ベータ−2−ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型及びその使用
I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型。該変異型及び派生生成物の、異種移植片拒絶及びベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態の予防及び治療のため、並びに興味対象の異種タンパク質を発現するトランスジェニック動物及び組換え株化細胞を工学的に作製するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターで改変された細胞、動物又は植物、並びに該メガヌクレアーゼ変異型及びその派生生成物の、エクスビボゲノム療法(遺伝子細胞療法)及びゲノム工学のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
主要組織適合複合体(MHC、ヒトについてはHLAともよばれる)からのタンパク質は、非自己認識において主要な役割を有する。これらのタンパク質は、T細胞に対して抗原性ペプチドを提示する。これらは、2つの異なる複合体、MHCクラスI及びMHCクラスIIに分類できる。MHCクラスI複合体は、リガンド、又は特異的T細胞及びNK細胞免疫グロブリン様受容体である。これらは、非常に多形性のタンパク質、及び細胞表面でのMHC I複合体の組み立てに必要な小さいポリペプチドであるβ2-ミクログロブリンを含む(Zijlstraら, Nature, 1990, 344, 742〜746)。複合体の他の構成成分は、多重遺伝子族によりコードされるので、β2-ミクログロブリン遺伝子(ヒトにおいてB2M)のノックアウトは、MHC I複合体を抑制するのに最も単純な方法である(Kollerら, Proc. Nat. Acad. Sci. U. S. A., 1989, 86, 8932〜8935 ; Zijlstraら, Nature, 1990, 344, 742〜746)。
【0003】
非自己認識におけるそれらの中枢の役割のために、MHCタンパク質は、移植片拒絶においても主要な役割を有する。MHCクラスIタンパク質の破壊が、移植片拒絶を少なくとも部分的に緩和するであろうことが仮定できる。しかし、マウスでの研究により、より軽減された図が描かれた。明らかにNK細胞活性化の結果として、β2m-/-マウスからの造血幹細胞は迅速に拒絶されるが(Bixら, Nature, 1991, 349, 329〜331 ; Liaoら, Science, 1991, 253, 199〜202 ; Huangら, J. Immunol., 2005, 175, 3753〜3761; Ruggeriら, Immunol Rev, 2006, 214, 202〜218)、このようなKO動物からの腎臓及び膵島の同種移植片は、より寛容である(Markmannら, Transplantation, 1992, 54, 1085〜1089 ; Coffmanら, J. Immunol., 1993, 151, 425〜435)。つまり、少なくともある組織では、ヒトB2M遺伝子の不活性化は、移植における最も再発する問題の1つについての解決法を提供できる。このことは、膵臓、腎臓及び心臓を含む筋肉組織についての細胞療法における多くの用途に用いることができるだろう。前駆細胞を培養して、エクスビボで処理して、患者に再移植できる。
【0004】
さらに、免疫グロブリン、プレアルブミン及びアルツハイマー病のアミロイドで見出されるベータタンパク質(APP)と同様に、ベータ-2-ミクログロブリンは、ある病変状態におけるアミロイドのフィブリル状のコンホメーションを採用し得るベータ-プリーツシート構造を主にとる(Cunninghamら, Biochemistry, 1973, 12: 4811〜4821)。これは、血液透析関連アミロイド症を含む(HRA; Gorevicら, 1986, Proc. Nat. Acad. Sci. 83: 7908〜7912)。Zingraffら(New Eng. J. Med., 1990, 323: 1070〜1071)は、透析が行われなかったという事実にもかかわらず、ベータ-2-ミクログロブリンアミロイド症に罹患して、重篤な腎不全である患者について記載した。著者らは、いくらかのB2M変異型が、他のものよりもよりアミロイド発生性(amyloidogenic)であることも示唆した。つまり、ヒトB2M遺伝子の不活性化は、HRAのようなベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変を治療するための解決法も提供できるだろう。
【0005】
さらに、ベータ-2ミクログロブリンは、細胞の大多数において高度に発現される。ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座への興味対象の外因性遺伝子の挿入は、再現可能な発現レベルの組換えタンパク質の利点を有する。つまり、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座を標的にする遺伝子は、高レベルの興味対象のタンパク質を産生するトランスジェニック動物又は組換え株化細胞を工学的に作製する(engineering)ことを可能にする。
【0006】
相同遺伝子ターゲティング方策は、マウスB2M (又はβ2m)遺伝子を含む(Koller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1989, 86, 8932-8935)内因性遺伝子をノックアウトするか(Capecchi, M.R., Science, 1989, 244, 1288〜1292)、又は染色体に外因性配列をノックインするために用いられている。基本的に、標的にされた配列と相同性を有するDNAは、細胞の核に導入され、内因性の相同組換え装置が、次の工程を提供する(図1a)。相同組換え(HR)は、DNA2本鎖破断(double-strand break) (DSB)及びその他のDNA損傷の修復に関わる非常に保存されたDNA維持経路であるが(Rothstein, Methods Enzymol., 1983, 101, 202〜211; Paquesら, Microbiol Mol Biol Rev, 1999, 63, 349〜404; Sungら, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 2006, 7, 739〜750)、これは、多くの生物学的現象、例えば減数分裂における対立遺伝子の減数分裂再集合(Roeder, Genes Dev., 1997, 11, 2600〜2621)、酵母での交配型相互変換(Haber, Annu. Rev. Genet., 1998, 32, 561〜599)、及び新規対立遺伝子へのクラスIイントロン及びインテインの「ホーミング」の根底もなす。HRは、通常、内因性配列間の遺伝子情報の交換を促進するが、遺伝子ターゲティング実験において、これは、内因性染色体配列と外因性DNA構築物との間の交換を促進するために用いられる。しかし、このプロセスの効率は低い(トランスフェクションされた細胞の10-6〜10-9)。
【0007】
この効率は、標的遺伝子座内のDNA二本鎖破断(DSB)により増進できる。このようなDSBは、定義としては大きい配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼであるメガヌクレアーゼにより創出できる(Thierry, A.及びB. Dujon, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5625〜5631)。これらのタンパク質は、生細胞内の独特の部位を切断でき、それにより、遺伝子ターゲティングを、切断部位の近傍で1000倍以上増進する(Puchtaら, Nucleic Acids Res., 1993, 21, 5034〜5040 ; Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜8106; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜1973; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1996, 93, 5055〜5060; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜277; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 1444〜1448; Donohoら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 4070〜4078; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101) (図1b)。しかし、「ホーミングエンドヌクレアーゼ」ともよばれる天然メガヌクレアーゼが数百個同定されているが(Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)、切断可能配列のレパートリーは、ゲノムの複雑さを扱うには非常に限られており、選択される遺伝子には、通常、切断可能部位がない。理論的には、選択された特異性を有する人工配列特異的エンドヌクレアーゼの作製が、この制限を緩和できるだろう。よって、仕立てられた特異性を有するメガヌクレアーゼの作製が、熱心に研究されている。
【0008】
最近、ジンク(亜鉛)フィンガータンパク質の、クラスIIS制限エンドヌクレアーゼであるFokIの触媒ドメインとの融合を用いて、機能的配列特異的エンドヌクレアーゼが作製された(Smithら, Nucleic Acids Res., 1999, 27, 674〜681; Bibikovaら, Mol. Cell. Biol., 2001, 21, 289〜297; Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764; Porteus, M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300, 763〜 ; Alwinら, Mol. Ther., 2005, 12, 610〜617; Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651; Porteus, M.H., Mol. Ther., 2006, 13, 438〜446)。このようなヌクレアーゼは、リンパ球様系統からのヒト細胞におけるILR2G遺伝子の工学的操作のために、最近、用いることができた(Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651)。
【0009】
Cys2-His2型のジンクフィンガータンパク質(ZFP)の結合特異性は、おそらくそれらが単純(フィンガーあたり本質的に4つの残基により駆動される特異性)で、かつモジュール性のシステムを示す(Paboら, Annu. Rev. Biochem., 2001, 70, 313〜340; Jamiesonら, Nat. Rev. Drug Discov., 2003, 2, 361〜368)ので、操作が容易である。Pabo (Rebar, E.J.及びC.O. Pabo, Science, 1994, 263, 671〜673 ; Kim, J.S.及びC.O. Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 1998, 95, 2812〜2817)、Klug (Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167 ; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)、及びBarbas (Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167 ; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)の研究室からの研究は、ほとんどのG/ANNG/ANNG/ANN配列に結合できる新規な人工ZFPの大きなレパートリーをもたらした。
【0010】
にもかかわらず、ZFPは、特に、治療用途のような非常に高いレベルの特異性を必要とする用途のためには制限を有する。最近、融合でのFokIヌクレアーゼ活性が、FokIのいくつかのDNA結合欠損変異体の存在下を含んで、DNAループを介して種々の距離で分けられたいずれか1つの認識部位又は2つの部位と作用することが示された(Cattoら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 1711〜1720)。つまり、哺乳動物細胞及びショウジョウバエ属(Drosophila)での毒性により示されるように、特異性は非常に退化しているはずである(Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175 ; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764〜)。
【0011】
野生においては、メガヌクレアーゼは、実質的にホーミングエンドヌクレアーゼにより代表される。ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、数百のタンパク質ファミリーを含む天然メガヌクレアーゼの広範なファミリーである(Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。これらのタンパク質は、「ホーミング」とよばれるプロセスにより伝播される可動性の遺伝要素によりコードされる。エンドヌクレアーゼは、可動性要素が不在の同族対立遺伝子を切断し、そのことにより受容遺伝子座へ可動性DNAを重複させる相同組換え事象を刺激する。効率及び特異性の点でのそれらの珍しい切断特性に鑑みて、これらは、新規で高度に特異的なエンドヌクレアーゼをもたらす理想的な足場であり得る。
【0012】
HEは、4つの主要なファミリーに属する。触媒中心に含まれる保存されたペプチドモチーフにちなんで名付けられたLAGLIDADGファミリーは、最も広範で、最もよく特徴付けされた群である。7つの構造が、現在、入手可能である。このファミリーからのほとんどのタンパク質は単量体であり、2つのLAGLIDADGモチーフを示すが、いくつかは1つのモチーフしか有さないが、二量体を形成して、パリンドローム又は偽パリンドローム(pseudo-palindromic)標的配列を切断する。
【0013】
LAGLIDADGペプチドはファミリーのメンバーのうちの唯一の保存領域であるが、これらのタンパク質は、非常によく似た構造を有する(図2)。触媒コアは、I-CreI (Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316)及びI-MsoI (Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)のようなホモ二量体について完全な2回回転対称、そしてI-SceI (Moureら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 685〜69)、I-DmoI (Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286, 1123〜1136)又はI-AniI (Bolducら, Genes Dev., 2003, 17, 2875〜2888)のような単量体については偽対称の2つのDNA結合ドメインで挟まれる。両方の単量体、又は両方のドメイン(単量体タンパク質について)は、2価のカチオンの周りに編成された触媒コアに寄与する。触媒コアのすぐ上には、2つのLAGLIDADGペプチドが、二量体形成界面において必須の役割も演じている。DNA結合は、DNA主溝上にある2つの典型的なサドル形ββαββ折り畳みに依存する。他のドメインは、例えば、タンパク質スプライシングドメインがDNA結合にも関わる、PI-PfuI (Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300, 889〜901)及びPI-SceI (Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 764〜770)のようなインテイン内で見出すことができる。
【0014】
N-末端I-DmoIドメインを、I-CreI単量体と融合させることによる機能的キメラメガヌクレアーゼの作製は(Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905 ; Epinatら, Nucleic Acids Res, 2003, 31, 2952〜62; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)、LAGLIDADGタンパク質の可塑性を示している。
さらに、種々のグループが、合理的アプローチを用いて、I-CreI(Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜1664; Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; 国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Rosenら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 4791〜4800; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)、I-SceI (Doyonら, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 2477〜2484)、PI-SceI (Gimbleら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 993〜1008)及びI-MsoI (Ashworthら, Nature, 2006, 441, 656〜659)の特異性を局所的に変更している。
【0015】
さらに、特異性が局所的に変更された数百のI-CreI誘導体が、半合理的アプローチとハイスループットスクリーニングとを組み合わせることにより、工学的に作製された:
- I-CreIの残基Q44、R68及びR70又はQ44、R68、D75及びI77に突然変異を誘発して、DNA標的の±3〜5位にて特異性が変更された(5NNN DNA標的)一連の変異型を、スクリーニングにより同定した(国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
【0016】
- I-CreIの残基K28、N30及びQ38、N30、Y33及びQ38又はK28、Y33、Q38及びS40に突然変異を誘発し、DNA標的の±8〜10位にて特異性が変更された(10NNN DNA標的)一連の変異型を、スクリーニングにより同定した(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
I-CreIの残基28〜40及び44〜77は、ホーミングエンドヌクレアーゼのハーフサイト(half-site)の異なる部分に結合できる、2つの分離可能な機能的サブドメインを形成することが示された(Smithら Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
【0017】
同じ単量体内のI-CreIの2つのサブドメインからの変異の組み合わせは、各サブドメインが結合する±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを含む、パリンドローム組み合わせDNA標的配列を切断できる新規なキメラ分子(ホモ二量体)を設計することを可能にした(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
2つの異なる変異型を組み合わせ、それぞれの変異DNA標的配列の異なる半分の融合から得られるキメラ標的を切断できる機能的ヘテロ二量体エンドヌクレアーゼに組み立てた(Arnouldら, 上記; 国際PCT出願WO 2006/097854)。興味深いことに、新規なタンパク質は、正しい折り畳み及び安定性、高い活性並びに狭い特異性を維持した。
【0018】
2つの前者の工程の組み合わせは、4つの異なるサブドメインを含むより大きいコンビナトリアルアプローチを可能にする。異なるサブドメインは、別々に改変し、組み合わせて、図3に示すような、選択された特異性を有する、完全に再設計された変異型(ヘテロ二量体又は単鎖分子)を得ることができる。第1の工程において、新規なメガヌクレアーゼの対を、切断したい標的に由来するパリンドローム標的を切断する新しい分子(「ハーフメガヌクレアーゼ」)に組み合わせる。次いで、このような「ハーフメガヌクレアーゼ」の組み合わせは、興味対象の標的を切断するヘテロ二量体種をもたらし得る。4組の変異を、モデル標的配列又はヒトRAG1遺伝子からの配列を切断するヘテロ二量体エンドヌクレアーゼに組み合わせることが、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)に記載されている。
これらの変異型は、真性の染色体配列を切断するために用いることができ、遺伝子療法を含むいくつかの分野における新規な展望を開く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者らは、I-CreI変異型により切断され得るベータ-2ミクログロブリン遺伝子内の一連のDNA標的を同定した(図4)。図3に示すコンビナトリアルアプローチを用いて、I-CreIタンパク質のDNA結合ドメインを完全に再設計し、それにより、完全に工学的に改変された特異性を有する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製して、ヒトB2M遺伝子からのDNA標的を切断した。ヒトB2M遺伝子からのゲノムDNA標的を切断できるI-CreI変異型は、ヒトにおける異種移植片拒絶を防ぐ目的のために、ヒトB2M遺伝子をエクスビボで不活性化するために用いることができる(図6)。その他の可能な用途は、ベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変のゲノム療法、及びベータ-2ミクログロブリン遺伝子座でのゲノム工学(ノックアウト及びノックイン)を含む。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、2つのI-CreI単量体のうちの少なくとも一方が、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型に関する。
本発明による変異型の切断活性は、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載されるもののような、任意の公知のインビトロ又はインビボ切断アッセイにより測定できる。例えば、本発明の変異型の切断活性は、レポーターベクターを用いる、酵母又は哺乳動物細胞での直列反復組換えアッセイ(direct repeat recombination assay)により測定できる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクターにクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮(truncated)非機能的コピー(直列反復)及び介在配列内にゲノムDNA標的配列を含む。変異型の発現は、ゲノムDNA標的配列を切断できる機能的エンドヌクレアーゼをもたらす。この切断は、直列反復間の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子をもたらし、その発現は、適切なアッセイによりモニターできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】遺伝子ターゲティング方策を説明する。
【図2】そのDNA標的に結合したI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの3次元構造を表す。
【図3】再設計されたホーミングエンドヌクレアーゼを作製するためのコンビナトリアルアプローチを示す。
【図4】ヒトB2M遺伝子(アクセッション番号NC_000015; 6673 pb)を表す。
【図5】標的のB2Mシリーズを表す。
【図6】メガヌクレアーゼにより誘発される組換えによる遺伝子の不活性化のための3つの方策を表す。
【図7】コンビナトリアル変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。
【図8】最適化変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。
【図9】コンビナトリアル変異体によるB2M11.3標的の切断を示す。
【図10】ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。
【図11】最適化ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。
【図12】pCLS1055ベクターマップを表す。
【図13】pCLS0542ベクターマップを表す。
【図14】pCLS1107ベクターマップを表す。
【図15】ヒトB2M遺伝子で見出されるメガヌクレアーゼ標的配列と、該DNA標的を切断できる、対応するI-CreI変異型を表す。
【図16】pCLS1069ベクターマップを表す。
【図17】pCLS1058ベクターマップを表す。
【図18】標的のB2M18シリーズを表す。
【図19】コンビナトリアル変異体によるB2M18.4標的の切断を示す。
【図20】標的のB2M20シリーズを表す。
【図21】コンビナトリアル変異体によるB2M20.4標的の切断を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表し、例えばQはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
- ヌクレオチドは、次のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa (プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc (ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0023】
- 「メガヌクレアーゼ」により、12〜45 bpの2本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意図する。該メガヌクレアーゼは、各ドメインが単量体上にある二量体酵素、又は単一ポリペプチド上に2つのドメインを含む単量体酵素のいずれかである。
- 「メガヌクレアーゼドメイン」により、メガヌクレアーゼのDNA標的の1つの半分と相互作用し、DNA標的の他方の半分と相互作用する同じメガヌクレアーゼの他方のドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能的メガヌクレアーゼを形成する領域を意図する。
【0024】
- 「メガヌクレアーゼ変異型」又は「変異型」により、野生型メガヌクレアーゼ(天然のメガヌクレアーゼ)のアミノ酸配列における少なくとも1つの残基の、別のアミノ酸での置き換えにより得ることができるメガヌクレアーゼを意図する。
- 「機能的変異型」により、DNA標的配列、好ましくは、親のメガヌクレアーゼにより切断されない新しい標的を切断できる変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列に接触するか、又は直接若しくは間接的に該DNA標的と相互作用する位置にてアミノ酸変動を有する。
- 「新規な特異性を有するメガヌクレアーゼ変異型」により、親のメガヌクレアーゼのものとは異なる切断標的のパターンを有する変異型を意図する。等価で、同様に用いられる用語「新規な特異性」「改変された特異性」「新規な切断特異性」「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことである。
【0025】
- 「I-CreI」により、配列表内の配列番号1又は配列番号107の配列に相当する配列SWISSPROT P05725又はpdbアクセッションコード1g9yを有する野生型I-CreIを意図する。
- 「ドメイン」又は「コアドメイン」により、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。該ドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれる4つのベータ鎖(β1β2β3β4)を含む。このドメインは、DNA標的の他方の半分と相互作用する別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能エンドヌクレアーゼを形成できる。例えば、二量体ホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。
【0026】
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」により、ペプチドスペーサーで連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的配列を切断できる。
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの独特の部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより接続されたLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
【0027】
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの二本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位と、C1221ともよばれる配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号2; 図5)のような派生パリンドローム配列を含む。
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」、「興味対象の部位」、「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」により、I-CreIのようなLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又は変異型、又はI-CreIに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼにより認識されかつ切断される20〜24 bpの2本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、そこでメガヌクレアーゼにより2本鎖破断(切断)が誘導される独特のDNAの位置、好ましくはゲノムの位置のことをいう。DNA標的は、C1221について上で示したように、2本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれについて、+2位及び-2位のヌクレオチドで生じる。そうでないと記載しない限り、I-Cre Iメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
【0028】
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」により、それぞれのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合を意図する。さらに、該標的の少なくとも一方の半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組み合わせたDNA標的)を含み得る。
【0029】
- 「ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子」により、哺乳動物のベータ-2-ミクログロブリン遺伝子を意図する。例えば、ヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子(B2M、6673bp)は、アクセッション番号NC_000015に相当する配列の42790977位〜42797649位に位置する。B2M遺伝子は、4つのエキソンを含む(エキソン1:1位〜127位;エキソン2:3937位〜4215位;エキソン3:4843位〜4870位;エキソン4:6121位〜6673位)。61位(エキソン1)〜4856位(エキソン3)にあるORFは、その5'及び3'末端でそれぞれ、短い及び長い非翻訳領域で挟まれている(図4)。
- 「ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列」、「ゲノムDNA標的配列」、「ゲノムDNA切断部位」、「ゲノムDNA標的」又は「ゲノム標的」により、メガヌクレアーゼ変異型により認識され切断される哺乳動物のベータ-2-ミクログロブリン遺伝子の20〜24 bpの配列を意図する。
【0030】
- 「ベクター」により、それが連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を意図する。
- 「相同な」により、配列同士の間の相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性を有する、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列させ得るそれぞれの配列中の位置の比較により決定できる。比較される配列中の位置が同じ塩基により占められる場合、その分子同士は、その位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又は一致するヌクレオチドの数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて、2つの配列間の同一性を計算することができ、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む。
【0031】
- 「個体」は、哺乳動物、及びその他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳類」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)、並びにその他、例えばウシ、ブタ、ウマを含む。
【0032】
- 変異により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列内の1つ又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。上記の変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造又はコードされたmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
【0033】
本発明による変異型は、ホモ二量体又はヘテロ二量体であり得る。好ましくは、これは、両方の単量体が、26位〜40位及び/又は44位〜77位で変異されているヘテロ二量体である。より好ましくは、両方の単量体は、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位の両方に異なる置換を有する。
上記の変異型の好ましい実施形態において、I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、26位、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある。
【0034】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、これは、DNA標的配列と接触するか、又はDNA主鎖若しくはヌクレオチド塩基と、直接若しくは水分子を介して相互作用する別のアミノ酸残基の位置での1つ又は複数の変異を含む。これらの残基は、当該技術において公知である(Juricaら, Molecular Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。特に、さらなる置換を、リン酸主鎖に接触する位置で、例えば最終C-末端ループ(137位〜143位)において導入できる。好ましくは、上記の残基は、DNA切断部位の結合及び切断に関わる。より好ましくは、上記の残基は、I-CreIの138位、139位、142位又は143位にある。各変異が、138位と139位の残基の対、及び142位と143位の残基の対から選択される残基の異なる対にあるという条件下で、2つの残基を1つの変異型内で変異させ得る。導入される変異は、最終C-末端ループの上記のアミノ酸の、I-CreI部位のリン酸主鎖との相互作用を改変する。好ましくは、138位又は139位の残基が、DNA切断部位のリン酸主鎖との水素結合の形成を妨げる疎水性アミノ酸で置換される。例えば、138位の残基がアラニンで置換されるか、又は139位の残基がメチオニンで置換される。142位又は143位の残基は、例えばグリシンのような小さいアミノ酸で置換されて、これらのアミノ酸残基の側鎖のサイズを減少させることが有利である。より好ましくは、最終C-末端ループ内の上記の置換は、I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する。
【0035】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、これは、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改善する1つ又は複数の変異を含む。
変異されるさらなる残基は、I-CreI配列全体、特にI-CreIのC-末端半分(80位〜163位)にあり得る。例えば、変異型は、2位、4位、19位、24位、31位、43位、49位、50位、53位、54位、56位、57位、59位、60位、64位、66位、69位、72位、73位、80位、81位、82位、83位、85位、87位、89位、92位、94位、96位、100位、103位、105位、107位、110位、111位、117位、120位、128位、129位、132位、135位、140位、142位、147位、153位、154位、155位、156位、157位、158位、159位、161位、163位に、1つ又は複数のさらなる置換を含む。好ましくは、上記の置換は、N2I、N2Y、K4Q、G19S、I24F、I24V、Q31L、F43L、T49A、Q50R、W53R、F54L、D56E、D56G、K57N、V59A、D60E、D60G、D60N、V64A、V64D、Y66C、D69G、D69E、S72F、S72P、S72T、V73I、E80G、I81T、I81V、K82E、K82R、P83Q、P83A、H85R、F87L、T89A、T89I、Q92L、Q92R、F94L、F94Y、K96R、K100R、K100Q、N103T、N103S、V105A、K107R、E110D、E110G、Q111L、E117G、D120G、W128R、V129A、I132V、L135P、T140M、K142R、T147A、T147N、D153G、D153V、S154G、L155Q、S156N、S156R、E157V、K158N、K159Q、K159R、S161P、S161F、S162F、P163L及びP163Qからなる群より選択される。より好ましくは、上記の変異は、G19S、I24V、F54L、F87L及びI132Vからなる群より選択される。
【0036】
変異型は、I-CreI配列のC-末端に挿入された1つ又は2つのさらなる残基も含み得る(164位及び165位)。例えば、Gを164位に挿入でき、T又はPを165位に挿入できる。
【0037】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記の置換は、元の(initial)アミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである。
本発明の変異型は、野生型I-CreI (配列番号1)、又はI-CreI足場タンパク質、例えば2位のアラニンの挿入、置換D75N、及びI-CreI配列のC-末端(164位〜166位)へのAADの挿入を有する配列番号106の足場(167アミノ酸)に由来してよい。
さらに、本発明の変異型は、配列のNH2末端及び/又はCOOH末端に挿入された1つ又は複数の残基を含み得る。例えば、タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)をNH2末端及び/又はCOOH末端に導入する。上記のタグは、該変異型の検出及び/又は精製に有用である。
【0038】
本発明による変異型は、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA標的配列を切断できるホモ二量体であり得る。
或いは、上記の変異型は、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に異なる置換を有する第1単量体及び第2単量体の会合により得られるヘテロ二量体であり、該ヘテロ二量体は、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる。
