説明

ベルト用のセンサー装置、殊に自動車の安全ベルト用のセンサー装置

ベルト用のセンサー装置、殊に自動車の安全ベルト用のセンサー装置を改善して、安全ベルト(1)の機能を、その機械的な強度並びに滑り特性に関してできるだけ損なわないようにするために、センサー装置の少なくとも1つのセンサー(4)は、安全ベルト(1)の、乗員の身体と逆の側の表面(5)に装着されており、この場合に安全ベルト(1)の、乗員の身体に向けられる裏面(6)は露出したまま、一様に保たれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルト用のセンサー装置、殊に自動車の安全ベルト用のセンサー装置に関する。
【0002】
公知技術のセンサー装置においては、センサー装置のセンサーは安全ベルトに取り付けられ若しくは固定されており、このために例えば安全ベルトを貫通するホルダー又は保持装置若しくは類似のものが設けられており、安全ベルトにセンサーを取り付けるこのようなホルダー若しくは固定装置は、ベルトの機械的な特性を損ねることになり、さらに安全ベルトの支持特性若しくは装着性も、ホルダー若しくは固定装置の、ベルトの裏面から突出する部材によってベルトの裏面の平滑性を妨げることに基づき低下している。安全ベルトの裏面の平滑性(平滑構造又は滑り特性)は、安全ベルトを安全ベルト装置の転向部材及び乗員の身体に沿って容易に滑動させるために重要である。安全ベルトの滑り特性の低下は、安全ベルト装置の巻き戻し装置若しくは巻き取り装置が、乗員の動きに基づき繰り出された安全ベルトを十分に巻き戻して乗員の身体に密着させ得なくなることにつながる。従って安全ベルトは、事故などに際して保護機能を発揮できなくなってしまう。
【0003】
本発明の課題は、ベルト、殊に自動車の安全ベルトに取り付けられるセンサー装置を改善して、該センサー装置が安全ベルトの裏面の機能にとって重要な滑り特性を全く若しくはほとんど損ねないようにすることである。
【0004】
前記課題を解決するために本発明に基づく構成では、センサー装置の少なくとも1つのセンサー、有利にはすべてのセンサーは、安全ベルトの、乗員の身体と逆の側の表面に装着されており、この場合に安全ベルトの、乗員の身体に向けられる裏面は、センサー装置の部品で覆われる若しくは占められることなく自由に、即ち露出した状態で、一様に保たれて、即ち変化させられることなく保たれている。
【0005】
安全ベルトへのセンサーの本発明に基づく前述の取り付け若しくは固定は、センサー装置の少なくとも1つのセンサーをホルダー若しくはケーシングに収容し、かつ該ホルダー若しくはケーシングを安全ベルトの表面に取り付けることによって達成される。
【0006】
ケーシングは有利にはプラスチックによって成形されている。
【0007】
安全ベルトの表面へのケーシングの取り付けは、安全ベルトの表面を形成する材料とケーシングとの溶接又は溶着、若しくは安全ベルトの表面へのケーシングの接着によって行われてよい。
【0008】
さらに、少なくとも1つのセンサーのケーシングを安全ベルトの表面に縫い付けることも可能である。
【0009】
安全ベルトがセンサーの設けられている領域で部分的に弱化されることを避けるために、安全ベルトを付加的(追加的)な糸若しくは繊維の織り込みによって補強してあると有利である。
【0010】
安全ベルトの、センサー装置のセンサーを有する領域に設けられたベルト補強部は、前記領域で安全ベルトの形成のために、機械的な特性の改善された、例えば弾性特性及び/又は破壊強さの高められた糸を使用して形成されている。
【0011】
センサー装置のセンサーは例えばマイクロフォンとして形成されていてよい。この場合には、車両の操作中の手を離すことなく、電話で話をすることが容易にできる。
【0012】
別の実施態様として、若しくは追加的な手段として、心拍数センサー及び体温測定センサー若しくは類似のものとして形成されたセンサーを設けることも可能である。
例えば自動車運転者の操縦不的確性を表す心拍数センサーの信号の場合に、自動車の運転は、損害をほとんど発生させないように制御される。
【0013】
センサー装置のセンサーは有利には、安全ベルト内に組み込まれた導体に接続されており、該導体はセンサー装置の作動に必要なエネルギー及びセンサーの信号を誘導的に供給若しくは送信するようになっている。この場合にセンサー装置のセンサーは種々のトポロジーに接続されていてよい。このことはセンサーの構造に依存している。十分な信号値を生ぜしめるセンサーは、個別に若しくは共有の1つの導体に接続される。信号値の低いセンサーは個別の電圧供給部を必要とする。組み込まれたセンサーは一緒に、共有の1つのバスに接続されるようになっていてよい。
