説明

ベンジルアミン誘導体の製造方法

一般式(1)


(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)で表されるベンジル化合物と、一般式(2)


(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させることを特徴とする、一般式(3)


(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)で表されるベンジルアミン誘導体を製造する。カーバメイト系の農園芸用殺菌剤の製造に有用な中間体であるベンジルアミン誘導体を好適に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ベンジルアミン誘導体の製造方法、該製造方法を経由するカーバメイト誘導体の製造方法、およびカーバメイト誘導体の製造方法における有用な中間体に関する。本発明により得られるベンジルアミン誘導体は、例えば、カーバメイト系農園芸用殺菌剤の製造に有用な中間体となる。
【背景技術】
従来、カーバメイト系農園芸用殺菌剤の製造方法としては、▲1▼後記する本願一般式(6)で表されるカーバメート誘導体をヒドロキシルアミン又はその誘導体と反応させることにより製造する方法(特許文献1の製造方法1参照)や;▲2▼トルエン誘導体をハロゲン化してα−ハロ置換トルエン誘導体とし、これに更にシアン酸カリ等を反応させてカーバメート化した後、ニトロ基を導入し、該ニトロ基をアミノ基に変換した上で、これをジアゾ化してからオキシム化合物と反応させることにより製造する方法(特許文献1の化11および製造方法5参照)が知られている。
また、上記▲1▼の方法と▲2▼の方法では、収率や反応の安定性、作業や操作容易性の他に、ジアゾ化を経由せず安全であると云った観点から、工業的製造においては▲1▼の方法が好ましいと考えられる(特許文献1の製造例3、同6参照)。
一方、上記▲1▼の方法において用いられる、後記する本願一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体の製造については、アシル基を有するトルエン誘導体をハロゲン化して、アシル基を有するα−ハロ置換トルエン誘導体とし、これに更にシアン酸カリ等を反応させてカーバメート化する方法(特許文献1の[化8]参照)、又はアルコキシカルボニル基を有するトルエン誘導体をハロゲン化して、アルコキシカルボニル基を有するα−ハロ置換トルエン誘導体とし、これに更にシアン酸カリ等を反応させてカーバメート基を導入した後、アルコキシカルボニル基をアシル基にまで官能基変換する方法が知られていた(特許文献1の[化9]参照)。
しかしながら、前者の、特許文献1の[化8]の方法では、その原料であるアシル基を有するトルエン誘導体の製造において、アシル基を核導入する際の位置選択性が低く位置異性体が副生することにより目的物であるアシル基を有するトルエン誘導体の収率の低下が避けられない。また、後者の、特許文献1の[化9]の方法では、工程数が比較的長く、更に、カーバメイト基自体を酸、塩基中での過酷な条件に曝すために、カーバメート基を安定に維持できず反応条件下でカーバメート基が分解してしまう場合があると云う難点があった。更に、何れの方法も原料からの全工程での収率が不充分である点も改良が望まれていた。
特許文献1: 特開2001−106666号公報
したがって、上記した従来の技術の持つ欠点を解決した、新しいカーバメイト誘導体の製造に有用な製造方法および有用な新規中間体の開発が望まれていた。
【発明の開示】
本発明の目的は、従来の技術における欠点を解決したカーバメイト誘導体の製造に有用な製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、従来における欠点を解決した有用な新規中間体を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、意外にも、アミノ基が保護されたベンジル化合物(ベンジル誘導体)にアシル基を導入すると高い位置選択性を伴ってアシル基が導入され、新規なベンジルアミン誘導体が得られることを見出した。
上記知見に基づき、本発明者は更に研究を進めた結果、上記新規ベンジルアミン誘導体を加水分解することによりアミノ脱保護したのち、ハロ蟻酸エステルと反応させると、異性体も殆ど生成せずに後記する一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体が製造できることを見出し、且つ、このような製造方法が、上記した従来技術において望まれていた改良を達成するために極めて有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の〔1〕〜〔25〕の態様を包含する。
〔1〕一般式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるベンジル誘導体と、一般式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させることを特徴とする、一般式(3)