【0039】
上記の変異型により切断されるDNA標的配列は、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子のエキソン又はイントロン内であり得る。
【0040】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記のDNA標的配列は、ヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子(B2M遺伝子)からである。好ましくは、上記のDNA標的配列は、配列番号82〜91の配列(24 bp; 図4及び15)、及び該24 bp配列の一方又は両方の末端から1つ又は2つの末端塩基対を欠いた20〜22 bpの派生配列からなる群より選択される。コードエキソンは、遺伝子の小さい画分しか表さないので(図4)、最も可能性のある標的部位は、イントロン配列又は非翻訳エキソン配列で見出される。しかし、B2M18及びB2M20 (配列番号89及び90)のような標的は、B2Mオープンリーディングフレームで見出される。
【0041】
より好ましくは、変異型の単量体は、第1単量体及び第2単量体のそれぞれについて、少なくとも以下の置換を有する:
- Y33R、Q38A、Q44D、R68A、R70S、D75K及びI77R (第1単量体)、並びにK28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M4標的を切断する(図4及び15)、
- S32T、Y33T、Q44T、R68Y、R70S、D75Y及びI77V (第1単量体)、並びにY33R、Q38A、Q44N、R68Q、R70S、D75S及びI77V (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M10標的を切断する(図4及び15)、
- S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K又はS32A、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K (第1単量体)、並びにN30Q、Y33G、Q38C、R68N、R70S、D75N及びI77R (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M11標的を切断する(図4及び15)、
【0042】
- S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K (第1単量体)、並びにS32T、Q38S、Q44K、R70S及びI77A (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M13標的を切断する(図4及び15)、
- S32T、Y33T、Q44K、R68E、R70S及びI77R (第1単量体)、並びにN30A、Y33T、Q44N、R68K、R70S、D75H及びI77F (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M14標的を切断する(図4及び15)、
- S32R、Y33D、Q44A、R70S、D75E及びI77R (第1単量体)、並びにN30D、Y33R、Q44K、R68Y、R70S、D75N及びI77Q (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M16標的を切断する(図4及び15)、
- S32T、Q38W、Q44A、R70S、D75R及びI77Y (第1単量体)、並びにY33H、S40Q、Q44N、R70S、D75R及びI77Y (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M17標的を切断する(図4及び15)、
【0043】
- Y33H、Q38G、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V (第1単量体)、並びに以下からなる群より選択される第2単量体:N30A、Y33T、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;N30H、Y33C、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32G、Y33C、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32R、Y33T、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32G、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32A、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32G、Y33S、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;N30H、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;S32G、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;Y33C、S40Q、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;S32G、Y33S、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;S32G、Y33C、Q44T、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32A、Y33C、Q44T、R68Y、R70S、D75R及びI77Q ;S32G、Y33C、R68Y、R70S、D75R and I77V;S32G、Y33C、R68Y、R70S and D75R;S32G、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Y;S32A、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Y;S32R、Y33T、R68Y、R70S、D75R、I77Q及びD153G;N30H、Y33C、Q44R、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;これらの変異型は、エキソン2に位置するB2M18標的を切断する(図4及び15、表VII)、
【0044】
- Y33T、S40N、Q44T、R68Y、R70S、D75R及びI77V (第1単量体)、並びに以下からなる群より選択される第2単量体:K28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68S、R70S、D75S及びI77R;K28A、Y33S、S40R、R70S及びD75N;K28A、Y33T、S40R、R70S及びD75N;K28R、Y33A、Q38Y、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33N、Q38R、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33R、Q38Y、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33S、Q38R、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33S、Q38Y、S40Q、R70S及びD75N;K28T、Y33T、S40D、R70S及びD75;K28T、Y33T、S40R、R70S及びD75N;S32G、Y33C及びD75N;Y33C及びD75N;Y33S、S40R及びD75N;Y33S及びS40R;N30A及びY33G;N30A及びY33T;N30C及びY33A;N30G及びY33C;N30S、Y33S及びQ38T;N30A及びS32W;N30H及びY33K;N30R及びY33P;N30K及びY33T;N30P及びY33W;S32G及びY33P;S32T及びY33A;Y33T及びS40E;これらの変異型は、イントロン2-エキソン3接合部に位置するB2M20標的を切断する(図4及び15;表VIII)、並びに
- K28T、Y33R、S40R、Q44T、R70S及びD75Y (第1単量体)、並びにN30D、Y33R、Q44N、R68Y、R70S、D75Y及びI77Q (第2単量体);この変異型は、エキソン4に位置するB2M33標的を切断する(図4及び15)。
【0045】
より好ましくは、上記の変異型は、配列番号24〜28、126〜134の配列のいずれかを有する第1単量体と、配列番号37〜77及び135の配列のいずれか2を有する第2単量体とからなる。上記で定義されるB2M11標的を切断する単量体に由来するこの変異型は、B2M11標的の切断を増大させるさらなる置換を有する(図4及び15;表IV、V及びVI)。
【0046】
ヘテロ二量体変異型は、2つのI-CreI単量体間で分子間相互作用を形成する第1単量体及び第2単量体の残基に対応する少なくとも1対の興味対象の変異を有する偏性(obligate)ヘテロ二量体変異型であって、該対の第1変異が、第1単量体内にあり、該対の第2変異が第2単量体内にあり、該変異の対が、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのゲノムDNA標的を切断できる機能的へテロ二量体の形成を妨げることなく、それぞれの単量体からの機能的ホモ二量体の形成を損なう変異型であるのが有利である。
【0047】
単量体は、第1単量体及び第2単量体について、それぞれ以下の変異の対の少なくとも1つを有するのが有利である:
a) 8位のグルタミン酸の、塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、並びに7位のリジンの、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも一方の、アルギニンでの置換をさらに含み得る。
b) 61位のグルタミン酸の、塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、96位のリジンの、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも一方の、アルギニンでの置換をさらに含み得る。
【0048】
c) 97位のロイシンの、芳香族アミノ酸、好ましくはフェニルアラニンでの置換(第1単量体)、並びに54位のフェニルアラニンの、小さいアミノ酸、好ましくはグリシンでの置換(第2単量体);第1単量体は、54位のフェニルアラニンの、トリプトファンでの置換をさらに含むことができ、第2単量体は、58位のロイシン又は57位のリジンの、メチオニンでの置換をさらに含むことができる。
d) 137位のアスパラギン酸の、塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、並びに51位のアルギニンの、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体)。
例えば、第1単量体は、変異D137Rを、そして第2単量体は、変異R51Dを有し得る。
【0049】
偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、上記のa)、b)、c)又はd)で定義される変異の少なくとも2対を有利に含む。変異の対の一方は、有利には、c)又はd)で定義されるとおりであるのが有利である。好ましくは、一方の単量体は、7位及び96位のリジン残基の、酸性アミノ酸での置換を含み、他方の単量体は、8位及び61位のグルタミン酸残基の、塩基性アミノ酸での置換を含む。より好ましくは、偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、上記のa)、b)及びc)で定義される変異の3対を含む。偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、(i) E8R、E8K又はE8H、E61R、E61K又はE61H及びL97F、L97W又はL97Y; (ii) K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F、或いは(iii) K7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97Fから選択される変異を少なくとも有する第1単量体(A)と、(iv) K7E又はK7D、F54G又はF54A及びK96D又はK96E; (v) K7E、F54G、L58M及びK96E、或いは(vi) K7E、F54G、K57M及びK96Eの変異を少なくとも有する第2単量体(B)とからなる。例えば、第1単量体は、変異K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F、又はK7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97Fを有してよく、第2単量体は、変異K7E、F54G、L58M及びK96E又はK7E、F54G、K57M及びK96Eを有してよい。
【0050】
本発明の主題は、上記で定義されるI-CreI変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ(融合タンパク質)でもある。単鎖メガヌクレアーゼは、2つのI-CreI単量体、2つのI-CreIコアドメイン(I-CreIの6位〜94位)又は両方の組み合わせを含み得る。好ましくは、2つの単量体/コアドメイン又は両方の組み合わせは、ペプチドリンカーにより連結される。
【0051】
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。上記のポリヌクレオチドは、ホモ二量体若しくはヘテロ二量体変異型の1つの単量体、又は単鎖キメラメガヌクレアーゼの2つのドメイン/単量体をコードできる。
【0052】
本発明の主題は、本発明による変異型又は単鎖メガヌクレアーゼを発現するための組換えベクターでもある。組換えベクターは、上記で定義される変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。好ましい実施形態において、上記のベクターは、それぞれがヘテロ二量体変異型の1つの単量体をコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む。
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、或いは染色体、非染色体、半合成又は合成の核酸からなり得る線状若しくは環状のDNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自律複製できるもの(エピソームベクター)及び/又は連結された核酸の発現を可能にするもの(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、商業的に入手可能である。
【0053】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
好ましいベクターは、レンチウイルスベクター、特に自己不活化レンチウイルスベクター(self inactivacting lentiviral vectors)を含む。
【0054】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;S. cerevisiaeについてTRP1;E. coliにおいてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0055】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該変異型の産生又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、変異型がヘテロ二量体である場合、各単量体をコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-抗トリプシンプロテアーゼ、ヒトサーファクタント(SP)タンパク質A及びB、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
【0056】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、これは、上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティング構築物を含む。
或いは、I-CreI変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードするベクターと、ターゲティング構築物を含むベクターとは、異なるベクターである。
より好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)に記載の配列で挟まれた、導入される配列と
を含む。
【0057】
ゲノム療法又はノックアウト動物/細胞の作製のために、導入される配列は、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列である。遺伝子の機能を完全に不活性化するために、両方の相同染色体が標的にされなければならない。さらに、上記の配列は、b2-ミクログロブリン遺伝子又はその一部分を欠失してもよく、結局は、外因性遺伝子又はその一部分を導入してよい(ノックイン/遺伝子置き換え)。ノックイン動物/細胞を作製するために、興味対象部位を修復するDNAは、興味対象の外因性遺伝子の配列と、HPRT遺伝子のような選択マーカーとを含む。或いは、導入される配列は、特定の配列を改変するか、興味対象の内因性遺伝子を減弱若しくは活性化するか、又は興味対象の部位に変異を導入するために用いられる配列を含む、染色体DNAをある特定の様式で変更するために用いられるその他の任意の配列であり得る。このような染色体DNAの変更は、ゲノム工学のために用いてよい(動物モデル及びヒト株化細胞を含む組換え株化細胞)。
【0058】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の不活性化は、転写を妨害して、短縮タンパク質をもたらす転写終結シグナルの挿入により生じ得る(図6a)。この場合、導入される配列は、5'から3'の方向に、少なくとも転写終結配列(ポリA1)を含み、好ましくは、該配列はプロモーター及びマーカーオープンリーディングフレーム(ORF)を含むマーカーカセットと、第2転写終結配列(ポリA2; 図6a)とをさらに含む。この方策は、標的B2M4、B2M10、B2M11、B2M13、B2M14、B2M16、B2M17、B2M18及びB2M20 (配列番号82〜90; 図4及び15)のいずれかのような、B2Mプロモーターの下流とB2M停止コドンの上流の標的を切断するいずれのメガヌクレアーゼに対しても用いることができる。
【0059】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の不活性化は、コード配列を破壊するであろうマーカー遺伝子のB2Mオープンリーディングフレーム(ORF)内への挿入によっても生じる(図6b)。挿入は、さらに、切断部位を挟むORF配列の欠失、及び結局は興味対象の外因性遺伝子の挿入(遺伝子置き換え)を伴うことができる。この方策は、例えばB2M18又はB2M20 (配列番号90、91)を切断するメガヌクレアーゼのような、エキソン配列を切断するメガヌクレアーゼに対して用いることができる。
【0060】
さらに、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の不活性化は、転写産物を不安定化するであろう配列の挿入により生じることもできる。この方策は、図4及び15に示す標的(配列番号82〜91)のいずれかのようなB2Mプロモーターの下流の標的を切断する任意のメガヌクレアーゼに対して用いることができる。
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpを超える、より好ましくは200 bpを超える相同配列が用いられる。実際に、共有されるDNA相同性は、破断部位の上流及び下流を挟む領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つの腕の間に位置するべきである。
【0061】
よって、ターゲティング構築物は、好ましくは、200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。これは、切断を修復するための標的部位に接する少なくとも200 bpの相同配列を有するベータ-2ミクログロブリン遺伝子フラグメントと、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化するための配列と、上記で定義されるように、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を置き換えるための興味対象の外因性遺伝子の配列とを含む。
【0062】
配列の挿入のために、DNA相同性は、通常、破断部位の直接上流及び下流の領域に位置する(破断にすぐ接する配列;最小修復マトリクス)。しかし、挿入が、切断部位を挟むORF配列の欠失を伴う場合、共有されるDNA相同性は、欠失領域の上流及び下流の領域に位置する。
例えば、上記で定義される変異型のそれぞれにより切断されるB2M標的と、各変異型での切断を修復する最小マトリクスを、図15に示す。
【0063】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ(変異型又は単鎖派生キメラメガヌクレアーゼ)及び/又は上記のメガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの発現ベクターを含むことを特徴とする組成物でもある。
上記の組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義される、上記の変異型のゲノムDNA切断部位と相同性を有する配列で挟まれた、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む。
好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、又はこれは、本発明によるメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター内に含まれる。
【0064】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ及び/又は1つの発現ベクターの、提供者から必要とする個体(受容者)への細胞の移植の間の異種移植片拒絶の予防、改善又は治癒のための医薬品の製造のための使用でもある。
【0065】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ及び/又は1つの発現ベクターの、必要とする個体におけるベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態の予防、改善又は治癒のための医薬品の製造のための使用でもある。
メガヌクレアーゼの使用は、(a) 提供者/個体の体組織において、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位において、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより2本鎖切断を誘導し、(b) 該体組織に、ターゲティングDNAを導入する工程を少なくとも含み、該ターゲティングDNAは、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) 上記で定義されるような、ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際に、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性するDNAとを含む。ターゲティングDNAは、興味対象部位へのターゲティングDNAの導入に適する条件下で、体組織に導入される。ターゲティング構築物は、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を欠失させるための配列と、興味対象の外因性遺伝子の配列とを含み得る(遺伝子置き換え)。
【0066】
或いは、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子は、非相同末端結合(non-homologous end joining)による2本鎖破断の修復によるオープンリーディングフレームの突然変異誘発により不活性化させてよい(図6c)。修復マトリクスの不在下では、エキソン内のDNA 2本鎖破断は、誤りを起しやすい非相同末端結合経路NHEJにより実質的に修復され、小さい欠失をもたらし(数ヌクレオチド)、これが切断部位を不活性化して、フレームシフト変異をもたらす。
【0067】
この場合、メガヌクレアーゼの使用は、提供者/個体の体組織に、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖切断を誘導し、それにより、非相同末端結合による2本鎖破断の修復により、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子オープンリーディングフレームの突然変異誘発を誘導する工程を少なくとも含む。
【0068】
本発明によると、上記の2本鎖切断は、該メガヌクレアーゼを、提供者/個体からの体細胞(膵臓、腎臓、心臓、筋肉)に導入することにより導入し、次いで、改変された細胞を、受容者(異種移植)に移植するか、又は病気の個体(ベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変)に戻すことにより、エクスビボで誘導できる。
【0069】
本発明の主題は、必要とする個体において、移植の間の異種移植片拒絶を予防、改善又は治癒するための方法であって、該個体に上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む方法でもある。
【0070】
本発明の主題は、必要とする個体において、ベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態を予防、改善又は治癒するための方法であって、該個体に上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む方法でもある。
【0071】
本発明の主題は、さらに、上記で定義されるメガヌクレアーゼ、好ましくは発現ベクターに含まれる1つ又は2つのポリヌクレオチドの、非治療目的での、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座でのゲノム工学のための使用である(動物モデル及び組換え細胞作製:ノックイン又はノックアウト)。
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、ゲノムDNA標的配列を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位に2本鎖破断を誘導し、それによりDNA組換え事象、DNA欠失又は細胞死を誘導するためである。
【0072】
本発明によると、上記の2本鎖破断は、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子内の特定の配列を修復するため、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子内の特定の配列を改変するため、機能的ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を、変異遺伝子の代わりに回復するため、内因性ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を減弱又は活性化するため、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位に変異を導入するため、外因性遺伝子又はその一部分を導入するため、内因性ベータ-2ミクログロブリン遺伝子又はその一部分を不活性化又は欠失するため、染色体腕を転座させるため、又はDNAを修復されないままにして分解するためである。
【0073】
上記の使用の別の有利な実施形態によると、上記の変異型、ポリヌクレオチド、ベクターは、上記で定義されるターゲティングDNA構築物と会合する(associated)。
【0074】
本発明によるメガヌクレアーゼの使用の第1の実施形態において、これは、以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖破断を導入し、2) 標的にされる遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含むターゲティングDNA構築物を提供する。該メガヌクレアーゼは、細胞に直接、又は該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含み、用いられる細胞においてその発現に適する発現ベクターを介して提供できる。この方策は、標的部位にてDNA配列を導入するため、例えば薬物試験に用い得るノックイン若しくはノックアウト動物モデル又は株化細胞を作製するために用いられる。
【0075】
本発明によるメガヌクレアーゼの使用の第2の実施形態において、これは、少なくとも以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖破断を導入し、2) 該破断されたゲノム遺伝子座を、切断部位を取り囲む領域と相同性を有する染色体DNAとの相同組換えに適する条件下に維持する。
本発明によるメガヌクレアーゼの使用の第3の実施形態において、これは、少なくとも以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖破断を導入し、2) 該破断されたゲノム遺伝子座を、非相同末端結合による2本鎖破断の修復に適する条件下に維持する。
【0076】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリンノックイン又はノックアウト動物を作製する方法でもある:
(a) 動物の多能性前駆細胞又は胚に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、同時に又はその後、
(b) 工程(a)の動物の多能性前駆細胞又は胚に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際に興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入することにより、相同組換えにより興味対象部位が修復されたゲノム改変動物前駆細胞又は胚を作製し、
(c) 工程(b)のゲノム改変動物前駆細胞又は胚を、キメラ動物に成長させ、
(d) 工程(c)のキメラ動物からトランスジェニック動物を導く。
好ましくは、工程(c)は、キメラ動物を作製するために、工程(b)で作製されたゲノム改変前駆細胞を、芽細胞に導入することを含む。
【0077】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリンノックイン又はノックアウト細胞を作製するための方法でもある:
(a) 細胞に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、同時に又はその後、
(b) 工程(a)の細胞に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際に興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入することにより、相同組換えにより興味対象部位が修復された組換え細胞を作製し、
(c) 任意の適切な手段により、工程(b)の組換え細胞を単離する。
ターゲティングDNAは、ターゲティングDNAを興味対象部位に導入するのに適する条件下で、細胞に導入される。
【0078】
好ましい実施形態において、上記のターゲティングDNA構築物は、ベクターに挿入される。
或いは、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子は、非相同末端結合による2本鎖破断の修復により不活性化できる(図6c)。
【0079】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリンノックアウト動物を作製する方法でもある:
(a) 動物の多能性前駆細胞又は胚に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、そのことにより、非相同末端結合により2本鎖破断が修復されたゲノム改変前駆細胞又は胚を作製し、
(b) 工程(a)のゲノム改変動物前駆細胞又は胚を、キメラ動物に成長させ、
(c) 工程(b)のキメラ動物からトランスジェニック動物を導く。
好ましくは、工程(b)は、キメラ動物を作製するために、工程(a)で得られたゲノム改変前駆細胞を、芽細胞に導入することを含む。
【0080】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリン欠損細胞を作製する方法でもある:
(a) 細胞に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、そのことにより、非相同末端結合により2本鎖破断が修復されたゲノム改変HPRT欠損細胞を作製し、
(b) 任意の適切な手段により、工程(a)のゲノム改変HPRT欠損細胞を単離する。
【0081】
改変される細胞は、興味対象の任意の細胞であり得る。トランスジェニック/ノックアウト動物を作製するために、細胞は、当該技術において公知の胚性幹(ES)細胞のような多能性前駆細胞である。組換え株化細胞を作製するために、細胞は、有利には、例えばPerC6 (Fallauxら, Hum. Gene Ther. 9, 1909〜1917, 1998)又はHEK293 (ATCC # CRL-1573)細胞のようなヒト細胞であり得る。上記のメガヌクレアーゼは、細胞に直接、又は該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含み、用いられる細胞におけるその発現に適する発現ベクターを介して提供され得る。
【0082】
トランスジェニック動物/興味対象の異種タンパク質を発現するヒト株化細胞を含む組換え株化細胞を作製するために、ターゲティングDNAは、上記で定義されるように、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の上流及び下流の配列により挟まれた興味対象のタンパク質をコードする外因性遺伝子の配列とマーカー遺伝子とを含むことにより、相同組換えによって、興味対象外因性遺伝子でベータ-2ミクログロブリン遺伝子が置き換えられたゲノム改変細胞(動物前駆細胞又は胚/動物又はヒト細胞)が作製される。
外因性遺伝子及びマーカー遺伝子は、上記で定義されるように、トランスジェニック動物/組換え株化細胞において異種タンパク質/マーカーの発現を可能にするために、適切な発現カセットに挿入される。
【0083】
メガヌクレアーゼは、ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物のいずれかとして用いることができる。これは、個体の体細胞に、特定の型の細胞に適切な当該技術において公知の任意の簡便な手段により、単独で、又は少なくとも適切なビヒクル若しくは担体及び/又はターゲティングDNAとともに、導入される。
【0084】
本発明による使用の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、以下のものと会合する:
- リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI);この場合、該会合物は、投与され、標的体細胞に導入される。
- 膜移送ペプチド(membrane translocating peptides) (Bonetta, The Scientist, 2002, 16, 38; Fordら, Gene Ther., 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, Curr. Opin. Biotechnol., 2002, 13, 52〜56);この場合、変異型/単鎖メガヌクレアーゼの配列は、膜移送ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
【0085】
本発明による使用の別の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)及び/又はターゲティングDNAは、ベクターに挿入される。ターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸は、細胞に、種々の方法により導入できる(例えば注入、直接摂取、発射衝撃、リポソーム、エレクトロポレーション)。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて、細胞内で安定的又は一過的に発現させ得る。真核細胞における発現の方法は、当該技術において公知である(Current Protocols in Human Genetics: 12章 「Vectors For Gene Therapy」及び13章「Delivery Systems for Gene Therapy」を参照)。所望により、組換えタンパク質中に、核局在化シグナルを組み込んで、核内でそれが発現されることを確実にすることが好ましい。
【0086】
細胞内に一旦入ると、メガヌクレアーゼ及び存在するならばターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、細胞質から、核の作用部位に細胞により移入されるか又は移送される。
【0087】
治療目的のために、メガヌクレアーゼと、医薬的に許容される賦形剤とは、治療有効量で投与される。このような組み合わせは、投与される量が、生理的に効果をもたらす場合に「治療有効量」で投与されるという。ある因子は、その存在が、受容者の生理機能における検出可能な変化をもたらす場合に、生理的に効果をもたらす。この関係において、ある因子は、その存在が、標的にされた疾患の1つ又は複数の症状の重篤さの減少と、損傷又は異常のゲノム修正をもたらす場合に、生理的に効果をもたらす。
【0088】
本発明による使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、実質的に非免疫原性であり、すなわち、有害な免疫学的応答をほとんど又は全く生じない。この種の有害な免疫学的反応を緩和又は排除する種々の方法を、本発明に従って用いることができる。好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に有さない。望まない免疫学的反応を回避する別の方法は、メガヌクレアーゼを、ポリエチレングルコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは、500〜20,000ダルトンの平均分子量(MW)のもの)とコンジュゲートさせることである。例えばDavisら(US 4,179,337)により記載されるPEG又はPPGとのコンジュゲート形成は、抗ウイルス活性を有する、非免疫原性で、生理活性で、水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを提供できる。ポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを用いる同様の方法は、Saiferら(US 5,006,333)に記載されている。
【0089】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された、原核又は真核の宿主細胞にも関する。
本発明は、細胞の全て又は一部が、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されたことを特徴とする非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞とは、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
【0090】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型の、他のメガヌクレアーゼを作製するための足場としての使用でもある。例えば、第3回目の突然変異誘発及び選択/スクリーニングを、新規な第3世代のメガヌクレアーゼを作製する目的で、変異型に対して行うことができる。
【0091】
本発明によるメガヌクレアーゼの種々の使用及び該メガヌクレアーゼを用いる方法は、上記で定義されるI-CreI変異型、該変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ、該変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用を含む。
【0092】
