説明

ベンジル化フェノール類の製造法

ベンジル化フェノール類を製造する方法は、フェノール類およびベンジルアルコール類と塩基性金属酸化物触媒とを、フェノール類およびベンジルアルコール類のそれぞれを気相状態に保持するのに十分な温度にて接触させることを含む。フェノール類は、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位に位置している水素を少なくとも1つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンジル化フェノール類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンジル化フェノール類(特に、オルトベンジル化フェノール類)は、酸化防止剤や化学中間体として有用である。
ベンジルフェノールは一般に、強酸(例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、および硫酸)の存在下にて、フェノールを塩化ベンジルまたはベンジルアルコールで処理することによって得られる。他の方法においては、2-ベンジルフェノール、2,4-ジベンジルフェノール、および2,6-ジベンジルフェノールは、トルエン中にてフェノールを水酸化ナトリウムと共に加熱し、そしてそれと塩化ベンジルとを反応させることによって得られる。これとは別に、塩化アルミニウム触媒を使用してベンジルアルコールとp-クレゾールとを反応させて、ジベンジル-p-クレゾールを製造することもできる。未置換オルト位を有するフェノール類とベンジルアルコールを活性アルミナ触媒と接触させて行われる気相ベンジル化も知られている。
【0003】
しかしながら、これら上記方法の幾つかは、相当量のメタ置換ベンジルアルコールとパラ置換ベンジルアルコールを生成する。これらの方法が直面するさらなる問題としては、バッチ処理、腐食、および面倒な操作条件などが挙げられる。
【0004】
したがって当業界においては、オルトフェノール類や2,6-ジベンジルフェノール類を選択的に製造することができ、それほど厳密ではない操作条件を有する、ベンジル化フェノール類の製造法が引き続き求められている。
【発明の開示】
【0005】
以下に、ベンジル化フェノール類を製造する方法を開示する。
1つの実施態様によれば、ベンジル化フェノール類を製造する方法は、フェノール類およびベンジルアルコール類と塩基性金属酸化物触媒とを、フェノール類およびベンジルアルコール類のそれぞれを気相状態に保持するのに十分な温度にて接触させることを含む。フェノール類は、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位に位置している水素を少なくとも1つ有する。
〔発明の詳細な説明〕
本明細書および添付の特許請求の範囲において多くの用語が使用されているが、これらの用語は下記の意味を有するものとする。
【0006】
単数形である“a”、“an”、および“the”は、特に明記しない限り、複数への言及も含んでいる。
“任意の”または“必要に応じて”は、引き続き説明されている事象もしくは状況が起こってもよいし、あるいは起こらなくてもよいということ、そしてその説明が、事象が起こる場合と事象が起こらない場合を含む、ということを意味している。
【0007】
本明細書で使用している“組み合わせ”は、混合物、コポリマー、反応生成物、ブレンド、および複合物などを含む。
同じ特質を列挙している全範囲の端点は独立に組み合わせ可能であって、列挙されている端点を含む。“約・・・よりも大きい”や“約・・・よりも小さい”は、記載されている端点を含む(例えば、“約3.5よりも大きい”は3.5の値を含む)。
【0008】
本明細書に開示されているのはベンジル化フェノール類を製造する方法、そして特にオルトフェノール類(例えば2,6-ジベンジルフェノール)を製造する方法である。あとでより詳細に説明するように、フェノール類とベンジルアルコール類とを、塩基性金属酸化物触媒の存在下にて、これらの反応体を気相状態に保持するのに十分な温度で反応させることによって、オルトベンジル化フェノール類に対する高い選択性(例えば、80%〜90%)を得ることができる、ということが見出された。例えば300℃〜600℃の温度を、あるいはより特定的には350℃〜450℃の温度を使用することができる。本明細書で使用している選択性は、100×(全オルトベンジル生成物)/(全生成物)と定義される。
【0009】
