濃度に濃縮され、汚泥脱水設備へ送泥されるか、燃料として有効に活用されるバイオガスを得るために、汚泥中の有機物を嫌気性菌の働きにより分解して、主としてメタンガスを発生させる周知の構成になる消化ガスタンクに送られる。
【0004】
最初沈殿池や最終沈殿池の底部から抜き取られた汚泥の濃度は、例えば0.4〜2.0%程度であって低濃度であるため、消化ガスタンクに送るために必要な3.0〜4.0%程度に濃縮する場合には、汚泥に高分子凝集剤をラインミキサーや混和槽により混合してフロックを形成させ、これをベルト式濃縮機に供給して濃縮している。このようなベルト式濃縮機としては、例えば後述する構成になるものが公知である。
【0005】
ベルト式濃縮機により濃縮された汚泥は、前記濃縮機から排出されて濃縮汚泥貯留槽に一時的に貯留される。そして、この貯留槽に設置された汚泥移送ポンプにより、後工程である消化タンクに送液され、無酸素状態で活動する嫌気性細菌によって汚泥中の有機物を分解し、最終的にはメタン、二酸化炭素等を生成する。
【0006】
このような目的に用いられるベルト式濃縮機として、例えば、その一部を切欠いた側面図で示す図8の従来例に係るベルト式濾過装置がある。この従来例に係るベルト式濾過装置によれば、高さ位置の異なる一対のローラ32,33に所要の傾斜角度で、無端状の濾布31が跨って掛け渡されている。
【0007】
同時に、前記各ローラ32,33間の上側の濾布31が低位置側から高位置側に向け循環するよう一方のローラ32を回転駆動する駆動装置30と、前記濾布31に所要の張力を付与し得るよう他方のローラ33を、前記一方のローラ32から離間する方向に付勢して軸支する濾布緊張装置45とを備えている。
【0008】
同時にまた、この従来例に係るベルト式濾過装置は、前記各ローラ32,33間の上側の濾布31を包囲する如く配設され、かつ該濾布31の上面に固形分を含むスラリー35を供給し得るよう前記低位置側のローラ33上方にスラリー供給口36を備えた槽状のフィードボックス34と、該フィードボックス34内の底部に前記濾布31を透過した濾液35bを回収し得るよう配設された濾液回収管40とを備えている。
【0009】
更に、この従来の発明に係るベルト式濾過装置は、前記高位置側のローラ32下部に前記濾布31により分離された固形分35aを回収し得るよう設けられたシュート41と、前記各ローラ32,33間の下側の濾布31の内周面側から洗浄水42を噴射して、濾布31外周面の付着固形物を前記シュート41に洗い流し得るよう前記高位置側のローラ32近傍に配設された洗浄装置43とを備えている。尚、符号44は前記シュート41内における洗浄装置43より上流側で、濾布31外周面の付着固形分35aを削ぎ落とすためのスクレーパを示す(特許文献1参照)。
【0010】
次に、従来例に係る汚泥濃縮装置(ベルト式濃縮機に相当)の断面構造を、その断面図である図9に示す。この従来例に係る汚泥濃縮装置は、汚泥を貯留する汚泥槽18と、複数のローラ間を周回する無端ベルト状ろ布28を備え、少なくとも最下段の前記ローラ26が前記汚泥に浸漬されるろ過手段と、前記ろ布28の洗浄手段29と、前記ろ布28に密接したろ液導入口と液位を一定に保持する手段とを有するろ液室21を備えている。
【0011】
そして、この汚泥濃縮装置は、前記汚泥槽18への汚泥導入手段19が前記ろ液導入口の上端部近傍に設けられ、前記汚泥槽18からの濃縮汚泥排出手段20が、前記ろ布28を挟んで前記汚泥導入手段19とほぼ対向する位置に設けられて構成される。
【0012】
前記洗浄手段29は、汚泥槽18内のろ布上昇側の汚泥液面上で固形分剥離手段24の上方に設けられ、固形分剥離手段24で剥離出来なかった固形分を更に除去する。そして、前記洗浄手段29は、ろ布28に向けて水を噴射させてろ布28に付着した汚泥ケーキを除去する構造の、水による洗浄手段が好ましい。尚、前記固形分剥離手段24は、スクレーパによってろ布28に付着した汚泥ケーキを掻き取る構造の、スクレーパによる剥離手段が好ましい(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−184822号公報
【特許文献2】特開2003−290797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記従来例に係るベルト式濾過装置や汚泥濃縮装置によれば、固形分剥離直後の濾布を前記洗浄装置や洗浄手段によって洗浄して目詰まりを改善することは可能であるが、汚泥を搬送しつつ濃縮(運転)中の濾布やベルトの透過面を更新し、かつ目詰まりを改善することは不可能である。
【0014】