(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるベンジルアミン誘導体の製造方法。
〔2〕一般式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるベンジル誘導体と、一般式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させて、一般式(3)

(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるベンジルアミン誘導体とし、該ベンジルアミン誘導体を加水分解して、一般式(4)

(式中、X、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるアミノ誘導体とした後、該アミノ誘導体と、一般式(5)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキル基を示す)
で表されるハロ蟻酸エステルを、塩基存在下で反応させることを特徴とする、一般式(6)

(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるカーバメイト誘導体の製造方法。
〔3〕一般式(7)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示し、Rは水素原子又はアシル基を示す)
で表されるアシルベンジルアミン誘導体。
〔4〕Xが塩素原子である、〔1〕項に記載のベンジルアミン誘導体の製造方法。
〔5〕Rが脂肪族アシル基である、〔1〕項に記載のベンジルアミン誘導体の製造方法。
〔6〕Xが塩素原子であり、Rが脂肪族アシル基である、〔1〕項に記載のベンジルアミン誘導体の製造方法。
〔7〕Xが塩素原子であり、Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔1〕項に記載のベンジルアミン誘導体の製造方法。
〔8〕Xが塩素原子であり、Rがアセチル基である、〔1〕項に記載のベンジルアミン誘導体の製造方法。
〔9〕Xが塩素原子である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔10〕Rが脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔11〕Xが塩素原子であり、Rが脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔12〕Xが塩素原子であり、Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔13〕Xが塩素原子であり、Rがアセチル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔14〕Xが塩素原子である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔15〕Rが脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔16〕Xが塩素原子であり、Rが脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔17〕Xが塩素原子であり、Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔18〕Xが塩素原子であり、Rがアセチル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔19〕X、Xが塩素原子であり、R,Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔20〕X、Xが塩素原子であり、R,Rがアセチル基である、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔21〕X、Xが塩素原子であり、R,Rがアセチル基である、塩基が炭酸カリウムである、〔2〕項に記載のカバメート誘導体の製造方法。
〔22〕Xが塩素原子であり、Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔3〕項に記載のアシルベンジルアミン誘導体。
〔23〕Xが塩素原子であり、Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔3〕項に記載のアシルベンジルアミン誘導体。
〔24〕Xが塩素原子であり、R,Rが炭素数1〜7の脂肪族アシル基である、〔3〕項に記載のアシルベンジルアミン誘導体。
〔25〕Xが塩素原子であり、R,Rがアセチル基である、〔3〕項に記載のアシルベンジルアミン誘導体。
なお、上記〔1〕では、一般式(1)で表されるベンジル誘導体と一般式(2)で表されるハロアシル化合物との反応において、アシル基(R)が高選択的に一般式(3)に示した位置(5−位)に導入される(即ち、位置選択性が高い)ため、副生物として位置異性体が殆ど生成しない点が特徴的であり、目的物の工業的生産において極めて有用である。また、前記一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体は、前述のカーバメイト系殺菌剤の中間体として有用な化合物である。(特開2001−106666号公報参照)
