説明

ベンジジン誘導体、正孔輸送材料、及びこれらの誘導体または正孔輸送材料を用いた発光素子、発光装置、電子機器

【課題】 耐熱性が良く、正孔輸送材料として用いることのできる物質を提供する。
【解決手段】 N,N´−ビス(スピロ−9,9´−ビフルオレン−2−イル)−N,N´−ジフェニルベンジジンに代表されるベンジジン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を作製するための材料として用いることのできる物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ等に利用されている発光素子の多くは、一対の電極間に発光物質を含む層が挟まれた構造を有する。このような発光素子では、一方の電極から注入された電子と他方の電極から注入された正孔とが再結合することによって形成された励起子が、基底状態に戻るときに発光する。
【0003】
発光素子の分野では、発光効率が高く、色度が良く、また、劣化が少なく寿命の長い発光素子を得るために、発光素子を作製するための材料となる物質について様々な研究が行われている。
【0004】
ところで、発光素子の劣化の一因として、発光素子を構成する物質の結晶化が挙げられる。その為、結晶化し難い材料の開発が行われており、例えば特許文献1には、ガラス転移温度が高く耐熱性の良い有機材料について開示されている。
【特許文献1】WO00/27946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性が良く、正孔輸送材料として用いることのできる物質について提供することを課題とする。また、本発明は、非結晶状態を保ちやすく、正孔輸送材料として用いることのできる物質について提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一は、一般式(1)で表されるベンジジン誘導体である。
【0007】
【化01】

一般式(1)において、R1は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。
【0008】
本発明の一は、上記一般式(1)で表されるベンジジン誘導体を含む正孔輸送材料である。
【0009】
本発明の一は、N,N’−ジフェニルベンジジンと、2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンまたは2−ブロモ−2’,7’−ジアルキル−スピロ−9,9’−ビフルオレンとのカップリング反応によって得られ、融点が323℃〜324℃である化合物である。
【0010】
本発明の一は、N,N’−ジフェニルベンジジンと、2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンまたは2−ブロモ−2’,7’−ジアルキル−スピロ−9,9’−ビフルオレンとのカップリング反応によって得られ、融点が323℃〜324℃である化合物を含む正孔輸送材料である。
【0011】
本発明の一は、上記一般式(1)で表されるベンジジン誘導体を含む層を有する発光素子である。
【0012】
本発明の一は、N,N’−ジフェニルベンジジンと、2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンまたは2−ブロモ−2’,7’−ジアルキル−スピロ−9,9’−ビフルオレンとのカップリング反応によって得られる化合物を含む層を有する発光素子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって耐熱性の良いベンジジン誘導体を得ることができる。また、本発明によって非結晶状態を保ちやすいベンジジン誘導体を得ることができる。
【0014】
本発明によって、耐熱性の良い正孔輸送材料を得ることが出来る。また、本発明によって、非結晶状態を保ちやすい正孔輸送材料を得ることができる。
【0015】
本発明のベンジジン誘導体は耐熱性が良いため、本発明のベンジジン誘導体を用いることによって、熱に起因した特性変化の少ない発光素子を得ることができる。また、本発明のベンジジン誘導体は非結晶状態を保ちやすいため、本発明のベンジジン誘導体を用いることによって、結晶化に起因した素子の劣化が少ない発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一態様について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の一態様は、構造式(2)〜(5)で表されるベンジジン誘導体である。
【0018】
【化02】

【化03】

【化04】

【化05】

【0019】
構造式(2)〜(5)で表されるベンジジン誘導体は、ガラス転移温度が高く、耐熱性が良い。また、構造式(2)〜(5)で表されるベンジジン誘導体は、結晶化し難い。
【0020】
また、本発明のベンジジン誘導体の合成方法について特に限定はないが、合成スキーム(a−1)で表されるように、N,N’−ジフェニルベンジジンと、2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンまたは2−ブロモ−2’,7’−ジアルキル−スピロ−9,9’−ビフルオレンとのカップリング反応によって合成することができる。
【0021】
【化06】

【0022】
合成スキーム(a−1)において、R10は、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。ここで炭素数3または炭素数4のアルキル基は分岐状であることが好ましい。
【0023】
以上に説明した本発明のベンジジン誘導体は、正孔輸送層を形成するための材料、つまり正孔輸送材料として用いることができる。
【0024】
(実施の形態2)
本発明のベンジジン誘導体を正孔輸送材料として用いた発光素子の態様について、図1を用いて説明する。
【0025】
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素子が表されている。
【0026】
このような発光素子において、第1の電極101から注入された正孔と、第2の電極102から注入された電子とは、発光層113において再結合し、発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質は基底状態に戻るときに発光する。なお、本形態の発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極として機能する。また、発光物質とは、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光をし得る物質である。
