説明

ペグインターフェロン及びリバビリンへの反応に関する処置前血清IP−10定量と組み合わされたIL28B遺伝子多型性の予測値は、単独のこれらの生物マーカーのいずれとの比較においても高められる。

本発明は、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の結果を予測するために、IL28B遺伝子型決定をIP−10の処置前血清レベル測定値と組み合わせる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン(peginterferon)及びリバビリン(ribavirin)への持続性ウイルス学的反応(sustained virological response)(SVR)又は無−反応の結果を予測するために、IL28B遺伝子型決定をIP−10の処置前血清レベル測定値と組み合わせる方法に関する。
【0002】
フラビウイルス科のメンバーであるC型肝炎ウイルス(HCV)は、肝臓の慢性炎症を引き起こし、肝臓線維症、肝硬変及び肝臓ガンに導き得る血液−由来ウイルスである。世界中で約1憶7千万の人々がHCVに感染し、処置の選択肢は限られている。慢性C型肝炎の処置のための現在の医療の標準は、ポリエチレングリコール化(pegylated)インターフェロンアルファ(IFN−α)の週に1回の注射及びリバビリンの1日2回の経口的投与から成る(非特許文献1)。しかしながら、48週間の管理で処置された遺伝子型2又は3に感染した患者の80%と比較して、48週間の管理で処置された遺伝子型1又は4に感染した患者のわずか40〜50%しか持続性ウイルス学的反応(SVR)を達成しない。従って、明らかにIFN−α/リバビリン処置反応へのウイルス遺伝子型の要素(component)が存在する。さらに、現在の医療の標準は、多くの場合にうつ病及び貧血のような副作用を伴う(非特許文献1)。従って、HCV患者のための新規な、より有効な、且つより安全な処置の選択肢を求める満たされない医学的要求がある。
【0003】
従って、HCV遺伝子型1の処置のための医療の標準は、現在、48週間のポリエチレングリコール化IFN−α及びリバビリンを、持続性ウイルス学的反応が達成されたか否かを決定するための24週間の経過観察期間と一緒に含む。持続性ウイルス学的反応(SVR)は、治療を停止してから後の少なくとも24週間の検出可能なHCV RNAの不在として定義される。これらの薬剤を用いる処置に関連する持続期間、経費及び罹病率は、反応をより良く理解し、処置戦略の修正から利益を得るであろう患者をあらかじめ同定したいという要求を当該技術分野で(in the field)確立した。
【0004】
最近、種々の民族的背景からのHCV−感染患者におけるIL28B多型性と臨床的に決定されるウイルスのクリアランスの間の強い連鎖と一緒に、IFN−αへの反応への遺伝子の寄与を示すデータが作られた(generated)。このデータは、サイトカイン血清マーカーにより以前に関連があるとされた処置の失敗への宿主の要素を支持し、最も一致することは、処置の開始の前に測定されるIP−10血清レベルのそれである。
【0005】
抗−HCV活性を示したIFN−λタンパク質はIL28A/B及びIL29遺伝子によりコードされ(非特許文献2;非特許文献3);IL28B遺伝子はインターフェロン−λ3(IFN−λ3)をコードする。最近の研究は、処置反応の予測マーカーの可能性のあるものとして、IL28B遺伝子の3キロ塩基(three kilobases)(3kb)上流の単ヌクレオチド多型性(SNP)(rs12979860,配列番号:1)を同定した(非特許文献4)。この発見は、IL28B遺伝子に近接して位置する他のSNPマーカー(rs12980275,配列番号:2及びrs8099917,配列番号:3)を用いる他の独立した研究により確証された(非特許文献5;非特許文献6)。有利な変異体は、HCV薬剤処置への反応における2倍より大きな差と強く関連することが示された。多−民族集団全体に及んで、有利な変異体の2つのコピーを保有する患者
の約80%がIFN−α治療の間にウイルスをクリアリングし、処置から後の24週間の間、ウイルスがないままであった。遺伝子の関連性は、ヨーロッパ人、アフリカ人及びアジア人患者を含む調べられたすべての民族グループにおいて、反応予測において重要であると思われる。これらの研究は、IFN−α処置への反応の向上と結び付けられる、末梢血単核細胞(PBMC)中のIL28BのmRNA発現がIL28B遺伝子型により影響を受けるという予備的な証拠も提供する。もっと後の研究において、この遺伝子型は、ヨーロッパ人及びアフリカ人の系統(ancestry)の両方の患者(individuals)の中で、HCV感染の自然の解決を強力に増加させることも示した(非特許文献7)。これらの研究は、個人的な薬剤設定においてIFN−αへの反応を予測し得るといういくらかの見込みも提供した。
【0006】
無−反応に関するマーカーとしてのIFN−γ−誘導タンパク質10(IP−10又はCXCL10)の同定の前に、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン(IL)1B、IL−10及びIL−8がIFN−α処置への無反応の血清マーカーとして同定された。IP−10は、HCV患者において肝臓内及び血清中の両方で高められることが示され、これらのレベルはIFN−αに反応する患者においてより無−反応HCV患者において高められることが見出された。この観察は次いで、ベースラインレベルが処置反応予測に関する最も重要な決定因子であるヨーロッパ系コーカサス人DITTO研究(European Caucasian DITTO−study)を含むより大きなデータセットにおいて確証された(非特許文献8;非特許文献9)。続いてIP−10発見はHCV/HIV共−感染患者に拡大され(非特許文献10)、それは続いて第2の研究において確証され、さらにこれらの患者における肝臓炎症及び線維症と関連付けられた(非特許文献11)。IP−10の関連性は種々の人種のグループにおいても示された(非特許文献12)。
【0007】
RNA、細胞又はタンパク質レベルで示される高められた免疫反応はIFN−α/リバビリン治療へのより低い反応を示し得るという一般的な見解が当該技術分野において現れたが、これは臨床的に用いられるべき分析又は精巧化(sophystication)のレベルに達しなかった。既知のマーカーにかかわらず、無−反応に関連する機構は明らかにならないままである。さらに、IL28B遺伝子型は、見込みはあるが、インターフェロン反応のすべての側面を説明しておらず、この発見がいかにしてウイルス遺伝子型、ウイルス負荷、体重、線維症及びIP−10のような他の既知の生物マーカーに関連するかはまだ明らかでない。IL28B遺伝子産物IFN−λ3の活性と免疫遺伝子の発現の間の分子的連鎖は、IL28B及び下流のサイトカイン及びケモカインレベルが依存性であるはずであり、従ってIP−10のような下流血清マーカーは同じ表現型の現象を有効に記述するであろうことを示唆している。
【0008】
