説明

ベンゾピラン−2−オール誘導体の製造のための方法

【課題】トルテロジン、フェソテロジン製造のための改良された方法の提供。
【解決手段】以下の式(I):の化合物[Yは、CH、Br等]の製造法の提供。OXが、ヒドロキシ又はOであり、Mは、Liなどのカチオンであり、そしてYは、先に定義したとおりである以下の式(II):の化合物を、trans−シンナムアルデヒドと、反応させて式(I)の化合物を得る。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルテロジン、フェソテロジン及び他の医薬的に有用な化合物の調製において有用な、中間体の製造のための改良された方法に関する。本発明は、更にその中間体を使用するこのような医薬的に有用な化合物の製造のための改良された方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
以下の式のトルテロジン{2−[(1R)−3−[ビス(1−メチルエチル)アミノ]−1−フェニルプロピル]−4−メチルフェニル又は別に、(+)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン}:
【0003】
【化1】

【0004】
は、尿失禁を含む過活動性膀胱の治療のためのムスカリン受容体アンタゴニストである。これは、その最初の市販の認可(酒石酸塩として)を、1997年に得て、そしてDETROL及びDETRUSITOLの商標名で、翌年、多くの市場に売り出された。酒石酸トルテロジンは、国際特許出願WO89/06644中に開示されている(特に実施例22及び請求項7を参照されたい)。
【0005】
WO98/29402は、p−クレゾール(a)をケイ皮酸(b)と縮合し、続いて得られたラクトン(c)を、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム又はリチウムトリ−tert−ブトキシアルミノヒドリドのような還元剤で還元して、対応するベンゾピラン−2−オール化合物(d)を得ることを含んでなる、トルテロジンの製造のための方法を開示している。次いで、ベンゾピラン−2−オール化合物(d)は、ジイソプロピルアミンによる還元的アミノ化、それに続く塩酸水溶液の添加によって、ラセミの塩酸トルテロジン(e)に転換することができる。最後に、塩酸塩(e)のNaOH/NaHCOによる中和、及びその後のL−酒石酸を使用する分割によって、L−酒石酸トルテロジンが形成される。この方法を、以下のスキーム1に示す。
【0006】
【化2】

【0007】
WO98/29402によって開示された方法において、ベンゾピラン−2−オール化合物(d)が、2工程で調製され、そして比較的高価な還元剤(DIBAL)の使用を含むことを知ることができる。
【0008】
WO01/49649は、トルテロジン及びその鏡像異性体を得るための、上記の化合物(d)の鏡像異性体の還元的アミノ化を記載している。化合物(d)の鏡像異性体は、エナンチオ選択的反応によって製造される。これは、更に類似の化合物、特にフェノール環のメチル基が、5−ヒドロキシメチル基で置換されたトルテロジンの類似体に適用される同じ方法にも関する。
【0009】
米国特許出願2003/0236438(MacMillan et al)は、アニリン求核物質及びα、β不飽和のアルデヒド間のエナンチオ選択的1,4−付加反応を行うために、比較的複雑なキラルのイミダゾリジノン触媒[例えば(2S,5S)−5−ベンジル−2−tert−ブチル−3−メチルイミダゾリジン−4−オン]の使用を開示している(この研究は、更にMacMillan et al,J.Am.Chem.Soc.,2002,124,7894−7895にも記載されている)。米国特許出願2003/0236438の実施例2は、開示された反応の典型である:
【0010】
【化3】

【0011】
アミン基に対してパラの芳香族環の炭素原子が、アルファ−ベータ不飽和アルデヒドに結合していることを知ることができる。
Jurd(Journal of Heterocyclic Chemistry,vol 28(4),1991,pp 983−986)は、2−モルホリニル−4−フェニルベンゾピランを製造するための、メタノール中の3,4−メチレンジオキシフェノール、モルホリン及びシンナムアルデヒドの反応を記載している。
【発明の開示】
【0012】
驚くべきことに、スキーム1のベンゾピラン−2−オール化合物(d)を、p−クレゾール(a)から出発するワンポット反応で製造することができることが、いまや見出された。類似の化合物も更に製造することができる。従って、本発明の第1の側面によれば、以下の式(I):
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、
Yは、CH、CHOH、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の化合物の製造のための、
(i)以下の式(II):
【0015】
【化5】

【0016】
[式中、
OXは、ヒドロキシ又はOであり、ここにおいてMは、Li、Na及びKから選択されるカチオンであり、そしてYは、先に定義したとおりである;]
の化合物を、以下の式(III):
【0017】
【化6】

【0018】
のtrans−シンナムアルデヒドと、第二アミンの存在中で反応させ;次いで
(ii)前記工程の生成物を酸で処理して、式(I)の化合物を得ること;
の工程を含んでなる方法が提供される。
【0019】
“第二アミン化合物”によって、本出願人等は、少なくとも一つの第二アミン基、即ち以下の式:
【0020】
【化7】

