説明

ベントフィルタおよびベントフィルタの製造方法

【課題】取付け部とフィルタ部が接着剤などで固着されていた従来品よりも防水性や防塵性に優れたベントフィルタおよびベントフィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】ベントフィルタ10は、筐体12の開口部26の周囲に嵌め込んで固定する環状の取付け部16と、取付け部16の内孔を塞ぐように配されて、気体を透過し、且つ液体の透過を防止する多孔質体からなるフィルタ部18とを備えている。取付け部16とフィルタ部18は一体形成されてなる一体物となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性や防水性、防塵性を有し、例えば、家電製品や自動車部品、精密機器、医療器具等に設けられた密閉容器に配されて、当該容器の内圧変化による亀裂や変形の防止や、容器の内外の温度差に起因する結露の防止や、通気対策などに適用されるベントフィルタと、そのベントフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベントフィルタとしては、通気性や防水性、防塵性を有するフィルタ部を、環状に形成された取付け部の内孔に固着することによって、取付け部の内孔をフィルタ部で塞いだものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構造のベントフィルタにおいて、フィルタ部の外周と取付け部の内周は、接着剤を用いて固着されていた。また、フィルタ部と取付け部は、加熱溶着や超音波溶着、振動溶着などを用いて固着されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のベントフィルタでは、取付け部とフィルタ部との間に固着不良が生じると、その固着不良箇所を通じて密閉容器の外部から内部に水や塵が侵入するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、本発明の目的は、取付け部とフィルタ部が接着剤などで固着されていた従来品よりも防水性や防塵性に優れたベントフィルタおよびベントフィルタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために為された請求項1に記載の発明は、筐体の壁部に設けられた開口部に固定され、前記筐体の内外間で気体が出入りするのを許容するが、前記筐体の外部から内部へ液体が浸入するのを阻止するベントフィルタであって、前記筐体の開口部の周囲に嵌め込んで固定する環状の取付け部と、前記取付け部の内孔を塞ぐように配されて、前記気体を透過し、且つ前記液体の透過を防止する多孔質体からなるフィルタ部とを備え、前記取付け部と前記フィルタ部とが一体形成されてなる一体物であることを特徴とする。
【0007】
このような本発明のベントフィルタにおいては、取付け部とフィルタ部とが一体物とされているため、取付け部とフィルタ部とが接着剤で固着されるベントフィルタと異なり、接着剤による接着箇所において接着不良が生じることに起因して取付け部とフィルタ部との間に隙間が生じる、といった問題を招くことがない。したがって、取付け部とフィルタ部が接着剤で固着されていた従来品よりも防水性や防塵性に優れ、筐体の外部から内部への水や塵が侵入するのを、より確実に防止することができる。
【0008】
しかも、本発明では、取付け部とフィルタ部とが一体形成されるものなので、取付け部とフィルタ部とをそれぞれ別に形成した後に互いに組み付けるベントフィルタと異なり、取付け部とフィルタ部との組み付け工程が必要ない。したがって、取付け部とフィルタ部との組み付け工程が必要なベントフィルタよりも、製造工程を減らすことができ、生産性の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明のベントフィルタでは、例えば請求項2に記載されているように、前記取付け部は合成樹脂にて形成され、前記フィルタ部は「前記合成樹脂と一体形成が可能であり、材料内の空隙が外部応力によって変形し、気密状態になる多孔質材料」にて形成されており、前記フィルタ部と同一の前記多孔質材料からなり、前記取付け部と一体形成されて、該取付け部を前記筐体の壁部の開口部に嵌め込んで固定する際に、前記取付け部と前記開口部の周囲の間で圧縮変形されることによって、前記多孔質材料における内部の空隙を潰して、前記取付け部と前記開口部の周囲の間の隙間を流体密に塞ぐシール部を備える構造を採用しても良い。
【0010】
