説明

ベンゾキサジン含有組成物およびこれを使って製造される硬化性組成物

構造:
【化】


[構造中、Rは、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COO、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択されるものであり、mは、0−4であり、ならびにR−Rは、独立して、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COOH、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択され、R−Rの少なくとも1個は存在する]によって包含される単官能ベンゾキサジン化合物を含む、50℃以下の温度で液状形態である組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、構造:
【0002】
【化1】

[構造中、Rは、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COO、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択されるものであり、mは、0−4であり、ならびにR−Rは、独立して、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COOH、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択され、R−Rの少なくとも1個は存在する]に包含される単官能ベンゾキサジン化合物を含む、50℃以下の温度で液状形態である組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の簡単な説明)
ベンゾキサジンは公知である。エポキシ樹脂とベンゾキサジンとのブレンドも公知である。例えば、米国特許第4,607,091号(Schreiber)、同5、021,484号(Schreiber)、同5,200,452号(Schreiber)、および同5,445,911号(Schreiber)各公報を参照されたし。これらのブレンドは、電子産業において潜在的に有用であるように思われる。なぜなら、エポキシ樹脂がベンゾキサジンの溶融粘度を低下し、加工できる粘度を維持しながらも高い充填量でフィラーを使うことを可能にするからである。しかしながら、エポキシ樹脂は、ベンゾキサジンが重合する温度を高くすることがよくあり、望ましくない。
【0004】
米国特許第6,620,925号(Musa)公報は、ベンゾキサジン以外の反応性官能基がない特定のベンゾキサジン化合物(開示されているがクレームされていないアリルおよびプロパギルは除いて)、ならびにビニルエーテル、ビニルシラン、ビニルまたはアリル官能基を含有する化合物もしくは樹脂、チオール−エン、シンナミルまたはスチレン系官能基を含有する化合物もしくは樹脂、フマレート、マレエート、アクリレート、マレイミド、シアネートエステル、およびビニルシランと、シンナミル、スチレン系、アクリレートまたはマレイミド官能基の両方を含有するハイブリッド樹脂から選択される硬化性化合物または樹脂、を含む硬化性組成物を志向し、クレームしている。
【0005】
そして、米国特許第6,743,852号(Dershem)公報は、エポキシ、シアネート、エステル、マレイミド、アクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン系、プロパギルエーテル、ジアルキルアミド、芳香族アセチレン、ベンゾシクロブテン、チオレン、マレエート、オキサゾリンおよびイタコンイミドの1種以上と組合わせることができる液状ベンゾキサジンに言及している。
【0006】
また、エポキシ樹脂、ベンゾキサジンおよびフェノール樹脂の3元ブレンドも公知である。米国特許第6,207,786号(Ishida)公報、ならびにS.RimdusitおよびH.Ishidaの「ベンゾキサジン、エポキシ、およびフェノール樹脂の3元系をベースとする新しい種類の電子部品実装材料の開発」(Developement of new class of electronic packaging materials based on ternary system of benzoxazine,epoxy,and phenolic resin)Polmer、41、7941−49(2000)を参照されたし。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記最新技術にもかかわらず、ベンゾキサジン化合物が50℃以下の温度(例えば、室温)で液状形態であれば、それは明確な利点であり、その結果、このベンゾキサジン化合物を用いて製造される組成物を添加、ブレンドおよび/またはディスペンスするために添加希釈剤が使用されるとしても、それはわずかな量でしか使用されないと考えられる。さらに、公知の硬化性系において達成できるとは思えない、物理的特性のバランスを有する系を開発するために、そのようなベンゾキサジン化合物と追加の反応体とのブレンドを提供することは好ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
広い意味において、本発明は、単官能ベンゾキサジン化合物を含む50℃以下の温度で液状形態である組成物を志向している。この単官能ベンゾキサジン化合物は、構造:
【0009】
【化2】