【0014】
作動エネルギー及び信号は有利には、安全ベルト装置のベルト留め具若しくは巻き戻し装置の領域で供給若しくは送信されるようになっている。
【0015】
安全ベルト内に組み込まれる導体は、該導体を安全ベルトの本来の1つの織り糸の周りに織り込むことによって、破損若しくは伸び作用に対して特に有利な特性を有している。導体の織り込みピッチ若しくは間隔は伸び作用を規定している。導体は本発明の有利な実施態様では外側から見えないようになっている。
安全ベルト内に組み込まれた導体とセンサーとの間の接続は、有利には弾性導体若しくは導電性ゴムなどによって実施されている。
【0016】
センサー装置の目的に応じて最適な位置にあるセンサーを検出若しくは決定するために、有利には選択装置を設けてあり、該選択装置は、センサー装置の最良の質の信号を生ぜしめる位置にあるセンサーを検出するようになっており、これによって、該センサーの信号は送信若しくは伝送のために選ばれる。
【0017】
出力信号のさらなる改善のために、選択装置は、センサー装置の信号質にとって最適な位置にある2つのセンサー、例えば所定の信号源のすぐ上側の1つのセンサーと該信号源のすぐ下側の1つのセンサーとを検出して選び出し、かつ該両方のセンサーの信号をセンサー装置の1つの出力信号にまとめるようになっている。センサーの信号は処理されてよく、例えば信号の増幅及び正規化、若しくは信号の線形化及びろ過を行うことも可能である。選択装置を用いて信号処理に基づき、最適な位置にあるセンサー若しくは最適な位置にあるセンサー群は、ベルト長さ若しくは座席位置を考慮することなく選ばれ得る。
【0018】
選ばれた1つのセンサー、若しくは選ばれたセンサー群の出力信号は、センサー装置の別のセンサーの信号を考慮して、有利には任意の数学的手法に基づき処理されてよく、これによって例えばほろ屋根内の風による騒音をマイクロフォン信号から除去することも可能である。
【0019】
選択装置は、シート位置センサー及び/又は乗員体重センサー及び/又は安全ベルト繰り出し長さ検出センサーの出力信号を考慮して作動するようになっており、これに関連してセンサー装置の最適な位置にあるセンサーの選択を行うことが可能である。
【0020】
次に本発明を図示の実施例に基づき詳細に説明する。図面において、
図1は、本発明に基づくセンサー装置を備えた安全ベルトの原理を示す図であり、
図2は、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【0021】
図1に概略的に示す安全ベルト1は、斜めに延びる肩掛け用ベルト区分2とほぼ水平に延びる胴掛け用ベルト区分3とから成っている。
【0022】
安全ベルト1の、該安全ベルト1によって保護されるべき使用者の身体と逆の側の表面(図1に示された面、前面)にセンサー装置を設けてあり、該センサー装置は複数のセンサー4を含んでいる。図示の実施例ではセンサー装置のセンサー4は、肩掛け用ベルト区分2にも胴掛け用ベルト区分3にも長手方向で等間隔に配置されている。すでに述べてあるように、センサー4は安全ベルトの、乗員の身体と逆の側の表面5に装着されている。
安全ベルトの裏面6は、センサー4によって損なわれてはおらず、また全く妨げられてもいない。従って、転向装置等を介した安全ベルト1の滑り運動は損なわれないようになっている。
【0023】
図示の実施例では、センサー装置の各センサー4はケーシング7を有しており、この場合にセンサー4はケーシング7内に受容されていて、該ケーシングによって安全ベルト1の表面5に保持されている。センサー4の構造に応じて、センサーをケーシング7によってではなく、別の保持装置若しくは保持手段によって安全ベルト1の表面5に装着することも可能である。
【0024】
図2に明瞭に示してあるように、センサー4を受容する該ケーシング7は、結合部8を用いて、安全ベルト1の表面5を形成する材料と堅く結合されている。結合部8は、溶接結合部、接着結合部若しくは縫い目等である。
【0025】
安全ベルト1は、センサー装置のセンサー4の配置される箇所を、織り込まれた糸によって補強されて、安全ベルト1の、センサー4の装着に基づき生じることのある弱化を補償するようになっていてよい。
【0026】
