説明

ベルト搬送装置および画像形成装置

【課題】画像形成装置において、転写ベルトの片寄りや蛇行を抑制すると共に、転写ベルトを早期に破損させることのない転写ベルト搬送装置を提供する。
【解決手段】ドライブローラ7とアイドルローラ6によりシート状のベルト4を搬送するベルト搬送装置において、両ローラのうち少なくとも一方のローラの円周面に、ベルトとの間で高い摩擦力を生じる素材により、螺旋状にかつ左右対称に螺旋摩擦層12を形成する。更に、該ローラ6の中央にも摩擦層11を形成し、アイドルローラ6の端部にはフランジ14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を用いたプリンタ、FAX、複写機等の画像形成装置における転写ベルト搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置においては、感光体上のトナー像を転写装置で転写を行い、その後定着装置で当該記録媒体に記録画像を定着するものがある。特開平6−27835公報に記載されている転写・定着装置は、転写装置における転写ベルトの蛇行規制を行なうものであり、回転中の転写ベルトをフランジへ向けて寄せるための補正部材が転写ベルトの内側に設けられている。即ち、この補正部材は、一つの支持軸と、この支持軸に回転可能に取付けられた5個のコロを有する。感光体と転写用ローラの間を通過した転写ベルトは定着部へ移動する。このとき補正部材の5個のコロが転写ベルトの内面に摺接しているので、転写ベルトは定着部へ入る前にこれらのコロによりフランジの方向へ寄るようになる。このような機構により、転写ベルトの片寄りや蛇行を抑制するものである。
【特許文献1】特開平6−27835公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示される構成の装置では、転写ベルトの蛇行を防ぐことは出来ても、転写ベルトが常にフランジに当接する。そのため転写ベルトの端部がフランジに押し当てられる力(側圧)が大きい程ベルト端部への負荷が大きくなり、フランジに当接する転写ベルトの縁部が破損してしまう。その結果転写ベルト自体が転写ベルト搬送装置の寿命より早く破損してしまうという弊害が生じる。
【0004】
このため本発明が解決しようとする課題は、電子写真方式を用いた画像形成装置において、転写ベルトの片寄りや蛇行を抑制すると共に、転写ベルトを早期に破損させることのない転写ベルト搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における特許請求の範囲の請求項1は、ドライブローラとアイドルローラによりシート状のベルトを搬送するベルト搬送装置において、両ローラのうち少なくとも一方のローラの円周面に、ベルトとの間で高い摩擦力を生じる素材により、螺旋状にかつ左右対称に螺旋摩擦層を形成したベルト搬送装置である。
【発明の効果】
【0006】
これにより電子写真方式を用いた画像形成装置において、転写ベルトの片寄りや蛇行を抑制することができ、かつ転写ベルトを早期に破損させることのない転写ベルト搬送装置を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1の実施の形態)
図2は第1の実施の形態に係る画像形成装置1を示す概略構成図である。図2において、画像形成装置1には画像形成ユニット2a、2b、2c、2dが横方向に4個並設され、各画像形成ユニット2a、2b、2c、2dには現像装置21とそれぞれ色の異なるトナーが収容されており、カラー印刷が可能である。
【0008】
各画像形成ユニット2a、2b、2c、2dには感光体3が所定の回転速度で回転可能に設けられている。感光体3の表面はLEDヘッド20により静電潜像を形成することができる。更に現像装置21によって、当該感光体3表面の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を現像する。感光体3の下方には転写部材としての転写ベルト4と転写ローラ5が配設されている。感光体3上のトナー像は転写ローラ5によって、当該感光体3から記録媒体Pへ転写される。
【0009】
転写ベルト4はアイドルローラ6とドライブローラ7の間に回転可能に掛け渡され、ドライブローラ7の駆動力により回転する。前記転写ローラ5は感光体3表面のトナー像を記録媒体Pに転写させるもので、感光体3の直下にそれぞれ設けられる。転写ベルト4の下方には、転写ベルト4上に残ったトナーをクリーニングするクリーニングブレード8が設けられている。
【0010】
画像形成装置1の下方には媒体トレイ22が設けられている。媒体トレイ22は記録媒体Pを収納するもので、記録媒体Pはホッピングローラ23により1枚ずつ搬送路24に繰出すようになっている。搬送路24には、記録媒体Pを転写ベルト4に斜行させずに搬送するためのレジストローラ(プレッシャ)25および記録媒体Pを転写ベルト4に搬送するためのレジストローラ(フィード)26が設けられている。
【0011】