本発明方法の一般式(1)で表されるベンジル誘導体と一般式(2)で表されるハロアシル化合物との反応においては、アシル基Rが5−位以外の位置に導入された化合物に対するGC面積の合計を1とした場合、Rが目的の5−位に導入されたベンジルアミン誘導体(3)を、好ましくは少なくとも15以上、更に好ましくは45〜50程度のGC面積比で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(本発明〔1〕)
まず、本発明〔1〕の製造法について説明する。
本発明方法〔1〕は、一般式(1)で表されるベンジル誘導体と一般式(2)で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させることにより、一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体を製造する方法である。この反応においては、アシル基が高選択的に一般式(3)で表される位置(5−位)に導入される点で特徴的であり、工業的使用において有用である。
一般式(1)中のRのアシル基としては、例えば、脂肪族アシル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等であれば良い。
(脂肪族アシル基)
ここで、該脂肪族アシル基(R)は、直鎖脂肪族アシル基、分岐脂肪族アシル基の何れでも良く、また、その脂肪族残基中に不飽和結合を含んでも良く、また、脂環式アルキル基等の脂環式基が置換していても良い。
このような脂肪族アシル基としては、例えば炭素数1〜7(炭素数については、例えばこの場合では「C1〜C7」の様に略記する)直鎖又は分岐脂肪族アシル基、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、2−プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、アリルカルボニル基、シクロヘキシルメチルカルボニル基等を例示することができる。
(脂環式アシル基)
該脂環式アシル基(R)は、その脂環式残基中に不飽和結合を含んでも良い。このような脂環式アシル基としては、例えば、C3〜C6シクロアルキルカルボニル基、具体的にはシクロプロピルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基や、1−シクロヘキセニルカルボニル基等を例示できる。
(芳香族アシル基)
該芳香族アシル基(R)には、アルキル基、アルコキシ基等が置換しても良い。このような芳香族アシル基としては、例えばベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等を包含する芳香族アシル基を例示できる。
一般式(1)で表されるベンジル誘導体のRは、一般式(2)で表されるハロアシル化合物との反応における目的物収率や、後の工程での反応性の観点から脂肪族アシル基が好ましく、好ましくはC1〜C7脂肪族アシル基であり、特に好ましくはアセチル基である。
(ハロゲン原子)
一般式(1)中のXはハロゲン原子を示し、具体的には例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
(ベンジル誘導体の例)
従って、一般式(1)で表されるベンジル誘導体の例としては、例えば、N−〔(2−クロロフェニル)メチル〕アセトアミド、N−〔(2−ブロモフェニル)メチル〕アセトアミド、N−〔(2−フルオロフェニル)メチル〕アセトアミド、N−〔(2−クロロフェニル)メチル〕プロパンアミド、N−〔(2−ブロモフェニル)メチル〕プロパンアミド、N−〔(2−フルオロフェニル)メチル〕プロパンアミド、N−〔(2−クロロフェニル)メチル〕−2−メチルプロパンアミド、N−〔(2−ブロモフェニル)メチル〕−2−メチルプロパンアミド、N−〔(2−フルオロフェニル)メチル〕−2−メチルプロパンアミド、N−〔(2−クロロフェニル)メチル〕−2−メチルブタンアミド、N−〔(2−ブロモフェニル)メチル〕−2−メチルブタンアミド、N−〔(2−フルオロフェニル)メチル〕−2−メチルブタンアミド、N−〔(2−クロロフェニル)メチル〕ベンズアミド、N−〔(2−ブロモフェニル)メチル〕ベンズアミド、N−〔(2−フルオロフェニル)メチル〕ベンズアミド等を例示することができる。
これらの一般式(1)で表されるベンジル誘導体は公知化合物であるか、あるいは、対応する2−ハロゲノベンジルアミン化合物に、対応する酸無水物又は酸クロライドを反応させる方法等によって合成できる化合物である。
(アシル基)
一般式(2)中のアシル基(R)としては、例えば、脂肪族アシル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等であることが好ましい。
(脂肪族アシル基)
ここで、該脂肪族アシル基(R)は、直鎖脂肪族アシル基、分岐脂肪族アシル基の何れでも良く、また、その脂肪族残基中に不飽和結合を含んでも良く、また、脂環式アルキル基等の脂環式基が置換していても良い。このような脂肪族アシル基としては、例えばC1〜C7直鎖又は分岐脂肪族アシル基、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、2−プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、アリルカルボニル基、シクロヘキシルメチルカルボニル基等を例示することができる。
(脂環式アシル基)
該脂環式アシル基(R)は、その脂環式残基中に不飽和結合を含んでも良い。このような脂環式アシル基としては、例えば、C3〜C6シクロアルキルカルボニル基、具体的にはシクロプロピルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基や、1−シクロヘキセニルカルボニル基等を例示できる。