最近記載されたIL28Bにおける遺伝子多型性は非常に刺激的であり、ペグインターフェロン及びリバビリンを用いる治療への持続性ウイルス学的反応を達成するための重要な予後的情報を与えることができる。しかしながら、独立のテストとしてのその臨床的有用性は依然として限られている。CC遺伝子型に関し、SVRの尤度は約80%であると見積もられる。対照的に、TC異型接合体に関し、反応の尤度は約50%に減少する。かくして遺伝子型決定(genotyping)テストの陽性又は陰性予測値(predictive value)は比較的低く、それは抗ウイルス治療のための決定におけるその使用を減少させるであろう。遺伝子的テストを他の容易に利用可能な抗ウイルス反応のマーカーと組み合わせて用いて、その予測能力を組み立てる(build upon)方法は、陽性及び陰性予測値を向上させ、その臨床的有用性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Fried and Hadziyannis著,Semin Liver Dis 24 Suppl 2,2004年,47−54
【非特許文献2】Kotenko,et al.著,Nature Immunol.4:2003年,69
【非特許文献3】Sheppard et al.著,Nature Immunol.4:2003年,63
【非特許文献4】Ge et al.著,Nature 461:2009年,399
【非特許文献5】Suppiah et al.著,Nature Genetics 41:2009年,1100
【非特許文献6】Tanaka et al.著,Nature Genetics 41:2009年,1105
【非特許文献7】Thomas et al.著,Nature 461:2009年,798
【非特許文献8】Romero et al.著,JID 194:2006年,895
【非特許文献9】Lagging et al.著,Hepatology 44:2006年,1617
【非特許文献10】Zeremski et al.著,JAIDS 45:2007年,262
【非特許文献11】Reiberger et al.著,Antivir Ther 13:2008年,969
【非特許文献12】Fried et al.著,AASLD 2008,poster 1223
【発明の概要】
【0010】
本発明の一部は、コーカサス人及びアフリカ系アメリカ人(African Americans)におけるHCV試料の分析であり、予期せぬことに、その分析でIP−10血清レベル及びIL28B遺伝子型が反応の相補的且つ独立した予測物質(predictors)であること、ならびに特定的に、IL28B遺伝子型に関して異型接合性又は無−反応者遺伝子型に関して同型接合性のHCV感染患者において測定されるIP−10レベルが、IFN−α処置に対する反応の決定において追加の価値を与えることが決定された。
【0011】
ABI TaqMan対立遺伝子識別キット(allelic discrimination kit)を用い、NIH−基金提供(funded)臨床試験であるVIRAHEP−Cからの80人の協力者に、IL28B多型マーカーrs12979860を試験した。遺伝子型決定された患者は下部−研究(sub−study)に含まれ、彼らに関し、保管された血清中で一パネルの(a panel of)血清サイトカインを測定した(Fried et al.著,EASL 2008)。本コホートは40人のSVR及び40人の無−反応者を含み、その中の39人はコーカサス人であり、41人はアフリカ系アメリカ人であった。CC、CT又はTT遺伝子型がそれぞれ19%、61%及び20%において見出され、87%、47%及び25%の対応するSVR率が伴い(Chi=13.4,p=0.0012)、それはGe et al.(2009年,Nature 461:399)の初期の報告と一致している。
【0012】
平均血清IP−10レベルは類似であり、IL28B遺伝子型と関連していないと思われた(p=0.28)。高(>600pg/ml)IP−10レベルを有する患者における36%に対し、低(<600pg/ml)IP−10レベルを有する患者において78%のSVR率が見出された(Chi=17.1,p<0.0001)。
【0013】
IL28B遺伝子型グループ内の血清IP−10レベルは、SVRの尤度に関して追加の独立した情報を提供した(Chi=27.5,p<0.0001)。さらに特定的に、高IP−10レベルを有する場合の34%に対して低IP−10レベルを有するCT保有者は79%のSVRを有した。TT保有者の中で、類似の関連性が同定された(高IP−10の場合の10%に対して低IP−10の場合の50%)。
【0014】
【表1】

【0015】
従って、非−CC遺伝子型においてIL28B遺伝子型を処置前血清IP−10測定値と組み合わせると、ペグインターフェロン及びリバビリンに対するSVR及び無−反応の間をさらに良く識別することにより、個々の患者に関する予測値は向上する。さらに特定的に、説明変数としてIL28B遺伝子型及び血清IP−10の両方を含むSVRの一般化線形モデルフィッティングは、IL28B遺伝子型(p<0.0013)及び血清IP−10(p<0.0016)の有意な寄与効果を示すが、持続性ウイルス学的反応の評価におけるIL28BとIP−10の間の相互作用の寄与効果を示さない(p=0.75)。
【0016】
従って本発明は、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の結果を予測するために、IL28B遺伝子型決定をIP−10の処置前血清レベル測定値と組み合わせる方法に関する。
【0017】
より広い意味で、本発明は、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の結果を予測するために、IP−10の処置前血清レベル測定値、IL28B遺伝子型決定、人種又はC型肝炎ウイルス負荷決定より成る群から選ばれる2つもしくはそれより多いパラメーターを組み合わせる方法に関する。
【0018】
IL28B遺伝子型決定をIP−10の処置前血清レベル測定値と組み合わせる方法において、パラメーターである人種又はC型肝炎ウイルス負荷決定の1つ又は両方を、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の結果の予測のために加えることができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面は、IL28B遺伝子型が多型マーカー、rs12979860、rs12980275及び/又はrs8099917あるいはこれらのマーカーと連鎖不平衡にある他のいずれかの遺伝子マーカーを含むことである。
【0020】
本発明は、これらの2つの個別のマーカー(IL28B遺伝子型、血清IP−10レベル)のいずれかと比較して、HCVに感染した個々の患者に関してペグインターフェロン及びリバビリンへのSVRと無−反応の間をさらに良く識別することにも関する。
【0021】
予期せぬことに、IL28B遺伝子型及び血清IP−10に関する結果を組み合わせる
ことは、TT又はTC遺伝子型の中で持続性ウイルス学的反応に関する陰性予測値を向上させる。
【0022】
本発明の一部は、少なくともIL28B多型性及びHCV−感染患者からの血清中のIP−10レベルの決定又は測定のための手段を含んでなる診断アッセイでもある。
【0023】
本発明の別の態様は、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の予測のための、本方法から得られる結果情報を用いるモデル研究ソフトウェアを含んでなるコンピューターシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インターフェロンα/リバビリン治療への50人の反応(SVR)及び50人の無反応HCV患者において測定される37種のサイトカインの処置前血清濃度を示すヒートマップ(heatmap)。