前記ドライブローラ7の搬送方向下流側には加熱ローラ27と加圧ローラ28からなる定着器29が設けられている。定着器29は記録媒体P上に転写されたトナーを熱により記録媒体Pに定着させる。定着器29の搬送方向下流側には排出ローラ30、31が設けられ、定着後の記録媒体Pを排出部32に排出するようになっている。
【0012】
図1は第1の実施の形態を示すアイドルローラ6の説明図である。当該アイドルローラ6はベルトの蛇行防止機能を発現させる摩擦層の模様を有する。ここで、本発明を実施するための最良の形態において、ベルトの「蛇行」とは、ベルトが左に寄ったり、右に寄ったりして左右に振られて走行する状態のみならず、片方に片寄って走行する状態を含むものとする。
【0013】
当該アイドルローラ6は、ローラ素地13よりも摩擦力の高い素材からなる薄膜の摩擦層11、12−1、12−2を有する。ローラ中央部に形成される中央摩擦層11は、ローラ軸10に対し垂直に、周方向帯状に形成されたものである。一方、ローラ中央部から両端部へ向けて形成される螺旋状の螺旋摩擦層12は、中央から左方向の螺旋摩擦層12−1は中央から見て右回りの螺旋模様を描き、中央から右方向の螺旋摩擦層12−2は中央から見て左回りの螺旋模様を描いている。なお、14はアイドルローラ6の端部に設けられたフランジであり、ローラ軸10に自由回転する構造となっている。
【0014】
また、ここに形成される螺旋模様の旋廻方向と、図1に示されるアイドルローラ6の回転方向との関係は以下の通りである。即ち、中央から左端へ向かっての螺旋摩擦層12−1の旋廻方向はアイドルローラ6の回転方向(ベルトの走行方向)は同一であり、また中央から右端へ向かっての螺旋摩擦層12−2の旋廻方向もアイドルローラ6の回転方向と同一である。
【0015】
中央摩擦層11、螺旋摩擦層12は画像形成装置1の走行において発生する熱量に対して十分に耐えうるものであり、温度による環境依存性の小さくなるような、Tg≧70℃の樹脂で形成され、膜厚200μmの薄膜によって形成される。
【0016】
また、ローラ素地13とはPOM(Poly Oxy Methyleneポリアセタール)樹脂で形成されたローラであり、中央摩擦層11、螺旋摩擦層12はその表面粗さがドライブローラ7の表面粗さと同等であり、表面粗さRmaxが100μm程度である。なお、表面粗さRmaxとは、断面曲線を基準長さLを抜き取った部分の最大高さを求めてマイクロメートル(μm)で表した値である。
【0017】
アイドルローラ6の素地は樹脂による成型に限られたものではなく、金属ローラであってもよく、セラミック粉体でローラ表面を処理し、表面粗さRmaxを100μm程度にしたものを用いてもよい。アイドルローラ6は、同端部に設置されたフランジ14の組成と同一であることが望ましい。また、中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の形成は樹脂の塗布による形成に限られるものではなく、セラミック粉体によってローラ表層を処理することでローラ全体を高摩擦体にした後、ローラ表層を研磨し、高摩擦部分が本実施例に代表されるような模様を築いたものであってもよい。
【0018】
図3はフランジ部分を除いたアイドルローラ6−1部分の詳細を示す説明図である。アイドルローラ6の直径はφ=25.0mm、幅は218mmである。螺旋摩擦層12の模様幅a(a=15mm)は中央摩擦層11の模様幅2aの1/2である。即ち、螺旋摩擦層12の幅よりも中央摩擦層11の幅の方が広い。これは螺旋摩擦層12が転写ベルト4の走行によって生じるローラ端部方向への摩擦力が図1に示されるような力関係(f1=f2)を維持するための条件である。なお、中央摩擦層11と螺旋摩擦層12の間は間隔(0.5a)を空けてもよい。
【0019】
更に、螺旋摩擦層12はアイドルローラ6の軸方向に対して一定の角度(θ)(本発明では60°)有し、θを調節することで転写ベルト4に加える力を調節することが可能であり、θは本実施例に限られるものではなく、その摩擦幅もこれに限定されるものではない。
【0020】
図4はアイドルローラ6のフランジ部分の説明図である。アイドルローラ6の端部には、ローラ軸10に対し自由回転するフランジ14が取り付けられている。これは、転写ベルト4の走行中に転写ベルト4をフランジ14に押し当てることで、転写ベルト4の蛇行を規制する機能を有するものであるが、本実施例では蛇行防止機能を有するとともに、転写ベルト装着時における初期位置を決定させるための補助する機能を有する。
【0021】
フランジ14の材料はPOM樹脂が好ましく、フランジ14は図4に示す通りテーパー形状を特色とする。テーパー14−1の部分は転写ベルト4に接することは無く、内側の円筒部分14−2(200μm以上)のみ接する形となる。フランジ14は型で作成しても良いし、ストレートフランジを切削して作成しても良い。
【0022】