該芳香族アシル基(R)は、アルキル基、アルコキシ基等が置換しても良い。このような芳香族アシル基としては、例えばベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等を包含する芳香族アシル基を例示できる。
一般式(2)で表されるハロアシル化合物のRは、目的物収率の観点から脂肪族アシル基が好ましく、好ましくはC1〜C7脂肪族アシル基であり、特に好ましくはアセチル基である。
(ハロゲン原子)
一般式(2)中のXはハロゲン原子、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
(ハロアシル化合物の例)
従って、一般式(2)で表されるハロアシル化合物の例としては、例えばアセチルクロライド、アセチルブロミド、プロピオニルクロライド、ブチリルクロライド、イソブチリルクロライド、バレリルクロライド、イソバレリルクロライド、t−ブチルアセチルクロライド、2−エチルブチリルクロライド等を挙げることができる。
これらの一般式(2)で表されるハロアシル化合物は、公知化合物であるか、あるいは、対応するカルボン酸を、例えばチオニルクロライドによりクロル化する方法などにより合成できる。
(使用量)
当反応における一般式(2)で表されるハロアシル化合物の使用量は、一般式(1)で表されるベンジル化合物1モルに対して如何なるモル比でも反応させることができるが、ハロアシル化合物の使用量は、通常1.0〜2.0モル、好ましくは1.0〜1.5モル、より好ましくは1.0〜1.2モルの範囲を例示できる。
(ルイス酸)
本発明において、上記反応はルイス酸存在下で行う。当反応に使用可能なイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム(AlCl)、塩化亜鉛(ZnCl)、塩化鉄(III)(FeCl)等のハロゲン化金属を例示することができるが、塩化アルミニウム(AlCl)を用いることが好ましい。当反応におけるルイス酸の使用量は、一般式(1)で表されるベンジル化合物1モルに対して2.0〜5.0モル、好ましくは2.5〜3.0モルの範囲であれば良い。
(溶媒)
当反応は、無溶媒でも充分行うことが出来るが、溶媒を用いて行うこともできる。当反応に使用可能な溶媒は、反応を実質的に阻害しないものであれば良い。このような溶媒としては、例えば、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の、ニトロ基、ハロゲン等が1以上置換していても良い芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類が挙げられる。好ましくはジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類が良い。溶媒は単独で、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることが出来る。
溶媒量としては、反応系の攪拌が充分に出来る量であれば良いが、一般式(1)で表されるベンジルアミン化合物1モルに対して通常0.1〜2.0L(リットル)、好ましくは0.3〜1.0L、より好ましくは0.3〜0.8Lの範囲であれば良い。
(反応温度・時間)
当反応の反応温度は20℃〜使用する溶媒の還流温度、の範囲を例示できるが、好ましくは30〜80℃、好ましくは40〜60℃の範囲が良い。
当反応の反応時間は特に制限されないが、副生物抑制の観点等から、好ましくは6時間〜24時間がよい。
(ベンジルアミン誘導体)
当反応で得られる一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体は、例えば、種々の化合物(例えば、一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体)を製造するための中間原料として有用な化合物である。
(本発明〔2〕)
続いて本発明〔2〕について説明する。
本発明〔2〕は、前記本発明〔1〕の方法を経由する、一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体の製造方法である。この製造方法においては、一般式(1)で表されるベンジル化合物と、一般式(2)で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させることにより、一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体を製造し、この一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体を加水分解して得られる一般式(4)で表されるアミノ誘導体と、一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステルとを、塩基存在下で反応させることにより、一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体を得るものである。
一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体の製造は前記〔1〕の通りである。
(加水分解)
前記本発明〔1〕により得られる一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体を加水分解することによる一般式(4)で表されるアミノ誘導体の製造について説明する。
