説明

ペグ‐インターフェロンアルファ接合体および凍結保護剤としてラフィノースを含む組成物

本発明はペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の凍結乾燥し安定化した製剤およびそれらの調製方法に関する。本出願の発明者により報告されるペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の製剤は、より短い凍結乾燥サイクルを必要とし、よりコスト競争的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の凍結乾燥し安定化した製剤および、それらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殆どの生物学的物質の治療上の使用における主要な欠点は、それらが非経口の投与経路、例えば静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)等で投与される点であり、このことは患者への送達に痛みや不快感が伴うことを意味する。更に、生物学的物質の半減期は通常非常に短いため、薬剤の治療上の血中濃度を維持するために、患者への頻繁な投与が必要となる。自身では投与できない多くの注入形態は、医療施設へ頻繁に訪問することを要求し、患者に更なる不便を与える。頻繁な投与を必要とするそのような生物学的薬剤には、多数の実例が存在する。インターフェロンアルファ-2a(Roferon, Roche)およびインターフェロンアルファ-2b(Intron A, Schering AG)はヒトインターフェロンアルファの2種の組換体であり、慢性B型肝炎と慢性C型肝炎の治療に用いられているが、12時間未満の血清中での半減期を有し(McHutchison, et al., Engl. J. Med. 1998, 339, 1485-1492; Glue, et al., Clin. Pharmacol. Ther. 2000, 68, 556-567)、それ故1週間に少なくとも3回薬剤を投与する必要がある。インターフェロンベータ-1b(Betaseron)の頻繁な注射は、多発性硬化症(MS)の患者の治療においても必要とされる。推奨される用量では、皮下経路で1日おきに与えられる。繰り返される注射が必要とされる薬剤の別の例として、フィルグラスチム(顆粒球コロニー刺激因子、G-CSF)があり、2週間の治療継続期間中に毎日注射を行う。
【0003】
体内の薬剤の濃度を維持するための頻繁な高用量での注射という上述の欠点を克服する1つの非常に成功し十分に認められている方法は、治療上の蛋白質をポリマー、好ましくはポリエチレングリコール(ペグ)と接合させることにより、治療上の蛋白質のin-vivoでの半減期を延長させることである。長鎖を有するペグ分子は、ペグ化された薬剤分子の周囲に水溶液中で保護遮蔽を作り出し、それにより、蛋白質薬剤の免疫原性低下を助ける一方、プロテアーゼの作用から蛋白質薬剤の保護もすると考えられている。これに加えて、それらの巨大な流体力学的体積のため、ペグ分子は薬剤の腎臓でのクリアランスの速度を低下させることが可能である一方、循環における蛋白質薬剤の半減期を延長させる。蛋白質のペグへの接合については1970年代より報告されていた。通常ペグ部分は最初にペグ部分を活性化させ、次にそれと蛋白質のリシン残基の側鎖、および/またはN末端のアミノ基を反応させることにより蛋白質に結合させる。この部分が架橋や凝集を妨げるため、最も頻繁に用いられるペグは単官能性のペグである。1つのそのような例がDavis等、米国特許第4,179,337号において開示されている。ペグ-蛋白質接合体は、生物学的に活性な材料を、末端結合基を有する過剰なモル濃度の高度に活性化されたポリマーと、ポリマーが結合する蛋白質の部位については考慮せず反応させ、それから生理学的に活性な免疫原性の無い水溶性の蛋白質の組成物に導くことにより形成された。インターフェロンのペグ化は米国特許第4,766,106号及び米国特許第4,917,888号において報告されており、mペグ-2,4,6-トリクロロ-S-トリアジン、mペグ-N-スクシニミジルグルタレートまたはmペグ-N-スクシニミジルスクシネートを含む活性化されたポリマーと接合したベータインターフェロンについて本質的に記述している。米国特許第5,951,974号における1つのそのような開示は、インターフェロンと実質上免疫原性を有さないポリマーとのヒスチジンの部位での接合を記述している。米国特許番号第5,981,709号における別のそのような開示では、in-vivoで比較的長い循環半減期を有するアルファインターフェロン-ポリマー接合体について記述している。
