説明

ベンゾフルオランテン化合物及びこれを使用した有機発光素子

【課題】極めて純度のよい発光色相を呈し、高効率で高輝度、高寿命の光出力を有する有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された少なくとも一層の有機化合物を含む層とからなり、該陽極又は該陰極が透明又は半透明の電極材料によって形成される有機発光素子において、該有機化合物を含む層のうち少なくとも一層が、下記一般式[1]で示されるベンゾフルオランテン化合物からなる有機発光素子用材料を少なくとも一種含有することを特徴とする、有機発光素子。


(一般式[1]において、X1乃至Xのいずれか一つが置換又は無置換の4環以下の縮合複素環基であり、残りは水素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾフルオランテン化合物及びこれを使用した有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電極間に蛍光性又は燐光性有機化合物を含む薄膜を挟持させて、各電極から電子及びホール(正孔)を注入することにより、蛍光性又は燐光性化合物の励起子を生成させ、この励起子が基底状態に戻る際に光を放射する。有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は、低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化が可能であることが挙げられる。このことから、有機発光素子は広汎な用途への可能性を示唆している。
【0003】
しかしながら、現状では更なる高輝度の光出力又は高変換効率が必要である。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気等による劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。さらにはフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合、色純度の良い青、緑、赤色発光が必要となるが、これらの問題に関してまだ十分でない。
【0004】
ところで、青色発光材料として、ベンソフルオランテン化合物が提案されている。ベンソフルオランテン化合物を発光材料として使用した有機発光素子は、特許文献1乃至4に開示されている。しかしながら、これらの有機発光素子は充分な寿命特性を有しているとは言いがたく、特にフルカラーディスプレイへの用途を考えた場合、青色発光材料としての発光効率、耐久寿命及び色純度は満足できるものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−294179号公報
【特許文献2】特開2002−69044号公報
【特許文献3】特開2003−26616号公報
【特許文献4】特開2005−68087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、極めて純度のよい青色発光色相を呈し、高効率で高輝度、高寿命の光出力を有する有機発光素子を提供することである。また、本発明の他の目的は、有機発光素子用材料として使用されるベンゾフルオランテン化合物を提供することである。また、本発明の他の目的は製造が容易でかつ比較的安価に作成可能な有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明のベンゾフルオランテン化合物は、下記一般式[1]で示される構造を有することを特徴とする。
【0008】
【化1】

(式[1]において、X1乃至X6のいずれか一つが置換あるいは無置換の4環以下の縮合複素環基であり、残りは水素原子を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機発光素子用材料は、ベンゾフルオランテン骨格の1位乃至6位のいずれか特定された位置に4環以下の縮合複素環を一つ導入することで、安定な非晶質膜を形成することができ、優れた電子輸送性を示す。また、この特定された位置に4環以下の縮合複素環を二つ以上ではなく一つ導入することによって、昇華時の熱分解を制御し、昇華性の低下を抑制できるのみならず、青色発光材料として適切な正孔伝導準位及び電子伝導準位を維持させることができる。従って、本発明によれば、高効率かつ色純度のよい青色発光をする有機発光素子、及びこの有機発光素子に使用されるベンゾフルオランテン化合物を提供することができる。また、本発明のベンゾフルオランテン化合物を含有する有機発光素子は、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の有機発光素子用材料について説明する。
【0012】
本発明の有機発光素子用材料は、下記一般式[1]で示されるベンゾフルオランテン化合物である。
【0013】
【化2】

【0014】
式[1]において、X1乃至X6のいずれか一つが置換あるいは無置換の4環以下の縮合複素環基を示し、残りは水素原子を示す。
【0015】
4環以下の縮合複素環基として、好ましくは、下記一般式[2]で表される置換基が挙げられる。
【0016】
【化3】

【0017】
式[2]において、X7乃至X13のうち一つは結合手を表し、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、隣り合う置換基は環を形成していてもよい。
【0018】
ここでいう置換基は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又はシアノ基である。
【0019】
7乃至X13で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0020】
7乃至X13で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−オクチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、パーフルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−フルオロシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0021】
7乃至X13で表されるアリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、メシチル基、4−tert−ブチルフェニル基、ジトリルアミノフェニル基、ビフェニル基等が挙げられる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0022】
上記のアルキル基及びアリール基に置換してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0023】
7乃至X13で表される置換基は、隣り合う置換基同士で結合し環を形成していてもよい。
【0024】
4環以下の縮合複素環基として、下記一般式[3]で示される置換基も好ましい。
【0025】
【化4】

