説明

ベルト張力測定装置

【課題】周囲の音や光などの外乱に左右されないベルトの張力測定を可能にする。
【解決手段】ピアノ線など長尺軽量の接触子6の一端6aをセンサハウジング12に固定する。接触子6の中間部は、コイル9を巻回した永久磁石8の磁極7、7に対向して所定間隔をあけて位置させる。接触子6は、その接触部6bを、指などで弾いて振動されるベルト4に接触して使用される。電流検出部10は、接触子6と磁極7、7との間隔の変動によってコイル9に生起される電流を測定し、コントローラ11は、検出電流の変動周期を固有振動周期とみなして、張力算出式を使用してベルト張力を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト張力測定装置に関するものであり、特に、ベルトを振動させて、その振動周波数または振動周期に基づいてベルトの張力を測定するベルト張力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベルト伝動装置を所定の状態で運転するために、プーリ間に架けたベルトの張力が適正なベルト張力であるかどうかを測定し確認する必要がある。従来、ベルト張力測定装置や測定方法は種々提案されている。例えば、特許文献1に記載された張力測定装置は、中央に設けた接触子および圧力センサと両端に設けた基準部を有する基準板を備える。この基準板をベルトに押し付けてベルトを撓ませ、基準板中央に設けた基準部がベルトに当接するまでベルトを撓ませ、そのときの圧力センサの出力によって、所定の撓みをベルトに生じさせた荷重を代表させる。そして、その荷重の値と、所定値の撓み量と、基準部間の距離とに基づき、周知の張力算出式を使用してベルト張力を算出する。
【0003】
また、特許文献2には、ベルトの張力を代表する固有振動数データを検出する装置として、光マイクロフォンで検出されたベルトの振動周期を測定する周期測定手段と、測定された周期を時系列的に記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された周期のうち、振動終期の予定個数分の代表値を固有振動数データとして算出する代表値算出手段とを備えた装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献3には、 マイクロフォンで検出されたベルトの振動波形に基づいてベルトの固有振動数を測定し、測定した固有振動数に基づいて張力を測定する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−057136号公報
【特許文献2】特開2001−304993号公報
【特許文献3】特開平11−241961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置は、ベルトの中央部に基準板を押し当てる操作が必要であり、ベルト設置場所によっては、基準板の押し当て操作がやりにくいことがある。
【0007】
一方、特許文献2、3に記載された非接触式の装置では、特許文献1に記載した接触式のような制限はない。しかし、マイクロフォンで振動音を検知するものでは、周囲音の影響により、測定音に誤差が生じることがあるので、複雑な演算が必要となるという問題がある。また、光マイクロフォンを使用するものでは、測定値が、周囲の光、特に蛍光灯の光に影響されることがあり、さらなる改良が求められている。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に対して、周囲の音や光の影響を受けずにベルトの固有振動数または周期を測定でき、その固有振動数または周期に基づいてベルト張力を算出することができるベルト張力測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明は、ベルトの固有振動周期に基づき所定の張力計算式を用いてベルトの張力を算出するベルト張力測定装置において、一端をセンサハウジングに固定する支持部とし、他端を接触部とする接触子と、前記接触子の支持部と接触部との中間部分に所定間隔をおいて対向配置された磁極を有する永久磁石と、前記永久磁石に巻回されたコイルと、前記コイルに流れる電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器による検出電流の変動周期から前記ベルトの固有振動周期を検出する固有周期検出部と、前記検出された固有振動周期を張力計算式に入力してベルト張力を計算する張力演算部とを具備した点に第1の