説明

ベントナイト添加率測定装置及び遮水層における遮水性判定方法

【課題】 遮水層のベントナイト添加率を多くの測定地点で短時間に測定することの出来るベントナイト添加率測定装置及び遮水層における遮水性判定方法の提供。
【解決手段】 ベントナイト混合土から造成される遮水層11の、ベントナイト添加率を測定する装置1。ベントナイト混合土の誘電率を測定して出力する手段6、ベントナイト混合土の種類別の誘電率とベントナイト添加率との関係を示した添加率判定データDATAを格納するメモリ5、サンプル地点の誘電率とベントナイト添加率を入力する入力部3、入力されたサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、添加率判定データDATAを参照して、遮水層を構成するベントナイト混合土の種類に応じた添加率判定データを選択する手段7、遮水層表面に設定された測定地点の誘電率及び選択された添加率判定データに基づいて、測定地点のベントナイト添加率を演算して出力する手段7,10からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物処分場などの構築物において、ベントナイト混合土を用いて施工される遮水層に対して、施工後にベントナイト量を測定することの出来る、ベントナイト添加率測定装置及び遮水層における遮水性判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の構築物においては、環境汚染や公害防止などの観点から、遮水層の遮水性が所定の性能を有している必要がある。即ち、遮水層の透水係数が遮水層の全面について、所定の透水係数以下であることが望まれる。遮水層の遮水性能を示す透水係数は、当該遮水層を造成する際に使用したベントナイト混合土における、ベントナイト添加率と相関があることから、施工された遮水層が所定の透水係数を保持しているか否かを判定するためには、施工されたベントナイト混合土のベントナイト添加率を測定することにより、行うことが出来る。
【0003】
ベントナイト添加率を測定する方法は、各種提案されている(特許文献1〜6)が、いずれもサンプル採取から添加率を得るまでの測定作業に長時間を要したり、誤差が大きかったりなどの欠点があり、いまだ実用的なレベルには達していない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−212939号公報
【特許文献2】特開2001−4619号公報
【特許文献3】特開2000−346819号公報
【特許文献4】特開平11−64206号公報
【特許文献5】特開平8−110290号公報
【特許文献6】特開平9−318543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、一般的にこうした産業廃棄物処分場は広大な面積で造成されており、検査すべき遮水層の面積も極めて大きく、造成された遮水層がその全面に渡って所定の遮水性能を維持しているかを測定するためには、出来るだけ多くの測定点でベントナイト添加率が所定の値を維持しているか否かを測定する必要があるが、こうした多点測定を短時間で行うことが可能なベントナイト添加率測定装置は未だ開発されていないのが現状である。
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明は、施工済み遮水層において、ベントナイト添加率を多くの測定地点で短時間に測定することの出来るベントナイト添加率測定装置及び遮水層における遮水性判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ベントナイト混合土から造成される遮水層(11)の、ベントナイト添加率を測定するベントナイト添加率測定装置(1)において、
前記ベントナイト混合土の誘電率を測定して出力する誘電率測定手段(6)、
前記ベントナイト混合土の種類別の、誘電率とベントナイト添加率との関係を示した添加率判定データ(DATA)を格納するメモリ(5)、
サンプル地点の誘電率とベントナイト添加率を入力する入力部(3)、
前記入力部(3)から入力されるサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、前記添加率判定データ(DATA)を参照して、前記遮水層を構成するベントナイト混合土の種類に応じた前記添加率判定データを選択する判定データ抽出手段(7)、及び、
前記誘電率測定装置から入力される前記遮水層の表面に設定された測定地点の誘電率及び前記判定データ抽出手段により選択された前記添加率判定データに基づいて、前記測定地点のベントナイト添加率を演算して、その結果を出力する、ベントナイト添加率演算出力手段(7,10)、
