ベーカリー食品用うるち米粉及びこれを使用したベーカリー食品
【課題】ベーカリー食品に適したうるち米粉及びこれを使用したベーカリー食品を提供すること。
【解決手段】粗粒画分と細粒画分が6:4〜4:6の割合のうるち米粉であって、前記粗粒画分は目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、前記細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6%以下であるベーカリー食品用うるち米粉である。また、このうるち米粉を使用したベーカリー食品であるである。
【解決手段】粗粒画分と細粒画分が6:4〜4:6の割合のうるち米粉であって、前記粗粒画分は目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、前記細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6%以下であるベーカリー食品用うるち米粉である。また、このうるち米粉を使用したベーカリー食品であるである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー食品用うるち米粉及びこれを使用したベーカリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米粉を使用してパン等のベーカリー食品が製造されているが、使用する米粉について
様々な改良が試みられている。
そのなかでも米粉の粒度に着目した例として、例えば、うるち米から得られた米粉を主原料とするパンを製造するためのプレミックス粉であって、うるち米から得られた米粉の全量を100質量部とした場合、粒度100〜600メッシュのα化米粉4〜8質量部と、粒度100〜600メッシュの未α化米粉92〜96質量部とを含有し、実質的にグルテンを含まないことを特徴とするプレミックス粉が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、米粉80〜85重量部とグルテン20〜15重量部とからなる穀粉100重量部と、マルトース1〜30重量部とを含んでなるパン・菓子用米粉組成物であって、前記米粉が胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉または高速回転打撃製粉により得られたものである米粉組成物でその米粉の粒度が、140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20〜50重量%含む米粉組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。
また、小麦粉70〜95質量部および米粉5〜30質量部を含有するパン用穀粉組成物であって、前記小麦粉および米粉が、下記(i)および(ii)の特性;(i)原料を硬質小麦とし、その粒度分布において粒径50〜90μmの範囲に最大頻度を有するとともに、粒径が26〜105μmの粒子が75%以上である小麦粉;および(ii)粳米を原料米とし、その粒度分布において粒径50〜90μmの範囲に最大頻度を有するとともに、粒径が26〜105μmの粒子が50%以上であり、且つ粒径が125μm以上の粒子が15%以下である米粉;を有するものであることを特徴とするパン用穀粉組成物が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−215401号公報
【特許文献2】特開2009−22306号公報
【特許文献3】特開2010−124776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ベーカリー食品に適したうるち米粉及びこれを使用したベーカリー食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、米粉の粒度及びその損傷澱粉量に着目し、米粉を特定の損傷澱粉量を有する粗粒画分と細粒画分から構成することにより、パンでは口溶けの良い食感で、ほどよいパンボリュームとなり、スポンジケーキでは、滑らかで口溶けの良い食感となり、クッキーでは、崩壊感のある食感で、口溶けの優れた食感となることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、粗粒画分と細粒画分が6:4〜4:6の割合のうるち米粉であって、前記粗粒画分は目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、前記細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6%以下であるベーカリー食品用うるち米粉である。
