説明

ベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法

【課題】 医薬、農薬および電子材料の中間体として有用なベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の新規な工業的製造法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物を出発物質とするベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。


{式中、Aはホルミル基又はジハロゲノメチル基を表し、Xは塩素原子もしくは臭素原子を表し、Rはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アリール基(該アリール基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、nは0〜4の整数を表わすが、nが2以上の場合、Rは同一であっても異なっていても良い。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬および電子材料等の合成中間体として有用なベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、ベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法としては、ジヒドロベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を酸化する方法(例えば、非特許文献1参照。)、又はベンゾへテロビシクロ環化合物の逆シクロアディション反応によって合成する方法(例えば、非特許文献2、3参照。)が知られている。
しかしながら、入手容易な化合物から過酷な反応条件を要することなく、ベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造する方法は未だ知られていない。
【0003】
【非特許文献1】アドバンシズ イン ヘテロサイクリック ケミストリー (Advances in Heterocyclic Chemistry),第29巻、341頁、(1981)
【非特許文献2】ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイェティ (J.Am.Chem.Soc.),第88巻,4112頁−(1966)
【非特許文献3】ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイェティ (J.Am.Chem.Soc.),第110巻,462頁−(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医薬、農薬および電子材料の中間体として有用なベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の新規な工業的製造法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、入手が容易なハロメチルベンゼン化合物を、水、硫化水素又はアミン類と反応させることによるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造する方法を見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕下記一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表されるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、
【0006】
【化1】

【0007】
{式中、Aはホルミル基又はジハロゲノメチル基を表し、Xは塩素原子もしくは臭素原子を表し、Rはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アリール基(該アリール基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、nは0〜4の整数を表わすが、nが2以上の場合、Rは同一であっても異なっていても良い。}
【0008】
【化2】

【0009】
{式中、Yは酸素原子、硫黄原子又は−N(R)−基を表し、B、Bは、同一又は相異なっても良く、水素原子、アルカリ金属原子を示し、又はB、Bが相伴ってアルカリ土類金属原子を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はアラルキル基(該アラルキル基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)を表す。}
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R、n及びYは前記と同じ意味を示す。)
〔2〕前記Aがホルミル基であることを特徴とする〔1〕記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、
〔3〕前記Aがジハロゲノメチル基であることを特徴とする〔1〕記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、
〔4〕前記Yが−N(R)−基である{Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はアラルキル基(該アラルキル基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)を表す。}ことを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、
〔5〕前記Yが硫黄原子であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、
【0012】
〔6〕前記Yが酸素原子であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、
〔7〕前記Yが硫黄原子であり、Bがアルカリ金属原子であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法、および
〔8〕前記Yが酸素原子であり、Bがアルカリ金属原子であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
従来の技術では入手困難な原料を使用するか、過酷な反応条件を必要とする方法でしか、ベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造することができなかったが、本発明の製造方法によれば、入手が容易な原料から温和な反応条件でベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造することが可能になり、低コストな工業的規模の製造ができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法において、本明細書および特許請求の範囲で使用する用語について説明する。
【0015】
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子があるが、とりわけ塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0016】