図1及び図2に示すセンサー4は、例えばマイクロフォンであり、該マイクロフォンを介して乗員は、車両の操縦に対する集中力の妨げになるような煩わしい手動操作を行うことなしに電話することができる。センサー4から成るセンサー装置は、もちろん自動車内の各安全ベルトに設けられていてよい。
【0027】
別の実施例として若しくは追加的に、心拍数センサー及び体温測定センサー若しくは類似のものとして形成されたセンサーを設けることも可能である。
【0028】
センサー4に対するエネルギー供給及び信号接続のために、図示の実施例では安全ベルト1内に導体9を組み込んである。導体(導線)9は必要な作動エネルギーをセンサー4に供給するようになっており、この場合に導体9を用いてセンサー4からの信号送信を行ってもよい。
【0029】
センサー4の作動のために必要なエネルギーの供給もセンサー4の信号の送信も誘導的に行われてよく、この場合に安全ベルト1の巻き戻し部のうちの1つをエネルギー供給箇所若しくは信号送信箇所として用いてよい。
【0030】
安全ベルト1内に組み込まれる導体9は、安全ベルト1の1つの織り糸の周りに編み込まれていてよい。導体9とセンサー4との間の接続は弾性導体若しくは導電性ゴムなどによって実施されてよい。
【0031】
複数のセンサー4によって形成されたセンサー装置には、センサー装置のすべてのセンサー4からの信号を受け取る選択装置(図示省略)も含まれる、選択装置は、個別のセンサー4の信号質を決定するようになっている。このような選択装置によって、信号質の最もよい1つのセンサー若しくは信号質の最もよい2つのセンサー4を選ぶことが可能である。信号質の最もよい2つのセンサー4を選ぶ場合には、これらのセンサーの信号は1つの出力信号にまとめられる。
【0032】
出力信号は、出力信号の形成のために選ばれなかったセンサー4の信号を考慮して出力信号の処理に関与させることによって、さらに改善されてよい。
【0033】
選択装置に、シート位置センサー及び乗員体重センサーを接続することも可能である。これらのセンサーの出力信号は、センサー装置の最良の質の信号を生ぜしめる位置にあるセンサーの選択に際して用いられ、この場合にセンサーの選択のために、安全ベルト繰り出し長さ検出センサーの出力信号を考慮することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に基づくセンサー装置を備えた安全ベルトの概略的な正面図
【図2】図1の線A−Aに沿った断面図
【符号の説明】
【0035】
1 安全ベルト、 2 肩掛け用ベルト区分、 3 胴掛け用ベルト区分、 4 センサー、 5 表面、 6 裏面、 7 ケーシング、 8 結合部、 9 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト用のセンサー装置、殊に自動車の安全ベルト用のセンサー装置において、センサー装置の少なくとも1つのセンサー(4)は、安全ベルト(1)の、乗員の身体と逆の側の表面(5)に装着されており、この場合に安全ベルト(1)の、乗員の身体に向けられる裏面(6)は露出したまま、一様に保たれていることを特徴とする、ベルト用のセンサー装置。
【請求項2】
複数のセンサー(4)を設けてあり、この場合に有利にはすべてのセンサー(4)は、安全ベルト(1)の、乗員の身体と逆の側の表面(5)に装着されており、安全ベルト(1)の、乗員の身体に向けられる裏面(6)は露出したまま、一様に保たれている請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項3】
少なくとも1つのセンサー(4)は、ホルダー若しくはケーシング(7)に収容されており、該ホルダー若しくはケーシングは安全ベルト(1)の表面(5)に取り付けられるようになっている請求項1又は2に記載のセンサー装置。
【請求項4】
少なくとも1つのセンサー(4)のケーシング(7)はプラスチックから成形されている請求項3に記載のセンサー装置。
【請求項5】
少なくとも1つのセンサー(4)のケーシング(7)は、安全ベルト(1)の表面(5)を形成する材料と溶接されるようになっている請求項3又は4に記載のセンサー装置。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサー(4)のケーシング(7)は、安全ベルト(1)の表面(5)を形成する材料と接着されるようになっている請求項3又は4に記載のセンサー装置。
【請求項7】
少なくとも1つのセンサー(4)のケーシング(7)は、安全ベルト(1)の表面(5)を形成する材料に縫い付けられるようになっている請求項3又は4に記載のセンサー装置。