本発明によるI-CreI変異型は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのゲノムDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型を工学的に作製する方法により得ることができる:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
(c) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0093】
(e) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
【0094】
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
(j) ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの上記のゲノムDNA標的を切断できる工程(i)からのヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする。
【0095】
工程(a)、(b)、(g)及び(h)は、特に、DNA標的配列に接触するか、又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用する別の位置にて、変異体の結合及び/又は切断特性を改善するための付加的な変異の導入を含んでよい。これらのことは、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるように、コンビナトリアルライブラリーを作製することにより行ってよい。
【0096】
さらに、工程(g)及び/又は(h)は、変異体全体、又は変異体の一部分、特に変異型のC-末端半分(80位〜163位)に対するランダム変異の導入をさらに含み得る。このことは、当該技術において公知であり、商業的に利用可能な標準の突然変異誘発の方法に従って、変異型のプールに対してランダム突然変異誘発ライブラリーを作製することにより行うことができる。
【0097】
工程(g)及び(h)における変異の(分子内)組み合わせは、公知のオーバーラップPCR法に従って、2つのサブドメインのそれぞれを含むオーバーラップフラグメントを増幅することにより行ってよい。
工程(i)における変異型の(分子間)組み合わせは、工程(g)からの1つの変異型を、工程(h)からの1つの変異型と同時発現させて、ヘテロ二量体の形成を可能にすることにより行われる。例えば、宿主細胞を、該変異型をコードする1つ又は2つの組換え発現ベクターで改変できる。次いで、国際PCT出願WO 2006/097854及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に以前に記載されたようにして、細胞を、変異型の発現を可能にする条件下で培養することにより、宿主細胞内でヘテロ二量体が形成される。
【0098】
工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)における選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458, Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962及びChamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178に記載されるような、インビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いて行うことができる。
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)は、インビボで、変異型により作製された変異DNA標的配列内の2本鎖破断が、陽性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は陰性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を、該DNA 2本鎖破断の組換え媒介修復により導く条件下で行われる。
【0099】
本発明の主題は、本発明に従う、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的を切断できる変異型を工学的に作製するために有用な、I-CreIの26位〜40位及び/又は44位〜77位に変異を有するI-CreI変異型でもある。特に、本発明は、配列番号78、79、80、81及び105の配列の変異型を含む、上記で定義されるI-CreI変異型を工学的に作製する方法の工程(c)〜(f)で定義されるようなI-CreI変異型を包含する。本発明は、配列番号29〜36の配列の変異型を含む、上記で定義されるI-CreI変異型を工学的に作製する方法の工程(g)及び(h)で定義されるI-CreI変異型も含む。
【0100】
興味対象の遺伝子からのDNA標的を切断できる単鎖キメラメガヌクレアーゼは、当該技術において公知の方法により、本発明による変異型から導かれる(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。このような方法はいずれも、本発明で定義される変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築するために用いることができる。
本発明で定義される変異型をコードするポリヌクレオチド配列は、当業者により知られる任意の方法により調製できる。例えば、これらは、cDNA鋳型から、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、該cDNAのコドンは、所望の発現系において該タンパク質を発現させるのに好ましいように選択される。
該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA技術及び遺伝子工学技術により得て、宿主細胞に導入できる。
【0101】
本発明で定義されるI-CreI変異型又は単鎖誘導体は、上記で定義されるポリペプチドを発現させることにより作製される。好ましくは、上記のポリペプチドは、1つの発現ベクター又は2つの発現ベクター(変異型のみの場合)により改変された宿主細胞又はトランスジェニック動物/植物内で、ポリペプチドの発現又は同時発現に適する条件下で、発現または同時発現され(変異型のみの場合)、変異型又は単鎖誘導体は、宿主細胞培養物またはトランスジェニック動物/植物から回収される。
【0102】
本発明の実行は、そうでないと記載しない限り、当該技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常の技術を用いる。このような技術は、文献に充分に説明されている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA):Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版(Sambrookら, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編, 1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries及びS. J. Higgins編 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames及びS. J. Higgins編 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson及びM. Simon編, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ、特に154巻及び155巻(Wuら編)及び185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller及びM. P. Calos編, 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編, Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編, 1986);並びにManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0103】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型及びその使用を説明する実施例及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の特徴をさらに含む。添付の図面において:
- 図1は、遺伝子ターゲティング方策を説明する。(a) 標的にされる遺伝子座に相同な配列で取り囲まれたマーカーを含む直鎖状配列を、核に導入でき、相同標的遺伝子座と組み換えることができる。この実験の設計は、今日、遺伝子ノックイン及び遺伝子ノックアウトについて最も広範なものである。マーカーの挿入は、遺伝子置き換えをもたらす、標的にされた遺伝子座内での欠失を伴い得ることに注目されたい。(b) メガヌクレアーゼにより誘発される遺伝子ターゲティング。この場合、ターゲティング配列は、しばしば、環状プラスミドの一部分である。
- 図2は、そのDNA標的に結合したI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの3次元構造を表す。触媒コアは、DNA主溝の上でサドル形相互作用界面を形成する2つのαββαββα折り畳みで囲まれる。
【0104】
- 図3は、再設計されたホーミングエンドヌクレアーゼを作製するためのコンビナトリアルアプローチを示す。局所的に特異性が変更されたI-CreI誘導体の大きい集団を作製する。次いで、2ステップコンビナトリアルアプローチを用いて、これらの変異体をホモ二量体タンパク質に組み立て(同じ単量体内での変異の組み合わせにより)、次いでヘテロ二量体に組み立てて、完全に再設計された特異性を有するメガヌクレアーゼを得る。
- 図4は、ヒトB2M遺伝子(アクセッション番号NC_000015; 6673 pb)を表す。エキソンを箱で囲む(エキソン1: 1位〜127位;エキソン2: 3937位〜4215位;エキソン3: 4843位〜4870位;エキソン4: 6121位〜6673位)。ORFは、61位(エキソン1)〜4856位(エキソン3)である。種々のメガヌクレアーゼ部位(B2Mn)を示す。
【0105】
- 図5は、標的のB2Mシリーズを表す。B2M11.2及びB2M11.3は、標的の1つの半分の鏡複製(mirror duplication)によりB2M標的に由来する2つのパリンドローム配列である。これらの2つの標的は、次に、B2M11.2及びB2M11.3標的中の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが、切断に対して何の影響も有さないとみなされる場合に、I-CreI標的により切断されることが見出された10GAA_P及び5TAG_P (B2M11.2)、並びに10CTG_P及び5TTT_P標的(B2M11.3)の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0106】
- 図6は、メガヌクレアーゼにより誘発される組換えによる遺伝子の不活性化のための3つの方策を表す。全ての3つの場合において、遺伝子の機能を完全に不活性化するためには、両方の相同染色体が標的にされなければならないことに注目されたい。(a) イントロン内での切断による不活性化:転写終結配列(ポリA1)と、プロモーター、マーカーORF及び第2転写終結配列(ポリA2)を含むマーカーカセット。転写終結配列は、短縮転写産物、よって短縮タンパク質をもたらす。(b) エキソン内での切断、及びマーカーカセットのノックインによる不活性化。マーカーノックインは、エキソン配列の欠失を伴い得る(図1を参照)。(c) エキソン内での切断、及び誤りの多い非相同末端結合経路による修復による不活性化。修復マトリクスの不在下では、DNA 2本鎖破断は、本質的にNHEJにより修復され、ほとんどの場合、メガヌクレアーゼ切断に起因する3'付着末端の完全な再結合をもたらす。この場合、回復された切断部位は、メガヌクレアーゼにより再び切断され得る。しかし、この誤りの多い修復経路は、小さい欠失(数ヌクレオチド)ももたらすことができ、これが切断部位を不活性化して、フレームシフト変異をもたらす。
【0107】
- 図7は、コンビナトリアル変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。この図は、B2M11.2標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。H12は、陽性対照(C)である。1つ目の上のフィルタにおいて、位置B3の陽性変異体の配列(円)は、KNAHQS/AYSYKである(表Iと同じ命名)。下の2番目のフィルタにおいて、位置F7の陽性変異体の配列は、KNGHQS/AYSYKである。
- 図8は、最適化変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。B2M11.2を切断する一連のI-CreI N75最適化変異体は、変異体KNAHQS/AYSYK及びKNGHQS/AYSYKのランダム突然変異誘発から得られる。切断は、B2M11.2標的を用いて試験する。B2M11.2を切断する変異体を円で囲む。例えば、位置B3の陽性変異体の配列は、28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66Cに対応する(表IIと同じ命名)。H12は、陽性対照である。
【0108】
- 図9は、コンビナトリアル変異体によるB2M11.3標的の切断を示す。この図は、B2M11.3標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。H10、H11及びH12は、それぞれ、陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。フィルタにおいて、位置G5 (円)の陽性変異体の配列は、KQSGCS/QNSNR (表IIIと同じ命名)である。
- 図10は、ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。この図は、B2M11標的を用いるI-CreI変異体の組み合わせの一次スクリーニングを示す。陽性ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体のカラムを円で囲む。例示フィルタにおいて、(1)及び(2)は、28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R (M1)を有する酵母株と交配させた、B2M11標的並びにそれぞれ28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2I96R105A (1)及び28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/132V (2)変異体を有する酵母株である(表IVと同じ命名)。
【0109】
- 図11は、最適化ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。B2M11.3を切断する一連のI-CreI N75最適化変異体を、B2M11.2を切断する変異体と同時発現させる。切断は、B2M11標的を用いて試験する。B2M11を切断する変異体を円で囲む(例として、28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R対28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66Cのヘテロ二量体に相当するG9)。例示フィルタにおいて、B2M11標的及び28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C変異体を有する酵母株を、28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R (MI)を有する酵母株、又は対角で対照(C1〜C3)と交配させる(表Vと同じ命名)。H10、H11及びH12は、それぞれ、陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。
【0110】
- 図12は、pCLS1055ベクターマップを表す。
- 図13は、pCLS0542ベクターマップを表す。
- 図14は、pCLS1107ベクターマップを表す。
- 図15は、ヒトB2M遺伝子で見出されるメガヌクレアーゼ標的配列と、該DNA標的を切断できる、対応するI-CreI変異型を表す。標的配列に最も近いエキソンと、エキソン接合部を示し(第2列及び第3列)、DNA標的の配列(第4列)を、その位置(第5列)とともに示す。標的部位での切断を修復する最小修復マトリクスは、その最初のヌクレオチド(始点、第8列)及び最後のヌクレオチド(終点、第9列)で示す。各変異型の配列は、記載する位置での変異された残基により定義される。例えば、図15の最初のヘテロ二量体変異型は、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれK, N, S, R, A, S, D, A, S, K, Rを有する第1単量体と、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、及び77位にそれぞれR, N, S, A, Y, Q, A, Y, S, Y及びKを有する第2単量体とからなる。位置は、I-CreI配列であるSWISSPROT P05725 (配列番号1)を参照にして記載する。I-CreIは、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれK, N, S, Y, Q, S, Q, R, R, D及びIを有する。
【0111】
- 図16は、pCLS1069ベクターマップを表す。
- 図17は、pCLS1058ベクターマップを表す。
- 図18は、標的のB2M18シリーズを表す。B2M18.3及びB2M18.4は、標的の1つの半分の鏡重複によりB2M18標的から導かれた2つのパリンドローム配列である。これらの2つの標的は、次に、B2M18.3及びB2M18.4標的の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが切断に影響しないとみなす場合、I-CreI標的により切断されることが見出された10NNN及び5NNN標的の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0112】
- 図19は、コンビナトリアル変異体によるB2M18.4標的の切断を示す。この図は、B2M18.4標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。各4分の1の右側の2重のドット(C)は、代わりに、それぞれ陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。フィルタの左の2重のドット(M)は、試験したコンビナトリアルクローンである。位置B10の陽性変異体(円)の配列は、KNGCQS/QYSRQである(表VIIと同じ命名)。
- 図20は、標的のB2M20シリーズを表す。B2M20.3及びB2M20.4は、標的の1つの半分の鏡重複によりB2M20標的から導かれた2つのパリンドローム配列である。これらの2つの標的は、次に、B2M20.3及びB2M20.4標的の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが切断に影響しないとみなす場合、I-CreI標的により切断されることが見出された10NNN及び5NNN標的の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0113】
- 図21は、コンビナトリアル変異体によるB2M20.4標的の切断を示す。この図は、B2M20.4標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。各4分の1の右側の2重のドット(C)は、代わりに、それぞれ陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)を示す。フィルタの左の2重のドット(M)は、試験したコンビナトリアルクローンである。位置F6の陽性変異体(円)の配列は、KNSTQE/QRRDIである(表VIIIと同じ命名)。
【実施例】
【0114】
実施例1:ヒトB2M遺伝子を切断する新規なメガヌクレアーゼの工学的作製の方策
Smithら, Nucleic Acids Res., 2006に記載され、図3に説明するコンビナトリアルアプローチを用いて、I-CreIのDNA結合ドメインを工学的に作製し、B2M標的の1つであるB2M11 (図5及び15)、ヒトB2M遺伝子(アクセッション番号NC_000015.8、42790977位〜42797649位)の2892位〜2915位に位置する24 bp (非パリンドローム)標的(図5)を切断した。B2M11を切断するメガヌクレアーゼを用いて、転写を妨げ、短縮タンパク質をもたらす転写終結シグナルの挿入によりB2M遺伝子を不活性化できる(図6a)。
【0115】
B2M11配列は、部分的に、国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及びSmithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるようにして得られた、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される10GAA_P、10CTG_P、5TAG_P及び5TTT_P標的(図5)のパッチワークである。よって、B2M11は、これらの4つの標的を切断するI-CreI誘導体で見出される変異を組み合わせたメガヌクレアーゼにより切断できるだろう。
10GAA_P、10CTG_P、5TAG_P及び5TTT_P配列は、I-CreIにより切断されるパリンドローム標的であるC1221の24 bp誘導体である(国際PCT出願 WO 2006/097784、WO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及びSmithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
しかし、そのDNA標的に結合したI-CreIの構造は、これらの標的の2つの外側の塩基対(-12位及び12位)が、結合及び切断に影響しないことを示唆する(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)ので、この研究では、-11位〜11位のみを考慮した。結局、標的のB2M11シリーズを、24 bpではなく22 bp配列として定義した。
【0116】
2つのパリンドローム標的、B2M11.2及びB2M11.3は、B2M11 (図5)に由来する。B2M11.2及びB2M11.3はパリンドロームであるので、これらは、ホモ二量体タンパク質により切断されるはずである。つまり、B2M11.2及びB2M11.3配列をホモ二量体として切断できるタンパク質をまず設計し(実施例2及び3)、次いで、B2M11.2標的をより効率的に切断できるホモ二量体の最適化を行い(実施例4)、次いで、同時発現させて、B2M11.1を切断するヘテロ二量体を得た(実施例5)。B2M11.3を切断する選択された変異体を、次いで、精密化(refined)した。選択された変異体に、ランダム突然変異を誘発し、新規なヘテロ二量体を形成するために用い、これらを、B2M11標的に対してスクリーニングした(実施例6)。
【0117】
実施例2: B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のB2M11標的の左部分に由来するB2M11.2 DNA標的配列を切断できることを示す(図5)。
この実施例に記載される標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらは、最初の11ヌクレオチド、次いで接尾辞_Pによってのみ記載される。例えば、標的B2M11.2は、tgaaattaggt_P (配列番号96)とも記載される。
【0118】
B2M11.2は、5TAG_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位において同様であり、10GAA_Pと、±1位、±2位、±7位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±6位及び±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないと仮定した。5TAG_P標的(caaaactaggt_P; 配列番号94)を切断できる変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるようにして、44位、68位、70位、75位及び77位でのI-CreI N75に対する突然変異誘発により、以前に得られた。10GAA_P標的(cgaaacgtcgt _P; 配列番号92)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に以前に記載されたようにして、28位、30位、32位、33位、38位、40位でのI-CreI N75及びD75に対する突然変異誘発により得られた。よって、このような変異体の対を組み合わせることにより、B2M11.2標的を切断することが可能になるだろう。
【0119】
よって、組み合わせた変異体がB2M11.2標的を切断できるかを確認するために、5TAG_P (caaaactaggt_P; 配列番号94)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位、77位での変異を、10GAA_P (cgaaacgtcgt_P; 配列番号92)を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び40変異と組み合わせた。
【0120】
1) 材料及び方法
メガヌクレアーゼ変異型を作製する方法、及び特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いる哺乳動物又は酵母細胞での切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載される。これらのアッセイは、機能的LacZレポーター遺伝子をもたらし、これは、標準的な方法によりモニターできる。
【0121】
a) 標的ベクターの構築
標的は、以下のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列に接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチドを、PROLIGOに注文した:5' tggcatacaagttttgttctcaggtacctgagaacaacaatcgtctgtca 3' (配列番号98)。1本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製された2本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて、酵母レポーターベクター(pCLS1055、図12)内にクローニングした。酵母レポーターベクターで、S. cerevisiae FYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を形質転換した。
【0122】
b) コンビナトリアル変異体の構築
10GAA_P又は5TAG_Pを切断するI-CreI変異体を、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853で以前に記載されたようにして、それぞれ10GAA_P又は5TAG_P標的について同定した。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(aa 1位〜43位)又は3'末端(39位〜167位)を増幅する別のオーバーラップPCR反応を行った。5'及び3'の両方の末端について、PCR増幅は、ベクター(pCLS0542、図13)に特異的なGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'; 配列番号99)又はGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'; 配列番号100)プライマー、並びにアミノ酸39〜43のI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3'(配列番号101)又はssR 5'-aaaggtcaannntag-3'(配列番号102) (nnnは残基40をコードする)を用いて行う。同じプライマー及び残基40について同じコード配列を用いて増幅反応により得られるPCRフラグメントを、プールした。次いで、プライマーGal10F及びassR又はassF及びGal10Rを用いる反応により得られたPCRフラグメントの各プールを、等モル比で混合した。最後に、2つのオーバーラップするPCRフラグメントの各最終プール約25 ngと、NcoI及びEagIを用いる消化により線状にしたベクターDNA (pCLS0542) 75 ngとを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leuΔ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。両方の群の変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0123】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
スクリーニングは、以前に記載されたようにして行った(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。交配を、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、低格子密度(gridding density) (約4スポット/cm2)を用いて、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上にグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタ上で行って、各標的について異なるレポーターを有する酵母株からなる2層目をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして、交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、炭素源としてガラクトース(2%)を含む合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5Mリン酸ナトリウムバッファー、pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7mMβ-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0124】
d) 変異体の配列決定
プラスミドを発現する変異体を回収するために、酵母DNAを、標準的なプロトコルを用いて抽出し、E. coliを形質転換するのに用いた。変異ORFの配列決定を、次いで、MILLEGEN SAにより、プラスミドに対して行った。或いは、ORFを、酵母DNAからPCRにより増幅し(Akadaら, Biotechniques, 2000, 28, 668〜670)、配列決定を、PCR産物に対して直接、MILLEGEN SAにより行った。
【0125】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75又はD75足場での44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28位、30位、33位、38位及び40位の変異と一緒にすることにより構築して、2014の複雑さ(complexity)を有するライブラリーを得た。組み合わせの例を、表1に示す。これらのライブラリーを、酵母に形質転換し、4464個のクローン(多様性の2.2倍)を、B2M11.2 DNA標的(tgaaattaggt _P; 配列番号96)に対する切断についてスクリーニングした。非常に低いレベルの活性を有する2つの陽性クローンが見つかり、これらは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、2つの異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(表Iを参照)。陽性を、図7に示す。
【0126】
本文及び図面を通して、コンビナトリアル変異体配列は、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位及び70位、75位及び77位の残基にちなんだ11文字コードで命名される。例えば、KNGHQS/AYSYKは、I-CreI K28, N30, G32, H33, Q38, S40, A44, Y68, S70, Y75及びK77 (I-CreI 28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K)のことである。親の変異体は、28位、30位、32位、33位、38位及び40位の残基にちなんだ6文字コード、又は44位、68位、70位、75位及び77位の残基にちなんだ5文字コードで命名される。例えば、KNGHQSは、I-CreI K28, N30, G32, H33, Q38及びS40のことであり、AYSYKは、I-CreI A44, Y68, S70, Y75及びK77のことである。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例3:B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発による、より高い効率でB2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11.2標的を切断できるI-CreI変異体を、パリンドローム10GAA_P及び5TAG_P標的を切断する変異体の組み立てにより同定した(実施例2)。しかし、これらの組み合わせの2つのみが、最小限の効率でB2M11.2を切断できた。
よって、B2M11.2を切断する2つのタンパク質の組み合わせに、突然変異を誘発して、よりよい効率でB2M11.2を切断する変異型をスクリーニングした。その標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質内には、最初のコンビナトリアルアプローチに用いた残基(28、30、32、33、38及び40対44、68、70、75及び77)間には接触がない(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(最後の83アミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0129】
1) 材料及び方法
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択した変異体のプールに対して、JBS dNTP-Mutagenisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして、Mn2+を用いるPCR、又は8-オキソ-dGTP及びdPTPのようなdNTPの誘導体を2ステップPCR手順で用いることにより、創出した。用いたプライマーは、preATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3'; 配列番号103)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3'; 配列番号104)である。新しいライブライリーを、ガラクトース誘導性プロモーター、選択マーカーとしてのKanR及び2ミクロン複製起点を有する線状にしたカナマイシンベクター内に、酵母においてインビボでクローニングした。陽性となったクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確認した。
【0130】
変異体のプールを、ロイシンベクター(pCLS0542、図13)及びカナマイシンベクター(pCLS1107、図14)に共通するこれらのプライマーを用いて、PCR反応により増幅した。約75ngのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75ngのベクターDNA (pCLS0542)を用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率のLiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列のライブラリーを、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
交配アッセイは、実施例2に記載するようにして行った。
【0131】
2) 結果
B2M11.2を切断する2つの変異体、I-CreI 28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K及びI-CreI 28K30N32A3338Q40SH44A68Y70S75Y77K (表Iの命名法によるとKNGHQS/AYSYK及びKNAHQS/AYSYKともよばれる)をプールし、ランダム突然変異を誘発し、酵母を形質転換した(図13)。4464個の形質転換クローンを、次いで、レポータープラスミド内にB2M11.2標的を含有する酵母株と交配させた。32個のクローンが、このような酵母株と交配させたときに、B2M11.2標的の切断を引き起こすことがわかり、これらは、少なくとも13個の異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当する(表IIを参照)。陽性の例を、図8に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例4:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のB2M11.1標的の右部分に由来するB2M11.3 DNA標的配列を切断できることを示す(図5)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチド、及びそのことを示すためだけのその後の接尾辞_Pだけで記載する(例えば、B2M11.3は、tctgactttgt_Pとよばれる; 配列番号97)。
B2M11.3は、5TTT_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±6位及び±7位において同様であり、10CTG_Pと、±1位、±2位、±6位、±7位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないであろうと仮定した。5TTT_P標的(caaaactttgt_P; 配列番号95)を切断できる変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるような、I-CreI N75に対する44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により、以前に得られた。10CTG_P標的(cctgacgtcgt_P; 配列番号93)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるような、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。よって、このような変異体の対を組み合わせることにより、B2M11.3標的の切断が可能になるであろう。
【0134】
タンパク質の両方の組を、70位で変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインが、I-CreIに存在することが、以前に示されている(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。このことは、この位置が、標的の塩基10〜8における特異性に対してほとんど影響しないことを意味する。よって、組み合わせた変異体がB2M11.3標的を切断できたかを確認するために、5TTT_P (caaaactttgt_P; 配列番号95)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、10CTG_P (cctgacgtcgt_P; 配列番号93)を切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位、40位の変異と組み合わせた。
【0135】
1) 材料及び方法
10CTG_P又は5TTT_Pを切断するI-CreI変異体を、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に以前に記載されたようにして、10CTG_P及び5TTT_P標的それぞれについて同定した。