【0026】
式[3]において、X14乃至X20のうち一つは結合手を表し、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、隣り合う置換基は環を形成していてもよい。
【0027】
ここでいう置換基は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又はシアノ基である。
【0028】
14乃至X20で表されるハロゲン原子、アルキル基、アリール基並びにアルキル基及びアリール基に置換してもよい置換基は、上記一般式[2]のX7乃至X13で表される置換基と同様である。
【0029】
14乃至X20で表される置換基は、隣り合う置換基同士で結合し環を形成していてもよい。
【0030】
4環以下の縮合複素環基として、下記一般式[4]で示される置換基も好ましい。
【0031】
【化5】

【0032】
式[4]において、X21乃至X27のうち一つは結合手を表し、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0033】
ここでいう置換基は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又はシアノ基である。
【0034】
21乃至X27で表されるハロゲン原子、アルキル基、アリール基並びにアルキル基及びアリール基に置換してもよい置換基は、上記一般式[2]のX7乃至X13で表される置換基と同様である。
【0035】
式[4]において、R1及びR2はそれぞれ独立に置換基あるいは無置換のアルキル基を表す。
【0036】
1及びR2を表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−オクチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、パーフルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−フルオロシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0037】
上記のアルキル基に置換してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0038】
4環以下の縮合複素環基として、下記一般式[5]で示される置換基も好ましい。
【0039】
【化6】

【0040】
式[5]において、X28乃至X36のうち一つは結合手を表し、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0041】
ここでいう置換基は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又はシアノ基である。
【0042】
28乃至X36で表されるハロゲン原子、アルキル基、アリール基並びにアルキル基及びアリール基に置換してもよい置換基は、上記一般式[2]のX7乃至X13で表される置換基と同様である。
【0043】
4環以下の縮合複素環基として、下記一般式[6]で示される置換基も好ましい。
【0044】
【化7】

【0045】
式[6]において、X37乃至X45のうち一つは結合手を表し、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0046】
ここでいう置換基は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又はシアノ基である。
【0047】
ハロゲン原子、アルキル基、アリール基並びにアルキル基及びアリール基に置換してもよい置換基は、上記一般式[2]のX7乃至X13で表される置換基と同様である。
【0048】
本発明のベンゾフルオランテン化合物は、好ましくは、有機発光素子用材料として使用する。
【0049】
本発明のベンゾフルオランテン化合物は、電子親和力を有する4環以下の縮合複素環基、例えば、一般式[2]乃至[6]で表される縮合複素環基を一般式[1]で表されるX1乃至X6のいずれかの位置に一つ導入されている。これにより、化合物自体の還元電位が高くなり電子受容性が大きくなる。これは、ベンゾフルオランテン骨格の1位乃至6位の炭素原子からなるナフタレン部位に特定の電子伝導準位を有することに起因する。従って一般式[1]で表されるベンゾフルオランテン化合物のX1乃至X6のいずれかの位置に上記の縮合複素環基を一つ導入することで、青色発光に適した電子伝導順位となり電子受容性を高めることができる。尚、この電子伝導順位は、ベンゾフルオランテン骨格の分子軌道計算によるシミュレーションにより示される。これにより、一般式[1]で表されるX1乃至X6のいずれかに導入される縮合複素環基の位置及び種類を適切に選択することで、駆動電圧が低く長い期間高輝度を保ち、通電劣化の減少を可能にすることができる。
【0050】
ところが、縮合複素環基を2つ以上導入すると、縮合複素環基を1つ導入した場合と比べて電子伝導準位がさらに大きくなるため、正孔伝導準位とのエネルギーギャップがさらに小さくなる。その結果、発光色が長波長化し、青色発光材料としては適さなくなる。
【0051】
一方で、一般式[1]で示されるベンゾフルオランテン化合物のX1乃至X6に導入する縮合複素環基が、4環よりも大きい縮合複素環基では、分子量が大きすぎるため昇華時における熱分解が起こり、昇華性の低下を引き起こす恐れがある。また、4環よりも大きい縮合複素環を導入すると、発光色が長波長化し色純度の良い青色発光材料としては適さなくなる。さらに、4環よりも大きい縮合複素環基を導入すると、ベンゾフルオランテン骨格ではなく、導入されている縮合複素環基が分子全体の中での主な発光部位となり、蛍光量子収率の低下を引き起こす恐れがあり好ましくない。
【0052】
従って、一般式[1]で表されるX1乃至X6に導入する縮合複素環基を1つにすること、かつその縮合複素環基を4環以下のものに限定することにより、色純度が良く電子受容性の高い青色発光材料を提供することができる。縮合複素環基は、好ましくは2環以上4環以下の縮合複素環であり、より好ましくは一般式[2]乃至[6]で表される縮合複素環基である。
【0053】
また、高効率の光出力を有する有機発光素子を提供するためには、有機発光素子に用いる発光材料の量子収率を高めることが不可欠である。ベンゾフルオランテン骨格は他の縮合多環芳香族よりも一般的に蛍光量子収率が高いが、さらに高くするためには、一般式[1]で示されるX3又はX4の位置に前記一般式[2]乃至[6]で示される縮合複素環基を導入することがより好ましい。また、一般式[1]で示されるX3及びX4の位置は反応性が高いので、この位置に前記一般式[2]乃至[6]で示される縮合複素環基を導入することでより化学的安定性が増す。
【0054】
さらに縮合複素環基を導入する位置のみならずその縮合複素環基の種類及び一般式[1]と縮合複素環基の結合位置を適切に設計することにより、分子振動が制御された発光スペクトルの単分散化及び半値幅を減少させることが可能となる。これにより色純度の良い青色発光が得られる。
【0055】
以上より、ベンゾフルオランテン骨格の3位又は4位の位置に4環以下の縮合複素環を一つ導入することによって、有機発光素子用材料の蛍光量子収率を向上させることができる。また、分子振動が制御された発光スペクトルの単分散化及び半値幅を減少させることが可能である。このため、高効率かつ色純度のよい青色発光材料を提供することができる。
【0056】
以下、本発明のベンゾフルオランテン化合物の具体的な構造式を示す。ただし、これらは代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。
【0057】
[化合物例1]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[2]で表され、一般式[2]における結合手がX7である化合物例
【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
[化合物例2]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[2]で表され、一般式[2]における結合手がX8あるいはX11あるいはX12である化合物例
【0061】
【化10】