[構造中、Rは、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COO、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択されるものであり、mは、0−4であり、ならびにR−Rは、独立して、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COOH、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択され、R−Rの少なくとも1個は存在する]に包含される。
【0010】
他の態様では、本発明は、シアネートエステル、エポキシ、エピスルフィド、マレイミド、イタコンイミド、ナジミド、オキサゾリン、アリルアミド、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、およびこれらの組合わせから選択される官能基を有する1種以上の化合物を、上記単官能ベンゾキサジンと併用して本発明の組成物にする。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、液状形態の多官能ベンゾキサジン(例えば、以下に示す)を上記単官能ベンゾキサジンと併用し、そして、この単官能ベンゾキサジンは、シアネートエステル、エポキシ、エピスルフィド、マレイミド、イタコンイミド、ナジミド、オキサゾリン、アリルアミド、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、およびこれらの組合わせから選択される官能基を有する前記化合物を任意に含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
【0013】
上記のように、本発明は、単官能ベンゾキサジン化合物を含む50℃以下の温度で液状形態である組成物を志向している。この単官能ベンゾキサジン化合物は、構造:
【0014】
【化3】

[構造中、Rは、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COO、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択されるものであり、mは、0−4であり、ならびにR−Rは、独立して、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COOH、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択され、R−Rの少なくとも1個は存在する]に包含される。
【0015】
記載される前記単官能ベンゾキサジンの代表的な例としては、
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

が挙げられる。
【0018】
これらの単官能ベンゾキサジンと共に前記組成物には、
【0019】
【化6】

のような他の単官能ベンゾキサジンが含まれてもよい。
【0020】
より具体的には、単官能ベンゾキサジンの特定の組合わせは、特に好ましいものとして確認されてきた。例えば、以下、3種の単官能ベンゾキサジンの2つの組合わせは、注目すべきである。
【0021】
【化7】

【0022】
さらに、以下の2つの包括的構造に包含される化合物を含む組成物は、50℃以下の温度で液状形態で存在する場合、本発明を形成し、
【0023】
【化8】

この構造中、oは、1−4であり、Xは、以下に定義され、そしてRは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルのようなアルキルであり、もしくは
【0024】
【化9】