また、このベーカリー食品用うるち米粉を使用したベーカリー食品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明粉のうるち米粉を使用したベーカリー食品は、パンでは口溶けの良い食感で、ほどよいパンボリュームとなり、スポンジケーキでは、滑らかで口溶けの良い食感となり、クッキーでは、崩壊感のある食感で、口溶けの優れた食感となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ベーカリー食品とは、パン、スポンジケーキ、ドーナツ、クッキーなど生地をイースト発酵や膨張剤を使用して膨化して製造する食品をいい、具体的には、 食パン、フランスパン、ロールパン、菓子パン、調理パン、ピザ等のパン類や、スポンジケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ、カップケーキ、バウムクーヘンなどのケーキ類、マフィン、マドレーヌ、フィナンシェ、クッキー、ビスケット、クラッカー等の焼き菓子類、イーストドーナツ、ケーキドーナツ等のドーナツ類、蒸しパン、蒸しケーキ、中華マン、スコーンなどが挙げられる。
【0008】
本発明のうるち米粉の原料となる、うるち米の品種には特に限定はなく、アミロース含量が18%以上22%以下である「あきたこまち」や「コシヒカリ」などの普通品種やアミロース含量が23質量%以上である「越のかおり」や「モミロマン」などの高アミロース品種が使用できる。
【0009】
本発明のうるち米粉の製造方法は、粗粒画分と細粒画分の損傷澱粉量と粒度分布が本発明の範囲に入るように粉砕できれば、粉砕方法には特に限定はなく胴搗き製粉、ロール製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等の粉砕方法が使用でき、得られた米粉は、篩分、空気分級などによりその粒度分布を調整することができる。
本発明のうるち米粉は、粗粒画分と細粒画分を別々に粉砕して粒度分布及び損傷澱粉量を調整してこれを混合することにより得ることができる。
【0010】
本発明は、粗粒画分と細粒画分の割合が6:4〜4:6であり粗粒画分と細粒画分と2つの粒度のピークを有する。
単に粉砕し分級などの粒度調整を行わない米粉には、このような2つの粒度ピークは生じない。
なお、粗粒画分と細粒画分の割合が6:4〜4:6とは、粗粒画分が60質量部で細粒画分が40質量部である構成から粗粒画分の割合が減少し、細粒画分の割合が増加することで粗粒画分が40質量部で細粒画分が60質量部となるまでの粗粒画分と細粒画分の割合をいう。
【0011】
本発明の粗粒画分は、目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6質量%以下である。
本発明では、粗粒画分の損傷澱粉量が細粒画分より多いところに特徴がある。
損傷澱粉は、製粉時の圧力・剪断・熱などの物理的な力により澱粉粒が開裂して生じるので粒度が細かい場合のほうが、粒度が粗い場合に比べ損傷澱粉量が多くなる傾向がある。
本発明では、粗粒画分の損傷澱粉量が細粒画分の損傷澱粉量より多くなるように損傷澱粉量を調整している。
このような損傷澱粉を持つ米粉は単に粉砕しただけでは上記のとおり得ることができない。
本発明では、粗粒画分と細粒画分を別々に製粉してこれを混合することで、粗粒画分の損傷澱粉量が細粒画分の損傷澱粉量より多い米粉を調製している。
本発明の粗粒画分の損傷澱粉が7質量%未満では団子になる食感となり不適となり、13質量%を超えるとボリュームが小さくなり不適となる。
本発明の細粒画分の損傷澱粉が3質量%未満では、団子になる食感となり不適となり、6%を超えるとボリュームが小さくなり不適となる。
なお、本発明の損傷澱粉の量はAACC法で測定した値である。
前記AACC法の原理は、物理的な損傷を受けた生澱粉がα−アミラーゼによって分解され易いことを利用したものであり、一定条件下でα−アミラーゼ処理したときに分離してきたマルトースを定量し、計算により、澱粉損傷度として表したものである。
市販のキット(例えばMegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)で測定可能である。
【0012】
本発明のうるち米粉は、火通りが良く、従来のベーカリー用小麦粉の代替として膨化して製造するベーカリー食品全般に使用でき、その際に特別な操作を必要としない。