ジハロゲノメチル基は、同一又は異なる2つのハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)で置換されたメチル基を意味し、具体的にはジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、クロロブロモメチル基等を例示することができるが、中でもジクロロメチル基、ジブロモメチル基が好ましい。
【0017】
炭素数1〜4のアルキル基は、炭素数1から4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、具体的には例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等を例示することができ、中でもメチル基、エチル基等が好ましい。
【0018】
炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基とは、フッ素原子で水素原子が全て置換された、炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、具体的には例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロブチル基等を挙げることができ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
【0019】
炭素数1〜4のアルコキシ基とは、アルキル部分が炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基でアルキル−O−で表される基を意味し、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等を例示することができ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0020】
アリール基とは、炭素数5〜14の単環あるいは縮合環の芳香族炭化水素基を意味し、具体的にはフェニル基、ナフチル基を例示できる。
【0021】
アラルキル基とは、上記アリール基が上記アルキル基に置換してできる基のことであり、具体的にはベンジル基、フェネチル基等を例示することができる。
【0022】
本発明におけるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の生成反応は、一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物に、一般式(2)で表される化合物を、塩基の存在下もしくは非存在下、溶媒の共存下もしくは非共存下で行うことができる。
【0023】
本発明方法において使用する一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物としては、一般式(1)で表されるいずれの化合物でも差し支えないが、具体的には2−クロロメチルベンズアルデヒド、2−ブロモメチルベンズアルデヒド、4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物、5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒド、2−クロロメチル−3−トリフルオロメチルベンズアルデヒド、2−クロロメチル−4,6−ジメトキシベンズアルデヒド、2−クロロメチル−4,6−ジメトキシ−3−メチルベンズアルデヒド、2−クロロメチルベンザルクロリド、2−ブロモメチルベンザルブロミド、4−クロロ−2−クロロメチルベンザルクロリド、5−クロロ−2−クロロメチルベンザルクロリド、6−ニトロ−2−ブロモメチルベンザルブロミド、3―メトキシ−2−ブロモメチルベンザルブロミド、3,5−ジターシャリーブチル−2−ブロモメチルベンザルブロミド等を例示することができ、2−クロロメチルベンズアルデヒド、2−クロロメチルベンザルクロリド、2−ブロモメチルベンザルブロミド、2−ブロモメチルベンズアルデヒド、又は4−クロロ−及び5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒド混合物が好ましい。
【0024】
本発明方法において使用する一般式(2)で表される化合物としては、一般式(2)で表されるいずれの化合物でも差し支えない。
Yが酸素原子である場合は、水、酸化カルシウム等の酸化物、水酸化ナトリウム等の水酸化物を例示することができる。
Yが硫黄原子である場合は、硫化水素、硫化ナトリウム等の硫化物、水硫化カリウム等の水硫化物等を挙げることができる。
Yが−N(R)−基であるものとしては、アンモニア、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、(1−フェニル)エチルアミン、ナフチルメチルアミンを挙げることができる。
これらの中で、水、硫化水素、アンモニア、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、(1−フェニル)エチルアミン、ナフチルメチルアミン等が好ましい。
【0025】
一般式(2)で表される化合物の使用量は、一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物1モルに対し、一般式(2)で表される化合物を1モル以上、好ましくは1〜5モル使用するが、一般式(2)で表される化合物を大過剰に使用し、反応溶媒とすることもできる。
【0026】
本発明方法において脱ハロゲン化水素剤として使用する塩基は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;例えば水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;例えば水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物;および例えばトリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の有機アミン類を挙げることができ、その使用量としては、一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物1モルに対し1〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲を例示することができる。
【0027】
一般式(2)で表される化合物の式中のYが酸素原子の時には、水と塩基を使用する代わりに、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)又はアルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)を1〜10当量、好ましくは1〜5当量使用することができる。
【0028】
また、一般式(2)で表される化合物の式中のYが硫黄原子の時には、硫化水素と塩基を使用する代わりに、アルカリ金属硫化物(例えば、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム)又はアルカリ土類金属硫化物を1〜10当量、好ましくは1〜5当量使用することができる。
【0029】