この構造中、pは、1−4であり、Yは、以下のように定義され、そしてRは、水素、ハロゲン、アルキルまたはアルケニルから選択される。
【0025】
XおよびYは、独立して、以下、
(a)典型的には、約6から約500個までの範囲の炭素原子を有するヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル種であって、このヒドロカルビル種は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、またはアルキニルアリールから選択されるが、しかしながら、Xが2つ以上の異なった種の組合わせを含む場合にだけ、Xはアリールであってもよく、
(b)典型的には、約6から約500個までの範囲の炭素原子を有するヒドロカルビレンまたは置換ヒドロカルビレン種であって、このヒドロカルビレン種は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリールアルキレン、アリールアルケニレン、アルケニルアリーレン、アリールアルキニレン、またはアルキニルアリーレンから選択され、
(c)典型的には、約6から約500個までの範囲の炭素原子を有する複素環または置換複素環種、
(d)ポリシロキサン、および
(e)ポリシロキサン−ポリウレタンブロック・コポリマー、
を含む一価基または多価基、ならびに、
共有結合、−O−、−S−、−NR−、−NR−C(O)−、−NR−C(O)−O−、−NR−C(O)−NR−、−S−C(O)−、−S−C(O)−O−、−S−C(O)−NR−、−O−S(O)−、−O−S(O)−O−、−O−S(O)−NR−、−O−S(O)−、−O−S(O)−O−、−O−S(O)−NR−、−O−NR−C(O)−、−O−NR−C(O)−O−、−O−NR−C(O)−NR−、−NR−O−C(O)−、−NR−O−C(O)−O−、−NR−O−C(O)−NR−、−O−NR−C(S)−、−O−NR−C(S)−O−、−O−NR−C(S)−NR−、−NR−O−C(S)−、−NR−O−C(S)−O−、−NR−O−C(S)−NR−、−O−C(S)−、−O−C(S)−O−、−O−C(S)−NR−、−NR−C(S)−、−NR−C(S)−O−、−NR−C(S)−NR−、−S−S(O)−、−S−S(O)−O−、−S−S(O)−NR−、−NR−O−S(O)−、−NR−O−S(O)−O−、−NR−O−S(O)−NR−、−NR−O−S(O)−、−NR−O−S(O)−O−、−NR−O−S(O)−NR−、−O−NR−S(O)−、−O−NR−S(O)−O−、−O−NR−S(O)−NR−、−O−NR−S(O)−O−、−O−NR−S(O)−NR−、−O−NR−S(O)、−O−P(O)R−、−S−P(O)R−、または−NR−P(O)R−、(ここで各々のRは、独立して、水素、アルキルまたは置換アルキルである)から選択されるリンカーを有する上記の1つ以上の組合わせ化合物、
から選択することができる。
【0026】
XおよびYを考慮した前記リンカー部分は、ベンゾキサジン化合物を40℃以下の温度、例えば、室温で液状にするのに十分な長さおよび/または分岐を有していなければならない。
【0027】
上記の「X」または「Y」基が、上記のリンカーの1種以上と共同でベンゾキサジン基の付属物を形成する場合、例えば、オキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシアルキニル、チオアルキニル、アミノアルキニル、カルボキシアルキニル、オキシシクロアルキル、チオシクロアルキル、アミノシクロアルキル、カルボキシシクロアルキル、オキシシクロアルケニル、チオシクロアルケニル、アミノシクロアルケニル、カルボキシシクロアルケニル、複素環、オキシ複素環、チオ複素環、アミノ複素環、カルボキシ複素環、オキシアリール、チオアリール、アミノアリール、カルボキシアリール、ヘテロアリール、オキシヘテロアリール、チオヘテロアリール、アミノヘテロアリール、カルボキシヘテロアリール、オキシアルキルアリール、チオアルキルアリール、アミノアルキルアリール、カルボキシアルキルアリール、オキシアリールアルキル、チオアリールアルキル、アミノアリールアルキル、カルボキシアリールアルキル、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール、カルボキシアルケニルアリール、オキシアリールアルキニル、チオアリールアルキニル、アミノアリールアルキニル、カルボキシアリールアルキニル、オキシアルキニルアリール、チオアルキニルアリール、アミノアルキニルアリールまたはカルボキシアルキニルアリール、オキシアルキレン、チオアルキレン、アミノアルキレン、カルボキシアルキレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシアルキニレン、チオアルキニレン、アミノアルキニレン、カルボキシアルキニレン、オキシシクロアルキレン、チオシクロアルキレン、アミノシクロアルキレン、カルボキシシクロアルキレン、オキシシクロアルケニレン、チオシクロアルケニレン、アミノシクロアルケニレン、カルボキシシクロアルケニレン、オキシアリーレン、チオアリーレン、アミノアリーレン、カルボキシアリーレン、オキシアルキルアリーレン、チオアルキルアリーレン、アミノアルキルアリーレン、カルボキシアルキルアリーレン、オキシアリールアルキレン、チオアリールアルキレン、アミノアリールアルキレン、カルボキシアリールアルキレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、オキシアリールアルキニレン、チオアリールアルキニレン、アミノアリールアルキニレン、カルボキシアリールアルキニレン、オキシアルキニルアリーレン、チオアルキニルアリーレン、アミノアルキニルアリーレン、カルボキシアルキニルアリーレン、ヘテロアリーレン、オキシヘテロアリーレン、チオヘテロアリーレン、アミノヘテロアリーレン、カルボキシヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有二価または多価環状部分、オキシヘテロ原子含有二価または多価環状部分、チオヘテロ原子含有二価または多価環状部分、アミノヘテロ原子含有二価または多価環状部分、カルボキシヘテロ原子含有二価または多価環状部分などの、当業者に容易に認められるような広範の様々な有機鎖を製造することができる。
【0028】
また、上記のように、液状形態の多官能ベンゾキサジンを前記組成物と併用することができる。例えば,
【0029】
【化10】

【0030】
【化11】

【0031】
2官能ベンゾキサジンの3、9および11番は、これら自体、本発明を形成する。
【0032】
特定の単官能ベンゾキサジンと特定の多官能ベンゾキサジンとの組合わせは、特に好ましいことが認められた。例えば、これら3つの単官能ベンゾキサジンと1つの多官能ベンゾキサジンとの組合わせは、注目すべきである。
【0033】
【化12】

