説明

ベーカリー食品及びその製造方法

【課題】食味形状に悪影響を与えることなく、経時的品質劣化が抑制され、保存安定性に優れ、且つ、ソフトな食感、しっとりした食感など改善されたテクスチャー(食感)を有するベーカリー食品、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】小麦粉を主原料とする原料穀粉100質量部に対して、α化した加工ワキシーポテトスターチ0.2〜10質量部を含有する材料を用いて製造されたベーカリー食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的な品質劣化が顕著に抑制され、保存安定性に優れしかも食感が改善されたベーカリー食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の食品業界は全般に亘ってソフト化の傾向にあり、ベーカリー食品に於いてもソフトな食感或いはしっとりした食感を有する製品が望まれている。またベーカリー食品は通常焼成後経時的に硬くなり、好ましくない食感となり、品質が劣化又は低下する。この品質劣化の主原因は澱粉の老化に依ると考えられており、その防止策として糖類、乳化剤、増粘剤等の添加が行われ、ある程度の劣化防止効果を発揮しているが、必ずしも十分ではない。
ベーカリー食品の食感改良、例えばパン類をソフトな食感にする方法として、冷水には膨潤しない加工澱粉とグルテンで小麦粉の一部を置き換える方法(特許文献1)が提案されているが、好ましい置き換え量が10〜20質量%と多く、コストアップとなる難点を有していた。また、澱粉を糊化して添加する方法も行われているが、通常の澱粉類の場合、糊化条件を厳しく限定しないと、一定の品質の製品を得ることが困難であるばかりでなく、十分な効果が得られる量を添加すると、パン類の気泡が荒くなる欠点を有していた。
【0003】
さらに、未加工の小麦粉、とうもろこし、あるいは馬鈴薯を原料とするα化澱粉を添加する方法(特許文献2)も提案されている。しかし、これらのα化澱粉を添加した場合、生地の粘着性が高まり、成形性等の作業性に難点を有する他、得られたパン類も口溶けの悪いものとなる。
また、特許文献3には、冷水膨潤度4.0〜35のα化架橋澱粉を添加して、ソフトな食感を有し、且つ経時的な品質劣化を改善したパン類の製造法が開示されている。この方法によれば目的とする効果は顕著に見られるが、ケービング即ち、パン類を焼成後冷やした時のちぢみ、特に山型パンの側面がくぼむ問題を残していた。
膨潤容積或いは膨潤度を限定した加工澱粉の使用も提案されている。例えば、特許文献4には、加熱溶解度が8%以下であって、60メッシュの篩いを通過しない区分が5%以下の粒子状を有し、冷水膨潤度(Sc)と加熱膨潤度(Sh)の比が1.2≧Sc/Sh≧0.8の関係にあり、且つ冷水膨潤度が4〜15であることを特徴とする加工澱粉を原料の一部として使用することを特徴とするベーカリー食品が開示されている。この加工澱粉を使用することにより、ベーカリー食品の食感を改善し、品質劣化を抑制することができるが、その効果は必ずしも充分とはいえない。
【0004】
一方、特許文献5には、原料の一部に膨潤抑制澱粉、特に特定の加熱溶解度と膨潤度を有する架橋澱粉を使用することにより、体積が大きく、食感に優れ、しかも経時変化の少ない菓子類を製造する方法が開示されている。さらに特許文献6には、ヒドロキシプロピル澱粉及び/又はアセチル澱粉、特にタピオカを原料とするヒドロキシプロピル澱粉及び/又はアセチル澱粉を原料の一部として使用することにより、内相、食感及び口どけに優れ、経時変化の少ない菓子類を製造する方法が開示されている。
しかしながら、これらの加工澱粉の使用による菓子類の食感改良及び経時的品質劣化抑制効果は必ずしも満足できるものではなく、さらなる改良が求められている。
また、特許文献7にはヒドロキシプロピル化架橋ワキシーポテトスターチを含む食用組成物が開示されている。該ヒドロキシプロピル化架橋ワキシーポテトスターチを含む変性スターチは、その特性から食品増粘剤として用いられることが示されているが、それ以外の用途、特にベーカリー食品の品質劣化抑制(保存安定性)や食感改良に有用であることについては教示も示唆もない。さらにそれをα化したヒドロキシプロピル化架橋ワキシーポテトスターチのベーカリー食品への用途については全く開示されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平3−87135号公報
【特許文献2】特開昭59−175845号公報
【特許文献3】特開平5−79287号公報
【特許文献4】特許第2989039号公報
【特許文献5】特開平7−75479号公報
【特許文献6】特開平8−242752号公報