【0062】
[化合物例3]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[2]で表され、一般式[2]における結合手がX9あるいはX10あるいはX13である化合物例
【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
[化合物例4]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[3]で表され、一般式[3]における結合手がX14あるいはX16あるいはX17あるいはX20である化合物例
【0066】
【化13】

【0067】
【化14】

【0068】
[化合物例5]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[3]で表され、一般式[3]における結合手がX15あるいはX18あるいはX19である化合物例
【0069】
【化15】

【0070】
[化合物例6]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[4]で表され、一般式[4]における結合手がX23である化合物例
【0071】
【化16】

【0072】
[化合物例7]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[4]で表され、一般式[4]における結合手がX21である化合物例
【0073】
【化17】

【0074】
[化合物例8]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[4]で表され、一般式[4]における結合手がX26である化合物例
【0075】
【化18】

【0076】
[化合物例9]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[4]で表され、一般式[4]における結合手がX25である化合物例
【0077】
【化19】

【0078】
[化合物例10]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[5]で表され、一般式[5]における結合手がX36である化合物例
【0079】
【化20】

【0080】
[化合物例11]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[6]で表され、一般式[6]における結合手がX38である化合物例
【0081】
【化21】

【0082】
[化合物例12]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[6]で表され、一般式[6]における結合手がX39である化合物例
【0083】
【化22】

【0084】
[化合物例13]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[6]で表され、一般式[6]における結合手がX37あるいはX40あるいはX41である化合物例
【0085】
【化23】

【0086】
【化24】

【0087】
[化合物例14]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[6]で表され、一般式[6]における結合手がX42乃至X45である化合物例
【0088】
【化25】

【0089】
【化26】

【0090】
[化合物例15]一般式[1]におけるX3あるいはX4が一般式[1]で表され、一般式[1]における縮合複素環にヘテロ原子が二つ以上含まれる化合物例
【0091】
【化27】

【0092】
【化28】

【0093】
[化合物例16]一般式[1]におけるX2あるいはX5が一般式[2]で表され、一般式[2]における結合手がX7あるいはX8あるいはX11あるいはX12である化合物例
【0094】
【化29】

【0095】
【化30】

【0096】
[化合物例17]一般式[1]におけるX2あるいはX5が一般式[2]で表され、一般式[2]における結合手がX9あるいはX10あるいはX13である化合物例
【0097】
【化31】

【0098】
[化合物例18]一般式[1]におけるX2あるいはX5が一般式[3]で表され、一般式[3]における結合手がX15あるいはX18あるいはX19である化合物例
【0099】
【化32】

【0100】
[化合物例19]一般式[1]におけるX2あるいはX5が一般式[3]で表され、一般式[3]における結合手がX14あるいはX16あるいはX17あるいはX20である化合物例
【0101】
【化33】