【0027】
ここで、発光層113について特に限定はないが、発光物質が、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、分散して含まれた層であることが好ましい。これによって、発光物質からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。なお、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップを言う。
【0028】
発光物質について特に限定はなく、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光をし得る物質を用いればよい。例えば、赤色系の発光を得たいときには、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン等、600nmから680nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。また緑色系の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等、500nmから550nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。また、青色系の発光を得たいときは、9,10−ビス(2−ナフチル)−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(BAlq)等、420nmから500nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を用いることができる。
【0029】
また、発光物質を分散状態にするために用いる物質について特に限定はなく、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等を用いることができる。
【0030】
また、第1の電極101について特に限定はないが、本形態のように、陽極として機能するときは、仕事関数の大きい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)、または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。なお、第1の電極101は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0031】
また、第2の電極102について特に限定はないが、本形態のように、陰極として機能するときは、仕事関数の小さい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、リチウム(Li)またはマグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属等を含んだアルミニウム等を用いることが好ましい。但し、先に述べたインジウム錫酸化物(ITO)等を用いて形成されていても構わない。なお、第2の電極102は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0032】
なお、発光した光を外部に取り出すために、第1の電極101と第2の電極のいずれか一または両方は、インジウムスズ酸化物等のから成る電極、または可視光を透過出来るように数〜数十nmの厚さで形成された電極であることが好ましい。
【0033】
また、第1の電極101と発光層113との間には、図1に示すように、正孔輸送層112を有する。ここで、正孔輸送層とは、第1の電極101から注入された正孔を発光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、正孔輸送層112を設け、第1の電極101と発光層113とを離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
【0034】
なお、正孔輸送層112について、特に限定はないが、一般式(1)または、構造式(2)〜(4)のいずれかで表される本発明のベンジジン誘導体によって形成されたものを用いることが好ましい。本発明のベンジジン誘導体は耐熱性が高い。その為、本発明のベンジジン誘導体を正孔輸送材料として用いることによって、熱に起因した特性変化が少ない正孔輸送層112を形成することができる。また、本発明のベンジジン誘導体は結晶化し難い。その為、本発明のベンジジン誘導体を正孔輸送材料として用いることによって結晶化し難い正孔輸送層112を形成することができる。
【0035】
なお、正孔輸送層112は、一般式(1)または、構造式(2)〜(4)のいずれかで表される本発明のベンジジン誘導体から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
【0036】
また、第2の電極102と発光層113との間には、図1に示すように、電子輸送層114を有していてもよい。ここで、電子輸送層とは、第2の電極102から注入された電子を発光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層114を設け、第2の電極102と発光層113とを離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
【0037】
なお、電子輸送層114について特に限定はなく、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等によって形成されたものを用いることができる。この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体等によって形成されたものであってもよい。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いて形成されたものであってもよい。電子輸送層114は、以上に記載したような正孔の移動度よりも電子の移動度が高い物質を用いて形成することが好ましい。また、電子輸送層114は、10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することがより好ましい。また、電子輸送層114は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