このような本発明によれば、シール部が取付け部と一体形成された構造とされているので、シール部を備えていないベントフィルタと異なり、ベントフィルタと筐体の開口部の周囲との間をシールする際に、別途シール部材をベントフィルタと筐体との間に取り付けることが不要になる。それ故、ベントフィルタと筐体との取付け構造において、別途シール部材を設けたベントフィルタよりも、部品点数が削減されることによって、低コスト化が図られる。
【0011】
また、シール部とフィルタ部には、同一の材料が用いられているため、シール部とフィルタ部を互いに異なる材料で形成する場合に比して、ベントフィルタの成形型の構造が簡単になり、それによって、低コスト化が図られる。
【0012】
さらに、フィルタ部は、圧縮変形可能な多孔質体にて形成されていることから、変形しない多孔質体と比べて、外部からの接触に伴う衝撃の吸収力に優れている。したがって、この衝撃吸収力に基づいて、外部からフィルタ部への接触によるフィルタ部の破損を抑えることが出来る。
【0013】
なお、上述の多孔質材料としては、例えば、多孔質の熱可塑性エラストマや多孔質の架橋ゴムなどが採用される。この架橋ゴムには、例えば、天然ゴムやイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ふっ素ゴムなどが採用される。
【0014】
特に請求項3に記載のように、多孔質材料が多孔質の熱可塑性エラストマであると、熱可塑性エラストマは高温で可塑化されることから、取付け部の材料である合成樹脂との一体形成が可能になる。また、多孔質の熱可塑性エラストマは、その内部の空隙を利用して、フィルタ部を形成することが出来る。更に、多孔質の熱可塑性エラストマは、そのゴム的な特性を利用して、圧縮変形させることが出来、その結果、内部の空隙を潰して、実質的に非孔質の熱可塑性エラストマとなり、シール部を形成することが出来る。
【0015】
また、上述の課題を解決するために為された請求項4に記載の発明は、上記ベントフィルタを製造する製造方法であって、第一の樹脂材料と、前記第一の樹脂材料と一体形成可能な第二の樹脂材料に対して溶出用固体物を混合してなる混合物とを、順次又は同時に射出成形することにより、前記第一の樹脂材料で形成された第一の部分と前記混合物で形成された第二の部分が一体形成された中間成形品を得る工程と、前記中間成形品の前記第二の部分から前記溶出用固体物を溶出させる処理を施して、前記第二の部分を多孔質化することにより、前記第一の部分からなる前記取付け部と多孔質化された前記第二の部分からなる前記フィルタ部とを備えた前記ベントフィルタを得る工程とを有することを特徴とする。
【0016】
このようなベントフィルタの製造方法によれば、二つの部分を一体形成した後に、第二の部分から溶出用固体物を溶出させるという特徴的な方法で、第二の部分にフィルタ部としての機能を付与することができるので、事前に多孔質化された部分を硬質樹脂部分に溶着するといった手順を踏まなくても、先に説明したような構造を持つ本発明のベントフィルタを製造することができる。
【0017】
なお、溶出用固体物には、例えば、水や湯で溶かし出すことが可能な固体アルコールや塩の他、水や湯に限らずとも酸やアルカリ、油などを用いて溶かし出すことが可能な固体が採用され、或いは、液体を使わずとも高温下に放置するだけで溶かし出すことが可能な固体が採用される。
【0018】
また、上述のベントフィルタの製造方法において、例えば請求項5に記載されているように、前記溶出用固体物は固体アルコールであり、前記第一の樹脂材料及び前記第二の樹脂材料が溶解せず且つ前記固体アルコールが溶解する溶媒に、前記中間成形品を浸漬することにより、前記中間成形品の前記第二の部分から前記固体アルコールを溶出させる方法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態としてのベントフィルタを筐体の壁部に取り付けた状態を示す図面であって、(a)はその正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)はその側面図であり、(d)は(b)のD―D断面図であり、(e)は(d)におけるEの部分拡大図である。
【図2】図1のベントフィルタを筐体の壁部に取り付けた状態を示す図面であって、(a)はその左斜め上から見た斜視図であり、(b)はその右斜め上から見た斜視図である。
【図3】図1のベントフィルタを示す図面であって、(a)はその側面図であり、(b)はその斜め上から見た斜視図である。
【図4】図1のベントフィルタの一部を構成するボルト部を示す図面であって、(a)はその正面図であり、(b)はその底面図であり、(c)はその背面図であり、(d)は斜め上から見た斜視図であり、(e)は(a)のE―E断面図である。
【図5】図1のベントフィルタを筐体の壁部に取り付ける一工程を示す図面であって、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は(a)のC―C断面図であり、(d)は(c)におけるDの部分拡大図である。
