説明

ベータ−アミロイドタンパク質のプロトフィブリルの形態に特異的な抗体

ヒトβ−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープに対して、β−アミロイドペプチドの低分子量の形態と比較して、特異的な親和性を示す、単離された抗体が特性評価された。これらの単離された抗体および関連する製薬上有効な組成物は、アルツハイマー病に関連する合併症につながる、β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態の原線維の形態を形成する能力を効果的に阻止することによって、アルツハイマー病の治療上および/または予防上の治療に有用でありうる。本発明の単離された抗体はまた、多様な診断アッセイおよび関連するキットに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年11月16日に提出された、仮出願第60/988,481号、および2008年1月8日に提出された、第61/019,747号の優先権を主張し、その内容は参照として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ヒトベータ−アミロイドペプチドから形成されるプロトフィブリル(protofibril)のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用する、単離された抗体に関する。これらの抗体は、ベータ−アミロイドペプチドの低分子量の形態に対して、最小の親和性を示す、または検出可能な親和性を示さない。本明細書中に開示される抗体は、アルツハイマー病の発症および進行に関連する、ベータ−アミロイドプラークの沈着の診断、治療および/または予防に有用であろう。
【背景技術】
【0003】
ベータ−アミロイド(Aβ)ペプチドは、不溶性Aβペプチド原線維(フィブリル:fibril)の形成およびこれらの原線維が沈着してアミロイドプラークを形成することを通して、アルツハイマー病(「AD」)の原因となる物質であると考えられている。脳の記憶および他の認知機能に重要な領域内でのこのようなプラークの形成は、この疾患に関連する認知証を引き起こすと考えられている(Selkoe,1994,J.Neuropathol.Exp.Neurol.53:438−447を参照)。ベータ−アミロイドペプチドは、β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼの両方によって、それぞれアミノ末端およびカルボキシ末端において、アミロイド前駆体タンパク質(APP)からタンパク質分解処理された39−43アミノ酸長のペプチドの群を含む。これらは、少なくとも5つの、それぞれ563、695、714、751、および770アミノ酸長の、異なるAPPのアイソフォームである(Wirak et al.,1991 Science 253:323を参照)。これらのAPPのアイソフォームは、APP遺伝子の一次転写の選択的スプライシングによって生じる。多くのミスセンス変異が、常染色体優性早発性アルツハイマー病を有するファミリーにおけるAPPにおいて同定されている。いくつかの変異は、セクレターゼ開裂部位の近傍でクラスターになり、他の形態に比べて、より原線維発生的であり、より速く凝集する傾向があるAβ形態(例えば、Aβ42)の産生または比率の増加によってAPP代謝に影響する。神経毒性は、可溶性Aβペプチドの不溶性の原線維(フィブリル:fibril)への凝集を介して生成される高分子量の原線維に存在し、その後、原線維がアミロイドプラーク中に取り込まれる。中間体の原線維の形態は、プロトフィブリル(PF)の形態、すなわち、インビトロで可溶性であり、約〜670kDaの実体として単離されうる、Aβペプチドの高分子量オリゴマーの形態である。したがって、不溶性Aβペプチド原線維のインビトロの形成は、構造的に異なる、可溶性の高分子量のプロトフィブリルの形態を形成する、Aβペプチドの初期のオリゴマー形成の最終結果である。これらの過渡的なプロトフィブリルの構造は、アルツハイマー病(AD)および他のタンパク質凝集疾患における細胞機能障害および神経細胞欠損の原因であるアミロイド線維の前駆体である。
【0004】
Aβペプチドの生成を防ぐ試みにおいて、例えばAPPのタンパク質分解処理を防ぐ阻害剤などの、様々な治療が進められてきた。また、抗Aβ抗体の投与(アミロイド沈着の除去を引き起こすために)、またはAβペプチド抗原を用いた免疫化(液性応答を促進するために)などの免疫療法戦略がプラークのサイズおよび密度を減少させる試みにおいて行なわれてきた。
【0005】
Lannfeltらによる、米国特許第7,179,463号には、Aβペプチドのコード領域内の北極(Arctic)変異からなるプロトフィブリルに対する抗体の投与によるアルツハイマー病の治療方法が開示されている。明細書中に前記抗体の例示はなく、Aβペプチドの低分子量の形態に対する親和性についての比較も示されていない。
【0006】
Schenkらによる米国特許第6,761,888号および第6,750,324号には、Aβ42のアミノ酸配列に沿った様々なエピトープを認識する一連の抗体が開示されている。Aβ42のN−末端および中央領域に対して特異的な抗体は、生体外(エキソビボ)および生体内(インビボ)の両方でプラークを減少させる効果を示した。
【0007】
アルツハイマー病の治療および予防の分野における現在の知識にもかかわらず、この疾患を治療および/または予防する、改善された組成物および方法の必要性が残っている。本発明の組成物および方法は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態に特異的であるが、Aβペプチドの低分子量の形態に対して最小の検出可能な親和性を示す抗体の開示によって、これらの要求に対処し、適合する。このような抗体を含む製薬上有効な組成物は、アルツハイマー病の発症および進行に関連することが知られている、ベータ−アミロイドプラークの沈着の治療および/または予防に有用であろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープに特異的な結合を示す、単離された抗体に関する。野生型ベータ−アミロイド(Aβ)ペプチドの単量体は当該分野で公知であり、本明細書中で配列番号:1として表す。本発明の単離された抗体は、このようなAβペプチドのより高分子量のプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープに対して親和性を有するが、Aβペプチドの単量体または二量体の形態のようなAβペプチドの他の形態に対しては、最小の親和性を示す、または親和性を示さない。
【0009】
本発明はまた、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、これによって、プロトフィブリルエピトープは、Aβペプチドの露出部分のアミノ末端部分を含む、Aβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示される、単離された抗体に関する。
【0010】
さらに、本発明は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、これによって、プロトフィブリルエピトープは、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸1−20(配列番号:2)を含む、Aβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示される、単離された抗体に関する。
【0011】
本発明はまた、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、これによって、プロトフィブリルエピトープは、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸4−12および9−20(それぞれ、配列番号:3および4)を含む、Aβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示される、単離された抗体に関する。
【0012】
本発明は、一部分において、モノクローナル抗体13C3、1D1および19A6ならびに13C3、1D1および19A6の任意の親和性成熟型に関する。本発明はさらに、13C3、1D1および19A6について本明細書中に記載されるような機能的特異性を模倣する抗体に関する。そのため、本発明はまた、必ずしも制限されないが、アミノ酸の置換(例えば、VまたはV領域の親和性成熟の指令された形態として)、欠失、付加、アミノ末端切断(truncation)およびカルボキシ末端切断などを含み、これらの変異が、13C3、1D1、19A6または13C3様抗体結合タンパク質の同様のまたは改善された型となる、抗体または抗体結合部分の基礎を提供するような、13C3、1D1、19A6または13C3、1D1、もしくは19A6様抗体の生物学的活性フラグメントおよび/または変異体に関する。本発明のこの部分の一実施形態において、13C3のVおよびV領域は、それぞれ、配列番号:7(V)および/または配列番号:5(V)で表されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
さらに、本発明は、13C3、1D1、または19A6抗体のVおよび/またはV領域をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子に関し、特に、13C3の生物学的に関連した部分、あるいは、13C3、1D1、もしくは19A6抗体の親和性成熟型または他の変異型をコードする単離された核酸分子(ポリヌクレオチド)に関する。そのため、本発明の一実施形態は、13C3のVおよびV領域(それぞれ、配列番号:8(13C3:V領域)および配列番号:6(13C3:V領域)で表される)をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子に関する。
【0014】
本発明はまた、本明細書中に開示される単離された抗体13C3、1D1または19A6、すなわち、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、抗体に関する。
【0015】
本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体を産生することができる、ハイブリドーマに関する。本発明の特定のハイブリドーマは、例示されたモノクローナル抗体13C3、19A6および1D1をそれぞれ産生するハイブリドーマを含む。
【0016】
本発明は、本明細書中に開示され、さらに定義される単離された抗体:Aβのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性および特異的に結合する能力を示すが、Aβの低分子量の形態に対して、最小の親和性を示す、または測定可能な親和性を示さない、単離された抗体:を含む、製薬上有効な組成物に関する。これらの組成物は、任意で、1以上の担体、1以上の賦形剤および/または1以上の化学的誘導体を含んでもよい。
【0017】
本発明はまた、本明細書中に開示される単離された抗体、すなわち、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定される親和性を示すが、Aβペプチドの低分子量の形態に対して、最小の親和性を示す、または測定可能な親和性を示さない、抗体を含む製薬上有効な組成物を個人に投与する段階を含む、アルツハイマー病に罹患している個人を治療する方法に関する。これらの方法は、アルツハイマー病に罹患している個人の脳におけるアミロイド沈着の量を減少させるための治療上の介入を提供するであろう。本発明のこの部分の特定の実施形態は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープに対して、特にプロトフィブリルエピトープが、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸1−20(配列番号:2)を含むAβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示されることによって、特異的な親和性(少なくとも、Aβペプチドの低分子量の形態と比較して)を示す抗体を用いて製剤化された、製薬上有効な組成物を投与する段階を含む、アルツハイマー病に罹患している個人を治療する方法に関する。本明細書中に開示された、これらの治療上および予防上の方法に関する具体的な実施形態は、例示されたマウスモノクローナル抗体13C3、19A6、1D1に加えて、任意のこのような抗体の親和性成熟型、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体、および/または本明細書中で説明される抗体または特異的結合要素を含むが、これに制限されない、当該分野で公知の任意の他のこのような抗体の形態を利用することができる。本明細書中、任意のこのような抗体または特異的結合要素は、「13C3様抗体」と称されうる。したがって、「13C3様抗体」は、本明細書中に開示される13C3モノクローナル抗体もまた含むことを意味している。
【0018】
本発明はまた、アルツハイマー病に関連するフィブリル(原線維)および/または老人斑の形成の阻害剤として作用しうる化合物をスクリーニングおよび選択する方法に関する。このような方法論は、フィブリルおよび/またはプラークの形成の過程を調節する化合物を選択するための様々な抗体/ペプチド/試験化合物相互作用アッセイにおいて、13C3様特性(例えば、AβペプチドのLMWの形態に対するPFの形態の特異的な親和性)を有する抗体を用いる段階を含む。
【0019】
さらに、本発明は、被験者または患者のプロトフィブリルの水準を特異的に決定するための診断アッセイの方法に関する。このようなアッセイは、特に制限されないが、例えば、ウエスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学的アッセイ、免疫沈降法、または他の公知の免疫化学的アッセイなどの当業者に公知で適用可能な任意の技術によって実施されうる。したがって、本発明のこの部分の一実施形態は、被験者または患者からの組織試料を採取すること、および診断キットをおよび関連するアッセイを用いて試料中のPFAβの水準を決定することに関する;この際、前記キットは13C3様抗体を含み、これによって組織試料中のPFAβの水準の特異的な決定が可能になる。分析のための組織試料は、典型的には、被験者または患者からの血液、血漿、血清、粘液または脳脊髄液である。
【0020】
そのため、本発明の抗体は、少なくとも以下の用途に用いられうる:(1)単独で、または任意の可能な併用治療と併用して、アルツハイマー病に関連するプラーク沈着を防止または低減するための、予防上または治療上の薬剤として;(2)アルツハイマー病の治療に関連する予防上または治療上のワクチン戦略において、有効な抗体応答を引き出すために用いられうる、ペプチド免疫原の設計において;(3)本発明の抗体に結合する潜在エピトープを模倣する、予防上または治療上の抗イディオタイプ抗体(Ab2)を生成するために;および、(4)プロトフィブリル形成の阻害剤のスクリーニングに用いるための、あるいは予防上および/または治療上の計画に用いるための、本発明の中和抗体の相補性決定領域(CDR)から誘導されるペプチドの設計において;および、(4)AD発症のリスクを有する患者の血清またはCSF中のプロトフィブリル型Aβの濃度を決定する診断試薬として。
【0021】
本発明の目的は、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸1−20(配列番号:2)を含む、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態の露出したコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、親和性を示す抗体を提供することである。