【0038】
さらに、第1の電極101と正孔輸送層112との間には、図1に示すように、正孔注入層111を有していてもよい。ここで、正孔注入層とは、陽極として機能する電極から正孔輸送層112へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。
【0039】
正孔注入層111について特に限定はなく、モリブデン酸化物(MoOx)やバナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化物(WOx)、マンガン酸化物(MnOx)等の金属酸化物によって形成されたものを用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、4,4−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン系の化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
【0040】
また、第2の電極102と電子輸送層114との間には、図1に示すように、電子注入層115を有していてもよい。ここで、電子注入層とは、陰極として機能する電極から電子輸送層114へ電子の注入を補助する機能を有する層である。なお、電子輸送層を特に設けない場合は、陰極として機能する電極と発光層との間に電子注入層を設け、発光層への電子の注入を補助してもよい。
【0041】
電子注入層115について特に限定はなく、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いて形成されたものを用いることができる。この他、Alq3または4,4−ビス(5−メチルベンズオキサゾル−2−イル)スチルベン(BzOs)等のように電子輸送性の高い物質と、マグネシウムまたはリチウム等のようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属とを混合したものも、電子注入層115として用いることができる。
【0042】
以上に説明した本発明の発光素子において、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法、またはインクジェット法、または塗布法等、いずれの方法で形成しても構わない。また、第1の電極101または第2の電極102についても、スパッタリング法または蒸着法等、いずれの方法を用いて形成しても構わない。
【0043】
以上のように、本発明のベンジジン誘導体を用いて正孔輸送層を形成することによって、熱に起因した正孔輸送層の特性変化に因る素子特性の変化が少ない発光素子を得ることができる。また、本発明のベンジジン誘導体を用いて正孔輸送層を形成することによって、正孔輸送層の結晶化に因る劣化が少ない発光素子を得ることができる。
【0044】
(実施の形態3)
実施の形態2において説明した本発明の発光素子は、表示機能を有する発光装置の画素部や、照明機能を有する発光装置の照明部に適用することができる。そして、本発明の発光素子は熱に起因した特性変化や結晶化に起因した劣化が少ないため、本発明の発光素子を用いることによって発光素子の劣化に起因した画像や照明光の不具合が少ない発光装置を得ることができる。
【0045】
本形態では、表示機能を有する発光装置の回路構成および駆動方法について図3〜6を用いて説明する。
【0046】
図3は本発明を適用した発光装置を上面からみた模式図である。図3において、基板6500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(フレキシブルプリントサーキット)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基盤(PWB)6504が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上にICチップを実装したもの(TCP)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
【0047】
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列している。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
【0048】
図4は、一画素を動作するための回路を表した図である。図4に示す回路には、第1のトランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
【0049】
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域であるかを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとして機能する領域を、それぞれトランジスタの第1電極、トランジスタの第2電極と表記する。
【0050】
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線911と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線912に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッチ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ919についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、スイッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
【0051】
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例えば図5の上面図に表すように配置することができる。図5において、第1のトランジスタ1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
【0052】
次に、駆動方法について説明する。図6は時間経過に伴ったフレームの動作について説明する図である。図6において、横方向は時間経過を表し、縦方向はゲート信号線の走査段数を表している。
