説明

ベルト用プロファイル及びプロファイル付きベルト

【課題】ベルトに十分な磁性を付与することができ、かつ、歯付ベルトへの着脱が容易なベルト用プロファイル及びプロファイル付きベルトの提供。
【解決手段】プロファイル1をベルト幅方向に分割して分割体1a、1bとする。連結部7を介して爪部6をプロファイル本体3と連結する。プロファイル本体3にマグネット4を収容する。プロファイル本体3を歯付ベルト2の背面側に配置する。爪部6を歯付ベルト2の歯面側に配置してベルト歯5に係止する。プロファイル本体3と爪部6との間に歯付ベルト2の側縁部2aを挟持する。ベルト幅方向に歯付ベルト2を挟みつつ分割体1a、1bを一体化して歯付ベルト2に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板や缶、紙幣などの被搬送物を磁力によって保持して搬送するよう歯付ベルトに装着して使用するベルト用プロファイル及びプロファイル付きベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼板や缶などを磁力によって吸着保持したり、紙幣などを磁力で挟み込み保持したりしてベルト搬送する場合、その搬送用ベルトとして、磁性体を混入したゴムからなるベルトや、マグネットシートを貼り付けたベルトを使用することが多い。
【0003】
ただ、磁性体を混入したベルトや、マグネットシートを貼り付けたベルトは、その屈曲性が阻害されやすく、早期にクラックが発生するなどの不具合を生じるおそれがある。一方、磁性体の混入量を減らすなどしてベルトの屈曲性を高めようとすると、被搬送物を保持するのに要する十分な磁力を得ることができない。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1のように、溶着及びボルト締めによって、ベルト101の背面に多数のプロファイル(磁石保持部)102をベルト長手方向に間隔をおいて固着し、このプロファイル102でマグネット(磁石片)103を保持することにより、ベルト101の屈曲性を阻害することなく、ベルトに十分な磁性を付与することが考えられる(図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−289820(段落番号0006、0007、0010、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のベルトは、ベルトの背面に溶着及びボルト締めによってプロファイルを取り付けたものであるため、そのプロファイルを容易に着脱することができず、一部のプロファイルが損傷した場合であっても、ベルト全体を交換する必要がある。しかも、ベルトの背面に溶着可能な素材でプロファイルを構成する必要があり、プロファイルの素材選択において制約を受けやすい。
【0007】
本発明は、ベルトに十分な磁性を付与することができ、かつ、歯付ベルトへの着脱が容易なベルト用プロファイル及びプロファイル付きベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るベルト用プロファイルは、被搬送物を磁力によって保持して搬送するよう歯付ベルトに装着して使用するものであり、磁性を有して歯付ベルトの背面側に配置されるプロファイル本体と、このプロファイル本体との間に歯付ベルトの一部を挟持しつつベルト歯に係止されるよう歯付ベルトの歯面側に配置される爪部と、プロファイル本体と爪部とを連結するよう両者と一体に形成された連結部と、を備え、ベルト幅方向に歯付ベルトを挟みつつ一体化して歯付ベルトに装着するよう、ベルト幅方向に複数の分割体に分割して形成したものである。
【0009】
上記構成によれば、歯付ベルトに装着することにより、磁性を有するプロファイル本体が歯付ベルトの背面側に配置されるので、ベルトの屈曲性を阻害することなく、ベルトに十分な磁性を付与することができる。さらに、爪部をベルト歯に係止してプロファイル本体との間に歯付ベルトの一部を挟持することによって、プロファイルを歯付ベルトに装着するので、ベルトの背面への溶着や接着を不要にすることができ、プロファイルの素材選択の自由度を高めることができる。
【0010】
しかも、プロファイルをベルト幅方向に複数の分割体に分割して形成するので、歯付ベルトへの着脱を容易にすることができる。具体的には、歯付ベルトの一部をプロファイル本体と爪部との間に挿入しつつ、歯付ベルトをベルト幅方向に挟むように分割体同士を一体化することにより、歯付ベルトにプロファイルを装着することができ、その反対の手順により、歯付ベルトからプロファイルを取り外すことができる。
【0011】
また、プロファイル本体が磁性を有するようにするには、磁性を有する素材によってプロファイル本体を構成してもよいが、プロファイル本体にマグネットを収容して磁性を付与することもできる。この構成によれば、プロファイルの素材の選択の自由度を高めると共に、プロファイルの形成及び取り扱いを容易にすることができる。