一般式(4)で表されるベンジルアミン誘導体の加水分解の方法は特に制限されないが、取扱いの容易さの点からは、ブレンステッド酸を用いて行うことが好ましい。
(ブレンステッド酸)
当加水分解反応に使用可能なブレンステッド酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の、ハロゲンが置換しても良い脂肪族カルボン酸類;硫酸、塩酸等の鉱酸類を例示することができる。中でも、鉱酸類が好ましく、特に硫酸、より詳しくは、20〜80%、好ましくは40〜80%の硫酸を用いて行うことが好ましい。当反応におけるブレンステッド酸の使用量は、一般式(3)で表されるアシル誘導体1モルに対して1.0〜5.0モル、好ましくは2.0〜3.0モルの範囲であれば良い。
(水)
また、当反応において水は一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体1モルに対して化学量論以上、具体的には1モル以上あればよい。
(溶媒)
当反応は、無溶媒でも充分行うことが出来るが、溶媒を用いて行うこともできる。当反応に使用可能な溶媒は、反応を実質的に阻害しないものであれば良い。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の、C1〜C6アルキル基、ハロゲン等が1以上置換していても良い芳香族炭化水素類等が挙げられる。好ましくはトリクロロベンゼンが良い。溶媒は単独で、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることが出来る。溶媒量としては、反応系の攪拌が充分に出来る量であれば良いが、一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体1モルに対して、通常0.05〜0.5L、好ましくは0.1〜0.3L、より好ましくは0.1〜0.2Lの範囲であれば良い。
(反応温度・時間)
当反応の反応温度は70℃〜使用する溶媒の還流温度、の範囲を例示できるが、好ましくは80〜130℃、より好ましくは100〜110℃の範囲が良い。
当反応の反応時間は特に制限されないが、副生物抑制の観点等から、好ましくは5時間〜15時間がよい。
(カーバメイト誘導体を得る反応)
続いて、上記の如くして得られる一般式(4)で表されるアミノ誘導体に、一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステルを、塩基存在下で反応させて、一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体を得る反応について説明する。
(ハロ蟻酸エステル)
一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステル中のRは、アルキル基である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖又は分岐C1〜C7アルキル基であることが好ましい。
(ハロゲン原子)
また、一般式(5)中のXは、ハロゲン原子、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
(ハロ蟻酸エステル)
従って、当反応に使用できる一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステルとしては、具体的には例えば、クロロ蟻酸メチルエステル、クロロ蟻酸エチルエステル、クロロ蟻酸n−プロピルエステル、クロロ蟻酸イソプロピルエステル、クロロ蟻酸n−ブチルエステル、クロロ蟻酸イソブチルエステル等を挙げることができる。
一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステルは、公知の化合物である(したがって、必要に応じて、公知の反応により得ることもできる)。
当反応における、一般式(4)で表されるアミノ誘導体と一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステルのモル比は、如何なるモル比でも反応が進行するが、一般式(4)で表されるアミノ誘導体1モルに対して、一般式(5)で表されるハロ蟻酸エステルが、通常1.0〜2.0モル、好ましくは1.0〜1.5モル、より好ましくは1.0〜1.2モルの範囲を例示できる。
(塩基)
当反応は塩基を用いて行う。当反応に使用可能な塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の三級アミンに代表される有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等を例示することができる。この塩基は、好ましくはアルカリ金属炭酸塩であり、特に好ましくは炭酸カリウムである。当反応における塩基の使用量は、一般式(4)で表されるアミノ誘導体1モルに対して、1.0〜3.0モル、好ましくは1.1〜1.5モルの範囲であれば良い。
(溶媒)
当反応は、無溶媒でも充分行うことが出来るが、溶媒を用いて行うこともできる。当反応に使用可能な溶媒としては、反応を実質的に阻害しないものであれば良い。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の、アルキル基、ハロゲン等が1以上置換していても良い芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒類等が挙げられる。