【0053】
本発明の発光装置を用いて画像表示を行うとき、表示期間においては、画面の書き換え動作と表示動作とが繰り返し行われる。この書き換え回数について特に限定はないが、画像をみる人がちらつき(フリッカ)を感じないように少なくとも1秒間に60回程度とすることが好ましい。ここで、一画面(1フレーム)の書き換え動作と表示動作を行う期間を1フレーム期間という。
【0054】
1フレームは、図6に示すように、書き込み期間501a、502a、503a、504aと保持期間501b、502b、503b、504bとを含む4つのサブフレーム501、502、503、504に時分割されている。発光するための信号を与えられた発光素子は、保持期間において発光状態となっている。各々のサブフレームにおける保持期間の長さの比は、第1のサブフレーム501:第2のサブフレーム502:第3のサブフレーム503:第4のサブフレーム504=23:22:21:20=8:4:2:1となっている。これによって4ビット階調を表現することができる。但し、ビット数及び階調数はここに記すものに限定されず、例えば8つのサブフレームを設け8ビット階調を行えるようにしてもよい。
【0055】
1フレームにおける動作について説明する。まず、サブフレーム501において、1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。従って、行によって書き込み期間の開始時間が異なる。書き込み期間501aが終了した行から順に保持期間501bへと移る。当該保持期間において、発光するための信号を与えられている発光素子は発光状態となっている。また、保持期間501bが終了した行から順に次のサブフレーム502へ移り、サブフレーム501の場合と同様に1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。以上のような動作を繰り返し、サブフレーム504の保持期間504b迄終了する。サブフレーム504における動作を終了したら次のフレームへ移る。このように、各サブフレームにおいて発光した時間の積算時間が、1フレームにおける各々の発光素子の発光時間となる。この発光時間を発光素子ごとに変えて一画素内で様々に組み合わせることによって、明度および色度の異なる様々な表示色を形成することができる。
【0056】
サブフレーム504のように、最終行目までの書込が終了する前に、既に書込を終え、保持期間に移行した行における保持期間を強制的に終了させたいときは、保持期間504bの後に消去期間504cを設け、強制的に非発光の状態となるように制御することが好ましい。そして、強制的に非発光状態にした行については、一定期間、非発光の状態を保つ(この期間を非発光期間504dとする。)。そして、最終行目の書込期間が終了したら直ちに、一行目から順に次の(またはフレーム)の書込期間に移行する。これによって、サブフレーム504の書き込み期間と、その次のサブフレームの書き込み期間とが重畳することを防ぐことができる。
【0057】
なお、本形態では、サブフレーム501乃至504は保持期間の長いものから順に並んでいるが、必ずしも本実施例のような並びにする必要はなく、例えば保持期間の短いものから順に並べられていてもよいし、または保持期間の長いものと短いものとがランダムに並んでいてもよい。また、サブフレームは、さらに複数のフレームに分割されていてもよい。つまり、同じ映像信号を与えている期間、ゲート信号線の走査を複数回行ってもよい。
【0058】
ここで、書込期間および消去期間における、図4で示す回路の動作について説明する。
【0059】
まず書込期間における動作について説明する。書込期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ918を介して書込用ゲート信号線駆動回路913と電気的に接続し、消去用ゲート信号線駆動回路914とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介してソース信号線駆動回路と電気的に接続している。ここで、n行目(nは自然数)のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に映像信号が入力される。なお、各列のソース信号線912から入力される映像信号は互いに独立したものである。ソース信号線912から入力された映像信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって発光素子903は発光または非発光が決まる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。
【0060】
次に消去期間における動作について説明する。消去期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ919を介して消去用ゲート信号線駆動回路914と電気的に接続し、書込用ゲート信号線駆動回路913とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介して電源916と電気的に接続している。ここで、n行目のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に消去信号が入力される。ソース信号線912から入力された消去信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903への電流の供給が阻止される。そして、発光素子903は強制的に非発光となる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。
【0061】
なお、消去期間では、n行目(nは自然数)については、以上に説明したような動作によって消去する為の信号を入力する。しかし、前述のように、n行目が消去期間であると共に、他の行(m行目(mは自然数)とする。)については書込期間となる場合がある。このような場合、同じ列のソース信号線を利用してn行目には消去の為の信号を、m行目には書込の為の信号を入力する必要があるため、以下に説明するような動作させることが好ましい。
【0062】