【0022】
さらに、本発明の目的は、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸4−12および9−20(配列番号:3、4)を含む、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態の露出したコンフォメーショナルエピトープと相互作用し、親和性を示す抗体を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、アルツハイマー病に関連するプラークの沈着につながる、Aβペプチドのプロトフィブリルの形成を防止または低減する、13C3様抗体を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、アルツハイマー病に関連するプラーク沈着の治療に有用であろう化合物を選択するための、抗体/ペプチド/試験化合物の相互作用アッセイにおける13C3様抗体を用いたアッセイを提供することである。
【0025】
本明細書中で用いる場合、「Ka」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合定数を意味し、「Kd」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を意味する。
【0026】
本明細書中で用いる場合、「エピトープ」または「抗原決定基」の用語は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位、または、分子上の部位であってこれに対して抗体が産生される、および/またはこれに抗体が結合する、部位を意味する。例えば、エピトープは、エピトープを定義する抗体によって認識されうる。エピトープは、「直線状エピトープ」(一次アミノ酸一次配列はこのエピトープ;典型的には固有の配列中に少なくとも3つの隣接するアミノ酸残基、より通常には少なくとも5、そして約8〜約10までのアミノ酸;を含む)、または「コンフォメーショナルエピトープ」(一次の隣接するアミノ酸配列がエピトープの唯一の決定成分ではない、エピトープ)でありうる。このコンフォメーショナルエピトープはペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識するため、コンフォメーショナルエピトープは、直線状エピトープに比べて多数のアミノ酸を含みうる。例えば、タンパク質分子が折り重なって三次元構造を形成する場合、コンフォメーショナルエピトープを形成する特定のアミノ酸および/またはポリペプチド骨格は、抗体がエピトープを認識できるように並列になる。エピトープのコンフォメーションを決定する方法としては、特に制限されないが、例えば、X線結晶構造解析、二次元核磁気共鳴分光法、および部位特異的スピン標識法、および電子常磁性共鳴分光法が挙げられる。例えば、その全体の開示が参照として本明細書中に組み込まれる、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照。
【0027】
本明細書中で用いる場合、2つの実体の間の「特異的結合(specific binding)」は、少なくとも10−1、10−1、10−1、10−1または1010−1の親和力(親和性、affinity)を意味する。
【0028】
本明細書中で用いる場合、「プロトフィブリル(protofibril)」は、曲線構造を形成する球状構造の列を表すように見える、Aβペプチドを含む球状構造を含むプロトフィブリル型の凝集体である。
【0029】
本明細書中で用いる場合、「単離された」の用語は、当該分野で用いられるものと同様に用いられる。すなわち、抗体/特異的結合要素、核酸分子などが見いだされる状態である。抗体/特異的結合要素および核酸分子は、それらの自然環境において、またはそれらが調製された環境(例えば、細胞培養)(このような調製が組み換えDNA技術(インビトロまたはインビボで行なわれる)による場合)において見出される、他のポリペプチドまたは核酸のような、これらと自然に会合する物質を含まない、または実質的に含まないであろう。「単離された」は、初期の環境から除去された後の、同定され、特性評価された本発明の成分を含む任意の形態を包含する。例としては、特に制限されないが、希釈剤、インビトロまたはインビボで修飾され(例えば、抗体グリコシル化)、その環境から除去された、抗体/特異的結合要素、核酸分子およびその部分を含む製剤である、薬剤製剤が挙げられる。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「組み換えヒト抗体」の用語は、当該分野において公知の組み換えDNA技術および非ヒトトランスジェニックの多様な手法によって生成された「抗体」の生存可能なサブセットを表す。このような方法論は、以下の由来のうち1つから抗体を生成するために用いられる:(i)コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された、scFvまたは代替(オルタナティブ)抗体;(ii)宿主細胞、好ましくは哺乳類の宿主細胞に、安定にまたは過渡的に導入(トランスフェクト)された、それぞれの発現ベクターから生成された部分的または完全な抗体(例えば、AβのPFの形態に対して特異性を示す抗体の所定の形態の発現を促進するように、VHおよびVL鎖をコードするヌクレオチド配列をそれぞれCHおよびCLヌクレオチド配列とともに発現ベクターにサブクローニングする);および/または(iii)ヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒトトランスジェニック動物から単離された、または、所望のヒト組み換え抗体を生成するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子の配列を他のDNA配列に組み換え「ミキシングおよびマッチング」することによる、他の任意の方法論による、抗体。
【0031】
「被験者」または「患者」の用語は、脊索動物門の任意の一員を含むことを意味し、特に制限されないが、ヒトならびにチンパンジーおよび他のサル種などのヒト以外の霊長類を含む、他の霊長類;牛、羊、豚、ヤギ、および馬などの家畜;犬および猫などの飼育哺乳動物;マウス、ラットなどのげっ歯類、およびモルモットなどの実験動物;ニワトリ、シチメンチョウなどの家禽、野鳥および狩猟鳥、および他のキジ類の鳥であるアヒル、ガチョウなどの、鳥類が挙げられる。
【0032】
疾患を「治療する」または「治療」の用語は、疾患の徴候および症状を緩和するために1以上の薬剤を被験者(ヒトまたはその他)に投与することを含みうる、プロトコルを実行することを意味する。緩和は、疾患の徴候または症状が現れる前、およびこれらが現れた後に起こりうる。したがって、「治療する」または「治療」は、疾患を「予防する」または「予防」を含む。アルツハイマー病の場合、「予防する」または「予防」は、アルツハイマー病に関連する症状の発症を防ぐ、または遅らせるために、治療のコースが先になる状況においてもまた、起こりうる。加えて、「治療する」または「治療」は、徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、治癒を必要とせず、そして具体的には被験者に限界的なプラスの効果しかないプロトコルを含む。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「活性成分」の用語は、ベータ−アミロイドのプロトフィブリル構造のアミノ末端部分に親和性および特異性(例えば、特異的結合)を示す、13C3様抗体を意味する。
【0034】
本明細書中で用いる場合、抗体の「有効量」または「製薬上有効な量」の用語は、本明細書中で用いる場合、所望の生物学的結果を提供するための、無毒であるが十分な活性成分の量を意味する。任意の個々の場合における適当な「有効」量は、当業者によって慣用の実験方法を用いて決定されうる。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「製薬上許容される」または「薬理的に許容される」の用語は、物質が、何らの望ましくない生物学的影響を引き起こしたり、それが含まれる組成物(例えば、「製薬上許容される組成物」)のいかなる成分とも有害な相互作用をすることなく、製剤化された生理学的薬剤とともに、薬剤運搬デバイスにおいて、個人に投与されうることを意味する。
【0036】
本明細書中で用いる場合、互換的に使用されうる「薬理的に許容される担体」および「製薬上許容される担体」の表現は、生物体に有意な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性および特性を損なわない、担体、希釈剤および賦形剤を意味する。アジュバントはこれらの表現の下に含まれる。
【0037】
本明細書中で用いる場合、「賦形剤」の用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために薬剤組成物に添加される不活性な物質を意味する。
【0038】
「最小の親和性」の用語は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態に対する抗体の親和性(親和力)の、原線維(フィブリル)、シート構造、および低分子量オリゴマーおよび単量体などのAβペプチドの他の形態に対する抗体の親和性(親和力)との比較において用いられ、プロトフィブリル型のAβの形態に対する親和力の、他のAβの形態に対する親和力に対する比が、約2よりも大きいことを示す。好ましくは、前記比は、約3、または約4、または約5よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、プロトフィブリルオリゴマーの形成を含む、Aβ原線維発生の過程を示す。
【図2】図2A−Bは、溶離体積についてmAU215での吸光度(215nmでの吸光度)で示されるように、時間0(A)および4時間(B)でのAβ原線維発生およびAβ形態の精製の過程を示す。4時間(B)で、低分子量(LMW)の形態は、〜15kDaの二量体として溶離するが、プロトフィブリルの形態のサイズは、〜670kDaで溶離する。
【図3】図3A−Bは、AβのPFおよびLMWの形態の両方の濃度の増加に対する、450/650nmで読み取った光学濃度(OD)によって示されるように、Aβのプロトフィブリル(PF:−◆−)および低分子量(LMW:−■−)の形態に対するモノクローナル抗体13C3(A)および4G8(B)の特異性を示す。
【図4】図4A〜Cは、モノクローナル抗体4G8(A)、13C3(B)およびコントロールIgG(C)の、0.25μg/ml LMWAβ〜4.0μg/ml LMWAβの異なる濃度のAβの低分子量(LMW)の形態に対する親和性を示す、Biacore(登録商標)結合アッセイのデータを示す。
【図5】図5A−Bは、上述の抗Aβ抗体によって認識されたエピトープを同定するデータを示す。図5Aは、実施例5に記載されるように、モノクローナル抗体13C3(上のパネル)、1D1(中央のパネル)および4G8(下のパネル)の、一連のオーバーラップする13のアミノ酸ペプチドに対するウエスタンドットブロットを表す。図5Bは、アミノ酸配列Aβ1−42(配列番号:1)を、モノクローナル抗体13C3および1D1の予測されるエピトープとともに表す。
【図6】図6は、モノクローナル抗体13C3(−■−)および4G8(−◆−)の、Aβオリゴマーを分泌する7PA2の上清からのSECフラクションとの反応性を示す。プロトフィブリル(PF)および低分子量(LMW)のフラクションは、450/650で読み取った光学濃度(OD)によって測定された値としてx軸に示される。
【図7】図7A−Cは、Aβフィブリル上の反復構造に対するモノクローナル抗体13C3の親和性を示す、薄片免疫電子顕微鏡の顕微鏡写真(B、C)を示す。コントロール免疫−EMはIgG(A)である。
【図8】図8A−Bは、代表的なTgCRND8トランスジェニックマウスにおけるコントロールIgG(A)抗体の投与後のプラークの数の減少を、13C3モノクローナル抗体(B)の投与と比較して示す、電子顕微鏡写真のデータを示す。
【図9】図9A−Bは、TgCRNDトランスジェニックマウスの、13C3モノクローナル抗体を用いた週1回(A)または週2回(B)の計画の治療は、老人斑の形成の減少をもたらすことを示す。
【図10】図10は、mAb13C3のクローニングされた軽および重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
【図11】図11は、APPトランスジェニックマウスにおける13C3の急性末梢投与は、参照抗体3D6の投与と異なって、血漿Aβの増加をもたらさないことを示す。
【図12】図12は、13C3はADの脳においてヒトアミロイド神経炎プラーク(凝集した)を認識するが、参照3D6抗Aβ抗体と異なってAβ沈着を拡散させないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
アミロイド前駆体タンパク質(APP)は、アルツハイマー病(AD)の発病に重要な役割を担う。β−およびγ−セクレターゼによるAPPのタンパク質分解処理は、通常39〜43アミノ酸長のAβペプチド(Aβ)を生成する。アルツハイマー病の発症は、脳におけるAβのオリゴマーの、または凝集した形態の蓄積によって特徴づけられる。本発明の免疫学的組成物は、アルツハイマー病の治療または予防に、診断アッセイにおける試薬としての使用に、加えて、アミロイド沈着の低分子阻害剤の設計に、有用である。本発明の13C3様抗体は、哺乳類、特にヒトの一般集団に、前記疾患の発症を除去、低減、または遅延させるのに十分な量および/または投与量計画で、意図された製薬上許容される製剤で、予防的に投与されうる。予防上の治療の方法は、アルツハイマー病の遺伝子的または家族性リスクを有することがわかっている個人に、特に必要である。アルツハイマー病のリスクの多数の遺伝子マーカーが同定されており、特に制限されないが、一例として、APP変異(例えば、Indian変異(Val717Phe)、Swedish変異(Lys670Asn、Met671Leu)、Hendricks変異(Ala692Gly)、Dutch変異(Glu693Gln)、Iranian変異(Thr714Ala)、German変異(Val715Ala)およびFlorida変異(Ile716Val)が挙げられる。アルツハイマー病のリスクの増大を示しうるさらなる変異としては、プレセニリン遺伝子(PSlおよびPS2)およびApoE4における変異が挙げられる。本発明はまた、現在痴呆の特徴からアルツハイマー病に罹患していると認識できる、特に上記のリスク因子の存在下でまたはすでにこのような疾患に罹患している個人のための、アルツハイマー病の症状および合併症を治癒する、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で13C3様抗体を含む、製薬上許容される組成物を介した、治療上の介入に関する。本明細書中で意図する予防上のまたは治療を含む治療方法は、早発性または遅発性アルツハイマー病の対処に用いられうる。アルツハイマー病の発症におけるAβのオリゴマーの形態の重要性の観点から、本発明は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定された親和性を示す、単離された抗体に関する。野生型Aβペプチド(Aβ42;42アミノ酸形態)の単量体は、当該分野で公知であり、本明細書中で配列番号:1と表す。
【0041】
【化1】

【0042】
本発明の単離された抗体は、Aβペプチドの、より高分子量のオリゴマーのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープに対して親和性を示すが、Aβペプチドの低分子量の単量体および二量体などの他の形態に対して最小の親和性を示すであろう。
【0043】