【特許文献7】特許第2893003号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ベーカリー食品にあって、何ら食味形状に悪影響を与えることなく、経時的品質劣化が抑制され、保存安定性に優れ、且つ、ソフトな食感、しっとりした食感など改善されたテクスチャー(食感)を有するベーカリー食品、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題はベーカリー食品の製造に際し、α化した加工ワキシーポテトスターチ(α化加工ワキシーポテトスターチとも言う)を原料の一部として使用することによって解決される。
本発明者らは、前記課題を解決する為に鋭意検討した結果、α化加工ワキシーポテトスターチが、従来の加工澱粉、あるいはタピオカ由来の加工澱粉に比べて、ベーカリー食品の品質改良や品質劣化抑制効果において顕著に優れていることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は,以下に示す、経時的品質劣化が抑制され、保存安定性に優れ、且つ、ソフトな食感、しっとりした食感など改善されたテクスチャー(食感)を有するベーカリー食品、及びベーカリー食品の品質改良方法を提供する。
1.小麦粉を主原料とする原料穀粉100質量部に対して、α化した加工ワキシーポテトスターチ0.2〜10質量部を含有する材料を用いて製造されたベーカリー食品。
2.加工ワキシーポテトスターチが、エーテル化又はエステル化ワキシーポテトスターチである前記1記載のベーカリー食品。
3.エーテル化ワキシーポテトスターチが、ヒドロキシプロピル化ワキシーポテトスターチである前記1又は2記載のベーカリー食品。
4.エステル化ワキシーポテトスターチが、アセチル化又はリン酸化ワキシーポテトスターチである、前記2に記載のベーカリー食品。
5.加工ワキシーポテトスターチがさらにリン酸架橋されている、前記2〜4のいずれか1項記載のベーカリー食品。
6.ベーカリー食品が、ケーキ類、ドーナツ類、クッキー及びビスケット類から選択される前記1〜5のいずれか1項記載のベーカリー食品。
7.α化した加工ワキシーポテトスターチを含むことを特徴とするベーカリー食品用品質改良剤。
8. 小麦粉を主原料とする原料穀粉100質量部に対して、α化した加工ワキシーポテトスターチ0.2〜10質量部を含有する材料を用いることを特徴とするベーカリー食品の製造方法。
9.α化した加工ワキシーポテトスターチが、α化したエーテル化架橋ワキシーポテトスターチである前記8記載のベーカリー食品の製造方法。
10.ベーカリー食品が、ケーキ類、ドーナツ類、クッキー及びビスケット類から選択される前記8又は9記載のベーカリー食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的少量のα化した加工ワキシーポテトスターチ、特にα化したエーテル化又はエステル化架橋ワキシーポテトスターチを原料の一部として使用することにより、品質劣化が顕著に抑制された、しかも食感に優れたベーカリー食品を製造することができるので、流通特性に優れた高品質のベーカリー食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でいうベーカリー食品は、小麦粉を主原料とし、好ましくは小麦粉を全体の15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上含有し、必要に応じてライ麦粉、コーンフラワー、グラハムフラワー、米粉等の穀粉を含む穀粉原料に、少なくとも水、食塩及び気泡を生じせしめる材料を加え、更にそれぞれの食品を製造する上で必要な副材料を加えて生地を形成し、これを加熱調理して含水率が約2〜50%とした食品であって、加熱調理前又は加熱調理中にイースト、ベーキングパウダー、全卵、卵白等によって大なり小なり気泡を生じせしめた食品であり、具体的にはオーブンで焼成するスポンジケーキ、パウンドケーキなどのケーキ類、油で揚げるドーナツ、フリッター、蒸気で加熱される蒸しケーキ、中華饅頭、鉄板で焼かれるパンケーキ、クレープ、グリドルケーキ等が例示される。この他、クッキー、ビスケット類も本発明のベーカリー食品に含まれる。尚、本明細書に於いて、%は特に断らない限り質量%を示す。
【0010】
この内、本発明で特に推奨されるベーカリー食品としては、イーストを使用しないで製造されるベーカリー食品、具体的にはスポンジケーキ、パウンドケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ、マフィンなどのケーキ類、油で揚げるドーナツ、フリッター、鉄板で焼かれるパンケーキ、クレ−プ、グリドルケーキ、ショートブレッド、ソフトクッキー、スコーンなどのクッキー類、及びビスケット類が例示される。
尚、ここで用いられる副材料は、一般にベーカリー食品の製造に際して用いられている糖類、乳製品、油脂類、乳化剤、香料、香辛料、人工甘味料、着色料、洋酒類、ナッツ類、ココアパウダー等である。
また、本発明のベーカリー食品の材料処方は、近年ベーカリー食品の製造工程の合理化や流通上の理由で利用される冷蔵生地や冷凍生地にも適用できる。