先に説明した消去期間における動作によって、n行目の発光素子903が非発光となった後、直ちに、ゲート信号線911と消去用ゲート信号線駆動回路914とを非接続の状態とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912とソース信号線駆動回路915と接続させる。そして、ソース信号線とソース信号線駆動回路915とを接続させる共に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913とを接続させる。そして、書込用ゲート信号線駆動回路913からm行目の信号線に選択的に信号が入力され、第1のトランジスタがオンすると共に、ソース信号線駆動回路915からは、1列目から最終列目迄のソース信号線に書込の為の信号が入力される。この信号によって、m行目の発光素子は、発光または非発光となる。
【0063】
以上のようにしてm行目について書込期間を終えたら、直ちに、n+1行目の消去期間に移行する。その為に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線を電源916と接続する。また、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、ゲート信号線911については、消去用ゲート信号線駆動回路914と接続状態にする。そして、消去用ゲート信号線駆動回路914からn+1行目のゲート信号線に選択的に信号を入力して第1のトランジスタに信号をオンする共に、電源916から消去信号が入力される。このようにして、n+1行目の消去期間を終えたら、直ちに、m+1行目の書込期間に移行する。以下、同様に、消去期間と書込期間とを繰り返し、最終行目の消去期間まで動作させればよい。
【0064】
なお、本形態では、n行目の消去期間とn+1行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設ける態様について説明したが、これに限らず、n−1行目の消去期間とn行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設けてもよい。
【0065】
また、本形態では、サブフレーム504のように非発光期間504dを設けるときおいて、消去用ゲート信号線駆動回路914と或る一のゲート信号線とを非接続状態にすると共に、書込用ゲート信号線駆動回路913と他のゲート信号線とを接続状態にする動作を繰り返している。このような動作は、特に非発光期間を設けないフレームにおいて行っても構わない。
【0066】
(実施の形態4)
本発明の発光素子を含む発光装置の断面図の一態様について、図7を用いて説明する。
【0067】
図7において、点線で囲まれているのは、本発明の発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、第1の電極13と第2の電極14との間に発光層15を有する本発明の発光素子である。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本形態において、基板10上に設けられている。
【0068】
なお、図7に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
【0069】
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
【0070】
なお、セミアモルファス半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。ラマンスペクトルのL−Oフォノンに関するピークが520cm-1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端させるために水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。珪化物気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。珪化物気体としては、SiH4、その他にもSi26、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。この珪化物気体をH2、又は、H2とHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲、圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz、基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃、膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020cm-3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。なお、セミアモルファスなものを有する半導体を用いたTFT(薄膜トランジスタ)の移動度はおよそ1〜10cm2/Vsecとなる。
【0071】
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
【0072】
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
【0073】
さらに、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)は、図7(A)〜(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、16bはアクリルやシロキサン(シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。)、塗布成膜可能な酸化珪素等から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0074】
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
【0075】
なお、図7(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図7(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図7(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
【0076】
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。19aはアクリルやシロキサン、塗布成膜可能な酸化珪素等から成る。さらに、19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0077】
