説明

ベルト芯地

【課題】 表生地や、体動の追従性及び表地との接着性に耐久的に優れ、折れ曲がりやヘタリなく、ベルト芯地としての耐久的保型性に優れ、かつ仕立て映えにも優れる新規なベルト芯地を提供する。
【解決手段】 並び平組織の織物で構成されたベルト芯地であって、芯地の長さ方向を構成する繊維が、ポリトリメチレンテレフタレート繊維であるベルト芯地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルト芯地に関し、更に詳しくは、繰り返し着用した際に、折れ曲がりやシワつきがなく、ベルト芯地としての外型保持の耐久性に優れ、更に表生地や、体動の追従性に耐久的に優れ、かつ仕立て映えにも優れるベルト芯地に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のスカートや、スラックスのベルト部分には、外観保持、保形性、強度補助のために、ベルト芯地が内蔵されている。スカートやスラックスを体に固定させる衣服部位であるベルト部分は、通常体のサイズに対し、マイナスのゆとり率をもって構成されている。従って、この部分に内蔵されているベルト芯地の長さはウェストサイズよりも小さなサイズとなっている。従って、ベルト芯地以外に使用される他の芯地に対し、常に伸長方向の負荷や、伸長−回復動作がかかっている状態である。
【0003】
そのため、体の動きや表生地の動きを阻害しないように、ベルト芯地は長さ方向への伸長を有するものが好ましく、実際、嵩高加工糸を用いた織物接着芯地、例えばポリエステル仮撚加工糸を用いた織物接着芯地等が、ベルト芯として利用されており、長さ方向へある程度伸長する特性があるため、体の動きを阻害し難いものとなっている。
【0004】
しかしながら、かなりの高負荷がかかる伸長−回復動作を着用ごとに繰り返す場合、芯地の長さ方向に直行する方向を構成する繊維が折れて長さ方向に折れ筋が入り、その結果ベルト芯地の折れ曲がり現象を引き起こし、外観上シワがついたり、折れ曲がり筋がつくなど、外観を著しく損なうという問題があった。
また、現状のベルト芯地では、伸長回復性の低下により、長さ方向にもへたりが発生して、外観変化と着用フィット感の低下も引き起こすという問題もあった。
【0005】
更に、ポリエステル捲縮糸を用いた場合でも、長さ方向の伸縮性は、組織的な伸び、即ち畝構造によって伸縮性を発現させているために、表地と芯地を樹脂接着させる場合に、樹脂を芯地表面に均一に一定量コーティングすることが困難となり、また、生地の最表面にドット樹脂が付着し難いために、結果的に表地とベルト芯地との接着性が大幅に低下するという問題があった。
【特許文献1】特開昭63−28906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、かかる折れ曲がり現象を改善し、しかも表生地や、体動の追従性に耐久的に優れ、更に仕立て映えにも優れるベルト芯地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは前記課題を解決するために、ベルト芯地について鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)並び平組織の織物で構成されたベルト芯地であって、該芯地の長さ方向を構成する繊維が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維であることを特徴とするベルト芯地。
(2)前記ベルト芯地の長さ方向に9.8N/cmの応力相当の伸長を1万回与えた直後の耐久伸長回復率が90%以上である上記(1)に記載のベルト芯地。
(3)ベルト芯地の長さ方向に9.8N/cmの応力相当の伸長X%を1万回与えた後に、再度X%伸長させた場合の応力と初期応力の比にあたるフィット感保持率が60%以上である上記(1)または(2)に記載のベルト芯地。
(4)ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、二種以上のポリエステル成分で構成され、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のベルト芯地。
【発明の効果】
【0008】
本発明のベルト芯地は、耐久着用に際し、ベルト芯地の長さ方向に垂直な方向を構成する繊維の折れ曲がりを防止し、シワ付きや折れ曲がり筋がなく、ベルト芯地としての耐久的外型保持に優れ、かつ表生地や、体動の追従性に耐久的に優れ、更に仕立て映えにも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0010】
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/またはグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0011】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。弾性率は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体と、トリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種または二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしてもよい。
ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は質量%で50%以上である。
【0013】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等またはグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0014】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0015】
本発明のベルト芯地の長さ方向を構成するポリトリメチレンテレフタレート系繊維のうち、耐久的な着用に際しても、ベルト芯地の長さ方向に直交する方向を構成する繊維の折れ曲がりを防止し、シワ付きや折れ曲がり筋を発生させず、ベルト芯地としての耐久的外型保持に優れる面で特に好ましいのは、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維である。
【0016】
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成され、具体的には、サイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に接合されたものであり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。
【0017】
二種のポリエステル成分の複合比は、一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲でよく、また接合面形状も直線または曲線形状のものが挙げられるが、これらは特には限定されない。
このような、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。この繊維は、二種のポリエステルポリマーが、サイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は、好ましくは1.00〜2.00であり、偏芯鞘芯型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0018】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)、並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されたものが好ましい。
【0019】
上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが使用可能であるが、特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の目的達成上、好適な潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、初期引張抵抗度が、好ましくは10〜30cN/dtex、より好ましくは20〜30cN/dtex、最も好ましくは20〜27cN/dtexの範囲のものである。初期引張抵抗度が30cN/dtexを越えると、ソフトな風合いが得られにくい場合があり、10cN/dtex未満のものは製造が困難である。顕在捲縮の伸縮伸長率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは10〜80%、最も好ましくは10〜60%の範囲である。顕在捲縮の伸縮伸長率が10%未満では、本発明の目的達成が不充分となる場合があり、100%を越える繊維の製造は困難である。顕在捲縮の伸縮弾性率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは85〜100%、最も好ましくは85〜97%の範囲である。顕在捲縮の伸縮弾性率が80%未満では、本発明の目的達成が不充分となる場合があり、100%を越える繊維の製造は困難である。
【0021】
さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexの範囲である。100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex未満では、本発明の目的達成が不充分となる場合があり、0.5cN/dtexを越える繊維の製造は困難である。
【0022】
熱水処理後の伸縮伸長率は、好ましくは100〜250%、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%の範囲である。熱水処理後の伸縮伸長率が100%未満では、本発明の目的達成が不充分となる場合があり、250%を越える繊維の製造は困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%の範囲である。熱水処理後の伸縮弾性率が90%未満では、本発明の目的達成が不充分となる場合がある。
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
【0023】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.40(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.35(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、より好ましくは0.85〜1.00(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.00(dl/g)である。