両方のシリーズからの変異を含有するI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(aa 1位〜43位)又は3'末端(39位〜167位)を増幅する別々のオーバーラップPCR反応を行った。5'及び3'の両方の末端について、PCR増幅を、ベクター(pCLS0542、図13)に特異的なGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3': 配列番号99)又はGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3': 配列番号100)プライマー、及びアミノ酸39〜43についてI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3'(配列番号101)又はassR 5'-aaaggtcaannntag-3'(配列番号102)) (ここで、nnnは残基40コードする)を用いて行う。同じプライマー及び残基40について同じコード配列を用いて得られた、増幅反応により得られたPCRフラグメントをプールした。次いで、プライマーGal10F及びassR又はassF及びGal10Rを用いる反応で得られたPCRフラグメントの各プールを、等モル比で混合した。最後に、2つのオーバーラップPCRフラグメントの各最終プール約25ng及びDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にしたカナマイシン耐性酵母発現ベクター(pCLS1107、図14)であるベクターDNA 75ngを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。両方の群の変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0136】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75又はD75足場での44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28位、30位、33位、38位及び40位での変異と一緒にすることにより構築して、1600の複雑さのライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例を、表IIIに示す。このライブラリーで酵母を形質転換し、3348個のクローン(多様性の2.1倍)を、B2M11.3 DNA標的(tctgactttgt_P; 配列番号97)に対する切断についてスクリーニングした。1つの陽性クローンが見つかり、これは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(表IIIを参照)。陽性を、図9に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
実施例5:B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼアセンブリの、B2M11.3を切断するタンパク質との同時発現による、B2M11を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11由来標的のそれぞれ(B2M11.2及びB2M11.3)を切断できるI-CreI変異体を、実施例2、3及び4において同定した。このような変異体の対(B2M11.2を切断するものとB2M11.3を切断するもの)を、酵母で同時発現させた。同時発現の際に、3つの活性分子種、すなわち2つのホモ二量体と、1つのヘテロ二量体とが存在するはずである。形成されるはずのヘテロ二量体がB2M11標的を切断するかをアッセイした。
【0139】
1) 材料及び方法
a) B2M11標的酵母での、ロイシンベクター内での最適化変異体のクローニング
B2M11標的を酵母レポーターベクター(pCLS1055、図12)内に含む酵母株FYBL2-7B (MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、ロイシンベクター(pCLS0542、図13)内にクローニングされた、B2M11.2標的を切断する最適化変異体で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。変異体-標的酵母を、実施例2及び4に記載される交配アッセイのための標的として、カナマイシンベクター(pCLS1107)内のB2M11.3を切断する変異体に対して用いる。
【0140】
b)メガヌクレアーゼ同時発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
交配を、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いて、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上にグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタ上に行って、各変異体-標的について異なるレポーターを有する酵母株からなる2層目をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして、交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、G418を加え、炭素源としてガラクトース(1%)を含む合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5Mリン酸ナトリウムバッファー、pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、7mMβ-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0141】
2) 結果
B2M11.2及びB2M11.3を切断する変異体の同時発現は、ほとんどの場合、B2M11標的の切断をもたらした(図10)。機能的な組み合わせを、表IVにまとめる。
【0142】
【表4】
【0143】
実施例6:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発及びB2M11.2を切断するタンパク質との同時発現による、より高い効率でB2M11を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11標的を切断できるI-CreI変異体を、パリンドロームB2M11.2及びB2M11.3標的を切断する変異体の同時発現により同定した(実施例5)。しかし、効率及びB2M11を切断できる陽性の組み合わせの数は、最小限であった。
よって、B2M11.3を切断するタンパク質に突然変異を誘発して、B2M11.2についての最適化変異体と組み合わせたときに、B2M11をよりよい効率で切断する変異型をスクリーニングした。その標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質内には、最初のコンビナトリアルアプローチに用いた残基(28、30、32、33、38及び40対44、68、70、75及び77)間には接触がない(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(最後の83アミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0144】
1) 材料及び方法
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択した変異体に対して、JBS dNTP-Mutagenisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして、Mn2+を用いるPCR、又は8-オキソ-dGTP及びdPTPのようなdNTPの誘導体を2ステップPCR手順で用いることにより、創出した。用いたプライマーは、preATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3'; 配列番号103)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3'; 配列番号104)である。新しいライブライリーを、ガラクトース誘導性プロモーター、選択マーカーとしてのKanR及び2ミクロン複製起点を有する線状にしたカナマイシンベクター内に、酵母においてインビボでクローニングした。陽性となったクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確認した。
【0145】
変異体のプールを、ロイシンベクター(pCLS0542、図13)及びカナマイシンベクター(pCLS1107、図14)に共通するこれらのプライマーを用いて、PCR反応により増幅した。約75ngのPCRフラグメント及びDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にした75ngのベクターDNA (pCLS1107)を用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率のLiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列のライブラリーを、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
変異体-標的酵母を作製し、実施例5に記載されるような交配アッセイのための標的として用いる。
【0146】
2) 結果
B2M11.3を切断する変異体(表IIIの命名法によるとKQSGCS/QNSNRともよばれるI-CreI 28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R)に、ランダム突然変異を誘発し、酵母に形質転換した。次いで、6696個の形質転換クローンを、実施例5に記載されるものから選択された、(i) レポータープラスミド内にB2M11標的を含有し、(ii) B2M11.2標的を切断する最適化変異型を発現する酵母株と交配させた。I-CreI 28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/132V変異体、I-CreI 28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2I96R105A変異体、28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/120G変異体、又は28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C変異体のいずれかを発現する4つのこのような株を用いた(表Vを参照)。101個のクローンが、このような酵母株と交配させたときにB2M11標的の切断を引き起こすことがわかった。対照実験において、これらのクローンはいずれも、KQSGCS/QNSNRタンパク質の同時発現なしでは、B2M11の切断を引き起こさなかった。101個の陽性は、KQSGCS/QNSNRとヘテロ二量体を形成したときに、B2M11を切断できるタンパク質を含有すると結論付けた。このようなヘテロ二量体変異体の例を、表Vに列挙する。陽性の例は、図11に示す。
【0147】
【表5】
【0148】
実施例7:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発及びB2M11を切断するタンパク質との同時発現による、CHO細胞での染色体外モデルにおいて高効率でB2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
よりよい効率でパリンドロームB2M11標的を切断できるI-CreI変異体を、酵母における、パリンドロームB2M11.2及びB2M11.3標的を切断する、最適化したか又はしていない変異体の同時発現により同定した(実施例5)。しかし、CHO細胞における機能的ヘテロ二量体は、興味深く、染色体外アッセイを用いて、哺乳動物細胞においてB2M11を切断できる効率及び陽性の組み合わせの数は、酵母細胞でのものとは異なり得るだろう。
よって、B2M11.2を切断する最良のタンパク質に、実施例5のようにして突然変異を誘発し、B2M11.3についての最適化変異体と組み合わせたときに良好な効率でB2M11を切断する変異型をスクリーニングした。その標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質内には、最初のコンビナトリアルアプローチに用いた残基(28、30、32、33、38及び40対44、68、70、75及び77)間には接触がない(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269) 。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(最後の83アミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0149】
1) 材料及び方法
a) ランダム突然変異誘発によるライブラリーの構築
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択した変異体のプールに対して、JBS dNTP-Mutagenisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして、Mn2+を用いるPCR、又は8-オキソ-dGTP及びdPTPのようなdNTPの誘導体を2ステップPCR手順で用いることにより、創出した。用いたプライマーは、attB1-ICreIFor (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc-3': (配列番号120)及びattB2-ICreIRev (5'- ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc-3': 配列番号121)である。得られたPCR産物を、インビトロにて、INVITROGENからのCHO Gateway発現ベクターpCDNA6.2(pCLS1069、図16)にクローニングした。並行して、ライブラリーに用いた選択した変異体を、同様にしてこのベクターにクローニングした。クローニングした変異体及びライブラリーの陽性をもたらすクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確かめた。
【0150】
b) CHO細胞でのスクリーニングのための、ベクター内のB2M11標的の構築
酵母標的ベクター(実施例1のような)から、B2M11標的を、プライマーM1s (5'-aaaaagcaggctgattggcatacaagtt-3': 配列番号122)及びM2s (5'-agaaagctgggtgattgacagacgattg-3': 配列番号123)を用い、その後、attB1adapbis (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagca-3': 配列番号124)及びattB2adapbis (5'- ggggaccactttgtacaagaaagct-3': 配列番号125)を用いる2ステップPCRにより増幅した。プライマーは、PROLIGOからである。最後のPCRを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いてCHOレポーターベクター(pCLS1058、図17)にクローニングした。クローニングした標的を、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0151】
c) 哺乳動物細胞での染色体外アッセイ
CHO細胞を、Polyfectトランスフェクション試薬を用いて、供給業者のプロトコル(QIAGEN)に従ってトランスフェクションさせた。トランスフェクションの72時間後に、培養培地を回収し、150μlの溶解/視覚化バッファーを、β-ガラクトシダーゼ液体アッセイのために加えた(典型的には、1リットルのバッファーは、100 mlの溶解バッファー(Tris-HCl 10 mM pH7.5、NaCl 150 mM、Triton X100 0.1%、BSA 0.1 mg/ml、プロテアーゼ阻害剤)、10 mlのMg 100×バッファー(MgCl2 100 mM、β-メルカプトエタノール35%)、110ml ONPG 8 mg/ml及び780 mlのリン酸ナトリウム0.1M pH7.5を含んだ)。37℃でのインキュベーションの後に、光学密度(OD)を420 nmにて測定した。全体の手順は、自動Velocity11 BioCelプラットフォームで行った。アッセイごとに、150 ngの標的ベクターを、両方の変異体のそれぞれ12.5 ng (パリンドロームB2M11.2標的を切断する変異体12.5 ngと、パリンドロームB2M11.3標的を切断する変異体12.5 ng)に同時トランスフェクションさせた。
【0152】
2) 結果
B2M11.2を切断する最適化変異体(表Vに記載されるI-CreI 32G33H44A68Y70S75Y77K/120G、32A33H44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C、32G33H44A68Y70S75Y77K/2I96R105A及び32A33H44A68Y70S75Y77K/132V)に、ランダム突然変異を誘発し、Gatewayベクターを形質転換した(図16)。1920個の形質転換クローンのDNAプラスミドを精製し、次いで、CHO B2M11標的ベクター及び実施例6に記載されるものから選択されたB2M11.3を切断する最適化変異型と同時トランスフェクションした。形質転換クローンの、CHO B2M11標的ベクター及びB2M11.3を切断する元の変異体(30Q33G38C68N70S77R)での同時トランスフェクションを、比較のために含めた。60個のクローンが、B2M11.3標的を切断する最適化変異型と同時トランスフェクションさせたときに、B2M11標的の切断を引き起こすことがわかった。
【0153】
対照実験において、これらのクローンはいずれも、B2M11.3標的を切断する(最適化しているか又はしていない)変異型の同時トランスフェクションなしでは、B2M11の切断を引き起こさなかった。よって、60個の陽性は、B2M11.3標的を切断する最適化変異型とヘテロ二量体を形成したときに、B2M11を切断できるタンパク質を含むと結論付けた。B2M11.3標的を切断する2つの最適化変異型に由来するこのようなヘテロ二量体変異体の例(30Q33G38C68N70S77R/43L115T117G及び30Q33G38C68N70S77R/110D)を、表VIに列挙する。
【0154】
【表6】
【0155】
実施例8:B2M18を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドローム標的の2つの新しいシリーズ、B2M18.3及びB2M18.4は、B2M18並びにB2M20からのB2M20.3及びB2M20.4に由来した(図18及び21)。B2M18.3、B2M18.4、B2M20.3及びB2M20.4はパリンドロームであるので、これらは、ホモ二量体タンパク質により切断されるはずである。まず、B2M18.4配列をホモ二量体として切断できるタンパク質を設計し(実施例8)、次いで、B2M20.4配列をホモ二量体として切断できるタンパク質を設計した(実施例9)。
【0156】
この実施例は、I-CreI変異型が、パリンドローム形のB2M18標的の右部分に由来するB2M18.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図18)。本実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチド、及びその後の接尾辞_Pだけで記載する。例えば、B2M18.4は、TTAACTATCGT_P (配列番号113)とよばれる。
B2M18.4は、5ATC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±8位及び±9位において同様であり、10TAA_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±6位、±7位及び±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないであろうと仮定した。5ATC_P標的(CAAAACATCGT_P)を切断できる変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるように、I-CreI N75に対する44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により以前に得られた。5ATC_P標的(CTAAACGTCGT_P)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるように、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。よって、このような変異の対を組み合わせることにより、B2M18.4標的の切断が可能になるだろう。
【0157】
タンパク質の両方の組を、70位で変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインが存在すると仮定された。このことは、この位置が、標的の塩基10〜8における特異性に対してほとんど影響しないことを意味する。よって、組み合わせた変異体がB2M18.4標的を切断できたかを確認するために、5ATC_P (CAAAACATCGT_P)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、10TAA_P (CTAAACGTCGT_P)を切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位、40位の変異と組み合わせた。
【0158】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例2に記載したとおりである。
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体は、I-CreI N75又はD75足場での44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28位、30位、33位、38位、40位の変異と会合させることにより構築して、1600の複雑さのライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例は、表VIIに示す。このライブラリーで、酵母を形質転換し、3348個のクローン(多様性の2.1倍)を、B2M18.4 DNA標的(TTAACTATCGT_P)に対する切断についてスクリーニングした。59個の陽性クローンが見出され、これらは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、18個の新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(配列番号136〜152及び179;表VIIを参照)。陽性を、図19に示す。1つの陽性クローンは、153位のさらなる変異を示す。このクローンの配列は、KNRTQS/ QYSRQ - 153Gである。
【0159】
【表7】
【0160】
実施例9:B2M20を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型が、パリンドローム形のB2M20.1標的の右部分に由来するB2M20.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図19)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチド、及びその後の接尾辞_Pだけで記載する。例えば、B2M20.4は、TTACATGTCGT_P: 配列番号119とよばれる。
B2M18.4は、5GTC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位において同様であり、10TAC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±6位及び±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないであろうと仮定した。5GTC_P標的(CAAAACGTCGT_P)を切断する変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるように、I-CreIに対する70位及び75位での定方向突然変異誘発により以前に得られた。10TAC_P標的(CTACACGTCGT_P)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるように、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。よって、このような変異の対を組み合わせることにより、B2M20.4標的の切断が可能になるだろう。
【0161】
タンパク質の両方の組を、70位で変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインが存在すると仮定された。このことは、この位置が、標的の塩基10〜8における特異性に対してほとんど影響しないことを意味する。よって、5GTC_P (CAAAACGTCGT_P)を切断するタンパク質の70位及び75位での変異を、10TAC_P (CTACACGTCGT_P)を切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位、40位の変異と組み合わせて、組み合わせた変異体がB2M20.4標的を切断できるかを確認した。
【0162】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例2に記載したとおりである。
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体は、I-CreI N75又はD75足場での70位及び75位での変異を、28位、30位、33位、38位及び40位での変異と会合させることにより構築して、1536の複雑さのライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例を、表VIIIに示す。このライブラリーで、酵母を形質転換し、6696個のクローン(多様性の4.4倍)を、B2M20.4 DNA標的(TTACATGTCGT_P)に対する切断についてスクリーニングした。196個の陽性クローンが見出され、これらは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、164個の新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(配列番号153〜178を示す表VIIIを参照)。陽性を、図21に示す。12個のクローンが、実施例8と同様に、さらなる変異(56G, 82R, 147A又は161F)を示す。
【0163】
【表8】
【図1a】
【図1b】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターで改変された細胞、動物又は植物、並びに該メガヌクレアーゼ変異型及びその派生生成物の、エクスビボゲノム療法(遺伝子細胞療法)及びゲノム工学のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
主要組織適合複合体(MHC、ヒトについてはHLAともよばれる)からのタンパク質は、非自己認識において主要な役割を有する。これらのタンパク質は、T細胞に対して抗原性ペプチドを提示する。これらは、2つの異なる複合体、MHCクラスI及びMHCクラスIIに分類できる。MHCクラスI複合体は、リガンド、又は特異的T細胞及びNK細胞免疫グロブリン様受容体である。これらは、非常に多形性のタンパク質、及び細胞表面でのMHC I複合体の組み立てに必要な小さいポリペプチドであるβ2-ミクログロブリンを含む(Zijlstraら, Nature, 1990, 344, 742〜746)。複合体の他の構成成分は、多重遺伝子族によりコードされるので、β2-ミクログロブリン遺伝子(ヒトにおいてB2M)のノックアウトは、MHC I複合体を抑制するのに最も単純な方法である(Kollerら, Proc. Nat. Acad. Sci. U. S. A., 1989, 86, 8932〜8935 ; Zijlstraら, Nature, 1990, 344, 742〜746)。
【0003】
非自己認識におけるそれらの中枢の役割のために、MHCタンパク質は、移植片拒絶においても主要な役割を有する。MHCクラスIタンパク質の破壊が、移植片拒絶を少なくとも部分的に緩和するであろうことが仮定できる。しかし、マウスでの研究により、より軽減された図が描かれた。明らかにNK細胞活性化の結果として、β2m-/-マウスからの造血幹細胞は迅速に拒絶されるが(Bixら, Nature, 1991, 349, 329〜331 ; Liaoら, Science, 1991, 253, 199〜202 ; Huangら, J. Immunol., 2005, 175, 3753〜3761; Ruggeriら, Immunol Rev, 2006, 214, 202〜218)、このようなKO動物からの腎臓及び膵島の同種移植片は、より寛容である(Markmannら, Transplantation, 1992, 54, 1085〜1089 ; Coffmanら, J. Immunol., 1993, 151, 425〜435)。つまり、少なくともある組織では、ヒトB2M遺伝子の不活性化は、移植における最も再発する問題の1つについての解決法を提供できる。このことは、膵臓、腎臓及び心臓を含む筋肉組織についての細胞療法における多くの用途に用いることができるだろう。前駆細胞を培養して、エクスビボで処理して、患者に再移植できる。
【0004】
さらに、免疫グロブリン、プレアルブミン及びアルツハイマー病のアミロイドで見出されるベータタンパク質(APP)と同様に、ベータ-2-ミクログロブリンは、ある病変状態におけるアミロイドのフィブリル状のコンホメーションを採用し得るベータ-プリーツシート構造を主にとる(Cunninghamら, Biochemistry, 1973, 12: 4811〜4821)。これは、血液透析関連アミロイド症を含む(HRA; Gorevicら, 1986, Proc. Nat. Acad. Sci. 83: 7908〜7912)。Zingraffら(New Eng. J. Med., 1990, 323: 1070〜1071)は、透析が行われなかったという事実にもかかわらず、ベータ-2-ミクログロブリンアミロイド症に罹患して、重篤な腎不全である患者について記載した。著者らは、いくらかのB2M変異型が、他のものよりもよりアミロイド発生性(amyloidogenic)であることも示唆した。つまり、ヒトB2M遺伝子の不活性化は、HRAのようなベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変を治療するための解決法も提供できるだろう。
【0005】
さらに、ベータ-2ミクログロブリンは、細胞の大多数において高度に発現される。ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座への興味対象の外因性遺伝子の挿入は、再現可能な発現レベルの組換えタンパク質の利点を有する。つまり、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座を標的にする遺伝子は、高レベルの興味対象のタンパク質を産生するトランスジェニック動物又は組換え株化細胞を工学的に作製する(engineering)ことを可能にする。
【0006】
相同遺伝子ターゲティング方策は、マウスB2M (又はβ2m)遺伝子を含む(Koller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1989, 86, 8932-8935)内因性遺伝子をノックアウトするか(Capecchi, M.R., Science, 1989, 244, 1288〜1292)、又は染色体に外因性配列をノックインするために用いられている。基本的に、標的にされた配列と相同性を有するDNAは、細胞の核に導入され、内因性の相同組換え装置が、次の工程を提供する(図1a)。相同組換え(HR)は、DNA2本鎖破断(double-strand break) (DSB)及びその他のDNA損傷の修復に関わる非常に保存されたDNA維持経路であるが(Rothstein, Methods Enzymol., 1983, 101, 202〜211; Paquesら, Microbiol Mol Biol Rev, 1999, 63, 349〜404; Sungら, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 2006, 7, 739〜750)、これは、多くの生物学的現象、例えば減数分裂における対立遺伝子の減数分裂再集合(Roeder, Genes Dev., 1997, 11, 2600〜2621)、酵母での交配型相互変換(Haber, Annu. Rev. Genet., 1998, 32, 561〜599)、及び新規対立遺伝子へのクラスIイントロン及びインテインの「ホーミング」の根底もなす。HRは、通常、内因性配列間の遺伝子情報の交換を促進するが、遺伝子ターゲティング実験において、これは、内因性染色体配列と外因性DNA構築物との間の交換を促進するために用いられる。しかし、このプロセスの効率は低い(トランスフェクションされた細胞の10-6〜10-9)。
【0007】
この効率は、標的遺伝子座内のDNA二本鎖破断(DSB)により増進できる。このようなDSBは、定義としては大きい配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼであるメガヌクレアーゼにより創出できる(Thierry, A.及びB. Dujon, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5625〜5631)。これらのタンパク質は、生細胞内の独特の部位を切断でき、それにより、遺伝子ターゲティングを、切断部位の近傍で1000倍以上増進する(Puchtaら, Nucleic Acids Res., 1993, 21, 5034〜5040 ; Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜8106; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜1973; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1996, 93, 5055〜5060; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜277; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 1444〜1448; Donohoら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 4070〜4078; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101) (図1b)。しかし、「ホーミングエンドヌクレアーゼ」ともよばれる天然メガヌクレアーゼが数百個同定されているが(Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)、切断可能配列のレパートリーは、ゲノムの複雑さを扱うには非常に限られており、選択される遺伝子には、通常、切断可能部位がない。理論的には、選択された特異性を有する人工配列特異的エンドヌクレアーゼの作製が、この制限を緩和できるだろう。よって、仕立てられた特異性を有するメガヌクレアーゼの作製が、熱心に研究されている。
【0008】
最近、ジンク(亜鉛)フィンガータンパク質の、クラスIIS制限エンドヌクレアーゼであるFokIの触媒ドメインとの融合を用いて、機能的配列特異的エンドヌクレアーゼが作製された(Smithら, Nucleic Acids Res., 1999, 27, 674〜681; Bibikovaら, Mol. Cell. Biol., 2001, 21, 289〜297; Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764; Porteus, M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300, 763〜 ; Alwinら, Mol. Ther., 2005, 12, 610〜617; Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651; Porteus, M.H., Mol. Ther., 2006, 13, 438〜446)。このようなヌクレアーゼは、リンパ球様系統からのヒト細胞におけるILR2G遺伝子の工学的操作のために、最近、用いることができた(Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651)。
【0009】
Cys2-His2型のジンクフィンガータンパク質(ZFP)の結合特異性は、おそらくそれらが単純(フィンガーあたり本質的に4つの残基により駆動される特異性)で、かつモジュール性のシステムを示す(Paboら, Annu. Rev. Biochem., 2001, 70, 313〜340; Jamiesonら, Nat. Rev. Drug Discov., 2003, 2, 361〜368)ので、操作が容易である。Pabo (Rebar, E.J.及びC.O. Pabo, Science, 1994, 263, 671〜673 ; Kim, J.S.及びC.O. Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 1998, 95, 2812〜2817)、Klug (Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167 ; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)、及びBarbas (Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167 ; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)の研究室からの研究は、ほとんどのG/ANNG/ANNG/ANN配列に結合できる新規な人工ZFPの大きなレパートリーをもたらした。
【0010】
にもかかわらず、ZFPは、特に、治療用途のような非常に高いレベルの特異性を必要とする用途のためには制限を有する。最近、融合でのFokIヌクレアーゼ活性が、FokIのいくつかのDNA結合欠損変異体の存在下を含んで、DNAループを介して種々の距離で分けられたいずれか1つの認識部位又は2つの部位と作用することが示された(Cattoら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 1711〜1720)。つまり、哺乳動物細胞及びショウジョウバエ属(Drosophila)での毒性により示されるように、特異性は非常に退化しているはずである(Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175 ; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764〜)。
【0011】
野生においては、メガヌクレアーゼは、実質的にホーミングエンドヌクレアーゼにより代表される。ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、数百のタンパク質ファミリーを含む天然メガヌクレアーゼの広範なファミリーである(Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。これらのタンパク質は、「ホーミング」とよばれるプロセスにより伝播される可動性の遺伝要素によりコードされる。エンドヌクレアーゼは、可動性要素が不在の同族対立遺伝子を切断し、そのことにより受容遺伝子座へ可動性DNAを重複させる相同組換え事象を刺激する。効率及び特異性の点でのそれらの珍しい切断特性に鑑みて、これらは、新規で高度に特異的なエンドヌクレアーゼをもたらす理想的な足場であり得る。
【0012】
HEは、4つの主要なファミリーに属する。触媒中心に含まれる保存されたペプチドモチーフにちなんで名付けられたLAGLIDADGファミリーは、最も広範で、最もよく特徴付けされた群である。7つの構造が、現在、入手可能である。このファミリーからのほとんどのタンパク質は単量体であり、2つのLAGLIDADGモチーフを示すが、いくつかは1つのモチーフしか有さないが、二量体を形成して、パリンドローム又は偽パリンドローム(pseudo-palindromic)標的配列を切断する。
【0013】