本発明の製造法は、広範囲のフェノール類に対して適用可能である。“フェノール類”という用語は、芳香環に結合したヒドロキシ基を少なくとも1つ有する全ての芳香族ヒドロキシ化合物を総称的に表わすのに使用されている。本発明の方法において使用されるフェノール類は、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位に位置する水素を少なくとも1つ有する。さらに、フェノール類は、過剰な分解を起こすことなく気相状態に転化させるのに充分な温度に加熱できるように選択される。適切なフェノール類の例としては、フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、4-エチルフェノール、4-フェニルフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、4-クロロフェノール、2-クロロフェノール、2,4-ジクロロフェノール、4-ブロモフェノール、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、4-エトキシフェノール、およびこれらの少なくとも1種を含む組み合わせなどがある。特定の適切なフェノール類としては、化合物フェノール(C6H5OH)およびこれらのモノ低級アルキル誘導体(例えば、p-クレゾール、o-クレゾール、p-エチルフェノール、およびp-n-ブチルフェノールなど)がある。より特定の適切なフェノール類は、1つの実施態様においては化合物フェノールである。
【0010】
“ベンジルアルコール類”という用語は、式I
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1は、水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であり;Arは、未置換であっても、あるいはアルキル、ハロゲン、およびアルコキシ等の基で置換されていてもよい単環式または多環式の芳香族基である)を有する化合物のクラスを広く表わしている。適切なベンジルアルコール類としては、p-メチルベンジルアルコール、p-エチルベンジルアルコール、o-メチルベンジルアルコール、p-イソブチルベンジルアルコール、p-クロロベンジルアルコール、2,4-ジクロロベンジルアルコール、o-ブロモベンジルアルコール、p-メトキシベンジルアルコール、p-エトキシベンジルアルコール、およびこれらの少なくとも1種を含む組み合わせなどがある。1つの実施態様においては、ベンジルアルコール類は化合物ベンジルアルコール(C6H5CH2OH)を含む。
【0013】
本発明の反応においては、フェノール類1モル当たり広範囲の量のベンジルアルコール類を使用することができる。例えば、フェノール類1モル当たりのベンジルアルコール類の量は0.2モル〜10モルであってよい。この範囲内において、ベンジルアルコール類の量については、フェノール類1モル当たり1モル以上(すなわち、1モルよりも大きいかまたは1モルに等しい)のベンジルアルコール類であってよく、あるいはより特定的には、フェノール類1モル当たり2モル以上のベンジルアルコール類であってよい。さらにこの範囲内において、ベンジルアルコール類の量については、フェノール類1モル当たり5モル以下(すなわち、1モルよりも小さいかまたは1モルに等しい)のベンジルアルコール類であってよく、あるいはより特定的には、フェノール類1モル当たり3モル以下のベンジルアルコール類であってよい。
【0014】
例えば、1つ実施態様においてジベンジル化が望まれる場合、フェノール類1モル当たりのベンジルアルコール類の量は1モル〜3モルであり、あるいはより特定的には1.5モル〜2.5モルである。他の実施態様においては、フェノール類1モル当たりのベンジルアルコール類の量が2モル〜5モルのときに、あるいはより特定的には3モル〜4モルのときに、2,6-ジベンジルフェノールの高い収率(例えば40%以上)が得られる。他の実施態様においては、モノベンジル化が望まれるときは、フェノール類1モル当たりのベンジルアルコール類の量は0.2モル〜3モルであり、あるいはより特定的には0.5モル〜1モルである。
【0015】
本発明の製造法において使用される触媒は、少なくとも1種の塩基性金属酸化物を主成分として含む。塩基性金属酸化物のための適切な金属としては、鉄、マグネシウム、カルシウム、バリウム、およびストロンチウムなどがある。塩基性金属酸化物は、マグネシウム試薬、鉄試薬、またはこれらの少なくとも1種を含む組み合わせ、を含む塩基性金属酸化物前駆体から得ることができる。マグネシウム酸化物を生成するいかなるマグネシウム試薬も使用することができる。同様に、鉄酸化物を生成するいかなる鉄試薬も使用することができる。
【0016】
適切なマグネシウム試薬としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、および前記物質の少なくとも1種を含む混合物などがあるが、これらに限定されない。マグネシウム試薬は、一般には粉末の形態をとっている。例えば、マグネシウム試薬は、5μm〜50μm(特に、10μm〜30μm)の平均粒径〔各粒子の大きいほうの直径(すなわち最大直径)を測定することによって決定される〕を有する。
【0017】