従って、本発明の目的は、汚泥を搬送しつつ濃縮(運転)中のベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させ得るベルト式濃縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るベルト式濃縮機が採用した手段は、一対のローラに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルトと、この無端ベルト上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口と、この無端ベルトの他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口と、この無端ベルトの下方にこの無端ベルトを透過した透過水を排出する排水口とが設けられたベルト式濃縮機において、前記無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くための複数の汚泥セパレータが前記無端ベルト面に接して配設されると共に、これらの汚泥セパレータ内に、前記無端ベルトを洗浄するための洗浄スプレイが収納されたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項2に係るベルト式濃縮機が採用した手段は、請求項1に記載のべルト式濃縮機において、前記洗浄スプレイが、前記ベルト搬送方向に対して略直角方向に拡散するスプレイパターンを有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項3に係るベルト式濃縮機が採用した手段は、請求項1または2に記載のべルト式濃縮機において、前記ベルトの上方にベルト搬送方向に対して略直角方向に配置された給水ヘッダー管と、この給水ヘッダー管の直下に配置された前記洗浄スプレイとが接続配管によって略垂直方向に接続されると共に、前記汚泥セパレータが、この接続配管に昇降自在に取り付けられたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項4に係るベルト式濃縮機が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載のベルト式濃縮機において、洗浄スプレイが収納された前記汚泥セパレータが、ベルト搬送方向に対して略千鳥状に配置されたことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項5に係るベルト式濃縮機の運転方法が採用した手段は、一対のローラに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルトと、この無端ベルト上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口と、この無端ベルトの他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口と、また、この無端ベルトの下方にこの無端ベルトを透過した透過水を排出する排水口とが設けられたベルト式濃縮機の運転方法において、前記無端ベルト面に接して配設される複数の汚泥セパレータによって前記無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くとともに、汚泥セパレータによって汚泥が鋤かれた無端ベルト面を洗浄水により洗浄を行うことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項6に係るベルト式濃縮機の運転方法が採用した手段は、請求項5に記載のベルト式濃縮機の運転方法において、前記ベルト搬送方向に対して略直角方向に拡散するスプレイパターンで洗浄を行うことを特徴とするものである
【0021】
本発明の請求項7に係るベルト式濃縮機の運転方法が採用した手段は、請求項5または6に記載のべルト式濃縮機の運転方法において、前記無端ベルトの上方にベルト搬送方向に対して略直角方向に配置された給水ヘッダー管と、この給水ヘッダー管の直下に配置された前記洗浄スプレイとが接続配管によって略垂直方向に接続されると共に、この接続配管に昇降自在に取り付けられた汚泥セパレータが、無端ベルト面から浮かないような水量の洗浄水を前記洗浄スプレイに供給しつつ、前記無端ベルト上面を洗浄することを特徴とするものである。
【0022】