【図6】本発明の第2実施形態としてのベントフィルタを筐体の壁部に取り付けた状態を示す図面であって、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は(a)のC―C断面図であり、(d)は(c)におけるDの部分拡大図である。
【図7】図6のベントフィルタを筐体の壁部に取り付けた状態を示す図面であって、(a)はその右斜め上から見た斜視図であり、(b)はその左斜め上から見た斜視図である。
【図8】図6のベントフィルタを示す図面であって、(a)はその縦断面図であって(d)のA―A断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその斜め上から見た斜視図であり、(d)はその正面図であり、(e)はその底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1,2には、本発明の第1実施形態としてのベントフィルタ10が筐体12の壁部14に取り付けられた状態が示されている。なお、図1,2,5,6,7では、筐体12の全体を示しておらず、筐体12の壁部14の一部分を切り欠いた状態を示してある。
【0021】
ベントフィルタ10は、図3に示されるように、取付け部16とフィルタ部18とシール部20を含んで構成されている。
取付け部16は、互いに螺着可能な構造のボルト部材22とナット部材24からなり、全体として環状になっている。また、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン樹脂(ABS樹脂)やポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)等の合成樹脂を用いて形成されている。
【0022】
ボルト部材22は、図4に示されるように、中空の六角ボルト状になっており、その内側においてボルト部材22の軸方向に延びる内孔が、ヘッド部22aと雄ネジ部22bの軸方向端面にそれぞれ開口している。
【0023】
フィルタ部18は、多孔質の熱可塑性エラストマ(本発明の請求項2に記載の多孔質材料に相当する)からなり、取付け部16のボルト部材22と一体形成されている。フィルタ部18は、ボルト部材22のヘッド部22aの内側で内孔を塞ぐ位置に配されている。
【0024】
シール部20は、フィルタ部18と同じ多孔質の熱可塑性エラストマからなり、取付け部16のボルト部材22と一体形成されている。シール部20は、ボルト部材22のヘッド部22aにおいて雄ネジ部22b側の軸方向端面の外周側に設けられ、周方向に連続して延びる環状とされている。
【0025】
このようなベントフィルタ10を筐体12に取り付けるには、図5に示されているように、ボルト部材22の雄ネジ部22bを、筐体12の外部から、筐体12の壁部14に設けられた開口部26に挿し通して、筐体12の内側に突出させる。また、ボルト部材22のシール部20を介して、ボルト部材22のヘッド部22aを壁部14における開口部26の周囲の外周面に重ね合わせる(図5(d)参照)。
【0026】
また、筐体12の内側において、ナット部材24をボルト部材22の雄ネジ部22bに螺着して、壁部14における開口部26の周囲の内周面に重ね合わせる(図1参照)。雄ネジ部22bとナット部材24との螺着力により、ボルト部材22のヘッド部22aとナット部材24が壁部14の開口部26の周囲を挟み込む。
【0027】
また、この挟み込みにより、ヘッド部22aと壁部14の開口部26の周囲との間に配されたシール部20が、ヘッド部22aとナット部材24との対向方向(即ち取付け部16の軸方向)に圧縮変形して、ヘッド部22aと壁部14の開口部26の周囲との間を流体密にシールする(図1(e)参照)。
【0028】
これにより、ボルト部材22およびナット部材24からなる取付け部16が筐体12の壁部14に取り付けられて、ベントフィルタ10が筐体12に取り付けられる。
また、このベントフィルタ10は、例えば、以下に説明する製造方法により得られる。先ず、第一の樹脂材料として、ABS樹脂やPC樹脂、PA樹脂等の合成樹脂を準備する。そして、図示しないナット部材24の成形型を用いて、第一の樹脂材料を射出成形することにより、ナット部材24を得る。
【0029】
また、合成樹脂と一体形成可能な第二の樹脂材料として、熱可塑性エラストマを準備し、この熱可塑性エラストマに対してペレット状乃至は粉末状の固体アルコール(本発明の請求項3に記載の溶出用固体物に相当する)を所定の重量%(例えば、30〜80重量%)で混練して、混合物を得る。
【0030】