図5はドライブローラ7の外観を示す説明図であり、図6は画像形成装置1の転写ベルトユニット40の平面図である。転写ベルト4はドライブローラ7とアイドルローラ6の間に掛け渡され、ドライブローラ7に連結されたモータ16により駆動される。ドライブローラ7とアイドルローラ6の間に、図2にて示した転写ローラ5が4本配置されている。前記記録媒体Pが転写ベルト4に乗って矢印A方向に搬送されると、転写ローラ5により、夫々のカラートナー像が転写される。そして、前記定着器29へ記録媒体Pを搬送する。このとき転写ベルト4はフランジ14に常に接しながら回転している。
【0023】
転写ベルト4の材料としてはPAI(Polyamide imideポリアミド・イミド)樹脂で形成されるが、これに限定されるものではなく、耐久性や機械的特性の観点からベルト駆動時の張力変形が一定範囲である材料が望ましい。また、蛇行防止手段との摺動を繰り返し受けることによる、端部磨耗、端部オレ、ワレ等のダメージを受けにくい材料であることが望ましく、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−四フッ化エチレン共重合体等の樹脂及び、これら各々を主体とした混合物を用いても構わない。
【0024】
転写ベルト4を回転成型にて製造するにあたり、その溶媒は使用される材料により適宜決定されるが、有機極性溶媒が良く用いられ、特にN、N−ジメチルアセトアミド類が有用であり、例えばN、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジエチルホルムアミド、N、N−ジエチルアセトアミド等があげられる。これらは単独で用いても良いし、混合して使用しても良い。
【0025】
また、本実施の形態に用いる転写ベルト4に混ぜられるカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独使用することもでき、又は複数種類のカーボンブラックを併用しても良い。これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができるが、本実施の形態に使用される転写ベルト4には、特にチャンネルブラック、ファーネスブラックが好適に用いられる。その用途によっては酸化処理、グラフト処理等の酸化劣化を防止したものや、溶媒への分散性を向上させたものを用いると好ましい。カーボンブラックの含有量については、その目的に応じ添加するカーボンブラックの種類により適宜決定されるが、本実施の形態の転写ベルト4としてはその機械的強度等から、ベルト組成樹脂固形分に対し、3−40重量%、より好ましくは3−30重量%である。
【0026】
次に第1の実施の形態の動作について説明する。ドライブローラ7の駆動により、転写ベルト4が走行し、それに伴ってアイドルローラ6が回転する。アイドルローラ6に形成された螺旋摩擦層12と転写ベルト4との接点において、アイドルローラ6が回転に伴って左右両方向に対し均等な摩擦力が発生する。図1に示したようにf1=f2となるように転写ベルト4を中央部から転写ベルト両端部方向に向かって均等な引っ張り力が生じる。即ち、中央摩擦層11により、転写ベルト4の走行方向へ摩擦力が生じ、左右の螺旋摩擦層12により端部方向に摩擦力が生じる。
【0027】
なお、本実施の形態では、中央部に形成された中央摩擦層11によって転写ベルト4を直進走行することを助ける。即ち、螺旋摩擦層12−1、12−2の作用によって生じる左右両方向の摩擦力f1、f2にわずかな差を有する場合においても、中央摩擦層11が転写ベルト4の走行に対して影響を及ぼさないものにする機能を有し、転写ベルト4の左右方向へのズレを抑制することができる。即ち、螺旋摩擦層12−1、12−2によって発生する摩擦力は中央摩擦層11からローラ端部方向へ向けて発生し、転写ベルト4を中央部から端部へ常に引っ張っているような作用をもたらす。
【0028】
以上、第1の実施の形態によれば、転写ベルト4の走行によってアイドルローラ6に形成された螺旋摩擦層12−1,12−2がローラ両端部方向へ摩擦力が発生し、常に両方向へ一定の力が生じるため、経時における転写ベルト4の蛇行を抑制することが可能となり、色ズレなどの印字不良の発生を防ぐことができる。また、前述したローラ端部方向への摩擦力によってフランジ14への側圧を一定に保つことができるため、ベルト寿命まで破損させることなく、長期にわたり安定した品質を得ることができる。
【0029】
また、本実施の形態では、摩擦層の付与はアイドルローラ6について示したが、摩擦層の形成部位はこれに限られたものではなく、ドライブローラ7へ摩擦層を形成してもよい。また、ドライブローラ7およびアイドルローラ6の両方向に摩擦層を形成した場合、ローラ間における摩擦層形成のズレが生じることが予測される。そうした場合に転写ベルト4のよれが生じ、転写ベルト4を破断させる恐れがある。そのため、摩擦層は、アイドルローラ6又はドライブローラ7の少なくともどちらか一方に形成させることが望ましい。好ましくは、ドライブローラ7と転写ベルト4との接点を十分に確保し、安定した駆動力を提供するために、摩擦層の形成はアイドルローラ6に付与することが望ましい。