発光素子12において、第1の電極13および第2の電極14がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図7(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図7(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図7(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
【0078】
また、発光素子12は、第1の電極13が陽極として機能し、第2の電極14が陰極として機能する構成であってもよいし、或いは第1の電極13が陰極として機能し、第2の電極14が陽極として機能する構成であってもよい。但し、前者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタである。
【0079】
(実施の形態5)
本発明の発光装置を実装することによって、長期間に渡って良好な表示を行うことができる電子機器、または長期間に渡って良好に照明することができる電化製品を得ることができる。
【0080】
本発明を適用した発光装置を実装した電子機器の一実施例を図8に示す。
【0081】
図8(A)は、本発明を適用して作製したノート型のパーソナルコンピュータであり、本体5521、筐体5522、表示部5523、キーボード5524などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでパーソナルコンピュータを完成できる。
【0082】
図8(B)は、本発明を適用して作製した携帯電話機であり、本体5552には表示部5551と、音声出力部5554、音声入力部5555、操作スイッチ5556、5557、アンテナ5553等によって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことで携帯電話機を完成できる。
【0083】
図8(C)は、本発明を適用して作製したテレビ受像機であり、表示部5531、筐体5532、スピーカー5533などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでテレビ受像機を完成できる。
【0084】
以上のように本発明の発光装置は、各種電子機器の表示部として用いるのに非常に適している。
【0085】
なお、本形態では、以上に述べた電子機器の他、カーナビゲイション装置、或いは照明機器等に本発明の発光素子を有する発光装置を実装しても構わない。
【実施例1】
【0086】
(合成例1)
構造式(2)で表されるベンジジン誘導体の合成方法について説明する。
【0087】
[ステップ1]
2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンの合成方法について説明する。
【0088】
100mlの三口フラスコに、マグネシウム1.26g(0.052mol)を入れ、系内を真空下にし、30分加熱撹拌し、活性化した。室温にさましてから系内を窒素気流下にし、ジエチルエーテル5ml、ジブロモエタン数滴を加え、ジエチルエーテル15ml中に溶かした2−ブロモビフェニル11.65g(0.050mol)をゆっくり滴下し、滴下終了後3時間還流してグリニヤール試薬とした。200ml三口フラスコに2−ブロモフルオレノン11.7g(0.045mol)、ジエチルエーテル40mlを入れた。この反応溶液に合成したグリニヤール試薬をゆっくり滴下し、滴下終了後2時間還流し、さらに室温で一晩撹拌した。反応終了後、反応溶液を飽和塩化アンモニア水溶液で2回洗浄し、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥後、吸引濾過、濃縮し、固体状の9−(2−ビフェニリル)−2−ブロモ−9−フルオレノールを18.76g、収率90%で得た。
【0089】
次に、200mlの三口フラスコに、合成した9−(2−ビフェニリル)−2−ブロモ−9−フルオレノール18.76g(0.045mol)、氷酢酸100mlを入れ、濃塩酸数滴を加え2時間還流した。反応終了後、吸引濾過により析出物を回収し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および水で濾過洗浄した。得られた褐色固体をエタノールで再結晶したところ淡褐色粉末状固体を10.24g、収率57%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この淡褐色粉末状固体が2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンであることを確認した。
【0090】
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δppm:7.86−7.79(m,3H),7.70(d,1H,J=8.4 Hz),7.47−7.50(m,1H),7.41−7.34(m,3H),7.12(t,3H,J=7.7Hz),6.85(d,1H,J=2.1Hz),6.74−6.70(m,3H)
【0091】
また、以上に説明した合成方法の合成スキーム(b−1)を次に示す。
【0092】
【化07】

【0093】
[ステップ2]
N,N’−ビス(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:BSPB)の合成方法について説明する。
【0094】
100mlの三口フラスコに、N,N’−ジフェニルベンジジン1.00g (0.0030mol)、ステップ1の合成方法によって合成した2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレン2.49g(0.0062mol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム170mg(0.30mmol)、tert−ブトキシナトリウム 1.08g(0.011mol)を入れ、系内を窒素気流下にした後、脱水トルエン20mlと、トリ−tert−ブチルホスフィン10%ヘキサン溶液0.6mlを加え、80℃で6時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷ましてから水を加え、析出した固体を吸引ろ過により回収し、ジクロロメタンで洗浄した。得られた白色固体をアルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製し、ジクロロメタンで再結晶したところ、白色粉末状固体を2.66g、収率93%で得た。