【0034】
また、本発明は、シアネートエステル、エポキシ、エピスルフィド、マレイミド、イタコンイミド、ナジミド、オキサゾリン、アリルアミド、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、およびこれらの組合わせから選択される官能基を有する1種以上の化合物と、上記の単官能ベンゾキサジンおよび任意に、また上記の多官能ベンゾキサジンとを併用して本発明の組成物にすることができる。
【0035】
そのような官能基を有する化合物を使う場合、そのような化合物に対するベンゾキサジンの比は、好ましい実施形態では、2:1から25:1、例えば、5:1から15:1、好ましくは10:1から12:1の範囲でなければならない。そのような官能基を有する特に好ましい化合物は、シアネートエステル化合物である。
【0036】
前記シアネートエステル官能基を有する化合物は、式I:
【0037】
【化13】

(式中、mは、2から5であり、Rは、芳香核含有残基である)で表される構造を基準に記載することができる。そのような化合物のより具体的な例としては、1,3−ジシアネートベンゼン、1,4−ジシアネートベンゼン、1,3,5−トリシアネートベンゼン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−または2,7−ジシアネートナフタレン、1,3,6−トリシアネートナフタレン、4,4’−ジシアネート−ビフェニル、ビス(4−シアネートフェニル)メタンおよび3,3’,5,5’−テトラメチル−ビス(4−シアネートフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアネートフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ジシアネートフェニル)プロパン、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル、ビス(4−シアネートフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、トリス(4−シアネートフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアネートフェニル)ホスフェート、ビス(3−クロロ−4−シアネートフェニル)メタン、シアネート化ノボラック、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン)]ベンゼンおよびシアネート化、ビスフェノール末端ポリカーボネートまたは他の熱可塑性オリゴマーが挙げられる。
【0038】
他のシアネートエステルとしては、米国特許第4,477,629号および同4,528,366号各公報に開示されたもの、英国特許第1,305,702号に開示されたシアネートエステル、国際特許公開第WO85/02184号に開示されたシアネートエステルが挙げられ、各々の開示は、参照により本明細書に明示的に組込まれる。
【0039】
本特許で使用するのに特に好ましいシアネートエステルは、Huntsman Specialty Chemicals(Brewster、New York)から商標名「AROCY」、およびLonza Group(英国)から商標名「PRIMASET」の[1,1−ジ(4−シアネートフェニルアルカン)]が商業的に入手できる。4つの好ましい「AROCY」シアネートエステルの構造は、
【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