触媒の調製に使用される鉄試薬の例としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄、および塩化第一鉄などがあるが、これらに限定されない。1つの実施態様においては、鉄試薬は硝酸第二鉄を含む。鉄酸化物は、いかなる形態をとっていてもよい。例えば、鉄酸化物の適切な形態としては、FeO、Fe2O3、Fe3O4、および前記物質の少なくとも1種を含む混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の触媒は、塩基性金属酸化物前駆体と、少なくとも1種のフィラーおよび任意の細孔形成物質とをドライブレンドすることによって作製される。本明細書で使用している“ドライブレンドする”とは、何らかの“湿潤”手法(例えば、懸濁ブレンディングや懸濁沈殿)を用いることなく、初めから個々の成分を乾燥状態にて一緒に混合する、という一般的な手法を表わしている。いかなるタイプのメカニカルミキサーもしくはブレンダー(例えばリボンブレンダー)も使用することができる。“フィラー”という用語は、滑剤、結合剤、およびフィラー(これらに限定されない)を含んでいる。
【0019】
触媒組成物中に存在するフィラーの総量は、フィラーと塩基性金属酸化物前駆体との合計量を基準として20重量%以下であってよい。幾つかの実施態様においては、フィラーの総量は10重量%以下である。触媒組成物中に使用されるフィラーの例としては、グラファイトとポリフェニレンエーテル(PPE)がある。幾つかの実施態様においては、ポリフェニレンエーテルは、フィラーと塩基性金属酸化物前駆体との合計量を基準として10重量%以下の量にて使用される。幾つかの実施態様においては、グラファイトは、5重量%以下の量にて使用される。
【0020】
任意の細孔形成物質は、触媒中における細孔の形成を促進することができる物質である。適切な細孔形成物質としては、例えばワックスや多糖類などがあるが、これらに限定されない。ワックスは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、および前記物質の少なくとも1種を含む組み合わせを含んでよい。多糖類は、セルロース、カルボキシルメチルセルロース、セルロースアセテート、澱粉、クルミ粉末、クエン酸、ポリエチレングリコール、シュウ酸、ステアリン酸、および前記物質の少なくとも1種を含む組み合わせを含んでよい。さらに、アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤〔一般には、中和された酸化学種(例えば、カルボン酸化学種、リン酸化学種、およびスルホン酸化学種)を含有する長鎖(C10-28)炭化水素〕も有用である。
【0021】
任意の細孔形成物質は、焼成後に50オングストローム〜300オングストローム(あるいはより特定的には、焼成後に100オングストローム〜300オングストローム)の平均細孔径をもたらすのに十分な量にて使用される。例えば、細孔形成物質は、塩基性金属酸化物前駆体とフィラーと細孔形成物質との合計量を基準として0.5重量%〜50重量%の量にて存在してよい。この範囲内にて、細孔形成物質は、40重量%以下(あるいはより特定的には30重量%以下)の量にて存在してよい。さらにこの範囲内にて、細孔形成物質は、2重量%以上(あるいはより特定的には5重量%以上)の量にて存在してよい。
【0022】
幾つかの実施態様においては、触媒は二峰性の細孔分布を有する。特定の理論で拘束されるつもりはないが、焼成プロセス時に、第1のより小さな径の細孔分布が塩基性金属酸化物前駆体から得られる、と考えられる(すなわち、これらの細孔は、細孔形成物質を含有しない塩基性金属酸化物前駆体の焼成から得られるものと同等の寸法を有する)。第2のより大きな径の細孔分布は、細孔形成物質試薬の添加と細孔形成物質試薬自体の焼成の結果であると考えられる(すなわち、これらの細孔径は、細孔形成物質を含有しない塩基性金属酸化物前駆体の焼成後に実質的な量にて見られない)。
【0023】
1つの実施態様においては、二峰性の細孔分布は、100オングストローム未満の平均細孔径を有する第1の細孔分布と、100オングストローム以上で500オングストローム以下の平均細孔径を有する第2の細孔分布を有する。
【0024】
塩基性金属酸化物前駆体、フィラー(または複数種のフィラー)、および任意の細孔形成物質のドライブレンドが完了した後、ブレンドされた固体触媒組成物は粉末の形態をとっている。次いで、この粉末は通常、0.1g/cm3〜0.5g/cm3(より特定的には0.25g/cm3〜0.5g/cm3)の嵩密度を有する。この粉末は一般に、所望の形状に造形される前にさらなる処理を受ける。例えば、粉末を篩にかけたり(より狭い粒子分布を得るために)、微粉砕したり、圧縮したりすることができる。ほとんどの実施態様において、触媒組成物は、ドライブレンドの後でさらなる処理の前に脱気される。脱気は、取り込まれているガス(主として空気)を粉末内部から強制的に除去することによって、物質の嵩密度をさらに上昇させる。