本発明の請求項8に係るベルト式濃縮機の運転方法が採用した手段は、請求項5乃至7のうちの何れか一つの項に記載のベルト式濃縮機の運転方法において、洗浄スプレイが収納された前記汚泥セパレータを、ベルト搬送方向に対して略千鳥状に配置して洗浄を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るベルト式濃縮機は、一対のローラに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルトと、この無端ベルト上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口と、この無端ベルトの他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口と、この無端ベルトの下方にこの無端ベルトを透過した透過水を排出する排水口とが設けられたベルト式濃縮機に関する。
【0024】
そして、本発明の請求項1に係るベルト式濃縮機によれば、前記ベルトにより搬送される汚泥を鋤くための複数の汚泥セパレータが前記ベルト面に接して配設されると共に、これらの汚泥セパレータ内に前記無端ベルトを洗浄するための洗浄スプレイが収納されたので、汚泥を搬送しつつ濃縮(運転)中の無端ベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させることが出来る。
【0025】
また、本発明の請求項2に係るベルト式濃縮機によれば、前記洗浄スプレイが、前記ベルト搬送方向に対して略直角方向に拡散するスプレイパターンを有するので、前記洗浄スプレイを複数ベルト幅方向に配設することによって、ベルト幅方向に亘りほぼ均一な洗浄効果を得ること出来る。
【0026】
更に、本発明の請求項3に係るベルト式濃縮機によれば、前記ベルトの上方にベルト搬送方向に対して略直角方向に配置された給水ヘッダー管と、この給水ヘッダー管の直下に配置された前記洗浄スプレイとが接続配管によって略垂直方向に接続されると共に、前記汚泥セパレータが、この接続配管に昇降自在に取り付けられたので、前記汚泥セパレータの支持部材を別途設ける必要が無くなる上、前記汚泥セパレータの自重によって、この汚泥セパレータの下端面がベルト面に接する構成が可能となる。
【0027】
また更に、本発明の請求項4に係るベルト式濃縮機によれば、洗浄スプレイが収納された前記汚泥セパレータが、ベルト搬送方向に対して略千鳥状に配置されたので、前記ベルトが周回される間に、遂次ベルトの幅方向に亘って万遍なく、前記ベルト面上の汚泥を除去して透過面を更新する一方、前記ベルトの洗浄により目詰まりを回復させ得る。
【0028】
一方、本発明の請求項5に係るベルト式濃縮機の運転方法によれば、一対のローラに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルトと、この無端ベルト上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口と、この無端ベルトの他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口と、また、この無端ベルトの下方にこの無端ベルトを透過した透過水を排出する排水口とが設けられたベルト式濃縮機の運転方法において、前記無端ベルト面に接して配設される複数の汚泥セパレータによって前記無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くとともに、汚泥セパレータによって汚泥が鋤かれた無端ベルト面を洗浄水により洗浄を行うものである。
【0029】
その結果、汚泥を搬送しつつ濃縮(運転)中の無端ベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させるベルト式濃縮機の運転方法を提供し得る。更に、濃縮汚泥濃度を同一にする場合、前記洗浄水により洗浄することによって汚泥処理量を増加させることが出来る。
【0030】
また、本発明の請求項6に係るベルト式濃縮機の運転方法によれば、前記ベルト搬送方向に対して略直角方向に拡散するスプレイパターンで洗浄を行うので、前記洗浄スプレイパターンをベルト幅方向に展開することによって、ベルト幅方向に亘りほぼ均一な洗浄効果を得ること出来る。
【0031】
更に、本発明の請求項7に係るベルト式濃縮機の運転方法によれば、前記無端ベルトの上方にベルト搬送方向に対して略直角方向に配置された給水ヘッダー管と、この給水ヘッダー管の直下に配置された前記洗浄スプレイとが接続配管によって略垂直方向に接続されると共に、この接続配管に昇降自在に取り付けられた汚泥セパレータが、無端ベルト面から浮かないような水量の洗浄水を前記洗浄スプレイに供給しつつ、前記無端ベルト上面を洗浄するので、前記汚泥セパレータが無端ベルトから遊離することなく密着し、汚泥を残すことなく除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させ得る。