LAGLIDADGペプチドはファミリーのメンバーのうちの唯一の保存領域であるが、これらのタンパク質は、非常によく似た構造を有する(図2)。触媒コアは、I-CreI (Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316)及びI-MsoI (Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)のようなホモ二量体について完全な2回回転対称、そしてI-SceI (Moureら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 685〜69)、I-DmoI (Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286, 1123〜1136)又はI-AniI (Bolducら, Genes Dev., 2003, 17, 2875〜2888)のような単量体については偽対称の2つのDNA結合ドメインで挟まれる。両方の単量体、又は両方のドメイン(単量体タンパク質について)は、2価のカチオンの周りに編成された触媒コアに寄与する。触媒コアのすぐ上には、2つのLAGLIDADGペプチドが、二量体形成界面において必須の役割も演じている。DNA結合は、DNA主溝上にある2つの典型的なサドル形ββαββ折り畳みに依存する。他のドメインは、例えば、タンパク質スプライシングドメインがDNA結合にも関わる、PI-PfuI (Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300, 889〜901)及びPI-SceI (Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 764〜770)のようなインテイン内で見出すことができる。
【0014】
N-末端I-DmoIドメインを、I-CreI単量体と融合させることによる機能的キメラメガヌクレアーゼの作製は(Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905 ; Epinatら, Nucleic Acids Res, 2003, 31, 2952〜62; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)、LAGLIDADGタンパク質の可塑性を示している。
さらに、種々のグループが、合理的アプローチを用いて、I-CreI(Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜1664; Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; 国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Rosenら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 4791〜4800; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)、I-SceI (Doyonら, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 2477〜2484)、PI-SceI (Gimbleら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 993〜1008)及びI-MsoI (Ashworthら, Nature, 2006, 441, 656〜659)の特異性を局所的に変更している。
【0015】
さらに、特異性が局所的に変更された数百のI-CreI誘導体が、半合理的アプローチとハイスループットスクリーニングとを組み合わせることにより、工学的に作製された:
- I-CreIの残基Q44、R68及びR70又はQ44、R68、D75及びI77に突然変異を誘発して、DNA標的の±3〜5位にて特異性が変更された(5NNN DNA標的)一連の変異型を、スクリーニングにより同定した(国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
【0016】
- I-CreIの残基K28、N30及びQ38、N30、Y33及びQ38又はK28、Y33、Q38及びS40に突然変異を誘発し、DNA標的の±8〜10位にて特異性が変更された(10NNN DNA標的)一連の変異型を、スクリーニングにより同定した(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
I-CreIの残基28〜40及び44〜77は、ホーミングエンドヌクレアーゼのハーフサイト(half-site)の異なる部分に結合できる、2つの分離可能な機能的サブドメインを形成することが示された(Smithら Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
【0017】
同じ単量体内のI-CreIの2つのサブドメインからの変異の組み合わせは、各サブドメインが結合する±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを含む、パリンドローム組み合わせDNA標的配列を切断できる新規なキメラ分子(ホモ二量体)を設計することを可能にした(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
2つの異なる変異型を組み合わせ、それぞれの変異DNA標的配列の異なる半分の融合から得られるキメラ標的を切断できる機能的ヘテロ二量体エンドヌクレアーゼに組み立てた(Arnouldら, 上記; 国際PCT出願WO 2006/097854)。興味深いことに、新規なタンパク質は、正しい折り畳み及び安定性、高い活性並びに狭い特異性を維持した。
【0018】
2つの前者の工程の組み合わせは、4つの異なるサブドメインを含むより大きいコンビナトリアルアプローチを可能にする。異なるサブドメインは、別々に改変し、組み合わせて、図3に示すような、選択された特異性を有する、完全に再設計された変異型(ヘテロ二量体又は単鎖分子)を得ることができる。第1の工程において、新規なメガヌクレアーゼの対を、切断したい標的に由来するパリンドローム標的を切断する新しい分子(「ハーフメガヌクレアーゼ」)に組み合わせる。次いで、このような「ハーフメガヌクレアーゼ」の組み合わせは、興味対象の標的を切断するヘテロ二量体種をもたらし得る。4組の変異を、モデル標的配列又はヒトRAG1遺伝子からの配列を切断するヘテロ二量体エンドヌクレアーゼに組み合わせることが、Smithら(Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)に記載されている。
これらの変異型は、真性の染色体配列を切断するために用いることができ、遺伝子療法を含むいくつかの分野における新規な展望を開く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者らは、I-CreI変異型により切断され得るベータ-2ミクログロブリン遺伝子内の一連のDNA標的を同定した(図4)。図3に示すコンビナトリアルアプローチを用いて、I-CreIタンパク質のDNA結合ドメインを完全に再設計し、それにより、完全に工学的に改変された特異性を有する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製して、ヒトB2M遺伝子からのDNA標的を切断した。ヒトB2M遺伝子からのゲノムDNA標的を切断できるI-CreI変異型は、ヒトにおける異種移植片拒絶を防ぐ目的のために、ヒトB2M遺伝子をエクスビボで不活性化するために用いることができる(図6)。その他の可能な用途は、ベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変のゲノム療法、及びベータ-2ミクログロブリン遺伝子座でのゲノム工学(ノックアウト及びノックイン)を含む。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、2つのI-CreI単量体のうちの少なくとも一方が、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型に関する。
本発明による変異型の切断活性は、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載されるもののような、任意の公知のインビトロ又はインビボ切断アッセイにより測定できる。例えば、本発明の変異型の切断活性は、レポーターベクターを用いる、酵母又は哺乳動物細胞での直列反復組換えアッセイ(direct repeat recombination assay)により測定できる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクターにクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮(truncated)非機能的コピー(直列反復)及び介在配列内にゲノムDNA標的配列を含む。変異型の発現は、ゲノムDNA標的配列を切断できる機能的エンドヌクレアーゼをもたらす。この切断は、直列反復間の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子をもたらし、その発現は、適切なアッセイによりモニターできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】遺伝子ターゲティング方策を説明する。
【図2】そのDNA標的に結合したI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの3次元構造を表す。
【図3】再設計されたホーミングエンドヌクレアーゼを作製するためのコンビナトリアルアプローチを示す。
【図4】ヒトB2M遺伝子(アクセッション番号NC_000015; 6673 pb)を表す。
【図5】標的のB2Mシリーズを表す。
【図6】メガヌクレアーゼにより誘発される組換えによる遺伝子の不活性化のための3つの方策を表す。
【図7】コンビナトリアル変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。
【図8】最適化変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。
【図9】コンビナトリアル変異体によるB2M11.3標的の切断を示す。
【図10】ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。
【図11】最適化ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。
【図12】pCLS1055ベクターマップを表す。
【図13】pCLS0542ベクターマップを表す。
【図14】pCLS1107ベクターマップを表す。
【図15】ヒトB2M遺伝子で見出されるメガヌクレアーゼ標的配列と、該DNA標的を切断できる、対応するI-CreI変異型を表す。
【図16】pCLS1069ベクターマップを表す。
【図17】pCLS1058ベクターマップを表す。
【図18】標的のB2M18シリーズを表す。
【図19】コンビナトリアル変異体によるB2M18.4標的の切断を示す。
【図20】標的のB2M20シリーズを表す。
【図21】コンビナトリアル変異体によるB2M20.4標的の切断を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表し、例えばQはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
- ヌクレオチドは、次のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa (プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc (ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0023】
- 「メガヌクレアーゼ」により、12〜45 bpの2本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意図する。該メガヌクレアーゼは、各ドメインが単量体上にある二量体酵素、又は単一ポリペプチド上に2つのドメインを含む単量体酵素のいずれかである。
- 「メガヌクレアーゼドメイン」により、メガヌクレアーゼのDNA標的の1つの半分と相互作用し、DNA標的の他方の半分と相互作用する同じメガヌクレアーゼの他方のドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能的メガヌクレアーゼを形成する領域を意図する。
【0024】
- 「メガヌクレアーゼ変異型」又は「変異型」により、野生型メガヌクレアーゼ(天然のメガヌクレアーゼ)のアミノ酸配列における少なくとも1つの残基の、別のアミノ酸での置き換えにより得ることができるメガヌクレアーゼを意図する。
- 「機能的変異型」により、DNA標的配列、好ましくは、親のメガヌクレアーゼにより切断されない新しい標的を切断できる変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列に接触するか、又は直接若しくは間接的に該DNA標的と相互作用する位置にてアミノ酸変動を有する。
- 「新規な特異性を有するメガヌクレアーゼ変異型」により、親のメガヌクレアーゼのものとは異なる切断標的のパターンを有する変異型を意図する。等価で、同様に用いられる用語「新規な特異性」「改変された特異性」「新規な切断特異性」「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことである。
【0025】
- 「I-CreI」により、配列表内の配列番号1又は配列番号107の配列に相当する配列SWISSPROT P05725又はpdbアクセッションコード1g9yを有する野生型I-CreIを意図する。
- 「ドメイン」又は「コアドメイン」により、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。該ドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれる4つのベータ鎖(β1β2β3β4)を含む。このドメインは、DNA標的の他方の半分と相互作用する別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能エンドヌクレアーゼを形成できる。例えば、二量体ホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。
【0026】
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」により、ペプチドスペーサーで連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的配列を切断できる。
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの独特の部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより接続されたLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
【0027】
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの二本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位と、C1221ともよばれる配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号2; 図5)のような派生パリンドローム配列を含む。
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」、「興味対象の部位」、「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」により、I-CreIのようなLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又は変異型、又はI-CreIに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼにより認識されかつ切断される20〜24 bpの2本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、そこでメガヌクレアーゼにより2本鎖破断(切断)が誘導される独特のDNAの位置、好ましくはゲノムの位置のことをいう。DNA標的は、C1221について上で示したように、2本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれについて、+2位及び-2位のヌクレオチドで生じる。そうでないと記載しない限り、I-Cre Iメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
【0028】
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」により、それぞれのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合を意図する。さらに、該標的の少なくとも一方の半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組み合わせたDNA標的)を含み得る。
【0029】
- 「ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子」により、哺乳動物のベータ-2-ミクログロブリン遺伝子を意図する。例えば、ヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子(B2M、6673bp)は、アクセッション番号NC_000015に相当する配列の42790977位〜42797649位に位置する。B2M遺伝子は、4つのエキソンを含む(エキソン1:1位〜127位;エキソン2:3937位〜4215位;エキソン3:4843位〜4870位;エキソン4:6121位〜6673位)。61位(エキソン1)〜4856位(エキソン3)にあるORFは、その5'及び3'末端でそれぞれ、短い及び長い非翻訳領域で挟まれている(図4)。
- 「ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列」、「ゲノムDNA標的配列」、「ゲノムDNA切断部位」、「ゲノムDNA標的」又は「ゲノム標的」により、メガヌクレアーゼ変異型により認識され切断される哺乳動物のベータ-2-ミクログロブリン遺伝子の20〜24 bpの配列を意図する。
【0030】
- 「ベクター」により、それが連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を意図する。
- 「相同な」により、配列同士の間の相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性を有する、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列させ得るそれぞれの配列中の位置の比較により決定できる。比較される配列中の位置が同じ塩基により占められる場合、その分子同士は、その位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又は一致するヌクレオチドの数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて、2つの配列間の同一性を計算することができ、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む。
【0031】
- 「個体」は、哺乳動物、及びその他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳類」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)、並びにその他、例えばウシ、ブタ、ウマを含む。
【0032】
- 変異により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列内の1つ又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。上記の変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造又はコードされたmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
【0033】
本発明による変異型は、ホモ二量体又はヘテロ二量体であり得る。好ましくは、これは、両方の単量体が、26位〜40位及び/又は44位〜77位で変異されているヘテロ二量体である。より好ましくは、両方の単量体は、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位の両方に異なる置換を有する。
上記の変異型の好ましい実施形態において、I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、26位、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある。
【0034】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、これは、DNA標的配列と接触するか、又はDNA主鎖若しくはヌクレオチド塩基と、直接若しくは水分子を介して相互作用する別のアミノ酸残基の位置での1つ又は複数の変異を含む。これらの残基は、当該技術において公知である(Juricaら, Molecular Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。特に、さらなる置換を、リン酸主鎖に接触する位置で、例えば最終C-末端ループ(137位〜143位)において導入できる。好ましくは、上記の残基は、DNA切断部位の結合及び切断に関わる。より好ましくは、上記の残基は、I-CreIの138位、139位、142位又は143位にある。各変異が、138位と139位の残基の対、及び142位と143位の残基の対から選択される残基の異なる対にあるという条件下で、2つの残基を1つの変異型内で変異させ得る。導入される変異は、最終C-末端ループの上記のアミノ酸の、I-CreI部位のリン酸主鎖との相互作用を改変する。好ましくは、138位又は139位の残基が、DNA切断部位のリン酸主鎖との水素結合の形成を妨げる疎水性アミノ酸で置換される。例えば、138位の残基がアラニンで置換されるか、又は139位の残基がメチオニンで置換される。142位又は143位の残基は、例えばグリシンのような小さいアミノ酸で置換されて、これらのアミノ酸残基の側鎖のサイズを減少させることが有利である。より好ましくは、最終C-末端ループ内の上記の置換は、I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する。
【0035】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、これは、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改善する1つ又は複数の変異を含む。
変異されるさらなる残基は、I-CreI配列全体、特にI-CreIのC-末端半分(80位〜163位)にあり得る。例えば、変異型は、2位、4位、19位、24位、31位、43位、49位、50位、53位、54位、56位、57位、59位、60位、64位、66位、69位、72位、73位、80位、81位、82位、83位、85位、87位、89位、92位、94位、96位、100位、103位、105位、107位、110位、111位、117位、120位、128位、129位、132位、135位、140位、142位、147位、153位、154位、155位、156位、157位、158位、159位、161位、163位に、1つ又は複数のさらなる置換を含む。好ましくは、上記の置換は、N2I、N2Y、K4Q、G19S、I24F、I24V、Q31L、F43L、T49A、Q50R、W53R、F54L、D56E、D56G、K57N、V59A、D60E、D60G、D60N、V64A、V64D、Y66C、D69G、D69E、S72F、S72P、S72T、V73I、E80G、I81T、I81V、K82E、K82R、P83Q、P83A、H85R、F87L、T89A、T89I、Q92L、Q92R、F94L、F94Y、K96R、K100R、K100Q、N103T、N103S、V105A、K107R、E110D、E110G、Q111L、E117G、D120G、W128R、V129A、I132V、L135P、T140M、K142R、T147A、T147N、D153G、D153V、S154G、L155Q、S156N、S156R、E157V、K158N、K159Q、K159R、S161P、S161F、S162F、P163L及びP163Qからなる群より選択される。より好ましくは、上記の変異は、G19S、I24V、F54L、F87L及びI132Vからなる群より選択される。
【0036】
変異型は、I-CreI配列のC-末端に挿入された1つ又は2つのさらなる残基も含み得る(164位及び165位)。例えば、Gを164位に挿入でき、T又はPを165位に挿入できる。
【0037】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記の置換は、元の(initial)アミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである。
本発明の変異型は、野生型I-CreI (配列番号1)、又はI-CreI足場タンパク質、例えば2位のアラニンの挿入、置換D75N、及びI-CreI配列のC-末端(164位〜166位)へのAADの挿入を有する配列番号106の足場(167アミノ酸)に由来してよい。
さらに、本発明の変異型は、配列のNH2末端及び/又はCOOH末端に挿入された1つ又は複数の残基を含み得る。例えば、タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)をNH2末端及び/又はCOOH末端に導入する。上記のタグは、該変異型の検出及び/又は精製に有用である。
【0038】
本発明による変異型は、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA標的配列を切断できるホモ二量体であり得る。
或いは、上記の変異型は、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に異なる置換を有する第1単量体及び第2単量体の会合により得られるヘテロ二量体であり、該ヘテロ二量体は、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる。
【0039】
上記の変異型により切断されるDNA標的配列は、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子のエキソン又はイントロン内であり得る。
【0040】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記のDNA標的配列は、ヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子(B2M遺伝子)からである。好ましくは、上記のDNA標的配列は、配列番号82〜91の配列(24 bp; 図4及び15)、及び該24 bp配列の一方又は両方の末端から1つ又は2つの末端塩基対を欠いた20〜22 bpの派生配列からなる群より選択される。コードエキソンは、遺伝子の小さい画分しか表さないので(図4)、最も可能性のある標的部位は、イントロン配列又は非翻訳エキソン配列で見出される。しかし、B2M18及びB2M20 (配列番号89及び90)のような標的は、B2Mオープンリーディングフレームで見出される。
【0041】
より好ましくは、変異型の単量体は、第1単量体及び第2単量体のそれぞれについて、少なくとも以下の置換を有する:
- Y33R、Q38A、Q44D、R68A、R70S、D75K及びI77R (第1単量体)、並びにK28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M4標的を切断する(図4及び15)、
- S32T、Y33T、Q44T、R68Y、R70S、D75Y及びI77V (第1単量体)、並びにY33R、Q38A、Q44N、R68Q、R70S、D75S及びI77V (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M10標的を切断する(図4及び15)、
- S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K又はS32A、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K (第1単量体)、並びにN30Q、Y33G、Q38C、R68N、R70S、D75N及びI77R (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M11標的を切断する(図4及び15)、
【0042】
- S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y及びI77K (第1単量体)、並びにS32T、Q38S、Q44K、R70S及びI77A (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M13標的を切断する(図4及び15)、
- S32T、Y33T、Q44K、R68E、R70S及びI77R (第1単量体)、並びにN30A、Y33T、Q44N、R68K、R70S、D75H及びI77F (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M14標的を切断する(図4及び15)、
- S32R、Y33D、Q44A、R70S、D75E及びI77R (第1単量体)、並びにN30D、Y33R、Q44K、R68Y、R70S、D75N及びI77Q (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M16標的を切断する(図4及び15)、
- S32T、Q38W、Q44A、R70S、D75R及びI77Y (第1単量体)、並びにY33H、S40Q、Q44N、R70S、D75R及びI77Y (第2単量体);この変異型は、第1イントロンに位置するB2M17標的を切断する(図4及び15)、
【0043】
- Y33H、Q38G、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V (第1単量体)、並びに以下からなる群より選択される第2単量体:N30A、Y33T、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;N30H、Y33C、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32G、Y33C、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32R、Y33T、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32G、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32A、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32G、Y33S、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;N30H、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;S32G、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;Y33C、S40Q、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;S32G、Y33S、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77V;S32G、Y33C、Q44T、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;S32A、Y33C、Q44T、R68Y、R70S、D75R及びI77Q ;S32G、Y33C、R68Y、R70S、D75R and I77V;S32G、Y33C、R68Y、R70S and D75R;S32G、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Y;S32A、Y33C、Q44N、R68Y、R70S、D75R及びI77Y;S32R、Y33T、R68Y、R70S、D75R、I77Q及びD153G;N30H、Y33C、Q44R、R68Y、R70S、D75R及びI77Q;これらの変異型は、エキソン2に位置するB2M18標的を切断する(図4及び15、表VII)、
【0044】
- Y33T、S40N、Q44T、R68Y、R70S、D75R及びI77V (第1単量体)、並びに以下からなる群より選択される第2単量体:K28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68S、R70S、D75S及びI77R;K28A、Y33S、S40R、R70S及びD75N;K28A、Y33T、S40R、R70S及びD75N;K28R、Y33A、Q38Y、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33N、Q38R、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33R、Q38Y、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33S、Q38R、S40Q、R70S及びD75N;K28R、Y33S、Q38Y、S40Q、R70S及びD75N;K28T、Y33T、S40D、R70S及びD75;K28T、Y33T、S40R、R70S及びD75N;S32G、Y33C及びD75N;Y33C及びD75N;Y33S、S40R及びD75N;Y33S及びS40R;N30A及びY33G;N30A及びY33T;N30C及びY33A;N30G及びY33C;N30S、Y33S及びQ38T;N30A及びS32W;N30H及びY33K;N30R及びY33P;N30K及びY33T;N30P及びY33W;S32G及びY33P;S32T及びY33A;Y33T及びS40E;これらの変異型は、イントロン2-エキソン3接合部に位置するB2M20標的を切断する(図4及び15;表VIII)、並びに
- K28T、Y33R、S40R、Q44T、R70S及びD75Y (第1単量体)、並びにN30D、Y33R、Q44N、R68Y、R70S、D75Y及びI77Q (第2単量体);この変異型は、エキソン4に位置するB2M33標的を切断する(図4及び15)。
【0045】
より好ましくは、上記の変異型は、配列番号24〜28、126〜134の配列のいずれかを有する第1単量体と、配列番号37〜77及び135の配列のいずれか2を有する第2単量体とからなる。上記で定義されるB2M11標的を切断する単量体に由来するこの変異型は、B2M11標的の切断を増大させるさらなる置換を有する(図4及び15;表IV、V及びVI)。
【0046】
ヘテロ二量体変異型は、2つのI-CreI単量体間で分子間相互作用を形成する第1単量体及び第2単量体の残基に対応する少なくとも1対の興味対象の変異を有する偏性(obligate)ヘテロ二量体変異型であって、該対の第1変異が、第1単量体内にあり、該対の第2変異が第2単量体内にあり、該変異の対が、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのゲノムDNA標的を切断できる機能的へテロ二量体の形成を妨げることなく、それぞれの単量体からの機能的ホモ二量体の形成を損なう変異型であるのが有利である。
【0047】
単量体は、第1単量体及び第2単量体について、それぞれ以下の変異の対の少なくとも1つを有するのが有利である:
a) 8位のグルタミン酸の、塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、並びに7位のリジンの、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも一方の、アルギニンでの置換をさらに含み得る。
b) 61位のグルタミン酸の、塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、96位のリジンの、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも一方の、アルギニンでの置換をさらに含み得る。
【0048】
c) 97位のロイシンの、芳香族アミノ酸、好ましくはフェニルアラニンでの置換(第1単量体)、並びに54位のフェニルアラニンの、小さいアミノ酸、好ましくはグリシンでの置換(第2単量体);第1単量体は、54位のフェニルアラニンの、トリプトファンでの置換をさらに含むことができ、第2単量体は、58位のロイシン又は57位のリジンの、メチオニンでの置換をさらに含むことができる。
d) 137位のアスパラギン酸の、塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、並びに51位のアルギニンの、酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体)。
例えば、第1単量体は、変異D137Rを、そして第2単量体は、変異R51Dを有し得る。
【0049】
偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、上記のa)、b)、c)又はd)で定義される変異の少なくとも2対を有利に含む。変異の対の一方は、有利には、c)又はd)で定義されるとおりであるのが有利である。好ましくは、一方の単量体は、7位及び96位のリジン残基の、酸性アミノ酸での置換を含み、他方の単量体は、8位及び61位のグルタミン酸残基の、塩基性アミノ酸での置換を含む。より好ましくは、偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、上記のa)、b)及びc)で定義される変異の3対を含む。偏性ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、(i) E8R、E8K又はE8H、E61R、E61K又はE61H及びL97F、L97W又はL97Y; (ii) K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F、或いは(iii) K7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97Fから選択される変異を少なくとも有する第1単量体(A)と、(iv) K7E又はK7D、F54G又はF54A及びK96D又はK96E; (v) K7E、F54G、L58M及びK96E、或いは(vi) K7E、F54G、K57M及びK96Eの変異を少なくとも有する第2単量体(B)とからなる。例えば、第1単量体は、変異K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F、又はK7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97Fを有してよく、第2単量体は、変異K7E、F54G、L58M及びK96E又はK7E、F54G、K57M及びK96Eを有してよい。
【0050】
本発明の主題は、上記で定義されるI-CreI変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ(融合タンパク質)でもある。単鎖メガヌクレアーゼは、2つのI-CreI単量体、2つのI-CreIコアドメイン(I-CreIの6位〜94位)又は両方の組み合わせを含み得る。好ましくは、2つの単量体/コアドメイン又は両方の組み合わせは、ペプチドリンカーにより連結される。
【0051】
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。上記のポリヌクレオチドは、ホモ二量体若しくはヘテロ二量体変異型の1つの単量体、又は単鎖キメラメガヌクレアーゼの2つのドメイン/単量体をコードできる。
【0052】
本発明の主題は、本発明による変異型又は単鎖メガヌクレアーゼを発現するための組換えベクターでもある。組換えベクターは、上記で定義される変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。好ましい実施形態において、上記のベクターは、それぞれがヘテロ二量体変異型の1つの単量体をコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む。
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、或いは染色体、非染色体、半合成又は合成の核酸からなり得る線状若しくは環状のDNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自律複製できるもの(エピソームベクター)及び/又は連結された核酸の発現を可能にするもの(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、商業的に入手可能である。