【0025】
本発明の触媒は、所望するいかなる形状にも作製することができる。例えば、触媒を圧縮してペレットまたは“錠剤”にすることができる。この操作は、米国特許第4,900,708号に記載の装置を含めた(これに限定されない)ペレット化装置によって行うことができる。次いで、造形された触媒組成物を焼成する。焼成は通常、触媒を、塩基性金属酸化物前駆体を塩基性金属酸化物(触媒中の活性化学種)に転化させるのに十分な温度で加熱することによって行われる。焼成を行うと、触媒の表面積が増大する。焼成温度は金属前駆体に応じて変わるが、一般には350℃〜600℃である。焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気であっても、不活性雰囲気であっても、あるいは還元性雰囲気であってもよい。これとは別に、触媒は、ベンジル化反応の初めに焼成することもできる。言い換えると、焼成は、供給材料(例えば、フェノール類やベンジルアルコール類)の存在下で行うことができる。
【0026】
触媒ペレットの表面積は、BET(ブルナウアー、エメット、およびテラー)分析に基づいて50m2/g〜300m2/g(あるいはより特定的には、120m2/g〜200m2/g)であってよい。未焼成のペレットは1.3g/cm3〜2.1g/cm3のペレット密度を有する。この範囲内において、ペレットは1.4g/cm3以上(特に1.6g/cm3以上)のペレット密度を有する。さらにこの範囲内において、ペレットは2.0g/cm3以下(特に1.9g/cm3以下)のペレット密度を有する。
【0027】
1つの実施態様においては、触媒ペレットは、950m2/m3〜4000m2/m3の表面積対体積比を有する。この範囲内において、触媒ペレットは特に、1100m2/m3以上(より特定的には1300m2/m3以上)の表面積対体積比を有する。さらにこの範囲内において、触媒ペレットは、3800m2/m3以下(より特定的には3000m2/m3以下)の表面積対体積比を有する。
【0028】
他の実施態様においては、触媒ペレットは0.7〜1.0のアスペクト比を有する。この範囲内において、アスペクト比は特に0.72以上であり、より特定的には0.75以上である。さらにこの範囲内において、アスペクト比は特に0.95以下であり、より特定的には0.90以下である。ここではアスペクト比は、長さ対直径の比、または長さ対幅の比と定義する。
【0029】
操作について説明すると、水素を除いてはフェノール性ヒドロキシル基に対して未置換のオルト位を少なくとも1つ有するフェノール類とベンジルアルコール類とを、触媒(以後、説明を簡単にするために“触媒床”と呼ぶ)を含有する容器中に導入する。触媒床の温度を、反応体を気相状態に保持するのに十分な温度(例えば、300℃〜600℃の温度)に保持する。大気圧にて反応が進行するが、大気圧より高い圧力でも、低い圧力でも使用することができる。この反応はさらに、水蒸気の存在下でも行なうことができる。例えば、水蒸気は、反応体の総量を基準として1重量%〜35重量%(あるいはより特定的には、5重量%〜25重量%)の量にて存在してよい。
【0030】
本発明の製造法を使用すると、オルトベンジル化生成物(例えば、オルトベンジルフェノールや2,6-ジベンジルフェノール)の80%以上の選択性(あるいはより特定的には、85%以上の選択性)が得られる。幾つかの実施態様においては、選択性は99%以上である。別の言い方をすれば、実質的に副生物が生成しない実施態様が開示されている。例えば、反応生成物の全重量の1重量%以下が副生物(例えば、ベンジルエーテル類、メタベンジルフェノール、パラベンジルフェノール)である。ベンズアルデヒドが生成されることがあるけれども、これは、オルトベンジル化生成物が形成されるよう再利用することができる。触媒が酸化鉄を含むときは、反応生成物の全重量を基準として15重量%のオルトベンジルフェノールが得られる。
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらは単に、ベンジル化フェノール類を製造する1つの例を示したものにすぎず、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されることはない。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