【0021】
[式中、R及びRは水素ではない。好ましくは、R及びRは、それぞれCH基によって窒素原子に連結し、例えばこれらは、独立にC1−6アルキルであるか、又はいっしょに4−又は5−員のアルキル鎖を形成し、ここにおいて一つの炭素原子は、所望によりO又はNによって置換されていてもよい;]
の化合物を含有する有機化合物を意味する。
【0022】
本発明の第1の側面の好ましい態様は:
(a)OXは、ヒドロキシである;
(b)Yは、CH又はCHOHである;
(c)第二アミン化合物は、アキラルである;
(d)第二アミン化合物は、二つの第二アミン基を含有する、例えばピペラジン(この触媒は、特に高い収率で製造する);
(e)第二アミン化合物が二つの第二アミン基を含有する場合、0.5−1.25モル当量の第二アミン化合物が、工程(i)において使用される;
(f)別の方法として、第二アミン化合物は、一つの第二アミン基を含有し、そして更に好ましくは、第二アミン化合物は、モルホリン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン又はN−(C1−6アルキル)ピペラジンである。N−メチルピペラジンが、これが良好な収率を生じるために、特に好ましく、最初の生成物[以下の式(VI)参照]は、対応する式(I)のラクトール化合物に容易に加水分解され、そして式(I)の粗製化合物は改良された純度を有し、これは結晶化を促進する;
(g)第二アミン化合物が、一つの第二アミン基を含有する場合、1−5、更に好ましくは1−2.5モル当量の第二アミン化合物が、工程(i)において使用される;
(h)工程(ii)において使用される酸は、塩酸水溶液(好ましくは2M濃度より大きくない)であるが、次の同様な濃度の酸:クエン酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、フマル酸、サリチル酸、trans−ケイ皮酸、安息香酸、カンフルスルホン酸及びトシル酸水溶液も、更に良好な結果を与える;
(i)工程(i)の反応は、トルエン、キシレン、酢酸N−ブチル、t−アミルアルコール、ジオキサン及びジブチルエーテルから選択される有機溶媒、最も好ましくはトルエン(これは、特に高い収率を生じる)中で行われる;
(j)工程(i)の反応は、80℃ないし溶媒の潅流温度の範囲の温度で行われる;
(k)工程(i)の反応は、反応系から水を除去する条件下(例えば、反応によって生じた水が、これが反応混合物中に戻らないように側部凝縮器中で凝縮され、そして所望する場合、排出することができる、ディーン−スターク条件)で行われる;そして
(l)工程(i)の反応が、周囲圧力で、又はその近辺で(例えばわずかに上昇した圧力の窒素雰囲気下を、特に工業的規模において使用することができる)行われる;
であるものである。
【0023】
Yが、CHOHである場合、第二アミン化合物がN−メチルピペラジンであることが特に好ましい。
好ましくは、第二アミン化合物は、二つの塩基性窒素原子を含有する。このような化合物は、式(I)の化合物に容易に加水分解する最初の生成物[以下の式(VI)を参照]を生じる。
【0024】
本発明の第2の側面によれば、以下の式(IV):
【0025】
【化8】

【0026】
[式中、Yは、CH、CHOH、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の化合物、又はその塩を製造するための:
(a)先に定義したとおりの式(I)の化合物を、本発明の第1の側面による方法を使用して製造し;次いで
(b)式(I)の化合物を、ジイソプロピルアミンで還元的にアミノ化し;
(c)そして所望する場合、得られた化合物を塩に転換すること;
を含んでなる方法が提供される。
【0027】
好ましくは、本発明の第2の側面において、Yは、CH又はCHOHである。Yが、CHである場合、式(IV)の化合物は、工程(c)において、L−酒石酸で処理して、L−酒石酸トルテロジン[即ちL−酒石酸R−(+)−トルテロジン]を製造することができる。式(IV)の化合物が、医薬品として使用される場合、本発明のこの第2の側面において製造される塩の形態は、好ましくは医薬的に受容可能である。然しながら、化合物が更に加工されるものである場合、これは必須ではない。
【0028】
式(I)の化合物の還元的アミノ化は、メタノール(これが好ましい)又はtert−アミルアルコール或いはこれらの混合物のような適した溶媒中のジイソプロピルアミンによる処理、それに続くPd/C又はPd(OH)/Cのような触媒の存在中の水素化を含んでなることができる。
【0029】
一つの態様において、式(IV)の化合物は、塩酸のような酸の水溶液で処理して、対応する塩酸塩を得ることができる。ラセミ化合物は、塩酸塩の水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの混合物のような塩基の存在中の中和、それに続くL−酒石酸による分割によって、対応する(R)−鏡像異性体のL−酒石酸塩に転換することができる。一つの態様において、L−酒石酸トルテロジン[即ちL−酒石酸R−(+)−トルテロジン]が調製される。
【0030】
別の態様において、式(IV)の化合物の(R)−鏡像異性体のL−酒石酸塩は、塩酸塩の形成なしに、式(I)の化合物の還元的アミノ化に続いて、直接調製することができる。例えば、一つの態様において、還元的アミノ化工程の生成物を、アセトンのような溶媒及びL−酒石酸で処理して、L−酒石酸塩を得ることができる。Yが、CHである場合、これは、L−酒石酸トルテロジン[即ちL−酒石酸R−(+)−トルテロジン]を製造する。
【0031】
第3の側面によれば、本発明は、以下の式:
【0032】
【化9】

【0033】
のフェソテロジン、又は医薬的に受容可能なその塩の製造のための方法を提供し、これは:
(a)YがCHOHである先に定義したとおりの式(IV)の化合物を、先に記載した方法を使用して製造し;
(b)工程(a)の生成物を分割して、(R)−鏡像異性体を得て;
(c)工程(b)の生成物のフェノールのヒドロキシ基をアシル化して、対応するイソ酪酸エステルを製造し;
(d)そして所望する場合又は必要な場合、得られた化合物を、医薬的に受容可能な塩に転換すること;
を含んでなる。
【0034】
フェソテロジンは、イソ酪酸2−[(1R)−3−[ビス(1−メチルエチル)アミノ]−1−フェニルプロピル]−4−ヒドロキシメチルフェニル、又は別に、R−(+)−イソ酪酸2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニルプロピル)−4−ヒドロキシメチルフェニルエステルの化学名を有し、欧州特許第1077912号中で開示されている(32頁、5行目及び請求項4、3番目の化合物を参照)。これは、過活動性膀胱の治療に必要である。
【0035】
この第3の側面において、分割は、好ましくはキラル酸、好ましくは(R)−(−)−アセトキシ(フェニル)酢酸による分別結晶化によって行われる。
アシル化剤は、好ましくは塩化イソブチリルである。
【0036】
式(I)の化合物は、主として閉環(ラクトール)の形態で存在すると信じられるが、開環の形態で存在することができる。更に、本発明の第1の側面による方法が、以下の式:
【0037】
【化10】