【図2A】IFN治療への反応者におけるベースラインでのIP−10測定値対無反応者におけるベースラインでのIP−10測定値を示すグラフ。
【図2B】患者をIP−10測定値の600pg/mlの閾値に従って層別したモザイクプロット。
【図3】100人のHCV患者においてベースラインで測定される37種のサイトカインを含む相関マトリックス。
【図4】IFNα+リバビリン処置への反応者及び無反応者におけるIL28B遺伝子型(rs12979860)分布。
【図5】80人のHCV患者における処置前血清IP−10濃度との関連におけるIL28B遺伝子型(rs12979860)。
【図6】治療結果との関連におけるIL28B遺伝子型及び血清IP−10濃度(600pg/mlより高いか又は低い)の組み合わせ分析。
【図7】IL28B遺伝子型のみに基づく(上のパネル)、IP−10血清レベルのみに基づく(中のパネル)ならびにIL28B遺伝子型及び血清IP−10レベルの組み合わせ分析に基づくHCV患者における処置結果の予測値を比較するグラフによるまとめ。
【図8】血清IP−10レベルに基づく、ペグインターフェロン及びリバビリン処置への持続性ウイルス学的反応(SVR)をフィッティングするロジスティック回帰分析ならびに遺伝子型のそれぞれに関する回帰曲線のグラフ図。
【図9A】反応者(SVR)及び無−反応者患者における処置前血清IP−10データの分布グラフ。
【図9B】反応者(SVR)及び無−反応者患者における処置前血清IP−10レベル及び処置反応結果に基づくモザイクプロット。
【図10】コホート全体における、又は人種グループごとに層別された、処置前血清IP−10レベルに基づく反応者(SVR)である確率をフィッティングするロジスティック回帰分析のグラフによるまとめ。
【図11A】コーカサス系アメリカ人においてIL28B遺伝子型に従って層別されたHCV患者中の処置前血清IP−10。
【図11B】アフリカ系アメリカ人においてIL28B遺伝子型に従って層別されたHCV患者中の処置前血清IP−10。
【図12】処置前血清IP−10及びIL28B遺伝子型に従って層別されたHCV患者における持続性ウイルス学的反応(SVR)率(%)。
【図13】血清IP−10レベルのみに基づく、又は血清IP−10のレベルとIL28B遺伝子型の組み合わせに基づく、ペグ−インターフェロン及びリバビリン処置への持続性ウイルス学的反応(SVR)をフィッティングするロジスティック回帰分析のグラフによるまとめ。
【図14】ペグ−インターフェロン及びリバビリン処置へのSVRの予測における、処置前血清IP−10、IL28B遺伝子型、人種、ベースラインHCVウイルス負荷又はこれらのパラメーターの組み合わせに関する受信者操作特性(ROC)曲線分析。
【図15】pegIFN及びリバビリン治療への持続性ウイルス学的反応(SVR)の予測物質。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例の節
【実施例1】
【0026】
患者及び処置
VIRAHEP−C研究は、遺伝子型1感染を有するAA及びCAの中での反応の率及び予測物質を評価するため、ならびに治療への無反応に関する理由を同定するために設計された、慢性C型肝炎の組み合わせペグインターフェロン及びリバビリン治療の多施設治験(multicenter study)であった。VIRAHEP−C試験の設計及び一次的結果は他の場所で報告された[Conjeevaram,H.S.,et al.著,Peginterferon and ribavirin treatment
in African American and Caucasian American patients with hepatitis C genotype 1.Gastroenterology,131(2):2006年,p.470−7]。治療未経験(treatment−naive)であり、遺伝子型1に感染しており、検出可能なHCV RNAを有し、且つ慢性HCVの組織学的証拠を有する18歳及びそれより年長の患者は、関与する資格があった。1日当たり2杯又は同等量(20g)より多くのアルコール消費の歴史又は過去6ヶ月以内のアルコール乱用の証拠を有する患者は除外した。すべての患者は登録の18ヶ月内に肝臓生検を受けた。患者は、自己申告に基づいて人種によりアフリカ系アメリカ又はコーカサス人種として、及び民族性によりヒスパニック又は非−ヒスパニックとして分類された。すべての協力者は合衆国で生れたことが必要であった。
【0027】
患者は少なくとも24週間、ペグインターフェロンアルファ−2a(Pegasys,Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ)180μgを毎週、及びリバビリン(Copegus,Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ)1000〜1200mgを毎日与えられた。24週までにHCV R
NA陰性になった患者は、合計で48週間処置を続け、HCV RNA陽性のままであった患者は処置を停止し、無−反応者(NR)と考えられた。試験の一次的終点は、治療の停止後少なくとも24週間の検出可能なHCV RNAの不在として定義される持続性ウイルス学的反応(SVR)であった。
【0028】
IP−10を含む血清サイトカインの分析
抗ウイルス治療への50人の持続性ウイルス学的反応者(SVR)及び50人の無−反応者(NR)をVIRAHEP−Cコホートから選び、それらをサイトカイン分析中に含めた。48週間のIFNに基づく治療への再発者は、この事後分析(retrospective analysis)に含めなかった。コホートは、51人のアフリカ系アメリカ人(AA)及び49人のコーカサス系アメリカ人(CA)から成った。コホートは41人の女性及び59人の男性を含んだ。
【0029】
Luminexシステム上で商業的に入手可能なヒト23−プレックス(plex)及び27−プレックスパネルサイトカインBioPlexアッセイ(BioRad,カタログ番号それぞれ#171−A11123及び#171−A11127)を用い、製造者の指示に従って、ベースラインで集められた血清試料において50種のサイトカインを測定した。大多数の試料において、ベースラインでマルチプレックスアッセイにおいて分析された50種のサイトカインから、37種を確実に定量することができた。血清IP−10レベルの分析に特別な注意がはらわれ、それはヒトサイトカイン27−プレックスパネルBioPlexアッセイの一部として決定された。このアッセイにおけるIP−10測定値のダイナミックレンジは3.1−50,938pg/mlであり、6.5pg/mlの検出限界を有した。
【0030】
IL28B遺伝子型決定
血清IP−10濃度が分析された(上記を参照されたい)80人の患者(40人の反応者、40人の無反応者)のサブセットにつき、遺伝子型決定を行った。
【0031】
この患者サブセットは39人のAA及び41人のCAを含んだ。
【0032】
ABI TaqMan対立遺伝子識別キット及びABI7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用い、Thomas et al(Nature,461:2009年,798−802)により記載された通りに、IL28B多型マーカーrs12979860を調べた。
【0033】
統計的分析