【0095】
得られた白色粉末状固体を核磁気共鳴法(1H−NMR)によって分析したところ、次のような結果が得られ、構造式(2)で表されるベンジジン誘導体であることが確認できた。また、1H−NMRのチャートを図15に示す。
1H−NMR (300MHz,DMSO−d6) δppm:7.93−7.89(m,8H),7.39−7.33(m,10H),7.19−7.14 (m,8H),7.09−6.96(m,6H),6.89−6.84(m,8H),6.69(d,4H,J=7.5Hz),6.54(d,2H,J=7.8Hz),6.25(d,2H,J=2.4Hz)
【0096】
以上に説明した合成方法の合成スキーム(b−2)を次に示す。このように、本発明の化合物は、N,N’−ジフェニルベンジジンと2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンのカップリング反応によって合成することができる。
【0097】
【化08】

【0098】
また、得られた化合物のガラス転移温度、結晶化温度、融点について、示差走査熱量分析装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。ここでDSCによる測定は、次のような手順で行った。先ず、40℃/分の昇温速度で450℃まで試料(得られた化合物)を加熱した後、40℃/分の昇温速度で試料を冷却して試料をガラス状態にした。そして、ガラス状態になった試料を、10℃/分の昇温速度で加熱し、図9に示すような測定結果を得た。図9において、横軸は温度(℃)、縦軸は熱流(上向が吸熱)(mW)を表す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は172℃、結晶化温度は268℃であることが分かった。また、312℃における接線と、327℃〜328℃における接線との交点から、融点は323℃〜324℃であることが分かった。このように、得られた化合物は、172℃という高いガラス転移温度を示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図9において、得られた化合物の結晶化を表すピークはブロードなものであり、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【0099】
また、得られた化合物を蒸着法によって成膜し、薄膜状態における当該化合物のイオン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したところ、−5.3eVであった。また、薄膜状態における当該化合物の吸収スペクトルを、UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長をエネルギーギャップとし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−2.5eVであった。ここで、図10には、得られた化合物の薄膜状態における吸収スペクトルを示す。図10において、縦軸は吸光度(単位無し)、横軸は波長(nm)である。また、図11に、得られた化合物の薄膜状態における発光スペクトルを示す。図11において、縦軸は発光強度(任意単位)、横軸は波長(nm)である。
【0100】
なお、得られた化合物4.74gを14Pa、350℃の条件で24時間昇華精製したところ、3.49gを回収でき、回収率は74%であった。
【実施例2】
【0101】
合成例1のステップ2に記載の合成によって得られたガラス転移温度が172℃の化合物(以後、BSPBと記す。なお、構造式(2)で表される化合物であることが核磁気共鳴法による測定により確認されている。)を用いて作製した発光素子について図2を用いて説明する。
【0102】
ガラス基板701上に、シリコンを含有したインジウム錫酸化物を、スパッタリング法によって成膜し、第1の電極702を形成した。なお、膜厚は110nmとなるようにした。
【0103】
次に、第1の電極702の上に、DNTPDを、真空蒸着法によって成膜し、DNTPDから成る第1の層703を形成した。なお、膜厚は50nmとなるようにした。
【0104】
次に、DNTPDから成る第1の層703上に、BSPBを、真空蒸着法によって成膜し、BSPBから成る第2の層704を形成した。なお、膜厚は10nmとなるようにした。
【0105】
次にBSPBから成る第2の層704の上に、Alq3とクマリン6とを、共蒸着法によって成膜し、Alq3とクマリン6とを含む第3の層705を形成した。なお、クマリン6は、Alq3に対し0.5質量%含まれるようにした。これによって、クマリン6はAlq3の中に分散された状態となる。また、膜厚は、37.5nmとなるようにした。なお、共蒸着法とは、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0106】
次に、Alq3とクマリン6とを含む第3の層705の上に、Alq3を、真空蒸着法によって成膜し、Alq3から成る第4の層706を形成した。なお、膜厚は37.5nmと成るようにした。
【0107】
次に、Alq3から成る第4の層706の上に、弗化カルシウムを、真空蒸着法によって成膜し、弗化カルシウムから成る第5の層707を形成した。なお、膜厚は1nmとなるようにした。
【0108】
次に、弗化カルシウムから成る第5の層707の上に、アルミニウムを、真空蒸着法によって成膜し、第2の電極708を形成した。
【0109】
以上のようにして作製した発光素子において第1の電極702と第2の電極708とに電圧を印加して電流を流すと、クマリン6が発光する。このとき、第1の電極702は陽極として、第2の電極708は陰極として機能する。また、DNTPDから成る層703は正孔注入層として、BSPBから成る層704は正孔輸送層として、Alq3とクマリン6とを含む層705は発光層として、Alq3から成る層706は電子輸送層として、弗化カルシウムから成る層707は電子注入層として機能する。
【0110】