また、図示しないボルト部材22及びフィルタ部18の成形型を用いて、これら合成樹脂と混合物とを射出成形(例えば二色成形)することにより、合成樹脂で形成された第一の部分と混合物で形成された第二の部分が一体形成された中間成形品を得る。
【0031】
また、合成樹脂及び熱可塑性エラストマが溶解せず且つ固体アルコールが溶解する溶媒(例えば水又は湯)に中間成形品を浸漬して、中間成形品の第二の部分から固体アルコールを溶出させることによって、第二の部分を多孔質化する。
【0032】
これにより、第一の部分からなるボルト部材22と多孔質化された第二の部分からなるフィルタ部18とが一体形成されてなる一体物を得る。また、別途、図示しないナット部材24の成形型を用いて、第一の樹脂材料を射出成形することにより、ナット部材24を得る。それによって、ベントフィルタ10が得られる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のベントフィルタ10においては、取付け部16(ボルト部材22)とフィルタ部18とが一体物とされているため、取付け部16とフィルタ部18とが接着剤で固着されるベントフィルタと異なり、取付け部16とフィルタ部18との間に隙間が生じない。したがって、取付け部16とフィルタ部18が接着剤で固着されていた従来品よりも防水性や防塵性に優れ、筐体の外部から内部への水や塵の侵入が防止される。
【0034】
特に本実施形態では、取付け部16とフィルタ部18とシール部20とが一体形成されることにより、取付け部16とフィルタ部18とシール部材とをそれぞれ別に形成した後に互いに組み付けるベントフィルタと異なり、取付け部16とフィルタ部18とシール部材との組み付け工程が必要ない。それ故、組み付け工程が必要なベントフィルタよりも、工程が短縮されることに基づいて、生産性の向上が図られる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、図6,7には、本発明の第2実施形態としてのベントフィルタ30が筐体12の壁部14に取り付けられた状態が示されている。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位については、第1実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0036】
ベントフィルタ30は、図8に示されるように、取付け部32とフィルタ部18とシール部20とが一体形成された構造になっている。
取付け部32は、大径部32aと大径部32aよりも外径寸法が小さな小径部32bとが軸方向に連なった略段付き円筒形状になっており、ABS樹脂やPC樹脂、PA樹脂等の合成樹脂を用いて形成されている。また、小径部32bの外周面には、径方向に圧縮変形する樹脂ばね構造の係止爪部34が、周方向に離隔して複数突設されている。
【0037】
フィルタ部18は、取付け部32と一体形成されて、大径部32aの内孔を塞ぐ位置に配されている。また、シール部20は、取付け部32と一体形成されて、大径部32aにおいて小径部32bに向かう側の軸方向端面の略全体に亘って被着されている。特に本実施形態では、フィルタ部18とシール部20とが取付け部32の内側において直接に連結されている。
【0038】
このようなベントフィルタ30を筐体12に取り付けるには、取付け部32の小径部32bを、筐体12の外部から筐体12の壁部14の開口部26に挿し通して、小径部32bの係止爪部34を開口部26の内壁部に当接させて径方向内方に圧縮変形させつつ、筐体12の内側に突出させる。
【0039】
係止爪部34が開口部26を通り抜けて、開口部26の内壁部との当接状態が解除されると、係止爪部34が弾性復元力により初期の形状に戻り、開口部26よりも径方向外方に突出して、筐体12の内側で開口部26の周囲に係止される。また、この係止と略同時に、シール部20を介して、取付け部32の大径部32aを壁部14における開口部26の周囲の外周面に重ね合わせる。
【0040】
係止爪部34が開口部26の周囲に係止される際の弾性変形によるばね力に基づいて、取付け部32の大径部32aと係止爪部34が壁部14の開口部26の周囲を挟み込む。この挟み込みにより、大径部32aと壁部14の開口部26の周囲との間に配されたシール部20が、取付け部16の軸方向に圧縮変形して、大径部32aと壁部14の開口部26の周囲との間を流体密にシールする。
【0041】
これにより、取付け部32が筐体12の壁部14に取り付けられて、ベントフィルタ30が筐体12に取り付けられる。