SAS又はJMPソフトウェア(SAS Institute Inc)を用いて統計的分析を行った。Tibco Spotfireソフトウェア又はGraphPad Prism 4ソフトウェアを用いてグラフを作成した。
【0034】
IP10はSVRと関連している
十分に特性化されたアメリカ人コホートにおいて、選ばれたサイトカインの処置前分布が処置反応(持続性ウイルス学的反応,SVR)を予測できるか否かを決定するために、50種のサイトカイン及びケモカインの包括的配列(comprehensive array)を用い、HCV処置を受けたVIRAHEP−Cコホート中の100人の患者からの血清試料を評価した。図1における反応者対無−反応者のヒートマップ分析に描かれている通り、分析された50種のサイトカインから37種を確実に測定することができた。IP−10以外の(下記を参照されたい)すべてのサイトカインのベースラインレベルは、反応者と無−反応者の間で有意に異ならなかった。
【0035】
ベースラインにおける平均血清IP−10濃度は、無反応者と比較して反応者において有意により低かった(1149±85pg/mlに対して687±68pg/ml,p<0.001)(図2A)。IP−10測定値の予測値の可能性(potential predictive value)を評価するために、以前の他の研究において適用されたと類似して、600pg/mlの閾値に従って患者を層別した。
[Zeremski,M.,et al.著,Interferon gamma−inducible protein 10:a predictive marker of successful treatment response in hepatitis C virus/HIV−coinfected patients.J.Acquir Immune Defic Syndr,45(3):2007年,p.262−8‖Butera,D.,et al.著,Plasma chemokine levels correlate with the outcome of antiviral therapy in patients with hepatitis C.Blood,106(4):2005年,p.1175−82.‖Diago,M.,et al.著,Association of pretreatment serum interferon gamma inducible protein 10 levels with sustained virological response to peginterferon plus ribavirin therapy in genotype 1 infected patients with chronic hepatitis C.Gut,55(3):2006年,p.374−9.‖Lagging,M.,et al.著,IP−10 predicts viral response and therapeutic outcome in difficult−to−treat patients with HCV genotype 1 infection,Hepatology,44(6):2006年,p.1617−25.‖Narumi,S.,et al.著,Expression of IFN−inducible protein−10 in chronic hepatitis.J Immunol,158(11):1997年,p.5536−44.‖Romero,A.I.,et al.著,Interferon(IFN)−gamma−inducible protein−10:association with histological results,viral kinetics,and outcome during treatment with pegylated IFN−alpha 2a and ribavirin for chronic hepatitis C virus infection.J.Infect Dis,194(7):2006年,p.895−903.]
【0036】
低いベースラインIP−10レベル(<600pg/ml)を有する患者の79パーセント(26/33)は、治療に対する反応者であり(陽性予測値=79%)、高いベースラインIP−10レベル(>600pg/ml)を有する患者の64%(43/67)は治療に対する無反応者であろう(陰性予測値=64%)(図2B)。全体として、この結果は、処置前血清IP−10レベルに基づいて治療反応を予測するテストに関して52%(26/50)の特異度及び86%(43/50)の敏感度を生ずる。
【0037】
評価された37種のサイトカインを用いる相関マトリックス分析に基づくと、ベースラインでIP−10と相関する他のサイトカインはなかった(図3)。サイトカインのいくつかのグループはベースラインで互いに相関していることが注目されたが、いずれも処置反応と関連しなかった。重要なことに、交差妥当化モデルを用いる37種のサイトカインの分析は、ベースラインIP−10に加えられるいずれのサイトカインもその反応者対無反応者の誤分類率を向上させなかったことを明らかにした(約30%)。
【0038】
IL28B遺伝子型はSVRと関連している
IL28B遺伝子型に従う患者集団の層別は、処置反応との有意な(尤度比 chi−平方:p<0.0012)関連性を明らかにし(図4)、CC遺伝子型は高いSVR率(CC遺伝子型において87%のSVR)と関連していたが、TT遺伝子型は無−反応者と関連していた(TT遺伝子型において75%の無−反応者)。
【0039】
IP10血清レベル及びIL28B遺伝子型の加算的且つ独立した効果
平均血清IP−10レベルは、3つのIL28B遺伝子型のグループの間で有意に異ならず、CC遺伝子型をCT及びTT遺伝子型を合わせたグループに対して比較した場合も有意に異ならなかった(図5)。
【0040】
次に、以前にいくつかの研究で用いられたことがある(上記を参照されたい)600pg/mlの閾値より高いか又は低いIP−10レベルに従って、患者を層別した。次いで処置前血清IP−10レベルに基づく層別をIL28B遺伝子型と組み合わせて分析した。この組み合わせ分析の表示データを図6に示す。
【0041】
この発見は、IL28B遺伝子型及び処置前血清IL−10濃度の組み合わせ分析により、個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリン処置への(無−)反応の予測性を有意に向上させることができることを示している。
【0042】
さらに特定的に、高いIP−10レベルを有する場合の34%に対して、低いIP−10を有するCT保有者は79%のSVRを有した。TT保有者の間で、類似の関連性が同定された(高IP−10の場合の10%に対して低IP−10の場合にSVR=50%)。(表1を参照されたい)
【0043】
【表2】

【0044】
図7は、個々の分析(IL28B遺伝子型及びIP−10レベル)と組み合わせ分析の比較概要を示す。行われた均一性に関するchi−平方テストは、2つもしくはそれより多い集団(例えば種々のIL28B遺伝子型グループ)が共通の特性(すなわちSVR反応)を有する観察の同じ割合を有するかどうかを調べる。両方の個々の分析は、処置反応を有意に予測できる。それでも、両方のマーカーを組み合わせると明白な加算効果があり、個々の患者に関する処置反応及び無−反応の両方の予測値を向上させる。この組み合わせ分析は、反応者対無−反応者の高度に有意な層別を生ずる。さらに特定的に、説明変数としてIL28B遺伝子型及び血清IP−10(600pg/mlより高いか又は低い)の両方を含むSVRの一般化線形モデル研究(SAS proc genmod)は、IL28B遺伝子型(p<0.0013)及び血清IP−10(p<0.0016)の有意な寄与効果を示すが、持続性ウイルス学的反応の評価におけるIL28BとIP−10の間の相互作用の寄与効果を示さない(p=0.75)。