本実施例の発光素子の図12に電流密度−輝度特性を、図13に電圧−輝度特性を、図14に輝度−電流効率特性を示す。なお、図12において、横軸は電流密度を、縦軸は輝度を表す。また、図13において、横軸は電圧を、縦軸は輝度を表す。また、図14において、横軸は輝度を、縦軸は電流効率を表す。
【0111】
また、本実施例の発光素子の発光スペクトルは、510nmにピークを有するものであり、CIE色度座標は(x,y)=(0.25,0.66)であった。
【0112】
以上の結果からも分かるように、本実施例の発光素子は、クマリン6に由来した発光を良好に得ることが出来るものである。これは、発光層として機能する層705から本発明のベンジジン誘導体から成る層への励起エネルギーの移動が生じず、本発明のベンジジン誘導体から成る層が、正孔輸送層として良好に機能した結果であると考えられる。このように、本発明のベンジジン誘導体は、正孔輸送材料として用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の発光素子の一態様について説明する図。
【図2】本発明の発光素子について説明する図。
【図3】本発明を適用した発光装置について説明する図。
【図4】本発明を適用した発光装置に含まれる回路について説明する図。
【図5】本発明を適用した発光装置の上面図。
【図6】本発明を適用した発光装置のフレーム動作について説明する図。
【図7】本発明を適用した発光装置の断面図。
【図8】本発明を適用した電子機器の図。
【図9】本発明のベンジジン誘導体を示差走査熱量分析した測定結果の図。
【図10】本発明のベンジジン誘導体の吸収スペクトルの図。
【図11】本発明のベンジジン誘導体の発光スペクトルの図。
【図12】本発明のベンジジン誘導体用いた発光素子の電流密度−輝度特性の図。
【図13】本発明のベンジジン誘導体用いた発光素子の電圧−輝度特性の図。
【図14】本発明のベンジジン誘導体用いた発光素子の輝度−電流効率特性の図。
【図15】合成例1のステップ2において合成された白色粉末状固体について核磁気共鳴法により分析した結果を示す図。
【符号の説明】
【0114】
101 第1の電極
102 第2の電極
113 発光層
112 正孔輸送層
114 電子輸送層
111 正孔注入層
115 電子注入層
114 電子輸送層
6500 基板
6503 FPC
6504 プリント配線基盤(PWB)
6511 画素部
6512 ソース信号線駆動回路
6513 書込用ゲート信号線駆動回路
6514 消去用ゲート信号線駆動回路
901 第1のトランジスタ
902 第2のトランジスタ
903 発光素子
911 ゲート信号線
912 ソース信号線
913 書込用ゲート信号線駆動回路
914 消去用ゲート信号線駆動回路
915 ソース信号線駆動回路
916 電源917 電流供給線
918 スイッチ
919 スイッチ
920 スイッチ
1001 第1のトランジスタ
1002 第2のトランジスタ
1003 ゲート信号線
1004 ソース信号線
1005 電流供給線
1006 電極
501 サブフレーム
502 サブフレーム
503 サブフレーム
504 サブフレーム
501a 書き込み期間
501b 保持期間
502a 書き込み期間
502b 保持期間
503a 書き込み期間
503b 保持期間
504a 書き込み期間
504b 保持期間
504c 消去期間
504d 非発光期間
10 基板
11 トランジスタ
12 発光素子
13 第1の電極
14 第2の電極
15 発光層
16 第1層間絶縁膜
16a 第1層間絶縁膜
16b 第1層間絶縁膜
16c 第1層間絶縁膜
17 配線
18 隔壁層
19 第2層間絶縁膜
19a 第2層間絶縁膜
19b 第2層間絶縁膜
5521 本体
5522 筐体
5523 表示部
5524 キーボード
5551 表示部
5552 本体
5553 アンテナ
5554 音声出力部
5555 音声入力部
5556 操作スイッチ
5531 表示部
5532 筐体
5533 スピーカー
701 基板
702 第1の電極
703 第1の層
704 第2の層
705 第3の層
706 第4の層
707 第5の層
708 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるベンジジン誘導体。
【化01】

(式中、R1は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項2】
構造式(2)で表されるベンジジン誘導体。
【化02】

【請求項3】
一対の電極間に、請求項1または請求項2に記載のベンジジン誘導体を含む層を有する発光素子。
【請求項4】
N,N’−ジフェニルベンジジンと、2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンとのカップリング反応によって得られ、融点が323℃〜324℃である化合物。
【請求項5】
一対の電極間に、請求項4に記載の化合物を含む層を有する発光素子。
【請求項6】
一般式(1)で表されるベンジジン誘導体を含む正孔輸送材料。
【化03】

(式中、R1は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項7】
構造式(2)で表されるベンジジン誘導体を含む正孔輸送材料。
【化04】

【請求項8】
N,N’−ジフェニルベンジジンと、2−ブロモ−スピロ−9,9’−ビフルオレンとのカップリング反応によって得られ、融点が323℃〜324℃である化合物を含む正孔輸送材料。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の正孔輸送材料から成る層を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項10】
請求項3、請求項5または請求項9のいずれか一項に記載の発光素子を画素部に用いていることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発光装置を表示部に用いていることを特徴とする電子機器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−22089(P2006−22089A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167740(P2005−167740)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】