説明

ベルト状締結具

【課題】物品を締結するベルト状締結具の不正使用を抑止できるようにすること。
【解決手段】係止部3が、前後両側壁部8a,8bを備えた第一部材4と、抜け止め用係合片16を備えた第二部材5とに分割され、第一部材4は、前記前後両側壁部8a,8b間の底面部のみが開放した箱型に形成され、第二部材5は、第一部材4の開放底面部7に嵌合される基板部14から抜け止め用係合片16が斜めに突設されると共に、この抜け止め用係合片16の基部に近い側の基板部14の端部から係止片17が突設され、抜け止め用係合片16の基部に近い側の第一部材4の前側壁部8aには、係止片17の係合する被係止孔9cが開口9aの下側に連なるように形成され、この被係止孔9cに係合した係止片17が開口9aの下側辺を形成するように構成し、締結用ベルト部1は、係止部3の第一及び第二両部材4,5の何れか一方に連設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を結束する手段として、或いは物品に商品表示タグを締結する手段として使用されるベルト状締結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のベルト状締結具として、特許文献1に記載されるように、一側面に抜け止め用凹凸が形成された締結用ベルト部と、この締結用ベルト部の基部に連設された係止部とを備え、この係止部には、締結用ベルト部の挿通方向に適当間隔を隔てて位置すると共に締結用ベルト部が貫通する開口をそれぞれ有する前後両側壁部と、両側壁部の中間に形成されて締結用ベルト部の前記抜け止め用凹凸に係合する抜け止め用係合片とが設けられたものが知られている。このような構成のベルト状締結具を、単に一時的に線材などを結束する手段として使用する場合は問題ないが、例えば蟹などの地域特産品に産地名やブランド名を表示するタグを取り付ける手段として使用される場合、エンドユーザーに当該商品が届くまでの間に商品から取り外されたタグ付きベルト状締結具が正規の地域特産品ではない他の商品に不正に取り付けられるのを防止できるものでなければならない。換言すれば、一旦商品に締結したならば、針金や金属片などで抜け止め用係合片を操作して、締結用ベルト部の抜け止め用凹凸から抜け止め用係合片を離間させ、係止部から締結用ベルト部を抜き取ることができないようにし、商品からこのタグ付きベルト状締結具を取り外すときは、締結用ベルト部を切断する以外に手段がないように構成しなければならない。従来は、このような課題を解決する手段として、例えば特許文献1に記載されるように、係止部に抜け止め用係合片の周囲を取り囲む周壁を設け、その周壁の前後両側壁部に締結用ベルト部が貫通する開口をそれぞれ設けるように構成して、締結使用状態においては、抜け止め用係合片の周囲を取り囲む周壁により、外部から抜け止め用係合片を操作できなくすることが考えられていた。
【特許文献1】特公平6−88610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のベルト状締結具の構成では、ベルト状締結具を合成樹脂により一体成形しようとすると、係止部の周壁の内側に抜け止め用係合片を一体成形するために、締結用ベルト部が貫通する開口が形成される前後両側壁部の一方に、抜け止め用係合片成形用型の抜き取り用開口が必要になり、この型抜き取り用開口を通じて内部の抜け止め用係合片を操作することまで防止することができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得るベルト状締結具を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載のベルト状締結具は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、一側面に抜け止め用凹凸6が形成された締結用ベルト部1と、この締結用ベルト部1の基部に連設された係止部3とを備え、この係止部3には、締結用ベルト部1の挿通方向に適当間隔を隔てて位置すると共に締結用ベルト部1が貫通する開口9a,9bをそれぞれ有する前後両側壁部8a,8bと、両側壁部8a,8bの中間に配設されて締結用ベルト部1の前記抜け止め用凹凸6に係合する抜け止め用係合片16が設けられたベルト状締結具であって、前記係止部3が、前記前後両側壁部8a,8bを備えた第一部材4と