【0004】
いくつかの商業的に利用可能な、ペグ化された治療上の蛋白質には、X連鎖の重症複合免疫不全症候群の治療に用いられるADAGEN(ペグ化ウシアデノシンデアミナーゼ);C型肝炎治療に用いられるPEGASYS(ペグ化アルファインターフェロン2a);慢性C型肝炎に用いられるPEG-Intron(ペグ化アルファインターフェロン2b);天然の変性していないL-アスパラギナーゼに過敏性を示す、急性リンパ球性白血病の患者の治療に用いられるOncaspar(ペグ化L-アスパラギナーゼ);および癌の化学療法により誘導される好中球減少症の治療に用いられるNeulasta(ペグ化組換えメチオニルヒト顆粒球コロニー刺激因子)等が含まれる。
【0005】
C型肝炎ウイルス(HCV)は世界中で肝疾患の主要な原因の1つである。世界で約2億人が感染している。Ribavirinと組み合わせたインターフェロンは、慢性C型肝炎の患者のウイルス量の減少に効果的であることを示してきたが、1週間に3回それを与える必要がある。ペグ-インターフェロン-アルファ2bは組換えインターフェロン-アルファ2bとモノメトキシペグとの、1:1のモル比での共有接合体である(Glue P et al., Clin Pharmacol Ther. 2000; 68; 556-567)。ペグ-インターフェロン-アルファ2bの平均吸収半減期は、ペグ化されていないインターフェロン-アルファ2bより5倍長い。平均消失半減期は、C型肝炎に感染している患者において40時間である。別の製品はペグ-インターフェロン-アルファ2aで、それぞれの平均分子量が20kDaであるペグの枝を有する、40kDaの分鎖した分子を有する。2つのモノメトキシペグ鎖は、加水分解に対して安定であるウレタン結合を介して、1つはリシンリンカー分子のアルファアミノ基に、もう1つはリシンリンカー分子のイプシロンアミノ基に結合する。ペグ-インターフェロン-アルファ2aの平均吸収半減期は、ペグ化されていないインターフェロン-アルファ2aより10倍長い。平均消失半減期は、C型肝炎に感染している患者において60時間である。両方のこれら改良された製品は、1週間に1回の療法のみでの投与を必要とする。
【0006】
一方、いくつかの蛋白質-ポリマー接合体は液体形態で安定しているのに対し、他のものはそうではない。例えば、ペグ化が安定なウレタン結合を導き、それが水性媒体中で主に安定であるペグ-インターフェロン-アルファ2aの場合とは異なり、ペグ-インターフェロン-アルファ2b製品は、ヒスチジン残基(His34)に主に結合したペグを含むが、液体形態では非常に不安定である。そのような蛋白質-ポリマー接合体に関しては、凍結後に組成物から水を昇華させる方法であり、所望される期間を通して安定な形態を生物学的物質にもたらすことが可能である、凍結乾燥のような技術を用いなくてはならない。従って、ペグ-インターフェロン-アルファ2bの安定した製剤を作製するためには、適切な凍結保護剤、または溶解保護剤、およびペグ-インターフェロン-アルファ2b製品に一般的に関連する現象である、ペグ化されたインターフェロン-アルファ接合体の凍結乾燥を行う間および凍結乾燥後での脱ペグ化を防ぐために安定させる安定化剤とともに、製剤を注意深く凍結乾燥する必要がある。さらに、凍結保護剤と安定化剤に加え、凍結乾燥した製剤にはバイアル中の固体物質の量を増加させるために増量剤も含まれている。
【0007】
ペグ-インターフェロン-アルファ2bにおいて、34番目のヒスチジン残基でのウレタン結合の不安定性の問題が解決された1つの特定の方法は、米国特許第6,180,096号において開示された製剤の利用である。ここではペグ-インターフェロン-アルファ2b接合体を、緩衝剤、凍結保護剤、安定化剤および溶媒の存在下で凍結乾燥させ、そのような製剤の1つは凍結保護剤としての二糖類のスクロースとともに、緩衝剤としての第一リン酸ナトリウム二水和物および無水第二リン酸ナトリウム、安定化剤としてのポリソルベート80および溶媒としての水を含む。上記の製剤はC型肝炎の治療において商業的に成功している一方、それにもかかわらず、同一企業による別の特許出願であるWO第2006/020720号において詳細に述べられている、いくつかの問題に関連している。そこではWO第2006/020720号において新規の製剤を発明し報告するいくつかの理由として、製造費用の増加を導くより長い凍結乾燥サイクルおよび市販製剤に関連するより高い含水量を位置づけている。