さらに、
【0042】
【化16】

【0043】
マレイミド、イタコンイミド、またはナジミドの官能基を有する化合物としては、例えば、米国特許第6,916,856号公報および米国特許公開第2004/00077998号公報に記載されたものが挙げられ、各々の開示は参照により本明細書に組込まれる。
【0044】
一般的に、簡単な取り扱いおよび処理のために熱硬化性樹脂組成物の粘度は、約10から約12,000センチポアズ(「cPs」)、好ましくは約10から約2,000cPsの範囲に入らなければならない。本発明のベンゾキサジン化合物は、典型的には50℃以下の温度で液状形態である。より具体的には、室温で液状形態であるそのようなベンゾキサジンは、室温で10,000cPs未満の粘度、例えば、室温で150cPs未満の粘度を有する。
【0045】
前記ベンゾキサジンの流動性を有する粘度のために、これらベンゾキサジンを含有する本発明の組成物は、希釈剤を添加する必要がなく、または組成物と共に希釈剤を使う場合、従来のベンゾキサジン含有熱硬化性樹脂系には取り扱いを容易にするために添加しなければならない希釈剤の量よりも、はるかに少ない量の希釈剤を使う。
【0046】
粘度を低下させることが望ましいという場合には、本発明の組成物に希釈剤を添加してもよい。ベンゾキサジンに対して不活性または反応性である、任意の希釈剤を使うことができる。代表的な不活性希釈剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、エチレングリコールのモノアルキルまたはジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリプロピレングリコール、グリコールエーテルおよび類似物が挙げられる。代表的な反応性希釈剤としては、単官能および多官能性アルコールのアクリレートおよびメタクリレート、本明細書で非常に詳細に記載されたビニル化合物、アリルアミド、フマレート、マレエート、スチレン系モノマー(すなわち、ビニルベンジルクロリドと1、2、または3官能ヒドロキシ化合物との反応から誘導されたエーテル)、ノルボニル化合物、および類似物が挙げられる。
【0047】
本発明の組成物は、例えば、シリカのような無機フィラーなどのフィラーを含んでいてもよい。他の無機フィラーとしては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、および下記金属フィラーが挙げられる。
【0048】
前記フィラーは、導電性であっても、または非導電性であってもよい。
【0049】
前記フィラーが、導電性の場合、銀、銅、はんだ粒子、アルミナ、窒化アルミニウム、またはアルミナ3水和物のような金属性のものであってもよい。
【0050】
前記フィラーが、非導電性の場合、ポリ(メチルメタクリレート)のような(メタ)アクリル粒子、PDMS粒子、ポリオレフィン粒子、スチレン粒子、テフロン(登録商標)およびガラスから選択することができる。
【0051】
本発明の組成物は、硬化された場合、フィラー濃度が50重量%で、15から35の範囲の熱膨張係数を有するように配合することができる。さらに、本発明の組成物は、175℃の温度で2時間、曝すことによって硬化された場合、直線的測定によって0.1%未満の容積収縮を示すように配合することができる。
【0052】
本発明の組成物の硬化が起きる温度、または硬化温度で硬化速度の加速が起きる温度を低下させるために、本発明の組成物に触媒を添加することができる。例えば、カチオン性触媒、酸性触媒または塩基性触媒を含むことができる。酸性触媒は、ルイス酸型または複素環ジカルボン酸のようなカルボン酸であってもよい。その点において、米国特許第6,376,080号(Gallo)で開示およびクレームされた前記複素環ジカルボン酸は、ベンゾキサジン含有組成物の硬化を触媒するのに特に有用であり、このジカルボン酸の例として、2−(2−ベンズチアゾリル)−コハク酸および(2−ベンズチアゾリルチオ)−ブタン二酸が、Ciba Specialty Chemicalsから、それぞれの商標名IRGACOR 252LDおよび252FCで入手できる。
【0053】
本発明の組成物は、アンダーフィル、カプセルの材料、成形複合物またはダイ接着剤として意図された組成物へと配合するのに有用である。
【実施例】
【0054】
実施例1
本発明に従って液状形態であるベンゾキサジンは、以下のように調製することができる。
【0055】
アニリン(93g、1.0モル)、パラホルムアルデヒド(60.0g、2.0モル)、フェノール(94.0g、1.0モル)、およびトルエン(2000ml)を機械的撹拌機を備えた5000mlの3口丸底フラスコに入れた。ディーン・スターク水分受けトラップをコンデンサーと共に使って、この反応で生成する水を集めた。この混合物を攪拌しながら4時間、還流まで加熱した。全量36ml(2.0モル)の水を集めた。この反応混合物を室温に冷却し、シリカゲルの薄層に通した。次いで、溶媒を回転蒸発で除去し、4時間、窒素ガスで残液をスパージした。最終生成物(ベンゾキサジン#4)をわずかに赤い液体として96%の収率で得た。
【0056】
実施例2
本発明の範囲内の組成物を、ベンゾキサジンをシアネートエステルおよびシリカに混合しながら添加することによって、室温で8,000cPsの粘度を有する系を生じさせて調製した。この粘度は、90℃の温度で200cPsに低下し、この組成物は、175℃の温度、2時間で硬化することができる。このような組成物を、各々、重量基準で45.5%のベンゾキサジン#4、4.5%のシアネートエステル(L−10)および50.0%のシリカ(FL−1950)から調製した。
【0057】
試験片を175℃の温度で4時間硬化した後、この硬化試料が135℃のTg(熱機械分析による方法で測定)、23.6ppmのCTE、室温で6.9Gpasの弾性率(180℃を超える温度では、20Mpasに低下)、硬化後の0.07%の収縮、および下の表1に示すように強力な接着力を有することを認めた。
【0058】
300ミルのダイを有するセラミック基体を使い、前記組成物をダイと基体の間に配置して組立品を作製した。この組立品を175℃の温度で、それぞれ2時間および4時間、硬化した。次いで、組立て部品を水で覆われた圧力ボンベ中に置いた。次いで、このボンベを121℃の温度に維持したオーブン中に96時間入れた。下記表1が説明する結果は、Tg(135℃)未満で強い接着力を示している。
【0059】
【表1】