小麦粉の代替として使用する割合に特に限定はないが、米粉を使用した特長を生かすためには、30質量%以上100質量%を代替使用することが好ましい。
【実施例】
【0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[米粉パン]
表1に示す粗粒画分(損傷澱粉10.5質量%)と細粒画分(損傷澱粉4.2質量%)の割合を有する米粉80質量部、バイタルグルテン20質量部、塩2質量部、砂糖5質量部、イースト2.5質量部、水70質量部を低速2分間、中速5分間ミキシングし、ショートニング5質量部を加え、さらに低速2分間、中速5分間ミキシングしパン生地を得た。
このパン生地を分割して室温で15分間放置し、整形後、38℃、湿度85%で50分間発酵し、210℃で30分間焼成して米粉パンを得た。
体積を測定後、1時間室温で放冷しビニールに包装し翌日、以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
体積は製品1個をナタネ置換法により測定した値である。
得られた結果を表1に示す。
・食感
5点 かなり口溶けが良く、非常に良い
4点 口溶けが良く、良い
3点 普通
2点 団子になり、悪い
1点 かなり団子になり、非常に悪い
【0014】
【表1】
【0015】
実施例1〜3はボリューム、食感ともに優れていた。
比較例1は体積、食感ともに劣っていた。
比較例2は体積は優れていたが食感が劣っていて満足できる結果ではなかった。
【0016】
[スポンジケーキ]
卓上ミキサー(ホバート社製、N−50)を使用して全卵140質量部、砂糖140質量部及び水15質量部をホイッパーで高速2分間、中速3分間、低速30秒間、攪拌した。
これに表2に示す粗粒画分(損傷澱粉8.2質量%)と細粒画分(損傷澱粉4.0質量%)の割合を有する米粉100質量部を加え、ビーターで低速30秒間混ぜ合わせた。
得られた生地を直径18cmのスポンジケーキ型に350g流し入れ180℃で30分間焼成しスポンジケーキを得た。
このスポンジケーキをスポンジケーキ型から取り出して粗熱をとってからビニール袋に包装し、翌日、以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
得られた結果を表2に示す。
・食感(口溶け)
5点 かなり口溶けが良く、非常に良い
4点 口溶けが良く、良い
3点 普通
2点 口溶けが悪く団子になり、悪い
1点 かなり口溶けが悪く団子になり、非常に悪い
・食感(滑らかさ)
5点 かなり滑らかで、非常に良い
4点 滑らかで良い
3点 普通
2点 ざらつきが有り悪い
1点 かなりざらつきが有り、非常に悪い
【0017】
【表2】
【0018】
実施例4〜6は、口溶け、滑らかさとも優れていた。
比較例3は、口溶けは優れていたが滑らかさに劣り満足できる結果ではなかった。
比較例4は、滑らかさは優れていたが口溶けが劣り満足できる結果ではなかった。
【0019】
[クッキー]
重曹0.4質量部、重炭酸アンモニウム0.5質量部、水22質量部、上白糖46質量部、食塩0.8質量部、脱脂粉乳3質量部を低速1分でミキシングし生地を得た。
この生地にショートニング30質量部を加えさらに、低速1分、中速3分、高速3分でミキシングし、これに表3に示す粗粒画分(損傷澱粉11.9質量%)と細粒画分(損傷澱粉5.5質量%)の割合を有する米粉100質量部を合わせて生地をまとめ400gの棒状に伸ばした。
この棒状に伸ばした生地を6等分し天板の上に麺棒で厚さ0.7cmに延ばし直径6cmのセルクルで抜き上火210℃、下火210℃のオーブンで14分間焼成してクッキーを得た。
焼成後、室温で30分間冷却し、ビニール袋に包装し、翌日、以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
得られた結果を表3に示す。
・食感(口溶け)
5点 口溶けが良く、非常に良い
4点 やや口溶けが良く、良い
3点 普通
2点 やや口溶けが悪く、悪い
1点 かなり口溶けが悪く、非常に悪い
・食感(崩壊感)
5点 かなり崩壊感が有り、非常に良い
4点 崩壊感が有り、良い
3点 普通
2点 崩壊感が無く、やや口溶けが悪く、悪い
1点 かなり崩壊感が無く、口溶けが悪く、非常に悪い
【0020】
【表3】
【0021】
実施例7〜9は口溶け、崩壊感ともに優れていた。
比較例5は、特に口溶けが劣っていた。
比較例6は、特に崩壊感が劣っていた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー食品用うるち米粉及びこれを使用したベーカリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米粉を使用してパン等のベーカリー食品が製造されているが、使用する米粉について