本発明はまた、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、これによって、プロトフィブリルエピトープは、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸末端部分を含むAβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示される、単離された抗体に関する。
【0044】
さらに、本発明は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、これによって、プロトフィブリルエピトープは、以下のように、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸1−20(配列番号:2)を含む、Aβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示される、単離された抗体に関する。
【0045】
【化2】

【0046】
本明細書中に例示されるように、Aβペプチドのプロトフィブリル(PF)の形態に対して特異的親和性を特異的に示すが、Aβペプチドの低分子量種に対して最小の親和性を示すマウスモノクローナル抗体が同定された。Aβの二量体の形態(〜15kDa)は、時間とともに重合して、約670kDaの分子量を有するAβの可溶性のPFの形態を形成する。マウスは、このより高分子量のPFAβで免疫化された。モノクローナル抗体は、Aβペプチドの高分子量PFの形態に対して特異性を有し、Aβの低分子量の形態に最小の結合能を示す、または結合能を示さないようにスクリーニングされた。本発明のこの部分は、Aβペプチドの〜670kDaの高分子量プロトフィブリルの形態(すなわち、13C3、1D1および19A6)に対する、13C3系列のモノクローナル抗体のスクリーニング、単離、および特性評価によって実証される。この系列のモノクローナル抗体は、インビトロで目的の特異性を示す一方、トランスジェニックマウスアルツハイマー病モデルにおける、アルツハイマー病に関連するプラークの形成をも減少させる。したがって、本発明の具体的な実施形態において、単離された抗体は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示し、これによって、プロトフィブリルエピトープは、Aβペプチドの露出部分のアミノ酸4−12(配列番号:3)および9−20(配列番号:4)を含む、Aβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示される。
【0047】
【化3】

【0048】
本発明の一実施形態は、13C3について開示されたように、AβペプチドのLMWの形態に対してPFへの13C3様特異性を付与するために、V(配列番号:7)および/またはV(配列番号:5)領域を含む抗体に関する。さらなる実施形態は、AβペプチドのLMWの形態よりもPFの形態に対して特異性を示す、13C3様抗体またはその生物学的に関連したフラグメントである。したがって、本発明はまた、13C3、1D1、19A6または13C3様抗体の生物学的活性フラグメントおよび/または変異体;特に制限されないが、アミノ酸の置換(例えば、VまたはV領域の親和性成熟の指向された形態として)、欠失、付加、アミノ末端切断(truncation)およびカルボキシ末端切断など、これらの変異が、13C3、1D1、19A6または13C3様抗体結合タンパク質と同様の、または改善された型となる、抗体または抗体結合部分の基礎を提供するようなものが挙げられる;に関する。本明細書中に言及したように、本発明のこの部分の一実施形態は、それぞれ配列番号:7および/または配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含む、このような抗体のVおよび/またはV領域に関する。本発明は、同一の抗体またはその部分を発現する異なるDNA分子を与えうる、コドン重複の存在に言及する(例えば、IgGの同一のscFvあるいはVおよび/またはV部分をコードする代替核酸分子)。本明細書の目的のためには、1以上の置換されたコドンを有する配列は、縮重変異(degenerate variation)として定義されるであろう。配列変異の他の原因は、RNAエディティングを通して起こりうる。このようなRNAエディティングは、オープンリーディングフレームにおける変化が、発現されたタンパク質のアミノ酸残基の変化をもたらさない、他の形態のコドン重複をもたらしうる。発現された抗体の最終的な物理的特性を改善する、DNA配列または翻訳された抗体における変異もまた、本発明の技術的範囲に含まれる。そのため、本発明は、(i)13C3、1D1、19A6または任意の他のこのような13C3様抗体の親和性成熟型、および/または(ii)13C3、1D1、19A6または任意の他のこのような13C3様抗体の変異型;特に制限されないが、公知の親和性成熟法および部位特異的変異を導入するための公知の組み換えDNA技術を通して生成された、CDR1、CDR2および/またはCDR3領域における1以上の変異を含む;に関する。したがって、本発明の単離された抗体は、Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用する抗体である。本発明の単離された抗体は、このようなAβペプチドのより高分子量のプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープに対して親和性を示すが、原線維(フィブリル)、シート構造、ならびに低分子量オリゴマーおよび単量体などのAβペプチドの他の形態に対しては最小の親和性を示すであろう。
【0049】
本発明はまた、単離されたモノクローナル抗体13C3に関する。本発明のこの部分はまた、モノクローナル抗体13C3を産生するハイブリドーマに関する。モノクローナル抗体13C3を産生するハイブリドーマは、ATCC寄託番号PTA−8830から入手可能である。
【0050】
本発明はまた、単離されたモノクローナル抗体1D1に関する。本発明のこの部分はまた、モノクローナル抗体1D1を産生するハイブリドーマに関する。
【0051】
本発明はまた、単離されたモノクローナル抗体19A6に関する。本発明のこの部分はまた、モノクローナル抗体19A6を産生するハイブリドーマに関する。
【0052】
本発明はまた、アルツハイマー病に関連するフィブリルおよび/または老人斑の形成の阻害剤として作用しうる化合物を選択するためのスクリーニングの方法に関する。このような方法論は、フィブリルおよび/またはプラークの形成の過程を調節する化合物を選択するために、多様な抗体/ペプチド/試験化合物相互作用アッセイにおいて、AβペプチドのPFの形態に対して13C3様の親和性を有する抗体を用いることを含む。前記化合物は、非タンパク質様有機または無機分子、ペプチド(例えば、潜在的な予防上または治療上のペプチドワクチンとして)、タンパク質、DNA(一本鎖または二本鎖)またはRNA(siRNAまたはshRNAなど)でありうる。AβペプチドのPFの形態への結合に関して、13C3様抗体と効果的に競合する任意のこのようなペプチドまたは小さな分子は、アルツハイマー病の予防上または治療上の治療に関する可能なリード化合物を与えることが、本明細書の開示および教示の検討によって明らかになるであろう。そのため、相互作用アッセイが、AβペプチドのPFの形態の13C3エピトープを占有またはこれと相互作用し、抗体を置き換える化合物を同定するための高スループットスクリーニングの目的で用いられうる。
【0053】
アルツハイマー病の予防上または治療上の治療に有用な化合物(例えば、小さな無機分子またはペプチドワクチン候補)のスクリーニングにおいて不可欠な試薬として本発明の13C3様抗体を組み込み、これに依存する、当該分野で公知の、多様な抗体/抗原を用いたアッセイ;特に制限されないが、ELISAアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット分析、検出可能な生物学的相互作用に依存し、分離または洗浄の段階を必要としない、任意の均質アッセイ(例えば、PerkinElmerのAlphaScreenを参照)および/またはSPRを用いた技術(例えば、BIACoreを参照);が用いられうる。13C3様抗体の使用を通して同定された、化合物および/またはペプチドワクチン候補は、多様なアッセイによって検出されうる。前記アッセイは、既知の抗体/抗原複合体を形成する能力の変化の有無を決定するための簡単な「イエス/ノー」アッセイであってもよく、ELISAを用いたアッセイ、均質アッセイ、またはSPRを用いたアッセイなどのアッセイを用いることによって、定量的な性質で行なわれてもよい。そのため、本発明は、使用される既知の方法論にかかわらず、AβペプチドのPFの形態の13C3エピトープのアミノ末端部分の適当なペプチドまたはタンパク質模倣に対して、試験化合物の13C3様抗体と競合する能力を測定する、任意のこのようなアッセイに関する。
【0054】
本明細書中に記載される抗体は、組織試料中のAβプロトフィブリルの形態の存在を決定するための多数の異なるイムノアッセイにおける基本的な試薬として用いられうる。一般に、前記抗体は、定性的または定量的にかかわらず任意の型のイムノアッセイに採用されうる。これは、二部位サンドイッチアッセイおよび非競合型単一部位イムノアッセイの両方に加えて、通常の競合結合アッセイを含む。興味深い一実施形態は、検出の容易性およびその定量的な性質から、多数の変形が存在し、そのすべてが本発明のこの部分に包含されることを意図する、サンドイッチアッセイまたは二抗体アッセイである。例えば、典型的なフォワードサンドイッチアッセイにおいては、未標識抗体を、例えばマイクロタイタープレートウェルなどの固体基板に固定化し、試験される試料を結合された分子に接触させる。適当なインキュベーション時間、抗体−抗原二元複合体の形成に十分な時間の後、次に、検出可能な信号を誘導しうるレポーター分子で標識された二次抗体が添加され、異なる部位で抗原と結合し、抗体−抗原−標識抗体の三元複合体を形成するのに十分な時間、インキュベーションが継続される。任意の未反応原料が洗浄によって除去され、抗原の存在が、既知の量の抗原を含むコントロール試料との比較によって定量されうる、信号の観察によって決定される。フォワードサンドイッチアッセイの変形としては、試料および抗体の両方が同時に結合された抗体に添加される同時アッセイ、または、標識された抗体および試験される試料がはじめに合わされ、インキュベートされて、未標識表面結合抗体に添加される、逆サンドイッチアッセイが挙げられる。これらの技術は当業者に公知であり、部分的な変形の可能性は明らかであろう。本明細書中で用いる場合、「サンドイッチアッセイ」は、基本的な二部位法のすべての変形を包含することを意図している。
【0055】
本発明のサンドイッチアッセイのための唯一の制限因子は、両方の抗体が、Aβプロトフィブリルの形態に対して異なる結合特異性を有することである。したがって、多数の可能な組み合わせが可能である。より具体的な例として、典型的なフォワードサンドイッチアッセイにおいては、一次抗体は、共有結合で、または受動的に、固体支持体に結合される。固体表面は、通常ガラスまたはポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンである。前記固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスク、もしくはマイクロプレートの形態、またはイムノアッセイを行なうのに適した任意の他の表面でありうる。結合工程は、当技術分野で周知である。結合の後、固相−抗体複合体を、試験試料に備えて洗浄する。次いで、Aβプロトフィブリルの形態を含む試験される体液のアリコートを固相複合体に添加し、存在する任意のAβプロトフィブリルの形態のタンパク質がAβプロトフィブリルの形態に特異的な抗体に結合するのに十分な時間、25℃でインキュベートする。次いで、二次抗体を固相複合体に添加し、二次抗体が一次抗体−抗原固相複合体に結合するのに十分なさらなる時間、25℃でインキュベートする。二次抗体は、レポーター分子に結合し、その可視信号は、試料中の任意の抗原への二次抗体の結合を示すために用いられる。本明細書中で用いる場合、「レポーター分子」は、その化学的な性質から、抗原結合抗体の検出を可能にする分析的に検出可能な信号を提供する分子を意味する。検出は、試料中の抗原の量を決定できるように、少なくとも相対的に定量可能でなければならない;これは、絶対値で計算されうる、または、既知の通常の水準の抗原を含む標準(または一連の標準)との比較によって行なわれうる。
【0056】
このタイプのアッセイにおいて最もよく用いられるレポーター分子は、酵素または蛍光発色団である。酵素イムノアッセイの場合、酵素は、しばしばグルタールアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩によって、二次抗体に結合(conjugate)される。しかしながら、容易に理解されるように、当業者に公知の広範囲の異なる結合技術が存在する。一般的に用いられる酵素としては、中でも、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。特異的酵素とともに用いる基質は、一般に、対応する酵素によって加水分解すると検出可能な色の変化を生じるように選択される。例えば、p−ニトロフェニルホスフェートは、アルカリ性ホスファターゼ結合体との使用に適しており、ペルオキシダーゼ結合体には、1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般的に用いられる。また、上記の発色性基質に代えて、蛍光生成物を与える蛍光発生基質を用いることもできる。すべての場合において、酵素標識抗体を、一次抗体−Aβプロトフィブリルタンパク質複合体に添加し、複合体に結合させ、次いで過剰の試薬を洗浄して除く。その後、適当な基質を含む溶液を抗体−抗原−標識抗体の三次複合体に添加する。基質は二次抗体に結合した酵素と反応して定性的な視覚的信号を与え、これは、通常分光光度法によりさらに定量され、血清試料中に存在する抗体の量の評価を与える。
【0057】
さらに、フルオレセインまたはローダミンのような蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させることができる。特定の波長の光の照射によって活性化されると、蛍光発色団標識抗体は、光エネルギーを吸収して分子の励起状態を誘起し、その後、より長波長の特性の光を放出する。発光は、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。酵素イムノアッセイ(EIA)の場合と同様、蛍光標識抗体を一次抗体−Aβプロトフィブリルの形態のタンパク質複合体に結合させる。結合していない試薬を洗浄した後、次いで残存する三元複合体が適当な波長の光に露光され、観察された蛍光が抗原の存在を示す。免疫蛍光法およびEIA法は、いずれも十分に確立されており、本発明の方法に特に好ましい。しかしながら、放射性同位体、化学発光または生物発光分子などの他のレポーター分子もまた用いられうる。当業者であれば所望の用途に適するように手順を変更する方法は明らかであろう。
【0058】
他の実施形態においては、試験される試料(例えば、Aβプロトフィブリルの形態を含む、ヒトの血液または髄液)は、共有結合または非共有結合によって固体基板に接着されて、単一部位イムノアッセイに用いられうる。未標識抗Aβプロトフィブリルタンパク質抗体を、固体基板に結合した試料に接触させる。適当な時間、抗体−抗原二元複合体を形成させるのに十分な時間のインキュベーションの後、次いで、検出可能な信号を誘導可能なレポーター分子で標識された二次抗体を添加し、抗原−抗体−標識抗体の三元複合体を形成するのに十分な時間、インキュベーションを継続する。単一部位イムノアッセイの場合、二次抗体は、対象のAβプロトフィブリルタンパク質の形態に特異的な抗体に結合することができる、一般的な抗体(すなわち、免疫グロブリンに対するzenogeneic抗体、特に、レポーター分子に結合した抗(IgMおよびIgG))でありうる。