WO第2006/020720号において、発明者はペグ-インターフェロン-アルファ2bの別の凍結乾燥した製剤を開示しており、そこでは凍結保護剤は少なくとも60%のトレハロースを含み、緩衝剤の成分は第一リン酸ナトリウム二水和物および無水第二リン酸ナトリウムを含み、この製剤はさらに安定化剤としてポリソルベート80を、および溶媒として水を含み、市販用製剤の上記問題を克服することが可能である。ペグ-インターフェロン-アルファ2b接合体の保護のための更なる製剤の必要性は、米国特許第6,180,096号(市販用製剤)の譲受人とWO第2006/020720号の出願者が同一企業であり、ペグ-インターフェロン-アルファ2bのためにより多くの凍結乾燥製剤の開発および開示を継続しているSchering Corporationであるという事実より重要視されるはずがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,179,337号
【特許文献2】米国特許第4,766,106号
【特許文献3】米国特許第4,917,888号
【特許文献4】米国特許第5,951,974号
【特許文献5】米国特許第5,981,709号
【特許文献6】米国特許第6,180,096号
【特許文献7】WO第2006/020720号
【特許文献8】PCT/US/2005/028441
【特許文献9】米国特許第5,612,460号
【特許文献10】米国特許第5,711,944号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】McHutchison, et al., Engl. J. Med. 1998, 339, 1485-1492; Glue, et al., Clin. Pharmacol. Ther. 2000, 68, 556-567
【非特許文献2】Glue P et al., Clin Pharmacol Ther. 2000; 68; 556-567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現存の製剤に対する、ペグ-インターフェロン-アルファ2bの更なる製剤の必要性には、凍結乾燥の間およびその後にペグ-インターフェロンアルファ接合体を保護する目的だけではなく、凍結乾燥時に適切な容器中で長期間貯蔵する目的が伴う。そのような製剤の調製方法は扱い易いはずであり、また現在の製剤に使用されている調製方法よりコスト的に有効であるはずである。現在のペグ-インターフェロン-アルファ2bの市販用製剤はスクロースが基材であるが(米国特許第6,180,196号の記述と同様である)、PCT/US/2005/028441において記述されているように、むしろ長い凍結乾燥サイクルを有する。本発明において開示する製剤はある凍結乾燥サイクルを使用し、既知の他のいくつかの製剤に対して、調製時間が少なくとも48時間減少する。これはさらに、この薬剤の製造費用を著しく低下させることに役立つであろう。
【0011】
本発明はペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の凍結乾燥し安定化した製剤および、それらの調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの実施態様では、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の凍結乾燥した製剤が提供される。
【0013】
本発明の別の実施態様では、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の製剤の調製方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の凍結乾燥し安定化した製剤および、それらの調製方法に関する。この製剤は、ペグ-インターフェロンアルファ接合体、適切な緩衝剤、適切な凍結保護剤、適切な安定化剤および溶媒を、任意で他の適切な賦形剤と共に製剤化し、続いて凍結乾燥した製剤を含む。
【0015】
本明細書において開示されているように、本発明は新規の製剤中の成分の濃度により制限されないことが認識されるであろう。
【0016】
本発明によれば、ペグ-インターフェロンアルファ接合体は1つまたは複数のペグ分子に共有結合したインターフェロンアルファ分子またはそれらの変異体である。適切なペグ分子は、周知であり治療上の使用のためのペグ化された生物学的製品の調製において使用されているものでよい。本発明のペグ-インターフェロンアルファ接合体は、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、またはインターフェロンアルファ-2c、およびそれらの適切な変異体を含んでよく、最も好ましいのはペグ-インターフェロンアルファ-2b接合体である。