【0045】
最後に、血清IP−10レベル(連続変数として処理される)及びIL28B遺伝子型(カテゴリー変数)に基づくSVR反応のロジスティック回帰モデル研究は、血清IP−10レベルに従って反応者と無−反応者を明確に分離し、反応曲線中にIL28B遺伝子型依存性シフトを有する(図8)。
【0046】
一緒にすると、3つの発見は、処置前血清IP−10レベル及びIL28B遺伝子型の組み合わせの予測値が、ペグインターフェロン及びリバビリン治療への持続性ウイルス学的反応の予測において個々のマーカーのそれぞれより能力が優れており、HCV患者において個人的な薬剤を導く見込みを保有していることを示している。
【実施例2】
【0047】
この研究において、VIRAHEP−Cコホート中の272人の患者(115人の無−反応者及び157人のSVR)からの血清試料中で処置前IP−10レベルを測定した。この分析は、CA及びAA患者の両方において、IP−10が等しくSVRを予測できることを示した。次いで処置前血清IP−10レベルとIL28B遺伝子型の組み合わせを、このコホートにおいてpegIFN及びリバビリンへの反応の予測物質として評価した。
【0048】
患者及び方法
患者.VIRAHEP−C研究は、遺伝子型1感染を有するAA及びCAの中での反応の率及び予測物質を評価するため、ならびに治療への無反応に関する理由を同定するために設計された、慢性C型肝炎の組み合わせpegIFN及びリバビリン治療の多施設治験であった。VIRAHEP−C試験の設計及び一次的結果は他の場所で報告された[Conjeevaram,H.S.,et al.著,Peginterferon and ribavirin treatment in African American and Caucasian American patients with hepatitis C genotype 1.Gastroenterology,131(2):2006年,p.470−7]。治療未経験であり、遺伝子型1に感染しており、検出可能なHCV RNAを有し、且つ慢性HCVの組織学的証拠を有する成人は、関与する資格があった。患者は、自己申告に基づいて人種によりアフリカ系アメリカ人又はコーカサス人として、及び民族性によりヒスパニック又は非−ヒスパニックとして分類された。すべての協力者は合衆国で生れたことが必要であった。合衆国全体に及ぶ8つの臨床施設から401人の患者を登録し、2002年7月から2003年12月の間に治療を開始した。
【0049】
本研究のために、全VIRAHEP−Cコホートから、157人の持続性ウイルス学的反応者(SVR)(104人のCA、53人のAA)及び115人の無−反応者(34人のCA、81人のAA)を含んでなる272人の患者のサブセットから血清試料を得た。この研究で分析されるすべての検体はIRB−承認の治験実施計画書(IRB−approved protocols)の下に得られ、それに関して協力者は遺伝子テストに関する同意を含む書面によるインフォームドコンセントを与えた。
【0050】
処置.患者は少なくとも24週間、ペグインターフェロンアルファ−2a(Pegasys,Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ)180μgを毎週、及びリバビリン(Copegus,Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ)1000〜1200mgを毎日与えられた。24週までにHCV
RNA陰性になった患者は、合計で48週間処置を続け、HCV RNA陽性のままで
あった患者は処置を停止し、無−反応者と考えられた。試験の一次的終点は、治療の停止後少なくとも24週間の検出可能なHCV RNAの不在として定義されるSVRであった。
【0051】
HCV RNAの定量.中心実験室(central laboratory)(SeraCare BioServices,Gaithersburg,MD)において、Cobas Amplicor Assay(感度 50IU/ml:Roche Molecular Diagnostics,Alameda,CA)を用いてHCV RNAテストを行った。選ばれた試料を、HCV RNAレベルに関してCobas Amplicor Monitor Assayにより、及びHCV RNA遺伝子型に関してVersant HCV Genotype Assay(Bayer,Tarrytown,NY)によりテストした。
【0052】
肝臓組織学.すべての患者は、スクリーニングの18ヶ月内に肝臓生検を受け、それは中心病理学者によって盲検により読まれた(read blinded)。すべての生検は、Ishakの修正組織学的活性指数(HAI)採点システム(Ishak’s modified histologic activity index(HAI) scoring system)を用いて炎症を等級付けし、線維症を段階付けすることにより、C型肝炎の重度に関して評価された。
【0053】
血清IP−10の定量.処置の開始の前にベースラインにおいて集められた血清試料中で、商業的に入手可能なQuantikineヒトCXCL10/IP−10イムノアッセイ(R&D Systems)を用い、インターフェロン−γ誘導タンパク質−10(IP−10)を測定した。すべての試料を1:2で希釈し、二重に分析した。このアッセイにおけるIP−10測定値の線状ダイナミックレンジは8−500pg/mlであり、7.8pg/mlに検出限界を有した。1000pg/mlより高いIP−10濃度を有する試料を1:5で希釈し、再−分析した。
【0054】
IL28Bの遺伝子型決定.Thomas et al(Nature,461:2009年,798−802)により記載された通りに、ABI TaqMan対立遺伝子識別キット及びABI7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用い、IL28B多型マーカーrs12979860を分析した。我々のコホートからの210人の患者からのDNA試料を遺伝子決定した。
【0055】
統計的方法.JMP 7.0.2又はSAS バージョン9.1ソフトウェア(両方ともSAS Institute,Incから)を用いて標準的な統計的分析を行った。分布正規性条件(distribution normality assumption)を満たすために、統計的テストにおける使用の前にIP−10濃度を対数変換した。種々の分類モデル(対角線的識別分析(diagonal linear discriminant analysis)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)及びバギング(bagging))ならびに受信者操作特性(ROC)曲線分析の評価のために、公然と利用できるR中のパッケージ(バージョン2.8.0)を用いた。SASにおけるproc logistic及びproc genmod法を用いて、それぞれロジスティック回帰モデル及び一般化線形モデルのフィッティングを行った。有効統計ソフトウェアツール又はGraphPad Prism 4(GraphPad Software,Inc)を用いてグラフを作成した。
【0056】
結果
研究コホートに含まれる患者.