様々な改良が試みられている。
そのなかでも米粉の粒度に着目した例として、例えば、うるち米から得られた米粉を主原料とするパンを製造するためのプレミックス粉であって、うるち米から得られた米粉の全量を100質量部とした場合、粒度100〜600メッシュのα化米粉4〜8質量部と、粒度100〜600メッシュの未α化米粉92〜96質量部とを含有し、実質的にグルテンを含まないことを特徴とするプレミックス粉が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、米粉80〜85重量部とグルテン20〜15重量部とからなる穀粉100重量部と、マルトース1〜30重量部とを含んでなるパン・菓子用米粉組成物であって、前記米粉が胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉または高速回転打撃製粉により得られたものである米粉組成物でその米粉の粒度が、140メッシュの篩上に残る区分と200メッシュの篩上に残る区分とを合計して20〜50重量%含む米粉組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。
また、小麦粉70〜95質量部および米粉5〜30質量部を含有するパン用穀粉組成物であって、前記小麦粉および米粉が、下記(i)および(ii)の特性;(i)原料を硬質小麦とし、その粒度分布において粒径50〜90μmの範囲に最大頻度を有するとともに、粒径が26〜105μmの粒子が75%以上である小麦粉;および(ii)粳米を原料米とし、その粒度分布において粒径50〜90μmの範囲に最大頻度を有するとともに、粒径が26〜105μmの粒子が50%以上であり、且つ粒径が125μm以上の粒子が15%以下である米粉;を有するものであることを特徴とするパン用穀粉組成物が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−215401号公報
【特許文献2】特開2009−22306号公報
【特許文献3】特開2010−124776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ベーカリー食品に適したうるち米粉及びこれを使用したベーカリー食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、米粉の粒度及びその損傷澱粉量に着目し、米粉を特定の損傷澱粉量を有する粗粒画分と細粒画分から構成することにより、パンでは口溶けの良い食感で、ほどよいパンボリュームとなり、スポンジケーキでは、滑らかで口溶けの良い食感となり、クッキーでは、崩壊感のある食感で、口溶けの優れた食感となることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、粗粒画分と細粒画分が6:4〜4:6の割合のうるち米粉であって、前記粗粒画分は目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、前記細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6%以下であるベーカリー食品用うるち米粉である。
また、このベーカリー食品用うるち米粉を使用したベーカリー食品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明粉のうるち米粉を使用したベーカリー食品は、パンでは口溶けの良い食感で、ほどよいパンボリュームとなり、スポンジケーキでは、滑らかで口溶けの良い食感となり、クッキーでは、崩壊感のある食感で、口溶けの優れた食感となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ベーカリー食品とは、パン、スポンジケーキ、ドーナツ、クッキーなど生地をイースト発酵や膨張剤を使用して膨化して製造する食品をいい、具体的には、 食パン、フランスパン、ロールパン、菓子パン、調理パン、ピザ等のパン類や、スポンジケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ、カップケーキ、バウムクーヘンなどのケーキ類、マフィン、マドレーヌ、フィナンシェ、クッキー、ビスケット、クラッカー等の焼き菓子類、イーストドーナツ、ケーキドーナツ等のドーナツ類、蒸しパン、蒸しケーキ、中華マン、スコーンなどが挙げられる。