この複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましい。0.85〜1.15(dl/g)がさらに好ましく、0.90〜1.10(dl/g)が最も好ましい。
【0024】
本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0025】
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート繊維の紡糸については、例えば上記の各種特許公開公報に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用しても良い。
【0026】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでも良い。
【0027】
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、単糸デニールが0.1〜5デニール程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
本発明においては、かかるポリトリメチレンテレフタレート系繊維が捲縮糸であると、特にベルト芯地が織物である場合に、折れ曲がり現象の改善が大きく好ましいものである。
【0028】
以下に好ましい態様である捲縮糸について詳述する。
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸の捲縮伸長率は100〜400%であることが好ましく、より好ましくは120〜400%、最も好ましくは150〜400%である。捲縮弾性率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80〜100%、最も好ましくは90〜100%である。捲縮糸を構成する単糸の繊度は、好ましくは0.5〜10dtex、より好ましくは1〜8dtex、捲縮糸全体の繊度、すなわち、総繊度は、好ましくは11〜330dtex、より好ましくは22〜330dtexである。しかし、これらに限定されるものではない。
このような捲縮糸としては、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸、ニットデニット糸、押し込み加工糸等が挙げられるが、なかでも仮撚加工糸が好ましい。繊維の種類としては、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が好ましく、さらにこの潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の仮撚加工糸がより好ましい。
【0029】
本発明の捲縮糸の好ましい例である仮撚加工糸は、一般に用いられているピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる形式の仮撚り機を用いて製造されたものでもよいが、1ヒーター仮撚(ノンセットタイプ)したものの方が、2ヒーター仮撚(セットタイプ)のものより好ましい。
【0030】
仮撚ヒーター温度は、第1ヒーターの出口直後の糸条温度が、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃、最も好ましくは130〜170℃である。第2ヒーター温度は、好ましくは100〜210℃、より好ましくは第一ヒーターの出口直後の糸条温度に対して−30〜+50℃の範囲である。第2ヒーター内のオーバーフィード率は+3%〜+30%が好ましい。
【0031】
仮撚数(T1)は、ポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工において通常に用いられる範囲でよく、次式で計算される。この場合、仮撚数の係数(K1)の値が18500〜37000の範囲であることが好ましい。
T1(T/m)=K1/[原糸の繊度(dtex)]0.5
本発明において、仮撚加工糸は、好ましくは2000m/分以上、より好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸が好ましい。
【0032】
本発明でのPOYとは、一般的に部分配向糸、部分配向未延伸糸、高配向未延伸糸等と呼称されているものである。
このPOYの延伸仮撚加工糸は、例えば、特開2001−20136号公報、特開2001−164433号公報に開示されているものである。
ここで、POYの破断伸度は、好ましくは40%以上特に60%以上、さらに80%以上、250%以下特に200%以下、180%以下の破断伸度を有するPOYが好ましい。
【0033】
また、POYの延伸仮撚加工糸の単糸繊度は0.5〜5dtexが好ましく、更に好ましくは1〜2.5dtexである。0.5dtex未満では本発明の目的達成が不充分となる傾向にあり、5dtexを超えると風合いが粗硬となる傾向にある。
また、POYの延伸仮撚条件としては、延伸倍率は好ましくは1.05〜2.00倍、特に1.05〜1.70倍が好ましく、仮撚数(T1)は、仮撚数の係数(K1)の値が23000〜36000であることが好ましく、更に好ましくは27000〜34000の範囲であることが好ましい。