【0038】
のラクトールのジアステレオ異性体の混合物を製造することが信じられている。
上記に星印で標識したキラル中心のR−及びS−鏡像異性体は、等しい量で存在すると信じられる。全てのこれらの互変異性及び立体異性の形態の製造は、本発明によって包含される。
【0039】
本発明の第1の側面の工程(i)においてピペラジンが使用された場合、反応は、以下の式(V):
【0040】
【化11】

【0041】
[式中、Yは、CH、CHOH、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の不溶性中間体化合物を経由して進行する。これらの化合物は、本発明の第4の側面によって提供される。好ましくは、Yは、CHである。
【0042】
本発明の第1の側面の工程(i)においてN−メチルピペラジンが使用される場合、反応は、以下の式(VI):
【0043】
【化12】

【0044】
[式中、Yは、CH、CHOH、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の中間体化合物を経由して進行する。これらの化合物は、本発明の第5の側面によって提供される。好ましくはYは、CHOHである。
【0045】
本発明は、更に以下の式(I):
【0046】
【化13】

【0047】
[式中、Yは、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の化合物を提供する。
本発明による方法は、反応物のいずれもが、アニリン化合物ではなく、そして本発明による式(II)の化合物が、存在する更なる強力に活性化する又は強力に電子供与する基(米国特許出願2003/0236438の実施例2中のメトキシのような)を有しないことにおいて、米国特許出願2003/0236438(上記参照)とは異なっている。更に、本発明において使用されるアミン触媒は、非常に簡単であり(例えばこれらはキラルである必要はない)、そして従って安価である。
【0048】
本発明による方法は、いずれもの反応物がアニリン化合物ではなく、そして本発明による式(II)の化合物が、アルコキシ又はヒドロキシのような、存在する更なる強力に活性化する又は強力に電子供与する基を有しないことにおいて、先に記述したJurdの論文(Journal of Heterocyclic Chemistry,vol 28(4),1991,pp 983−986)とは異なっている。
【0049】
本発明は、トルテロジンの製造のための方法の一部として、WO98/29402によって開示された方法と比較して、多くの反応及び加工工程を排除し、費用の減少に導く更なる利益を有する。更に、この方法は、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム又はリチウムトリ−tert−ブトキシアルミノヒドリドのような高価な還元剤の使用を回避する。
【0050】
本発明は、フェソテロジンの製造のための方法の一部として、従来の技術において開示された方法と比較して、多くの反応及び加工工程を排除し、費用の減少に導く更なる利益を有する。更に、この方法は、廃棄することが困難である危険な、そして環境的に好ましくない試薬の使用を回避する。
【実施例】
【0051】
本発明は、以下の実施例によって例示され、その中で、以下の略語を使用することができる:
BuOH=ブタノール
DEA=ジエチルアミン
DMA=ジメチルアセトアミド
DMF=ジメチルホルムアミド
DMPU=1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミドン
DMSO=ジメチルスルホキシド
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
ee=鏡像体余剰
EtOAc=酢酸エチル
EtOH=エタノール
h=時間
IPA=イソプロピルアルコール
LC−MS=液体クロマトグラフィー−質量スペクトル
LOD=乾燥損失
MeOH=メタノール
min=分
n−BuOH=n−ブタノール
p.s.i.=平方インチ当りポンド
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
tlc=薄層クロマトグラフィー。
【0052】
実施例1
3,4−ジヒドロ−6−メチル−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オールの合成
【0053】
【化14】

【0054】
p−クレゾール(150g、1.387mol)を、トルエン(1.5L、10ml/g)中のピペラジン(72g、0.832mol、0.6当量)と撹拌し、そして次いでディーン&スターク条件下の還流で少なくとも30分間加熱して、水を除去し、透明な淡黄色の溶液を得た。次いでtrans−シンナムアルデヒド(262ml、275g、2.081mol、1.5当量)を2時間かけて、反応混合物をディーン&スターク条件下の還流で維持しながら加えた。添加の完了後、反応混合物の加熱をディーン&スターク条件下の還流で更に4時間継続した。黒色の溶液を80℃まで冷却させ、そして次いで0.67MのHCl(aq)の溶液(750ml、0.601mol、1.3当量)で、45分かけてゆっくりとクエンチした。次いで二相の溶液を少なくとも12時間、75−80℃の温度で激しく攪拌した。次いで攪拌を停止し、そして混合物を室温まで冷却させ、そして相を分離した。次いでトルエン溶液を1MのHCl(aq)(750ml、5ml/g)、次いで水(3×750ml、5ml/g)で洗浄した。3,4−ジヒドロ−6−メチル−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オールを単離せず、しかし代わりに、トルエン溶液を還元的アミノ化工程(実施例2)で直接使用した。
【0055】
実施例2
L−酒石酸トルテロジンの合成
【0056】
【化15】