、前記抜け止め用係合片16を備えた第二部材5とに分割され、第一部材4は、前記前後両側壁部8a,8b間の底面部のみが開放した箱型に形成され、第二部材5は、第一部材4の開放底面部7に嵌合される基板部14を備え、この基板部14から前記抜け止め用係合片16が締結用ベルト部1の挿通方向に向かって斜めに突設されると共に、この抜け止め用係合片16の基部に近い側の前記基板部14の端部から係止片17が突設され、第一部材4の前記前後両側壁部8a,8bの内、抜け止め用係合片16の基部に近い側の前側壁部8aには、前記係止片17の係合する被係止孔9cが前記開口9aの下側に連なるように形成され、この被係止孔9cに係合した前記係止片17が前記開口9aの下側辺を形成するように構成し、締結用ベルト部1は、係止部3の第一及び第二両部材4,5の何れか一方に連設された構成となっている。
【0005】
上記の本発明を実施する場合、具体的には、請求項2に記載のように、第二部材5の基板部14には、抜け止め用係合片16の基部から遠い側の端部から第一部材4内に嵌合する門形部材15を突設し、第一部材4の前後両側壁部8a,8bの開口9a,9b間にわたって挿通される締結用ベルト部1が前記門形部材15の内側を貫通するように構成することができる。この場合、請求項3に記載のように、第一部材4の開放底面部7に対面する天井部11には、前記門形部材15が内嵌する凹溝部12を設け、この凹溝部12と前記前側壁部8aの開口9aの上側辺との間には、前後両側壁部8a,8bの開口9a,9b間にわたって挿通される締結用ベルト部1の上面に隣接する内側面11bを形成し、この天井部11の内側面11b、前記門形部材15の天井側内側面15a、及び前後両側壁部8a,8bの開口9a,9bの上側辺とがほぼ面一に連続するように構成することができる。
【0006】
又、請求項4に記載のように、第一部材4の開放底面部7と第二部材5の基板部14との嵌合部には、両部材4,5の嵌合状態において互いに係合する被係止凹部13aと係止凸部13bとを設け、これら被係止凹部13aと係止凸部13bは、両部材4,5が嵌合状態から離脱するのを防止する抜け止め形状に構成することができる。
【0007】
締結用ベルト部1は、請求項5に記載のように、第一部材4から一体に連設することができるが、この場合、請求項6に記載のように、第一部材4と第二部材5との嵌合部は、第一部材1の前記前側壁部8aの側に第二部材5の抜け止め用係合片16の基部が位置する向きにおいてのみ第一部材4の開放底面部7に第二部材5の基板部14が嵌合できるように前後非対称形状に構成することが望ましい。更に、請求項7に記載のように、係止部3の第一部材4には、表示板部2を一体に連設することができる。
【発明の効果】
【0008】
上記請求項1に記載の本発明に係るベルト状締結具によれば、第一部材の開放底面部に第二部材の基板部を嵌合させて一体化された係止部は、前後両側壁部に締結用ベルト部を貫通させる開口が存在するだけの箱型空間内に抜け止め用係合片が収容された構造となるので、前記開口の大きさを、この開口に挿通された締結用ベルト部の周囲の隙間から内部の抜け止め用係合片を不正に操作できない程度の必要最小限の大きさに形成するだけで、締結用ベルト部で締結対象物を締結した使用状態において、係止部内部の抜け止め用係合片を外側から不正に操作して締結用ベルト部を抜き取ることが不可能な状態になる。従って、締結対象物からこのベルト状締結具を除去するときは、締結用ベルト部を切断する以外に手段はなくなり、係止部から締結用ベルト部を抜き取って不正に再使用するようなことを未然に防止することができる。即ち、締結用ベルト部を貫通させる開口とは別に、内部の抜け止め用係合片を成形するための開口などが存在する従来のものと比較して、不正な再使用の恐れが皆無のベルト状締結具を得ることができるので、このベルト状締結具の係止部に表示板部を連設するか又は、係止部や締結用ベルト部の表面を表示面に利用するなどして、産地名やブランド名を表示するタグ付きベルト状締結具として実施した場合には、このタグ付きベルト状締結具が締結された商品の産地やブランドの信憑性、信頼性を高めることができる。
【0009】