【0017】
ポリマーは、共有結合した化学的単体の繰り返しを含む分子である。しばしば,ポリマーのおよその分子量は、繰り返される化学的単体の名前に続く数字で示される。たとえば、「ペグ12000」または「ポリエチレングリコール(12000)」は、およそ12,000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールのポリマーを示す。
【0018】
ポリマーの蛋白質への接合は、蛋白質への単一のポリマーの接合、または単一の蛋白質への複数のそのような接合を導いてよい。接合の度合いとペグ化される部位は、反応条件およびペグ/蛋白質比率に主に依存する。好ましい実施態様では、本発明の製剤中のペグ-インターフェロンアルファ接合体は、単一のペグ分子に接合した単一のインターフェロンアルファ-2bを主に含む。さらに好ましい実施態様では、本発明の製剤中のペグ-インターフェロンアルファ接合体は、単一のペグ12000分子に接合した単一のインターフェロンアルファ-2bを含む。特に好ましい実施態様では、インターフェロンアルファ-2b分子はペグ12000分子にウレタン結合で結合する。ペグ-インターフェロン接合体のいくつかの調製方法は当該技術分野において既知であり、そのような方法およびそのような方法から得られる製品は、本発明の範囲内に含まれるとみなされる。この蛋白質-ポリマー接合体を生産するためのそのような方法の例は、米国特許第5612460号(Zalipsky)および米国特許第5711944号(Gilbert等)において見い出されてよい。本発明の範囲を制限せずに,そのような蛋白質-ポリマー接合体が本発明の製剤溶液で利用される場合、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の好ましい濃度は、mlあたり0.03から2.0mgのインターフェロンアルファである。単一のインターフェロンアルファ分子が単一のペグ12000分子に結合する場合、その結果として接合したペグ-インターフェロンアルファ接合体は単一のもしくは異なる位置異性体の混合物の形態でよい。
【0019】
ペグ-インターフェロンアルファ接合体を最も安定で活性な形態で保存するために、凍結乾燥が用いられてよい。凍結乾燥は組成物を凍結乾燥する方法であり、ここでは凍結した水性混合物は水を除去する処理をされる。一般的に、その方法は通常減圧条件下で水溶液からの水の昇華を含む。凍結乾燥後、ペグ-インターフェロンアルファ接合体は長期間貯蔵可能である。
【0020】
しかしながら、ペグ-インターフェロンアルファ接合体は凍結乾燥の間およびその後に損傷を受けやすい(米国特許第6,180,096号)。ゆえに、それらを凍結乾燥の間およびその後の間に分解から保護するため、ペグ-インターフェロンアルファ接合体を適切に製剤化する必要がある。そのうえ、もしそのような製剤化が、その製剤に物理的な強度を提供するのであれば、それもまた有用であろう。
【0021】
本発明は、凍結乾燥の間およびその後の損傷を防ぐ製剤中にペグ-インターフェロンアルファ接合体を含むことにより、それらを損傷から保護する。本発明は特定の製剤に限定されない一方で、ここで予測される製剤は、ペグ-インターフェロンアルファ接合体に加えて、適切な緩衝剤、適切な安定化剤、適切な凍結保護剤および/または溶解保護剤、増量剤および溶媒の単独もしくは適切な組み合わせと、任意で他の適切な賦形剤を含む。以下に記述されているような、緩衝剤、安定化剤および凍結保護剤の選択された群の各種の可能な組み合わせが、本発明の新規な製剤を調製するために使用されてよい。
【0022】
緩衝剤は製剤のpHを維持するために適切である。使用されてよい緩衝系は、フォスフェート、スクシネート、ヒスチジン、グリシネート等を単独でもしくは適切な組み合わせで含み、所望のpHの範囲を提供する。好ましいpHの範囲は4.5から7.1の間で、より好ましいのは6.5から7.1、最も好ましいのは6.8である。緩衝剤の好ましいモル濃度は0.001から0.5Mの範囲内である。好ましい緩衝剤はソディウムフォスフェート、ソディウムスクシネート、ポタジウムスクシネート、ヒスチジンクロライド、ソディウムグリシネート、またはこれらの適切な組み合わせから選択されてよい。所望のpHの範囲を維持する他の緩衝系も使用されてよい。