【0057】
実施例1からの粗製3,4−ジヒドロ−6−メチル−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オールを含んでなるトルエン溶液(理論値=1.5Lのトルエン中の333.3g)を、メタノール(750ml、5ml/g)で希釈し、次いでジイソプロピルアミン(583ml、421g、4.161mol、3当量)を加えた。次いで黒色の溶液を、20重量%の湿ったPd(OH)/C(10重量%、33g)で、621×10Nm−2(90psi)及び110℃で48時間水素化した。試料を分析のために除去した。
【0058】
反応混合物をArbocelTM(濾過助剤)を通して濾過して、触媒の残留物を除去し、そして次いで還流で加熱し、そして全てのジイソプロピルアミン及びメタノールを蒸留によって除去し、そしてトルエンで置換え、10ml/gの最終体積とした。次いで黒色の溶液を25℃に冷却し、アセトン(750L、5ml/g)を加え、そして次いで溶液を55−60℃に加熱した。L−酒石酸(312g、2.081mol、1.5当量)のメタノール(1.05L、7ml/g)中の溶液を30分かけて温度を55−60℃に維持しながら加えた。次いで得られた懸濁液を室温まで冷却させ、そして12時間攪拌した。懸濁液を濾過し、アセトン(2×600ml、4ml/g)で洗浄し、次いで真空オーブン中で50℃で12時間乾燥して、表題化合物をオフホワイト色の固体[159.2g、48%(p−クレゾールからの24%)]として得た。アキラル純度は100%(不純物は検出されなかった)であり、そしてキラル純度は、91.4%e.e.であった。
【0059】
実施例3
ラセミトルテロジン塩酸塩の合成
【0060】
【化16】

【0061】
工程A. 3,4−ジヒドロ−6−メチル−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オールの調製
p−クレゾール(25g、0.231mol、1当量)、ピペラジン(11.94g、0.139mol、0.6当量)及びトルエン(250ml、10ml/g)のディーン&スターク条件下の還流の溶液に、シンナムアルデヒド(45.83g、44ml、0.347mol、1.5当量)を、2時間の時間をかけて加え、そして反応混合物をHPLCによってp−クレゾールの存在に対してモニターした。完結(2ないし3時間)後、混合物を80℃に冷却し、そして濃HCl(25ml、0.301mol、1.3当量)の水(100ml、5ml/g)中の溶液を、ゆっくりと加え、そして80−90℃で少なくとも5時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却させ、そして相を分離した。トルエン溶液を1MのHCl(125ml、5ml/g)で、次いで水(3×125ml)で洗浄した。得られた有機層を還元的アミノ化工程(工程B)に粗製混合物として取込んだ。
【0062】
工程B. ラセミトルテロジン塩酸塩の調製
工程Aからの粗製溶液に、メタノール(125ml、5ml/gクレゾール)及びジイソプロピルアミン(92ml、0.693mol、3当量)を加えた。次いで混合物を20重量%の湿潤Pd(OH)/C(5.6g、理論上ベンゾピラン−2−オールの10重量%)で、110℃の586×10Nm−2(85psi)の水素圧下で水素化した。反応の進行をHPLCでモニターした(完結は通常16ないし24時間の間で起こった)。完結後、混合物を冷却し、窒素で置換し、濾過し、そしてトルエン(2×25ml)で洗浄した。次いで濾液をトルエンと共沸して、全てのメタノール及びジイソプロピルアミンを、10ml/gのクレゾールに対応する最終体積の終点まで除去した。次いで溶液を50−60℃で撹拌し、そして37%のHCl(19.3ml、0.231mol、クレゾールに対して1.0当量)を加え、ラセミのトルテロジン塩酸塩の沈殿を得た。懸濁液を25℃に冷却し、そして2時間撹拌し、次いで濾過し、そしてトルエン(2×50ml)で洗浄した。次いでラセミのトルテロジン塩酸塩を真空下の50℃で乾燥した。収率はp−クレゾールから63%、52.7gであり、97%のアキラル純度であった。
【0063】
実施例1−3の方法による、L−酒石酸トルテロジンの合成を、以下のスキーム2に示す。
【0064】
【化17】

【0065】
実施例4
3,4−ジヒドロ−6−メチル−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オールの収率に対するアミン触媒及び溶媒の影響
実施例1の反応を、アミン触媒及び溶媒を変化させて繰り返した。使用した温度は、概略100℃又はそれが低い場合、いずれもの溶媒の還流温度であった(他に示さない限り)。他に示さない限り(によって)、Dean−Stark条件は使用しなかった。収率を以下の表に示す。
【0066】
【表1a】

【0067】
【表1b】

【0068】
実施例5
1,4−ビス−(6−メチル−4−フェニル−クロマン−2−イル)ピペラジン
【0069】
【化18】

【0070】
表題化合物の調製を、酸水溶液によるクエンチの省略を除いて、実施例1の方法を使用して行った。代わりに、反応の完結後、混合物を周囲温度まで冷却させ、褐色の懸濁液を得た。この懸濁液の濾過により、褐色の固体を得て、H及び13C NMRにより構造の確認を得た。融点:241℃。
【0071】
実施例6
6−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−フェニル−クロマン−2−オールの調製
【0072】
【化19】

【0073】
4−ヒドロキシフェネチルアルコール(チロソール)(5.0g、36mmol、1当量)、ピペラジン(1.87g、22mmol、0.6当量)及びトルエン(50ml)の、N及びディーン&スターク条件下の還流の溶液に、シンナムアルデヒド(6.4ml、51mmol、1.4当量)を加え、そして反応混合物を加熱で17時間維持した。反応物を80℃に冷却し、そしてHCl水溶液(0.7モル、1.3当量)でクエンチし、次いで加熱状態で18時間攪拌した。二相の混合物を周囲温度まで冷却させ、分離し、有機相をHCl水溶液及び水で洗浄し、そして有機相を黒色の残留物まで減圧下で濃縮した。20%EtOAc/ヘプタンで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより、表題化合物を、R=0.37(50%EtOAc/ヘプタン)の概略80%純度の黄色の油状物の主成分として得て、そして構造は、H NMR及びLC−MS(M+1=271)によって確認した。
【0074】
実施例7
N−メチルピペラジンを使用する6−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−フェニル−クロマン−2−オールの別の方法による調製
【0075】
【化20】

