説明

ベーグル類の製造方法

【課題】 従来のベーグル類と比較して、弾力性があり、且つもちもち感、しっとり感が増すなど優れた食感を有すると同時に、その優れた食感が経時的に低下しにくいベーグル類の製造方法を提供することである。
【解決手段】 成型した生地を高温で発酵させ、次いで低温下で保持した後に茹でて焼成することによってベーグル類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性があり、且つもちもち感、しっとり感が増すなど優れた食感を有するベーグル類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーグル類は、19世紀に欧州から移民と共に米国に渡り、現在では「アメリカのパン」と言われるまで一般的なものになっている。ベーグル類は、小麦粉を主体とする穀粉、イースト、食塩および水等の原料からなる生地を発酵させた後にリング状に成型し、次いで茹でるまたは蒸した後、焼成して製造される。生地を発酵した後、茹で工程を経て焼成することにより、ベーグル特有のしこしことした歯ごたえのある食感を有している。
【0003】
近年、この独特の食感が好まれ、国内でも盛んに製造されるようになり、幾つかの製造方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、小麦粉等の原料を混捏した生地を発酵させて成型し、ホイロをとった後に蒸してから、焼成するベーグルの製造方法が提案されている。また、特許文献2には、成型・発酵した生地を加温した酸性水溶液中に浸漬した後、冷凍保存すると、冷凍保存しないで焼成するベーグル類と同等の食感を有する製品が得られることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−32904号公報
【特許文献2】特表2000−506390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法で得られるベーグルは、しこしことした歯ごたえがあるものの、日本人に好まれる、弾力性があり、そしてしっとり感、もちもち感といった食感は得られない。また特許文献2に記載の方法は特殊な工程を必要とし、しかも、弾力性があり、そしてしっとり感、もちもち感といった食感は得られない。
【0007】
本発明は、従来のベーグル類と比較して、弾力性があり、且つもちもち感、しっとり感が増すなど優れた食感を有すると同時に、その優れた食感が経時的に低下しにくいベーグル類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意研究した結果、成型した生地を高温で発酵させ、次いで低温下で保持した後に茹でまたは蒸した後に焼成することにより、得られるベーグル類は優れた食感を有すると同時に、その優れた食感が経時的に低下しにくくなることを見出した。
【0009】
従って、本発明は、
(1)少なくとも小麦粉を主体とする穀粉、イースト、食塩および水からなる原料を混捏して得られた生地を成型して高温で発酵させ、次いで低温下で保持した後に、茹でまたは蒸しを行い、次いで焼成することを含むことを特徴とするベーグル類の製造方法;
(2)成型した生地を、40〜50℃で30〜50分間発酵させることを特徴とする前記(1)に記載のベーグル類の製造方法;および
(3)発酵させた生地を、5〜20℃にて30〜60分間保持することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のベーグル類の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた食感を有すると同時に、その優れた食感が経時的に低下しにくいベーグル類およびその製造方法が提供される。本発明の方法により得られるベーグル類は、従来のベーグル類と比較して、弾力性があり、且つもちもち感、しっとり感が増すなど優れた食感を有すると同時に、その優れた食感が経時的に低下しにくく、カビの発生も抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
まず、本実施の形態のベーグル類の製造方法におけるベーグル類の生地の原料について説明する。本発明における基本的な配合は以下のとおりであり、下記記載の範囲で適宜選択すればよい。
・原料配合 (質量部)
穀粉 100
イースト 1.2〜1.7
食塩 0.5〜3.0
砂糖(三温糖) 0 〜10
水 40〜60
(1)穀粉について
穀粉としては、小麦粉(強力粉)が主であるが、場合によりライ麦粉、米粉などを適宜配合してもよい。
(2)その他の原料について
本発明においてはその他の原料を配合してもよい。その他の原料の例としては、澱粉、油脂、鶏卵、乳製品、ドライフルーツ(例えば、干しブドウ、ブルーベリー、ストロベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー)、乾燥野菜(例えば、パンプキンチップ、ドライトマト、サツマイモチップなど)、各種ナッツ類(マカダミアナッツ、ピーナッツなど)、バジル、シナモンなどのハーブ類などが挙げられる。この場合、穀粉100質量部に対して、その他の原料1〜15質量部を添加することができる。
【0013】
また、果汁、野菜ジュース、豆乳、各種エキス(例えばモルトエキスなど)などの液体原料を添加してもよい。この場合、水をこれら液体原料で一部または全て置き換えればよい。
【0014】
次に、本実施の形態のベーグル類の製造方法について説明する。
・工程
ミキシング 低速16〜20分(室温)
分割 −
成型 −
発酵(ホイロ) 温度40〜50℃、湿度60〜85%、30〜50分間
低温処理 温度5〜20℃、湿度60〜85%、40〜60分間
茹で処理 100℃(沸騰水)、45秒間〜1分間
焼成 200〜220℃、15〜20分間
以上の製造工程によって、本発明のベーグル製造方法が達成される。
【実施例1】
【0015】
以下の原料配合および工程にて、ベーグルを製造した。
・原料配合 (質量部)
小麦粉(パン用強力粉) 100
イースト 1.5
食塩 1.5
砂糖(三温糖) 8
水 51
・工程
ミキシング 低速18分(室温)
分割 130g/個
成型 リング状
発酵(ホイロ) 温度45℃、湿度60%、35分間
低温処理 温度15℃、湿度83%、35分間
茹で処理 100℃(沸騰水)、45秒間
焼成 210℃、18分間
[比較例1]
比較例1では、原料配合は実施例1と同じで、工程として低温処理を施さずに、ベーグルを製造した。
[比較例2]
比較例2では、原料配合は実施例1と同じ、工程としてホイロを38℃で30分間とし、低温処理を施さずにベーグルを製造した。
[試験例1] 他の製造方法と比較(官能試験)
実施例1、比較例1、比較例2で製造されたベーグルを、表1の評価項目、評価基準に基づき、10人のパネラーにより評価した。その結果として、10人のパネラーによる評点の平均値を表2に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

この結果、従来の製造方法と比較して、本発明の製造方法によるベーグル類は、風味および食感において顕著に優れることが確認された。
[試験例2] 経時変化に関して他の製造方法と比較(官能試験)
実施例1、比較例1、比較例2で製造されたベーグルを室温で48時間放置した後、表3の評価項目、評価基準に基づき、10人のパネラーにより評価した。その結果として、10人のパネラーによる評点の平均値を表2に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

以上の結果より、本発明の製造方法で得られるベーグル類は、時間が経過してもその優れた食感が保持され、その品質が低下しにくいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも小麦粉を主体とする穀粉、イースト、食塩および水からなる原料を混捏して得られた生地を成型して高温で発酵させ、次いで低温下で保持した後に、茹でまたは蒸しを行い、次いで焼成することを含むことを特徴とするベーグル類の製造方法。
【請求項2】
成型した生地を、40〜50℃で30〜50分間発酵させることを特徴とする請求項1に記載のベーグル類の製造方法。
【請求項3】
発酵させた生地を、5〜20℃にて30〜60分間保持することを特徴とする請求項1または2に記載のベーグル類の製造方法。

【公開番号】特開2006−191810(P2006−191810A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4001(P2005−4001)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(503199803)株式会社ジュノエスクベーグル (2)
【Fターム(参考)】