而して、上記ベルト状締結具の使用状態において、締結用ベルト部を係止部から引き抜く方向に強く引っ張った場合、第二部材の基板部から斜めに突設されている抜け止め用係合片を長さ方向に圧縮させる力が作用し、この作用力が、第二部材の基板部の前後両端部の内、抜け止め用係合片の基部に隣接する側の端部を第一部材内から押し出すように作用することになる。従って、第一部材と第二部材との嵌合部に、両者を係合一体化する被係止凹部と係止凸部とが設けられている場合でも、前記作用力で被係止凹部と係止凸部との係合が解かれて、第一部材から第二部材が外れてしまう可能性が考えられる。
【0010】
然るに請求項1に記載の本発明によれば、抜け止め用係合片の基部に隣接して第二部材の基板部から突設されている係止片が、第二部材の後側壁部の被係止孔に係合し、使用状態では、この係止片が締結用ベルト部と前記被係止孔の下側辺との間で挟み付けられる構造であって、前記係止片の厚みや幅を大きくすることが容易な構成であるから、第一部材と第二部材との嵌合状態を保持する手段として一般的に考えられる構成、即ち、両部材の嵌合部に被係止凹部と係止凸部とを設ける構成と比較して、上記のように仮に、使用状態において締結用ベルト部を係止部から引き抜く方向に強く引っ張った場合でも、第二部材の抜け止め用係合片の基部に隣接する側の端部が第一部材から押し出されるのを、前記係止片により強力に防止することができ、延いては、第一部材から第二部材が外れて抜け止め用係合片と締結用ベルト部との係合が解かれてしまう恐れがなくなり、先に説明したようなベルト状締結具の不正使用を確実に防止できる。
【0011】
又、請求項2に記載の構成によれば、第二部材の基板部の前後両端部の内、前記係止片が突設されていない側の後端部を第一部材から引き出すように、器具を使用して操作しても、当該端部から突設されている門形部材の内側を締結用ベルト部が挿通しているので、当該門形部材や締結用ベルト部が破断されない限り、第一部材の基板部の当該後端部が第一部材内から引き出されるのを強力に防止することができ、ベルト状締結具の不正使用を一層確実に防止できる。この場合、請求項3に記載の構成によれば、第一部材内で締結用ベルト部が抜け止め用係合片から離れる方向に(第一部材の天井部側へ)変形するのを確実に防止できるので、係止部に対する締結用ベルト部の抜け止め効果を一層高めることができる。
【0012】
尚、第一部材の開放底面部と第二部材の基板部との嵌合部には、両部材の嵌合深さを規制する段部を設けるだけにして、両部材の嵌合状態で両者を接着する方法で互いに結合一体化することもできるが、請求項4に記載の構成によれば、第一部材の開放底面部に対して単に第二部材の基板部を押し込んで、両部材の嵌合部における被係止凹部と係止凸部とを互いに嵌合係止させるだけで互いに結合一体化することができるので、組立てを簡単容易に行うことができる。
【0013】
又、第一部材と第二部材の何れか一方には締結用ベルト部を連設しなければならないが、請求項5に記載のように、箱型の第一部材側に締結用ベルト部を連設することにより、任意の方向への締結用ベルト部の連設が無理なく容易に行える。この場合、第一部材に対して第二部材を嵌合させるときの前後向き(抜け止め用係合片の斜め突出方向)が締結用ベルト部の連設向きによって決まることになり、所定向きに第二部材を第一部材に嵌合させなければ使用できなくなるが、請求項6に記載の構成によれば、第二部材を第一部材に誤って逆向きに嵌合させてしまう恐れがなくなり、組立て作業が容易になる。
【0014】
尚、本発明に係るベルト状締結具を、締結対象物の産地名やブランド名を表示するタグ付きベルト状締結具として実施する場合、係止部や締結用ベルト部の表面を産地名やブランド名の表示面に利用することができるが、請求項7に記載の構成によれば、これら産地名やブランド名の表示に特化したサイズ及びデザインの表示板部を採用することができ、しかもこの表示板部を箱型の第一部材に連設することにより、任意の方向への当該表示板部の連設が無理なく容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1において、1は締結用ベルト部であり、差し込み尖端部1aとは反対側の端部には表示板部2が一体成形により連設されている。3は係止部であって、締結用ベルト部1と表示板部2との境界部一側面に設けられている。この係止部3は、締結用ベルト部1及び表示板部2に一体成形により連設された第一部材4と、この第一部材4に対して嵌合されて一体化された第二部材5とから構成されている。締結用ベルト部1には、その差し込み尖端部1aと係止部3側の一定長さ領域を除く領域の、係止部3が連設されている側とは反対側の側面において、尖端が係止部3のある側に向いた断面鋸刃状の抜け止め用凹凸6が形成されている。