【0059】
13C3様抗体は、公知の多数の形態のうちの一つが用いられうる。抗体は、関連する抗体フラグメント、抗体結合部分、特異的結合要素、非タンパク質合成模倣、または、結合特異性/中和活性を少なくとも実質的に有する実体を意味する当該分野で公知の任意の他の関連する用語の、任意のタイプの形態をとりうる。したがって、「抗体」の用語は、本明細書のすべての文脈で用いられる場合、特に制限されないが、任意の特異的結合要素、免疫グロブリンクラスおよび/またはアイソタイプ(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEおよびIgM);ならびにその生物学的に関連したフラグメントまたは特異的結合要素(特に制限されないが、Fab、F(ab’)2、Fv、およびscFv(一本鎖または関連する実体)など)を意味する。したがって、「抗体」が、ジスルフィド結合によって互いに結合した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質またはその抗原結合部分を意味することは、当業者に公知であり、概説としてのみ含まれる。重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)から構成される。軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。重鎖および軽鎖の双方の可変領域は、フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)を含む。4つのFWR領域は、相対的に逆であるが、CDR領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は、超可変領域を提示し、以下のように、NH末端からCOOH末端へ配置される:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、FWR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含むが、アイソタイプに依存して、定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介しうる。すなわち、「抗体」の実用的定義には、トランスジェニック非ヒト動物から生成されたヒト抗体としてのキメラ抗体、ヒト化抗体、組み換え抗体に加えて、当業者に適用可能な多くの技術を用いてライブラリから選択された抗体もまた含まれる。抗体フラグメントは、以下に概説するように、当業者にとって公知であり適用可能な技術を用いて得られる。したがって、「抗体」は、本明細書中に記載されるように、Aβのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に結合する、任意のこのような実体または特異的結合要素である。したがって、「抗体」の用語は、天然のまたは部分的にもしくは全体的に合成によって製造された免疫グロブリン;抗体結合ドメインである、または抗体結合ドメインと実質的にホモログである結合ドメインを有する、任意のポリペプチドまたはタンパク質を記述する。これらは、天然源から誘導されてもよく、部分的にまたは全体的に合成によって製造されてもよい。抗体の例としては、特に制限されないが、免疫グロブリンのアイソタイプおよびそのアイソタイプのサブクラス;Fab、scFv、Fv、dAb、Fdおよび二重特異性抗体(diabody)などの抗原結合ドメインを含むフラグメント;などが挙げられる。モノクローナル抗体および他の抗体を操作し組み換えDNA技術を用いて、本来の抗体の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を製造することが可能であることは当該分野で公知である。このような技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードするDNAの、異なる免疫グロブリンの定常領域または定常領域+フレームワーク領域への導入を展開させる。抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞は、産生された抗体の結合特異性を変えうる、もしくは変えない遺伝子変異または他の変化を受けてもよい。抗体は多様に修飾されてもよく、「抗体」の用語は、要求される特異性を有する結合ドメインを有する、任意の特異的結合要素または物質を包含するものとして解釈されなければならない。したがって、この用語は、天然のものであっても全体的もしくは部分的に合成されたものであっても、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む「抗体」の、抗体フラグメント、誘導体、機能的等価物、およびホモログを包含する。このような実体は、抗体の「抗原結合部分」または「特異的結合要素」の用語に包含される結合フラグメントであってよく、特に制限されないが、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなる、Fvフラグメント;(v)VHドメインを含むdAbフラグメント;(vi)単離された相補性決定領域(CDR);(vii)VHおよびVLに加えてCLまたはCHを含む抗体フラグメントである、「scAb」;および、(viii)特に制限されないが、フィブロネクチンIII型ポリペプチド抗体(例えば、Koideによる2004年3月9日に発行された米国特許第6,703,199号およびPCT国際出願公開WO 02/32925を参照)などの、足場タンパク質に基づく人工抗体が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組み換え法を用いて、VLおよびVH領域対が一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一のタンパク質鎖とすることができる合成リンカーによって結合されうる。
【0060】
一実施形態において、本発明の単離された13C3または13C3様抗体の可変軽(VL)領域は、339塩基対のヌクレオチド配列(配列番号:6)によってコードされた、113アミノ酸のペプチド配列(配列番号:5)を含みうる。
【0061】
【化4】

【0062】
さらなる実施形態において、本発明の単離された13C3または13C3様抗体の可変重(VH)領域は、345塩基対のヌクレオチド配列(配列番号:8)によってコードされた、115アミノ酸のペプチド配列(配列番号:7)を含みうる。
【0063】
【化5】

【0064】
さらなる実施形態において、VL鎖のフレームワーク領域であるFWRl、FWR2、FWR3およびFWR4は、下記のように、それぞれ配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12で表されるアミノ酸から構成されうる。
【0065】
【化6】

【0066】
さらなる実施形態において、VL鎖の相補性決定領域であるCDRl、CDR2およびCDR3は、下記のように、それぞれ配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15で表されるアミノ酸から構成されうる。
【0067】
【化7】

【0068】
さらなる実施形態において、VH鎖のフレームワーク領域であるFWRl、FWR2、FWR3およびFWR4は、下記のように、それぞれ配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18および配列番号:19で表されるアミノ酸から構成されうる。
【0069】
【化8】

【0070】
さらなる実施形態において、VH鎖の相補性決定領域であるCDRl、CDR2およびCDR3は、下記のように、それぞれ配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22で表されるアミノ酸から構成されうる。
【0071】
【化9】

【0072】
開示された治療方法に用いられるポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、公知の技術によって得られうる。選択された標的のコンフォメーショナルエピトープに対して特異性を示す単一特異性マウス抗体は、この領域に対して反応性を有する抗体を含む哺乳類の抗血清から精製されるか、またはKohlerおよびMilsteinの技術(1975,Nature 256:495−497)を用いてモノクローナル抗体として調製されうる。本明細書中で用いる場合、単一特異性抗体は、13C3系列のモノクローナル抗体を用いて本明細書中で例示したマウスモノクローナル抗体などの、均一な結合特性を有する単一の抗体種または複数の抗体種として定義される。ハイブリドーマ細胞は、安定なハイブリドーマを生成することができる条件下で、脾臓リンパ体を適当な結合パートナー、好ましくは骨髄腫細胞と混合することによって製造される。細胞および骨髄腫細胞を産生する脾臓の抗体は、抗体の産生のために結合され、選択され、スクリーニングされる。抗体のポジティブウェルからのハイブリドーマ細胞は、MacPhersonのsoft agar技術(1973,Soft Agar Techniques,in Tissue Culture Methods and Applications,Kruse and Paterson,Eds,Academic Press)などの技術によってクローニングされる。モノクローナル抗体は、インビボで、それぞれのハイブリドーマ細胞を初期プライミングされたマウスに注入し、時間間隔をおいて腹水を回収することによって産生され、当該分野で公知の技術によって調製される。
【0073】
上記の種特異性モノクローナル抗体の他に、本発明の抗体はまた、例えばマウス源から誘導された可変領域および目的の宿主源(例えば、ヒト;総説として、Morrison and Oi,1989,Advances in Immunology,44:65−92を参照)から誘導された定常領域から構築されたモノクローナル抗体である、「キメラ抗体」の形態でありうる。例えば、げっ歯類(例えば、マウス)抗体からの可変軽および重DNA配列(例えば、それぞれ配列番号:6および8)は、哺乳類の発現ベクターにクローニングされうる。これらの軽および重「キメラ」発現ベクターは、レシピエント細胞株に共トランスフェクトされ、公知の技術によって選択され拡大される。次いで、この細胞株は、公知の細胞培養技術によって、キメラ抗体の軽鎖および重鎖の両方を産生する。このようなキメラ抗体は、本来のげっ歯類のモノクローナルの抗原結合能を有する一方、宿主の投与による免疫原生問題を有意に減少させることが歴史的に示されている。
【0074】
キメラ抗体の論理的な改善は、キメラのまたは完全なマウスモノクローナル抗体の使用と比較して、治療上の抗体に対する免疫応答を備える患者の確率を間違いなく低減させる、「ヒト化抗体」である。マウスMabの「ヒト化」の戦略は、ヒトの配列におけるものと異なるアミノ酸残基を、個々の残基の部位指向性突然変異によって、または全体の相補性決定領域をグラフトすることによって置き換えることに基づいている(Jones et al.,1986,Nature 321:522−526)。この技術はまた、現在では当該分野で公知であり、この技術の進歩のための多数の戦略;特に制限されないが、「再構成(reshaping)」(Verhoeyen,et al.,1988,Science 239:1534−1536を参照)、「ハイパーキメラ化(hyperchimerization)」(Queen,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.88:2869−2873を参照)、または「張り合わせ(veneering)」(Mark,et al.,1994,Derivation of Therapeutically Active Humanized and Veneered anti−CD18 Antibodies Metcalf end Dalton,eds.Cellular Adhesion:Molecular Definition to Therapeutic Potential.New York:Plenum Press,291−312)を含むいわゆる実行戦略によって提示されている。これらの戦略はすべて、げっ歯類およびヒトの配列を比較して、げっ歯類からヒトコンセンサスへの特定のアミノ酸置換が適当であるか決定することをある程度含む。変異が何であれ、CDRグラフトによるヒト化抗体の生成に関する中心的な主題は、軽鎖および重鎖の両方からのこれらの3つの抗原結合部位がどこでげっ歯類発現抗体クローンから事実上除かれ、ヒト抗体のフレームワーク領域をコードする発現ベクターにサブクローニング(または「グラフト」)されるのかである。例えば、上記の技術を用いると、ヒト化抗体が発現され、ここで、可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域は、それぞれ配列番号:13、14および15で表され、可変重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域は、それぞれ、配列番号:20、21および22で表される。したがって、「ヒト化抗体」は、事実上、マウスのCDR(上述の戦略の1以上を組み込むことによって生じる任意のさらなる改善を差し引く)のみから構築された抗体であり、可変領域の残部および定常領域の全部はヒト由来のものである。
【0075】
本発明はまた、13C3抗体のVおよび/またはV領域に関する、単離された核酸分子および関連するアミノ酸配列に関し、より具体的には、13C3の生物学的に関連した部分、あるいは13C3、1D1、19A6もしくは他の13C3様抗体の親和性成熟型または他の変異型をコードする、単離された核酸分子(ポリヌクレオチド)に関する。これらの核酸は、実質的に他の核酸を含まない。ほとんどのクローニングの目的において、DNAは好ましい核酸である。これらのDNA分子は、発現ベクターにサブクローニングされ、続いて選択された宿主細胞にトランスフェクトされ、この際、組み換え宿主細胞は、13C3、1D1、19A6または13C3、1D1、もしくは19A6様抗体あるいはその親和性成熟型の、関連する部分の実質的な水準の源を提供する。このような手法は、scFvの生成などの様々な用途に、または、IgG抗体などの、ヒトCおよびC領域をコードする哺乳類の発現ベクターシステムにおけるこれらのVおよびV鎖の共発現のために、用いられうる。遺伝子コードの縮重は、2つのアミノ酸を除くすべてについて、1を超えるコドンが特定のアミノ酸をコードするものである。これは、本発明の抗体をコードする合成DNA(この際、合成DNAのヌクレオチド配列が本明細書中に開示されたヌクレオチド配列と大きく異なるが、なおこのような抗体をコードする)の構築を可能にする。このような合成DNAは、本発明の技術的範囲に含まれることを意図している。このような合成DNAを特定の宿主細胞または生物体に発現させようとする場合、このような合成DNAのコドン使用は、その特定の宿主のコドン使用を反映し、したがって本発明の抗体の発現のより高い水準をもたらすように調節されうる。換言すると、特定のアミノ酸をコードするさまざまなコドンにおけるこの重複は、本発明の技術的範囲に含まれる。したがって、本発明はまた、以下に示すように、同一のアミノ酸の最終的な翻訳をコードする代替コドンを含むRNAをコードする、これらのDNA配列に向けられている。
【0076】
【化10】

【0077】
次いで、このような組み換え発現ベクターは、代替抗体の形態を生成するために適当な細胞株に安定にまたは過渡的にトランスフェクトされうる。
【0078】