【0030】
なお、ドライブローラ7へ螺旋摩擦層を形成する場合には、ドライブローラ7の螺旋摩擦層の形状は、図1に示す前記螺旋摩擦層12−1、12−2と同様である。即ち、ドライブローラの円周面の中央に中央摩擦層11を有し、螺旋摩擦層12−1、12−2の螺旋方向は、中央から左右両端部を見たとき、ドライブローラ27の回転方向と同じ回転方向である。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成要素については、同じ符号を付与する。更に、前記第1の実施の形態と同じ構成、動作についてはその説明を援用する。
【0032】
第2の実施の形態では、転写ベルト4の蛇行防止機能と、画像形成装置を休止した時に発生する転写ベルトへの模様痕の形成について説明する。前記アイドルローラ6に形成される中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の模様層厚を10〜1000μmの範囲において、その蛇行防止機能と画像形成装置休止時に発生する模様痕の発生を調査した。
【0033】
図7は摩擦層厚別における蛇行防止機能の調査のために用いたベルト耐久加速試験機50の説明図である。プリンタは直接転写又は中間転写のタンデム式プリンタを想定した。5−1はブラック、イエロー、マゼンタ、シアン4つに対応した転写ローラ(φ18)である。また、6−1はアイドルローラ(φ20)である。また、7−1はドライブローラ(φ20)であり、モータ17−1が連結されており、一定速度で回転するようになっている。
【0034】
本装置における、転写ベルト4−1に掛かるテンションは左右ともに3kgであり、転写ベルト4−1の線速は300mm/s、1P/J(2秒稼動1秒停止)、雰囲気温度50℃で稼動させている。
【0035】
図8は転写ベルト4−1の蛇行防止の評価結果と模様痕の形成の評価結果の関係を示す説明図である。先ず、アイドルローラ6−1に中央摩擦層11、螺旋摩擦層12を有するベルト耐久加速試験機50に転写ベルト4−1を装着し、稼動することで摩擦層の厚み別(単位μm)に転写ベルト4の蛇行防止機能の発現の有無を目視により観察し、4段階評価を行った。その結果を示したものが図8の上段である。
【0036】
同図中蛇行防止機能については、「○」は走行中のベルトの蛇行はほとんどなく、側圧上昇の経時変化もない状態であり、「△」はベルト蛇行の抑制効果は認められるものの有効でない状態であり、「×」はベルト蛇行の抑制効果は認められない状態を意味する。
【0037】
また、前記第1の実施の形態にあるような前記画像形成装置1が、中央摩擦層11、螺旋摩擦層12が形成されたアイドルローラ6に転写ベルト4が装着されたままの状態で休止する場合がある。このように前記画像形成装置1が休止する状態が長時間継続した場合、アイドルローラ6に形成された中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の模様痕が転写ベルト4へ形成され、それが原因で印字不良を引き起こすことが懸念される。即ち、当該中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の模様痕が転写ベルト4の幅方向に不均一に形成されるため以下のことが懸念される。(1)転写ベルト4−1を走行させると、同位置にて蛇行防止機能が働かず、逆に模様痕が形成された部分で、転写ベルト4−1が左右方向へ蛇行することが懸念される。(2)当該模様痕の程度が大きいと同部分で色ズレを誘引することが懸念される。
【0038】
そこで、本第2の実施の形態では、前記ベルト耐久加速試験機50において、当該印字不良を起こす様な模様痕が転写ベルト4−1へ形成されることのない中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の摩擦層の厚みを検証した。このため、アイドルローラ6−1に厚みの異なる中央摩擦層11、螺旋摩擦層12を形成し、摩擦層厚別(μm)に転写ベルト4−1に対する模様痕の発生の有無を4段階で評価した。即ち、厚みの異なる中央摩擦層11、螺旋摩擦層12を有するアイドルローラ6−1に転写ベルト4−1を装着し、ベルト耐久加速試験機50を高温高湿下(70℃90%RH)にて放置することにより、転写ベルト4−1に対して中央摩擦層11、螺旋摩擦層12が形成されているか否かの検証を行った。その結果を示したものが図8の下段である。
【0039】
同図中模様痕の形成については、「◎」は模様痕の形成は認められない状態であり、「○」は模様痕の形成は認められるが、わずかに認められる状態であり、「△」は模様痕の形成は認められるが、軽微であり、画像に影響を与えるレベルではない状態であり、「×」は模様痕の形成が顕著であり、印字不良を引き起こすことが懸念される状態を意味する。
【0040】