【0034】
仮撚加工糸は、無撚で用いてもよいが、仮撚方向と逆方向に追撚を施した追撚仮撚加工糸、予め追撚した方向と異方向に仮撚加工した異方向先撚仮撚加工糸を用いてもよい。特に追撚仮撚加工糸、異方向先撚仮撚加工糸には、前述した部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸を用いると好ましい。
【0035】
追撚仮撚加工糸の追撚数(T2)は次式で計算される撚係数(K2)が2700〜13000であることが好ましく、より好ましくは3000〜10000の範囲である。
T2(T/m)=K2/[仮撚加工糸の繊度(dtex)]0.5
追撚後は、スチームセット等の方法により60〜80℃の温度で30〜60分の撚止めセットを施すことが好ましい。
【0036】
異方向先撚仮撚加工糸の仮撚数(T3)は、次式で計算される仮撚数の係数(K3)の値が21000〜33000であることが好ましく、より好ましくは25000〜32000の範囲である。
T3(T/m)=K3/[先撚糸の繊度(dtex)]0.5 +T4
先撚数(T4)は、次式で計算される撚係数(K4)が2700〜13000であることが好ましく、より好ましくは4500〜12000の範囲である。
T4(T/m)=K4/[原糸の繊度(dtex)]0.5
仮撚加工に先立って、予め先撚を加えた先撚糸は、スチームセット等の方法により60〜80℃の温度で30〜60分の撚止めを施すことが好ましい。
【0037】
尚、本発明の目的を損なわない範囲内で通常30重量%以下の範囲内で天然繊維、合成繊維等他の繊維例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種または異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸または、例えば沸水収縮率15〜30%程度高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0038】
本発明のベルト芯地においては、ベルトの長さ方向を構成する繊維にポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いたことが特徴である。一般にベルト芯地は芯地用基布をタテ方向に所定幅にスリットして作成する。従って織物の場合では、経糸にポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いることが必要である。
【0039】
ベルト芯地が内蔵されている衣服、例えばスカートやスラックスを着用する際、ベルト芯地にかかる負荷はベルト芯地の長さ方向、つまりはウェスト周り方向の動きだけでなく、ベルト芯地の長さと垂直の方向にも負荷がかかる。これはウェスト部分を中心として、体が前後・左右に動くためである。この前後左右に起こる屈曲的動きから発生する応力負荷が分散することなくベルト芯地にかかるとベルト芯地の長さ方向に垂直な方向を構成する繊維の折れ曲がりが発生し、シワ付きや折れ曲がり筋がつきベルト芯地の外型破壊が起こり、外観、着用感の低下が著しい。応力を分散させるためには、垂直方向を構成する繊維がある程度ソフトに伸長するものとすることが効果的と考えられるが、この場合、表地やベルト部分の仕立て映え、保型性に影響するベルト芯地のハリ感が著しく劣るため、適切ではなく、垂直方向を構成する繊維は、伸びのないものの方が好ましい。
【0040】
従って、ベルト芯地の長さと垂直方向を構成する繊維の折れ曲がりを防止するためには、長さ方向を構成する繊維に耐久的な伸長性や回復性を付与し、この繊維の動きによって、体の屈曲動作から発生する応力を分散させることが必要である。ポリトリメチレンテレフタレート繊維をベルト芯地の長さ方向を構成する繊維に使用すると、体の動きに追従しソフトに伸長し、かつ耐久的な伸長性、回復性に優れるため、上記効果が発揮され、ベルトの長さに垂直な方向を構成する繊維の折れ曲がりを防止することができる。緯糸の素材、糸形態は特に限定されない。例えば素材としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合繊や綿等が用いられる。また形態としては、原糸、加工糸、紡績糸等が使用できる。形態において、特にベルト芯地の長さに対し垂直方向を構成する繊維に殆ど伸度のない紡績糸を用いた場合には、折れ曲がり防止効果はより発揮される。
【0041】
更にソフトな伸長性と耐久的伸長性、回復性を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維をベルト芯地の長さ方向を構成する繊維に使用すると、表地や体の動きに対する追従性も優れており、更にベルト芯地の長さ方向のヘタリも防止できる。
耐久的な伸長回復性に優れるということは、長期の着用によって、ベルト部分の長さに緩みが出て、ヘタることがなく、着用感を保持し、かつ外観変化を引き起こさないことに繋がる。
【0042】
耐久的な伸長回復性を発揮させるには、ベルト芯地の長さ方向に9.8N/cmの応力相当の伸長を1万回与えた後の耐久伸長回復率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは92〜99%、更に好ましくは94〜99%である。90%未満では、耐久着用後にベルトの長さ方向に歪みが生じ、ゆるみが発生する。