この研究のために、VIRAHEP−Cコホートからの抗ウイルス治療への157人の持続性ウイルス学的反応者(SVR)及び115人の無−反応者からの血清試料が含まれた。SVR及び無−反応者の定義は上の節で示した。ウイルス再発、再燃を有するか、又は利用できるウイルス学的データが12週間より短い患者は排除した。コホートは134人のAA及び138人のCAから成った。このコホートのベースライン患者特性は以下の通りであった:年齢 48.4±7.4歳;ウイルス負荷 4.6±5.7X10IU/ml;血小板数 214±73X10個の細胞/mm;アラニントランスアミナーゼ(ALT) 90.0±72.9IU/l;合計ビリルビン 0.70±0.35mg/dl;アルブミン 4.1±0.40g/dl;及びヘマトクリット 43.2±3.8%(すべてのデータは平均±SDとして)。コホートは96人の女性及び176人の男性を含み、19%が4−6のIshak線維症採点を有した。我々のコホートにおける272人の患者中の210人からの試料はIL28B遺伝子型決定に利用され得、123人はSVRであり87人は無−反応者であり、その中で111人はCAであり、99人はAAであった。
【0057】
ベースライン血清IP−10測定及び処置反応.
平均血清IP−10レベルは、無−反応者患者と比較してSVRにおいて有意により低かった(704±44pg/mlに対して437±31pg/ml,p<0.001)(図9A、表2)。IP−10測定値の予測値の可能性を評価するために、我々は先行研究において用いられてきた600pg/mlの閾値に従って患者を層別した。低いベースラインIP−10レベル(<600pg/ml)を有する患者の69パーセント(129/188)は治療への反応者であったが(陽性予測値、PPV=69%)、高いベースラインIP−10レベル(>600pg/ml)を有する患者の67%(56/83)は治療への無−反応者であった(陰性予測値、NPV=67%)(図9B)。全体としてこれは、処置前血清IP−10レベルに基づいて治療反応を予測できるテストに関して82%(129/157)の特異度及び49%(56/115)の敏感度を生ずる。
【0058】
我々は、ROC曲線分析に基づいて最良の識別能力を有するカットオフ値を計算することにより、SVR患者の同定のために用いられる600pg/mlのIP−10閾値を評価した。我々のデータセットにおいて、370pg/mlの閾濃度がSVR患者の予測において特異度(80%)と敏感度(56%)の最適の組み合わせであることが明らかになった。次いで我々は、SVRならびに無−反応の両方を正しく予測するための我々の最適IP−10レベルを決定した。550pg/mlの閾値は、真陽性者又は陰性者の最高の率(69%)を与え、文献中で用いられてきた600pg/mlのカットオフと十分に相関した(我々のデータセットにおいて68%の真陽性者又は陰性者が予測された)。最後に、処置前IP−10濃度のロジスティック回帰分析は、個々の患者において測定される特定のIP−10レベルに関するSVRの確率のフィッティングを可能にし、高度に有意なIP−10の効果を示した(p<0.0001;図10,灰色の曲線)。
【0059】
血清IP−10レベルへの人種の影響.
CA及びAAの処置前IP−10血清レベルを比較すると、反応者(p=0.75)及び無−反応者(p=0.97)の別々の分析において有意な差は観察されなかった(表2)。研究コホート全体において観察されたCAとAAの間のベースライン血清IP−10レベルおける有意な(p=0.015)差は、コホートの不均衡な組成により最も良く説明され得るようである(AAサブグループにおける40%と比較してCAサブグループにおけるIFN処置反応率は75%であった)。IFN治療への反応者及び無−反応者の間のIP−10血清レベルにおける高度に有意な差は、CA及びAAの両方において見出された(表2)。ベースラインIP−10レベルのロジスティック回帰分析を用い、CA及びAA患者に関する処置反応曲線を作成した(図10)。AA及びCA患者に関する反応
曲線は、IP−10(p<0.0001)及び人種(p<0.0001)の両方の有意な影響を明らかにしたが、IP−10と人種の間の有意な相互作用を明らかにしなかった(p=0.08)。
【0060】
IL28B遺伝子型及び処置反応
遺伝子型決定された210人の患者の中の30%はCCであり、49%はCTであり、21%はTTであった。IL28B遺伝子型と処置反応の間の有意な関連性が観察された:対応するSVR率はCCに関して87%であり、CTに関して50%であり、TTに関して39%であった(p<0.0001)(表3)。コーカサス系アメリカ人の場合、49%は91%のSVRを有するCCであり、41%は67%のSVRを有するCTであり、10%は45%のSVRを有するTTであった(p<0.001)。アフリカ系アメリカ人の場合、わずか9%が67%のSVRを有するCCであり、58%が35%のSVRを有するCTであり、33%が36%のSVRを有するTTであった(p=0.20)。
【0061】
IL28B遺伝子型及び処置前IP−10レベルと処置反応との関連性
平均血清IP−10レベルは、コーカサス人(p=0.27)及びアフリカ系アメリカ人(p=0.58)の両方において、IL28B遺伝子型にかかわらず、すべての患者に関して類似していた(図11)。血清IP−10とIL28B遺伝子型の間のこの相関性の欠如は、これらのマーカーの両方に関して観察されるSVRとの関連性が独立していることを示す。処置前IP−10レベルに関する600pg/mlのカットオフを用いると、利用できる血清IP−10及びIL28B遺伝子型の両方のデータを有する我々のコホートの患者に関するSVR率は(n=210)、低いIP−10レベル(<600pg/ml)を有する患者の場合に69%であり、高いIP−10レベル(>600pg/ml)を有する患者の場合に35%であった(p<0.0001)。
【0062】