反応溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;例えばクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系溶媒;例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非水性極性溶媒;例えばトルエン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒;例えば酢酸エチル等のカルボン酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;水等を例示することができ、一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物1モルに対し、0.1〜10L(リットル)、好ましくは0.5〜2.5L使用することができる。
【0030】
反応温度は、通常−30℃から反応系が沸騰するまでの温度範囲、好ましくは10〜200℃であり、反応時間は通常5分〜100時間、好ましくは0.5〜10時間の範囲である。反応時の雰囲気圧は、0.1〜50atmであってよいが、好ましくは0.5〜5atmである。
【0031】
本発明の方法により得られるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物は、前記一般式(3)で表されるすべての化合物であるが、具体的に例示すると次のものが挙げられる。
ベンゾ[c]インドール類としては、イソインドール、N−ベンジルイソインドール、5−クロロ−N−ベンジルイソインドール等がある。
【0032】
ベンゾ[c]フラン類としては、ベンゾ[c]フラン、5−クロロベンゾ[c]フラン等がある。
【0033】
ベンゾ[c]チオフェン類としては、ベンゾ[c]チオフェン、5−クロロベンゾ[c]チオフェン等がある。
【0034】
本発明の製造方法により得られるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物が反応液から単離したとき不安定である場合があるが、そのような場合においては、下記スキーム1に示すように反応液から単離せずに、無水マレイン酸、N−フェニルマレイン酸イミド等のアルケン化合物(スキーム1中(i))、アルキン化合物(スキーム1中(ii))又はジアゾ化合物(スキーム1中(iii))と常法により環化反応を行い、安定なビシクロ化合物に導くことにより、目的のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の生成を確認することができる。
【0035】
【化4】

【0036】
(式中、R、n、Yは前記と同じ意味を示す。)
【0037】
なお、本発明の原料である一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物(化合物(1a)、及び化合物(1b))は、例えば下記スキーム2のようにして製造することができる。
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、R、n、Xは前記と同じ意味を示し、X’はハロゲン原子を示す。)
【0040】
即ち、一般式(1b)で表されるハロメチルベンズアルデヒド化合物は、一般式(1a)で表されるハロメチルベンザルハライド化合物を加水分解して製造するか、又は、一般式(4)で表されるフタリド化合物を水素化アルミニウムリチウム等の金属水素錯化合物で還元して得られる一般式(5)で表されるヒドロキシルメチルベンズアルデヒド化合物とし、これを三臭化リン、三塩化リン、チオニルクロリド、ホスゲン等のハロゲン化剤と反応させることによって製造できる。
一般式(1a)で表されるハロメチルベンザルハライド化合物は、一般式(6)で表されるキシレン化合物を、過安息香酸無水物、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤の存在下あるいは光照射下において、塩素又は臭素等のハロゲンを反応させることで製造できる。
【0041】
Rが例えばアルコキシ基等の電子供与性基の時は、下記スキーム3のようなベンジルアルコール化合物(7)にN,N−ジメチルホルムアミドとオキシ塩化リンに代表されるオキシハロゲン化リンを反応させることで、一般式(1b’)で表されるハロメチルベンズアルデヒド化合物を製造できる。
【0042】
【化6】

【0043】
(式中、R’は電子供与性基を示し、X、nは前記と同じ意味を示す。)
【0044】
一般式(1)で表されるハロメチルベンズアルデヒド化合物と一般式(2)中のYが酸素原子あるいは硫黄原子である化合物を用いて穏やかな反応条件下で実施すると、採用した条件によっては、下記の一般式(8)および(9)で表される構造を有する中間体の生成を確認できたり、その中間体を単離できることから、Yが酸素原子あるいは硫黄原子である化合物を用いた場合には下記スキーム4の反応経路を示すことができる。
【0045】
【化7】

【0046】
(式中、R、nおよびXは前記と同じ意味を示し、Y’は酸素原子又は硫黄原子を示す。)
【0047】
これらの一般式(8)および(9)で表される合成中間体を一旦単離して、一般式(3’)で示されるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造することもできる。
【0048】
さらに、上記スキーム4に示したような反応において、溶媒としてアルコールを使用した場合に得られる上記中間体(9)のヒドロキシル基を常法(スキーム5中(iv))により溶媒のアルコールにより系内で置換された一般式(9’)の化合物を加熱等の常法(スキーム5中(v))により一般式(3’)で示されるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造することができる。
また、上記中間体(9)を常法(スキーム5中(vi))により1,2,3−ベンゾトリアゾールを反応させることにより得られる一般式(9”)の化合物を加熱等の任意の脱1,2,3−ベンゾトリアゾリル化により、一般式(3’)で示されるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物を製造することができる。
【0049】
【化8】

【0050】
(式中、R、nおよびY’は前記と同じ意味を示し、Rは溶媒として使用したアルコールに由来するアルキル残基を示す。)
【実施例】
【0051】
次に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0052】
実施例1;イソインドールの製造
2−クロロメチルベンズアルデヒドとアンモニアを反応させるとイソインドールを合成することができるが、生成するイソインドリンをN−フェニルマレイン酸イミドとの環化物に導いてその確認を行った。即ち、2−クロロメチルベンズアルデヒド(378mg、2.45mmol)をアセトニトリル(40mL)に溶解し、アンモニアガスを室温で6時間導入した。その後、溶液中に残留するアンモニアをアスピレーターで吸引・留去後、N−フェニルマレイン酸イミド(1.27g、7.35mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応溶液を減圧下に濃縮後、得られた残留物を分離せず、そのままH−NMRスペクトルの積分値よりN−フェニル−1,4−ジヒドロ−1,4−イミノナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド(エキソ体/エンド体=37/63)の収率を算出したところ、ほぼ定量的に得られた。
【0053】
エキソ体:1H-NMR (CDCl3) δ 3.00 (s, CH, 2H), 4.95 (s, CH, 2H), 7.20-7.55 (m, Ar-H, 9H).