【0023】
用語「凍結保護剤」は、凍結で誘導されるストレスから安定性を蛋白質に与える試薬を一般的に含む;しかしながら、この用語は、例えば貯蔵期間に凍結に誘導されるものではないストレスからの安定性を原薬製剤に与える試薬も含む。凍結保護剤の例は、各種のポリオールおよびサッカライド、例えばスクロース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースおよびマンニトールまたはこれらの適切な組み合わせを含む。
【0024】
用語「凍結保護剤」は、おそらく水素結合を通して蛋白質の正確な高次構造を維持することにより、乾燥過程の間における系からの水の除去の間に、安定性を蛋白質に与える試薬を含む。凍結保護剤は溶解保護剤の効果を有することもある;従って、用語「凍結保護剤」および「溶解保護剤」はここでは互換性をもって用いられる。
【0025】
安定化試薬は、製剤の作製および貯蔵に用いられる処理装置の表面のガラスおよびステンレス鋼への、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の吸着の防止に有用である。使用されてよい適切な安定化試薬は、ソディウムドデシルサルフェート(SDS)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、40または80のどれかひとつもしくは組み合わせ)である。ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体のクラスが例示されてもよい。1つのそのような好ましい安定化試薬は、好ましい濃度が0.01から1mg/mLであるポリオキシエチレン20ソルビタンモノ-オレエート、ポリソルベート80(ツィーン80)である。
【0026】
本発明は、凍結保護剤の何れか特定の量に制限されない。凍結保護剤は単独でもしくは適切な組み合わせで使用されてよい。1つの実施態様において、凍結保護剤は、ペグ-インターフェロン溶液の合計重量を基準として、0.05%から90%、好ましくは0.05%から50%、最も好ましくは0.15%から20%の量で存在する。
【0027】
本製剤のために適切な溶媒は水であり、好ましくは溶媒は注射水でよい。
【0028】
他の適切な賦形剤は製剤に任意で加えてよい。製剤をさらに安定させるために、そのような賦形剤は適切な濃度のグリシンを含む。
【0029】
ペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の製剤は、緩衝剤、安定化剤、凍結保護剤および/または溶解保護剤、および溶媒を任意で他の賦形剤と共に、適切な組み合わせを使用して調製され、適切に凍結乾燥され、使用前に再構成する乾燥粉末として貯蔵される。
【0030】
そのように調製された製剤は、生物学的に活性なペグ-インターフェロンアルファ接合体の有効な量を含み、B型肝炎、C型肝炎および癌等の種々の病気の治療に有用である。これらは好ましくは注射可能な水溶液として使用される。
【0031】
以下の非制限的な実施例は、本発明の記述された医薬組成物、およびペグ-インターフェロンアルファ接合体の安定な医薬投与形態を得るための本発明の実施手段を説明する。実施例は記述的であり、当業者の範囲に十分に包含されるような他の適切な修飾/追加等は、本発明の範囲に包含されると意味することが認識されるであろう。
【実施例】
【0032】
適切な緩衝剤に溶解したペグ-インターフェロンアルファ-2b接合体の種々の製剤は、本明細書に記述されたもののうち適切な凍結保護剤および安定化剤の存在下で調製され、続いて凍結乾燥された。凍結乾燥後、試料は5℃(±3℃)で貯蔵され、各種の期間で分析のため試料は水で再構成された。再構成された試料は視覚的透明度、in-vitroでの抗ウイルス活性および遊離インターフェロンの量について分析された。in-vitroでの抗ウイルス活性測定において、新鮮な未製剤化および製剤化のペグ-インターフェロンアルファ接合体は、インターフェロン蛋白質のミリグラムあたり0.1×108から0.8×108IUの範囲で特定の活性を示した。
【0033】
(実施例1)
当該技術範囲で既知の技術に従って調製されたペグ-インターフェロンアルファ接合体は、表1に記述されているように製剤化された。
【0034】
【表1】

【0035】