この溶媒は好ましくは芳香族炭化水素類であり、特に好ましくはトルエンである。溶媒は単独で、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることが出来る。溶媒量としては、反応系の攪拌が充分に出来る量であれば良いが、一般式(4)で表されるアミノ誘導体1モルに対して、通常0.2〜2.0L、好ましくは0.5〜1.0Lの範囲であれば良い。
(反応温度・時間)
当反応の反応温度は0℃〜使用する溶媒の還流温度、の範囲を例示できるが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃の範囲が良い。
当反応の反応時間は特に制限されないが、副生物抑制の観点等から、好ましくは0.5時間〜6時間がよい。
(カーバメイト誘導体)
上記の如くして本発明〔2〕により得られる一般式(6)で表されるカーバメイト誘導体は、種々の化合物(例えば、カーバメイト系農薬(特に殺菌剤))を製造するための中間原料として有用な化合物である。
(アミノ保護置換体化合物)
また、前記の如くして得られる一般式(4)で表されるアミノ誘導体に、アミノ基の保護に一般的に使用される公知の試薬〔例えば、クロロ蟻酸ベンジル、ジ炭酸ジt−ブチル等の蟻酸エステル試薬;プロピオン酸クロライド等の酸ハライド試薬;塩化エチル等のハロゲン化アルキル試薬;2−(t−ブトキシカルボニルオキシイミノ)−2−フェニルアセトニトリル等〕を反応させることにより、各種アミノ保護置換体化合物を製造することもできる。
このようなアミノ保護置換体化合物としては、例えば、
▲1▼ウレタン型(R=BOC基(t−butoxycarbonyl)、Cbz基(benzyloxycarbonyl)、Cbz(OMe)基(p−methoxybenzyloxycarbonyl)、Cbz(Cl)基(p−chlorobenzyloxycarbonyl)、Cbz(NO)基(p−nitrobenzyloxycarbonyl)等)、
▲2▼本発明化合物(1)であるアシル型(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等)、
▲3▼アルキル型(メチル基;エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のC1〜C6直鎖又は分岐アルキル基)等の公知の保護基によりアミノ基が保護された、各種アミノ保護置換体化合物を挙げることができる。
アミノ保護置換体の合成法については既知の方法が適用できる。
(本発明〔3〕)
続いて、〔3〕項記載の発明について説明する。
〔3〕項記載の本発明化合物は、一般式(7)で表されるアシルベンジルアミン誘導体である。
(アシルベンジルアミン誘導体)
本発明〔3〕の一般式(6)で表されるアシルベンジルアミン誘導体は、前記本発明〔1〕、〔2〕で得られる、一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体および一般式(4)で表されるアミノ誘導体である。このような誘導体は、前記の如く、種々の化合物(例えば、農薬として有用であることが知られているカーバメイト系化合物)を製造するための中間体となる、一般式(6)で表されるカーバメート誘導体の製造原料として有用な化合物である。
(置換基)
一般式(7)において、置換基Xはハロゲン原子を示し、具体的には例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
一般式(7)において、置換基Rは水素原子又は前記Rと同様のアシル基を示す。ここでRと同様なアシル基とは、例えば脂肪族アシル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等であれば良い。
(脂肪族アシル基)
ここで、該脂肪族アシル基(R)は、直鎖脂肪族アシル基、分岐脂肪族アシル基の何れでも良く、また、その脂肪族残基中に不飽和結合を含んでも良く、また、脂環式アルキル基等の脂環式基が置換していても良く、このような脂肪族アシル基としては、例えばC1〜C7直鎖又は分岐脂肪族アシル基、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、2−プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、アリルカルボニル基、シクロヘキシルメチルカルボニル基等を例示することができる。
(脂環式アシル基)
該脂環式アシル基(R)は、その脂環式残基中に不飽和結合を含んでも良い。このような脂環式アシル基としては、例えば、C3〜C6シクロアルキルカルボニル基、具体的にはシクロプロピルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基や、1−シクロヘキセニルカルボニル基等を例示できる。
(芳香族アシル基)
該芳香族アシル基(R)には、アルキル基、アルコキシ基等が置換しても良い。このような芳香族アシル基としては、例えばベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等を包含する芳香族アシル基を例示できる。
(本発明化合物の具体例)
このような置換基X、R、Rを有する本発明化合物の具体例を(表1)に例示するが、本発明化合物はこれらの例示化合物に限定されるものではない。なお、化合物番号は、以下の記載において参照される。また、(表1)中の略号は、以下の意味を示す。
Ac:アセチル基
Prn:プロピオニル基