【0008】
本発明のうるち米粉の原料となる、うるち米の品種には特に限定はなく、アミロース含量が18%以上22%以下である「あきたこまち」や「コシヒカリ」などの普通品種やアミロース含量が23質量%以上である「越のかおり」や「モミロマン」などの高アミロース品種が使用できる。
【0009】
本発明のうるち米粉の製造方法は、粗粒画分と細粒画分の損傷澱粉量と粒度分布が本発明の範囲に入るように粉砕できれば、粉砕方法には特に限定はなく胴搗き製粉、ロール製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等の粉砕方法が使用でき、得られた米粉は、篩分、空気分級などによりその粒度分布を調整することができる。
本発明のうるち米粉は、粗粒画分と細粒画分を別々に粉砕して粒度分布及び損傷澱粉量を調整してこれを混合することにより得ることができる。
【0010】
本発明は、粗粒画分と細粒画分の割合が6:4〜4:6であり粗粒画分と細粒画分と2つの粒度のピークを有する。
単に粉砕し分級などの粒度調整を行わない米粉には、このような2つの粒度ピークは生じない。
なお、粗粒画分と細粒画分の割合が6:4〜4:6とは、粗粒画分が60質量部で細粒画分が40質量部である構成から粗粒画分の割合が減少し、細粒画分の割合が増加することで粗粒画分が40質量部で細粒画分が60質量部となるまでの粗粒画分と細粒画分の割合をいう。
【0011】
本発明の粗粒画分は、目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6質量%以下である。
本発明では、粗粒画分の損傷澱粉量が細粒画分より多いところに特徴がある。
損傷澱粉は、製粉時の圧力・剪断・熱などの物理的な力により澱粉粒が開裂して生じるので粒度が細かい場合のほうが、粒度が粗い場合に比べ損傷澱粉量が多くなる傾向がある。
本発明では、粗粒画分の損傷澱粉量が細粒画分の損傷澱粉量より多くなるように損傷澱粉量を調整している。
このような損傷澱粉を持つ米粉は単に粉砕しただけでは上記のとおり得ることができない。
本発明では、粗粒画分と細粒画分を別々に製粉してこれを混合することで、粗粒画分の損傷澱粉量が細粒画分の損傷澱粉量より多い米粉を調製している。
本発明の粗粒画分の損傷澱粉が7質量%未満では団子になる食感となり不適となり、13質量%を超えるとボリュームが小さくなり不適となる。
本発明の細粒画分の損傷澱粉が3質量%未満では、団子になる食感となり不適となり、6%を超えるとボリュームが小さくなり不適となる。
なお、本発明の損傷澱粉の量はAACC法で測定した値である。
前記AACC法の原理は、物理的な損傷を受けた生澱粉がα−アミラーゼによって分解され易いことを利用したものであり、一定条件下でα−アミラーゼ処理したときに分離してきたマルトースを定量し、計算により、澱粉損傷度として表したものである。
市販のキット(例えばMegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)で測定可能である。
【0012】
本発明のうるち米粉は、火通りが良く、従来のベーカリー用小麦粉の代替として膨化して製造するベーカリー食品全般に使用でき、その際に特別な操作を必要としない。
小麦粉の代替として使用する割合に特に限定はないが、米粉を使用した特長を生かすためには、30質量%以上100質量%を代替使用することが好ましい。
【実施例】
【0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[米粉パン]
表1に示す粗粒画分(損傷澱粉10.5質量%)と細粒画分(損傷澱粉4.2質量%)の割合を有する米粉80質量部、バイタルグルテン20質量部、塩2質量部、砂糖5質量部、イースト2.5質量部、水70質量部を低速2分間、中速5分間ミキシングし、ショートニング5質量部を加え、さらに低速2分間、中速5分間ミキシングしパン生地を得た。
このパン生地を分割して室温で15分間放置し、整形後、38℃、湿度85%で50分間発酵し、210℃で30分間焼成して米粉パンを得た。
体積を測定後、1時間室温で放冷しビニールに包装し翌日、以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
体積は製品1個をナタネ置換法により測定した値である。
得られた結果を表1に示す。
・食感
5点 かなり口溶けが良く、非常に良い
4点 口溶けが良く、良い
3点 普通
2点 団子になり、悪い
1点 かなり団子になり、非常に悪い
【0014】
【表1】
【0015】