【0102】
【化34】

【0103】
本発明の有機発光素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、この一対の電極間に挟持されている一又は複数の有機化合物を含む層とを有し、陽極又は陰極が透明か半透明な電極材料によって形成されている。本発明の有機発光素子は、好ましくは、一対の電極間に電圧を印加することにより発光する電界発光素子である。
【0104】
以下、図を参照しながら本発明の有機発光素子について詳細に説明する。
【0105】
図1は、本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。図1の有機発光素子10は、基板1上に、陽極2、発光層3及び陰極4を順次設けている。この有機発光素子10は、発光層3が、ホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能を全て有する化合物で構成されている場合や、ホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能を有する化合物を混合して構成される場合に有用である。
【0106】
図2は、本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。図2の有機発光素子20は、基板1上に陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子20は、ホール輸送性及び/又は電子輸送性を備える発光性の化合物と電子輸送性のみ又はホール輸送性のみを備える有機化合物とを組み合わせて用いる場合に有用である。また、有機発光素子20は、ホール輸送層5又は電子輸送層6が発光層を兼ねている。
【0107】
図3は、本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。図3の有機発光素子30は、図2の有機発光素子において、ホール輸送層5と電子輸送層6との間に発光層3を挿入したものである。この有機発光素子30は、キャリア輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した有機化合物を適時組み合わせて用いることができる。このため、極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の有機化合物が使用できるので、発光色相の多様化が可能になる。さらに、発光層3にキャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて有機発光素子30の発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0108】
図4は、本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。図4の有機発光素子40は、図3の有機発光素子30において陽極2とホール輸送層5との間にホール注入層7を設けたものである。この有機発光素子40は、ホール注入層7を設けたことにより、陽極2とホール輸送層5との間の密着性が改善され、又はホールの注入性が改善されるので低電圧化に効果的である。
【0109】
図5は、本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。図5の有機発光素子50は、図3の有機発光素子30において、ホール又は励起子(エキシトン)を陰極4側に抜けることを阻害する層(ホール/エキシトンブロッキング層8)を発光層3と電子輸送層6との間に挿入したものである。イオン化ポテンシャルの非常に高い有機化合物をホール/エキシトンブロッキング層8として用いることにより、有機発光素子50の発光効率が向上する。
【0110】
ただし、図1乃至図5はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される等多様な層構成をとることができる。
【0111】
本発明のベンゾフルオランテン化合物のうち少なくとも1種は、有機化合物を含む層、例えば、図1乃至図5に示される発光層3、ホール輸送層5、電子輸送層6、ホール注入層7、ホール/エキシントンブロック層8に含有される。好ましくは、発光性を有する層に含有され、より好ましくは、発光層3に含有される。本発明のベンゾフルオランテン化合物を用いると、素子の発光効率がよく、長い期間高輝度を保ち、通電劣化を小さくすることができる。本発明のベンゾフルオランテン化合物は、単独で使用することができ、ドーパント(ゲスト)材料又はホスト材料としても使用できる。
【0112】
発光層が、キャリア輸送性のホスト材料とゲストからなる場合、発光にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送
2.ホストの励起子生成
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動
【0113】
それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程と競争でおこる。
【0114】
有機発光素子の発光効率を高めるためには、発光中心材料そのものの発光量子収率が大きいことはいうまでもない。しかしながら、ホスト−ホスト間、あるいはホスト−ゲスト間のエネルギー移動が如何に効率的にできるかも大きな問題となる。また、通電による発光劣化は今のところ原因は明らかではないが、少なくとも発光中心材料そのもの、又は、その周辺分子による発光材料の環境変化に関連したものと想定される。例えば、発光層の薄膜形状の劣化による発光劣化が考えられる。この薄膜形状の劣化は、駆動環境の温度、素子駆動時の発熱等による有機薄膜の結晶化に起因すると考えられている。これは、有機発光素子に使用される材料のガラス転移温度の低さに由来すると考えられ、有機発光材料は高いガラス転移温度を有することが望まれている。本発明のベンゾフルオランテン化合物はガラス転移温度が高いので、有機発光素子の高耐久化が期待できる。
【0115】
本発明のベンゾフルオランテン化合物は、特に発光層のホスト又はゲストに用いると、素子の発光効率がよく、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さくなる。
【0116】
また、発光層がホストとゲストからなる場合、ホスト又はゲストは、好ましくは、本発明のベンゾフルオランテン化合物である。尚、本発明におけるゲストとは、有機発光素子の発光領域において、正孔と電子の再結合に応答して主として光を発する化合物のことであり、発光領域を形成する他の化合物(ホスト)に含有させるものである。
【0117】
本発明のベンゾフルオランテン化合物を発光層のゲストに用いると、優れた効果を奏する。即ち、特定の位置に4環以下の縮合複素環を一つ導入することによって、発光ピークが430nm以上460nm以下を示す極めて純度のよい青色発光色相を呈し、しかも、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れる。
【0118】
本発明のベンゾフルオランテン化合物をゲストとして用いる場合、発光層全体に対するベンゾフルオランテン化合物の含有量は、0.01重量%以上80重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1重量%以上30重量%以下であり、特に好ましくは、0.1重量%以上15重量%以下である。ゲスト材料はホスト材料からなる層全体に均一あるいは濃度勾配を有して含まれるか、あるいはある領域に部分的に含まれてゲスト材料を含まないホスト材料層の領域があってもよい。
【0119】
また、本発明のベンゾフルオランテン化合物をゲストとして用いる場合、ゲストよりもエネルギーギャップ(UV測定の光学吸収端から算出した値)の大きいホストを含むことが好ましい。これによりゲストからホストへのエネルギー移動を制御し、ゲストのみからの発光により発光効率を高めることができる。
【0120】
本発明のベンゾフルオランテン化合物を、ホストとして用いる場合、ゲストとして緑色及び赤色発光を示す発光材料を用いるのが好ましい。本発明のベンゾフルオランテン化合物を、ホストとして用いる場合、発光層全体に対するベンゾフルオランテン化合物の含有量は、好ましくは、50重量%乃至99.9重量%である。
【0121】
本発明のベンゾフルオランテン化合物は、発光層のみ含まれてもよいが、必要に応じ、発光層以外の層(例えばホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層、電子障壁層等)に含ませてもよい。
【0122】
特に、本発明のベンゾフルオランテン化合物を用いた有機層は、発光層、電子輸送層あるいはホール輸送層として有用であり、また真空蒸着法や溶液塗布法等によって形成した層は結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れている。
【0123】
本発明の有機発光素子は、特に発光層の構成成分として、本発明のベンゾフルオランテン化合物が用いられている。また、本発明の有機発光素子は、本発明のベンゾフルオランテン化合物の他に、必要に応じてこれまで知られている低分子系及びポリマー系のホール輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することもできる。
【0124】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0125】
正孔(ホール)注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にし、また注入されたホールを発光層に輸送する優れたモビリティを有することが好ましい。正孔注入輸送性能を有する低分子材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられる。正孔注入輸送性能を有する高分子系材料としては、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。
【0126】
本発明の有機発光素子において使用される化合物以外に使用できる主に発光機能に関わる材料としては、縮合環芳香族化合物(例えば、ナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、ナイルレッド、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、有機金属錯体(例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体)及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
【0127】
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入を容易にし、注入された電子を発光層に輸送する機能を有するものから任意に選ぶことができ、ホール輸送材料のキャリア移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体等が挙げられる。
【0128】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いるか、あるいは複数併用することもできる。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0129】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはリチウム−インジウム、ナトリウム−カリウム、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム、マグネシウム−インジウム等、複数の合金として用いることができる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で用いるか、あるいは複数併用することもできる。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0130】
本発明で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
【0131】
尚、作成した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0132】
本発明の有機発光素子は、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を作成し、それに接続して作成することも可能である。
【0133】
また、素子の光取り出し方向に関しては、ボトムエミッション構成(基板側から光を取り出す構成)及び、トップエミッション(基板の反対側から光を取り出す構成)のいずれも可能である。
【0134】
本発明の有機発光素子において、本発明の化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。特に塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0135】
上記結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0136】
また、これらは単独又は共重合体ポリマーとして1種又は2種以上混合してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0137】
本発明の有機発光素子においては、本発明のベンゾフルオランテン化合物を真空蒸着法や溶液塗布法により陽極及び陰極の間に形成する。ベンゾフルオランテン化合物を含む層の膜厚は、10μmより薄く、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.5μm以下である。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0139】
<実施例1>[例示化合物No.139の製造方法]
【0140】
【化35】