本発明は、同一の抗体またはその部分を発現する異なるDNA分子(例えば、IgGの同一のscFvあるいはVおよび/またはV部分をコードする代替核酸分子)を与えうる、コドン重複の存在に言及する。本明細書の目的のためには、1以上の置換されたコドンを有する配列は、縮重変異(degenerate variation)として定義されるであろう。配列変異の他の原因は、RNAエディティングを通して生じうる。このようなRNAエディティングは、オープンリーディングフレームの変化が、発現されたタンパク質のアミノ酸残基の変化をもたらさない、他の形態のコドン重複をもたらしうる。発現された抗体の最終的な物理的特性を改善する、DNA配列または翻訳された抗体における変異もまた、本発明の技術的範囲に含まれる。そのため、本発明は、(i)特に制限されないが、13C3、19A6および1D1などの、13C3様抗体の親和性成熟型;および/または(ii)特に制限されないが、13C3、19A6および/または1D1などの13C3様抗体の変異型;特に制限されないが、公知の親和性成熟法および部位特異的変異を導入するための公知の組み換えDNA技術を通して生成された、CDR1、CDR2および/またはCDR3領域における1以上の変異を含む;に関する。このような単離された、または精製された核酸分子は、13C3様抗体のVHおよび/またはVL領域を提示するであろう。これらの核酸は、実質的に他の核酸を含まない。ほとんどのクローニングの目的において、DNAは好ましい核酸である。これらのDNA分子は、発現ベクターにサブクローニングされ、次いで選択された宿主細胞にトランスフェクトされ、この際、組み換え宿主細胞は、13C3様抗体またはその親和性成熟型の関連する部分の実質的な水準の源を提供する。このような手法は、scFvの生成などの様々な用途に、または、IgG抗体などのヒトCHおよびCL領域をコードする哺乳類の発現ベクターシステムにおけるこれらのVHおよびVL鎖の共発現のために用いられうる。
【0079】
本発明はまた、13C3様抗体のそれぞれの重および/または軽領域をコードする核酸分子を含む、原核生物および真核生物の両方の組み換えベクターならびに組み換え宿主に関する。これらの核酸分子は、全体的にまたは部分的に、自然には結合しない他のDNA分子(すなわち、組み換えヒト抗体の生成に用いられる免疫グロブリン遺伝子を含むDNA分子)と結合し、それぞれのヒト組み換え抗体をコードする「組み換えDNA分子」を形成しうる。これらのベクターは、DNAまたはRNAから構成されうる。ほとんどのクローニングの目的において、DNAベクターが好ましい。典型的なベクターとしては、プラスミド、修飾ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体、およびエピソームまたは集積化DNAの他の形態が挙げられる。特定の遺伝子トランスファー、組み換えヒト抗体の生成、または他の用途のための適当なベクターを決定することは、当業者の範囲内である。所望の核酸分子を発現ベクターにサブクローニングし、前記ベクターを含む宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする方法、およびそれぞれの発現ベクターを宿主細胞に導入し、前記宿主細胞を適当な環境下で培養する段階を含む、実質的に純粋なタンパク質を作製する方法は公知である。このように製造された抗体(IgG組み換えヒト抗体など)は、通常の方法で宿主細胞から採取されうる。任意の公知の発現ベクターは、適当なプロモーターおよび他の適当な転写調節要素を含む任意のベクターを含めて、本発明のこの部分を実施するために用いられうる。得られた発現構築物は、原核生物および真核生物の宿主細胞中に移動され、組み換えタンパク質を産生する。本明細書中、発現ベクターは、適当な宿主におけるクローン化DNAの転写およびそのrnRNAの翻訳に必要なDNA配列として定義される。このようなベクターは、バクテリア、藍藻、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞などの様々な宿主において、真核細胞のDNAの発現に用いられうる。特異的に設計されたベクターは、バクテリア−酵母またはバクテリア−動物細胞のような宿主間でDNAの相互自律増殖を可能にする。適切に構築された発現ベクターは、宿主細胞での自律的複製のための複製起点、選択可能マーカー、限られた数の有用な制限酵素部位、高コピー数の可能性および活性プロモーターを含まなければならない。プロモーターは、RNAポリメラーゼにDNAに結合させ、RNA合成を開始させるDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、rnRNAに高頻度で開始させるものである。このような操作の技術は、Sambrookらの文献(1989,Molecular Cloning.A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York)に記載されており、当業者に公知であり利用可能である。発現ベクターとしては、特に制限されないが、クローニングベクター、修飾(改変)クローニングベクター、特異的に設計されたプラスミドまたはウイルスが挙げられる。適当な市販されている哺乳類の発現ベクターとしては、特に制限されないが、pcDNA3.neo(インビトロジェン)、pcDNA3.1(インビトロジェン)、pCI−neo(プロメガ)、pLITMUS28、pLITMUS29、pLITMUS38およびpLITMUS39(New England Bioloabs)、pcDNAI、pcDNAIanp(インビトロジェン)、pcDNA3(インビトロジェン)、pMClneo(ストラタジーン)、pXTl(ストラタジーン)、pSG5(ストラタジーン)、EBO pSV2−neo(ATCC 37593) pBPV−l(8−2) (ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)、ならびに1ZD35(ATCC 37565)が挙げられる。また、多様なバクテリアの発現ベクターが用いられ、特に制限されないが、pCR2.1(インビトロジェン)、pET1 la(Novagen)、lambda gtl 1(インビトロジェン)、およびpKK223−3(ファルマシア)が挙げられる。加えて、様々な真菌細胞の発現ベクターが用いられ、特に制限されないが、pYES2(インビトロジェン)およびPichie発現ベクター(インビトロジェン)が挙げられる。また、多様な昆虫の細胞の発現ベクターが用いられ、特に制限されないが、pBlueBacIIIおよびpBlueBacHis2(インビトロジェン)、ならびにpAcG2T(Pharmingen)が挙げられる。
【0080】
組み換え宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよく、特に制限されないが、大腸菌などのバクテリア、酵母などの真菌細胞、特に制限されないが、ウシ、ブタ、サル、およびげっ歯類由来の細胞株などの哺乳類の細胞、ならびに昆虫の細胞が挙げられる。適当な哺乳類種としては、特に制限されないが、L細胞L−M(TK−)(ATCCCCL1.3)、L細胞L−M(ATCC CCL 1.2)、Saos−2(ATCCHTB−85)、293(ATCCCRL1573)、Raji(ATCC CCL 86)、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−l(ATCC CRL1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCCCCL171)、およびCPAE(ATCC CCL 209)が挙げられる。
【0081】
また、上記で概説した再エンジニアリング(re−engineered)抗体に対する他の改善は、完全なヒトモノクローナル抗体の生成である。第1は、免疫系を有し、これによってマウス抗体遺伝子が不活性化され、順に機能的ヒト抗体遺伝子のレパートリーで置き換えられるが、一方でマウス免疫系の他の成分を変化させない、遺伝子改変(genetically engineered)マウス種の使用を含む。このような遺伝子改変マウスは、天然のインビボの免疫応答および高い親和性の完全なヒトモノクローナル抗体をもたらす親和性成熟過程を可能にする。この技術はまた、現在では当該分野で公知であり、特に制限されないが、米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,114,598号;第6,150,584号および関連するファミリー(Abgenixに帰属され、そのXenoMouse技術を開示する);に加えて、米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,874,299号;および第5,770,429号(GenPharm Internationalに帰属され、「UltraMab Human Antibody Development System」の傘下でMedarexを通して入手可能)などの様々な文献に全体的に詳細に記載されている。また、Kellermanおよび Greenの総説(2002,Curr.Opinion in Biotechnology 13:593−597)を参照のこと。
【0082】
最後に、多くの技術を用いてライブラリから抗体フラグメントを選択する技術は、当業者に適用可能であり、特に制限されないが、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun,1997,Proc.Nat.Acad.Sci.94:4937−4942)、バクテリアディスプレイ(Georgiou,et al.,1997,Nature Biotechnology 15:29−34)および/または酵母ディスプレイ(Kieke,et al.,1997,Protein Engineering 10:1303−1310)などが、標的サイトカインに特異的に結合する一本鎖抗体を選択するための先に議論した技術の代替として用いられうる。一本鎖抗体は、フィラメント状ファージ技術を用いて直接製造された一本鎖抗体のライブラリから選択される。ファージディスプレイ技術は当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,565,332号;第5,733,743号;第5,871,907号;第5,872,215号;第5,885,793号;第5,962,255号;第6,140,471号;第6,225,447号;第6,291650号;第6,492,160号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号;第6,593,081号に加えて、他の米国ファミリーまたは1992年5月24日に提出された独国特許第9206318号の優先権に基づく出願に開示される、ケンブリッジアンタイボディテクノロジー(CAT)社の技術を参照;また、Vaughn,et al.1996,Nature Biotechnology 14:309−314を参照)。一本鎖抗体はまた、DNA増幅法(例えば、PCR)などの使用可能な組み換えDNA技術を用いることによって、または、場合によっては、それぞれのハイブリドーマcDNAを鋳型として用いることによって、設計および構築されうる。一本鎖抗体は、単一特異性または二特異性、二価または四価でありうる。一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列は、以下に説明するように、手動または自動ヌクレオチド合成を用いて構築され、標準的な組み換えDNA法を用いて発現構築物にクローニングされ、そして細胞に導入されてコード配列を発現する。
【0083】
本発明はさらに、アルツハイマー病に関連するフィブリルおよび/または老人斑の形成を阻害するための予防上または治療上の選択を供給する、有効量の13C3様抗体または親和性成熟型を含む、抗体を用いた薬剤組成物に関する。本発明の抗体を用いた薬剤組成物は、当該分野で公知の多数の戦略によって製剤化されうる(例えば、McGoff and Scher,2000,Solution Formulation of Proteins/Peptides:McNally,E.J.,ed.Protein Formulation and Delivery.New York,NY:Marcel Dekker;pp.139−158;Akers and Defilippis,2000,Peptides and Proteins as Parenteral Solutions:Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins.Philadelphia,PA:Talyor and Francis;pp.145−177;Akers et al.,2002,Pharm.Biotechnol.14:41−121を参照)。患者に投与するのに適した製薬上許容される組成物は、生物学的活性を維持し、一方でまた許容される温度範囲内での保存の間の最大安定性を促進する製剤中に、抗体の有効量を含むであろう。薬剤組成物はまた、所望の製剤に依存して、製薬上許容される希釈剤、製薬上許容される担体および/または製薬上許容される賦形剤、あるいは動物またはヒトに投与するための薬剤組成物の製剤に通常用いられる任意のこのようなビヒクルを含みうる。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響しないように選択される。このような希釈剤の例としては、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、およびハンク溶液が挙げられる。本発明の薬剤組成物または製剤に有用な賦形剤の量は、必要とする被験者に運搬されたときに抗体が均一に分散されるように、抗体を組成物の全体に均一に分布させる量である。これは、所望の有益な苦痛緩和または治癒の結果を与えつつ、同時に、高すぎる濃度によって生じうるいかなる副作用も最小にする濃度に、抗体を希釈することに役立ちうる。これは、保存効果もまた有しうる。したがって、高い生理学的活性を有する抗体に対しては、より多くの賦形剤が用いられるであろう。一方、より低い生理学的活性を示す任意の活性成分に対しては、より少ない量の賦形剤が用いられるであろう。一般に、組成物中の賦形剤の量は、組成物の総量の約50重量%〜99.9重量%でありうる。抗体が特に低い生理学的活性を示す場合、賦形剤の量は1重量%の少量でありうる。一方、特に高い生理学的活性を有する抗体に対しては、賦形剤の量は、約98.0重量%〜約99.9重量%でありうる。加えて、前記抗体は、「化学的誘導体」(通常は基礎分子の一部ではない、さらなる化学的部分を含む分子)の形態で投与されうる。これらの部分は、生物学的薬剤の溶解度、半減期、吸収などを改善しうる。または、これらの部分は、抗体の望ましくない副作用を軽減しうる。薬剤組成物はまた、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの大きな、ゆっくりと代謝される高分子、および共重合体(例えばラテックス官能化セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸共重合体、および脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)を含みうる。加えて、これらの担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能しうる。非経口投与のためには、本発明の薬剤は、水油、生理食塩水、グリセロールまたはエタノールなどの滅菌液でありうる、製薬上の担体を含む生理学的に許容される希釈剤中の、物質の溶液または懸濁液の注射可能な投与量として投与されうる。さらに、湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝剤などの補助剤が組成物中に存在しうる。薬剤組成物の他の成分は、石油、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、および鉱物油である。一般に、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール類は、特に注射可能溶液において、好ましい液体の担体である。