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記接触子が、センサハウジングに一端を固定したピアノ線である点に第2の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記接触子が、前記永久磁石の磁極と対向する部分に磁性体を有している点に第3の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、ベルトの固有振動周期に基づき所定の張力計算式を用いてベルトの張力を算出するベルト張力測定装置において、一端をセンサハウジングに固定する支持部とし、他端を接触部とする接触子と、前記接触子に設けられた第1の極板と、前記接触子に間隔をおいて対向配置された第2の極板と、前記第1および第2の極板によって形成されるキャパシタンスの変動周期から前記ベルトの固有振動周期を検出する固有周期検出部と、前記検出された固有振動周期を張力計算式に入力して、ベルト張力を計算する張力演算部とを具備した点に第4の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、ベルトの固有振動周期に基づき所定の張力計算式を用いてベルトの張力を算出するベルト張力測定装置において、永久磁石と、永久磁石に巻回されたコイルと、前記永久磁石の磁極に接着されたクッション部分と、前記クッション部分に対して前記磁極との接着面の反対側に接着された磁性体プレートと、前記コイルに流れる電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器による検出電流の変動周期から前記ベルトの固有振動周期を検出する固有周期検出部と、前記検出された固有振動周期を張力計算式に入力してベルト張力を計算する張力演算部とを具備した点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
第1の特徴を有する本発明の使用時は、張力測定対象であるベルトに、ベルトを指先などで弾いて振動を与え、ベルトが振動している状態で接触子の先端(支持部とは反対側の接触部)をベルトに接触させる。その結果、接触子がベルトの振動に追従して振動する。この振動によって接触子の前記中間部分と磁極との対向間隔が変動し、電磁誘導により、コイルに電流が流れる。この電流は接触子と磁極との対向間隔に応じて変化するので、電流検出器から出力する検出信号はベルトの振動周期に対応して変化する。ベルトの振動周期は振動開始からしばらくするとベルトの固有振動周期となる。したがって、電流検出器の検出信号に基づいて固有振動周期を検出することができる。そして、この固有振動周期を張力算出式に導入して張力を求めることができる。
【0015】
第2の特徴を有する本発明によれば、接触子を細いピアノ線で構成するので、ベルトの振動を妨げるような大きい接触圧力を伴うことなくベルトの振動を接触子の振動として伝達できる。
【0016】
第3の特徴を有する本発明によれば、接触子に磁性体を設けることにより、永久磁石と接触子とで形成される磁気回路の磁気効率が上るので、検出精度を高めることができる。
【0017】
第4の特徴を有する本発明によれば、接触子がベルトの振動に追従して振動することによって接触子に設けられた第1の極板と、第2の極板に対向配置されている第2磁極との対向間隔が変動し、キャパシタンスが変化する。この変化するキャパシタンスは第1の極板と第2の極板との対向間隔に応じて変化するので、このキャパシタンスの変化周期はベルトの振動周期に対応する。ベルトの振動周期は振動開始からしばらくするとベルトの固有振動周期となる。この固有振動周期を張力算出式に導入して張力を求めることができる。
【0018】
第5の特徴を有する本発明によれば、張力測定対象であるベルトに、ベルトを指先などで弾いて振動を与え、ベルトが振動している状態で、コイルが巻回された永久磁石を、磁性体プレートがベルトに接触するように位置させる。その結果、磁性体プレートがベルトの振動に追従して振動する。この振動によって永久磁石の磁極と磁性体プレートとの対向間隔が変動し、電磁誘導により、コイルに電流が流れる。この電流は接触子と磁極との対向間隔に応じて変化するので、電流検出器から出力する検出信号はベルトの振動周期に対応して変化する。ベルトの振動周期は振動開始からしばらくするとベルトの固有振動周期となる。この固有振動周期を張力算出式に導入して張力を求めることができる。
【0019】
このように、本発明によれば、ベルトを撓ませてその撓み量からベルト張力を求める装置とは異なり、接触子または磁性体プレートをベルトの振動部分のいずれかに軽くあてがうだけでよいので、ベルト正面から装置またはジグを押し当てて張力測定するのと異なり、張力測定位置について制限が少ないので、測定が容易である。