【0076】
4−ヒドロキシフェネチルアルコール(チロソール)(25.0g、181mmol、1当量)、N−メチルピペラジン(54.4g、543mmol、3当量)及びトルエン(200ml)の、N及びディーン&スターク条件下の還流の溶液に、シンナムアルデヒド(35.9ml、272mmol、1.5当量)を2時間かけて加え、そして反応混合物を還流で17時間維持した。反応物を50℃に冷却し、そしてHCl水溶液(2M、375mL、約4当量)でクエンチした。二相の混合物を周囲温度まで冷却させ、酢酸エチル(250mL)で希釈し、そして有機相を分離した。有機相をHCl水溶液(250mL)、重炭酸カリウム(1M、250mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そし減圧下で蒸発して、黒色の油状物(50.0g、定量的と仮定)を得た。
【0077】
実施例8
2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール塩酸塩の調製
【0078】
【化21】

【0079】
6−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−フェニル−クロマン−2−オール(実施例7、30g、111mmol、1当量)、ジイソプロピルアミン(33.7g、333mmol、3当量)及び炭素上の水酸化パラジウム[50%の湿潤触媒(50重量%は水)、6g、0.2当量]の、トルエン(120mL)中の混合物を、621×10Nm−2(90psi)の水素圧下で110℃で水素化した。反応混合物を室温に冷却し、そしてアルボセルを通して濾過し、そして減圧下で蒸発した。得られた油状物をアセトニトリル(200mL)中に溶解し、そして濃塩酸(11.6mL、1.05当量)を加えた。混合物を周囲圧力で蒸留し、概略100mLのアセトニトリルを除去し、そして蒸留した溶媒を新しいアセトニトリルで置換えた。混合物を冷却させ、そして一晩結晶化させた。生成物を濾過し、そして少量のアセトニトリルで洗浄し、そして一晩真空中の50℃で乾燥して、表題化合物を白色の固体(26.7g、68.1mmol、61%)として得た。
【0080】
実施例9
2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールの調製
【0081】
【化22】

【0082】
重炭酸ナトリウム水溶液(165mL)を、HCl塩(実施例8、16.5g、42.1mmol、1当量)の酢酸エチル(165mL)中の混合物に加え、そして混合物を1時間攪拌した。相を分離し、そして有機相を水(195mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下で蒸発して、表題化合物を、約25重量/重量%の酢酸エチルを含有する油状物(合計14.6g、11.03gの表題化合物、31mmol、74%)として得た。
【0083】
実施例10
(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール(S)−2−フェノキシプロピオン酸塩の調製
【0084】
【化23】

【0085】
(S)−2−フェノキシプロピオン酸(3.40g、20.5mmol、1当量)を、2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール(実施例9、7.28g、20.5mmol、1当量)の、酢酸エチル中の溶液に加えた。混合物を80℃で2日間加熱し、その時点で混合物を室温に冷却し、濾過し、そして酢酸エチルで洗浄し、そして真空中の50℃で一晩乾燥して、表題化合物を白色の固体(3.9g、7.48mmol、37%収率、94%ee)として得た。
【0086】
鏡像体余剰は、塩を、水酸化ナトリウムで遊離塩基に転換し、そして正常相キラルHPLCクロマトグラフィー(Chiral Pak AS−Hカラム、ヘキサン(89.8%)、IPA(10%)、DEA(0.1%)、TFA(0.1%)で1mL/分で溶出)を行うことによって決定した。
【0087】
表題化合物は、本出願人等の同時系属中の国際特許出願PCT/IB07/000619の実施例5を製造するための出発物質として有用であることができた。表題化合物に対応する塩酸塩は、WO98/43942の実施例12として開示されている。
【0088】
実施例11
3,4−ジヒドロ−6−ブロモ−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オールの合成
【0089】
【化24】

【0090】
4−ブロモフェノール(2.0g、11.6mmol)を、N−メチルピペラジン(3.48g、34.8mmol、3当量)と、トルエン(30ml、15ml/g)中で撹拌し、そしてディーン&スターク条件下の還流で加熱した。還流を達成した後、trans−シンナムアルデヒド(2.2g、17.4mmol、1.5当量)を2時間かけて加えた。添加の完了後、反応混合物のディーン&スターク条件下の還流における加熱を3時間継続した。暗色の溶液を25℃に冷却し、そして酢酸エチル(20ml、10ml/g)で希釈し、そして2MのHCl(30ml、15ml/g)でクエンチした。相を分離し、そして上部の有機層を更に2MのHCl(20ml、10ml/g)及び1Mの炭酸水素ナトリウム溶液(20ml、10ml/g)で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮して、暗色の油状物(4.2g、11.6mmol、定量的と仮定)を得た。
【0091】
実施例12
2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−ブロモフェノール塩酸塩の合成
【0092】
【化25】