高速剪断ブレンダーを使用して、約10gの炭酸マグネシウムと1gのワックスとを10分混合した。液体窒素のもとでブレンディングプロセスを行って、均一なミキシングを可能にした。得られた混合物をペレットに作製し、0.2℃/分〜5℃/分の勾配速度により、窒素雰囲気下にて390℃〜410℃に変動する温度で焼成した。窒素の流量は、触媒1g当たり1時間当たり0.06gの窒素(0.06g/hr/g)〜10g/hr/gに保持した。スタート時の焼成温度も、室温から200℃に変えた。約300mgの焼成サンプルに対し、マイクロメリティクス(Micromeritics)2010アナライザーを使用して表面積と多孔度の測定を行った。細孔径分布と表面積は、窒素脱着等温線から得られた。全体としての平均細孔径は120オングストローム〜180オングストロームであった。細孔容積は、1グラム当たり0.5立方センチメートル(0.5cc/g)〜0.7cc/gであった。表面積は100m2/g〜250m2/gであった。
【0033】
(実施例2)
充填床(packed bed)反応器に、5立方センチメートル(cc)の炭酸マグネシウムペレット(1000μm〜1400μmの平均粒径を有する)を装入した。この触媒1g当たり1時間当たり0.06〜0.24(10)gの窒素雰囲気下において、0.2〜5℃/分の速度にて390℃で16〜22時間、触媒をその場で焼成した。反応は全て、大気圧下にて行った。焼成後、窒素雰囲気下にて2時間以内に、温度を390℃から475℃に上げた。この温度に達してから15分後に、供給混合物を0.12cc/分にて導入した。供給混合物は、16.21重量%のフェノール、74.48重量%のベンジルアルコール、および9.31重量%の水を含有していた(ベンジルアルコールとフェノールとのモル比は4:1)。ベンジル化反応は、等温条件下にて24時間行った。反応生成物(オルトベンジルフェノール、2,6-ジベンジルフェノール、ベンズアルデヒド、および未転化のフェノール類とベンジルアルコール)の収率を20時間にわたってモニターした。測定した転化率は、ガスクロマトグラフィーによって記録されたピーク面積のパーセントに基づいた。得られた結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
本実施例は、4:1のモル比のベンジルアルコールとフェノールとが使用されたとき、オルトベンジル化フェノール類の収率50%より高かった(あるいはより特定的には、60%より高かった)、ということを示している。より具体的には、2,6-ジベンジルフェノールの収率が40%以上であった。この反応は、オルトベンジル化フェノール類に対する選択性が83%であることを示していて、他の重要な生成物がベンズアルデヒドだけであり、ベンズアルデヒドは、さらなる生成物が得られるよう反応に再使用することができる。
【0036】
本実施例の方法では、炭酸マグネシウム(その場で酸化マグネシウムに転化させることができる)等の低コストの塩基性触媒を使用する。得られる反応生成物において、望ましくない生成物(例えば、パラベンジルフェノールやメタベンジルフェノール)はごくわずかである。例えば、本明細書に記載の触媒を使用する反応では、13.5%の副生物(ベンズアルデヒドのみ)が生成するが、これと比べて、同じ反応をα-アルミナを使用して行った場合には、50%の副生物が生成する。
【0037】
この方法では、比較的低コストの触媒が使用できると同時に、オルトベンジル化フェノール類に対する高い選択性も得られる。したがって、分離コストの低減を果たすことができる。この方法はさらに、連続的な方式にて行うこともでき、したがってバッチ方式と比較して生産性を高めることができる。この方法は、腐食を引き起こすことのある酸を使用せず、またプロセス装置のコストアップを引き起こすこともない。
【0038】
代表的な実施態様を挙げて本発明を説明してきたが、本発明の範囲を逸脱しない範囲において種々の変更を行ってよいこと、そして前記実施態様の要素の代りに同等の要素を使用できることは、当業者にとって言うまでもない。さらに、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、特定の状況または物質を本発明の開示内容に適合させるよう、多くの変更を施すことができる。したがって本発明は、本発明を実施するための最良のモードとして開示されている特定の実施態様に限定されるのではなく、添付のクレームに記載の範囲内に含まれる全ての実施態様を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類およびベンジルアルコール類と塩基性金属酸化物触媒とを、フェノール類およびベンジルアルコール類のそれぞれを気相状態に保持するのに十分な温度にて接触させることを含み、ここで、フェノール類が、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位に位置している水素を少なくとも1つ有する、ベンジル化フェノール類の製造法。
【請求項2】
温度が300℃〜600℃である、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