以上説明したように、本実施形態のベントフィルタ30においては、第1実施形態と同様に、取付け部32とフィルタ部18とシール部20が一体物とされているため、取付け部32とフィルタ部18との間に隙間が生じないことから、防水性や防塵性に優れたものとなる。しかも、取付け部16とシール部材との組み付け工程が必要ないことから、組み付け工程が必要なベントフィルタよりも、製造工程が少なくなり、生産性の向上が図られる。
【0042】
特に本実施形態では、取付け部32が1部材にて形成されているので、取付け部16がボルト部材22とナット部材24との2部材からなる第1実施形態よりも、部品点数が削減されることから、取付け部32の取り扱いが容易になる。
【0043】
また、本実施形態では、フィルタ部18とシール部20とが取付け部32の内側において直接に連結されていることから、フィルタ部18とシール部20とを直接に連結しないものに比して、成形型の構造が簡単になる。
【0044】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0045】
例えば、前記実施形態では、フィルタ部18が、取付け部16のボルト部材22のヘッド部22aの内側や、取付け部32の大径部32aの内側に配されていたが、ボルト部材22の雄ネジ部22bの内側や、取付け部32の小径部32bの内側に配されても良いし、取付け部16,32の内側の全体に配されても良い。
【0046】
また、取付け部16,32の形状や大きさ、構造等の態様は、筐体12の開口部26の態様に応じて適宜に設計変更されるものであり、第1実施形態の取付け部16や第2実施形態の取付け部32の態様に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
10…ベントフィルタ、12…筐体、14…壁部、16…取付け部、18…フィルタ部、26…開口部、30…ベントフィルタ、32…取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の壁部に設けられた開口部に固定され、前記筐体の内外間で気体が出入りするのを許容するが、前記筐体の外部から内部へ液体が浸入するのを阻止するベントフィルタであって、
前記筐体の開口部の周囲に嵌め込んで固定する環状の取付け部と、
前記取付け部の内孔を塞ぐように配されて、前記気体を透過し、且つ前記液体の透過を防止する多孔質体からなるフィルタ部とを備え、
前記取付け部と前記フィルタ部とが一体形成されてなる一体物であることを特徴とするベントフィルタ。
【請求項2】
前記取付け部は合成樹脂にて形成され、
前記フィルタ部は「前記合成樹脂と一体形成が可能であり、材料内の空隙が外部応力によって変形し、気密状態になる多孔質材料」にて形成されており、前記フィルタ部と同一の前記多孔質材料からなり、前記取付け部と一体形成されて、該取付け部を前記筐体の壁部の開口部に嵌め込んで固定する際に、前記取付け部と前記開口部の周囲の間で圧縮変形されることによって、前記多孔質材料における内部の空隙を潰して、前記取付け部と前記開口部の周囲の間の隙間を流体密に塞ぐシール部を備えることを特徴とする請求項1に記載のベントフィルタ。
【請求項3】
前記多孔質材料は多孔質の熱可塑性エラストマであることを特徴とする請求項2に記載のベントフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のベントフィルタを製造する製造方法であって、
第一の樹脂材料と、前記第一の樹脂材料と一体形成可能な第二の樹脂材料に対して溶出用固体物を混合してなる混合物とを、順次又は同時に射出成形することにより、前記第一の樹脂材料で形成された第一の部分と前記混合物で形成された第二の部分が一体形成された中間成形品を得る工程と、
前記中間成形品の前記第二の部分から前記溶出用固体物を溶出させる処理を施して、前記第二の部分を多孔質化することにより、前記第一の部分からなる前記取付け部と多孔質化された前記第二の部分からなる前記フィルタ部とを備えた前記ベントフィルタを得る工程と
を有することを特徴とするベントフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記溶出用固体物は固体アルコールであり、
前記第一の樹脂材料及び前記第二の樹脂材料が溶解せず且つ前記固体アルコールが溶解する溶媒に、前記中間成形品を浸漬することにより、前記中間成形品の前記第二の部分から前記固体アルコールを溶出させることを特徴とする請求項4に記載のベントフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−98326(P2011−98326A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256455(P2009−256455)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】