【0020】
また、周囲音や周囲光の影響を受けない測定値が得られるし、周囲音や周囲光を気にせず、任意のタイミングで測定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る張力測定位置のシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る張力測定装置のコントローラの要部機能ブロック図である。
【図3】ベルトの固有振動数測定値の例を示す第1の図である。
【図4】ベルトの固有振動数測定値の例を示す第2の図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る張力測定位置の検知部の正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る張力測定位置の検知部の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る張力測定位置による測定態様を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る張力測定装置適用したベルト伝動装置の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るベルト張力測定装置のシステム構成図である。同図において、ベルト伝動装置1は、例えば、自動車用エンジンに用いられるベルト伝動装置であり、プーリ2、3間に架けられたベルト4を有する。ベルト張力測定装置5は、線状の接触子6と、接触子6に磁極7、7が対向配置される永久磁石8と、永久磁石8に巻回されたコイル9とを有する。電流検出器10は、コイル9に流れる電流を測定する。コントローラ11は、電流検出器10で検出された電流値に基づいて接触子6の振動数を演算する演算部(マイクロコンピュータ)を有する。
【0023】
永久磁石8、コイル9、および電流検出器10からなる検出部Dは、センサハウジング12内に収容固定されており、接触子6の一端(支持部)6aは、磁極7、7との間に間隙を維持してセンサハウジング12の外面に片持ち支持様態で固定される。センサハウジング12は、樹脂材料で形成され、磁極7、7と接触子6との対向部分は、薄肉にするか、磁極7、7の端面に合わせて開口されている。
【0024】
接触子6は、先端部(接触部)6bが測定対象物であるベルト4に当接して、ベルト4の振動を抽出する部材である。したがって、ベルト4の自由な振動をできるだけ妨げないように、軽量な部材、例えば、0.5mm〜1.0mm程度の直径を有するピアノ線を採用するのが好ましい。
【0025】
上記構成において、例えばベルト4の上面に接触子6を当接させた状態で、ベルト4を指などで弾いて、振動させる。このベルト4の振動は接触子6に伝達されて、接触子6を振動させる。接触子6の振動により接触子6と磁極7、7との距離が変動する。この距離の変動によって起電力が生じ、コイル9に電流が流れる。電流の変動周期は、接触子6の振動周期に対応する。電流検出器10は、この周期で変動する電流値を検出信号として出力する。
【0026】
ベルト4は、該ベルト4の形状および材質等と、プーリ2、3の中心間距離(スパン)とに従って固有の振動数または周期で振動する。したがって、電流検出器10から出力される検出信号の変動周期は、ベルト4の固有振動周期を表す。
【0027】
図2は、コントローラ11の要部機能ブロック図である。図2において、コントローラ11は、固有周期検出部13と、張力演算部14と、パラメータ入力部15と、張力表示部16とを有する。張力表示部16は、張力演算部14で算出された張力の値を表示する装置であり、周知の液晶表示装置で構成することができる。固有周期検出部13は、波形整形器17、ラッチ18、周期記憶部19、周期比較部20、安定周期記憶部21、および最大グループ検出部22を含んでいる。
【0028】
固有周期検出部13は、電流検出器10から入力される検出信号を波形整形器17に取り込んで、矩形波に整形する。この矩形波の周期は1周期毎にラッチ18に保持され、周期記憶部19に入力順に記憶する。ベルト4は、当初、衝撃音や高調波を含む不規則な周期で振動するが、やがては、ベルトの固有振動数で振動する。したがって、周期記憶部19に記憶される矩形波の周期も、当初変動するが、やがては、固有振動数に応じた規則的な周期(t)となる。
【0029】