名目ロジスティック回帰におけるIL28B遺伝子型及び血清IP−10(600pg/mlより高いかもしくは低い)の関数としてのSVRのモデル研究は、SVRの予測(Chi=55,p<0.001)におけるIL28B遺伝子型(p<0.0001)及び血清IP−10(p<0.0015)の有意な加算的効果を明らかにしたが、IL28BとIP−10の間の相互作用を明らかにしなかった(p=0.66)。図12は、IL28B遺伝子型グループ内のベースラインIP−10レベルがSVR率に関する加算的且つ独立した情報を与えたことを視覚化している。さらに特定的に、ベースラインIP−10レベルは、IL28B T−対立遺伝子保有者において最も役に立った。CT保有者に関する全体的な反応率は50%であったが、高いIP−10レベルを有する場合の24%に対して低いIP−10レベルを有する者の場合に64%がSVRを有した。TT遺伝子型の場合、39%がSVRを有し、低処置前IP−10グループ内で48%であり、高IP−10グループ内で20%であった。連続変数として処理される血清IP−10レベル及びIL28B遺伝子型に基づくSVR反応のロジスティック回帰モデル研究は、反応曲線における追加的且つ有意なIL28B遺伝子型−依存性シフトを有する血清IP−10レベルに従う、SVRの確率のより個別化された(individualized)予測を可能にした(図13)。予測モデルのより定量的な比較を可能にする相補的受信者操作特性(complementary receiver operating charasteristic)(ROC)曲線分析は、単独の処置前血清IP−10に基づくモデル(0.71)対単独のIL28B遺伝子型に基づくモデル(0.70)に関して類似のROC曲線下面積(AUC)の値を明らかにした。しかしながら、両方のマーカーを組み合わせたモデルに関し、もっとずっと高いROC AUC値(0.80)が達成された(図14)。一緒にすると、これらのデータは、IL28B遺伝子型を処置前血清IP−10測定値と組み合わせることは、特に非−CC遺伝子型においてSVRの予測値を明白に向上させることを示している。
【0063】
人種グループごとに分析を行う時にも、同じ且つ有意な傾向が見出された(表4)。例えばアフリカ系アメリカ人において、ベースラインIP−10レベルに伴う差はCT及びTTのIL28B遺伝子型に関してさらにもっと衝撃的であった。低いIP−10を有するCT保有者の場合、高いIP−10を有する場合の17%に対してSVRは48%であり、低いIP−10を有するTT保有種の場合、高いIP−10を有する場合の25%に対してSVRは43%であった。
【0064】
処置反応の予測のためにIL28B遺伝子型及び処置前IP−10レベルを他のベースラインパラメーターと組み合わせること.
我々は、IL28B遺伝子型及び血清IP−10に加えて他のベースラインパラメーターがSVRの予測を有意に向上させ得るかどうかを評価した。この分析において我々は、ロジスティック回帰モデルに年齢、性別、人種、処置前ウイルス負荷、Ishak線維症採点、ALT、脂肪症及び組織学的活性指数を加えた。含まれるすべてのパラメーターの中で、処置前ウイルス負荷(p<0.0001)、IL28B遺伝子型(p=0.0004)、ベースラインIP−10レベル(p=0.0033)及び人種(p=0.0011)のみがモデルに有意に寄与した。変数のいずれの対の間でも相互作用は有意でなかった(すべてp>0.1)。すべての変数をカテゴリー変数として処理すると(例えば連続変数としてではなく、600pg/mlより高いかもしくは低いIP−10)、得られる一般化線形モデルは同じ4つの有意な変数及びISHAK線維症採点を含んだ(図15)。
【0065】
これらの多変量解析において同定される最も有意な変数を含むモデルの予測力を比較するROC曲線分析を行った(図14)。IL28B遺伝子型及び血清IP−10を組み合わせたモデルのAUC(AUC 0.80)は、単独のIL28B遺伝子型に基づくモデル(AUC 0.70)を含む個々の変数に基づくモデルより明らかに能力が優れていた。人種及びベースラインウイルス負荷を加えることはモデルをさらに向上させたが、加えられた増加は中程度であった(AUCは最高で0.85)。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
図1−15の説明
図1.インターフェロンα/リバビリン治療への50人の反応(SVR)及び50人の無反応HCV患者において測定される37種のサイトカインの処置前血清濃度を示すヒートマップ。
【0070】
図2.IFN治療への反応者におけるベースラインでのIP−10測定値対無反応者におけるIP−10測定値。[A]無−反応者に対してIFN処置に反応する患者において、ベースラインで有意に(p<0.001)より低いIP−10血清レベルが観察された。水平線は、グループごとの平均値を示す。IP−10測定値の予測値の可能性を評価するために、患者を600pg/mlの閾値に従って層別した(破線)。[B]無−反応者のグループと比較して反応者において、高い(>600pg/ml)IP−10レベルを有する患者の有意により小さい割合が見出された(Pearson Chi平方=16.3,p<0.001)。
【0071】
図3.100人のHCV患者において(処置前試料)ベースラインで測定される37種のサイトカインを含む相関マトリックス。青い四角は、それぞれ60%より高い(明るい青
)、70%より高い(中度の青)又は80%より高い(暗い青)サイトカイン間の相関を示す。赤い四角は、IP−10と他のすべての36種のサイトインの相関を示す(すべて60%より低い)。
【0072】
図4.IFNα+リバビリン処置への反応者及び無反応者におけるIL28B遺伝子型(rs12979860)分布。データは、それぞれ反応者又は無反応者の患者の数(n)又はパーセンテージ(Row%)として示される。図の右側にグラフ図を示す。
【0073】
図5.80人のHCV患者における処置前血清IP−10濃度との関連におけるIL28B遺伝子型(rs12979860)。患者をIL28B遺伝子型ごとに(左)、又はCC遺伝子型対CT/TT遺伝子型の比較により(右)グループ分けした。有意なIL28B遺伝子型に関連する差は観察されなかった。
【0074】
図6.治療結果との関連におけるIL28B遺伝子型及び血清IP−10濃度(600pg/mlより高いか又は低い)の組み合わせ分析。図は、IFNα/リバビリン処置に反応した、又は反応しなかった患者の数(N)(左のパネル)ならびに遺伝子型及びIP−10レベルごとの患者の割合(%として)を示す。
【0075】
図7.IL28B遺伝子型のみに基づく(上のパネル)、IP−10血清レベルのみに基づく(中のパネル)ならびにIL28B遺伝子型及び血清IP−10レベルの組み合わせ分析に基づくHCV患者における処置結果の予測値を比較するグラフによるまとめ。棒中のパーセンテージは、特定のサブグループ中のSVR反応者の割合を示す。各サブグループ(棒)中の患者の合計数を棒の右側に示す。
【0076】
図8.血清IP−10レベルに基づく、ペグインターフェロン及びリバビリン処置への持続性ウイルス学的反応(SVR)をフィッティングするロジスティック回帰分析のグラフ図(灰色の曲線)。次にIL28B遺伝子型をモデルに加え、遺伝子型のそれぞれに関する回帰曲線を生じた(CC:青、CT:赤、TT:緑)。サブグループのそれぞれにおける患者の比較的少ない数は、このモデルにおいて血清IP−10の寄与のみが有意な(p=0.017)寄与因子(contributor)として明らかになり、IL28B遺伝子型(p=0.31)又はIP−10とIL28Bの間の相互作用(p=0.93)は有意な寄与因子として明らかにならなかったことを説明し得る。各患者試料は図の上部(反応者)又は下部(無−反応者)に丸として示されている;丸の色はIL28B遺伝子型を示す。