【0032】
また更に、本発明の請求項8に係るベルト式濃縮機の運転方法によれば、洗浄スプレイが収納された前記汚泥セパレータを、ベルト搬送方向に対して略千鳥状に配置して洗浄を行うので、前記ベルトが周回される間に、遂次ベルトの幅方向に亘って万遍なく、前記ベルト面上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、前記ベルトの洗浄により目詰まりを回復させるベルト式濃縮機の運転方法を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
先ず、本発明の実施の形態1に係るベルト式濃縮機及びその運転方法を、以下図1乃至4を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係るベルト式濃縮機の構成を説明するための模式的断面図、図2は本発明の実施の形態1に係り、図1のA部詳細を示す部分断面図、図3は本発明の実施の形態1に係り、図2の矢視X−Xを示す断面図、図4は本発明の実施の形態1に係り、図1の矢視Y−Yを示す矢視図である。
【0034】
図1において、符号1はこのベルト式濃縮機を示しており、一対のローラ3a,3bを、各々図示しない回転軸によりフレーム4に軸支されるとともに、その排出側のローラ3bを駆動モータ(図示せず)により回転駆動し、これらのローラ3a,3bに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルト2を、汚泥の供給側から排出側へ向かって走行させている。この無端ベルト2は、金属製のメッシュ状形態をなすものやポリエステル等の合成樹脂製の濾布が、目的に応じて一般的に良く使用されている。
【0035】
汚泥は、前記ベルト式濃縮機1に供給される前に凝集剤を添加され、ラインミキサー5によって混合された後、汚泥供給ライン6を経て無端ベルト2の一端側に設けられた凝集混和槽7に受け入れられる。そして、この凝集混和槽7に設けられた撹拌車7aによって更に撹拌凝集されてフロックが形成され、前記無端ベルト2の一端側が前記凝集混和槽7の汚泥に浸漬する様に汚泥液面が制御される汚泥供給口4aから、前記無端ベルト2上へ供給される。
【0036】
前記ベルト式濃縮機1は、無端ベルト2上の一端側のこの様な汚泥供給口4aと、この無端ベルト2の他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口4bとを有すると共に、この無端ベルト2の汚泥の搬送先側が高くなるように傾斜配設されている。そしてまた、前記フレーム4は、この無端ベルト2下方に、前記汚泥が無端ベルト2の進行に伴い濃縮される際、透過された透過水を集水し、フレーム4外に排出する排水口4cを有している。
【0037】
汚泥供給口4aから前記無端ベルト2の一端側上面に供給された汚泥は、当該無端ベルト2の進行とともに汚泥自身の自重により、その水分を当該無端ベルト2を介して透過し、透過水として分離され濃縮処理される。
【0038】
濃縮された無端ベルト2上の汚泥は、スクレーパ8によって掻き取られ、濃縮汚泥として汚泥排出口4bから濃縮汚泥貯留槽(図示せず)に排出され、この貯留槽内に設置された移送ポンプにより、例えば、後工程である消化タンクへ送液される。一方、汚泥から分離された透過水は、排水口4cから分離液タンク(図示せず)へ回収され、更に、その上澄液を洗浄水タンクへ移送して、無端ベルト2の裏面から逆洗する洗浄手段9の洗浄水として再利用される。
【0039】
そして、本発明に係るベルト式濃縮機1は、前記無端ベルト2により搬送される汚泥を除去するための複数の汚泥セパレータ10が、前記無端ベルト2の上面に接して配設されると共に、これらの汚泥セパレータ10内に設けられた内部空間10aに、図2に示す如く、前記無端ベルト2を洗浄するための洗浄スプレイ11が収納されている。
【0040】
前記汚泥セパレータ10の外形形状は、図2に示す如く頂部に凸部10bを設けた円錐形や楕円円錐形が、無端ベルト2上の汚泥を効果的に除去する上で好ましい。そして、これらの汚泥セパレータ10内に閉鎖された内部空間10aを形成して、この内部空間10aに洗浄スプレイ11を収納するのが、汚泥の除去直後の無端ベルト2面を確実に洗浄できる点から好ましい。また、前記汚泥セパレータ10は、三角錘形、四角錐形等の多角錘形も適用可能である。
【0041】