【0043】
また、長期の使用に耐え、常に初期と同様の着用感を得るためには、一定伸長或いは一定応力相当の伸長を繰り返しさせた後も、その伸長にかかる応力が初期と変わらないことが必要である。応力が変化しないことは、長期の使用後もベルト部分の締め付け感が変わらず、常に体にフィットした感覚が続き、着用感が変わらないことに通ずる。
【0044】
本発明のベルト芯地の長さ方向に応力9.8N/cmまで伸長させたときの初期定応力ヒステリシスロス曲線と、その後9.8N/cm応力相当の伸長率X%を1万回繰り返した後に、再度応力9.8N/cmまで伸長させた時の繰返し伸長後定応力ヒステリシスロス曲線の関係を図2に示す。長期使用に伴う締め付け感、即ちフィット感が変化しないようにするには、ベルト芯地の長さ方向に9.8N/cmの応力相当の伸長X%を1万回与えた後に、再度X%伸長させた場合の応力(Y1)と初期応力(9.8N/cm)の比にあたるフィット感保持率が60%以上であることが好ましく、より好ましくは65%〜99%、更に好ましくは70%〜99%である。60%未満の場合、耐久着用後のベルト部分の締め付け具合、フィット感が低下し、着用感に劣ることがある。また同様に、繰返し伸長後の伸長(4/5)X%時の応力(Y2)と伸長(4/5)X%時初期応力(Y0)から算出した(4/5)X伸長時フィット感保持率も同様に60%以上であることが好ましく、より好ましくは65%〜99%、更に好ましくは70%〜99%である。
上記に示した耐久的な伸長回復性に優れることと、耐久的なフィット感に優れることの両方が満足される時、先に述べたような着用に伴うベルトの折れ曲がりやシワつきを防止することができるのである。
【0045】
なお、従来の長さ方向にポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を用いたベルト芯地では、ソフト伸長性や、耐久的伸長回復性に劣る。そのため、耐久着用に対し、ベルト芯地の垂直方向の折れ曲がりを防止することはできず、その結果シワ付きや折れ曲がり筋が発生し外型保持ができず、また着用感も低下する。更に、長さ方向のヘタリによる外型喪失や、着用フィット感の低下を防止することは困難である。
【0046】
ソフト伸長性を発揮させる布帛形態としては、織物の場合では平、綾織、朱子織など様々な組織が考えられ、また織物だけでなくトリコット編地を用いれば、更なる伸長性が発揮されるのは明らかである。しかしながら、ベルト芯地を表地と貼り合せる場合、接着剤にあたる樹脂をドット状にコーティングする必要がある。そのため、ベルト芯地の表面に凹凸が多い場合には、安定して均一に樹脂をコーティングすることが困難となる。また、ベルト芯地表面の平滑性が下がる、即ち生地表面の凹凸隙間等が増えると、樹脂が最表面に載らず、隙間やくぼみに入る場合があるため、表地との接着に寄与しない樹脂塗布量の割合が増える。その結果、表地との接着強力が低下し、耐久的な着用において表地とベルト芯とが剥離し、ベルト部分の形態保持や外観性が著しく低下することとなる。
【0047】
本発明者らは、布帛としてソフトストレッチ性を出し、かつ表地との貼り合せに利用される樹脂コーティングを安定的に均一塗布させ、更に表地との接着強力低下を起こさないようにするための布帛形態について鋭意検討した結果、並び平組織の織物が好適であるとの結論に至った。即ち、並び平組織の織物にすることで、前記した何れをの性能も満足することができるのである。
【0048】
本発明のベルト芯地の特徴は、並び平組織とすることで、これにより芯地と表地をドット樹脂で張り合わせた後の接着強力が高いまま、本発明の特徴である回復性に優れた伸長特性を保持したベルト芯地とすることができる。
【0049】
ここで並び平組織とは、織物表面に横または縦方向に筋を出した平織物模様の畝組織の1つである。畝組織には、平織の同一ひ口によこ糸2本以上を横入れしよこ糸の方向に筋を表した、たて畝組織と、これと畝方向が90℃回転したよこ畝組織がある。並び平組織は、緯方向または、経方向に糸を2本引き揃え入れた組織となる。
【0050】
本発明の場合は、伸縮性の発現するポリトリメチレンテレフタレート繊維を2本引きそろえて打ち込むことが必要であり、通常インサイドベルトは、反物の長さ方向に一定幅でスリットして、製品に仕上げるため、図1に表したように、経方向にポリトリメチレンテレフタレート糸を2本引きそろえた2/2よこ畝組織の並び平組織の織物とすることが好ましい。
【0051】
本発明の並び平組織の織物で構成される布帛の密度は、表面平滑性とストレッチ性の観点から下記式で示される生地のカバーファクターが、1700〜2300の範囲が好適である。更に好適には、1800〜2200の範囲である。
カバーファクター=√(経糸dtex)×A+√(緯糸dtex)×B
A,B :夫々経糸、緯糸の密度 本/吋
カバーファクターが1700未満の場合は、芯地生地としてかなり粗い組織のものとなり、樹脂コーティング時の樹脂ジミ等の問題が懸念される。また2300超の場合には、
ストレッチ性を保持しつつ、このカバーファクターに仕上げると、シボ状表面となるため
先に述べた理由により樹脂が均一に塗布されず、かつ凹部への樹脂付着も起こるために
表地との接着強力が大きく低下することとなる。
【0052】
本発明のベルト芯地においては、目的とするストレッチ性能、表面平滑性及び、上記カバーファクターを満足する範囲で、目的に応じた布帛厚み、目付けを考慮して、使用糸の繊度、密度を選定すれば良い。