【0077】
図9.反応者(SVR)及び無−反応者患者における処置前血清IP−10(pg/ml)。(A)IP−10データの分布グラフ;(B)IP−10レベル(600pg/mlより高い又は低いで層別)及び処置反応結果に基づくモザイクプロット。
【0078】
図10.コホート全体における(灰色の曲線)、又は人種グループごとに層別された(コーカサス系−アメリカ人:赤、アフリカ系−アメリカ人:青)、処置前血清IP−10レベル(pg/ml)に基づく反応者(SVR)である確率をフィッティングするロジスティック回帰分析のグラフによるまとめ。各患者試料は図の上部(SVR)又は下部(無−反応者)に丸として示されている。ロジスティック回帰モデルは、IP−10(p<0.0001)及び人種(p<0.0001)の有意な影響を明らかにしたが、IP−10と人種の間の有意な相互作用を明らかにしなかった(p=0.08)。
【0079】
図11.(A)コーカサス系−アメリカ人及び(B)アフリカ系アメリカ人におけるIL28B遺伝子型に従って層別されたHCV患者中の処置前血清IP−10(pg/ml)。一元配置ANOVA(one−way ANOVA)は、IL28B遺伝子型に従うI
P−10レベルにおける有意な差を示さなかった。
【0080】
図12.処置前血清IP−10(600pg/mlより高い対低い)及びIL28B遺伝子型に従って層別されたHCV患者における持続性ウイルス学的反応(SVR)率(%)。単独の血清IP−10又は単独のIL28B遺伝子型に従うSVR率をグラフの垂直の壁上に示す(白い前面)。各サブグループに関してSVR率及び患者の数(SVRの数/サブグループ全体の数)を棒の内部に示す。尤度比Chi分析は、試料グループ全体に及ぶ反応の均一性を確証した(Chi=55;p<0.0001)。
【0081】
図13.血清IP−10レベルのみに基づく(灰色の曲線)、又は血清IP−10のレベル(pg/ml)とIL28B遺伝子型(CC:赤、CT:緑、TT:青)の組み合わせに基づく、ペグ−インターフェロン及びリバビリン処置への持続性ウイルス学的反応(SVR)をフィッティングするロジスティック回帰分析のグラフによるまとめ。各患者試料は図の上部(SVR)又は下部(無−反応者)に丸として示されている;丸の色はIL28B遺伝子型を示す。ロジスティック回帰モデルは、IP−10(p<0.0001)及びIL28B遺伝子型(p<0.0001)の有意な影響を明らかにしたが、IP−10とIL28B遺伝子型の間の有意な相互作用は明らかにしなかった(p=0.3)。
【0082】
図14.ペグ−インターフェロン及びリバビリン処置へのSVRの予測における、処置前血清IP−10、IL28B遺伝子型、人種、ベースラインHCVウイルス負荷又はこれらのパラメーターの組み合わせに関する受信者操作特性(ROC)曲線分析。凡例中の数字は、モデル比較のために用いることができるROC曲線下面積(AUC)統計量を示す。
【0083】
図15.pegIFN及びリバビリン治療への持続性ウイルス学的反応(SVR)の予測物質。IL28B遺伝子型及びIP−10のベースライン(処置前)測定値、HCVウイルス負荷、線維症段階(ISHAK)、年齢、性別、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、脂肪症(脂肪得点)ならびに門脈及び小葉組織学的活性指数(HAI)を含むロジスティック回帰モデルからオッズ比を計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCVに感染した個々の患者に関してペグインターフロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の結果を予測するために、IP−10の処置前血清レベル測定値、IL28B遺伝子型決定、人種又はC型肝炎ウイルス負荷決定より成る群から選ばれる2つもしくはそれより多いパラメーターを組み合わせる方法。
【請求項2】
HCVに感染した個々の患者に関してペグインターフロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の結果を予測するために、該IL28B遺伝子型決定を該IP−10の処置前血清レベル測定値と組み合わせる請求項1に従う方法。
【請求項3】
人種のパラメーターを加える請求項2に従う方法。
【請求項4】
C型肝炎ウイルス負荷決定を加える請求項2に従う方法。
【請求項5】
人種のパラメーター及びC型肝炎ウイルス負荷決定を加える請求項2に従う方法。
【請求項6】
IL28B遺伝子型が多型マーカーrs12979860、rs12980275及び/又はrs8099917あるいはこれらのマーカーと連鎖不平衡にある他の遺伝子マーカーを含む請求項1〜5のいずれかに従う方法。
【請求項7】
組み合わせ測定が、これらの2つの個々のマーカー(IL28B遺伝子型、血清IP−10レベル)のいずれとの比較においても、HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへのSVR及び無−反応の間をさらに良く識別する請求項6に従う方法。
【請求項8】
少なくともIL28B多型性及びHCV−感染患者からの血清中のIP−10レベルの決定又は測定のための手段を含んでなる請求項1〜7のいずれかに従う方法において使用するための診断アッセイ。
【請求項9】
HCVに感染した個々の患者に関するペグインターフェロン及びリバビリンへの持続性ウイルス学的反応(SVR)又は無−反応の予測のための請求項1〜7のいずれかの方法から得られる結果情報を用いるモデル研究ソフトウェアを含んでなるコンピューターシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−514796(P2013−514796A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545307(P2012−545307)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070429
【国際公開番号】WO2011/076814
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512116125)
【Fターム(参考)】