を有して構成される。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記入力部から入力されるサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、前記添加率判定データを参照して、前記遮水層を構成するベントナイト混合土の種類を判定する混合土種判定手段(7)を有し、
前記判定データ抽出手段は、前記混合土種判定手段により判定されたベントナイト混合土の種類に対応した前記添加率判定データを選択することを特徴として構成される。
【0009】
また、請求項3の発明は、遮水層における遮水性判定方法の発明であって、ベントナイト混合土から造成される遮水層の、ベントナイト添加率を、前記遮水層の表面に複数設定された測定地点においてそれぞれ測定して、前記遮水層の遮水性を判定する遮水性の判定方法において、
前記ベントナイト混合土の種類別の、誘電率とベントナイト添加率との関係を示した添加率判定データを準備しておき、
遮水層に設定されたサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率を測定し、
該サンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、当該遮水層を構成するベントナイト混合土の種類に応じた前記添加率判定データを選択し、
前記複数の測定地点における誘電率を測定し、それら測定された誘電率及び前記選択された添加率判定データに基づいて、前記測定地点のベントナイト添加率を演算し、
それら演算された複数の測定地点におけるベントナイト添加率から前記遮水層の遮水性能を判定するようにして、
構成される。
【0010】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであり、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであって、特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、請求項1に係る発明によれば、ベントナイト添加率を測定すべき遮水層のベントナイト添加率を、誘電率測定装置(6)により各測定地点の誘電率を順次測定することにより直ちに演算して求めることが出来、施工済み遮水層において、ベントナイト添加率を多くの測定地点で短時間に測定することの出来る。
【0012】
請求項2の発明によれば、混合土種判定手段により、遮水層を構成するベントナイト混合土の種類を直ちに知ることが出来る。
【0013】
請求項3の発明によれば、多数の測定地点のベントナイト添加率を求めることにより、広大な遮水層の全面に渡る遮水性能の測定を短時間に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、ベントナイト添加率測定装置の一例を示すブロック図、図2は含水比別のベントナイト添加率と誘電率との関係を示す図、図3は含水比が10%のベントナイト混合土を使用した場合の、締固め度別に測定したベントナイト混合土のベントナイト添加率と誘電率との関係を示す図、図4は含水比が12%のベントナイト混合土を使用した場合の、締固め度別に測定したベントナイト混合土のベントナイト添加率と誘電率との関係を示す図、図5は、図1のベントナイト添加率測定装置に実装される、誘電率とベントナイト添加率との関係を示す添加率判定データの一例を示す図。
【0016】
ベントナイト添加率測定装置1は、図1に示すように、主制御部2を有しており、主制御部2には、バス線4を介してキーボードなどの入力部3,判定データメモリ5,誘電率測定装置6、添加率演算部7及びディスプレイ等の出力部10などが接続している。
【0017】
ベントナイト添加率測定装置1は、以上のような構成を有するので、ベントナイト添加率測定装置1を用いて、廃棄物処分場の底面やのり面に、ベントナイト混合土により構築された遮水層11のベントナイト量測定を、ベントナイト混合土に対するベントナイト添加率により測定する際には、まず、測定すべき遮水層11の適宜な地点で、サンプルを1カ所から数カ所、採取し、当該サンプルを分析して、遮水層11を構成するベントナイト混合土におけるベントナイト添加率を測定する。このベントナイト添加率の測定は、公知の手法で行なう。
【0018】
こうして、測定すべき遮水層11の適宜な地点でのベントナイト混合土のベントナイト添加率が、採取したサンプルから判明したところで、当該判明したベントナイト添加率を、ベントナイト添加率測定装置1の入力部3を介して主制御部2に入力する。
【0019】