農園芸用殺菌剤の中間体となるカーバメイト誘導体(6)の製造中間体としては、XがCl、RがAc(アセチル基)、RがH(水素原子)である化合物1や、XがCl(塩素原子),RがAc(アセチル基)、RがAc(アセチル基)である化合物3を好ましいものとして例示することができる。
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明化合物の製造方法を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。以下の記載において、純度はGC全面積比で示した。
【実施例1】
1)N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]アセトアミド(化合物番号3)の製造:〔1〕項記載の発明)
N−[(2−クロロフェニル)メチル]アセトアミド36.7g(0.2モル)をジクロロメタン60mLに溶解し、塩化アルミニウム80.0g(0.6モル)を5〜30℃で30分間かけて加え、アセチルクロライド31.4g(0.4モル)を同温度で30分間かけて滴下した。
室温で1時間熟成後、加熱還流温度まで15分間かけて昇温し、加熱還流下で12時間熟成した。反応終了後、得られた反応液を水に注ぎ、50mLのトルエンで3回抽出した後、溶媒を減圧下で留去した。残渣を冷却し析出した結晶をろ収し、トルエンで洗浄後、乾燥して目的化合物(融点93.1〜93.7℃)を24.5g(収率:54.3%、純度99.4%)得た。
H−NMR(CHCl−d,300MHz)δ=2.0(s,3H,NHCOCH),2.6(s,3H,Ph−COCH),4.6(d,2H,CH,J=6.0Hz),6.1(br s,1H,NHCOCH),7.5(d,1H,Ph環,J=8.2Hz),7.8(dd,1H,Ph環,J=2.2 8.2Hz),8.0(d,1H,Ph環,J=2.2)
MS(GC−MS)m/z=225(M),190(base)
実施例2:N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]メトキシカルボキシアミドの製造
(A):1−[3−(アミノメチル)−4−クロロフェニル]エタン−1−オン(化合物番号1)の製造(〔6〕項記載の発明)
実施例1により得られたN−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]アセトアミド20.0g(0.089モル)を50%硫酸55gに溶解した後、加熱還流温度まで30分間かけて昇温し、加熱還流下で15時間熟成した。
反応終了後、得られた反応液を水に注ぎ、45mLのトルエンを加え、25%水酸化ナトリウムで水溶液を塩基性(pH=約12.0)とした。45mLのトルエンで2回抽出した後、溶媒を減圧下で留去し、標題化合物をほぼ定量的に得た(純度99.2%)得た。
MS(GC−MS)m/z=182(M−1),140(base)
(B):N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]メトキシカルボキシアミドの製造法(〔7〕項記載の発明)
前記実施例2−(A)により得た1−[3−(アミノメチル)−4−クロロフェニル]エタン−1−オン17.1g(0.089モル)を、トルエン44.3mLに溶解し、更に炭酸カリウム14.7g(0.107モル)を仕込んだ(混合した)後、クロロ炭酸メチル9.2g(0.098モル)を5〜20℃で30分間かけて滴下した後、室温で3時間熟成した。
反応終了後、得られた反応液に水を注ぎ、溶媒を減圧下で留去した。残渣を冷却し析出した結晶をろ収しトルエンで洗浄後乾燥し、上記化合物(融点108.1℃)を19.3g(収率;90.2%、純度99.8%)得た。
H−NMR(CHCl−d,300MHz)δ=2.6(s,3H,Ph−COCH),3.7(s,3H,COOCH),4.5(d,2H,CH,J=6.3Hz),5.3(br s,1H,NH),7.5(d,1H,Ph環,J=8.3Hz),7.8(dd,1H,Ph環,J=2.1 8.3Hz),8.0(s,1H,Ph環) MS(GC−MS)m/z=241(M),206(base)
実施例3:N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]メトキシカルボキシアミドの製造法
(A):N−[(2−クロロフェニル)メチル]アセトアミドの製造法:一般式(1)
(2−クロロフェニル)メチルアミン42.8kg(0.3kmol)をジクロロメタン118.3kgに溶解し、無水酢酸32.2kg(0.315kmol)を20〜40℃で1.5時間かけて滴下した。室温で30分間熟成した。反応終了後、水60kgを加え、25%水酸化ナトリウム水溶液55.2kgを20〜40℃で20分間かけて滴下した。有機層を分液し、N−[(2−クロロフェニル)メチル]アセトアミドのジクロロメタン溶液169.9kgを得た。
(B):N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]アセトアミド(化合物番号3)の製造法:〔1〕項記載の発明
前記実施例3−(A)により得られたN−[(2−クロロフェニル)メチル]アセトアミドのジクロロメタン溶液169.9kgに、アセチルクロライド47.1kg(0.6kmol)を加え、塩化アルミニウム108.0kg(0.81kmol)を15〜30℃で1.5時間かけて加えた。2時間かけて50℃になるまでジクロロメタンを常圧で留去した後、6時間熟成した。(目的物:その他の位置異性体=76.75%:1.65%;G.C.面積%)反応終了後、得られた反応液を水450kgに15〜35℃で2時間かけて滴下した。ジクロロメタン90kg、40kgで2回抽出し、N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]アセトアミドのジクロロメタン溶液199.8kgを得た。