【0016】
以下、係止部3の構成を、図1に示すベルト状締結具から係止部3のみを切り離して示す図2〜図9に基づいて説明すると、係止部3を構成する第一部材4は、底面部のみが開放した箱型のもので、その開放底面部7に対する前後両側壁部8a,8bには、締結用ベルト部1をほぼ定位置に位置決めして挿通させることができるサイズの横長矩形の開口9a,9bが設けられ、左右両側壁部10と天井部11の後側壁部8bに隣接する内側には、開放底面部7の両側から門形に連続する凹溝部12が形成され、この凹溝部12により開放底面部7が、凹溝部12のある後端側が幅広の前後非対称形(凸形)に形成されている。又、前側壁部8aの開放底面部7を形成する下端辺には、その全幅にわたって被係止凹部13aが形成され、当該前側壁部8aの開口9aには、当該開口9aより幅広で横長矩形の被係止孔9cが当該開口9aの下側に連なって形成されている。更に、天井部11の凹溝部12と前側壁部8aとの間には、前記開口9a,9bの横幅より少し幅の狭い突条部11aが、その下側面11bが開口9a,9bの上側面と面一になるように一体形成されている。尚、前記被係止凹部13aは、開放底面部7側の下端の凹入深さが最大で、これより天井部11側ほど凹入深さが漸次浅くなる、断面がほぼ直角三角形の抜け止め形状に形成されている。
【0017】
係止部3を構成する第二部材5は、第一部材4の開放底面部7に丁度内嵌する大きさ及び形状(後端部が幅広の前後非対称形)の基板部14と、この基板部14の幅広後端部の左右両突出部上から突設された門形部材15と、基板部14の前端部に近い位置から門形部材15のある側へ斜めに突設された抜け止め用係合片16と、この抜け止め用係合片16の基部と基板部14の前端との間の基板部14の上面から前方(抜け止め用係合片16のある側とは反対側)へ先端が直角に延出するように突設され且つ先端側ほど肉薄となるように上面が湾曲した係止片17から構成されている。又、基板部14の前端面には、前記第一部材4側の被係止凹部13aに嵌合する、断面がほぼ直角三角形の抜け止め用係止凸部13bが、当該前端面の全幅にわたって突設されている。
【0018】
抜け止め用係合片16は、その斜め上向きに延出した先端の上面に、締結用ベルト部1における抜け止め用凹凸6に係合して当該締結用ベルト部1の抜け止めを図る、尖端が門形部材15のある側に向いた断面鋸刃状の抜け止め用凹凸18が形成されたものである。
【0019】
上記係止部3の第一部材4は、図1Aに示すように、その前側壁部8aが締結用ベルト部1と表示板部2との間に位置すると共に、開放底面部7が締結用ベルト部1の差し込み尖端部1aのある側に向かって開口するように、これら締結用ベルト部1と表示板部2に一体に形成されている。而して、係止部3の第二部材5は、図8及び図9に示すように、門形部材15を第一部材4の凹溝部12内に嵌合させると共に基板部14を第一部材4の開放底面部7に内嵌させ、前端の抜け止め用係止凸部13bを第一部材4側の被係止凹部13aに係合させると共に、前端から突出する係止片17を第一部材4側の被係止孔9cに嵌合係止させ、第一部材4の開放底面部7を塞ぐ状態に取り付ける。この第一部材4に対する第二部材5の取り付けに際しては、図7に示すように、門形部材15の両脚柱部を弾性に抗して抜け止め用係合片16の側へ曲げ変形させて、当該門形部材15の両脚柱部を第一部材4側の凹溝部12に嵌合させると共に、前端の抜け止め用係止凸部13bを第一部材4側の被係止凹部13aに係合させ、この状態で基板部14を第一部材4の開放底面部7側へ押し込むことになる。
【0020】
上記のようにして第一部材4に第二部材5を取り付けたとき、図8及び図9に示すように、第一部材4の開放底面部7が第二部材5の基板部14で完全に塞がれ、第一部材4の周壁部の矩形枠状端面と第二部材5の基板部14の外側面とが面一になり、門形部材15は第一部材4の後側壁部8bの内側面に当接し、第一部材4の前側壁部8aを外側から見たときに係止片17は被係止孔9cを完全に塞いでその直上の開口9aの下側辺を形成し、更に、第一部材4の前後一対の開口9a,9bの上側辺、第一部材4の天井部11に形成されている突条部11aの下側面11b、及び門形部材15の天井部の下側面15aが同一レベルで面一に位置するように、構成されている。このようにして第一部材4に取り付けられた第二部材5は、被係止凹部13aと抜け止め用係止凸部13bとの係合、係止片17と被係止孔9cとの係合、及び基板部14の後端部(門形部材15のある側)を第一部材4の外側から引き出すことができない構造であることにより、第一部材4に固定一体化された状態になり、ベルト状締結具が完成する。尚、第二部材5の基板部14上に突設された抜け止め用係合片16は、その抜け止め用凹凸18を備えた先端部が、第一部材4側の前後一対の開口9a,9bの下側辺を結ぶ仮想面より当該第一部材4の天井部11(突条部11a)の側に入り込んでいる。