【0141】
窒素気流下、200mL反応容器に、以下に示す化合物を順次加えた。
5−ブロモキノリン:0.26g(0.93mmol)
2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン:0.50g(0.94mmol)
トルエン:25mL
エタノール:12mL
10%炭酸ナトリウム水溶液:10mL
テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム:0.054g(0.05mmol)
【0142】
次に、この反応溶液を加熱還流下4時間攪拌した後、室温まで冷却し水を加え攪拌を停止した。トルエンを加え有機層を分離し水で2回洗浄後、溶媒を留去して得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した(シリカゲル:76g、移動相:トルエン/酢酸エチル=30/1)。最後に、ヘプタン/アセトンの混合溶媒によるスラリー洗浄を行い、例示化合物139を淡黄色結晶として0.37g得た。
【0143】
Waters社製の質量分析装置を用い、例示化合物139の質量分析を行ったところM+である530.2を確認した。
【0144】
また、例示化合物139の1H−NMRを測定した。結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)=8.89(dd,1H,J1=4.12,J2=1.83Hz),8.19(d,1H,J=8.70Hz),7.85−7.77(m,2H),7.73−7.52(m,13H),7.42(td,2H,J1=6.53,J2=3.21Hz),7.32(d,1H,J=7.33Hz),7.23−7.17(m,3H),6.71(d,1H,J=7.33Hz),6.62(dd,1H,J1=6.41,J2=1.37Hz)
【0145】
さらに、例示化合物139のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定した結果、図6に示すスペクトルが得られた。発光ピークは433nm、半値幅は55nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した。
【0146】
さらに、実施例1の5−ブロモキノリンの代わりに以下の化合物を用いた他は、実施例1と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物No.119):3−ブロモキノリン
(例示化合物No.121):6−ブロモ−2−メチルキノリン
(例示化合物No.126):7−ブロモ−2−メチルキノリン
(例示化合物No.130):4−ブロモ−2−メチルキノリン
(例示化合物No.136):4−クロロ−2−フェニルキリノリン
(例示化合物No.211):4−ブロモイソキノリン
(例示化合物No.225):6−ブロモイソキノリン
(例示化合物No.229):7−ブロモイソキノリン
(例示化合物No.401):9−ブロモ−アクリジン
(例示化合物No.601):5−ブロモキノキサリン
(例示化合物No.602):5−ブロモ−2,3−ジメチルキノキサリン
(例示化合物No.607):2−ブロモキノキサリン
(例示化合物No.610):6−ブロモ−2−フェニルオキサゾロ[4,5−b]ピリジン
【0147】
<実施例2>[例示化合物No.129の製造方法]
【0148】
【化36】