【0084】
抗体製剤は、液体の形態または固体の形態でありうる。固体製剤は、一般に、凍結乾燥され、一回または複数回の投与の前に、溶液中に投入される。前記製剤は、熱変性を避けるために、極端な温度またはpHにさらされてはならない。したがって、本発明の抗体組成物を生物学的に関連したpH範囲内で製剤化することが不可欠である。保存の間に適当なpHを維持するために緩衝化された溶液が、特に製剤から投与までより長い期間保存される液体製剤のために示される。現在まで、液体および固体製剤の両方が、より長期間の安定性を保つために、より低い温度(通常2〜8℃)での保存を要する。製剤化された抗体組成物、特に液体製剤は、保管中のタンパク質分解の防止または最小化のために、特に制限されないが、有効な濃度(通常<1% w/v)のベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、メチルパラベン、および/またはプロピルパラベンなどの静菌剤を含みうる。静菌剤は、患者によっては禁忌でありうる。したがって、凍結乾燥された製剤は、このような成分を含む、または含まない溶液中に再構成されうる。特に制限されないが、抗凍結剤としての糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリセロールおよびズルシトールなどのポリヒドロキシ炭化水素および/またはスクロース、ラクトース、マルトースまたはトレハロースなどの二糖が挙げられるが必ずしもこれらに制限されない)および、場合によっては、関連する塩(特に制限されないが、例えば、NaCl、KClまたはLiCl)などのさらなる成分が、緩衝化された液体または固体の抗体製剤に添加されうる。これらの抗体製剤、特に長期間の保存が予定されている液体製剤は、2〜8℃またはそれ以上の温度での長期間の安定性を促進しつつ、また、非経口注射に有用な製剤を作製するために有用な、合計オスモル濃度の範囲に依存するであろう。合計オスモル濃度(溶液中の総分子数)の有効な範囲は、約200mOs/Lから約800mOs/Lである。スクロースまたはソルビトールなどの抗凍結剤の量は、溶液の合計オスモル濃度が適当な範囲内に維持されるように、製剤中の塩の量に依存することは明らかであろう。したがって、無塩製剤は、約5%〜約25%のスクロースを含んでもよく、スクロースの好ましい範囲は約7%〜約15%であり、無塩製剤における特に好ましいスクロース濃度は10%〜12%である。または、無塩のソルビトールベースの製剤は、約3%〜約12%の範囲でソルビトールを含んでもよく、好ましい範囲は約4%〜7%であり、無塩製剤におけるソルビトールの特に好ましい範囲は約5%〜約6%である。無塩製剤は、もちろん、有効なオスモル濃度の水準を維持するために、それぞれの抗凍結剤をより高い濃度範囲で含んでもよい。これらの製剤はまた、二価陽イオン(MgCl、CaClおよびMnClなどが挙げられるが必ずしもこれらに制限されない);および非イオン性界面活性剤(ポリソルベート−80(Tween 80(登録商標))、ポリソルベート−60(Tween 60(登録商標))、ポリソルベート−40(Tween 40(登録商標))およびポリソルベート−20(Tween 20(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij 58(登録商標)、Brij 35(登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない)に加えて、Triton X−100(登録商標)、Triton X 114(登録商標)、NP40(登録商標)、Span 85およびPluronicシリーズの非イオン性界面活性剤(例えば、Pluronic 121)などの他のものが挙げられる);を含んでもよい。このような成分の任意の組み合わせは、可能な静菌剤の含有を含めて、本発明の抗体含有製剤を満たすために有用でありうる。本発明の抗体組成物はまた、通常は免疫グロブリン分子の一部ではない、さらなる化学的部分を含む抗体を記載する、「化学的誘導体」(例えば、ペグ化)でありうる。このような部分は、基礎分子の溶解度、半減期、吸収などを改善しうる。または、前記部分は、基礎分子の望ましくない副作用を軽減しうる、もしくは基礎分子の毒性を低下させうる。
【0085】
多様な担体、希釈剤、賦形剤などの数々の例が知られており、その内容が参照として本明細書中に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.;Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990)に加えて、本明細書中で引用された文献に開示されている。簡単に説明すれば、改善された移動、運搬、耐性などを提供するために、適当な担体、賦形剤および他の物質が薬剤組成物の製剤に組み込まれうることが理解されるであろう。生物学的薬剤および/またはさらなる活性成分を担体に組み込む方法は、当業者に公知であり、生物学的薬剤の性質および本発明を実施する者によって選択された担体の性質に依存する。イオン結合、ゲル封入、または担体内部への物理的なトラッピング、イオン導入、および生物学的薬剤の溶液への担体の浸漬が、開示された治療方法の実施に用いられる薬剤組成物の製剤において検討される、適当な例である。または、前記担体は、生物学的薬剤の希釈剤にすぎなくてもよい。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、無水吸収ベース、水中油または油中水型エマルション、カルボワックス(carbowax)エマルション(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。本発明の化合物を用いた投与量計画は、患者の型、種、年齢、体重、性別、および医学的状態;治療される状態の重症度;投与経路;患者の腎臓、肝臓、および心臓血管の機能;ならびに採用されるその特定の生物学的薬剤を含む、さまざまな因子に従って選択される。通常の技術を有する医師または獣医は、状態の進行の防止、対抗、または停止のために必要な薬剤の有効量を容易に決定および処方できるであろう。薬剤の濃度を、毒性がなく、効果が得られる範囲に達成する際の最適精度は、標的部位への薬剤のアベイラビリティの速度論に基づく計画を必要とする。これは、薬剤の分布、平衡、および除去の考慮を含む。製剤中の活性成分が製剤によって不活性化されず、製剤が生理学的に適合すれば、上述の製剤のいずれもが、本発明に従って治療およびセラピーに適しうる。
【0086】
本発明の薬剤組成物は、当該分野で適用可能な任意の方法、戦略および/または組み合わせで、アルツハイマー病に対する治療上の治療を提供するのに十分な量で、宿主に投与されうる。これらの組成物は、公知の様々な経路、特に非経口経路(特に制限されないが、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、または皮下(SC)投与などの非経口経路;ここで、IV投与は治療上の抗体の投与の技術分野において標準である;)で、個人に提供されうる。これらの組成物は、別個または複数の投与量(すなわち、治療計画を通して製剤の滅菌状態を維持することによる、時間差の抗体の投与)で投与されうる。本発明の化合物を用いた投与量計画は、患者(ヒトの患者など)の型、種、年齢、体重、性別、および医学的状態;治療される状態の重症度;投与経路;患者の腎臓、肝臓、および心臓血管の機能;ならびに採用されるその特定の抗体を含む、さまざまな因子に従って選択される。通常の技術を有する医師または獣医は、抗体の有効な治療上の量を容易に決定および処方できるであろう。抗体の濃度を、毒性がなく、効果が得られる範囲に達成する際の最適精度は、標的部位への薬剤のアベイラビリティの速度論に基づく計画を必要とする。これは、薬剤の分布、平衡、および除去の考慮を含む。本明細書中に記載された抗体は、適当な投与量で単独で用いてもよい。または、他の物質との共投与または逐次的投与も望ましい。本発明の抗体の治療上の投与量計画を、代替の予防上または治療上の計画と併用して与えることも可能であろう。有効な投与量計画は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与された他の医薬、および治療が予防的であるか治療的であるか、を含む多くの異なる因子に依存して変化するであろう。13C3様抗体の投与では、投与量は、宿主の体重に対して約0.0001〜100mg/kgであり、より通常には0.01〜5mg/kgである。アルツハイマー病の場合、アミロイド沈着は脳で起こり、本発明の薬剤はまた、本発明の薬剤の血液−脳境界を越える通過を増加させる他の物質と併用して投与されうる。
【0087】
本発明の13C3様抗体組成物の運搬および投与量計画に関する他の形態は、非注射可能または注射可能なデバイスを含みうる、非経口経路を介した薬剤運搬に関する。典型的には、注射可能な組成物は、液体の溶液または懸濁液して調製されてもよく;また、注射前に、液体ビヒクルの溶液もしくは懸濁液に適した固体形態が調製されてもよい。調製はまた、上述したように、乳化されうる、またはリポソームもしくはポリラクチド、ポリグリコリド、もしくはアジュバント効果を高めるための共重合体などのマイクロ粒子中に封入されうる(Langer,1990,Science249:1527−1523;Hanes,1997,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−119を参照)。本発明の薬剤は、活性成分の持続またはパルス放出を可能にするように製剤されうる、デポ注射またはインプラント調製の形態で投与されうる。
【0088】
具体的な実施形態としては、本明細書中で議論したように、さらに当該分野で知られているように、PLGAマイクロ粒子に加えて、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)(PEVAc)を含むポリマー系非分解性ビヒクルが挙げられる。加えて、抗体を用いた治療上の製品の制御放出および局所的運搬が、Grainger,et al.,2004,Expert Opin.Biol.Ther.4(7):1029−1044)に解説されており、これはその全体が本明細書中に参照として組み込まれる。抗体を封入することができる適当なマイクロカプセルとしては、さらに、コアセルベーション法または界面重合によって調製された、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセル、およびポリメチルメタクリレートのマイクロカプセルが挙げられる。「IGF−1持続放出製剤の製造方法」と題されたPCT国際出願公開WO 99/24061;ここで、タンパク質がPLGAマイクロ粒子に封入されており、この文献は、その全体が参照として本明細書中に組み込まれる;を参照のこと。加えて、リポソームまたはアルブミンマイクロ粒子などの、マイクロエマルションまたはコロイド状薬剤運搬システムもまた用いられうる。他の好ましい持続放出組成物は、投与の部位に抗体を保持するために、生体接着性材料を採用する。上述したように、持続放出製剤は、その中に抗体が処理され、非即時的放出を提供する、生分解性ポリマーを含みうる。非注射可能デバイスは、本明細書中、「インプラント」、「製薬デポインプラント」、「デポインプラント」、「非注射可能デポ」、またはいくつかのこのような同様の用語で記述されうる。通常のデポインプラントとしては、特に制限されないが、固体生分解性および非生体分解性ポリマーデバイス(伸長高分子(extended polymer)または同軸ロッド形状デバイスなど)に加えて、同様に当該分野で公知の多数のポンプシステムが挙げられる。注射可能デバイスは、ボーラス注射(注射の後の薬剤の放出および消失)と、保存リザーバーを注射部位に提供し、長期間にわたる生物学的薬剤の持続放出を可能にする、リポジトリまたはデポ注射とに分けられる。デポインプラントは、抗体の長期間にわたる長時間放出のための適当なリザーバーを提供するために、運搬の位置に外科的に繋留されうる。このようなデバイスは、あらかじめ選択された期間にわたる治療に、治療上または予防上必要な量で薬剤製剤を運ぶことができるであろう。デポインプラントはまた、治療期間中の身体プロセス(タンパク質分解など)による分解(劣化)からの製剤の保護を提供しうる。当該分野で知られているように、「持続放出」の用語は、このような物質のブロック重合体マトリックスからの長期間にわたる漸進的な(連続的または不連続の)放出を意味する。具体的なデバイスにかかわらず、13C3様抗体組成物の持続放出は、局所的な、生物学的に有効な抗体の濃度をもたらすであろう。生物学的薬剤の持続放出は、製剤に依存して、1日、数日、1週間以上であるが、最も可能性が高いのは、1か月以上、または約6か月までの期間であろう。当該分野で公知の天然または合成高分子は、その多用途の分解速度、安全性、および生体適合性などの特性のため、デポインプラントとして有用であろう。これらの共重合体は、活性成分の薬剤動力学を修正する、物質を酵素の攻撃の他、接着または注射部位での時間による分解から遮蔽するために、操作されうる。当業者であれば、当該分野において、それぞれの製造工程、使用される触媒、および持続放出デポインプラントまたはデポ注射の最終的な分子量を含む、これらの共重合体の特性を操作するための十分な教示があることを理解するであろう。天然高分子としては、特に制限されないが、タンパク質(例えば、コラーゲン、アルブミンまたはゼラチン);多糖(セルロース、でんぷん、アルギン酸塩、キチン、キトサン、シクロデキストリン、デキストラン、ヒアルロン酸)および脂質が挙げられる。生分解性合成高分子としては、特に制限されないが、各種ポリエステル、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタミン酸塩との共重合体(Sidman et al.,1983,Biopolymers 22:547−556)、ポリラクチド([PLA];米国特許第3,773,919号および欧州特許第058,481号)、ポリラクチド−コ−グリコリドなどのポリラクテートポリグリコレート(PLGA)(例えば、米国特許第4,767,628号および第5,654,008号参照)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルソエステル類、ポリアスピリン類、ポリホスファゲン類、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBT共重合体(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニクス)、PEO−PPO−PAA共重合体、PLGA−PEO−PLGA、ポリオルソエステル(POE)類、またはこれらの任意の組み合わせが、上述したように(例えば、米国特許第6,991,654号および米国特許出願第20050187631号を参照、いずれもその全体が参照として本明細書中に組み込まれる)挙げられ、ハイドロゲル(例えば、Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167−277;Langer,1982,Chem.Tech.12:98−105を参照)、非分解性エチレン−ビニルアセテート(例えば、エチレンビニルアセテートディスクおよびポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート))、Lupron Depot(商標)などの分解性乳酸グリコール酸共重合体、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)、ヒアルロン酸ゲル(例えば、米国特許第4,636,524号を参照)、アルギン酸懸濁液、ポリオルソエステル(POE)などが挙げられる。ポリラクチド(PLA)およびそのグリコリドとの共重合体(PLGA)は、PLA重合体を用いた最初の非経口持続放出製剤として1989年に承認されたLupron Depot(商標)の製品化によって当該分野で公知である。