【0021】
尚、図に示す第一部材4の前側壁部8aは、後側壁部8bよりも板厚を2倍ほどに厚くし、係止片17が嵌合する被係止孔9cの深さを深くして、係止片17と被係止孔9cとの係合強度を高めている。勿論、この前側壁部8aは、図1に示すように、表示板部2の一部分を構成させることができるので、その表面形状などは必要に応じて任意に変えることができる。
【0022】
以上のように構成されたベルト状締結具は、例えば地域特産の蟹を、その脚をまとめた状態で締結すると共に表示板部2により産地名(ブランド名)を表示する手段として利用することができる。従って表示板部2は、図では簡略化して示しているが、実際にはこのベルト状締結具の締結対象物(地域特産の蟹)と関連し且つ人目を引くようなデザインが施されると共に、当該締結対象物の産地名やブランド名が表示されるものである。使用に際しては、締結対象物を囲繞した締結用ベルト部1の差し込み尖端部1aを係止部3の開口9a,9bに挿通させるのであるが、このとき締結用ベルト部1の抜け止め用凹凸6を締結対象物に接する内側に位置させて、締結用ベルト部1で締結対象物を囲繞し、差し込み尖端部1aを第一部材4の前側壁部8a側の開口9aから後側壁部8b側の開口9bに向かって挿通させる。この結果、図8及び図9に示すように、締結用ベルト部1の抜け止め用凹凸6が、係止部3内の抜け止め用係合片16の抜け止め用凹凸18と対接して、当該抜け止め用係合片16を弾性に抗して基板部14側へ少し倒伏変形させながら、抜け止め用凹凸6の各尖端の向く方向とは逆方向(抜け止め用凹凸18の各尖端の向く方向)に相対移動することになる。
【0023】
上記のように係止部3を挿通させた締結用ベルト部1の差し込み尖端部1aを係止部3に対して強く引き抜き、締結用ベルト部1で締結対象物を締結することにより、このベルト状締結具による締結対象物の締結が完了するが、このとき、締結用ベルト部1の抜け止め用凹凸6に対して係止部3内の抜け止め用係合片16の抜け止め用凹凸18が係合し、係止部3に対して締結用ベルト部1が後退する方向に相対移動するのを阻止しているので、締結用ベルト部1による締結対象物の締結状態が保たれる。そしてこのとき、抜け止め用係合片16は、係止部3内に完全に収容された状態で外部からは前後両開口9a,9bを通じてのみ視認できる状況にあるから、係止部3の前後両開口9a,9bとこれらを貫通している締結用ベルト部1との間の隙間が、締結用ベルト部1の円滑な挿通操作を妨げない程度の必要最小限の寸法となるように構成しておけば、係止部3の外部から針金や金属片を用いて抜け止め用係合片16を、その抜け止め用凹凸18が締結用ベルト部1の抜け止め用凹凸6から離間するように操作することは不可能になり、締結用ベルト部1を切断する以外に締結対象物からの取り外し方法がないベルト状締結具として活用することができる。
【0024】
又、締結用ベルト部1に対して、係止部3への差し込み方向とは逆方向に当該係止部3から強く引き抜くように外力を作用させた場合、抜け止め用係合片16にはその長さ方向に圧縮力が働き、この圧縮力を受ける第二部材5の基板部14には、係止片17を備えた前端部を第一部材4の外へ押し出す外向きの押し出し力が作用する。しかしながら、基板部14の係止片17を備えた前端部は、殆ど基板部14の横幅に近い幅広で且つ肉厚の係止片17によって第一部材4側の被係止孔9cと係合しており、その係合深さも、第一部材4の前側壁部8aの厚さとほぼ同一であって、被係止凹部13aと抜け止め用係止凸部13bとの係合深さとは比較にならないほど深いので、基板部14の係止片17を備えた前端部が第一部材4の外へ押し出される恐れは皆無となる。換言すれば、上記のように締結用ベルト部1を係止部3から強く引き抜くような操作では、第二部材4の基板部14と共に抜け止め用係合片16が第一部材4内から押し出されて、当該抜け止め用係合片16と締結用ベルト部1との係合が外れてしまうような不都合は生じない。