そして、前記洗浄スプレイ11は、図3に示す如く、前記ベルト搬送方向2aに対して略直角方向に拡散するスプレイパターン11aを有するのが好ましい。この様なスプレイパターン11aを有する洗浄スプレイ11を、少なくとも無端ベルト2の幅方向に配置された前記汚泥セパレータ10内に複数配設することによって、前記無端ベルト2の全幅方向に亘り集中したスプレイを付与することが出来るからである。
【0042】
一方、前記無端ベルト2の上方には、図1に示す如く、複数の給水ヘッダー管12がベルト搬送方向に対して略直角方向に配置され、この給水ヘッダー管12の直下に配置された前記洗浄スプレイ11と接続配管13によって略垂直方向に接続されている。そして、前記汚泥セパレータ10の凸部10bに設けられた貫通孔10cに前記接続配管13を差し込み、この接続配管13の先端に前記洗浄スプレイ11を螺合することによって、この汚泥セパレータ10は昇降自在に取り付けられる。
【0043】
即ち、この汚泥セパレータ10自身の自重によって、前記無端ベルト2が搬送中に上下に変動しても常に無端ベルト2面に接する様に追従し、前記無端ベルト2面からの汚泥除去を効果的に行える。尚、前記洗浄スプレイ11は、必ずしも汚泥セパレータ10全てに設ける必要は無く、複数の前記汚泥セパレータ10のうちの任意の必要箇所だけ設けても良い。要は、汚泥による無端ベルト2の目詰まりが生じた箇所を洗浄できるように、汚泥セパレータ10に洗浄スプレイ11を設ければ良い。
【0044】
そして、前記給水ヘッダー管12に、図示しないポンプとフィルターを介して洗浄水を供給し、前記洗浄スプレイ11から噴出させて、汚泥を除去直後の前記無端ベルト2を洗浄する。この場合、前述した様に汚泥から分離された透過水の上澄液を洗浄水として再利用し、この透過水の上澄液を前記給水ヘッダー管12に供給して、前記洗浄スプレイ11の洗浄水とすることも出来る。
【0045】
尚、洗浄水の供給は、汚泥セパレータ10内の内部空間10aに洗浄水が充満して、汚泥セパレータ10が無端ベルト2表面から浮くことがないような水量に調節して行うのが好ましい。この様な洗浄水の供給方法によって、前記汚泥セパレータ10が無端ベルト2の上面から遊離することなく密着し、汚泥を残すことなく除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させることが出来る。
【0046】
また、洗浄スプレイ11が収納された前記汚泥セパレータ10が、図4に示す如く、ベルト搬送方向2aに対して略千鳥状に配置されるのが好ましい。前記汚泥セパレータ10と洗浄スプレイ11とをこの様に配置することによって、前記ベルト2の幅方向に亘って、万遍なく、この無端ベルト2面上に残った汚泥を除去して透過面を更新する一方、前記ベルト2の目詰まりを回復させ得るのである。
【0047】
ここで、「略千鳥状」とは、各給水ヘッダー管12に任意の個数の汚泥セパレータ10を配置し、各給水ヘッダー管12に配置されたこれらの汚泥セパレータ10が、ベルト搬送方向2aに対してほぼ千鳥状に配列された状態を言い、この様な千鳥状の配列状態も含まれる。
【0048】
<実施例>
本発明の実施の形態で説明したローラ間距離約3m、ベルト幅約1mのポリエステル繊維性の濾布のベルト式濃縮機を用い、下水処理場の最終沈殿池の底部から抜き取られた固形分濃度0.46重量%の余剰汚泥を、下記運転条件において前記洗浄スプレイを作動有無の状態で濃縮した実験結果につき以下に説明する。尚、このベルト式濃縮機の洗浄スプレイは、図2に示すような円錐形の汚泥セパレータと共に前記ローラ間の中央部より汚泥供給側に2列設けたものを用いた。
【0049】
運転条件
・汚泥処理量 :25m/h
・凝集剤 :カチオン系高分子凝集剤
・凝集剤添加率:0.28重量%(対TS)
【0050】
結果は、表1に示す通り、汚泥セパレータ内に設けられた洗浄スプレイを作動させた実施例−1において、濃縮中の無端ベルト面が更新されると共に、洗浄されて透過が促進された結果、比較例−1に比べて濃縮倍率が向上する(比較例の約8.48倍に対して、実施例は9.13倍)とともに、固形物回収率が向上することが確認された。
【表1】

【0051】
また、上記ベルト式濃縮機を用いて、上記と同一の汚泥に同一の凝集剤を添加しつつ濃縮処理するに際し、前記凝集剤の添加率と濃縮された汚泥の濃縮汚泥濃度とがほぼ同一値になる様に、投入する凝集剤と汚泥処理量を変えた実施例の結果を表2に示す。洗浄スプレイを作動させた実施例−2では、洗浄スプレイを作動させない比較例−2に比べ、汚泥の処理量が1.22倍に増加している。即ち、同一の濃縮汚泥濃度を得る場合、汚泥セパレータ内に設けられた洗浄スプレイを作動させると、汚泥の処理量を20%以上増加させることが出来るという効果が確認された。