活性成分の持続放出を達成するために賦形剤としてPLAおよびPLGAを用いる製品のさらなる例としては、Atridox(PLA;歯周病)、Nutropin Depot(PLGA;hGHを含む)およびTrelstar Depot(PLGA;前立腺癌)が挙げられる。他の合成高分子としては、特に制限されないが、ポリ(c−カプロラクトン)、ポリ3−ヒドロキシブチレート、ポリ(β−リンゴ酸)およびポリ(ジオキサノン);ポリ無水物、ポリウレタン(WO 2005/013936を参照)、ポリアミド類、シクロデキストラン類、ポリオルソエステル類、n−ビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド/ポリエチレンテレフタレート、ポリホスファゼン、ポリホスフェート、ポリホスホネート、ポリオルソエステル、ポリシアノアクリレート、ポリエチレングリコール、ポリジヒドロピランおよびポリアセタールが挙げられる。非生分解性デバイスとしては、特に制限されないが、各種のセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、シリコン系インプラント(ポリジメチルシロキサン)、アクリル重合体(ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシ(エチルメチルアクリレート)の他、ポリエチレン−コ−(ビニルアセテート)、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポロキサミン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたは「テフロン(商標)」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキサイド−ポリスチレン、ポリ−a−クロロ−p−キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホンおよび関連する他の生体安定高分子が挙げられる。持続放出デポ製剤に適した担体としては、特に制限されないが、マイクロ粒子、フィルム、カプセル、粒子、ゲル、コーティング、マトリックス、ウエハー、錠剤または他の薬剤運搬組成物が挙げられる。このような持続放出製剤の例は、上述した通りである。さらに、米国特許第6,953,593号;第6,946,146号;第6,656,508号;第6,541,033号;および第6,451,346号(これらのそれぞれの内容は参照として本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。投与量形態は、薬剤製剤を、予め選択された期間にわたる治療に、治療上要求される量および濃度で運ぶことができなければならず、治療期間中、身体プロセスによる分解から製剤を十分に保護しなければならない。例えば、投与量形態は、代謝プロセスによる分解、および、例えば、リーク、クラック、破壊または変形などのリスクに対して保護する特性を有する材料で作製されたエクステリアによって囲まれていてもよい。これは、例えば、患者による通常の関節および他の動きの結果として薬剤放出デバイスにかかる物理的な力によって、または、例えば、対流ドラッグデリバリーデバイスにおいては、リザーバー内で生じた圧力に伴う物理的な力などの、使用中に受ける力の下で、投与量形態が制御されずに放出されることを防ぎうる。薬剤リザーバー、または薬剤を保持もしくは含有するための他の手段はまた、活性剤製剤との意図しない反応を避けるような材料で構成されなければならず、好ましくは生体適合性である(例えば、投与量形態がインプラントされる場合、それは患者の身体または体液に対して実質的に非反応性である)。一般に、それぞれの生物学的薬剤は、必要に応じて、少なくとも12時間から少なくとも1週間、そして最も多くは、薬剤を運搬するためのインプラントを介して、少なくとも10、20、30、100日もしくは少なくとも4か月、または少なくとも6か月以上、個人に投与される。13C3様抗体は、製剤が放出される部位の近くの組織の乱れまたは外傷を最小にするために、例えば、約0.001ml/日〜1ml/日のような相対的に低い体積速度で運搬されうる。前記製剤は、具体的な生物学的薬剤に依存して、低い投与量で、例えば、約0.01μg/時または0.1μg/時、0.25μg/時、1μg/時から、一般的には約200μg/時までの速度で放出されうる、または、前記製剤は、低い体積速度で、例えば、約0.001ml/日〜約1ml/日の体積速度で、例えば、0.01μg/日から約20mg/日までで運搬される。投与量は、用いられる活性成分(例えば、IgG抗体)の効能、バイオアベラビリティおよび毒性のような様々な因子、ならびに被験者の要求に依存する。
【0089】
本発明の、これらの、および他の目的、利点、ならびに特徴は、以下にさらに十分に説明する方法論および組成物の詳細を読むことによって明らかになるであろう。
【実施例】
【0090】
実施例1:アミロイドベータ(Aβ42)のプロトフィブリルの形態の調製
Aβ42合成ペプチド(カリフォルニア州、アメリカンペプタイド社)を、Fezoui et al.(Fezoui,et al.Amyloid 7(3):166−178.(2000))に記載の方法に従って調製した。簡単に説明すると、凍結乾燥されたAβ42を、2mMのNaOHに、1mg/mlの濃度(pH〜10.5)で溶解させ、その後超音波処理および凍結乾燥を行った。NaOH処理したAβを、1mg/mlの濃度で水に溶解させ、0.22μmのULTRAFREE−MCフィルター(Millipore,MA)を用いて濾過した。0.5mg/mlのペプチド溶液を、最終濃度が、リン酸塩:50mM、塩化ナトリウム:100mMに緩衝化し、室温で4時間インキュベートした。プロトフィブリルの形態を低分子量のタンパク質から分離するために、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて上清を分別した。次いで、精製されたSECフラクションを4℃で保存した。
【0091】
様々な形態のAβ42タンパク質は、単量体または二量体として互いに会合して高分子量オリゴマー(プロトフィブリル)を形成する能力を示すことがわかった(図1)。可溶性プロトフィブリルのさらなる凝集は、タンパク質の不溶性の形態を生成し、一方、プロトフィブリルは解離して低分子量の形態に戻りうる。
【0092】
Aβのプロトフィブリルの形態を低分子量のタンパク質から精製するために、Superdex 75サイズ排除カラムを用いてAKTAクロマトグラフィーシステムで試料を分別した。図2Aは、AD42合成ペプチドを室温でインキュベートしないと、オリゴマーが凝集せず、プロトフィブリルが形成されないことを示す。図2Bは、Aβ42合成ペプチドの4時間のインキュベーションの後、それに続くSEC精製が、決定的なプロトフィブリルのフラクションを示すことを表す。
【0093】
実施例2:プロトフィブリル型Aβに特異性を有するモノクローナル抗体の生成
13C3、19A6および1D1抗体を、公知のプロトコル(Harlow,et al.Cold Spring Harbor Laboratory.(1988))を用いて、Balb/cマウスをフィブリル型Aβタンパク質で免疫化することによって作製した。脾臓を除去し、いくつかの96ウェルプレート中でSP2骨髄腫細胞と融合させた。融合培地で成長をモニターし、抗体捕獲イムノアッセイによって、上清について、そのプロトフィブリル型フラクションに結合する能力をスクリーニングした。
【0094】
実施例3:プロトフィブリル型Aβに特異性を有するモノクローナル抗体の特性評価
ハイブリドーマ(13C3、19A6および1D1)から産生されたモノクローナル抗体をさらに特性評価するために、抗体捕獲アッセイを用いた。マイクロタイタープレートを用い、2μg/mlのプロトフィブリル型Aβ42タンパク質の溶液50μlを各ウェルに添加し、プレートを40℃で1晩インキュベートした。インキュベーションの後、残った抗原の溶液を除去し、PBS溶液で洗浄した。結合した抗原を含むプレートにハイブリドーマの上清の段階希釈液を添加し、室温で1時間インキュベートした。この一次抗体の溶液を除去し、ウェルを再びPBS溶液で洗浄した。次に、酵素標識二次抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。二次抗体の溶液の除去の後、結合した酵素に特異的な発色性基質を反応に添加し、捕獲された抗体の検出は、定量的な結果を与えた。
【0095】
さらに、二次試薬をアイソタイプ特異的抗免疫グロブリン抗体に変化させて、各モノクローナルの特定の免疫グロブリンのアイソタイプを同定した。これらの実験において、13C3、19A6および1D1モノクローナル抗体の結合特異性を比較するために、市販の抗Aβ42抗体を用いた。
【0096】
図3AおよびBは、抗体捕獲イムノアッセイにおいて13C3抗体の特異性を試験するために用いた、Aβ42ペプチドのプロトフィブリル(PF)および低分子量(LMW)の形態を表す。具体的には、図3Aは、13C3抗体がAβ42のプロトフィブリルの形態(PF)に特異的であり、タンパク質の低分子量(LMW)の形態を認識しないことを示す、ELISAから得られたプロットを表す。図3Bは、市販の4G8抗体を用いたELISAのデータを表し、これがAβ42タンパク質の低分子量およびプロトフィブリルの形態の両方を認識することを示す。
【0097】
実施例4:表面プラズモン共鳴法(bIACORE)を用いた、Aβ42のプロトフィブリルの形態に対するモノクローナル抗体の特異性
表1(下記)に記載の精製されたモノクローナル抗体を、文献のプロトコル(Nice,et al.BioEssays 21:339−352(1999))に従って、BIAcoreセンサーチップに固定化した。BIAcoreの光応答の高い感度は、反射率の変化を定量化し、リガンドのみのベースライン応答が発生する。相互作用分析が行なわれ、被分析物として、Aβ42のLMWの形態またはPFの形態が溶液中でセンサーチップ上に注入され、表面プラズモン共鳴における変化が、各抗体のLMWおよびPF Aβ42に結合する能力の特異性を同定する応答を発生させる。13C3および19A6抗体の両方が全て、Aβ42のLMWの形態に比べて、より高い特異性でPFの形態に結合した。この実験で用いた全ての抗体のうち、市販の抗体は、PF結合/LMW結合の比で示されるように、Aβ42のPFの形態よりもAβ42のLMW形態に対してより高い特異性を示した。
【0098】
【表1】

【0099】
表面プラズモン共鳴分析は、センサーグラムによって、13C3(図4B)がAβ42タンパク質のLMWの形態を結合しないことを示した。しかしながら、4G8(図4A)は、LMW Aβ42タンパク質の標準的な会合/解離曲線を示す。抗体アイソタイプコントロールIgG1(図C)は、同様に、LMW Aβを結合しない。表面プラズモン共鳴法の検出原理を用いた自動BIAcoreシステムがこの実験に使用された。19A6抗体の結合特異性データは、19A6が結合比5.8を有し、これは結合比5.3の13C3と同等であることを示した。
【0100】
実施例5:13C3抗体のエピトープマッピング
13C3、1D1および19A6のエピトープのマッピングを、文献のプロトコル(Korth,et al.390:74(1997))に従って、RepliTopeマイクロアレイシステム(JPTペプチドテクノロジー社)を用いて行なった。マイクロアレイ上の各スポットは、Aβ42の13アミノ酸のペプチドを含み、ここで、マイクロアレイ上の位置のそれぞれのシフトは、アミノ酸シフト(N−末端からC−末端へ)、すなわち、配列番号:23、配列番号:24、・・・配列番号:51、および配列番号:52を表す。以下に、スライドアレイ上の位置に対応するペプチドと、その正確なアミノ酸配列を示す。一度ペプチドがRepliTopeマイクロアレイに固定されると、試料は13C3抗体とともにインキュベートされ、その後、続いて、選択された化学発光標識に結合した二次で標識した。信号を与えるスポットは、抗体によるタンパク質上のエピトープ結合部位を表す。
【0101】
【化11】

【0102】
図5Aは、Aβ1−42ペプチド上の抗体13C3、1D1および4G8のエピトープを同定する、RepliTopeマイクロアレイ実験からのドットブロットを表す。結合した抗体は、化学発光信号によって表される。図5Bは、配列中に生じたときの13C3エピトープのポリペプチドセグメントを示す、Aβ1−42アミノ酸配列を表す。1D1抗体は、13C3と同じエピトープを示し、一方、市販の4G8抗体は、異なるエピトープを同定した。
【0103】
実施例6:13C3特異性の特性評価
図6は、Aβオリゴマーを分泌する細胞株である7PA2細胞株からの上清のサイズ排除クロマトグラフィーからのフラクションを表す。SEC精製7PA2からのプロトフィブリル型および低分子量フラクションとの13C3抗体の結合をさらに特性評価するために、抗体捕獲アッセイを用いた。マイクロタイタープレートを用いて、各フラクションの1:200希釈液100μlを各ウェルに添加し、プレートを4℃で1晩インキュベートした。インキュベーションの後、残った抗原の溶液を除去し、PBS溶液で洗浄した。結合した抗原を含むプレートに13C3の上清の段階希釈液を添加し、室温で1時間インキュベートした。この一次抗体の溶液を除去し、ウェルを再びPBS溶液で洗浄した。次に、酵素標識二次抗体を添加して、室温で1時間インキュベートした。二次抗体の溶液の除去の後、結合した酵素に特異的な発色性基質を反応に添加し、捕獲された抗体の検出は、定量的な結果を与えた。このアッセイは、13C3抗体はプロトフィブリル型のフラクションのみを特異的に認識するが、4G8抗体はすべてのフラクションを認識することを確認した。7PA2細胞株は、ハーバード大学医学部のDennis J.Selkoeによって提供された。
【0104】
実施例7:EMによる13C3の反応性の特性評価
染色方法は、標準的なプロトコル(Brenner,et al.Biochim.Biophys.Ada 34,103−110(1959))を用いて行なった。少量(10μl)の0.2mg/mlのプロトフィブリルの溶液を、カーボン被膜Formvarグリッド(400メッシュ)に2分間塗布した。次いで、グリッドを1%BSA中でブロックし、13C3抗体と共にインキュベートし、その後、続いて金コロイドに結合した二次抗体と共にインキュベートした。試料を、30秒ずつ、連続して2回、2%のリンタングステン酸の液滴上に設置することによって陰性染色した。過剰の染料を濾紙で取り除き、グリッドを空気乾燥させ、JEOL 100CXの透過電子顕微鏡で80kVで観察した。画像を大フォーマットKodak 4489ネガに記録し、フラットベッドスキャナでデジタル化した。
【0105】
IEM(免疫電子顕微鏡)像は、抗Aβ抗体クローン13C3のAβ42線維への結合特異性を示し(図7Bおよび7C)、一方、アイソタイプコントロール抗体であるIgG1は結合を示さない(図7A)ことを示す。二次抗体は、金コロイド粒子に結合している。
【0106】
実施例8:ヒトADのマウスモデルの13C3治療
13C3モノクローナル抗体を、アルツハイマー病マウスモデルであるTgCRND8におけるAβプラークの治療に用いた。マウスは、1月齢以内に現れる、マウスの脳におけるAβアミロイドプラークの沈着を加速する、ヒトAPP695 cDNA導入遺伝子(トランスジーン)を有する。5週齢の5匹のTgCRND8マウスの試料群は、7週間の間、週1回、マウスの体重に対して10mg/kgの濃度で、13C3モノクローナル抗体の免疫化を与えられた。5匹のTgCRND8マウスの第2群に、治療コースを与えられたが、アイソタイプコントロールIgG1抗体が投与された。週1回に代えて、週2回の治療にして実験を繰り返した。
【0107】
コントロールおよび実験動物の両方を12週齢で致死させた。脳の組織標本から、13C3で治療したマウスにおいてAβプラークの減少が明らかになった。
【0108】