【0025】
勿論、基板部14の後端部には、第一部材4との係合部が一切設けられていないが、仮に基板部14の後端部を第一部材4内から引き出すような外力を作用させることができたとしても、当該基板部14の後端部から突設されている門形部材15が第一部材4の後側壁部8bに接する状態で締結用ベルト部1に被さっているので、当該門形部材15の両脚柱部の引っ張り破断強度と締結用ベルト部1の剪断強度をもって、基板部14の後端部が第一部材4内から引き出されるのを強力に防止することができる。
【0026】
尚、図10〜図13に示す実施形態では、締結用ベルト部1は係止部3の第一部材4における後側壁部8bと天井部11との境界角部から一体に連設されている。又、締結用ベルト部1は、例えば締結対象物である蟹の主脚1本のみを締結できる程度に短く構成されたもので、先端の係止部3に挿通係合させる係合領域19と、この係合領域19と係止部3との間の締結領域20とから成り、係合領域19には、その差し込み尖端部1aを除く全領域の外側面に前記抜け止め用凹凸6が形成され、締結領域20の内側には、締結対象物に圧接して変形可能な舌片部21a,21bや帯状部21cなどが一体に連設され、更に係止部3の第一部材4と締結用ベルト部1の締結領域20との間の入隅部には、両者間の角度を保持する補強板部22が一体に形成されている。又、締結領域20の係合領域19に隣接する端部には、係合領域19を係止部3内に押し込む操作を容易にするための幅広の指当て部23が一体に形成されている。
【0027】
この別実施形態においても、係止部3の構成は先の実施形態と同一であり、締結用ベルト部1の係合領域19を、その差し込み尖端部1aから係止部3の開口9aより開口9bに向かって挿通させることで、締結領域20により締結対象物を締結することができるものであるが、締結対象物が太いときは、図12に示すように、係合領域19の先端側一部分のみが係止部3内に入り込んで抜け止め用凹凸6が係止部3内の抜け止め用係合片16と係合し、開口9bからは係合領域19の差し込み尖端部1aが突出しない状態で使用され、締結対象物が細いときは、図13に示すように、係合領域19のほぼ全域が係止部3内に入り込んで抜け止め用凹凸6が係止部3内の抜け止め用係合片16と係合し、開口9bから係合領域19の差し込み尖端部1aが突出する状態で使用される。又、各舌片部21a,21bや帯状部21cなどが締結対象物の太さや締結強さなどに応じて適宜変形し、締結対象物をガタつきなく安定的に締結することができるものである。
【0028】
尚、第二部材5の係止片17が係合する被係止孔9cが開口9aと共に設けられる第一部材4の前側壁部8aは、幅広肉厚の係止片17の係止強度を高めるために厚く構成する必要があるが、この場合、少なくとも係止片17が係合する被係止孔9cの下側辺から前側壁部8aの端面までの領域の厚さを厚くすれば良く、従って、図10〜図13に示す実施形態のように、被係止孔9cの下側辺から天井部11に至る領域の前側壁部8aの板厚は、他の後側壁部8b、左右両側壁部10、及び天井部11と同様に必要最小限に薄くすることができる。又、第一部材4の後側壁部8bの下端内側と第二部材5の基板部14の後端部との間の嵌合部にも、被係止凹部13aと抜け止め用係止凸部13bとを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】A図は係止部の組み立て前の状態を示すベルト状締結具の一部縦断側面図、B図は同ベルト状締結具の正面図である。
【図2】A図はベルト状締結具から切り離した係止部の第一部材を示す縦断側面図、B図は同第一部材の底面図である。
【図3】同第一部材の縦断斜視図である。
【図4】A図は図2AのA−A線断面図、B図は図2AのB−B線断面図である。
【図5】ベルト状締結具から切り離した係止部の第二部材を示す斜視図である。
【図6】A図は同第二部材の側面図、B図は同第二部材の平面図である。
【図7】第一部材に第二部材を組み付ける途中の状態を示す一部縦断側面図である。
【図8】係止部に締結用ベルト部が挿通された状態を示す縦断側面図である。
【図9】図8のC−C線断面図である。
【図10】別の実施形態のベルト状締結具を係止部の組み立て前の状態で示す一部縦断側面図である。