本発明のベルト芯地用布帛の加工方法としては特に限定されないが、精練処理後、布帛の経方向を構成するポリトリメチレンテレフタレート繊維の捲縮性の状態を損なわないように、乾燥またはプレセット、染色、更に仕上げを行うことができる。
【0053】
仕上げ工程を行うことにより、染色後、生地の経方向構成糸の捲縮嵩高性を発現、保持させ、加工時の目ズレ、当り等の欠点を減少させることができる。この時、芯地基布自体に保型性と適度なハリ・コシ感を持たせるために、硬仕上げ剤を付与することが好ましい。この際使用する樹脂としてはエチレンカーボネート系のものが好適である。本発明の芯地は、非接着ベルト芯地、または接着ベルト芯地の何れの芯地にも適用されるが、接着ベルト芯地に適用した場合により好適である。
【0054】
接着ベルト芯地においては、ポリアミド系合成樹脂接着剤を始め、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニル系、などの合成樹脂を適宜選択して用いることができ、その貼着状態は限定されるものではない。接着性及び洗濯耐久性の点から、ドット形態での貼着が好ましく、いわゆるシングルドットよりも、ダブルドットの方が、接着力向上、逆シミ防止及びソフト風合保持面からも好ましい。樹脂の付与量は通常の範囲内で適宜選択すれば良く、例えば17〜30ポイント/2.54cm程度である。接着樹脂の付与の前後にエメリーペーパー、ブラッシング等により起毛加工しても良い。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明に用いる評価方法は以下である。
【0056】
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
【0057】
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸またはポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0058】
(2)初期引張抵抗度:JIS L 1013 化学繊維フィラメント糸試験方法
初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出し、10回の平均値を求めた。
【0059】
(3)伸縮伸長率、伸縮弾性率:JIS L 1090 合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法 伸縮性試験方法 A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)、伸縮弾性率(%)を算出し、10回の平均値を求めた。顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行った。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いた。
【0060】
(4)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製 商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
【0061】
(5)ベルト折れ曲がり性:着用試験
被験者10人に対し、ウェスト部のゆとり率を−5%として、トロピカルウールを表地として、タイトスカートを作成した。実施例及び比較例の試料をベルト幅5cmになるようにカットし、このスカートのベルト芯地として使用した。1ヶ月着用した後の、ベルト部分のしわ、折れ曲がり発生の外観評価を3段階にて行った。(平均9時間/日着用)
尚、着用期間中、一週間に一度の割合で、家庭用ドライ洗濯、平干し乾燥を実施した。
○ :折れ曲がり、しわなし
△ :若干しわ、折れ筋あり
× :しわ、折れ曲がり発生
【0062】
(6)芯地の耐久伸長回復性(耐久伸長回復率、フィット感保持率)
3cm幅の接着ベルト芯地に10cm間をマークし、このマークに従って、チャック間距離10cmで引っ張り試験機に取り付け、29.4N(=9.8N/cm)なるまで伸長し、直ぐに戻し定応力ヒステリシスロス曲線を得た。次いでこの試料をデマッチャー試験機に取り付け、先の曲線から得た9.8N/cm時の伸長率(X%)で、1万回繰り返し伸長させた。伸長後、直ぐにマーク間キョリを測定(L1)し、下式によって耐久伸長回復率を求めた。次いで、このマーク間を掴んで再びチャック間キョリ10cmの引っ張り試験機で9.8N/cmまで伸長させ、直ぐに戻して、1万回伸長直後の定応力ヒステリシスロス曲線を得た。2つの定応力ヒステリシスロス曲線から、下式によってフィット感保持率を測定した。
【0063】
更に、デマッチャー試験後1時間および8時間放置した後のマーク間キョリ(L2,L3)を測定し、繰り返し伸長時の一定時間放置後耐久伸長回復率を求めた。
耐久伸長回復率(%)={1−(L1−10)/10}×100
1時間放置後耐久伸長回復率(%)={1−(L2−10)/10}×100
8時間放置後耐久伸長回復率(%)={1−(L3−10)/10}×100
フィット感保持率(%)= Y1/29.4 ×100
Y1:1万回伸長後再定応力伸長ヒスロス曲線の往X%伸長時応力(N)
(4/5)X伸長時フィット感保持率(%)= Y2/Y0 ×100