【0093】
粗製の3,4−ジヒドロ−6−ブロモ−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オール(実施例11、2.0g、6.55mmol)を、トルエン(20ml、10ml/g)中に溶解し、そしてこの溶液にチタンテトライソプロポキシド(5.84ml、3当量)及びジイソプロピルアミン(1.0ml、1.1当量)を加えた。反応混合物を0−5℃に冷却し、そして水素化ホウ素ナトリウム(0.75g、3当量)を分割して15分かけて加えた。エタノールを滴下により15分かけて入れ、そして0−5℃で更に2時間攪拌した。反応を水(20ml)、酢酸エチル(50ml)及び濃アンモニア溶液(20ml)でクエンチした。懸濁液をセライトを通して濾過し、そして相を分離した。有機層を水(50ml)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、そして濃縮して、遊離塩基を褐色の油状物として得た。これを酢酸エチル(50ml)中に溶解し、そして5MのHCl(2ml)を加えた。過剰の酸及び水を新しい酢酸エチル(2×50ml)と共沸し、そして得られた固体を新しい酢酸エチル(20ml)中で48時間顆粒化した。固体を濾過によって収集し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、そして50℃で真空下で4時間乾燥した。表題化合物を、白色の固体(1.12g、4−ブロモフェノールからの40%)として得た。
【0094】
表題化合物のベンジルオキシ類似体は、WO94/11337の実施例1(e)として開示されている。表題化合物は、溶解後、本出願人等の同時系属中の国際特許出願PCT/IB07/000619の実施例3の製造における出発物質としても、更に有用であることができる。
【0095】
実施例13
(2−ヒドロキシ−4−フェニル−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−6−イル)メタノールの合成
【0096】
【化26】

【0097】
4−(ヒドロキシメチル)フェノール(2.515kg、20.26mol、1当量)を、N−メチルピペラジン(5.06kg、50.52mol、2.5当量)と、トルエン(17.74kg、20.5L、8.15mL/g)中で撹拌し、そして次いで還流で加熱した。次いでtrans−シンナムアルデヒド(3.35kg、25.35mol、1.25当量)を、反応混合物を還流に維持しながら2時間かけて加えた。移送管をトルエン(0.9Kg、0.35ml/g)で洗浄した。添加が完了した後、反応混合物を還流で19時間加熱し続けた。次いである程度のトルエンを蒸留して除去して、体積を概略18.5Lまで減少した。次いで混合物を室温まで冷却させ、そしてEtOAc(13.5Kg、6mL/g)を加えた。有機相を2MのHCl(46.4kg、46.4L、18.5mL/g)で洗浄した。相を分離し、そして酢酸エチル(27.1kg、30L、12ml/g)を加えて、有機層を希釈した。有機相を1MのHCl(17.75kg、17.75L、7.1mL/g)、5重量/重量%のNaHCO(17.5L、7mL/g)及び水(25L、10mL/g)で洗浄した。相を分離し、そしてトルエン(6.5Kg、7.5L、3ml/g)を有機層に加え、そして混合物を概略8Lまで蒸留した。更なるトルエン(7kg)を、続いて酢酸エチル(3.9L)を入れた。混合物を還流まで加熱し、次いで1℃/分で22℃まで冷却し、次いで20時間攪拌した。懸濁液を2℃まで冷却し、そして2時間顆粒化した。スラリーを濾過し、そしてケーキを冷トルエン(2×4.3Kg、5L)で洗浄した。得られた淡黄褐色の固体を真空中で68時間40℃で乾燥して、2.76Kgの生成物(2−ヒドロキシ−4−フェニル−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−6−イル)メタノール(53.4%収率)を得て、これを次の実施例で精製せずに使用した:
H NMR 300MHz d6 DMSO δ ppm (異性体の10:1の混合物):1.95−2.10(m,2H),2.15−2.35(m,少量の方の異性体),3.25−3.35(m,1H),4.15−4.35(m,3H),4.80−4.95(m,1H),5.35−5.45(m,少量の方の異性体),5.46−5.55(m,1H),6.51−6.54(m,少量の方の異性体),6.58−6.63(m,1H),6.75(d J=8.2Hz,1H),6.98−7.40(m,6H)。
【0098】
実施例14
2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールの合成
【0099】
【化27】

【0100】
(2−ヒドロキシ−4−フェニル−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−6−イル)メタノール(実施例13、830g、3.24mol、1.0当量)を、メタノール(4150mL、5.0mL/g)中で攪拌した。次いでジイソプロピルアミン(1362mL、9.72mol、3.0当量)を、15分かけて滴下漏斗により加えた。次いで得られた溶液を1時間窒素下で攪拌した。
【0101】
触媒Pd−ESCAT 142[(5%Pd/Cのペースト、約50%の水で湿潤)83g、10重量/重量%]を、メタノール(2075mL、2.5mL/g)中のスラリーとして加えた。系を水素で置換し、次いで混合物を115psi(793×10Nm−2、7.92バール)で40℃の温度で20時間水素化した。
【0102】
混合物を窒素で置換し、そしてArbocelTM(濾過助剤)で濾過した。残留物のパッドをメタノール(2×1660mL、2×2.0mL/g)で洗浄した。
機器の制約のために、上記の方法を、830及び840gの規模で更に2回行った。
【0103】
次いで三つの濾液及びそのそれぞれのパッド洗液を混合して、単一の2.50Kg規模の反応に相当する単一の溶液を製造した。全体の体積を、以下の蒸留法の初期目標体積として機能を果たすために記録した:
・ジイソプロピルアミン(2500mL、1.0mL/g)及びt−アミルアルコール(10000mL、4.0mL/g)を、反応混合物に加えた。次いで真空蒸留(100ミリバール真空に設定)を行って、先に記録した目標体積まで蒸留した。
・ジイソプロピルアミン(2500mL、1.0mL/g)及びt−アミルアルコール(10000mL、4.0mL/g)を、反応混合物に加えた。次いで真空蒸留(100ミリバール真空に設定)を行って、先に記録した目標体積まで蒸留した。
・ジイソプロピルアミン(2500mL、1.0mL/g)及びt−アミルアルコール(10000mL、4.0mL/g)を、反応混合物に加えた。次いで真空蒸留(100ミリバール真空に設定)を行って、先に記録した目標体積まで蒸留した。
・t−アミルアルコール(12500mL、5.0mL/g)を、反応混合物に加えた。次いで真空蒸留(100ミリバール真空に設定)を行って、12500mLの体積まで蒸留した。
・t−アミルアルコール(12500mL、5.0mL/g)を、反応混合物に加えた。次いで真空蒸留(100ミリバール真空に設定)を行って、12500mLの体積まで蒸留した。t−アミルアルコール(12500mL、5.0mL/g)を、反応混合物に加えて、25Lの最終体積を得た。
【0104】
粗製生成物2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールのt−アミルアルコール溶液を、次の工程で更なる精製なしに使用した。HPLC分析(面積/面積)は、93.3%の生成物、プラス4.2%の出発物質、並びに1.4%及び0.4%の他の不純物を示した。定量的HPLC分析は、粗製の溶液が、2950gの生成物を含有していることを示した(89%収率)。
【0105】
実施例15
(R)−アセトキシ(フェニル)酢酸(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールの合成
【0106】
【化28】