周期記憶部19に記憶された周期を示すデータは、周期比較部20で、予め設定した基準周期と比較される。周期比較部20は、基準周期から予定範囲内にある矩形波を検出する。基準周期から予定範囲内にある連続する矩形波(安定波形)は、1つのグループとして安定周期記憶部21に記憶される。このような安定波形は、複数検出されるので、最大グループ検出部22では複数の安定波形のうち、連続数が最も大きい安定波形のグループを検出する。検出された安定波形のグループの周期をベルト4の固有周期とみなして、張力演算部14に入力する。
【0030】
パラメータ入力部15は、ベルト振動部長さ(L)および線密度(A)を入力する操作部である。ここで、ベルト振動部長さ(L)はプーリ2、3の径が同一の場合は、プーリ2、3の中心軸間距離に等しい。線密度(A)は、ベルト4の単位長さあたりの質量である。
【0031】
張力演算部14は、固有周期検出部13で検出された固有周期(t)と、パラメータ入力部15から入力されたベルト振動部長さ(L)および線密度(A)とから、以下の式(式1)に基づいてベルト張力(T)を演算する。
【0032】
T=4×L×A×(1/t)…(式1)。
【0033】
ここで、ベルト張力(T)の単位は(N)であり、ベルト振動部長さ(L)の単位は(m)、ベルト線密度(A)の単位は(kg/m)、周期(t)の単位は(s)である。
【0034】
演算されたベルト張力(T)の値は、張力表示部16に入力されて張力表示に供される。
【0035】
本実施形態の張力測定装置5は、接触子6をベルト4に接触させてベルト4の振動を検出するものであるから、接触子6の接触圧力が、ベルト4の固有振動周期に影響を与えることが想定される。そこで、本発明者等は、ベルト4に対する接触子6の接触態様が固有振動数の測定値に及ぼす影響を調査した。
【0036】
図3、図4は、ベルト振動数の測定結果を示す図である。図3は、接触子6が0.55mm径のピアノ線の例を示し、図4は、接触子6が0.9mmのピアノ線の例を示す。なお、接触子6の長さ(支持部6aと接触部6bとの距離)はそれぞれ40mm、60mm、80mmである。図3、図4において、横軸は測定位置つまりベルト4上での接触子6の先端位置を、ベルト振動部の端部からの距離(mm)で示す。縦軸は周波数(Hz)であり、測定回数20回分の平均値のベルト振動部長さ(L)は150mmである。接触子6をベルト4に接触させる圧力(接触荷重)は10グラムおよび20グラムの2種類である。なお、比較のため、マイクロフォンで検出したベルト振動音に基づいて固有振動数を検出する方法(例えば、特許文献3に記載されている方法)で測定した振動数を示す。
【0037】
図3において、振動数の平均値とマイクロフォンによる測定値との偏差はベルト測定位置が振動部長さ(L)の中央部(75mm)であるときに最も大きく、ベルト測定位置が振動部長さ(L)の端部に近づくにつれてマイクロフォンによる測定値と大差ないまでに小さくなっているのが分かる。接触荷重が10グラムであって接触子6の長さが40mm、60mmの例では、すべての測定位置で、マイクロフォンによる測定値からの偏差が他よりも小さい。
【0038】
図4に示したピアノ線の径が0.9mmの例では、長さ40mmの接触子6では、接触荷重が10グラム、20グラムのいずれの場合も、ベルト振動部分の端部から中央寄りに離れると、急激に測定値がマイクロフォンによる測定値から離れる。その他の例では、測定位置がベルト振動部分中央部に寄るほど、マイクロフォンによる測定値よりも小さい方向に離れていっている。この中でも、接触子6の長さが80mmと長く、接触荷重が20グラムの例では、広い範囲の測定位置で、マイクロフォンによる測定値と大差ない結果が得られている。
【0039】
要するに、接触子6の長さと接触荷重を選択して測定すれば、再現性の高い振動周波数(または周期)を測定できることが分かる。また、測定位置をベルト振動部分の端部つまりプーリ2、3寄りにすれば、接触子長さおよび接触荷重に幅をもたせることができるのが分かる。
【0040】
図5は、張力測定装置の検出部Dの具体的な例を示す正面図、図6は、同平面図である。図1に示したシステム構成図では、検出部Dはコの字またはU字形の磁極を有するものを示したが、図5の例では、永久磁石8は、棒状(I形状)磁石である。センサハウジング12は、樹脂製の円筒形であり、永久磁石8は、センサハウジング12の円筒形の中心軸上、つまりセンサハウジング12の中心部に配置されている。接触子6は、その一端6aでセンサハウジング12の側面に接着剤等によって接合され、途中に形成された屈曲部6cと、永久磁石8の磁極8aの上を通過して接触部6bに延びる直線部8eとを有する。