膜厚層厚による蛇行防止機能および画像形成装置1の休止時における転写ベルト4−1への模様痕の発生レベルを評価した結果、摩擦層厚が大きいほど蛇行防止能力が高く、摩擦層厚が小さいほど転写ベルト4−1への模様痕の発生が抑制されることが分かった。図8に示した結果より、模様痕の発生を抑制し、十分な蛇行防止機能を発現させるためには、数式(1)を満たす範囲が必要である。更に好ましくは、数式(2)を満たす場合に優れた蛇行防止機能と模様痕の程度を抑える機能を有する。
【0041】
20μm≦d≦500μm・・・(1)
50μm≦d≦100μm・・・(2)
d:中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の厚み
以上のことから、アイドルローラ6に形成された中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の摩擦層厚を調整することで、蛇行防止機能を有し、かつ転写ベルトユニットを高温高湿下(70℃90%RH)に長時間放置しても転写ベルト4−1へアイドルローラ6の中央摩擦層11、螺旋摩擦層12の痕の形成を軽微にすることが可能となり、画像品位を低下することなく転写ベルト4−1を直進走行させることが可能となる。
【0042】
なお、前記中央摩擦層11及び螺旋摩擦層12をアイドルローラ6に形成する場合について説明したが、前記ドライブローラ7に形成する場合についても、同様な効果を有するものである。
【0043】
本発明は、電子写真プリンタのシームレスベルト体に適応した画像形成装置に利用可能である。また、本形態の仕様は画像形成装置および転写ベルトユニットに限られたものではなく、ベルトをローラによって駆動させる機能を有する装置においても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施の形態を示すアイドルローラの説明図である。
【図2】第1の実施の形態の画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】アイドルローラ部分の詳細を示す説明図である。
【図4】アイドルローラのフランジ部分の説明図である。
【図5】ドライブローラの外観を示す説明図である。
【図6】画像形成装置の転写ベルトユニットの平面図である。
【図7】第2の実施の形態に係るベルト耐久加速試験機の説明図である。
【図8】転写ベルトの蛇行防止の評価結果と、模様痕の形成の評価結果の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 画像形成装置
4 転写ベルト
6 アイドルローラ
7 ドライブローラ
11 中央摩擦層
12 螺旋摩擦層
14 フランジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の無端ベルトと、
当該無端ベルトを駆動する駆動ローラと、
駆動ローラとともに前記無端ベルトを張架し、当該無端ベルトの走行により回転する従動ローラと、
前記駆動ローラと従動ローラのうち少なくとも一方のローラの円周面に、前記無端ベルトとの間でローラ素地より高い摩擦力を生じる素材により、螺旋状にかつ左右対称に螺旋摩擦層を形成したことを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
前記一方のローラは、従動ローラであることを特徴とする請求項1記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
前記ローラの円周面には、更に、左右対称の前記螺旋摩擦層の中央に中央摩擦層を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のベルト搬送装置。
【請求項4】
前記螺旋摩擦層の螺旋方向は、従動ローラの中央から各側端部を見たとき、従動ローラの回転方向と同じであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載のベルト搬送装置。
【請求項5】
前記従動ローラの端部には、自由回転するフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項2乃至4いずれか一に記載のベルト搬送装置。
【請求項6】
像担持体上のトナー像を記録媒体に転写した後、当該記録媒体を定着装置へ搬送する請求項1乃至5いずれか一に記載のベルト搬送装置。
【請求項7】
前記中央摩擦層及び螺旋摩擦層の厚みをdとしたとき、
20μm≦d≦500μm
の関係を有することを特徴とする請求項6記載のベルト搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のベルト搬送装置を有することを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−162794(P2009−162794A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339073(P2007−339073)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】