【0060】
すなわち、表1に示すダイせん断評価は、湿気吸収値が低いことに加えて、非常に良好な性能特性を明らかにしている。
【0061】
収縮評価では、実施例2の組成物をスチール鋳型中、175℃の温度で2時間硬化した。この実施例2の組成物は、0.07%の収縮値を明示している。また、この低度の収縮は、期待できる物理的特性である。
【0062】
実施例3
本実施例では、ベンゾキサジン#18を1重量%の濃度のジカルボン酸触媒(IRGACOR LD252)と併用して試料Aを作った。2つの追加試料、試料BおよびCを試料Aから調製し、50%および60%のシリカでそれぞれ充填した。温度165℃で4時間硬化させ、試料A、B、およびCのCTE値が48、25および22であることを認めた。
【0063】
実施例4
本実施例では、ベンゾキサジン#12を、1重量%の濃度のIRGACOR LD252と併用して試料Dを作った。温度165℃で4時間硬化させ、試料DのCTE値が47であることを認めた。
【0064】
さらに、シアネートエステル(AROCY L10またはL31)を使う場合と使わない場合で、様々な充填濃度のシリカと共にベンゾキサジン#12をCTE評価のための基準として使った。下表2を参照すると、充填濃度および175℃の温度で4時間の硬化の後に認められたCTE値が示されている。
【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】

[構造中、Rは、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COO、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択されるものであり、mは、0−4であり、ならびにR−Rは、独立して、C1−40アルキル、C2−40アルケニル(これら各々は、任意に、1個以上のO、N、S、C=O、COOH、およびNHC=Oによって置換されているか、または割込まれている)、およびC6−20アリールから選択され、R−Rの少なくとも1個は存在する]によって包含される単官能ベンゾキサジン化合物を含む、50℃以下の温度で液状形態である組成物。
【請求項2】
室温で液状形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
室温で10,000cPs未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
室温で150cPs未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、シアネートエステル、エポキシ、エピスルフィド、マレイミド、イタコンイミド、ナジミド、オキサゾリン、アリルアミド、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、およびこれらの組合わせから選択される官能基を有する化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が、シアネートエステル官能基を有し、および前記シアネートエステルに対する前記ベンゾキサジンの比が2:1から25:1の範囲にある、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、フィラーを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記フィラーが、無機フィラーである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記無機フィラーが、シリカである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記フィラーが、導電性フィラーである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記フィラーが、非導電性フィラーである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
硬化された場合、フィラー濃度50重量%で15から35の範囲の熱膨張係数を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
175℃の温度に2時間、曝すことによって硬化された場合、直線的測定によって0.1%未満の容積収縮を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項14】
アンダーフィル、カプセルの材料、成形複合物またはダイ接着剤として使用するために硬化性組成物において有用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
さらに、多官能ベンゾキサジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記多官能ベンゾキサジンが、液状形態である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記シアネートエステル化合物が、式I:
【化2】

(式中、mは、2から5であり、Rは、芳香核含有残基である)の構造を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項18】
前記シアネートエステル化合物が、1,3−ジシアネートベンゼン、1,4−ジシアネートベンゼン、1,3,5−トリシアネートベンゼン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−または2,7−ジシアネートナフタレン、1,3,6−トリシアネートナフタレン、4,4’−ジシアネート−ビフェニル、ビス(4−シアネートフェニル)メタンおよび3,3’,5,5’−テトラメチル、ビス(4−シアネートフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアネートフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ジシアネートフェニル)プロパン、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル、ビス(4−シアネートフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、トリス(4−シアネートフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアネートフェニル)ホスフェート、ビス(3−クロロ−4−シアネートフェニル)メタン、シアネート化ノボラック、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン)]ベンゼンおよびシアネート化、ビスフェノール末端ポリカーボネートまたは他の熱可塑性オリゴマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項19】
前記フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、およびアルミナ3水和物からなる群より選択されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項20】
前記フィラーが、テフロン(登録商標)、(メタ)アクリル粒子、PDMS粒子、ポリオレフィン粒子およびスチレンからなる群より選択されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項21】
【化3】

の組合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
【化4】

の組合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
3、9および11番の2官能ベンゾキサジンの組合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
【化5】

の1種以上を含む、組成物。

【公表番号】特表2010−530463(P2010−530463A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513164(P2010−513164)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/014176
【国際公開番号】WO2008/156443
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】