【0041】
図7は、図5に示した張力測定装置の検出部Dの接触子6をベルトに接触させている測定時の態様を示す図である。図6に示すように、接触子6の直線部6eがベルト4の下面(上面であってもよい)4Sに対して15度の接触角度θとなるように接触子6を接触させる。接触角度θは15度が好適であったが、この角度に限定されない。
【0042】
なお、接触子6はピアノ線等、線材のみであってもよいが、磁極と対向する部分、例えば、前記直線部6eに磁性体を取り付けて、磁気回路の効率を良くすることもできる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図8は、第2実施形態に係る張力測定装置適用したベルト伝動装置の要部側面図である。図8において、棒状の永久磁石23の先端面(磁極面)には、ウレタンからなるクッション部分24が接着されており、さらに、クッション部分24の端面(永久磁石23に接着された面とは反対側の面)には磁性体のプレート25が接着される。プレート25は、永久磁石23の先端部およびクッション部分24を保護する樹脂製のキャップ26の底部に配置するのがよい。永久磁石23にはコイル27が巻回され、該コイル27を流れる電流を検出する電流検出器28が設けられる。
【0044】
図8に示した張力測定装置を使用する場合、ベルト4を指等で弾いて振動させ、その状態でキャップ26をベルト4の上面に接触させるように張力測定装置を位置決めする。このときの接触荷重はベルト4の振動周波数に応じて変動し、この変動に対応した圧縮量でクッション部分24が変形(圧縮)し、プレート25と磁極面との間隔が変動する。その結果、コイル27に起電力が生じ、電流が流れる。このときの電流の変動周期に基づいて、第1実施形態と同様、ベルト4の振動周波数または振動周期によって固有振動数または固有周波数を算出し、式1を使用して張力を求めることができる。第2実施形態のプレート25は第1実施形態の接触子6に相当する。
【0045】
上述のように、第1、第2実施形態では、ベルト4に接触させる接触子6または金属プレート25を設け、永久磁石8または23と接触子との距離の変動に応じて変動する電流値に基づいて固有振動数または周期を算出した。この方式を電磁式と呼ぶ。そして、本発明は、この電磁式の検知部Dに限らず、静電容量式、圧電式、光学式等に変形可能である。
【0046】
例えば、静電容量式では、接触子6に平面部(第1の極板)を設け、この第1の極板と対向するように第2の極板を設ける。第2の極板は、センサハウジング12内にコイルや永久磁石に代えて取り付けるのがよい。この構成において、第1の極板と第2の極板とによってキャパシタが形成される。このキャパシタでは、接触子6の振動に応じて第1の極板と第2の極板との間隔が変動し、静電容量が変化するので、この静電容量の変化周期に基づいて接触子6の振動数を算出することができる。
【0047】
また、圧電式は、センサハウジング12側に、コイルや永久磁石に代えて圧電素子を配置する。電磁式とは異なり、圧電素子は接触子6に所定圧力で当接させておく。こうして、接触子6を振動させたベルト4の上面に接触させると、接触子6はベルト4の振動に追従して振動する。この接触子6の振動によって圧電素子と接触子6との当接圧力が所定圧力から変化し、その変化に応じて圧電素子の出力も変動する。したがって、この圧電素子の出力変動の周期によって、ベルト4の振動周期を求めることができる。
【0048】
さらに、光学式では、センサハウジング12内のコイルや永久磁石に代えて受光素子と発光素子とを有する光センサを設ける。一方、接触子6に光反射面を形成し、この光反射面に対向するように光センサを配置する。発光素子は、光反射面に光を照射し、受光素子は光反射面による反射光を受光して受光量に応じた検出信号を出力する。この構成によれば、接触子6の振動に応じて、光センサと光反射面との間隔が変化するので、この変化に応じて受光素子の受光量が変化し、その結果、受光素子の検出信号が、接触子6の振動周期で変動する。したがって、接触子6をベルト4の上面に接触させて接触子6を振動させれば、その振動周期は受光素子の出力の変動周期として抽出することができる。
【0049】
このように、電磁式の他、静電容量式、圧電式、光学式等、各種変位検出手段を適用した検出部Dで本発明を構成することができる。
【0050】
なお、圧電式の他の例として、接触子6の先端に圧電素子を取り付け、この圧電素子を振動させたベルト4の上面に接触させるようにしてもよい。この例によれば、ベルト4の振動周期でベルト4から圧電素子にかかる圧力が変化し、この圧電素子の出力変動の周期によって、ベルト4の振動周期を求めることができる。