【0107】
t−アミルアルコール(19.2L)を、2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール(実施例14から)のt−アミルアルコール中の先の溶液(25L、2.95kg、8.64mol、1当量を含有)に加えて、44.2Lの全体積を得た。この溶液を70℃に加熱した。別のポットに(R)−(−)−アセトキシ(フェニル)酢酸(0.839kg、4.32mol、0.5当量)の、t−アミルアルコール(14.8L)中の溶液を50℃で用意し、次いで全ての酸が溶解した後、室温に冷却した。次いでこの溶液を、t−アミルアルコール中の2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールの溶液に1時間かけて加えた。次いで得られた溶液に生成物の種結晶(0.03kg、1重量%、前もって同様な方法によって、しかし小規模で調製)を入れた。スラリーを2時間かけて60℃に、そして次いで更に3時間かけて25℃に冷却した。混合物を25℃で更に12時間攪拌した。スラリーを濾過し、そしてケーキをt−アミルアルコール(2×29.5L、2×10mL/g)で2回再スラリー化し、そして十分に溶媒除去した。白色の固体を、減圧下の40℃で12時間乾燥して、キラルHPLCによる99%のeeを持つ、2.04kgの(R)−アセトキシ(フェニル)酢酸(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール(37.8%収率、14.3重量/重量%のt−アミルアルコール(LOD分析により決定)に対して補正)を得た。
【0108】
eeのモニターのためのHPLC法
カラム:Chiral Pak AS−H
流量:1ml/分
移動相:ヘプタン92.5/エタノール7.5/ジエチルアミン0.12/トリフルオロ酢酸0.18
温度:35℃
検出:220nm
保持時間:
(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール 15分
(S)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール 18.4分。
【0109】
実施例16
(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノールの合成
【0110】
【化29】

【0111】
(R)−アセトキシ(フェニル)酢酸(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール(実施例15、1.75kg、3.27mol、1当量)を、トルエン(15.2kg、10mL/g)中でスラリー化し、そして50℃に温めた。KCOの10%水溶液(17.5Lの精製水中に1.75kgのKCOを溶解、10mL/g)を入れた。混合物を50℃で30分間激しく攪拌した。二つの溶液の相を50℃で分離した。有機相を精製水(1.75kg、1mL/g)で50℃で洗浄した。相を50℃で分離し、そしてトルエンの体積を3mL/g(5.5L)まで蒸留によって減少した。温度を62℃に減少し、そして次いで40℃に40分間で冷却することによって結晶化を行った。バッチを40℃で30分間保持し、そして次いで(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール(0.01kg、前もって小規模で同様な方法を使用して調製)を使用して種結晶を入れた。バッチを更に1時間40℃で撹拌し、そして次いで20℃に3.5時間かけて冷却した。バッチを20℃で10時間顆粒化した。次いでスラリーを2℃に1時間かけて冷却し、そして2℃で1時間顆粒化した(以下の温度特性を参照)。懸濁液を濾過し、そしてケーキを冷トルエン(1.5kg、1mL/g)で洗浄した。湿った生成物(0.933kg、LOD%分析によって推定した乾燥状態)は、白色の結晶質の固体であった。次いでトルエンによる再スラリー化を行った。3℃に冷却されたトルエン(2.42kg、2.6mL/g(推定した乾燥状態に基づく))及び湿った生成物を入れ、そして3℃で15分間攪拌した。懸濁液を濾過し、そしてケーキを冷トルエン(1.6kg、1.5mL/g(推定した乾燥状態に基づく))で洗浄した。湿った生成物を、真空中の45℃で乾燥して、(R)−2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェノール(0.74kg、2.17mol)を、66.7%収率で白色の結晶質の固体として得た。HPLCは、>99.6%の純度を示し、そしてキラルHPLCは、>99%のeeを示した。
【0112】
実施例17
(R)−(+)−イソ酪酸2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルエステルの調製
【0113】
【化30】

【0114】
表題化合物を、実施例16の化合物から、米国特許第6,858,650号(第5節、第16欄を参照)の方法を使用して調製する。別の方法として、この反応は、外部の酸妨害性塩基の添加をせずに行うことができる−米国特許第6,858,650号第10欄32−40行目を参照。
【0115】
実施例18
(R)−(+)−イソ酪酸2−[3−(ジイソプロピルアミノ)−1−フェニルプロピル]−4−(ヒドロキシメチル)フェニルエステルフマル酸水素塩の調製
【0116】
【化31】