エンド体:1H-NMR (CDCl3) δ 3.80 (m, CH, 2H), 5.05 (m, CH, 2H), 6.4 (m, Ar-H, 2H), 7.20-7.55 (m, Ar-H, 7H).
【0054】
実施例2;N−ベンジルイソインドールの製造
2−1)2−クロロメチルベンズアルデヒドからの製造
2−クロロメチルベンズアルデヒド(1.59g、10.3mmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解し、その溶液中へベンジルアミン(2.20g、20.6mmol)を室温で加え、1時間、室温で撹拌した。その後、反応混合物をクロロホルム(20mL)で希釈後、水(10mL)で2回洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去し、黒色油状物としてN−ベンジルイソインドール(2.11g、99%)を得た。
【0055】
1HNMR(CDCl3) δ 5.38 (s, CH2, 2H), 6.92 (m, Ar-H, 2H), 7.12 (s, Ar-H, 2H), 7.13 (m, Ar-H, 2H), 7.25-7.35 (m, Ar-H, 3H), 7.51 (m, Ar-H, 2H).
13CNMR (CDCl3) δ 54.8, 111.2, 119.6, 120.7, 124.5, 127.2, 127.9, 128.8, 137.3.
Fab-MS 207 (M)+.
【0056】
2−2)2−クロロメチルベンザルクロリドからの製造
2−クロロメチルベンザルクロリド(1.1g、5.2mmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解し、その溶液中へベンジルアミン(0.56g、5.2mmol)とトリエチルアミン(1.59g、15.7mmol)を含むアセトニトリル(10mL)溶液を室温で滴下し、23時間、室温で撹拌した。その後、減圧下アセトニトリルを留去し、残渣に水(20mL)を加え、クロロホルム(20mL)で2回抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去し、黒色固形物を得た。これをエタノールで洗浄し、黒色粉末状のN−ベンジルイソインドール{0.44g、41%、融点110〜116℃(分解)}を得た。これはNMR、Fab-MS分析から上記2−1)で得られたN−ベンジルイソインドールと同一であった。
【0057】
実施例3;N−{(1−フェニル)エチル}イソインドールの製造
2−クロロメチルベンズアルデヒド(1.59g、10.3mmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解し、その溶液中へN−{(1-フェニル)エチル}アミン(2.50g、20.6mmol)を室温で加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応混合物をクロロホルム(20mL)で希釈後、水(10mL)で2回洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去し、油状物としてN−{(1−フェニル)エチル}イソインドール(2.24g、93%)を得た。
【0058】
1H-NMR (CDCl3) δ 1.96 (d, CH3, 3H, J=7.0 Hz), 5.56 (q, CH, 1H, J=7.0 Hz), 6.91 (m, Ar-H, 2H), 7.11 (m, Ar-H, 2H), 7.23-7.36 (m, Ar-H, 5H), 7.51 (m, Ar-H, 2H).
13C-NMR (CDCl3) δ 22.2, 59.6, 109.6, 119.6, 120.7, 124.0, 126.0, 127.7, 128.7, 142.5.