【0012】
また、プロファイルを複数の分割体に分割する分割面をプロファイル本体のうちのマグネットを収容するマグネット収容部を通る位置に設定することができる。この構成によれば、分割面においてマグネット収容部が開口されるので、ベルトにプロファイルを着脱する際にマグネットを出し入れすることができ、マグネットの収容及び交換を容易にすることができる。
【0013】
また、歯付ベルトに上記のベルト用プロファイルを備えてプロファイル付きベルトを構成することにより、ベルトの屈曲性を阻害することなく、十分な磁性を付与することができる。さらに、プロファイルの着脱が容易な分、歯付ベルトに容易にプロファイルを取り付けてプロファイル付きベルトに加工することができ、しかも、一部のプロファイルが損傷した場合には、その損傷したプロファイルのみを交換すればよく、ベルト全体の交換を不要にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、本発明によると、磁性を有するプロファイルを装着することにより、ベルトの屈曲性を阻害することなく、ベルトに十分な磁性を付与することができるので、ベルトのクラックなどの不具合を生じさせることなく、鋼板や缶、紙幣などの被搬送物を磁力によって確実に保持して搬送することができる。しかも、溶着や接着することなく、ベルトにプロファイルを取り付けることができるので、プロファイルの素材選択の自由度を高めることができる。
【0015】
また、歯付ベルトに容易に着脱することができるので、歯付ベルトからプロファイル付きベルトへの加工を容易にすることができ、しかも、一部のプロファイルが損傷した場合には、ベルト全体を交換することなく、損傷したプロファイルのみを交換して補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプロファイル付きベルトの平面図
【図2】プロファイル付きベルトの側面図
【図3】プロファイル付きベルトのA−A断面図
【図4】従来のプロファイル付きベルトの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るベルト用プロファイル及びプロファイル付きベルトを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
プロファイル1は、鋼板や缶などを磁力によって吸着保持したり、紙幣などを磁力で挟み込み保持したりするなど、被搬送物を磁力によって保持して搬送するよう、歯付ベルト2に所望の個数を装着して使用するものであり、ベルト幅方向の中央で2つの分割体1a、1bに分割して形成されている。
【0019】
このプロファイル1は、歯付ベルト2の背面側に配置されるプロファイル本体3と、プロファイル本体3に磁性を付与するマグネット4と、プロファイル本体3との間に歯付ベルト2の側縁部2aを挟持しつつベルト歯5に係止される爪部6と、歯付ベルト2の側面の外側を通ってプロファイル本体3及び爪部6を連結するよう両者3、6と一体に形成された連結部7とを備えている。
【0020】
歯付ベルト2は、歯付プーリのプーリ歯に噛み合うベルト歯5を有すると共に、そのベルト幅が歯付プーリの中心軸方向長さよりも幅広に設定されている。これにより、歯付プーリに掛巻した歯付ベルト2のうち、プロファイル本体3と爪部6とで挟持される側縁部2aが、歯付プーリからベルト幅方向に突出し、歯付ベルト2と歯付プーリとの噛み合いが爪部6によって阻害されるのを防止する。
【0021】
プロファイル本体3は、マグネット4を収容するマグネット収容部3aと、歯付ベルト2の背面に接するようマグネット収容部3aの下側に一体に形成された本体基部3bとからなる。プロファイル本体3のベルト幅方向の中央部には、プロファイル本体3を分割体1a、1bに分割する分割面8が形成されている。
【0022】
マグネット収容部3aは、ベルト幅方向の寸法が歯付ベルト2のベルト幅よりもわずかに小さく設定された直方体とされ、その内部に形成された例えば中心軸がベルト幅方向と平行な円柱状の収容空間9に円柱状のマグネット4を収容することにより、プロファイル本体3に磁性を付与するようになっている。
【0023】
本体基部3bは、両端部が歯付ベルト2のベルト幅方向両側に突出する長さで、ベルト長手方向の寸法がマグネット収容部3aよりも小さく設定された断面略正方形の棒状とされる。これにより、磁力で被搬送物を吸着するプロファイル本体3の上面を大きく設定しつつ、プロファイル本体3がベルト背面に接することによる歯付ベルト2の屈曲性の低下を防止する。
【0024】
分割面8は、プロファイル本体3のベルト幅方向の中央部に設定されることにより、マグネット収容部3aを通っており、プロファイル本体3を分割体1a、1bに分割した際に、その収容空間9を開口する。この分割面8には、係止部8aと被係止部8bとが形成され、係止部8aを被係止部8bに係止することにより、分割体1a、1bを一体化するようになっている。