また、判定データメモリ5には、添加率判定データDATAが格納されている。添加率判定データDATAは、図5に示すように、遮水層11の構築に使用されるベントナイト混合土を複数種類に分類し、それら分類されたベントナイト混合土別に、誘電率とベントナイト添加率との関係を示したものである。一般的に、遮水層11の構築に使用されるベントナイト混合土は、誘電率の観点から見た場合、数種類に分類されることが判っている。
【0020】
ところで、遮水層11を構成するベントナイト混合土は、その締固め度、含水比及びベントナイト添加率に応じてその誘電率が変化する。図2に、締固め度Dcを95%とした場合の、含水比Wをパラメータとした、ベントナイト混合土の誘電率とベントナイト添加率との関係を示す。
【0021】
また、図3及び図4に、ベントナイト混合土の含水比Wをそれぞれ10%及び12%とした場合の、締固め度Dcをパラメータとした、ベントナイト混合土の誘電率とベントナイト添加率との関係を示す。
【0022】
通常、産業廃棄物処分場の遮水層11としては、含水比Wが10〜16%、締固め度Dcが85〜95%で施工されることが多く、また使用されるベントナイト混合土の種類も数種類と限られている。そこで、遮水層構築に使用される、数種類のベントナイト混合土について、上記した図2乃至図4で示したような各種の締固め度及び含水比における誘電率とベントナイト添加率の測定結果を求め、それらから、遮水層で使用されるベントナイト混合土の含水比Wが10〜16%、締固め度Dcが85〜95%の範囲について、ベントナイト混合土の種類別に、複数の測定実験(図5の場合は、各ベントナイト混合土別に100(=N)測定)の測定結果の平均値を求めたのが、図5に示す添加率判定データDATAである。
【0023】
そこで、前述のように、サンプル採取及び分析により求められたベントナイト添加率をベントナイト添加率測定装置1の入力部3から入力すると共に、その際のサンプル地点の誘電率を誘電率測定装置6により測定する。サンプル地点の遮水層11の誘電率が誘電率測定装置6から添加率演算部7に入力されると、添加率演算部7は、入力されたサンプル地点のベントナイト添加率とその際の誘電率測定装置6により測定された誘電率から、判定データメモリ5内に格納された添加率判定データDATAを参照して、これからの測定に際して使用すべき誘電率とベントナイト添加率との関連を示すデータとして、どの種類のベントナイト混合土についてのデータを使用するかを決定する。即ち、これから測定すべき遮水層11のベントナイト混合土の種類を、サンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から判定する。
【0024】
こうして、例えば、添加率演算部7が、入力されたサンプル地点のベントナイト添加率と誘電率測定装置6で測定された当該サンプル地点の誘電率から、遮水層11の構築に使用されているベントナイト混合土が、添加率判定データDATAにおいて、ベントナイト混合土Bに分類されるデータと対応するものと判定した場合には、測定に使用すべき添加率判定データDATAとして、図5に示す、ベントナイト混合土Bに関するデータDATAを採用する。
【0025】
この状態で、ベントナイト添加率測定装置1を持って、構築済みの産業廃棄物処分場の遮水層11の表面に設定された多数の測定地点に、図1に示す誘電率測定装置6を遮水層11の表面11aに押しつける形で設置し、当該測定地点の誘電率を測定する。誘電率測定装置6で測定された誘電率は、添加率演算部7に出力され、添加率演算部7は、当該測定された誘電率と、ベントナイト混合土Bの添加率判定データDATAから、対応するベントナイト添加率を演算し、得られたベントナイト添加率を、出力部10に出力する。
【0026】
オペレータは、出力部10に印字又は表示された当該測定地点のベントナイト添加率を見て、当該測定地点のベントナイト添加率、従ってベントナイト量が遮水層11の構築に適した値を満足しているか否かを判断する。なお、所定のベントナイト添加率の基準値を図示しないメモリ中に格納しておき、当該測定地点のベントナイト添加率が遮水層11としての基準値に達しているか否かを判定して、その判定結果をベントナイト添加率と共に(又は、ベントナイト添加率の出力に代えて)出力部10に出力するようにしてもよい。
【0027】
こうして、ある測定地点の遮水層11のベントナイト混合土におけるベントナイト添加率が判明したところで、オペレータは順次次の測定地点に移動し、同様な手順でそれらの測定地点のベントナイト添加率を求めてゆき、廃棄物処分場の全体の遮水層11全面に渡り、多数の測定地点のベントナイト添加率を連続的に測定してゆく。遮水層11のベントナイト混合土の種類は、既にサンプル地点での誘電率とベントナイト添加率から判定されているので、その後の各測定地点のベントナイト添加率の測定は、判定されたベントナイト混合土の種類に対応して選択された添加率判定データDATAと各測定地点で誘電率測定装置6により測定される誘電率から、直ちに演算することが出来る。