【表2】

【0052】
次に、本発明の実施の形態2に係るベルト式濃縮機の構成を、図5乃至7を用いて以下に説明する。図5は本発明の実施の形態2に係り、図1のA部詳細を示す部分断面図、図6は本発明の実施の形態2に係り、図5の矢視Z−Zを示す断面図、図7は本発明の実施の形態2における他の実施例に係り、図5の矢視Z−Zを示す断面図である。尚、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、汚泥セパレータ10の形状に相違があり、その他は全く同構成であるから、汚泥セパレータ10とこれに関連する部分の構成についての説明に止めるものとする。
【0053】
本発明の実施の形態1においては、前記汚泥セパレータ10の外形形状は、図2に示す如く頂部に凸部10bを設けた円錐形であって、この円錐形の汚泥セパレータ10内に形成された内部空間10aに、洗浄スプレイ11を収納する構成とした。これに対し、本発明の形態2においては、前記汚泥セパレータ10は、図5,6に示す様に、円錐形を垂直方向に略半分割しその頂部に凸部10bを設けた半円錐形状であって、この半円錐形状の汚泥セパレータ10内に形成された内部空間10aに、洗浄スプレイ11を収納する構成とした。
【0054】
この際、前記汚泥セパレータ10の向きは、半円錐形のある側をベルト搬送方向2aの上流側となる様に配置するのが肝要である。この様な構成とすることにより、汚泥を搬送しつつ濃縮(運転)中の無端ベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させ、前記実施の形態1とほぼ同様な効果を得ることが出来るのである。また、前記汚泥セパレータ10は、図5,7に示す様に、四角錐の対角を垂直方向に略半分割しその頂部に凸部10bを設けた半四角錐形状であって、この半四角錐形状の汚泥セパレータ10内に形成された内部空間10aに、洗浄スプレイ11を収納する構成としても良い。
【0055】
以上説明した通り、本発明に係るベルト式濃縮機によれば、無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くための複数の汚泥セパレータが前記無端ベルト面に接して配設されると共に、これらの汚泥セパレータ内に、前記無端ベルトを洗浄するための洗浄スプレイが収納されたので、汚泥を搬送しつつ濃縮中のベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させることが出来る。
【0056】
また、本発明に係るベルト式濃縮機の運転方法によれば、無端ベルト面に接して配設される複数の汚泥セパレータによって前記無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くとともに、汚泥セパレータによって汚泥が鋤かれた無端ベルト面を洗浄水により洗浄するので、汚泥を搬送しつつ濃縮(運転)中の無端ベルト上の汚泥を除去して透過面を更新すると共に、目詰まりを解消して透過水の透過を促進させる。更に、濃縮汚泥濃度を同一にする場合、前記洗浄水により洗浄することによって汚泥処理量を増加させることが出来る。
【0057】
尚、本発明の実施の形態においては、無端ベルトの一端側が、凝集混和槽に供給される汚泥に浸漬する様に汚泥液面が制御されて汚泥供給口4aとなすベルト式濃縮機の例で説明したが、無端ベルトの一端側のフレーム上部に開口部を設け、この開口部から前記ベルト上に汚泥を供給するベルト式濃縮機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るベルト式濃縮機の構成を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係り、図1のA部詳細を示す部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係り、図2の矢視X−Xを示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係り、図1の矢視Y−Yを示す矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係り、図1のA部詳細を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係り、図5の矢視Z−Zを示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における他の実施例に係り、図5の矢視Z−Zを示す断面図である。
【図8】従来例に係るベルト式濾過装置の一実施例の一部を切欠いた側面図である。