【0149】
実施例1において、5−ブロモキノリン0.26g(0.93mmol)の代わりに4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノリン0.26g(1.13mmol)を用い、2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン0.50g(0.94mmol)の代わりに3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン0.50g(1.03mmol)を用いる以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物129を淡黄色結晶として0.32g得た。
【0150】
Waters社製の質量分析装置を用い、例示化合物No.129の質量分析を行ったところ、M+である530.2を確認した。
【0151】
また、NMR測定より図7に示すスペクトルが得られ、例示化合物No.129の構造を確認した。
【0152】
さらに、例示化合物No.129のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、図8に示すスペクトルが得られた。発光ピーク436nm、半値幅56nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した。
【0153】
<実施例3>[例示化合物No.101の製造方法]
【0154】
【化37】

【0155】
実施例1の5−ブロモキノリン0.26g(0.93mmol)の代わりに2−クロロキノリン0.15g(0.92mmol)を用いる以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物No.101を黄色結晶として0.41g得た。
【0156】
Waters社製の質量分析装置を用い、例示化合物No.101の質量分析を行ったところ、M+である530.2を確認した。
【0157】
また、NMR測定より図9に示すスペクトルが得られ、例示化合物No.101の構造を確認した。
【0158】
さらに、例示化合物No.101のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、図10に示すスペクトルが得られた。発光ピークは450nm、半値幅は59nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した。
【0159】
さらに、実施例3の2−クロロキノリンの代わりに以下の化合物を用いた他は、実施例3と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物No.201):1−ブロモ−イソキノリン
(例示化合物No.206):1−クロロ−5−フェニルイソキノリン
(例示化合物No.208):1−クロロ−3−フェニルイソキノリン
(例示化合物No.221):3−ブロモイソキノリン
(例示化合物No.222):3−ブロモ−1−メチルイソキノリン
【0160】
また、実施例3の2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの代わりに、2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを用いる以外は実施例3と同様の方法で例示化合物No.701を合成することができる。
【0161】
<実施例4>[例示化合物No.301の製造方法]
【0162】
【化38】

【0163】
実施例1の5−ブロモキノリン0.26g(0.93mmol)の代わりに2−クロロ−5,5−ジメチル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジン0.22g(0.94mmol)を用いる以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物No.301を黄色結晶として0.38g得た。
【0164】
Waters社製の質量分析装置を用い、例示化合物No.301の質量分析を行ったところ、M+である597.2を確認した。
【0165】
また、NMR測定により図11に示すスペクトルが得られ、例示化合物No.301の構造を確認した。
【0166】
さらに、例示化合物No.301のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、図12に示すスペクトルが得られた。発光ピークは445nm、半値幅は57nmであり、色純度の優れた青色発光スペクトルを示した。
【0167】
さらに、実施例4の2−クロロ−5,5−ジメチル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジンの代わりに以下の化合物を用いた他は、実施例4と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物No.305):4−クロロ−5,5−ジメチル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジン
(例示化合物No.311):8−ブロモ−5,5−ジメチル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジン
(例示化合物No.316):8−ブロモ−5,5−ジメチル−2−フェニル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジン
(例示化合物No.317):7−ブロモ−5,5−ジメチル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジン
(例示化合物No.319):7−ブロモ−2,5,5−トリメチル−5H−インデノ[1,2−b]ピリジン
【0168】
<実施例5>[例示化合物No.501の製造方法]
【0169】
【化39】