Fab-MS 221 (M)+.
【0059】
実施例4;N−(n−ブチル)イソインドールの製造
2−クロロメチルベンズアルデヒド(0.740g、4.80mmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解し、その溶液中へn−ブチルアミン(0.349g、4.80mmol)とトリエチルアミン(0.528g、4.80mmol)を室温で加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応混合物をクロロホルム(20mL)で希釈後、水(10mL)で2回洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去し、油状物としてN−(n−ブチル)イソインドール(0.873g、99%)を得た。
【0060】
1H-NMR (CDCl3) δ 0.92 (t, CH3, 3H, J= 7.5 Hz), 1.31 (m, CH2, 2H), 1.86 (m, CH2, 2H), 4.15 (t, CH2, 2H, J= 7.0 Hz), 6.90 (m, Ar-H, 2H), 7.06 (s, Ar-H, 2H), 7.51 (m, Ar-H, 2H).
13C-NMR (CDCl3) δ 13.6, 19.9, 33.8, 50.8, 110.5, 119.4, 120.4, 124.2.
Fab-MS 173(M)+.
【0061】
実施例5;5−クロロ−N−ベンジルイソインドールの製造
4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物(1.04g、5.5mmol)をクロロホルム(10mL)に溶解し、ベンジルアミン(1.12g、10.5mmol)のクロロホルム(2mL)溶液を加え、1.5時間、室温で撹拌した。反応物を水(20mL×2)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、白色結晶の5−クロロ−N−ベンジルイソインドール(1.31g、98%)を得た。
【0062】
1H-NMR (CDCl3) δ 5.35 (s, CH, 2H), 6.80-7.60 (m, Ar-H, 10H)
【0063】
実施例6;5−クロロ−N−(S)−{(1−フェニル)エチル}イソインドールの製造
4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物(600mg、3.17mmol)のクロロホルム(10mL)溶液に、(S)−{(1−フェニル)エチル}アミン(768mg、6.34mmol)のクロロホルム(5mL)溶液を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応物を水(20mL×2)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、油状物の5−クロロ−N−(S)−{(1−フェニル)エチル}イソインドール(810mg、99%)を得た。
【0064】
1H-NMR (CDCl3) d 1.96 (d, Me, 3H, J=6.5 Hz), 5.55 (q, CH, 1H, J=6.5 Hz), 6.90-7.50 (m, Ar-H, 10H).
【0065】
実施例7;ベンゾ[c]フランの製造
7−1)1,3−ジヒドロ−1−メトキシベンゾ[c]フランの製造
水酸化カリウム(700mg、12.5mmol)をメタノール(20mL)に溶解し、2−クロロメチルベンズアルデヒド(1.14g、7.35mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応物をクロロホルム(100mL)で希釈し、水洗い後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、油状物として1,3−ジヒドロ−1−メトキシベンゾ[c]フラン(990mg、90%)を得た
【0066】
1H-NMR (CDCl3) δ 3.43 (s, Me, 3H), 5.04 (d, CH, 1H, J=14.8 Hz), 5.21 (d, CH, 1H, J= 14.8 Hz), 6.18 (s, CH, 1H), 7.25 (m, Ar-H, 1H), 7.35 (m, Ar-H, 3H).
13C-NMR (CDCl3) δ 54.2, 72.3, 107.5, 120.9, 122.9, 127.6, 129.1, 137.2, 139.9.
Fab-MS 150 (M)+.
【0067】
7−2)ベンゾ[c]フランの製造
1,3−ジヒドロ−1−メトキシベンゾ[c]フランを加熱することにより、ベンゾ[c]フランを合成することができるが、生成したベンゾ[c]フランを無水マレイン酸との環化物に導いてその確認を行った。即ち、1,3−ジヒドロ-1−メトキシベンゾ[c]フラン(575mg、3.83mmol)をo−キシレン(20mL)に溶解し、無水マレイン酸(864mg、8.82mmol)を加え、2時間還流した。溶媒を留去後、残留物を0℃に冷やしたクロロホルムで洗い、過剰の無水マレイン酸を取り除いた後、ベンゼンで再結晶し白色結晶の1,4−ジヒドロ―1,4−エポキシナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物(331mg、40%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ 3.15 (s, CH, 2H), 5.86 (s, CH, 2H), 7.36 (m, Ar-H, 4H).