【0011】
本発明において、ベーカリー食品の材料の一部に使用するα化した加工ワキシーポテトスターチとしては、市販のワキシーポテトスターチ、例えばアベベ社のエリアン(商標)に、エーテル化剤又はエステル化剤を作用させてワキシーポテトスターチのエーテル化又はエステル化置換誘導体とし、次いでα化して得られる加工ワキシーポテトスターチが挙げられる。なお、本発明におけるワキシーポテトスターチは、高アミロペクチン(アミロペクチン含量95質量%以上)のポテトスターチを意味する。
加工ワキシーポテトスターチは、ワキシーポテトスターチにエーテル化剤又はエステル化剤のみを作用させて得られるエーテル化又はエステル化ワキシーポテトスターチであっても良いが、好ましくはさらに架橋反応を行ったエーテル化架橋ワキシーポテトスターチ又はエステル化架橋ワキシーポテトスターチであり、さらに好ましくは、エーテル化架橋ワキシーポテトスターチである。エーテル化架橋ワキシーポテトスターチは、好ましくはヒドロキシプロピル化架橋ワキシーポテトスターチである。
【0012】
このような加工ワキシーポテトスターチは、常法に従ってワキシーポテトスターチにエーテル化剤又はエステル化剤のみを反応させるか、或いは架橋剤とエーテル化剤又はエステル化剤を反応させて得られる。この際の架橋剤としては、メタリン酸塩、オキシ塩化リン、エピクロルヒドリン、アクロレイン等が例示される。
エーテル化剤としてはプロピレンオキサイド、モノクロル酢酸ソーダ等が例示され、より好ましくはプロピレンオキサイドが用いられる。
また、エステル化剤としては、無水酢酸、酢酸ビニールモノマー、オルトリン酸塩、無水コハク酸等が例示され、好ましくは無水酢酸又は酢酸ビニールモノマーが用いられる。
このようにして得られる加工ワキシーポテトスターチは、そのままベーカリー食品に使用しても良いが、本発明の効果を充分に発揮するためにはこれをα化し、α化加工ワキシーポテトスターチとしてベーカリー食品に使用するのが好ましい。
α化加工ワキシーポテトスターチは、加工ワキシーポテトスターチを、澱粉のα化に用いられている一般的な方法でα化することによって製造することが出来る。
なお、α化加工ワキシーポテトスターチは市販されており、例えば、アベベ社から商品名エリアンVC120又はエリアンBC160(エリアンはアベベ社の商標)として入手することも出来る。
【0013】
かくして得られるα化加工ワキシーポテトスターチは、ベーカリー食品を製造するに際し、該食品の原料穀粉100質量部に対し、0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜8質量部添加することにより、経時的品質劣化が顕著に抑制され、且つ、ソフトな食感、しっとりした食感などの改善された食感を有するベーカリー食品を製造することができる。
ベーカリー食品の製造法には様々の方法があり、製品の種類も多種多様であるが、本発明も基本的には従来の製造工程、製造条件を踏襲でき、従来の一連の製造工程の中で、生地調製過程に於ける混合、起泡、混捏のいずれかの工程で本発明に使用する加工澱粉を原料の一部として配合すればよい。
【0014】
一般にベーカリー食品には食塩、イースト、イーストフード、砂糖、油脂類、卵、脱脂粉乳等の基本的な材料として使用されるものの他に、目的に応じて種々の材料が用いられている。例えば、全乳、濃縮乳、ヨーグルト、チーズ等の乳製品、ブドウ糖、ソルビット、水あめ、異性化糖、トレハロース、オリゴ糖類、還元澱粉分解物、マルトデキストリン等の糖類やデキストリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、グルテン、大豆蛋白、卵黄、卵白等の蛋白質、ジュランガム、カラギーナン、アルギン酸ソーダ、コーンスターチ等の多糖類、プロテアーゼ、アミラーゼ等の酵素剤、レーズン等の乾燥果実の他、洋酒類、香辛料、人工甘味料、高甘味度甘味料、着色料、着香料、ナッツ類、ココアパウダー、保存料等が挙げられ、本発明に於いてもこれらを必要に応じ適宜用いることができる。
このようにして得られるベーカリー食品は、一般的に用いられる方法で、食感を含む品質及びその経時変化を調べることにより、α化加工ワキシーポテトスターチの効果を確認することが出来る。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を示し、本発明を説明する。但し、部とあるのは質量部を示す。
実施例1
薄力粉100部に対し、原料及び種々の加工澱粉を5部の割合で配合し、表1の処方で、シュガーバッター法により生地を作製した。その300gをパウンド型に分注し、上下火170℃のオーブンで35分焼成してパウンドケーキを製造した。これを室温で一ヶ月間保存し、製品の外観(形状)、食感及びその経時的変化を調べた。使用した加工ワキシーポテトスターチの種類及び製品名は表1の下段に示した。