TgCRND8マウスからの凍結保存された脳の連続切片を、13C3またはIgG1モノクローナル抗体で処理した。図8Aおよび8Bは、それぞれの抗体間のAβアミロイドプラークの数の差を表す。
【0109】
統計的t検定によって、週1回の13C3抗体での治療は、アルツハイマー病モデルにおいてAβアミロイドプラークを減少させる(図9A)ことが示される。しかしながら、週2回の治療(図9B)は、同様の水準のプラークの減少を示す。
【0110】
上記のTgCRND8マウスはすべて、トロント大学のDavid Westaway博士によって提供されたものである。
【0111】
実施例9:MAB 13C3の可変領域の分子特性評価
IgG重鎖可変領域およびIgGカッパ軽鎖領域を、13C3ハイブリドーマからクローニングした。重鎖および軽鎖の両方の配列(図10)が、EMBL−バンクおよびEnsemblデータライブラリ(Retter et al.Nucleic Acids Res.33:D671−4(2005))から抽出された、ヒトおよびマウスの免疫グロブリン遺伝子座からの生殖系列バリアブル遺伝子のデータベースである、VBASE2(http://www.vbase2.org)を用いて解析された。解析の結果から、重鎖および軽鎖可変領域の両方が、新たに同定された免疫グロブリンからであるが、データベースの他の免疫グロブリンの可変領域と、それぞれ73%および81%の同一性を有することが確認された。また、フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)が、これらのデータベースに対して、これらの配列において同定された。結果は、VBASE、RABATおよびIMGT/LIGMデータベースに対して配列を分析した場合とわずかに異なっただけであった。
【0112】
実施例10:APPトランスジェニックマウスにおける13C3の急性末梢投与は、参照抗体3D6の投与と異なり血漿Aβの増加を招かない
APPトランスジェニックマウス(Thy APPSL、10−14週齢)に、抗体13C3、コントロールIgG1(DM4、Aβを認識しない)、およびAβのすべてのコンフォマーを認識する参照抗Aβ抗体3D6を、10mg/kg(すなわち300μg/マウス)の投与量で腹腔内注射した。血漿Aβは、同じマウスで、注射前の時間0、注射後6時間、24時間および7日で定量した。血漿Aβの定量は、13C3または3D6のAβへの結合を妨げない抗Aβ抗体対を用いたイムノアッセイによって行なった。
【0113】
Aβのすべてのコンフォマーに対する抗体である3D6の投与は、おそらくAβ分子を分解から保護することによって、血漿Aβの大幅な増加を招く。この効果は、抗Aβ免疫療法の作用のメカニズムとして、潜在的な「末梢沈降」仮説を示唆するために用いられた(Demattos et al.,2001,PNAS 17:8850)。3D6と異なって、13C3の投与は、全く血漿Aβの濃度の上昇を導かない。これは、Aβのプロトフィブリルの形態に対して特異的であり、Aβペプチドの可溶性単量体またはオリゴマーの形態を認識しない抗体である13C3の特性と一致する。これらの形態は、おそらく、血漿中に存在するものである。
【0114】
実施例11:13C3はAD脳におけるヒトアミロイド神経炎プラーク(凝集)を認識するが、参照3D6抗Aβ抗体と異なってAβ沈着を拡散しない
ヒトのアルツハイマーと診断された脳の切片についての免疫組織化学研究を、13C3および3D6抗体を用いて、標準的な技術を用いて行なった。抗体の免疫染色を、DAB色原体を用いて検出した(図12)。13C3は、成熟アミロイド神経炎プラーク(濃密プラークともいう)の典型的なモルフォロジーを有するアミロイド沈着を、より軽いハロに囲まれた非常に高密度のコアで、またはより大きなプラークの場合、非常に強い染色で、標識する。隣接する脳の切片において、より低倍率で見た場合(図12、左側のパネル)、3D6は、13C3に比べてより多くの対象を染色する。より高倍率でのさらなる特性評価(図12、右側のパネル)は、3D6が、13C3と同じ成熟アミロイド神経炎プラークを標識し、加えて、抗Aβ免疫標識を用いて古くから記載されていた、多数の拡散アミロイド沈着を標識することを示した。拡散プラークは、チオフラビンSおよびフィブリルの他の組織学的マーカーによって検出されないため、文献(Mann,1989,Ann.Med.21:133)に記載されるように、フィブリルの性質を有さない。2つの抗体の感度の差を除外するために、同様の実験を高濃度(20μg/ml)の13C3を用いて行なったが、再び、拡散沈着は検出されなかった。このデータは、3D6と異なって、Aβのプロトフィブリルの形態に対して特異的であり、Aβペプチドの可溶性単量体またはオリゴマーの形態を認識しない抗体である13C3の特性と一致する。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、アルツハイマー病の治療および診断に適用される。
【0116】
本明細書中に引用されるすべての文献、特許文献および非特許文献の両方は、本発明は属する技術分野における当業者の技術水準を示す。これらの文献はすべて、各文献が具体的におよび個々に参照として組み込まれることを示された場合と同等の範囲まで、全体が参照として本明細書中に組み込まれる。
【0117】
本明細書中に記載された発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および応用を単に説明するためのものであると理解されるべきである。したがって、以下の特許請求の範囲にとって定義される本発明の精神および技術的範囲を逸脱することなく、例示的な実施形態に多様な修正が行われ、他の変更が行なわれうることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、
これによって、プロトフィブリルエピトープは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含むAβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示され、
前記抗体は、Aβペプチドの単量体または二量体の形態に対して最小の親和性を示す、または親和性を示さない、単離された抗体。
【請求項2】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒト化モノクローナル抗体である、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
ヒトモノクローナル抗体である、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
Aβペプチドのプロトフィブリルの形態のコンフォメーショナルエピトープと特異的に相互作用し、これに対して測定可能な親和性を示す、単離された抗体であって、
これによって、プロトフィブリルエピトープは、配列番号:3および配列番号:4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むAβ−プロトフィブリルの形態の露出領域によって提示され、
前記抗体は、Aβペプチドの単量体または二量体の形態に対して最小の親和性を示す、または親和性を示さない、単離された抗体。
【請求項6】
モノクローナル抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
13C3と称される、請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
ヒト化モノクローナル抗体である、請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
ヒトモノクローナル抗体である、請求項6に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
配列番号:5で表されるアミノ酸配列から構成される可変軽鎖をさらに含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項11】
配列番号:7で表されるアミノ酸配列から構成される可変重鎖をさらに含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項12】
配列番号:13で表されるCDR1領域、配列番号:14で表されるCDR2領域、および配列番号:15で表されるCDR3を含む可変軽鎖をさらに含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項13】
配列番号:20で表されるCDR1領域、配列番号:21で表されるCDR2領域、および配列番号:22で表されるCDR3から構成される可変重鎖をさらに含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項14】
β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープにインビトロで特異的に結合するが、β−アミロイドペプチドの低分子量の形態に対して最小の親和性を示す、モノクローナル抗体の製造方法であって、
(a)哺乳類をβ−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態で免疫化する段階;
(b)前記哺乳類のB細胞を採取する段階;
(c)採取したB細胞からハイブリドーマを作製し、この際、前記ハイブリドーマが抗体を産生する、段階;および
(d)β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態に特異的に結合するが、β−アミロイドペプチドの単量体または二量体の形態に対して最小の親和性を示す抗体を産生するハイブリドーマを選択する段階;
を含む、方法。
【請求項15】
組織または体液の試料中のβ−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態の量を定量する方法であって、
(a)被験者から組織または体液の試料を得る段階;
(b)前記組織または体液の試料を、β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態に特異的に結合するが、β−アミロイドペプチドの低分子量の形態に対して最小の親和性を示す、抗体またはそのフラグメントに接触させる段階;および、
(c)試料中のβ−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態の量を定量する段階;
を含む、方法。
【請求項16】
前記抗体が、13C3、1D1、および19A6からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
β−アミロイドペプチドの低分子量の形態に対して最小の親和性を示しつつ、β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態を検出するキットであって、
(a)β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態の反復コンフォメーショナルエピトープにインビトロで特異的に結合可能であるが、β−アミロイドペプチドの低分子量の形態に対して最小の親和性を示す、抗体またはそのフラグメント;および、
(b)前記抗体またはそのフラグメントに、直接的または間接的に結合する、試薬;
を含む、キット。
【請求項18】
前記抗体が、13C3、1D1、および19A6からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
β−アミロイド線維プラークの形成および沈着を阻害するために、少なくとも、β−アミロイドペプチドのプロトフィブリルの形態と特異的に相互作用する可変領域フラグメントの製薬上有効な量を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類におけるβ−アミロイド線維プラークの沈着を治療または予防する方法。
【請求項20】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記モノクローナル抗体が、13C3、19A6および1D1からなる群から選択される抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記モノクローナル抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
13C3、19A6および1D1からなる群から選択される抗体を分泌する、ハイブリドーマ。
【請求項25】
モノクローナル抗体13C3の可変重鎖フラグメントをコードする単離された核酸分子であって、前記可変重鎖フラグメントが、配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項26】
モノクローナル抗体13C3の可変重鎖フラグメントをコードする単離された核酸分子であって、前記核酸分子が、配列番号:8で表されるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項27】
組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体13C3の可変重鎖フラグメントを発現させるための発現ベクターであって、請求項26に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項28】
モノクローナル抗体13C3の可変重鎖フラグメントを発現する宿主細胞であって、請求項27に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項29】
モノクローナル抗体13C3の可変軽鎖フラグメントをコードする単離された核酸分子であって、前記可変軽鎖フラグメントが、配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項30】
モノクローナル抗体13C3の可変軽鎖フラグメントをコードする単離された核酸分子であって、前記核酸分子が、配列番号:6で表されるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項31】
組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体13C3の可変軽鎖フラグメントを発現させるための発現ベクターであって、請求項30に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項32】
モノクローナル抗体13C3の可変軽鎖フラグメントを発現する宿主細胞であって、請求項31に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項33】
配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体13C3の単離された可変重鎖フラグメント。
【請求項34】
配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体13C3の単離された可変軽鎖フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−504360(P2011−504360A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534239(P2010−534239)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083659
【国際公開番号】WO2009/065054
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(592054292)ザ ロックフェラー ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】