フェノール類が、フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、4-エチルフェノール、4-フェニルフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、4-クロロフェノール、2-クロロフェノール、2,4-ジクロロフェノール、4-ブロモフェノール、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、4-エトキシフェノール、およびこれらの少なくとも1種を含む組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
ベンジルアルコール類が、ベンジルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、p-エチルベンジルアルコール、o-メチルベンジルアルコール、p-イソブチルベンジルアルコール、p-クロロベンジルアルコール、2,4-ジクロロベンジルアルコール、o-ブロモベンジルアルコール、p-メトキシベンジルアルコール、p-エトキシベンジルアルコール、およびこれらの少なくとも1種を含む組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の製造法。
【請求項5】
塩基性金属酸化物触媒が、マグネシウム試薬、鉄試薬、またはこれらの少なくとも1種を含む組み合わせ、を含む塩基性金属酸化物前駆体から得られる、請求項1に記載の製造法。
【請求項6】
塩基性金属酸化物触媒が二峰性の細孔分布を有する、請求項1に記載の製造法。
【請求項7】
二峰性の細孔分布が、100オングストローム未満の平均細孔径を有する第1の細孔分布、および100オングストローム以上で500オングストローム以下の平均細孔径を有する第2の細孔分布を含む、請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
ベンジルアルコール類の量が、フェノール類1モル当たり0.2モル〜10モルである、請求項1に記載の製造法。
【請求項9】
ベンジルアルコール類の量が、フェノール類1モル当たり2モル〜5モルである、請求項8に記載の製造法。
【請求項10】
ベンジルアルコール類の量が、フェノール類1モル当たり0.2モル〜3モルである、請求項8に記載の製造法。
【請求項11】
塩基性金属酸化物触媒が50オングストローム〜300オングストロームの平均細孔径を有する、請求項1に記載の製造法。
【請求項12】
塩基性金属酸化物触媒が、BET分析に基づいて50m2/g〜300m2/gの表面積を有する、請求項1に記載の製造法。
【請求項13】
製造法が、オルトベンジル化生成物に関して80%以上の選択性を有する、請求項1に記載の製造法。
【請求項14】
選択性が85%以上である、請求項13に記載の製造法。
【請求項15】
ジベンジル化フェノールが40%以上の収率で得られる、請求項1に記載の製造法。
【請求項16】
フェノール類およびベンジルアルコール類と塩基性金属酸化物触媒とを、フェノール類およびベンジルアルコール類のそれぞれを気相状態に保持するのに十分な温度にて接触させることを含み;
ここで、フェノール類が、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位に位置している水素を少なくとも1つ有し;
塩基性金属酸化物触媒が、マグネシウム試薬、鉄試薬、またはこれらの少なくとも1種を含む組み合わせ、を含む塩基性金属酸化物前駆体から得られ、ここで、前記触媒が、100オングストローム未満の平均細孔径を有する第1の細孔分布、および100オングストローム以上で500オングストローム以下の平均細孔径を有する第2の細孔分布を含む二峰性の細孔分布を含み;および
ベンジルアルコール類の量が、フェノール類1モル当たり0.2モル〜10モルである;
ベンジル化フェノール類の製造法。
【請求項17】
触媒が、BET分析に基づいて50m2/g〜300m2/gの表面積を有する、請求項16に記載の製造法。
【請求項18】
製造法が、オルトベンジル化生成物に関して80%以上の選択性を有する、請求項16に記載の製造法。
【請求項19】
選択性が90%以上である、請求項18に記載の製造法。
【請求項20】
2,6-ジベンジルフェノールが40%以上の収率で得られる、請求項16に記載の製造法。

【公表番号】特表2009−507789(P2009−507789A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529052(P2008−529052)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/030662
【国際公開番号】WO2007/027375
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】