【0016】
表1

【0017】
1:未加工ワキシーポテトスターチ(アベベ社の未加工ワキシーポテトスターチをα化した製品)
2:エーテル化ワキシーポテトスターチ(未加工品をヒドロキシプロピル化し、次いでα化した試作品)
3:エステル化ワキシーポテトスターチ(アセチル化ワキシーポテトスターチ(エリアンGE300)をα化した製品)
4:エーテル化架橋ワキシーポテトスターチ(ヒドロキシプロピル化ワキシーポテトスターチをリン酸ジエステル架橋した後、α化した製品(エリアンVC120))
5:エステル化架橋ワキシーポテトスターチ(アセチル化ワキシーポテトスターチをリン酸ジエステル架橋した後、α化した製品(エリアンBC160))
6:エーテル化タピオカ澱粉をα化した製品(マツノリンTG600)
7:エーテル化架橋タピオカ澱粉をα化した製品(プリジェルVA70T)
8:エーテル化架橋ワキシーコーンスターチをα化した製品(松谷マーガレットをα化したもの)
【0018】
製造したパウンドケーキの外観(形状)は、表2に示す段階によって評価した。
表2

また、食感の経時的変化は、表3に示す段階によって評価した。
【0019】
表3

食感の経時変化を調べた結果を表4に示す。
【0020】
表4

【0021】
表4の結果から、α化した加工ワキシーポテトスターチ、特にエーテル化ワキシーポテトスターチの添加がパウンドケーキの品質劣化防止に有効であることが明らかとなった。なお、加工の違いによる外観の差は認められなかった。
【0022】
実施例2
α化加工ワキシーポテトスターチとして、α化したエーテル化架橋ワキシーポテトスターチ(エリアンVC120)の配合を原料穀粉100部に対して0〜20部の範囲で変化させて、実施例1と同様の処方でパウンドケーキを製造し、製品の外観及び食感を評価した。なお、食感はしっとり感と口どけ感に分けて評価した。その結果を表5に示す。
【0023】
表5

表5の結果から、α化したエーテル化架橋ワキシーポテトスターチを0.5〜10部の割合で配合することにより、無添加に比べて食感及び外観の両方が改良された高品質のパウンドケーキ製品が得られることが明らかとなった。
【0024】
実施例3
α化加工ワキシーポテトスターチとして、α化したエーテル化架橋ワキシーポテトスターチ(エリアンVC120)を薄力粉100部に対して0〜20部の範囲で変化させて配合し、表6の処方でシュガーバッター法により生地を作製した。その28gをマドレーヌ型に分注し、上火200℃、下火170℃で11分焼成してマドレーヌを製造した。実施例2と同様に製品の外観及び食感を評価した。