【0068】
7−3)ベンゾ[c]フランの製造
1,3−ジヒドロ−1−メトキシベンゾ[c]フラン(730mg、4.87mmol)をo−キシレン(15mL)に溶解し、N−フェニルマレインイミド(3.03g、17.5mmol)を加え2時間還流した。その後、溶媒を留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/3)で分離・精製し、白色結晶のN−フェニル−1,4−ジヒドロ−1,4−エポキシナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド(815mg、57%、(エキソ体/エンド体=41/16))を得た。
【0069】
エキソ体:1H-NMR (CDCl3) δ 3.15 (s, CH, 2H), 5.80 (s, CH, 2H), 7.25-7.50 (m, Ar-H, 9H).
エンド体:1H-NMR (CDCl3) δ 3.95 (m, CH, 2H), 5.85 (m, CH, 2H), 6.40 (m, Ar-H, 2H), 7.25-7.50 (m, Ar-H, 7H).
【0070】
実施例8;5−クロロベンゾ[c]フランの製造
8−1)5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−メトキシベンゾ[c]フランの合成
4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物(1.09g、5.77mmol)をメタノール(5mL)に溶解し、KOH(480mg)のメタノール(10mL)溶液を加え、室温で2.5時間撹拌した。溶媒を留去後、水(40mL)を加え、クロロホルム(10mL×3)で抽出した。有機相を水(20mL×3)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、油状物の5−クロロ−1,3−ジヒドロ-1−メトキシベンゾ[c]フラン(1.06g、99%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ 3.44 (s, Me, 3H), 5.01 (d, CH, 1H, J=13.2 Hz), 5.18 (dd, CH, 1H, J=2.2, 13.2 Hz), 6.13 (d, CH, 1H, J=2.2 Hz), 7.18-7.39 (m, Ar-H, 3H).
【0071】
8−2)5−クロロベンゾ[c]フランの製造
5−クロロ−1,3−ジヒドロ-1−メトキシベンゾ[c]フランを加熱することにより、5−クロロベンゾ[c]フランを合成することができるが、生成した5−クロロベンゾ[c]フランを無水マレイン酸との環化物に導いてその確認を行った。即ち、5−クロロ−1,3−ジヒドロ-1−メトキシベンゾ[c]フラン(712mg、3.86mmol)をm-キシレン(10mL)に溶解し、無水マレイン酸(946mg、9.65mmol)を加え、7時間還流した。溶媒を留去後、反応物を酢酸エチルに溶解し、ヘキサンを加えると生じる白色沈殿をろ過し、白色粉末として6−クロロ−1,4−ジヒドロ−1,4−エポキシナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物(575mg、59%)を得た。
エキソ体:1H-NMR (CDCl3) δ 4.40 (s, CH, 2H), 4.95 (s, CH, 2H), 7.10-7.25 (m, Ar-H, 3H).
【0072】
実施例9;ベンゾ[c]チオフェンの製造
9−1)1,3−ジヒドロ−1−ヒドロキシベンゾ[c]チオフェンの合成
2−クロロメチルベンズアルデヒド(783mg、5.06mmol)をアセトニトリル(10mL)に溶解し、硫化水素ナトリウム水和物(1.22g、15.2mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応物をクロロホルム(50mL)に希釈後、水洗いし、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、油状物の1,3−ジヒドロ−1−ヒドロキシベンゾ[c]チオフェン(570mg、84%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ 2.50 (d, OH, 1H, J=12.6 Hz), 4.16 (d, CH, 1H, J=16.9 Hz),
4.41 (d, CH, 1H, J=16.9 Hz), 6.58 (CH, 1H), 7.31 (m, Ar-H, 3H), 7.47 (m, Ar-H,
1H).