Y0:初期定応力伸長ヒステリシスロス曲線の往(4/5)X%伸長時応力(N)
Y2:1万回伸長後再定応力伸長ヒステリシスロス曲線の往(4/5)X%伸長時応力(N)
【0064】
(7)追従性
30cm四方のウールトロピカル生地を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置し、その後この生地に接着芯地を接着(140℃×245kpa×12sec)する。
次いで、水平面に載置させた後、ウールトロピカル生地面に噴霧器により水を噴霧−自然乾燥を繰り返し、何回目で水平面からの四角の反り上がり(カール)が発生したかで評価する。カールが発生した時期が遅い方が追従性に優れている。
【0065】
(8)表地と貼り合せ後の剥離強力
表地としてウールギャバ織物を用い、下記の条件にてハシマHP60SLAにてベルト芯地を張り合わせた後、JIS−L−1086に準拠し、引張試験機を用いて表地と芯地の剥離強力を測定した。
接着条件:130℃、15秒、0.29MPa(線圧1.7)
ウールギャバ織物 :経、緯とも60番ウール使用
密度 経84本/2.54ssm 緯55本/2.54cm
【0066】
〔実施例1〕
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延撚して、167dtex/72fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントの原糸を得た。得られた原糸の固有粘度は高粘度側が[η]=0.88、低粘度側が[η]=0.70であった。この原糸の物性は表1に示した。
得られた原糸を、石川製作所(株)社製のピン仮撚機IVF338を用いて、糸速190m/分、仮撚数3400T/m、仮撚方向をS及びZ、仮撚加工温度170℃、1stフィード0.0%、TUフィード4.1%の条件で仮撚加工を施し、S、Z2本をまとめて合糸して巻き取りを行った。
【0067】
得られた167dtex/72fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント仮撚糸S/Z双糸を経糸とし、アクリル紡績糸12番糸を緯糸として、織密度経31本/2.54cm、緯31本/2.54cmで図1に示す並び平組織の織物の生機を得た。この生機を連続精練機にて40m/分の速度で90℃精練し、ピンテンターを用いて130℃で乾燥後、170℃、1分のプレセットを行った。次いで液流染色機にて105℃で20分間染色を行い、洗浄後、130℃で拡布乾燥を行った後、硬仕上げ剤として、9%のエチレンカーボネート液に含浸、マングル脱水した後、180℃、2分の仕上げセットを行い、織密度経37本/2.54cm、緯43本/2・54cmの芯地用基布を得た。尚、仕上げセットはプレット時同様、過度な経方向テンションがかからないように注意した。
得られた芯地用基布の表面にアクリル酸エステル系ラテックスを26ポイント/2.54cmのドット状にメッシュを通して塗布し、パウダー状のポリアミド系低融点樹脂を塗布し、乾燥させ、固着させて、ダブルドット接着ベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、着用テスト後のベルト部分の折れ曲がりによるシワ付きや折れ曲がり筋発生がなく、更に表地との剥離部分が全く認められないものであった。耐久外型保持性に優れるものであった。更にカールが18回目で初めて発生し、表地への追従性に極めて優れ、体の動きに対する追従性に優れるため着用感も良好で、耐久的な伸長回復性を有し、耐久伸長後のフィット感保持性にも優れるものであった。また、表地との剥離強力の高いものであった。
【0068】
〔比較例1〕
実施例1と同じ糸を用い、織物組織を平組織とする以外は全て同じとして、織密度経36本/2.54cm、緯40本/2.54cmの芯地用基布を得た。実施例1と同様に接着用樹脂を塗布してダブルドット接着ベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、耐久的な伸長回復性は有するものの、着用テスト後、部分的に表地との剥離が見受けられ、剥離強力も低いものであった。
【0069】
〔比較例2〕
経糸にポリエチレンテレフタレートの仮撚加工糸167T/48F双糸、緯糸に実施例1で使用したアクリル紡績糸12番糸を用いた図1に示す並び平組織の織物生機を実施例1と同様の染色加工処理、樹脂塗布を行い、織密度経58本/2.54cm、緯32本/2.54cmのベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、着用後のベルト部のシワ・折れ曲がりが大きく外観が著しく悪く、着用感も低下するものであった。更にカールは2回目で発生し、表地への追従性に劣り、また体の動きに対する追従性が低いので着用感にも劣るものであった。また耐久的な伸長回復性は良好なものの、耐久伸長後のフィット感保持率に劣り、また着用後のベルト部のシワ・折れ曲がりが大きく外観が著しく悪いものであった。
【0070】
〔比較例3〕
経糸にポリブチレンテレフタレートの仮撚加工糸167T/48F双糸を用いた以外は全て比較例2と同じとして織密度経42本/2.54cm、緯42本/2.54cmの並び平組織のベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、着用後のベルト部のシワ・折れ曲がりが大きく外観が著しく悪く、着用感も低下するものであった。更にある程度表地への追従性はあるものの、耐久的な伸長回復性や、耐久伸長後のフィット感保持率に劣るものであった。