【0053】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
好ましいベクターは、レンチウイルスベクター、特に自己不活化レンチウイルスベクター(self inactivacting lentiviral vectors)を含む。
【0054】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;S. cerevisiaeについてTRP1;E. coliにおいてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0055】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該変異型の産生又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、変異型がヘテロ二量体である場合、各単量体をコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-抗トリプシンプロテアーゼ、ヒトサーファクタント(SP)タンパク質A及びB、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
【0056】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、これは、上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティング構築物を含む。
或いは、I-CreI変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードするベクターと、ターゲティング構築物を含むベクターとは、異なるベクターである。
より好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)に記載の配列で挟まれた、導入される配列と
を含む。
【0057】
ゲノム療法又はノックアウト動物/細胞の作製のために、導入される配列は、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列である。遺伝子の機能を完全に不活性化するために、両方の相同染色体が標的にされなければならない。さらに、上記の配列は、b2-ミクログロブリン遺伝子又はその一部分を欠失してもよく、結局は、外因性遺伝子又はその一部分を導入してよい(ノックイン/遺伝子置き換え)。ノックイン動物/細胞を作製するために、興味対象部位を修復するDNAは、興味対象の外因性遺伝子の配列と、HPRT遺伝子のような選択マーカーとを含む。或いは、導入される配列は、特定の配列を改変するか、興味対象の内因性遺伝子を減弱若しくは活性化するか、又は興味対象の部位に変異を導入するために用いられる配列を含む、染色体DNAをある特定の様式で変更するために用いられるその他の任意の配列であり得る。このような染色体DNAの変更は、ゲノム工学のために用いてよい(動物モデル及びヒト株化細胞を含む組換え株化細胞)。
【0058】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の不活性化は、転写を妨害して、短縮タンパク質をもたらす転写終結シグナルの挿入により生じ得る(図6a)。この場合、導入される配列は、5'から3'の方向に、少なくとも転写終結配列(ポリA1)を含み、好ましくは、該配列はプロモーター及びマーカーオープンリーディングフレーム(ORF)を含むマーカーカセットと、第2転写終結配列(ポリA2; 図6a)とをさらに含む。この方策は、標的B2M4、B2M10、B2M11、B2M13、B2M14、B2M16、B2M17、B2M18及びB2M20 (配列番号82〜90; 図4及び15)のいずれかのような、B2Mプロモーターの下流とB2M停止コドンの上流の標的を切断するいずれのメガヌクレアーゼに対しても用いることができる。
【0059】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の不活性化は、コード配列を破壊するであろうマーカー遺伝子のB2Mオープンリーディングフレーム(ORF)内への挿入によっても生じる(図6b)。挿入は、さらに、切断部位を挟むORF配列の欠失、及び結局は興味対象の外因性遺伝子の挿入(遺伝子置き換え)を伴うことができる。この方策は、例えばB2M18又はB2M20 (配列番号90、91)を切断するメガヌクレアーゼのような、エキソン配列を切断するメガヌクレアーゼに対して用いることができる。
【0060】
さらに、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の不活性化は、転写産物を不安定化するであろう配列の挿入により生じることもできる。この方策は、図4及び15に示す標的(配列番号82〜91)のいずれかのようなB2Mプロモーターの下流の標的を切断する任意のメガヌクレアーゼに対して用いることができる。
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpを超える、より好ましくは200 bpを超える相同配列が用いられる。実際に、共有されるDNA相同性は、破断部位の上流及び下流を挟む領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つの腕の間に位置するべきである。
【0061】
よって、ターゲティング構築物は、好ましくは、200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。これは、切断を修復するための標的部位に接する少なくとも200 bpの相同配列を有するベータ-2ミクログロブリン遺伝子フラグメントと、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化するための配列と、上記で定義されるように、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を置き換えるための興味対象の外因性遺伝子の配列とを含む。
【0062】
配列の挿入のために、DNA相同性は、通常、破断部位の直接上流及び下流の領域に位置する(破断にすぐ接する配列;最小修復マトリクス)。しかし、挿入が、切断部位を挟むORF配列の欠失を伴う場合、共有されるDNA相同性は、欠失領域の上流及び下流の領域に位置する。
例えば、上記で定義される変異型のそれぞれにより切断されるB2M標的と、各変異型での切断を修復する最小マトリクスを、図15に示す。
【0063】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ(変異型又は単鎖派生キメラメガヌクレアーゼ)及び/又は上記のメガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの発現ベクターを含むことを特徴とする組成物でもある。
上記の組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義される、上記の変異型のゲノムDNA切断部位と相同性を有する配列で挟まれた、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む。
好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、又はこれは、本発明によるメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター内に含まれる。
【0064】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ及び/又は1つの発現ベクターの、提供者から必要とする個体(受容者)への細胞の移植の間の異種移植片拒絶の予防、改善又は治癒のための医薬品の製造のための使用でもある。
【0065】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ及び/又は1つの発現ベクターの、必要とする個体におけるベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態の予防、改善又は治癒のための医薬品の製造のための使用でもある。
メガヌクレアーゼの使用は、(a) 提供者/個体の体組織において、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位において、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより2本鎖切断を誘導し、(b) 該体組織に、ターゲティングDNAを導入する工程を少なくとも含み、該ターゲティングDNAは、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) 上記で定義されるような、ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際に、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性するDNAとを含む。ターゲティングDNAは、興味対象部位へのターゲティングDNAの導入に適する条件下で、体組織に導入される。ターゲティング構築物は、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を欠失させるための配列と、興味対象の外因性遺伝子の配列とを含み得る(遺伝子置き換え)。
【0066】
或いは、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子は、非相同末端結合(non-homologous end joining)による2本鎖破断の修復によるオープンリーディングフレームの突然変異誘発により不活性化させてよい(図6c)。修復マトリクスの不在下では、エキソン内のDNA 2本鎖破断は、誤りを起しやすい非相同末端結合経路NHEJにより実質的に修復され、小さい欠失をもたらし(数ヌクレオチド)、これが切断部位を不活性化して、フレームシフト変異をもたらす。
【0067】
この場合、メガヌクレアーゼの使用は、提供者/個体の体組織に、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖切断を誘導し、それにより、非相同末端結合による2本鎖破断の修復により、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子オープンリーディングフレームの突然変異誘発を誘導する工程を少なくとも含む。
【0068】
本発明によると、上記の2本鎖切断は、該メガヌクレアーゼを、提供者/個体からの体細胞(膵臓、腎臓、心臓、筋肉)に導入することにより導入し、次いで、改変された細胞を、受容者(異種移植)に移植するか、又は病気の個体(ベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変)に戻すことにより、エクスビボで誘導できる。
【0069】
本発明の主題は、必要とする個体において、移植の間の異種移植片拒絶を予防、改善又は治癒するための方法であって、該個体に上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む方法でもある。
【0070】
本発明の主題は、必要とする個体において、ベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態を予防、改善又は治癒するための方法であって、該個体に上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む方法でもある。
【0071】
本発明の主題は、さらに、上記で定義されるメガヌクレアーゼ、好ましくは発現ベクターに含まれる1つ又は2つのポリヌクレオチドの、非治療目的での、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座でのゲノム工学のための使用である(動物モデル及び組換え細胞作製:ノックイン又はノックアウト)。
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、ゲノムDNA標的配列を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位に2本鎖破断を誘導し、それによりDNA組換え事象、DNA欠失又は細胞死を誘導するためである。
【0072】
本発明によると、上記の2本鎖破断は、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子内の特定の配列を修復するため、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子内の特定の配列を改変するため、機能的ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を、変異遺伝子の代わりに回復するため、内因性ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を減弱又は活性化するため、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位に変異を導入するため、外因性遺伝子又はその一部分を導入するため、内因性ベータ-2ミクログロブリン遺伝子又はその一部分を不活性化又は欠失するため、染色体腕を転座させるため、又はDNAを修復されないままにして分解するためである。
【0073】
上記の使用の別の有利な実施形態によると、上記の変異型、ポリヌクレオチド、ベクターは、上記で定義されるターゲティングDNA構築物と会合する(associated)。
【0074】
本発明によるメガヌクレアーゼの使用の第1の実施形態において、これは、以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖破断を導入し、2) 標的にされる遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含むターゲティングDNA構築物を提供する。該メガヌクレアーゼは、細胞に直接、又は該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含み、用いられる細胞においてその発現に適する発現ベクターを介して提供できる。この方策は、標的部位にてDNA配列を導入するため、例えば薬物試験に用い得るノックイン若しくはノックアウト動物モデル又は株化細胞を作製するために用いられる。
【0075】
本発明によるメガヌクレアーゼの使用の第2の実施形態において、これは、少なくとも以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖破断を導入し、2) 該破断されたゲノム遺伝子座を、切断部位を取り囲む領域と相同性を有する染色体DNAとの相同組換えに適する条件下に維持する。
本発明によるメガヌクレアーゼの使用の第3の実施形態において、これは、少なくとも以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより、2本鎖破断を導入し、2) 該破断されたゲノム遺伝子座を、非相同末端結合による2本鎖破断の修復に適する条件下に維持する。
【0076】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリンノックイン又はノックアウト動物を作製する方法でもある:
(a) 動物の多能性前駆細胞又は胚に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、同時に又はその後、
(b) 工程(a)の動物の多能性前駆細胞又は胚に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際に興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入することにより、相同組換えにより興味対象部位が修復されたゲノム改変動物前駆細胞又は胚を作製し、
(c) 工程(b)のゲノム改変動物前駆細胞又は胚を、キメラ動物に成長させ、
(d) 工程(c)のキメラ動物からトランスジェニック動物を導く。
好ましくは、工程(c)は、キメラ動物を作製するために、工程(b)で作製されたゲノム改変前駆細胞を、芽細胞に導入することを含む。
【0077】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリンノックイン又はノックアウト細胞を作製するための方法でもある:
(a) 細胞に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、同時に又はその後、
(b) 工程(a)の細胞に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えの際に興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入することにより、相同組換えにより興味対象部位が修復された組換え細胞を作製し、
(c) 任意の適切な手段により、工程(b)の組換え細胞を単離する。
ターゲティングDNAは、ターゲティングDNAを興味対象部位に導入するのに適する条件下で、細胞に導入される。
【0078】
好ましい実施形態において、上記のターゲティングDNA構築物は、ベクターに挿入される。
或いは、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子は、非相同末端結合による2本鎖破断の修復により不活性化できる(図6c)。
【0079】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリンノックアウト動物を作製する方法でもある:
(a) 動物の多能性前駆細胞又は胚に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、そのことにより、非相同末端結合により2本鎖破断が修復されたゲノム改変前駆細胞又は胚を作製し、
(b) 工程(a)のゲノム改変動物前駆細胞又は胚を、キメラ動物に成長させ、
(c) 工程(b)のキメラ動物からトランスジェニック動物を導く。
好ましくは、工程(b)は、キメラ動物を作製するために、工程(a)で得られたゲノム改変前駆細胞を、芽細胞に導入することを含む。
【0080】
本発明の主題は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリン欠損細胞を作製する方法でもある:
(a) 細胞に、上記で定義されるメガヌクレアーゼを導入することにより、該メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断部位を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子の興味対象部位にて2本鎖切断を誘導し、そのことにより、非相同末端結合により2本鎖破断が修復されたゲノム改変HPRT欠損細胞を作製し、
(b) 任意の適切な手段により、工程(a)のゲノム改変HPRT欠損細胞を単離する。
【0081】
改変される細胞は、興味対象の任意の細胞であり得る。トランスジェニック/ノックアウト動物を作製するために、細胞は、当該技術において公知の胚性幹(ES)細胞のような多能性前駆細胞である。組換え株化細胞を作製するために、細胞は、有利には、例えばPerC6 (Fallauxら, Hum. Gene Ther. 9, 1909〜1917, 1998)又はHEK293 (ATCC # CRL-1573)細胞のようなヒト細胞であり得る。上記のメガヌクレアーゼは、細胞に直接、又は該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含み、用いられる細胞におけるその発現に適する発現ベクターを介して提供され得る。
【0082】
トランスジェニック動物/興味対象の異種タンパク質を発現するヒト株化細胞を含む組換え株化細胞を作製するために、ターゲティングDNAは、上記で定義されるように、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子の上流及び下流の配列により挟まれた興味対象のタンパク質をコードする外因性遺伝子の配列とマーカー遺伝子とを含むことにより、相同組換えによって、興味対象外因性遺伝子でベータ-2ミクログロブリン遺伝子が置き換えられたゲノム改変細胞(動物前駆細胞又は胚/動物又はヒト細胞)が作製される。
外因性遺伝子及びマーカー遺伝子は、上記で定義されるように、トランスジェニック動物/組換え株化細胞において異種タンパク質/マーカーの発現を可能にするために、適切な発現カセットに挿入される。
【0083】
メガヌクレアーゼは、ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物のいずれかとして用いることができる。これは、個体の体細胞に、特定の型の細胞に適切な当該技術において公知の任意の簡便な手段により、単独で、又は少なくとも適切なビヒクル若しくは担体及び/又はターゲティングDNAとともに、導入される。
【0084】
本発明による使用の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、以下のものと会合する:
- リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI);この場合、該会合物は、投与され、標的体細胞に導入される。
- 膜移送ペプチド(membrane translocating peptides) (Bonetta, The Scientist, 2002, 16, 38; Fordら, Gene Ther., 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, Curr. Opin. Biotechnol., 2002, 13, 52〜56);この場合、変異型/単鎖メガヌクレアーゼの配列は、膜移送ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
【0085】
本発明による使用の別の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)及び/又はターゲティングDNAは、ベクターに挿入される。ターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸は、細胞に、種々の方法により導入できる(例えば注入、直接摂取、発射衝撃、リポソーム、エレクトロポレーション)。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて、細胞内で安定的又は一過的に発現させ得る。真核細胞における発現の方法は、当該技術において公知である(Current Protocols in Human Genetics: 12章 「Vectors For Gene Therapy」及び13章「Delivery Systems for Gene Therapy」を参照)。所望により、組換えタンパク質中に、核局在化シグナルを組み込んで、核内でそれが発現されることを確実にすることが好ましい。
【0086】
細胞内に一旦入ると、メガヌクレアーゼ及び存在するならばターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、細胞質から、核の作用部位に細胞により移入されるか又は移送される。
【0087】
治療目的のために、メガヌクレアーゼと、医薬的に許容される賦形剤とは、治療有効量で投与される。このような組み合わせは、投与される量が、生理的に効果をもたらす場合に「治療有効量」で投与されるという。ある因子は、その存在が、受容者の生理機能における検出可能な変化をもたらす場合に、生理的に効果をもたらす。この関係において、ある因子は、その存在が、標的にされた疾患の1つ又は複数の症状の重篤さの減少と、損傷又は異常のゲノム修正をもたらす場合に、生理的に効果をもたらす。
【0088】
本発明による使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、実質的に非免疫原性であり、すなわち、有害な免疫学的応答をほとんど又は全く生じない。この種の有害な免疫学的反応を緩和又は排除する種々の方法を、本発明に従って用いることができる。好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に有さない。望まない免疫学的反応を回避する別の方法は、メガヌクレアーゼを、ポリエチレングルコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは、500〜20,000ダルトンの平均分子量(MW)のもの)とコンジュゲートさせることである。例えばDavisら(US 4,179,337)により記載されるPEG又はPPGとのコンジュゲート形成は、抗ウイルス活性を有する、非免疫原性で、生理活性で、水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを提供できる。ポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを用いる同様の方法は、Saiferら(US 5,006,333)に記載されている。
【0089】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された、原核又は真核の宿主細胞にも関する。
本発明は、細胞の全て又は一部が、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されたことを特徴とする非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞とは、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
【0090】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型の、他のメガヌクレアーゼを作製するための足場としての使用でもある。例えば、第3回目の突然変異誘発及び選択/スクリーニングを、新規な第3世代のメガヌクレアーゼを作製する目的で、変異型に対して行うことができる。
【0091】
本発明によるメガヌクレアーゼの種々の使用及び該メガヌクレアーゼを用いる方法は、上記で定義されるI-CreI変異型、該変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ、該変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用を含む。
【0092】
本発明によるI-CreI変異型は、少なくとも以下の工程を含む、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのゲノムDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型を工学的に作製する方法により得ることができる:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
(c) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0093】
(e) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
【0094】
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
(j) ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの上記のゲノムDNA標的を切断できる工程(i)からのヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする。
【0095】
工程(a)、(b)、(g)及び(h)は、特に、DNA標的配列に接触するか、又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用する別の位置にて、変異体の結合及び/又は切断特性を改善するための付加的な変異の導入を含んでよい。これらのことは、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるように、コンビナトリアルライブラリーを作製することにより行ってよい。
【0096】
さらに、工程(g)及び/又は(h)は、変異体全体、又は変異体の一部分、特に変異型のC-末端半分(80位〜163位)に対するランダム変異の導入をさらに含み得る。このことは、当該技術において公知であり、商業的に利用可能な標準の突然変異誘発の方法に従って、変異型のプールに対してランダム突然変異誘発ライブラリーを作製することにより行うことができる。
【0097】
工程(g)及び(h)における変異の(分子内)組み合わせは、公知のオーバーラップPCR法に従って、2つのサブドメインのそれぞれを含むオーバーラップフラグメントを増幅することにより行ってよい。
工程(i)における変異型の(分子間)組み合わせは、工程(g)からの1つの変異型を、工程(h)からの1つの変異型と同時発現させて、ヘテロ二量体の形成を可能にすることにより行われる。例えば、宿主細胞を、該変異型をコードする1つ又は2つの組換え発現ベクターで改変できる。次いで、国際PCT出願WO 2006/097854及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に以前に記載されたようにして、細胞を、変異型の発現を可能にする条件下で培養することにより、宿主細胞内でヘテロ二量体が形成される。
【0098】
工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)における選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458, Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962及びChamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178に記載されるような、インビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いて行うことができる。
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)は、インビボで、変異型により作製された変異DNA標的配列内の2本鎖破断が、陽性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は陰性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を、該DNA 2本鎖破断の組換え媒介修復により導く条件下で行われる。
【0099】
本発明の主題は、本発明に従う、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的を切断できる変異型を工学的に作製するために有用な、I-CreIの26位〜40位及び/又は44位〜77位に変異を有するI-CreI変異型でもある。特に、本発明は、配列番号78、79、80、81及び105の配列の変異型を含む、上記で定義されるI-CreI変異型を工学的に作製する方法の工程(c)〜(f)で定義されるようなI-CreI変異型を包含する。本発明は、配列番号29〜36の配列の変異型を含む、上記で定義されるI-CreI変異型を工学的に作製する方法の工程(g)及び(h)で定義されるI-CreI変異型も含む。
【0100】
興味対象の遺伝子からのDNA標的を切断できる単鎖キメラメガヌクレアーゼは、当該技術において公知の方法により、本発明による変異型から導かれる(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。このような方法はいずれも、本発明で定義される変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築するために用いることができる。
本発明で定義される変異型をコードするポリヌクレオチド配列は、当業者により知られる任意の方法により調製できる。例えば、これらは、cDNA鋳型から、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、該cDNAのコドンは、所望の発現系において該タンパク質を発現させるのに好ましいように選択される。
該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA技術及び遺伝子工学技術により得て、宿主細胞に導入できる。
【0101】
本発明で定義されるI-CreI変異型又は単鎖誘導体は、上記で定義されるポリペプチドを発現させることにより作製される。好ましくは、上記のポリペプチドは、1つの発現ベクター又は2つの発現ベクター(変異型のみの場合)により改変された宿主細胞又はトランスジェニック動物/植物内で、ポリペプチドの発現又は同時発現に適する条件下で、発現または同時発現され(変異型のみの場合)、変異型又は単鎖誘導体は、宿主細胞培養物またはトランスジェニック動物/植物から回収される。
【0102】
本発明の実行は、そうでないと記載しない限り、当該技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常の技術を用いる。このような技術は、文献に充分に説明されている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA):Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版(Sambrookら, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編, 1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries及びS. J. Higgins編 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames及びS. J. Higgins編 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson及びM. Simon編, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ、特に154巻及び155巻(Wuら編)及び185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller及びM. P. Calos編, 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編, Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編, 1986);並びにManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0103】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型及びその使用を説明する実施例及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の特徴をさらに含む。添付の図面において:
- 図1は、遺伝子ターゲティング方策を説明する。(a) 標的にされる遺伝子座に相同な配列で取り囲まれたマーカーを含む直鎖状配列を、核に導入でき、相同標的遺伝子座と組み換えることができる。この実験の設計は、今日、遺伝子ノックイン及び遺伝子ノックアウトについて最も広範なものである。マーカーの挿入は、遺伝子置き換えをもたらす、標的にされた遺伝子座内での欠失を伴い得ることに注目されたい。(b) メガヌクレアーゼにより誘発される遺伝子ターゲティング。この場合、ターゲティング配列は、しばしば、環状プラスミドの一部分である。
- 図2は、そのDNA標的に結合したI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの3次元構造を表す。触媒コアは、DNA主溝の上でサドル形相互作用界面を形成する2つのαββαββα折り畳みで囲まれる。
【0104】
- 図3は、再設計されたホーミングエンドヌクレアーゼを作製するためのコンビナトリアルアプローチを示す。局所的に特異性が変更されたI-CreI誘導体の大きい集団を作製する。次いで、2ステップコンビナトリアルアプローチを用いて、これらの変異体をホモ二量体タンパク質に組み立て(同じ単量体内での変異の組み合わせにより)、次いでヘテロ二量体に組み立てて、完全に再設計された特異性を有するメガヌクレアーゼを得る。
- 図4は、ヒトB2M遺伝子(アクセッション番号NC_000015; 6673 pb)を表す。エキソンを箱で囲む(エキソン1: 1位〜127位;エキソン2: 3937位〜4215位;エキソン3: 4843位〜4870位;エキソン4: 6121位〜6673位)。ORFは、61位(エキソン1)〜4856位(エキソン3)である。種々のメガヌクレアーゼ部位(B2Mn)を示す。
【0105】
- 図5は、標的のB2Mシリーズを表す。B2M11.2及びB2M11.3は、標的の1つの半分の鏡複製(mirror duplication)によりB2M標的に由来する2つのパリンドローム配列である。これらの2つの標的は、次に、B2M11.2及びB2M11.3標的中の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが、切断に対して何の影響も有さないとみなされる場合に、I-CreI標的により切断されることが見出された10GAA_P及び5TAG_P (B2M11.2)、並びに10CTG_P及び5TTT_P標的(B2M11.3)の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0106】
- 図6は、メガヌクレアーゼにより誘発される組換えによる遺伝子の不活性化のための3つの方策を表す。全ての3つの場合において、遺伝子の機能を完全に不活性化するためには、両方の相同染色体が標的にされなければならないことに注目されたい。(a) イントロン内での切断による不活性化:転写終結配列(ポリA1)と、プロモーター、マーカーORF及び第2転写終結配列(ポリA2)を含むマーカーカセット。転写終結配列は、短縮転写産物、よって短縮タンパク質をもたらす。(b) エキソン内での切断、及びマーカーカセットのノックインによる不活性化。マーカーノックインは、エキソン配列の欠失を伴い得る(図1を参照)。(c) エキソン内での切断、及び誤りの多い非相同末端結合経路による修復による不活性化。修復マトリクスの不在下では、DNA 2本鎖破断は、本質的にNHEJにより修復され、ほとんどの場合、メガヌクレアーゼ切断に起因する3'付着末端の完全な再結合をもたらす。この場合、回復された切断部位は、メガヌクレアーゼにより再び切断され得る。しかし、この誤りの多い修復経路は、小さい欠失(数ヌクレオチド)ももたらすことができ、これが切断部位を不活性化して、フレームシフト変異をもたらす。
【0107】
- 図7は、コンビナトリアル変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。この図は、B2M11.2標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。H12は、陽性対照(C)である。1つ目の上のフィルタにおいて、位置B3の陽性変異体の配列(円)は、KNAHQS/AYSYKである(表Iと同じ命名)。下の2番目のフィルタにおいて、位置F7の陽性変異体の配列は、KNGHQS/AYSYKである。
- 図8は、最適化変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。B2M11.2を切断する一連のI-CreI N75最適化変異体は、変異体KNAHQS/AYSYK及びKNGHQS/AYSYKのランダム突然変異誘発から得られる。切断は、B2M11.2標的を用いて試験する。B2M11.2を切断する変異体を円で囲む。例えば、位置B3の陽性変異体の配列は、28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66Cに対応する(表IIと同じ命名)。H12は、陽性対照である。
【0108】
- 図9は、コンビナトリアル変異体によるB2M11.3標的の切断を示す。この図は、B2M11.3標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。H10、H11及びH12は、それぞれ、陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。フィルタにおいて、位置G5 (円)の陽性変異体の配列は、KQSGCS/QNSNR (表IIIと同じ命名)である。
- 図10は、ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。この図は、B2M11標的を用いるI-CreI変異体の組み合わせの一次スクリーニングを示す。陽性ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体のカラムを円で囲む。例示フィルタにおいて、(1)及び(2)は、28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R (M1)を有する酵母株と交配させた、B2M11標的並びにそれぞれ28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2I96R105A (1)及び28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/132V (2)変異体を有する酵母株である(表IVと同じ命名)。