13C-NMR (CDCl3) δ 36.7, 85.9, 124.9, 125.4, 127.4, 128.8, 139.5, 142.7.
Fab-MS 135 (M−OH)+.
【0073】
9−2)1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェンの製造
1,3−ジヒドロ−1−ヒドロキシベンゾ[c]チオフェン(869mg、5.39mmol)をアセトニトリル(15mL)に溶解し、1,2,3−ベンゾトリアゾール(962mg、8.09mmol)を加え、室温で、16時間撹拌した。反応物をクロロホルム(60mL)で希釈し、水洗い後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、油状物の1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェン(1.533g)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ 4.42 (d, CH, 1H, J=16.9 Hz), 4.70 (dd, CH, 1H, J=2.1, 16.9
Hz), 6.83 (d, CH, 1H, J=2.1 Hz), 7.12 (m, Ar-H, 1H), 7.27 (m, Ar-H, 3H), 7.96
(m, Ar-H, 3H), 8.06 (m, Ar-H, 1H).
【0074】
9−3)ベンゾ[c]チオフェンの製造
1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェンを加熱することにより、ベンゾ[c]チオフェンを合成することができるが、生成したベンゾ[c]チオフェンを無水マレイン酸との環化物に導いてその確認を行った。即ち、1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェン(507mg、2.0mmol)をクロロホルム(20mL)に溶解し、無水マレイン酸(393mg、4.0mmol)を加え、3.5時間還流した。溶媒を留去後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で分離し、1,4−ジヒドロ−1,4−エピチオナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物(292mg、66%、(エキソ体/エンド体=36/30))を白色結晶として得た。
【0075】
エキソ体: 1H-NMR (CDCl3) δ 3.61 (s, CH, 2H), 5.01 (s, CH, 2H), 7.10 (m, Ar-H, 4H).
13C-NMR (CDCl3) δ 52.9, 56.1, 121.6, 127.3, 144.9, 169.3.
エンド体: 1H-NMR (CDCl3) δ 4.37 (m, CH, 2H), 4.98 (m, CH, 2H), 7.10 (m, Ar-H, 4H).
13C-NMR (CDCl3) δ 54.2, 55.6, 120.6, 128.0, 142.0, 167.8.
【0076】
実施例10;5−クロロベンゾ[c]チオフェンの製造
10−1)5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−ヒドロキシベンゾ[c]チオフェンの合成
硫化水素ナトリウム・n水和物(930mg、1.67mmol)にアセトニトリル(20mL)を加え、4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物(1.10g、5.56mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液を加えた。混合物を2時間室温で撹拌した。溶媒を留去後、残留物に水(40mL)を加え、クロロホルム(10mL×3)で抽出した。有機相を水(20mL×3)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去すると油状物5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−ヒドロキシベンゾ[c]チオフェン(1.04g、96%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ 2.40 (s, OH, 1H), 4.11 (d, CH, 1H, J=14.6 Hz), 4.39 (dd, CH, 1H, J=2.4, 14.6 Hz), 6.53 (m, CH, 1H), 7.10-7.70 (m, Ar-H, 3H).
【0077】
10−2)5−クロロ−1,3−ジヒドロ-1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェンの製造
5−クロロ−1,3−ジヒドロ-1−ヒドロキシベンゾ[c]チオフェン(884mg、4.74mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液に、1,2,3−ベンゾトリアゾール(620mg、5.21mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液を加えた。混合物を室温で15.5時間撹拌した。溶媒を留去し5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェンを含む油状物(1.50g)を得た。この油状物は精製することなく、次の反応に用いた。
1H-NMR (CDCl3) δ 4.15 (d, CH, 1H, J=18.3 Hz), 4.40 (m, CH, 1H), 6.59 (m, CH, 1H), 7.10-7.60 (m Ar-H, 5H), 7.90 (m, Ar-H, 2H).