【図11】図10のD−D線断面図である。
【図12】図10のベルト状締結具の使用状態を示す側面図である。
【図13】図10のベルト状締結具の別の使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 締結用ベルト部
2 表示板部
3 係止部
4 第一部材
5 第二部材
6 締結用ベルト部の抜け止め用凹凸
7 第一部材の開放底面部
8a,8b 前後両側壁部
9a,9b 開口
9c 被係止孔
10 第一部材の左右両側壁部
11 第一部材の天井部
11a 突条部
11b 突条部の下側面
12 凹溝部
13a 被係止凹部
13b 係止凸部
14 基板部
15 門形部材
16 抜け止め用係合片
17 係止片
18 抜け止め用凹凸
19 係合領域
20 締結領域
21a,21b 舌片部
21c 帯状部
22 補強板部
23 指当て部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面に抜け止め用凹凸が形成された締結用ベルト部と、この締結用ベルト部の基部に連設された係止部とを備え、この係止部には、締結用ベルト部の挿通方向に適当間隔を隔てて位置すると共に締結用ベルト部が貫通する開口をそれぞれ有する前後両側壁部と、両側壁部の中間に配設されて締結用ベルト部の前記抜け止め用凹凸に係合する抜け止め用係合片が設けられたベルト状締結具であって、前記係止部が、前記前後両側壁部を備えた第一部材と、前記抜け止め用係合片を備えた第二部材とに分割され、第一部材は、前記前後両側壁部間の底面部のみが開放した箱型に形成され、第二部材は、第一部材の開放底面部に嵌合される基板部を備え、この基板部から前記抜け止め用係合片が締結用ベルト部の挿通方向に向かって斜めに突設されると共に、この抜け止め用係合片の基部に近い側の前記基板部の端部から係止片が突設され、第一部材の前記前後両側壁部の内、抜け止め用係合片の基部に近い側の前側壁部には、前記係止片の係合する被係止孔が前記開口の下側に連なるように形成され、この被係止孔に係合した前記係止片が前記開口の下側辺を形成するように構成し、締結用ベルト部は、係止部の第一及び第二両部材の何れか一方に連設されている、ベルト状締結具。
【請求項2】
第二部材の基板部には、抜け止め用係合片の基部から遠い側の端部から第一部材内に嵌合する門形部材が突設され、第一部材の前後両側壁部の開口間にわたって挿通される締結用ベルト部が前記門形部材の内側を貫通するように構成された、請求項1に記載のベルト状締結具。
【請求項3】
第一部材の開放底面部に対面する天井部には、前記門形部材が内嵌する凹溝部が設けられ、この凹溝部と前記前側壁部の開口の上側辺との間には、前後両側壁部の開口間にわたって挿通される締結用ベルト部の上面に隣接する内側面が形成され、この天井部の内側面、前記門形部材の天井側内側面、及び前後両側壁部の開口の上側辺とがほぼ面一に連続するように構成されている、請求項2に記載のベルト状締結具。
【請求項4】
第一部材の開放底面部と第二部材の基板部との嵌合部には、両部材の嵌合状態において互いに係合する被係止凹部と係止凸部とが設けられ、これら被係止凹部と係止凸部は、両部材が嵌合状態から離脱するのを防止する抜け止め形状に構成されている、請求項1又は2に記載のベルト状締結具。
【請求項5】
締結用ベルト部は、第一部材から一体に連設されている、請求項1〜3の何れか1項に記載のベルト状締結具。
【請求項6】
第一部材と第二部材との嵌合部は、第一部材の前記前側壁部の側に第二部材の抜け止め用係合片の基部が位置する向きにおいてのみ第一部材の開放底面部に第二部材の基板部が嵌合できるように前後非対称形状に構成されている、請求項5に記載のベルト状締結具。
【請求項7】
係止部の第一部材には、表示板部が一体に連設されている、請求項1〜6の何れか1項に記載のベルト状締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−105690(P2010−105690A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279249(P2008−279249)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508220733)株式会社クリーンアース産業 (2)
【Fターム(参考)】