【0109】
- 図11は、最適化ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。B2M11.3を切断する一連のI-CreI N75最適化変異体を、B2M11.2を切断する変異体と同時発現させる。切断は、B2M11標的を用いて試験する。B2M11を切断する変異体を円で囲む(例として、28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R対28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66Cのヘテロ二量体に相当するG9)。例示フィルタにおいて、B2M11標的及び28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C変異体を有する酵母株を、28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R (MI)を有する酵母株、又は対角で対照(C1〜C3)と交配させる(表Vと同じ命名)。H10、H11及びH12は、それぞれ、陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。
【0110】
- 図12は、pCLS1055ベクターマップを表す。
- 図13は、pCLS0542ベクターマップを表す。
- 図14は、pCLS1107ベクターマップを表す。
- 図15は、ヒトB2M遺伝子で見出されるメガヌクレアーゼ標的配列と、該DNA標的を切断できる、対応するI-CreI変異型を表す。標的配列に最も近いエキソンと、エキソン接合部を示し(第2列及び第3列)、DNA標的の配列(第4列)を、その位置(第5列)とともに示す。標的部位での切断を修復する最小修復マトリクスは、その最初のヌクレオチド(始点、第8列)及び最後のヌクレオチド(終点、第9列)で示す。各変異型の配列は、記載する位置での変異された残基により定義される。例えば、図15の最初のヘテロ二量体変異型は、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれK, N, S, R, A, S, D, A, S, K, Rを有する第1単量体と、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、及び77位にそれぞれR, N, S, A, Y, Q, A, Y, S, Y及びKを有する第2単量体とからなる。位置は、I-CreI配列であるSWISSPROT P05725 (配列番号1)を参照にして記載する。I-CreIは、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれK, N, S, Y, Q, S, Q, R, R, D及びIを有する。
【0111】
- 図16は、pCLS1069ベクターマップを表す。
- 図17は、pCLS1058ベクターマップを表す。
- 図18は、標的のB2M18シリーズを表す。B2M18.3及びB2M18.4は、標的の1つの半分の鏡重複によりB2M18標的から導かれた2つのパリンドローム配列である。これらの2つの標的は、次に、B2M18.3及びB2M18.4標的の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが切断に影響しないとみなす場合、I-CreI標的により切断されることが見出された10NNN及び5NNN標的の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0112】
- 図19は、コンビナトリアル変異体によるB2M18.4標的の切断を示す。この図は、B2M18.4標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。各4分の1の右側の2重のドット(C)は、代わりに、それぞれ陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。フィルタの左の2重のドット(M)は、試験したコンビナトリアルクローンである。位置B10の陽性変異体(円)の配列は、KNGCQS/QYSRQである(表VIIと同じ命名)。
- 図20は、標的のB2M20シリーズを表す。B2M20.3及びB2M20.4は、標的の1つの半分の鏡重複によりB2M20標的から導かれた2つのパリンドローム配列である。これらの2つの標的は、次に、B2M20.3及びB2M20.4標的の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが切断に影響しないとみなす場合、I-CreI標的により切断されることが見出された10NNN及び5NNN標的の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0113】
- 図21は、コンビナトリアル変異体によるB2M20.4標的の切断を示す。この図は、B2M20.4標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の一次スクリーニングの例を示す。各4分の1の右側の2重のドット(C)は、代わりに、それぞれ陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)を示す。フィルタの左の2重のドット(M)は、試験したコンビナトリアルクローンである。位置F6の陽性変異体(円)の配列は、KNSTQE/QRRDIである(表VIIIと同じ命名)。
【実施例】
【0114】
実施例1:ヒトB2M遺伝子を切断する新規なメガヌクレアーゼの工学的作製の方策
Smithら, Nucleic Acids Res., 2006に記載され、図3に説明するコンビナトリアルアプローチを用いて、I-CreIのDNA結合ドメインを工学的に作製し、B2M標的の1つであるB2M11 (図5及び15)、ヒトB2M遺伝子(アクセッション番号NC_000015.8、42790977位〜42797649位)の2892位〜2915位に位置する24 bp (非パリンドローム)標的(図5)を切断した。B2M11を切断するメガヌクレアーゼを用いて、転写を妨げ、短縮タンパク質をもたらす転写終結シグナルの挿入によりB2M遺伝子を不活性化できる(図6a)。
【0115】
B2M11配列は、部分的に、国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及びSmithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるようにして得られた、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される10GAA_P、10CTG_P、5TAG_P及び5TTT_P標的(図5)のパッチワークである。よって、B2M11は、これらの4つの標的を切断するI-CreI誘導体で見出される変異を組み合わせたメガヌクレアーゼにより切断できるだろう。
10GAA_P、10CTG_P、5TAG_P及び5TTT_P配列は、I-CreIにより切断されるパリンドローム標的であるC1221の24 bp誘導体である(国際PCT出願 WO 2006/097784、WO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及びSmithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
しかし、そのDNA標的に結合したI-CreIの構造は、これらの標的の2つの外側の塩基対(-12位及び12位)が、結合及び切断に影響しないことを示唆する(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)ので、この研究では、-11位〜11位のみを考慮した。結局、標的のB2M11シリーズを、24 bpではなく22 bp配列として定義した。
【0116】
2つのパリンドローム標的、B2M11.2及びB2M11.3は、B2M11 (図5)に由来する。B2M11.2及びB2M11.3はパリンドロームであるので、これらは、ホモ二量体タンパク質により切断されるはずである。つまり、B2M11.2及びB2M11.3配列をホモ二量体として切断できるタンパク質をまず設計し(実施例2及び3)、次いで、B2M11.2標的をより効率的に切断できるホモ二量体の最適化を行い(実施例4)、次いで、同時発現させて、B2M11.1を切断するヘテロ二量体を得た(実施例5)。B2M11.3を切断する選択された変異体を、次いで、精密化(refined)した。選択された変異体に、ランダム突然変異を誘発し、新規なヘテロ二量体を形成するために用い、これらを、B2M11標的に対してスクリーニングした(実施例6)。
【0117】
実施例2: B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のB2M11標的の左部分に由来するB2M11.2 DNA標的配列を切断できることを示す(図5)。
この実施例に記載される標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらは、最初の11ヌクレオチド、次いで接尾辞_Pによってのみ記載される。例えば、標的B2M11.2は、tgaaattaggt_P (配列番号96)とも記載される。
【0118】
B2M11.2は、5TAG_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位において同様であり、10GAA_Pと、±1位、±2位、±7位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±6位及び±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないと仮定した。5TAG_P標的(caaaactaggt_P; 配列番号94)を切断できる変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるようにして、44位、68位、70位、75位及び77位でのI-CreI N75に対する突然変異誘発により、以前に得られた。10GAA_P標的(cgaaacgtcgt _P; 配列番号92)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に以前に記載されたようにして、28位、30位、32位、33位、38位、40位でのI-CreI N75及びD75に対する突然変異誘発により得られた。よって、このような変異体の対を組み合わせることにより、B2M11.2標的を切断することが可能になるだろう。
【0119】
よって、組み合わせた変異体がB2M11.2標的を切断できるかを確認するために、5TAG_P (caaaactaggt_P; 配列番号94)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位、77位での変異を、10GAA_P (cgaaacgtcgt_P; 配列番号92)を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び40変異と組み合わせた。
【0120】
1) 材料及び方法
メガヌクレアーゼ変異型を作製する方法、及び特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いる哺乳動物又は酵母細胞での切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載される。これらのアッセイは、機能的LacZレポーター遺伝子をもたらし、これは、標準的な方法によりモニターできる。
【0121】
a) 標的ベクターの構築
標的は、以下のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列に接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチドを、PROLIGOに注文した:5' tggcatacaagttttgttctcaggtacctgagaacaacaatcgtctgtca 3' (配列番号98)。1本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製された2本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて、酵母レポーターベクター(pCLS1055、図12)内にクローニングした。酵母レポーターベクターで、S. cerevisiae FYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を形質転換した。
【0122】
b) コンビナトリアル変異体の構築
10GAA_P又は5TAG_Pを切断するI-CreI変異体を、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853で以前に記載されたようにして、それぞれ10GAA_P又は5TAG_P標的について同定した。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(aa 1位〜43位)又は3'末端(39位〜167位)を増幅する別のオーバーラップPCR反応を行った。5'及び3'の両方の末端について、PCR増幅は、ベクター(pCLS0542、図13)に特異的なGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'; 配列番号99)又はGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'; 配列番号100)プライマー、並びにアミノ酸39〜43のI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3'(配列番号101)又はssR 5'-aaaggtcaannntag-3'(配列番号102) (nnnは残基40をコードする)を用いて行う。同じプライマー及び残基40について同じコード配列を用いて増幅反応により得られるPCRフラグメントを、プールした。次いで、プライマーGal10F及びassR又はassF及びGal10Rを用いる反応により得られたPCRフラグメントの各プールを、等モル比で混合した。最後に、2つのオーバーラップするPCRフラグメントの各最終プール約25 ngと、NcoI及びEagIを用いる消化により線状にしたベクターDNA (pCLS0542) 75 ngとを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leuΔ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。両方の群の変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0123】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
スクリーニングは、以前に記載されたようにして行った(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。交配を、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、低格子密度(gridding density) (約4スポット/cm2)を用いて、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上にグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタ上で行って、各標的について異なるレポーターを有する酵母株からなる2層目をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして、交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、炭素源としてガラクトース(2%)を含む合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5Mリン酸ナトリウムバッファー、pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7mMβ-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0124】
d) 変異体の配列決定
プラスミドを発現する変異体を回収するために、酵母DNAを、標準的なプロトコルを用いて抽出し、E. coliを形質転換するのに用いた。変異ORFの配列決定を、次いで、MILLEGEN SAにより、プラスミドに対して行った。或いは、ORFを、酵母DNAからPCRにより増幅し(Akadaら, Biotechniques, 2000, 28, 668〜670)、配列決定を、PCR産物に対して直接、MILLEGEN SAにより行った。
【0125】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75又はD75足場での44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28位、30位、33位、38位及び40位の変異と一緒にすることにより構築して、2014の複雑さ(complexity)を有するライブラリーを得た。組み合わせの例を、表1に示す。これらのライブラリーを、酵母に形質転換し、4464個のクローン(多様性の2.2倍)を、B2M11.2 DNA標的(tgaaattaggt _P; 配列番号96)に対する切断についてスクリーニングした。非常に低いレベルの活性を有する2つの陽性クローンが見つかり、これらは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、2つの異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(表Iを参照)。陽性を、図7に示す。
【0126】
本文及び図面を通して、コンビナトリアル変異体配列は、28位、30位、32位、33位、38位、40位、44位、68位及び70位、75位及び77位の残基にちなんだ11文字コードで命名される。例えば、KNGHQS/AYSYKは、I-CreI K28, N30, G32, H33, Q38, S40, A44, Y68, S70, Y75及びK77 (I-CreI 28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K)のことである。親の変異体は、28位、30位、32位、33位、38位及び40位の残基にちなんだ6文字コード、又は44位、68位、70位、75位及び77位の残基にちなんだ5文字コードで命名される。例えば、KNGHQSは、I-CreI K28, N30, G32, H33, Q38及びS40のことであり、AYSYKは、I-CreI A44, Y68, S70, Y75及びK77のことである。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例3:B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発による、より高い効率でB2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11.2標的を切断できるI-CreI変異体を、パリンドローム10GAA_P及び5TAG_P標的を切断する変異体の組み立てにより同定した(実施例2)。しかし、これらの組み合わせの2つのみが、最小限の効率でB2M11.2を切断できた。
よって、B2M11.2を切断する2つのタンパク質の組み合わせに、突然変異を誘発して、よりよい効率でB2M11.2を切断する変異型をスクリーニングした。その標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質内には、最初のコンビナトリアルアプローチに用いた残基(28、30、32、33、38及び40対44、68、70、75及び77)間には接触がない(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(最後の83アミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0129】
1) 材料及び方法
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択した変異体のプールに対して、JBS dNTP-Mutagenisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして、Mn2+を用いるPCR、又は8-オキソ-dGTP及びdPTPのようなdNTPの誘導体を2ステップPCR手順で用いることにより、創出した。用いたプライマーは、preATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3'; 配列番号103)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3'; 配列番号104)である。新しいライブライリーを、ガラクトース誘導性プロモーター、選択マーカーとしてのKanR及び2ミクロン複製起点を有する線状にしたカナマイシンベクター内に、酵母においてインビボでクローニングした。陽性となったクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確認した。
【0130】
変異体のプールを、ロイシンベクター(pCLS0542、図13)及びカナマイシンベクター(pCLS1107、図14)に共通するこれらのプライマーを用いて、PCR反応により増幅した。約75ngのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75ngのベクターDNA (pCLS0542)を用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率のLiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列のライブラリーを、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
交配アッセイは、実施例2に記載するようにして行った。
【0131】
2) 結果
B2M11.2を切断する2つの変異体、I-CreI 28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K及びI-CreI 28K30N32A3338Q40SH44A68Y70S75Y77K (表Iの命名法によるとKNGHQS/AYSYK及びKNAHQS/AYSYKともよばれる)をプールし、ランダム突然変異を誘発し、酵母を形質転換した(図13)。4464個の形質転換クローンを、次いで、レポータープラスミド内にB2M11.2標的を含有する酵母株と交配させた。32個のクローンが、このような酵母株と交配させたときに、B2M11.2標的の切断を引き起こすことがわかり、これらは、少なくとも13個の異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当する(表IIを参照)。陽性の例を、図8に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例4:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のB2M11.1標的の右部分に由来するB2M11.3 DNA標的配列を切断できることを示す(図5)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチド、及びそのことを示すためだけのその後の接尾辞_Pだけで記載する(例えば、B2M11.3は、tctgactttgt_Pとよばれる; 配列番号97)。
B2M11.3は、5TTT_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±6位及び±7位において同様であり、10CTG_Pと、±1位、±2位、±6位、±7位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないであろうと仮定した。5TTT_P標的(caaaactttgt_P; 配列番号95)を切断できる変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるような、I-CreI N75に対する44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により、以前に得られた。10CTG_P標的(cctgacgtcgt_P; 配列番号93)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるような、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。よって、このような変異体の対を組み合わせることにより、B2M11.3標的の切断が可能になるであろう。
【0134】
タンパク質の両方の組を、70位で変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインが、I-CreIに存在することが、以前に示されている(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。このことは、この位置が、標的の塩基10〜8における特異性に対してほとんど影響しないことを意味する。よって、組み合わせた変異体がB2M11.3標的を切断できたかを確認するために、5TTT_P (caaaactttgt_P; 配列番号95)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、10CTG_P (cctgacgtcgt_P; 配列番号93)を切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位、40位の変異と組み合わせた。
【0135】
1) 材料及び方法
10CTG_P又は5TTT_Pを切断するI-CreI変異体を、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に以前に記載されたようにして、10CTG_P及び5TTT_P標的それぞれについて同定した。
両方のシリーズからの変異を含有するI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(aa 1位〜43位)又は3'末端(39位〜167位)を増幅する別々のオーバーラップPCR反応を行った。5'及び3'の両方の末端について、PCR増幅を、ベクター(pCLS0542、図13)に特異的なGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3': 配列番号99)又はGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3': 配列番号100)プライマー、及びアミノ酸39〜43についてI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3'(配列番号101)又はassR 5'-aaaggtcaannntag-3'(配列番号102)) (ここで、nnnは残基40コードする)を用いて行う。同じプライマー及び残基40について同じコード配列を用いて得られた、増幅反応により得られたPCRフラグメントをプールした。次いで、プライマーGal10F及びassR又はassF及びGal10Rを用いる反応で得られたPCRフラグメントの各プールを、等モル比で混合した。最後に、2つのオーバーラップPCRフラグメントの各最終プール約25ng及びDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にしたカナマイシン耐性酵母発現ベクター(pCLS1107、図14)であるベクターDNA 75ngを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。両方の群の変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0136】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75又はD75足場での44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28位、30位、33位、38位及び40位での変異と一緒にすることにより構築して、1600の複雑さのライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例を、表IIIに示す。このライブラリーで酵母を形質転換し、3348個のクローン(多様性の2.1倍)を、B2M11.3 DNA標的(tctgactttgt_P; 配列番号97)に対する切断についてスクリーニングした。1つの陽性クローンが見つかり、これは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(表IIIを参照)。陽性を、図9に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
実施例5:B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼアセンブリの、B2M11.3を切断するタンパク質との同時発現による、B2M11を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11由来標的のそれぞれ(B2M11.2及びB2M11.3)を切断できるI-CreI変異体を、実施例2、3及び4において同定した。このような変異体の対(B2M11.2を切断するものとB2M11.3を切断するもの)を、酵母で同時発現させた。同時発現の際に、3つの活性分子種、すなわち2つのホモ二量体と、1つのヘテロ二量体とが存在するはずである。形成されるはずのヘテロ二量体がB2M11標的を切断するかをアッセイした。
【0139】
1) 材料及び方法
a) B2M11標的酵母での、ロイシンベクター内での最適化変異体のクローニング
B2M11標的を酵母レポーターベクター(pCLS1055、図12)内に含む酵母株FYBL2-7B (MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、ロイシンベクター(pCLS0542、図13)内にクローニングされた、B2M11.2標的を切断する最適化変異体で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。変異体-標的酵母を、実施例2及び4に記載される交配アッセイのための標的として、カナマイシンベクター(pCLS1107)内のB2M11.3を切断する変異体に対して用いる。
【0140】
b)メガヌクレアーゼ同時発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
交配を、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いて、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上にグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタ上に行って、各変異体-標的について異なるレポーターを有する酵母株からなる2層目をスポットした。メンブレンを固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして、交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、G418を加え、炭素源としてガラクトース(1%)を含む合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5Mリン酸ナトリウムバッファー、pH 7.0中の0.02% X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、7mMβ-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0141】
2) 結果
B2M11.2及びB2M11.3を切断する変異体の同時発現は、ほとんどの場合、B2M11標的の切断をもたらした(図10)。機能的な組み合わせを、表IVにまとめる。
【0142】
【表4】
【0143】
実施例6:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発及びB2M11.2を切断するタンパク質との同時発現による、より高い効率でB2M11を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11標的を切断できるI-CreI変異体を、パリンドロームB2M11.2及びB2M11.3標的を切断する変異体の同時発現により同定した(実施例5)。しかし、効率及びB2M11を切断できる陽性の組み合わせの数は、最小限であった。
よって、B2M11.3を切断するタンパク質に突然変異を誘発して、B2M11.2についての最適化変異体と組み合わせたときに、B2M11をよりよい効率で切断する変異型をスクリーニングした。その標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質内には、最初のコンビナトリアルアプローチに用いた残基(28、30、32、33、38及び40対44、68、70、75及び77)間には接触がない(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(最後の83アミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0144】
1) 材料及び方法
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択した変異体に対して、JBS dNTP-Mutagenisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして、Mn2+を用いるPCR、又は8-オキソ-dGTP及びdPTPのようなdNTPの誘導体を2ステップPCR手順で用いることにより、創出した。用いたプライマーは、preATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3'; 配列番号103)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3'; 配列番号104)である。新しいライブライリーを、ガラクトース誘導性プロモーター、選択マーカーとしてのKanR及び2ミクロン複製起点を有する線状にしたカナマイシンベクター内に、酵母においてインビボでクローニングした。陽性となったクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確認した。
【0145】
変異体のプールを、ロイシンベクター(pCLS0542、図13)及びカナマイシンベクター(pCLS1107、図14)に共通するこれらのプライマーを用いて、PCR反応により増幅した。約75ngのPCRフラグメント及びDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にした75ngのベクターDNA (pCLS1107)を用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率のLiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列のライブラリーを、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
変異体-標的酵母を作製し、実施例5に記載されるような交配アッセイのための標的として用いる。
【0146】
2) 結果
B2M11.3を切断する変異体(表IIIの命名法によるとKQSGCS/QNSNRともよばれるI-CreI 28K30Q32S33G38C40S44Q68N70S75N77R)に、ランダム突然変異を誘発し、酵母に形質転換した。次いで、6696個の形質転換クローンを、実施例5に記載されるものから選択された、(i) レポータープラスミド内にB2M11標的を含有し、(ii) B2M11.2標的を切断する最適化変異型を発現する酵母株と交配させた。I-CreI 28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/132V変異体、I-CreI 28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2I96R105A変異体、28K30N32G33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/120G変異体、又は28K30N32A33H38Q40S44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C変異体のいずれかを発現する4つのこのような株を用いた(表Vを参照)。101個のクローンが、このような酵母株と交配させたときにB2M11標的の切断を引き起こすことがわかった。対照実験において、これらのクローンはいずれも、KQSGCS/QNSNRタンパク質の同時発現なしでは、B2M11の切断を引き起こさなかった。101個の陽性は、KQSGCS/QNSNRとヘテロ二量体を形成したときに、B2M11を切断できるタンパク質を含有すると結論付けた。このようなヘテロ二量体変異体の例を、表Vに列挙する。陽性の例は、図11に示す。
【0147】
【表5】
【0148】
実施例7:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発及びB2M11を切断するタンパク質との同時発現による、CHO細胞での染色体外モデルにおいて高効率でB2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
よりよい効率でパリンドロームB2M11標的を切断できるI-CreI変異体を、酵母における、パリンドロームB2M11.2及びB2M11.3標的を切断する、最適化したか又はしていない変異体の同時発現により同定した(実施例5)。しかし、CHO細胞における機能的ヘテロ二量体は、興味深く、染色体外アッセイを用いて、哺乳動物細胞においてB2M11を切断できる効率及び陽性の組み合わせの数は、酵母細胞でのものとは異なり得るだろう。
よって、B2M11.2を切断する最良のタンパク質に、実施例5のようにして突然変異を誘発し、B2M11.3についての最適化変異体と組み合わせたときに良好な効率でB2M11を切断する変異型をスクリーニングした。その標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質内には、最初のコンビナトリアルアプローチに用いた残基(28、30、32、33、38及び40対44、68、70、75及び77)間には接触がない(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier B.S.及びStoddard B.L., Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3754; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269) 。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(最後の83アミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0149】
1) 材料及び方法
a) ランダム突然変異誘発によるライブラリーの構築
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択した変異体のプールに対して、JBS dNTP-Mutagenisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして、Mn2+を用いるPCR、又は8-オキソ-dGTP及びdPTPのようなdNTPの誘導体を2ステップPCR手順で用いることにより、創出した。用いたプライマーは、attB1-ICreIFor (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc-3': (配列番号120)及びattB2-ICreIRev (5'- ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc-3': 配列番号121)である。得られたPCR産物を、インビトロにて、INVITROGENからのCHO Gateway発現ベクターpCDNA6.2(pCLS1069、図16)にクローニングした。並行して、ライブラリーに用いた選択した変異体を、同様にしてこのベクターにクローニングした。クローニングした変異体及びライブラリーの陽性をもたらすクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確かめた。