【0051】
上述の実施形態によれば、周囲音や周囲光の影響を受けない正確な測定値を得ることができる。なお、検出部Dを光学式とした場合、周囲光の影響を全く受けないことはないが、ベルトの反射光を直接感知するのとは異なり、ベルトから離れた位置で接触子と検出部Dとの対向部間に光センサを配置できるので、遮光装置を設けやすいという効果がある。
【0052】
また接触子6は、小さい面積でベルト4の表面に接触することができるので、ベルト4上の限定された領域の張力を検出することができる。したがって、幅広ベルトのプーリ近傍における幅方向位置で張力が異なることがあるという装置で、領域を限定して正確にベルト張力を測定することができる。
【0053】
第1実施形態では、接触子6をピアノ線で針状に構成したが、接触子6はこれに限らず、ベルト4の振動に影響を与えにくい軽量素材(例えば樹脂)で形成した長尺板であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…ベルト伝動装置、 2、3…プーリ、 4…ベルト、 5…ベルト張力測定装置、 6…接触子、 7…磁極、 8、23…永久磁石、 9、27…コイル、 10…電流検出器、 11…コントローラ、 12…センサハウジング、 13…固有周期検出部、 14…張力演算部、 15…パラメータ入力部、 16…張力表示部、 24…クッション部分、 25…プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの固有振動周期に基づき所定の張力計算式を用いてベルトの張力を算出するベルト張力測定装置において、
一端をセンサハウジングに固定する支持部とし、他端を接触部とする接触子と、
前記接触子の支持部と接触部との中間部分に所定間隔をおいて対向配置された磁極を有する永久磁石と、
前記永久磁石に巻回されたコイルと、
前記コイルに流れる電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器による検出電流の変動周期から前記ベルトの固有振動周期を検出する固有周期検出部と、
前記検出された固有振動周期を張力計算式に入力して、ベルト張力を計算する張力演算部とを具備したことを特徴とするベルト張力測定装置。
【請求項2】
前記接触子が、センサハウジングに一端を固定したピアノ線であることを特徴とする請求項1記載のベルト張力測定装置。
【請求項3】
前記接触子が、前記永久磁石の磁極と対向する部分に磁性体を有していることを特徴とする請求項1記載のベルト張力測定装置。
【請求項4】
ベルトの固有振動周期に基づき所定の張力計算式を用いてベルトの張力を算出するベルト張力測定装置において、
一端をセンサハウジングに固定する支持部とし、他端を接触部とする接触子と、
前記接触子に設けられた第1の極板と、
前記接触子に間隔をおいて対向配置された第2の極板と、
前記第1および第2の極板によって形成されるキャパシタンスの変動周期から前記ベルトの固有振動周期を検出する固有周期検出部と、
前記検出された固有振動周期を張力計算式に入力して、ベルト張力を計算する張力演算部とを具備したことを特徴とするベルト張力測定装置。
【請求項5】
ベルトの固有振動周期に基づき所定の張力計算式を用いてベルトの張力を算出するベルト張力測定装置において、
永久磁石と、
永久磁石に巻回されたコイルと、
前記永久磁石の磁極に接着されたクッション部分と、
前記クッション部分に対して前記磁極との接着面の反対側に接着された磁性体プレートと、
前記コイルに流れる電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器による検出電流の変動周期から前記ベルトの固有振動周期を検出する固有周期検出部と、
前記検出された固有振動周期を張力計算式に入力して、ベルト張力を計算する張力演算部とを具備したことを特徴とするベルト張力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−33573(P2011−33573A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182427(P2009−182427)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(592097956)株式会社河内研究所 (1)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【Fターム(参考)】