凍結乾燥は上記で特定される溶液をガラス容器中に配置し、続いてガラス容器を大気圧および室温で凍結乾燥機に入れることにより実施された。11.5時間の間温度を-55度まで低下させることにより、大気圧で制御された態様で試料を徐々に凍結した。続いて、凍結した試料は23時間段階的な態様で一次乾燥を受け、その間に温度を-55℃から0℃まで上昇させ、圧力を大気圧から50mTorrまで低下させた。一次乾燥サイクルに続いて、少なくとも16時間二次乾燥サイクルが実施され、その間に圧力を50から20mTorrまで低下させた。凍結乾燥サイクルの完了時に、凍結乾燥したケークを含むガラス容器は大気圧および室温に出された。
【0036】
凍結乾燥後、更なる分析に使用されるまで、バイアルは集められ5(±3)℃で貯蔵された。表2で特定される各種の期間で、分析のため試料は水で再構成された。再構成された溶液は視覚的透明度について検査された。表2で示されているように、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の安定性は、それのin-vitroでの抗ウイルス活性および再構成溶液中に存在する遊離インターフェロンの量(脱ペグ化の程度)で評価された。
【0037】
【表2】

【0038】
(実施例2)
当該技術範囲で既知の技術に従って調製されたペグ-インターフェロンアルファ接合体は、表3に記述されているように製剤化された。凍結乾燥は実施例1の記述と同じ態様で実施された。
【0039】
【表3】

【0040】
凍結乾燥後、更なる分析に使用されるまで、バイアルは集められ5(±3)℃で貯蔵された。表4で特定される各種の期間で、分析のため試料は水で再構成された。再構成された溶液は視覚的透明度について検査された。表4で示されているように、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の安定性は、それのin-vitroでの抗ウイルス活性および再構成溶液中に存在する遊離インターフェロンの量(脱ペグ化の程度)で評価された。
【0041】
【表4】

【0042】
(実施例3)
当該技術範囲で既知の技術に従って調製されたペグ-インターフェロンアルファ接合体は、表5に記述されているように製剤化された。凍結乾燥は実施例1の記述と同じ態様で実施された。
【0043】
【表5】

【0044】
凍結乾燥後、更なる分析に使用されるまで、バイアルは集められ5(±3)℃で貯蔵された。表6で特定される各種の期間で、分析のため試料は水で再構成された。再構成された溶液は視覚的透明度について検査された。表6で示されているように、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の安定性は、それのin-vitroでの抗ウイルス活性および再構成溶液中に存在する遊離インターフェロンの量(脱ペグ化の程度)で評価された。
【0045】
【表6】

【0046】
(実施例4)
当該技術範囲で既知の技術に従って調製されたペグ-インターフェロンアルファ接合体は、表7に記述されているように製剤化された。凍結乾燥は実施例1の記述と同じ態様で実施された。
【0047】
【表7】

【0048】
凍結乾燥後、更なる分析に使用されるまで、バイアルは集められ5(±3)℃で貯蔵された。表8で特定される各種の期間で、分析のため試料は水で再構成された。再構成された溶液は視覚的透明度について検査された。表8で示されているように、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の安定性は、それのin-vitroでの抗ウイルス活性および再構成溶液中に存在する遊離インターフェロンの量(脱ペグ化の程度)で評価された。
【0049】
【表8】

【0050】
上記の全ての実施例の遊離インターフェロンの含有量は、高速サイズ排除クロマトグラフィーにより決定された。
【0051】
本発明において記述されている、ペグ-インターフェロンアルファ接合体の新規の凍結乾燥した製剤は、以下の効果を有する:
1. 操作上の扱いやすさを含む;
2. ペグ-インターフェロンアルファ接合体を安定化する;
3. 凍結乾燥製剤に、良好な物理的強度を提供する;
4. 凍結乾燥サイクルを減らし、それに従い操作のコストと時間が著しく減少する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペグ-インターフェロンアルファ接合体、緩衝剤、安定化剤、ラフィノースである凍結保護剤および溶媒を含む製剤。
【請求項2】
安定化剤がソディウムドデシルサルフェートまたは適切なポリソルベートから選択される請求項1記載の製剤。
【請求項3】
ポリソルベートがポリソルベート20、40または80から選択される請求項1または2記載の製剤。
【請求項4】