【0150】
b) CHO細胞でのスクリーニングのための、ベクター内のB2M11標的の構築
酵母標的ベクター(実施例1のような)から、B2M11標的を、プライマーM1s (5'-aaaaagcaggctgattggcatacaagtt-3': 配列番号122)及びM2s (5'-agaaagctgggtgattgacagacgattg-3': 配列番号123)を用い、その後、attB1adapbis (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagca-3': 配列番号124)及びattB2adapbis (5'- ggggaccactttgtacaagaaagct-3': 配列番号125)を用いる2ステップPCRにより増幅した。プライマーは、PROLIGOからである。最後のPCRを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いてCHOレポーターベクター(pCLS1058、図17)にクローニングした。クローニングした標的を、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0151】
c) 哺乳動物細胞での染色体外アッセイ
CHO細胞を、Polyfectトランスフェクション試薬を用いて、供給業者のプロトコル(QIAGEN)に従ってトランスフェクションさせた。トランスフェクションの72時間後に、培養培地を回収し、150μlの溶解/視覚化バッファーを、β-ガラクトシダーゼ液体アッセイのために加えた(典型的には、1リットルのバッファーは、100 mlの溶解バッファー(Tris-HCl 10 mM pH7.5、NaCl 150 mM、Triton X100 0.1%、BSA 0.1 mg/ml、プロテアーゼ阻害剤)、10 mlのMg 100×バッファー(MgCl2 100 mM、β-メルカプトエタノール35%)、110ml ONPG 8 mg/ml及び780 mlのリン酸ナトリウム0.1M pH7.5を含んだ)。37℃でのインキュベーションの後に、光学密度(OD)を420 nmにて測定した。全体の手順は、自動Velocity11 BioCelプラットフォームで行った。アッセイごとに、150 ngの標的ベクターを、両方の変異体のそれぞれ12.5 ng (パリンドロームB2M11.2標的を切断する変異体12.5 ngと、パリンドロームB2M11.3標的を切断する変異体12.5 ng)に同時トランスフェクションさせた。
【0152】
2) 結果
B2M11.2を切断する最適化変異体(表Vに記載されるI-CreI 32G33H44A68Y70S75Y77K/120G、32A33H44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C、32G33H44A68Y70S75Y77K/2I96R105A及び32A33H44A68Y70S75Y77K/132V)に、ランダム突然変異を誘発し、Gatewayベクターを形質転換した(図16)。1920個の形質転換クローンのDNAプラスミドを精製し、次いで、CHO B2M11標的ベクター及び実施例6に記載されるものから選択されたB2M11.3を切断する最適化変異型と同時トランスフェクションした。形質転換クローンの、CHO B2M11標的ベクター及びB2M11.3を切断する元の変異体(30Q33G38C68N70S77R)での同時トランスフェクションを、比較のために含めた。60個のクローンが、B2M11.3標的を切断する最適化変異型と同時トランスフェクションさせたときに、B2M11標的の切断を引き起こすことがわかった。
【0153】
対照実験において、これらのクローンはいずれも、B2M11.3標的を切断する(最適化しているか又はしていない)変異型の同時トランスフェクションなしでは、B2M11の切断を引き起こさなかった。よって、60個の陽性は、B2M11.3標的を切断する最適化変異型とヘテロ二量体を形成したときに、B2M11を切断できるタンパク質を含むと結論付けた。B2M11.3標的を切断する2つの最適化変異型に由来するこのようなヘテロ二量体変異体の例(30Q33G38C68N70S77R/43L115T117G及び30Q33G38C68N70S77R/110D)を、表VIに列挙する。
【0154】
【表6】
【0155】
実施例8:B2M18を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドローム標的の2つの新しいシリーズ、B2M18.3及びB2M18.4は、B2M18並びにB2M20からのB2M20.3及びB2M20.4に由来した(図18及び21)。B2M18.3、B2M18.4、B2M20.3及びB2M20.4はパリンドロームであるので、これらは、ホモ二量体タンパク質により切断されるはずである。まず、B2M18.4配列をホモ二量体として切断できるタンパク質を設計し(実施例8)、次いで、B2M20.4配列をホモ二量体として切断できるタンパク質を設計した(実施例9)。
【0156】
この実施例は、I-CreI変異型が、パリンドローム形のB2M18標的の右部分に由来するB2M18.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図18)。本実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチド、及びその後の接尾辞_Pだけで記載する。例えば、B2M18.4は、TTAACTATCGT_P (配列番号113)とよばれる。
B2M18.4は、5ATC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±8位及び±9位において同様であり、10TAA_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±6位、±7位及び±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないであろうと仮定した。5ATC_P標的(CAAAACATCGT_P)を切断できる変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるように、I-CreI N75に対する44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により以前に得られた。5ATC_P標的(CTAAACGTCGT_P)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるように、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。よって、このような変異の対を組み合わせることにより、B2M18.4標的の切断が可能になるだろう。
【0157】
タンパク質の両方の組を、70位で変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインが存在すると仮定された。このことは、この位置が、標的の塩基10〜8における特異性に対してほとんど影響しないことを意味する。よって、組み合わせた変異体がB2M18.4標的を切断できたかを確認するために、5ATC_P (CAAAACATCGT_P)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、10TAA_P (CTAAACGTCGT_P)を切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位、40位の変異と組み合わせた。
【0158】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例2に記載したとおりである。
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体は、I-CreI N75又はD75足場での44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28位、30位、33位、38位、40位の変異と会合させることにより構築して、1600の複雑さのライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例は、表VIIに示す。このライブラリーで、酵母を形質転換し、3348個のクローン(多様性の2.1倍)を、B2M18.4 DNA標的(TTAACTATCGT_P)に対する切断についてスクリーニングした。59個の陽性クローンが見出され、これらは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、18個の新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(配列番号136〜152及び179;表VIIを参照)。陽性を、図19に示す。1つの陽性クローンは、153位のさらなる変異を示す。このクローンの配列は、KNRTQS/ QYSRQ - 153Gである。
【0159】
【表7】
【0160】
実施例9:B2M20を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型が、パリンドローム形のB2M20.1標的の右部分に由来するB2M20.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図19)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチド、及びその後の接尾辞_Pだけで記載する。例えば、B2M20.4は、TTACATGTCGT_P: 配列番号119とよばれる。
B2M18.4は、5GTC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位において同様であり、10TAC_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位、±8位、±9位及び±10位において同様である。±6位及び±11位は、結合及び切断活性にほとんど影響しないであろうと仮定した。5GTC_P標的(CAAAACGTCGT_P)を切断する変異体は、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853に記載されるように、I-CreIに対する70位及び75位での定方向突然変異誘発により以前に得られた。10TAC_P標的(CTACACGTCGT_P)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるように、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。よって、このような変異の対を組み合わせることにより、B2M20.4標的の切断が可能になるだろう。
【0161】
タンパク質の両方の組を、70位で変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインが存在すると仮定された。このことは、この位置が、標的の塩基10〜8における特異性に対してほとんど影響しないことを意味する。よって、5GTC_P (CAAAACGTCGT_P)を切断するタンパク質の70位及び75位での変異を、10TAC_P (CTACACGTCGT_P)を切断するタンパク質からの28位、30位、32位、33位、38位、40位の変異と組み合わせて、組み合わせた変異体がB2M20.4標的を切断できるかを確認した。
【0162】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例2に記載したとおりである。
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体は、I-CreI N75又はD75足場での70位及び75位での変異を、28位、30位、33位、38位及び40位での変異と会合させることにより構築して、1536の複雑さのライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例を、表VIIIに示す。このライブラリーで、酵母を形質転換し、6696個のクローン(多様性の4.4倍)を、B2M20.4 DNA標的(TTACATGTCGT_P)に対する切断についてスクリーニングした。196個の陽性クローンが見出され、これらは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、164個の新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(配列番号153〜178を示す表VIIIを参照)。陽性を、図21に示す。12個のクローンが、実施例8と同様に、さらなる変異(56G, 82R, 147A又は161F)を示す。
【0163】
【表8】
【図1a】
【図1b】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのI-CreI単量体の少なくとも一方が、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断でき、少なくとも:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
(c) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(e) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、及び/又は
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
(j) 工程(i)から、ベータ-2 ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列を切断できるヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする
工程を含む方法により得ることができることを特徴とする、I-CreI変異型。
【請求項2】
I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の前記置換が、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項3】
I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン内の前記置換が、26位、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項4】
I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する1つ又は複数の置換を、I-CreIの137位〜143位に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項5】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改善する1つ又は複数の置換を、I-CreI配列全体に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項6】
前記置換が、元のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項7】
I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に異なる変異を有する第1単量体及び第2単量体の会合により得られるヘテロ二量体であり、前記ヘテロ二量体が、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項8】
前記第1単量体及び第2単量体が、それぞれ、少なくとも以下の置換を有する:
- Y33R、Q38A、Q44D、R68A、R70S、D75K、I77R及びK28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K、
- S32T、Y33T、Q44T、R68Y、R70S、D75Y、I77V及びY33R、Q38A、Q44N、R68Q、R70S、D75S、I77V、
-S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K又はS32A、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K及びN30Q、Y33G、Q38C、R68N、R70S、D75N、I77R、
- S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K及びS32T、Q38S、Q44K、R70S、I77A、
- S32T、Y33T、Q44K、R68E、R70S、I77R及びN30A、Y33T、Q44N、R68K、R70S、D75H、I77F、
- S32R、Y33D、Q44A、R70S、D75E、I77R及びN30D、Y33R、Q44K、R68Y、R70S、D75N、I77Q、
- S32T、Q38W、Q44A、R70S、D75R、I77Y及びY33H、S40Q、Q44N、R70S、D75R、I77Y、
- Y33H、Q38G、Q44N、R68Y、R70S、D75R、I77V及びN30A、Y33T、Q44N、R68Y、R70S、D75R、I77V、
- Y33T、S40N、Q44T、R68Y、R70S、D75R、I77V及びK28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68S、R70S、D75S、I77R、並びに
- K28T、Y33R、S40R、Q44T、R70S、D75Y及びN30D、Y33R、Q44N、R68Y、R70S、D75Y、I77Q
請求項7に記載の変異型。
【請求項9】
第1単量体が、配列番号24〜28、126〜134の配列のいずれかのものであり、第2単量体が、配列番号37〜77、135〜179の配列のいずれかのものである請求項8に記載の変異型。
【請求項10】
前記DNA標的配列が、ヒトベータ-2ミクログロブリン遺伝子からである請求項1〜9のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項11】
前記DNA標的が、配列番号82〜91の配列からなる群より選択される請求項10に記載の変異型。
【請求項12】
偏性ヘテロ二量体であり、第1単量体及び第2単量体がそれぞれ、D137R変異及びR51D変異をさらに含む請求項7〜11のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項13】
偏性ヘテロ二量体であり、第1単量体が、K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F又はK7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97F変異をさらに含み、第2単量体が、K7E、F54G、L58M及びK96E又はK7E、F54G、K57M及びK96E変異をさらに含む請求項7〜12のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の1つ若しくは2つの変異型の2つの単量体又はコアドメイン、或いは両方の組み合わせを含む単鎖キメラメガヌクレアーゼ。
【請求項15】
ペプチドリンカーで連結された、請求項7、8、12及び13のいずれか1項で定義される第1単量体及び第2単量体を含む請求項14に記載の単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項の変異型、又は請求項14若しくは15に記載の単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項7、8、12及び13のいずれか1項のヘテロ二量体変異型の単量体の1つをそれぞれがコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む請求項17に記載の発現。
【請求項19】
請求項1、10及び11のいずれか1項で定義される、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含むターゲティング構築物を含むベクター。
【請求項20】
請求項1、10及び11のいずれか1項で定義される、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子に存在するゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含むターゲティング構築物を含む請求項17又は18に記載のベクター。
【請求項21】
前記導入される配列が、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列である請求項19又は20に記載のベクター。
【請求項22】
前記ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列が、5'から3'の方向に、第1転写終結配列と、プロモーター、マーカーオープンリーディングフレーム及び第2転写終結配列を含むマーカーカセットとを含み、前記配列が、コード配列の転写を妨げる請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記ゲノムDNA切断部位が、配列番号82〜90である請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
前記ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列がマーカー遺伝子を含み、そのことによりベータ-2ミクログロブリンコード配列の破壊が可能になる請求項21に記載のベクター。
【請求項25】
前記ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列が、興味対象の外因性遺伝子を含み、それにより前記外因性遺伝子でのベータ-2ミクログロブリン遺伝子の置き換えが可能になる請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
前記ゲノムDNA切断部位が、配列番号89又は90である請求項24又は25に記載のベクター。
【請求項27】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子に存在するゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する前記配列が、1164位〜1363位、2795位〜2994位、2803位〜3002位、3074位〜3273位、3275位〜3474位、3284位〜3483位、3387位〜3586位、4099位〜4298位、4765位〜4944位及び6451位〜6650位から選択される配列を含むヒトベータ-2ミクログロブリン遺伝子のフラグメントである請求項19〜26のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項28】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子に存在するゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する前記配列が、前記切断部位の上流及び下流の配列を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子のフラグメントであり、そのことにより、前記切断部位を直接挟むコード配列の欠失が可能になる請求項24〜26のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項29】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項17〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物。
【請求項30】
請求項21〜28のいずれか1項で定義される前記変異型のゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項17〜28のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、提供者から必要とする受容者への細胞移植の間の異種移植片拒絶を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項32】
前記移植が、腎臓、膵臓、筋肉又は心臓の細胞移植である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項17〜28のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、必要とする個体におけるベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態の予防、改善又は治癒のための医薬品の製造のための使用。
【請求項34】
請求項16のポリヌクレオチド又は請求項17〜28のいずれか1項のベクターにより改変された宿主細胞。
【請求項35】
請求項16又は18で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項36】
請求項16又は18で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
【請求項37】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、請求項17〜28のいずれか1項に記載の1つのベクターの、非治療目的でのゲノム工学のための使用。
【請求項38】
前記変異型、単鎖キメラメガヌクレアーゼ又はベクターが、請求項19〜28のいずれか1項で定義されるターゲティングDNA構築物と会合している請求項36に記載の使用。
【請求項39】
前記ターゲティングDNA構築物が、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座の上流及び下流の配列で挟まれた興味対象の外因性遺伝子及びマーカー遺伝子を含んで、前記興味対象の外因性遺伝子によるベータ-2ミクログロブリン遺伝子の置き換えが可能になる請求項38に記載の使用。
【請求項40】
興味対象の異種タンパク質を発現するトランスジェニック動物又は組換え株化細胞を作製するための、請求項37〜39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記組換え株化細胞が、ヒト組換え株化細胞である請求項40に記載の使用。
【請求項1】
2つのI-CreI単量体の少なくとも一方が、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列を切断でき、少なくとも:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
(c) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(e) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、及び/又は
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
(j) 工程(i)から、ベータ-2 ミクログロブリン遺伝子からの前記DNA標的配列を切断できるヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする
工程を含む方法により得ることができることを特徴とする、I-CreI変異型。
【請求項2】
I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の前記置換が、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項3】
I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン内の前記置換が、26位、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項4】
I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する1つ又は複数の置換を、I-CreIの137位〜143位に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項5】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子からのDNA標的配列に対する変異型の結合及び/又は切断特性を改善する1つ又は複数の置換を、I-CreI配列全体に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項6】
前記置換が、元のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項7】
I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に異なる変異を有する第1単量体及び第2単量体の会合により得られるヘテロ二量体であり、前記ヘテロ二量体が、ベータ-2-ミクログロブリン遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項8】
前記第1単量体及び第2単量体が、それぞれ、少なくとも以下の置換を有する:
- Y33R、Q38A、Q44D、R68A、R70S、D75K、I77R及びK28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K、
- S32T、Y33T、Q44T、R68Y、R70S、D75Y、I77V及びY33R、Q38A、Q44N、R68Q、R70S、D75S、I77V、
-S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K又はS32A、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K及びN30Q、Y33G、Q38C、R68N、R70S、D75N、I77R、
- S32G、Y33H、Q44A、R68Y、R70S、D75Y、I77K及びS32T、Q38S、Q44K、R70S、I77A、
- S32T、Y33T、Q44K、R68E、R70S、I77R及びN30A、Y33T、Q44N、R68K、R70S、D75H、I77F、
- S32R、Y33D、Q44A、R70S、D75E、I77R及びN30D、Y33R、Q44K、R68Y、R70S、D75N、I77Q、
- S32T、Q38W、Q44A、R70S、D75R、I77Y及びY33H、S40Q、Q44N、R70S、D75R、I77Y、
- Y33H、Q38G、Q44N、R68Y、R70S、D75R、I77V及びN30A、Y33T、Q44N、R68Y、R70S、D75R、I77V、
- Y33T、S40N、Q44T、R68Y、R70S、D75R、I77V及びK28R、Y33A、Q38Y、S40Q、Q44A、R68S、R70S、D75S、I77R、並びに
- K28T、Y33R、S40R、Q44T、R70S、D75Y及びN30D、Y33R、Q44N、R68Y、R70S、D75Y、I77Q
請求項7に記載の変異型。
【請求項9】
第1単量体が、配列番号24〜28、126〜134の配列のいずれかのものであり、第2単量体が、配列番号37〜77、135〜179の配列のいずれかのものである請求項8に記載の変異型。
【請求項10】
前記DNA標的配列が、ヒトベータ-2ミクログロブリン遺伝子からである請求項1〜9のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項11】
前記DNA標的が、配列番号82〜91の配列からなる群より選択される請求項10に記載の変異型。
【請求項12】
偏性ヘテロ二量体であり、第1単量体及び第2単量体がそれぞれ、D137R変異及びR51D変異をさらに含む請求項7〜11のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項13】
偏性ヘテロ二量体であり、第1単量体が、K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F又はK7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97F変異をさらに含み、第2単量体が、K7E、F54G、L58M及びK96E又はK7E、F54G、K57M及びK96E変異をさらに含む請求項7〜12のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の1つ若しくは2つの変異型の2つの単量体又はコアドメイン、或いは両方の組み合わせを含む単鎖キメラメガヌクレアーゼ。
【請求項15】
ペプチドリンカーで連結された、請求項7、8、12及び13のいずれか1項で定義される第1単量体及び第2単量体を含む請求項14に記載の単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項の変異型、又は請求項14若しくは15に記載の単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項7、8、12及び13のいずれか1項のヘテロ二量体変異型の単量体の1つをそれぞれがコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む請求項17に記載の発現。
【請求項19】
請求項1、10及び11のいずれか1項で定義される、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含むターゲティング構築物を含むベクター。
【請求項20】
請求項1、10及び11のいずれか1項で定義される、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子に存在するゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含むターゲティング構築物を含む請求項17又は18に記載のベクター。
【請求項21】
前記導入される配列が、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列である請求項19又は20に記載のベクター。
【請求項22】
前記ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列が、5'から3'の方向に、第1転写終結配列と、プロモーター、マーカーオープンリーディングフレーム及び第2転写終結配列を含むマーカーカセットとを含み、前記配列が、コード配列の転写を妨げる請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記ゲノムDNA切断部位が、配列番号82〜90である請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
前記ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列がマーカー遺伝子を含み、そのことによりベータ-2ミクログロブリンコード配列の破壊が可能になる請求項21に記載のベクター。
【請求項25】
前記ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列が、興味対象の外因性遺伝子を含み、それにより前記外因性遺伝子でのベータ-2ミクログロブリン遺伝子の置き換えが可能になる請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
前記ゲノムDNA切断部位が、配列番号89又は90である請求項24又は25に記載のベクター。
【請求項27】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子に存在するゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する前記配列が、1164位〜1363位、2795位〜2994位、2803位〜3002位、3074位〜3273位、3275位〜3474位、3284位〜3483位、3387位〜3586位、4099位〜4298位、4765位〜4944位及び6451位〜6650位から選択される配列を含むヒトベータ-2ミクログロブリン遺伝子のフラグメントである請求項19〜26のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項28】
ベータ-2ミクログロブリン遺伝子に存在するゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する前記配列が、前記切断部位の上流及び下流の配列を含むベータ-2ミクログロブリン遺伝子のフラグメントであり、そのことにより、前記切断部位を直接挟むコード配列の欠失が可能になる請求項24〜26のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項29】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項17〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物。
【請求項30】
請求項21〜28のいずれか1項で定義される前記変異型のゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子を不活性化する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項17〜28のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、提供者から必要とする受容者への細胞移植の間の異種移植片拒絶を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項32】
前記移植が、腎臓、膵臓、筋肉又は心臓の細胞移植である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項17〜28のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、必要とする個体におけるベータ-2ミクログロブリンのフィブリル状コンホメーションに関連する病変状態の予防、改善又は治癒のための医薬品の製造のための使用。
【請求項34】
請求項16のポリヌクレオチド又は請求項17〜28のいずれか1項のベクターにより改変された宿主細胞。
【請求項35】
請求項16又は18で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項36】
請求項16又は18で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
【請求項37】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項14又は15に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、請求項17〜28のいずれか1項に記載の1つのベクターの、非治療目的でのゲノム工学のための使用。
【請求項38】
前記変異型、単鎖キメラメガヌクレアーゼ又はベクターが、請求項19〜28のいずれか1項で定義されるターゲティングDNA構築物と会合している請求項36に記載の使用。
【請求項39】
前記ターゲティングDNA構築物が、ベータ-2ミクログロブリン遺伝子座の上流及び下流の配列で挟まれた興味対象の外因性遺伝子及びマーカー遺伝子を含んで、前記興味対象の外因性遺伝子によるベータ-2ミクログロブリン遺伝子の置き換えが可能になる請求項38に記載の使用。
【請求項40】
興味対象の異種タンパク質を発現するトランスジェニック動物又は組換え株化細胞を作製するための、請求項37〜39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記組換え株化細胞が、ヒト組換え株化細胞である請求項40に記載の使用。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−518832(P2010−518832A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550342(P2009−550342)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001334
【国際公開番号】WO2008/102274
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102 avenue Gaston Roussel,F−93235 Romainville Cedex,France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001334
【国際公開番号】WO2008/102274
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102 avenue Gaston Roussel,F−93235 Romainville Cedex,France
【Fターム(参考)】
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