【0170】
(1)2−クロロインデノ[1,2,3−de]キノリンの合成
Journal of Medicinal Chemistry 1990,42,1556−1575に記載の方法に従い下記の合成スキームによって、2−クロロインデノ[1,2,3−de]キノリン11.4gを合成した。
【0171】
【化40】

【0172】
(2)例示化合物No.501の合成
実施例1の5−ブロモキノリン0.26g(0.93mmol)の代わりに上記合成スキームにて合成した2−クロロインデノ[1,2,3−de]キノリン0.23g(0.94mmol)を用いる以外は実施例1と同様の方法により例示化合物No.501を黄色結晶として0.35g得た。
【0173】
Waters社製の質量分析装置を用い、例示化合物No.501の質量分析を行ったところ、M+である605.1を確認した。
【0174】
また、NMR測定により図13に示すスペクトルが得られ、例示化合物No.501の構造を確認した。
【0175】
さらに、例示化合物501のトルエン溶液(1.0×10-6mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、図14に示すスペクトルが得られた。発光ピーク462nm、半値幅58nmであり、青色発光スペクトルを示した。
【0176】
さらに、実施例5の2−クロロインデノ[1,2,3−de]キノリンの代わりに以下の化合物を用いた他は、実施例5と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物No.509):インデノ[1,2,3−de]キノリン−4−イルトリフルオロメタンスルホン酸エステル
(例示化合物No.510):2−メチル−インデノ[1,2,3−de]キノリン−4−イルトリフルオロメタンスルホン酸エステル
(例示化合物No.515):5−クロロ−インデノ[1,2,3−de]キノリン
(例示化合物No.531):9−ブロモ−インデノ[1,2,3−de]キノリン
【0177】
<実施例6>
図4に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
【0178】
ガラス基板(基板1)上に、陽極2として酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて膜厚120nmで成膜した。次に、ITOを成膜したガラス基板をアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いで純水で洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄した。このように処理をしたガラス基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0179】
次に、正孔輸送材料である下記式で示される化合物1
【0180】
【化41】

のクロロホルム溶液(濃度:0.1wt%)を調製し、上記の透明導電性支持基板上に滴下した。滴下後、基板を最初に500RPMで10秒、次に1000RPMで40秒回転することでスピンコートを行い、膜を形成した。この後、80℃の真空オーブンで10分間乾燥することで、薄膜中の溶剤を完全に除去し、ホール注入層7を成膜した。
【0181】
次に、ホール注入層7の上にホール輸送層5として下記式に示す化合物2を真空蒸着法にて膜厚15nmでホール輸送層5を形成した。
【0182】
【化42】

【0183】
次に、ホール輸送層5の上に、ゲストである例示化合物No.139と、ホストである下記式に示す化合物3とを共蒸着して30nmの発光層3を設けた。このとき、例示化合物No.139は、発光層全体の5重量%とした。また、発光層3を成膜する際は、蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1〜0.2nm/secの条件で行った。尚、エネルギーギャップは、例示化合物No.139は2.87ev、下記式化合物3は3.06evである。
【0184】
【化43】