【0071】
〔実施例2〕
固有粘度が[η]=0.92のポリトリメチレンテレフタレートと[η]=0.50のポリエチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延撚して、167dtex/72fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントの原糸を得た。この原糸を使用する以外は全て実施例1と同じとして密度経37本/2.54cm、42本/2.54cmの並び平組織の織物ベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、実施例1同様着用テスト後のベルト部分の折れ曲がりによるシワ付きや折れ曲がり筋発生更に、表地との剥離が全く発生しておらず、耐久外型保持性に優れるものであった。更に、表地への追従性に極めて優れ、体の動きに対する追従性に優れるため着用感も良好で、耐久的な伸長回復性を有し、耐久伸長後のフィット感保持性にも優れるものであった。また表地との剥離強力も高いものであった。
【0072】
〔実施例3〕
実施例1と同じ経糸を用い、緯糸として、ポリエチレンテレフタレート繊維と綿の混紡糸16番の糸を用いる他は全て実施例1と同じとして、密度経50本/2.54cm、緯50本/2.54cmの並び平組織の織物ベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、実施例1同様着用テスト後のベルト部分の折れ曲がりによるシワ付きや折れ曲がり筋発生更に、表地との剥離が全く発生しておらず、耐久外型保持性に優れるものであった。更に、表地への追従性に極めて優れ、体の動きに対する追従性に優れるため着用感も良好で、耐久的な伸長回復性を有し、耐久伸長後のフィット感保持性にも優れるものであった。また表地との剥離強力も高いものであった。
【0073】
〔実施例4〕
固有粘度[η]=0.9のポリトリメチレンテレフタレートを用い、3000m/minの紡糸速度で紡糸してPOYを得た。次いで、仮撚加工機;村田機械製作所(株)製の33H仮撚機を用いて、仮撚加工糸の延伸倍率を設定し、仮撚ヒーター出口の糸条温度160℃、仮撚数2600T/mで延伸仮撚加工を行い、167T/72f1ヒーター延伸仮撚糸(仮撚方向S並びにZの2種)を得た。この2種の仮撚加工糸を合糸して巻き取った双糸を経糸とし、実施例1と同じ緯糸を用いて、実施例1と同じ染色加工、接着剤塗布を行い、密度経36本/2.54cm、緯39本/2.54cmの並び平組織の織物ベルト芯地を得た。
得られたベルト芯地は、表2に示すように、実施例1同様着用テスト後のベルト部分の折れ曲がりによるシワ付きや折れ曲がり筋発生更に、表地との剥離が全く発生しておらず、耐久外型保持性に優れるものであった。更に、表地への追従性に極めて優れ、体の動きに対する追従性に優れるため着用感も良好で、耐久的な伸長回復性を有し、耐久伸長後のフィット感保持性にも優れるものであった。また表地との剥離強力も高いものであった。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のベルト芯地は、耐久着用に際し、ベルト芯地の長さ方向に垂直な方向を構成する繊維の折れ曲がりを防止し、シワ付きや折れ曲がり筋がなく、ベルト芯地としての耐久的外型保持に優れ、かつ表生地や、体動の追従性に耐久的に優れ、更に仕立て映えにも優れる新規なベルト芯地であり、スカートやスラックス等のベルト部分に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明における並び平組織の組織図例。
【図2】フィット感保持率測定における伸長−応力関係の模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並び平組織の織物で構成されたベルト芯地であって、該芯地の長さ方向を構成する繊維が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維であることを特徴とするベルト芯地。
【請求項2】
前記ベルト芯地の長さ方向に9.8N/cmの応力相当の伸長を1万回与えた直後の耐久伸長回復率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載のベルト芯地。
【請求項3】
ベルト芯地の長さ方向に9.8N/cmの応力相当の伸長X%を1万回与えた後に、再度X%伸長させた場合の応力と初期応力の比にあたるフィット感保持率が60%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト芯地。
【請求項4】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、二種以上のポリエステル成分で構成され、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のベルト芯地。

【図1】
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【図2】
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