【0078】
10−3)5−クロロベンゾ[c]チオフェンの製造
5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェンを加熱することにより、5−クロロ−ベンゾ[c]チオフェンを合成することができるが、生成した5−クロロ−ベンゾ[c]チオフェンを無水マレイン酸との環化物に導いてその確認を行った。即ち5−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル)ベンゾ[c]チオフェンを含む油状物(1.50g)と無水マレイン酸(929mg、9.48mmol)のベンゼン(10mL)溶液を6.5時間還流した。生成した沈殿物をろ別し、炉液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1))で分離し、6−クロロ−1,4−ジヒドロ-1,4−エピチオナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物(630mg、50%(エキソ体/エンド体=25/25)を白色結晶として得た。
【0079】
エキソ体:1H-NMR (CDCl3) δ 3.62 (m, CH, 2H), 5.00 (m, CH, 2H), 7.10-7.30 (m, Ar-H, 3H).
エンド体:1H-NMR (CDCl3) δ 4.39 (m, CH, 2H), 4.95 (m, CH, 2H), 7.10-7.30 (m, Ar-H, 3H).
【0080】
参考例1;4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物の製造
水銀ランプ照射下、4−クロロ−o−キシレン105.5g(750mmol)に130〜150℃の反応温度で塩素160gを吹き込み塩素化を行ったところ、4−クロロビスクロロメチルベンゼン、4−クロロ−2−クロロメチルベンザルクロリド、5−クロロ−2−クロロメチルベンザルクロリド、4−クロロビス(ジクロロメチル)ベンゼンの混合物が得られた。これを精留し、123℃(6mmHg)の留分を捕集すると4−クロロ−2−クロロメチルベンザルクロリド、5−クロロ−2−クロロメチルベンザルクロリドの混合物102.1gが得られた。
98%硫酸410g(4.18mol)を水26g(1.44mol)に加えた後、温度を20℃以下に保つようにして上記混合物102.1g(418mmol)を滴下した。
滴下終了後更に24時間攪拌した後、反応混合物を氷水の中にあけ、ジエチルエーテルにて3回抽出した。有機相を水(500mL×3)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去すると油状物として4−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドと5−クロロ−2−クロロメチルベンズアルデヒドの混合物が60.8g得られた。この混合物を本発明の方法にてそのまま反応させると、5−クロロベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物が得られる。
1H-NMR (CDCl3) δ 5.00 (s, CH2, 2H), 5.02 (s, CH2, 2H), 7.50〜7.61 (m, Ar-H, 4H), 7.79(s, Ar-H, 1H), 7.82 (d, Ar-H, 1H), 10.17 (s, CH, 1H), 10.19 (s, CH, 1H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるハロメチルベンゼン化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表されるベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。
【化1】

{式中、Aはホルミル基又はジハロゲノメチル基を表し、Xは塩素原子もしくは臭素原子を表し、Rはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アリール基(該アリール基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、nは0〜4の整数を表わすが、nが2以上の場合、Rは同一であっても異なっていても良い。}
【化2】

{式中、Yは酸素原子、硫黄原子又は−N(R)−基を表し、B、Bは、同一又は相異なっても良く、水素原子、アルカリ金属原子を示し、又はB、Bが相伴ってアルカリ土類金属原子を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はアラルキル基(該アラルキル基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)を表す。}
【化3】

(式中、R、n及びYは上記と同じ意味を表す。)
【請求項2】
前記Aがホルミル基であることを特徴とする請求項1記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。
【請求項3】
前記Aがジハロゲノメチル基であることを特徴とする請求項1記載のベンゾヘテロ[c]5員環化合物の製造方法。
【請求項4】
前記Yが−N(R)−基である{但し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はアラルキル基(該アラルキル基は、同一或いは異なる、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基により1箇所以上置換されていてもよい。)を表す。}ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。
【請求項5】
前記Yが硫黄原子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。
【請求項6】
前記Yが酸素原子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。
【請求項7】
前記Yが硫黄原子であり、前記Bがアルカリ金属原子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。
【請求項8】
前記Yが酸素原子であり、前記Bがアルカリ金属原子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾ[c]ヘテロ5員環化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−335737(P2006−335737A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164889(P2005−164889)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(393021967)イハラニッケイ化学工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】