【0117】
表題化合物を、実施例17の化合物から、米国特許第6,858,650号の方法(第6節、第16欄を参照)を使用して調製する。
実施例19
[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−4−フェニル−2H−クロマン−6−イル]−メタノールの合成
【0118】
【化32】

【0119】
trans−シンナムアルデヒド(66.5g、0.66mol、1.25当量)を、トルエン(100mL、4−(ヒドロキシメチル)フェノールに基づいて2mL/g)で希釈し、そして炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(2×100mL)で2回、そして水(100mL)で1回洗浄した。次いでこのシンナムアルデヒドのトルエン溶液を、4−(ヒドロキシメチル)フェノール(50g、0.40mol、1当量)及びN−メチルピペラジン(113mL、1.0mol、2.5当量)の、トルエン(350mL、7mL/g)中のディーン−スターク条件下の還流で加熱された混合物に、2時間かけて加えた。添加の完了後、反応混合物のディーン−スターク条件下の還流の加熱を10時間継続した。次いで混合物を室温に冷却し、そして分析の目的のために試料を減圧下で乾燥状態まで蒸発した。暗色の油状物は、粗製の[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−4−フェニル−2H−クロマン−6−イル]−メタノール(ジアステレオ異性体の混合物)及び不純物を含有していた。
【0120】
EI−GC−MS(Agilent)、カラム:ZB−5HT、温度プログラム:50℃(0.5分)、20℃/分で320℃(2分間)が得られるまで:RT=24.4分、MW:338。
H NMR(DMSO)(粗製混合物)300mHz δ(ppm): 7.40−7.00(28H,m);6.89(1H,d,J=2.0Hz);6.81(1H,d,J=8.3Hz);6.75(1H,d,J=8.2Hz);6.54(1H,d,J=1.0Hz);4.87(1H,d,J=10.2Hz);4.45(1H,d,J=10.0Hz);4.40−4.20(3H,m);4.36(2H,s);4.23(1.8H,s);2.86(4H,m);2.80−2.50(14H,m);2.50−2.00(50H,m)2.31(s);2.17(s);2.14(s);2.11(s)を含む。
【0121】
実施例13−18の方法によるフェソテロジンフマル酸水素塩の合成を、以下のスキーム3に示す。
【0122】
【化33】

【産業上の利用可能性】
【0123】
上記の方法は、過活動性膀胱の治療において有用であるトルテロジン及びフェソテロジンの製造に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

[式中、
Yは、CH、CHOH、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の化合物の製造のための方法であって、
(i)以下の式(II):
【化2】

[式中、
OXは、ヒドロキシ又はOであり、ここにおいてMは、Li、Na及びKから選択されるカチオンであり、そしてYは、先に定義したとおりである;]
の化合物を、以下の式(III):
【化3】

のtrans−シンナムアルデヒドと、第二アミンの存在中で反応させ;次いで
(ii)前記工程の生成物を酸で処理して、式(I)の化合物を得ること;
の工程を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
OXが、ヒドロキシである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yが、CH又はCHOHである、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記第二アミン化合物が、アキラルである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二アミン化合物が、二つの第二アミン基を含有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第二アミン化合物が、ピペラジンである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)において、0.5−1.25モル当量の前記第二アミン化合物が使用される、請求項5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二アミン化合物が、一つの第二アミン化合物を含有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二アミン化合物が、モルホリン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン又はN−(C1−6アルキル)ピペラジンである、請求項1、2、3、4及び8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第二アミン化合物が、N−メチルピペラジンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)において、1−5モル当量の前記第二アミン化合物が使用される、請求項8ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(ii)において使用される酸が、塩酸水溶液である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(i)の反応が、トルエン、キシレン、酢酸N−ブチル、t−アミルアルコール、ジオキサン及びジブチルエーテルから選択される有機溶媒中で行われる、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、トルエンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(i)の反応が、80℃ないし溶媒の還流温度の範囲の温度で行われる、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(i)の反応が、前記反応系から水を除去する条件下で行われる、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(i)の反応が、周囲圧力で、又はその近辺で行われる、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
以下の式(IV):
【化4】

[式中、Yは、請求項1において定義したとおりである;]
の化合物、又はその塩の製造のための方法であって:
(a)請求項1において定義したとおりの式(I)の化合物を、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法を使用して製造し;次いで
(b)式(I)の化合物を、ジイソプロピルアミンで還元的にアミノ化し;
(c)そして所望する場合、得られた化合物を塩に転換すること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項19】
Yが、CH又はCHOHである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
YがCHであり、式(IV)の化合物が、工程(c)においてL−酒石酸で処理され、そしてL−酒石酸トルテロジンが製造される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
以下の式:
【化5】

のフェソテロジン、又は医薬的に受容可能なその塩の製造のための方法であって、
(a)YがCHOHである請求項18において定義したとおりの式(IV)の化合物を、請求項18に記載の方法を使用して製造し;
(b)工程(a)の生成物を分割して、(R)−鏡像異性体を得て;
(c)工程(b)の生成物のフェノールのヒドロキシ基をアシル化して、対応するイソ酪酸エステルを製造し;
(d)そして所望する、又は必要な場合、得られた化合物を、医薬的に受容可能な塩に転換すること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項22】
式(I)の化合物を製造するために使用される前記第二アミン化合物が、N−メチルピペラジンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
以下の式(V):
【化6】

[式中、Yは、請求項1において定義したとおりである;]
の化合物、又はその塩。
【請求項24】
以下の式(VI):
【化7】

[式中、Yは、請求項1において定義したとおりである;]
の化合物、又はその塩。
【請求項25】
以下の式(VII):
【化8】

[式中、Yは、CHCHOH、CHBr及びBrから選択される;]
の化合物。

【公開番号】特開2007−314537(P2007−314537A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135615(P2007−135615)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】