【0025】
爪部6は、歯付ベルト2のベルト歯5の歯溝に嵌る形状に形成され、歯付ベルト2の歯面側に配置されることにより、側縁部2aをプロファイル本体3の本体基部3bとの間に挟持しつつ、歯付ベルト2の歯溝に嵌ってベルト歯5に係止され、ベルト長手方向への位置ずれを阻止する。
【0026】
連結部7は、ベルト長手方向の幅が本体基部3b及び爪部6と同程度の一対の棒状とされ、歯付ベルト2のベルト幅とほぼ同じ間隔をあけて、本体基部3bの下面からベルト歯面側に突出するよう形成され、その先端部からベルト幅方向内向きに爪部6が突出形成されている。
【0027】
プロファイル1を歯付ベルト2に装着するには、分割面8において開口されたマグネット収容部3aの収容空間9にマグネット4を挿入しつつ、各分割体1a、1bごとに、本体基部3bと爪部6との間に歯付ベルト2の側縁部2aを挿入するようにして、爪部6をベルト歯5の歯溝に嵌める。さらに、両分割体1a、1bでベルト幅方向に歯付ベルト2を挟みつつ、係止部8aを被係止部8bに係止して分割体1a、1bを一体化することにより、プロファイル1が歯付ベルト2に装着される。また、反対の手順でプロファイル1を歯付ベルト2から取り外すこともできる。
【0028】
上記構成によれば、歯付ベルト2をそのままとして、プロファイル1を装着することによって磁性を付与するので、隣接するプロファイル1の間に隙間を空けながら歯付ベルト2をプーリに巻き付けることができる。これにより、歯付ベルト2の屈曲性を損なうことなく、磁性を十分に高めることができ、歯付ベルト2にクラックなどの不具合を生じさせることなく、被搬送物を磁力によって確実に保持して搬送することができる。しかも、歯付ベルト2の屈曲性を損なわない分、プーリの直径及び歯数を自由に設定することができるので、ベルト及びプーリのレイアウト設計の自由度を高めることができる。
【0029】
さらに、プロファイル本体3をマグネット収容部3aと本体基部3bとで構成し、ベルト長手方向におけるマグネット収容部3aの寸法を大きく設定して、ベルト背面に接する本体基部3bの寸法を小さく設定するので、マグネット4の大きさや形状を自由に設定しつつ、プロファイル付きベルトの屈曲性をより高めることができる。
【0030】
また、プロファイル1を歯付ベルト2に容易に着脱することができるので、歯付ベルト2をプロファイル付きベルトに容易に加工することができ、しかも、一部のプロファイル1が損傷した場合には、そのプロファイル1のみを交換して補修することができる。
【0031】
また、歯付ベルト2の側縁部2aを挟持して装着するので、歯付ベルト2やプロファイル1の材質を自由に選択することができる。これにより、素材の制約を受けることなく、歯付ベルト2として、例えばゴムやウレタンからなる標準構成品を用いることができると共に、プロファイル1を被搬送部と直接接触するのに適した素材によって構成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 プロファイル
1a、1b 分割体
2 歯付ベルト
2a 側縁部
3 プロファイル本体
3a マグネット収容部
3b 本体基部
4 マグネット
5 ベルト歯
6 爪部
7 連結部
8 分割面
8a 係止部
8b 被係止部
9 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を磁力によって保持して搬送するよう歯付ベルトに装着して使用するベルト用プロファイルであって、磁性を有して前記歯付ベルトの背面側に配置されるプロファイル本体と、該プロファイル本体との間に歯付ベルトの一部を挟持しつつベルト歯に係止されるよう前記歯付ベルトの歯面側に配置される爪部と、プロファイル本体と爪部とを連結するよう両者と一体に形成された連結部と、を備え、ベルト幅方向に歯付ベルトを挟みつつ一体化して歯付ベルトに装着するよう、ベルト幅方向に複数の分割体に分割して形成されたことを特徴とするベルト用プロファイル。
【請求項2】
前記プロファイル本体に、マグネットが収容されたことを特徴とする請求項1に記載のベルト用プロファイル。
【請求項3】
前記分割体に分割する分割面が、前記プロファイル本体のうちのマグネットを収容するマグネット収容部を通る位置に設定されたことを特徴とする請求項2に記載のベルト用プロファイル。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のベルト用プロファイルを備えたことを特徴とするプロファイル付きベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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