【0185】
さらに、発光層3の上に、電子輸送層6として2,9−ビス[2−(9,9’−ジメチルフルオレニル)]−1,10−フェナントロリンを真空蒸着法にて膜厚30nmで形成した。また、電子輸送層6を成膜する際に、蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1〜0.2nm/secの条件で行った。
【0186】
次に、電子輸送層6の上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により、蒸着時の真空度1.0×10-4Pa、成膜速度0.01nm/secの条件下、膜厚0.5nmで形成した。最後に、LiF膜の上に、アルミニウム膜を真空蒸着法により、蒸着時の真空度1.0×10-4Pa、成膜速度0.5〜1.0nm/secの条件下、膜厚100nmで作成した。以上のようにして有機発光素子を作製した。
【0187】
得られた有機発光素子は、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0188】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al電極(陰極4)を負極にして、4Vの印加電圧をかけた。その結果、電流効率5.4cd/A、発光効率4.3lm/Wの発光が観測された。また、CIE色度はx=0.15,y=0.12と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0189】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、30mA/cm2の電流密度で100時間電圧を印加したところ、1543cd/m2から920cd/m2まで輝度劣化したが、良好な発光の継続が確認された。
【0190】
<実施例7>
実施例6の前記例示化合物No.139の代わりに前記例示化合物No.129を用いた以外は実施例1と同様の方法により素子を作製した。尚、エネルギーギャップは、2.87evである。
【0191】
作製した素子に4Vの印加電圧をかけた。その結果、電流効率4.5cd/A、発光効率3.6lm/Wの発光が観測された。また、CIE色度はx=0.14,y=0.12と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0192】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、30mA/cm2の電流密度で100時間電圧を印加したところ、1373cd/m2から965cd/m2まで輝度劣化したが、良好な発光の継続が確認された。
【0193】
<実施例8>
実施例6の前記例示化合物No.139の代わりに前記例示化合物No.101を用いた以外は実施例6と同様の方法により素子を作成した。尚、エネルギーギャップは、2.79evである。
【0194】
作製した素子に4Vの印加電圧をかけた。その結果、電流効率6.2cd/A、発光効率4.9lm/Wの発光が観測された。また、CIE色度はx=0.14,y=0.18と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0195】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、30mA/cm2の電流密度で100時間電圧を印加したところ、1803cd/m2から1482cd/m2まで輝度劣化したが、良好な発光の継続が確認された。
【0196】
<比較例1>
実施例6の例示化合物No.139の代わりに下記構造式で示される化合物4を用いた以外は実施例6と同様の方法により素子を作成した。尚、エネルギーギャップは、2.94evである。
【0197】
【化44】

【0198】
作製した素子に4Vの印加電圧をかけた。その結果、電流効率2.4cd/A、発光効率1.9lm/Wの発光が観測された。
【0199】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を30mA/cm2に保ち20時間電圧を印加したところ、初期輝度840cd/m2から20時間後に406cd/m2と初期の輝度と比べて半分以下の輝度になった。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。
【図6】例示化合物139のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図7】例示化合物129の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図8】例示化合物129のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図9】例示化合物101の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図10】例示化合物101のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図11】例示化合物301の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図12】例示化合物301のトルエン溶液(1.0×10-5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図13】例示化合物501の1H−NMR(CDCl3)スペクトルを示す図である。
【図14】例示化合物501のトルエン溶液(1.0×10-6mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0201】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホール/エキシトンブロッキング層
10,20,30,40,50 有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されることを特徴とする、ベンゾフルオランテン化合物。
【化1】

(式[1]において、X1乃至X6のいずれか一つが置換あるいは無置換の4環以下の縮合複素環基であり、残りは水素原子を表す。)
【請求項2】
前記縮合複素環基が下記一般式[2]で示される置換基であることを特徴とする、請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化2】

(式[2]において、X7乃至X13のうちいずれか一つは結合手であり、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、隣り合う置換基同士で結合し環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記縮合複素環基が下記一般式[3]で示される置換基であることを特徴とする、請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化3】

(式[3]において、X14乃至X20のうちいずれか一つは結合手であり、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、隣り合う置換基同士で結合し環を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記縮合複素環基が下記一般式[4]で示される置換基であることを特徴とする、請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化4】

(式[4]において、X21乃至X27のうちいずれか一つは結合手であり、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記縮合複素環基が下記一般式[5]で示される置換基であることを特徴とする、請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化5】

(式[5]において、X28乃至X36のうちいずれか一つは結合手であり、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【請求項6】
前記縮合複素環基が下記一般式[6]で示される置換基であることを特徴とする、請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化6】

(式[6]において、X37乃至X45のうちいずれか一つは結合手を表し、残りはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【請求項7】
前記X3又はX4が前記縮合複素環基であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のベンゾフルオランテン化合物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のベンゾフルオランテン化合物であることを特徴とする、有機発光素子用材料。
【請求項9】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された少なくとも一層の有機化合物を含む層とからなり、該陽極又は該陰極が透明又は半透明の電極材料によって形成される有機発光素子において、該有機化合物を含む層のうち少なくとも一層が、請求項8に記載の有機発光素子用材料を少なくとも一種含有することを特徴とする、有機発光素子。
【請求項10】
前記有機発光素子用材料を含む層が、発光性を有する層であることを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記発光性を有する層が発光層であることを特徴とする、請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記発光層が、ホストとゲストから構成されることを特徴とする、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記ゲストが前記有機発光素子用材料であり、前記ホストが前記有機発光素子用材料よりもエネルギーギャップの大きい化合物であることを特徴とする請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記一対の電極間に電圧を印加することにより発光する電界発光素子であることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の有機発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−156315(P2008−156315A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349579(P2006−349579)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】