【図9】従来例に係る汚泥濃縮装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…ベルト式濃縮機
2…無端ベルト, 2a…ベルト搬送方向
3a,3b…ローラ
4…フレーム, 4a…汚泥供給口, 4b…汚泥排出口, 4c…排水口
5…ラインミキサー, 6…汚泥供給ライン
7…凝集混和槽, 7a…撹拌車
8…スクレーパ, 9…洗浄手段
10…汚泥セパレータ, 10a…内部空間, 10b…凸部, 10c…貫通孔
11…洗浄スプレイ, 11a…スプレイパターン
12…給水ヘッダー管, 13…接続配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のローラに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルトと、この無端ベルト上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口と、この無端ベルトの他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口と、この無端ベルトの下方にこの無端ベルトを透過した透過水を排出する排水口とが設けられたベルト式濃縮機において、前記無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くための複数の汚泥セパレータが前記無端ベルト面に接して配設されると共に、これらの汚泥セパレータ内に、前記無端ベルトを洗浄するための洗浄スプレイが収納されたことを特徴とするベルト式濃縮機。
【請求項2】
前記洗浄スプレイが、前記ベルト搬送方向に対して略直角方向に拡散するスプレイパターンを有することを特徴とする請求項1に記載のベルト式濃縮機。
【請求項3】
前記無端ベルトの上方にベルト搬送方向に対して略直角方向に配置された給水ヘッダー管と、この給水ヘッダー管の直下に配置された前記洗浄スプレイとが接続配管によって略垂直方向に接続されると共に、前記汚泥セパレータが、この接続配管に昇降自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のべルト式濃縮機。
【請求項4】
洗浄スプレイが収納された前記汚泥セパレータが、ベルト搬送方向に対して略千鳥状に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載のベルト式濃縮機。
【請求項5】
一対のローラに跨って掛装された透水機能を有する無端ベルトと、この無端ベルト上の一端側に汚泥を供給する汚泥供給口と、この無端ベルトの他端側に濃縮後の汚泥を排出する汚泥排出口と、また、この無端ベルトの下方にこの無端ベルトを透過した透過水を排出する排水口とが設けられたベルト式濃縮機の運転方法において、前記無端ベルト面に接して配設される複数の汚泥セパレータによって前記無端ベルトにより搬送される汚泥を鋤くとともに、汚泥セパレータによって汚泥が鋤かれた無端ベルト面を洗浄水により洗浄を行うことを特徴とするベルト式濃縮機の運転方法。
【請求項6】
前記ベルト搬送方向に対して略直角方向に拡散するスプレイパターンで洗浄を行うことを特徴とする請求項5に記載のベルト式濃縮機の運転方法。
【請求項7】
前記無端ベルトの上方にベルト搬送方向に対して略直角方向に配置された給水ヘッダー管と、この給水ヘッダー管の直下に配置された前記洗浄スプレイとが接続配管によって略垂直方向に接続されると共に、この接続配管に昇降自在に取り付けられた汚泥セパレータが、無端ベルト面から浮かないような水量の洗浄水を前記洗浄スプレイに供給しつつ、前記無端ベルト上面を洗浄することを特徴とする請求項5または6に記載のべルト式濃縮機の運転方法。
【請求項8】
洗浄スプレイが収納された前記汚泥セパレータを、ベルト搬送方向に対して略千鳥状に配置して洗浄を行うことを特徴とする請求項5乃至7のうちの何れか一つの項に記載のベルト式濃縮機の運転方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−272630(P2008−272630A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117313(P2007−117313)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【特許番号】特許第4016064号(P4016064)
【特許公報発行日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】