【0028】
こうして、産業廃棄物処分場の遮水層11の多数の測定地点において、ベントナイト添加率を測定することにより、構築された遮水層11の遮水性能を、当該遮水層11の全面について、詳細に判定することが出来る。例えば、ある測定地点のベントナイト添加率が、所定の基準値を下回る値で測定された場合には、当該部分に、ベントナイトの混合ムラがあるものと判定されるので、直ちに当該部分のベントナイト混合土を入れ替えて、補修工事を行うことが出来、信頼性の高い施工が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
遮水性能を適切に担保した形の信頼性の高い産業廃棄物処分場の施工に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、ベントナイト添加率測定装置の一例を示すブロック図。
【図2】図2は含水比別のベントナイト添加率と誘電率との関係を示す図。
【図3】図3は含水比が10%のベントナイト混合土を使用した場合の、締固め度別に測定したベントナイト混合土のベントナイト添加率と誘電率との関係を示す図。
【図4】図4は含水比が12%のベントナイト混合土を使用した場合の、締固め度別に測定したベントナイト混合土のベントナイト添加率と誘電率との関係を示す図。
【図5】図5は、図1のベントナイト添加率測定装置に実装される、誘電率とベントナイト添加率との関係を示す添加率判定データの一例を示す図。
【符号の説明】
【0031】
1……ベントナイト添加率測定装置
3……入力部
5……メモリ
6……誘電率測定装置
7……添加率演算部
10……出力部
11……遮水層
DATA……添加率判定データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイト混合土から造成される遮水層の、ベントナイト添加率を測定するベントナイト添加率測定装置において、
前記ベントナイト混合土の誘電率を測定して出力する誘電率測定手段、
前記ベントナイト混合土の種類別の、誘電率とベントナイト添加率との関係を示した添加率判定データを格納するメモリ、
サンプル地点の誘電率とベントナイト添加率を入力する入力部、
前記入力部から入力されるサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、前記添加率判定データを参照して、前記遮水層を構成するベントナイト混合土の種類に応じた前記添加率判定データを選択する判定データ抽出手段、及び、
前記誘電率測定装置から入力される前記遮水層の表面に設定された測定地点の誘電率及び前記判定データ抽出手段により選択された前記添加率判定データに基づいて、前記測定地点のベントナイト添加率を演算して、その結果を出力する、ベントナイト添加率演算出力手段、
を有する、ベントナイト添加率測定装置。
【請求項2】
前記入力部から入力されるサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、前記添加率判定データを参照して、前記遮水層を構成するベントナイト混合土の種類を判定する混合土種判定手段を有し、
前記判定データ抽出手段は、前記混合土種判定手段により判定されたベントナイト混合土の種類に対応した前記添加率判定データを選択することを特徴とする、
請求項1記載のベントナイト添加率測定装置。
【請求項3】
ベントナイト混合土から造成される遮水層の、ベントナイト添加率を、前記遮水層の表面に複数設定された測定地点においてそれぞれ測定して、前記遮水層の遮水性を判定する遮水性の判定方法において、
前記ベントナイト混合土の種類別の、誘電率とベントナイト添加率との関係を示した添加率判定データを準備しておき、
遮水層に設定されたサンプル地点の誘電率とベントナイト添加率を測定し、
該サンプル地点の誘電率とベントナイト添加率から、当該遮水層を構成するベントナイト混合土の種類に応じた前記添加率判定データを選択し、
前記複数の測定地点における誘電率を測定し、それら測定された誘電率及び前記選択された添加率判定データに基づいて、前記測定地点のベントナイト添加率を演算し、
それら演算された複数の測定地点におけるベントナイト添加率から前記遮水層の遮水性能を判定するようにして、
構成した、遮水層における遮水性判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−162336(P2006−162336A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351415(P2004−351415)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】