緩衝剤が適切なスクシネート、フォスフェート、ヒスチジンまたはグリシネート緩衝剤から単独または組み合わせで選択される請求項1記載の製剤。
【請求項5】
緩衝剤がソディウムスクシネート、ポタジウムスクシネート、ソディウムフォスフェート、ヒスチジンクロライ、ソディウムグリシネートから単独または組み合わせで選択される請求項4記載の製剤。
【請求項6】
前記緩衝剤がソディウムスクシネートである請求項1から5の何れか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤のpHが4.0から7.0の範囲である請求項1から6の何れか一項に記載の製剤。
【請求項8】
凍結保護剤がさらにラクトースまたはトレハロースを含む請求項1から7の何れか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ペグ-インターフェロンアルファ接合体の濃度がmlあたり0.03から2.0mgのインターフェロンアルファである請求項1から8の何れか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記安定化剤が0.01から1.0mg/mLの濃度で存在する請求項1から9の何れか一項に記載の製剤。
【請求項11】
緩衝剤の濃度がmlあたり0.001から0.5Mの範囲である請求項1から10の何れか一項に記載の製剤。
【請求項12】
凍結保護剤の濃度が10から100mg/mLの間である請求項1から11の何れか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記溶媒が水である請求項1から12の何れか一項に記載の製剤。
【請求項14】
組成物がさらにグリシンを含む請求項1から13の何れか一項に記載の製剤。
【請求項15】
グリシンの濃度が0.1から100mg/mLの間である請求項1から14の何れか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記ペグ-インターフェロンアルファ接合体が単一のインターフェロンアルファ分子に接合した単一のペグ分子を主に含む請求項1から15の何れか一項に記載の製剤。
【請求項17】
前記インターフェロンアルファ分子がインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-2cまたはそれらの適切な変異体から成る群から選択される請求項1から16の何れか一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記インターフェロンアルファ分子がインターフェロンアルファ-2bである請求項1から17の何れか一項に記載の製剤。
【請求項19】
凍結乾燥粉末を得るための請求項1から18の何れか一項に記載の製剤を凍結乾燥する方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法に従い調製された凍結乾燥した製剤。
【請求項21】
ペグインターフェロンアルファ-2b、凍結保護剤としてラフィノース、安定化剤としてツィーン80、緩衝剤としてソディウムスクシネートおよび溶媒として水を含む請求項1から20の何れか一項に記載の製剤。
【請求項22】
凍結保護剤がさらにラクトースまたはトレハロースを含む請求項21記載の凍結乾燥した製剤。
【請求項23】
ペグインターフェロンアルファ接合体、緩衝剤、安定化剤、ラフィノースである凍結保護剤および溶媒から成る製剤
【請求項24】
投与に先立ち凍結乾燥粉末が水で再構成される請求項1から23の何れか一項に記載の製剤。
【請求項25】
請求項1から24の何れか一項に記載されるように、適切な緩衝剤、適切な安定化剤、ラフィノースである適切な凍結保護剤および溶媒を組み合わせること、およびそれに続き凍結乾燥粉末を得るために混合物を凍結乾燥することを含む、ペグインターフェロンアルファ接合体の凍結乾燥した製剤を調製する方法。

【公表番号】特表2010−520270(P2010−520270A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552329(P2009−552329)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000114
【国際公開番号】WO2008/107908
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507365927)カディラ・ヘルスケア・リミテッド (26)
【Fターム(参考)】