(C):1−[3−(アミノメチル)−4−クロロフェニル]エタン−1−オン(化合物番号1)の製造法:〔6〕項記載の発明
前記実施例3−(B)により得られたN−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]アセトアミドのジクロロメタン溶液199.8kgに、水90kg、98%硫酸46kg(0.45kmol)を加え、1.5時間かけて内温が100℃になるまでジクロロメタンを常圧で留去した後、6時間熟成した。反応終了後、20分かけて50℃まで冷却し、水90kg、トルエン105kgを加えた。更に冷却を行い、25%水酸化ナトリウム水溶液212kgを15〜25℃で2.5時間かけて滴下した。30分かけて40℃まで昇温した後、有機層を分液し、1−[3−(アミノメチル)−4−クロロフェニル]エタン−1−オンのトルエン溶液を得た。
(D):N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]メトキシカルボキシアミドの製造法:〔7〕項記載の発明
前記実施例3−(C)により得られた1−[3−(アミノメチル)−4−クロロフェニル]エタン−1−オンのトルエン溶液に水180kg、炭酸カリウム45.7kg(0.33kmol)を加え混合した後、クロロ炭酸メチル28.4kg(0.3kmol)を15〜25℃で1時間かけて滴下した後、室温で1時間熟成した。反応終了後、30分かけて60℃に昇温し、有機層を分液した。得られたN−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]メトキシカルボキシアミドのトルエン溶液に水150kgを加え、2時間かけて常圧でトルエンを留去した。残渣を30分かけて50℃まで冷却しトルエン39kgを加え、更に1.5時間かけて10℃まで冷却した。析出した結晶をろ収し、トルエン13kgで洗浄した。得られた結晶を乾燥し、N−[(5−アセチル−2−クロロフェニル)メチル]メトキシカルボキシアミド49.1kg(収率67.7%;(2−クロロフェニル)メチルアミン基準、純度94.5%)を得た。
【産業上の利用可能性】
上述したように本発明によれば、従来の技術における欠点を解決したカーバメイト誘導体の製造に有用な製造方法が提供される。
本発明によれば、例えば、カーバメイト系農園芸用殺菌剤の有用な中間体である一般式(6)のカーバメート誘導体を製造において有用な、一般式(3)で表されるベンジルアミン誘導体の製造方法、該製造方法を経由する一般式(6)のカーバメート誘導体の製造方法、および新規な製造中間体化合物が提供される。
本発明によれば、例えば、カーバメイト系殺菌剤の有用な中間体である一般式(6)のカーバメート誘導体を収率、純度共に良く、しかも簡便な操作で製造できるので、本発明方法は、特に工業的な利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるベンジル誘導体と、一般式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させることを特徴とする、一般式(3)

(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるベンジルアミン誘導体の製造方法。
【請求項2】
一般式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるベンジル誘導体と、一般式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示す)
で表されるハロアシル化合物とを、ルイス酸存在下で反応させて、一般式(3)

(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるベンジルアミン誘導体とし、該ベンジルアミン誘導体を加水分解して、一般式(4)

(式中、X、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるアミノ誘導体とした後、該アミノ誘導体と、一般式(5)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキル基を示す)
で表されるハロ蟻酸エステルを、塩基存在下で反応させることを特徴とする、一般式(6)

(式中、X、R、Rは前記と同じ意味を示す)
で表されるカーバメイト誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(7)

(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアシル基を示し、Rは水素原子又はアシル基を示す)
で表されるアシルベンジルアミン誘導体。

【国際公開番号】WO2004/058681
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562958(P2004−562958)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016995
【国際出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(000102049)イハラケミカル工業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】