【0025】
表6

その結果を表7に示す。
【0026】
表7

表7の結果より、α化したエーテル化架橋ワキシーポテトスターチを0.5〜10部の割合で配合することにより、無添加に比べて食感及び外観の両方が改良された高品質のマドレーヌ製品が得られることが明らかとなった。
【0027】
実施例4
表8の処方により、スコーンを試作した。
表8

【0028】
予め、小麦粉、エリアンVC120、上白糖、食塩、ベーキングパウダーを混合して篩いにかけておき、これにコンパウンドマーガリンを混ぜ合わせて生地を調製する。全卵、濃縮乳及び水を混ぜ合わせて均質化し、これを生地と混ぜ合わせる。練り上げた生地を2cmの厚さに延ばし、直径5cmの抜き型で抜く(生地質量60g)。生地表面に液卵を塗った後、上火180℃、下火170℃で25分焼成して製品とする。
このようにして製造したスコーンはコントロールに比べてしっとり感に優れ、経時的品質劣化の少ない製品であることが確認された。
【0029】
実施例5
表9の処方により、ソフトクッキーを試作した。
表9

【0030】
卓上縦型ミキサーにより、表9の材料を記載順に混合して生地を調製する。これをラップで包み、冷蔵庫中で30分保持する。次いで生地を7mm厚に延ばし、内径55mmの丸型で抜き、アルミ板に乗せて上火170℃、下火150℃の電気炉で12分焼成して試作品とする。
このようにして試作したソフトクッキーは、コントロールに比べてしっとり感に優れ、経時的品質劣化の少ないことが確認された。
【0031】
実施例6
表10の処方で、オールインミックス法によりドーナッツ(オールドファッションタイプ)を試作した。
表10

【0032】
薄力粉、加工澱粉、上白糖、食塩、脱脂粉乳及びベーキングパウダーを篩いにかけた混合物に、ショートニング、全卵、牛乳及び水を加え、ミキサーボール中、ビーターで混捏する(Lで2分、MHで1分、捏ね上げ温度22℃)。10分間のフロア-タイムの後、リバースシーターで6mm厚に延ばし、生地質量約40gにカットする。これを170℃で2分間フライして試作品とする。
このようにして試作したドーナツは、コントロールに比べていずれもしっとり感に優れ、経時的品質劣化が少ないことが確認され、特に試作品2が食感及び品質劣化抑制において最も優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を主原料とする原料穀粉100質量部に対して、α化した加工ワキシーポテトスターチ0.2〜10質量部を含有する材料を用いて製造されたベーカリー食品。
【請求項2】
加工ワキシーポテトスターチが、エーテル化又はエステル化ワキシーポテトスターチである請求項1記載のベーカリー食品。
【請求項3】
エーテル化ワキシーポテトスターチが、ヒドロキシプロピル化ワキシーポテトスターチである請求項1又は2記載のベーカリー食品。
【請求項4】
エステル化ワキシーポテトスターチが、アセチル化又はリン酸化ワキシーポテトスターチである、請求項2に記載のベーカリー食品。
【請求項5】
加工ワキシーポテトスターチがさらにリン酸架橋されている、請求項2〜4のいずれか1項記載のベーカリー食品。
【請求項6】
ベーカリー食品が、ケーキ類、ドーナツ類、クッキー及びビスケット類から選択される請求項1〜5のいずれか1項記載のベーカリー食品。
【請求項7】
α化した加工ワキシーポテトスターチを含むことを特徴とするベーカリー食品用品質改良剤。
【請求項8】
小麦粉を主原料とする原料穀粉100質量部に対して、α化した加工ワキシーポテトスターチ0.2〜10質量部を含有する材料を用いることを特徴とするベーカリー食品の製造方法。
【請求項9】
α化した加工ワキシーポテトスターチが、α化したエーテル化架橋ワキシーポテトスターチである請求項8記載のベーカリー食品の製造方法。
【請求項10】
ベーカリー食品が、ケーキ類、ドーナツ類、クッキー及びビスケット類から選択される請求項8又は9記載のベーカリー食品の製造方法。

【公開番号】特開2007−325526(P2007−325526A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158527(P2006−158527)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】