実施例1〜3はボリューム、食感ともに優れていた。
比較例1は体積、食感ともに劣っていた。
比較例2は体積は優れていたが食感が劣っていて満足できる結果ではなかった。
【0016】
[スポンジケーキ]
卓上ミキサー(ホバート社製、N−50)を使用して全卵140質量部、砂糖140質量部及び水15質量部をホイッパーで高速2分間、中速3分間、低速30秒間、攪拌した。
これに表2に示す粗粒画分(損傷澱粉8.2質量%)と細粒画分(損傷澱粉4.0質量%)の割合を有する米粉100質量部を加え、ビーターで低速30秒間混ぜ合わせた。
得られた生地を直径18cmのスポンジケーキ型に350g流し入れ180℃で30分間焼成しスポンジケーキを得た。
このスポンジケーキをスポンジケーキ型から取り出して粗熱をとってからビニール袋に包装し、翌日、以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
得られた結果を表2に示す。
・食感(口溶け)
5点 かなり口溶けが良く、非常に良い
4点 口溶けが良く、良い
3点 普通
2点 口溶けが悪く団子になり、悪い
1点 かなり口溶けが悪く団子になり、非常に悪い
・食感(滑らかさ)
5点 かなり滑らかで、非常に良い
4点 滑らかで良い
3点 普通
2点 ざらつきが有り悪い
1点 かなりざらつきが有り、非常に悪い
【0017】
【表2】
【0018】
実施例4〜6は、口溶け、滑らかさとも優れていた。
比較例3は、口溶けは優れていたが滑らかさに劣り満足できる結果ではなかった。
比較例4は、滑らかさは優れていたが口溶けが劣り満足できる結果ではなかった。
【0019】
[クッキー]
重曹0.4質量部、重炭酸アンモニウム0.5質量部、水22質量部、上白糖46質量部、食塩0.8質量部、脱脂粉乳3質量部を低速1分でミキシングし生地を得た。
この生地にショートニング30質量部を加えさらに、低速1分、中速3分、高速3分でミキシングし、これに表3に示す粗粒画分(損傷澱粉11.9質量%)と細粒画分(損傷澱粉5.5質量%)の割合を有する米粉100質量部を合わせて生地をまとめ400gの棒状に伸ばした。
この棒状に伸ばした生地を6等分し天板の上に麺棒で厚さ0.7cmに延ばし直径6cmのセルクルで抜き上火210℃、下火210℃のオーブンで14分間焼成してクッキーを得た。
焼成後、室温で30分間冷却し、ビニール袋に包装し、翌日、以下の評価基準で10名のパネラーによる評価を行った。
得られた結果を表3に示す。
・食感(口溶け)
5点 口溶けが良く、非常に良い
4点 やや口溶けが良く、良い
3点 普通
2点 やや口溶けが悪く、悪い
1点 かなり口溶けが悪く、非常に悪い
・食感(崩壊感)
5点 かなり崩壊感が有り、非常に良い
4点 崩壊感が有り、良い
3点 普通
2点 崩壊感が無く、やや口溶けが悪く、悪い
1点 かなり崩壊感が無く、口溶けが悪く、非常に悪い
【0020】
【表3】
【0021】
実施例7〜9は口溶け、崩壊感ともに優れていた。
比較例5は、特に口溶けが劣っていた。
比較例6は、特に崩壊感が劣っていた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗粒画分と細粒画分が6:4〜4:6の割合のうるち米粉であって、前記粗粒画分は目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、前記細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6%以下であるベーカリー食品用うるち米粉。
【請求項2】
請求項1に記載のベーカリー食品用うるち米粉を使用したベーカリー食品。
【請求項1】
粗粒画分と細粒画分が6:4〜4:6の割合のうるち米粉であって、前記粗粒画分は目開き250μmの篩を通過し目開き75μmの篩上に残る量が全体の70質量%以上でかつ損傷澱粉が7質量%以上13質量%以下であり、前記細粒画分は、目開き100μmの篩を90質量%以上通過しかつ損傷澱粉が3質量%以上6%以下であるベーカリー食品用うるち米粉。
【請求項2】
請求項1に記載のベーカリー食品用うるち米粉を使用したベーカリー食品。
【公開番号】特開2013−74832(P2013−74832A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216374(P2011−216374)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
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