【請求項8】
安全ベルト(1)はセンサー装置の少なくとも1つのセンサー(4)、有利には各センサーの領域にベルト補強部を備えている請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサー装置。
【請求項9】
ベルト補強部は、安全ベルト(1)内に付加的に織り込まれた糸によって形成されている請求項8に記載のセンサー装置。
【請求項10】
ベルト補強部は、該ベルト補強部の領域に機械的な特性の改善された、例えば弾性特性及び/又は破壊強さの高められた糸を用いることによって形成されている請求項8に記載のセンサー装置。
【請求項11】
センサー(4)はマイクロフォンである請求項1から10のいずれか1項に記載のセンサー装置。
【請求項12】
センサー(4)は心拍数センサー及び体温測定センサー若しくは類似のものを含んでいる請求項1から11のいずれか1項に記載のセンサー装置。
【請求項13】
センサー(4)は、安全ベルト(1)内に組み込まれた導体(9)に接続されており、該導体はセンサー装置の必要な作動エネルギー及びセンサー(4)の信号を誘導的に供給若しくは送信するようになっている請求項1から12のいずれか1項に記載のセンサー装置。
【請求項14】
作動エネルギー及び信号は、安全ベルト装置のベルト留め具若しくは巻き戻し装置の領域を介して供給若しくは送信されるようになっている請求項13に記載のセンサー装置。
【請求項15】
安全ベルト(1)内に組み込まれた導体(9)は、安全ベルト(1)の1つの織り糸の周りに編み込まれている請求項13又は14に記載のセンサー装置。
【請求項16】
センサー(4)は弾性導体によって、安全ベルト(1)内に組み込まれた導体(9)に接続されている請求項13から15のいずれか1項に記載のセンサー装置。
【請求項17】
センサー(4)は導電性ゴムによって、安全ベルト(1)内に組み込まれた導体(9)に接続されている請求項16に記載のセンサー装置。
【請求項18】
選択装置を設けてあり、該選択装置は、センサー装置の最良の質の信号を生ぜしめる位置にあるセンサー(4)を検出して、該センサーの信号を送信のために選ぶようになっている請求項1から17のいずれか1項に記載のセンサー装置。
【請求項19】
選択装置によって、センサー装置の最良の質の信号を生ぜしめる位置にある2つのセンサー(4)、例えば所定の信号源を基準として該信号源の上側で該信号源に最も近い1つのセンサー(4)と該信号源の下側で該信号源に最も近い1つのセンサー(4)とを検出して選び、かつ該両方のセンサー(4)の信号を1つの出力信号にまとめるようになっている請求項18に記載のセンサー装置。
【請求項20】
センサー装置の選ばれたセンサー(4)の出力信号、若しくはセンサー装置の選ばれた2つ若しくはそれより多い数のセンサー(4)の信号をまとめて形成された出力信号は、センサー装置の別のセンサー(4)の信号に関連して、有利には任意の数学的手法に基づき処理されるようになっている請求項18又は19に記載のセンサー装置。
【請求項21】
選択装置はシート位置センサー及び/又は乗員体重センサーに接続されており、この場合にシート位置センサー及び/又は乗員体重センサーの出力信号は、センサー装置の所定のセンサー(4)の選択に際して若しくはセンサー装置の最適な位置にあるセンサー(4)の選択に際して、有利には安全ベルト繰り出し長さ検出センサーの出力信号と一緒に考慮されるようになっている請求項18から20のいずれか1項に記載のセンサー装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−527684(P2006−527684A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515758(P2006−515758)
【出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004378
【国際公開番号】WO2004/110829
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(504085808)パラゴン アクチエンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】paragon AG
【住所又は居所原語表記】Schwalbenweg 29, D−33129 Delbrueck, Germany
【Fターム(参考)】